説明

オレフィンモノマーの接触三量化

a)クロム、モリブデンまたはタングステン源、b)一般式(I);(R)(R)P−X−P(R)(R)(式中、Xは、二価有機架橋基であり、RおよびRは、独立に、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ炭化水素基および置換へテロ炭化水素基から選択され(但し、RおよびRが環状芳香族基である場合、それらは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない)、RおよびRは、独立に、場合によって置換された環状芳香族基から選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有している)の配位子およびc)助触媒を含む、オレフィンモノマーの三量化に適した触媒組成物。本発明は、さらに、少なくとも1つのオレフィンモノマーを上記に記載された触媒組成物と接触させることを含む、オレフィンモノマーの三量化、特にエチレンの1−ヘキセンへの三量化方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンモノマーの三量化のための触媒に関する。本発明は、また、前記触媒の存在下において、オレフィンモノマーの三量化のための方法、特に、エチレンから1−ヘキセンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンモノマーの有効な接触三量化、例えば、エチレンの1−ヘキセンへの三量化等は、種々の商品価値のオレフィン三量体の製造にとって極めて魅力のある分野である。特に、1−ヘキセンは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)にとって価値あるコモノマーである。該三量化プロセスは、不必要なオレフィンの製造を一般的に回避するので好ましいが、1−ヘキセンは、通常の遷移金属オリゴマー化方法によっても製造することができる。
【0003】
幾つかの異なる触媒系は、エチレンの1−ヘキセンへの三量化のための技術分野において開示されている。これらの触媒の多くはクロムをベースとしている。
【0004】
米国特許第5198563号明細書(Phillips)は、オレフィンを三量化するのに有用な単座アミン配位子を含むクロムベースの触媒を開示している。
【0005】
米国特許第5968866号明細書(Phillips)は、1−ヘキセンに富むアルファ−オレフィンを製造するために、配位非対称三座ホスファン、アルサンまたはスチバン配位子およびアルミノキサンを含むクロム錯体を含む触媒を使用するエチレンオリゴマー化/三量化方法を開示している。
【0006】
米国特許第5523507号明細書(Phillips)は、エチレンの1−ヘキセンへの三量化において使用するための、クロム源、2,5−ジメチルピロール配位子およびアルキルアルミニウム活性体をベースとした触媒を開示している。
【0007】
Chem.Commun.、2002、8、858頁〜859頁(BP)は、エチレンの三量化のための触媒として、ArPN(Me)PAr(Ar=オルト−メトキシ−置換アリール基)のタイプの配位子のクロム錯体を開示している。
【0008】
WO02/04119(BP)は、クロム、モリブデンまたはタングステン源、極性置換基を有する少なくとも1つの炭化水素基またはヘテロ炭化水素基に結合した少なくとも1つの燐、砒素またはアンチモン原子を含む配位子(その様な極性置換基の全てが、ホスファン、アルサンまたはスチバン基であり、場合によって活性体である場合を除く)を含む、オレフィンの三量化のための触媒を開示している。殆どの実施例において使用される配位子は、(2−メトキシフェニル)PN(Me)P(2−メトキシフェニル)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のBPの文献において開示されている触媒は、C画分内の1−ヘキセンに対して良好な選択性を有するが、比較的に高水準の副生成物の形成(例えば、デセン)が観察される。したがって、1−ヘキセンに対する選択性を維持しながら副生成物の形成(例えば、デセン)を減少させる、オレフィンモノマーの三量化、特に、エチレンの1−ヘキセンへの三量化のための触媒を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここにおいて、驚くべきことに、本発明の触媒組成物および方法が、副生成物の形成、特にC10の水準を減少させながら、エチレンから1−ヘキセンの選択的製造のための有効な経路を与えることが分かった。
【0011】
本発明の1態様によれば、
a)クロム、モリブデンまたはタングステン源、
b)一般式(I)の配位子;
(R)(R)P−X−P(R)(R) (I)
(式中、
Xは、二価有機架橋基であり、
およびRは、独立に、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ炭化水素基および置換へテロ炭化水素基から選択され(但し、RおよびRが環状芳香族基である場合、それらは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない)、RおよびRは、独立に、場合によって置換された環状芳香族基から選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有している)および
c)助触媒
を含む、オレフィンモノマーの三量化に適した触媒組成物が提供される。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、オレフィンモノマーの三量化方法であって、少なくとも1つのオレフィンモノマーを、三量化反応条件下で前記触媒と接触させることを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の触媒組成物は、オレフィンモノマーの三量化、特に、エチレンの1−ヘキセンへの三量化に特に適している。本発明の触媒組成物および方法は、驚くべきことに、1−ヘキセンに対する高い選択率を維持しながら、実質的に低い濃度のオレフィン副生成物(例えば、デセン、主として1−デセンであって、これは1−ヘキセン生成物への2つのエチレンモノマーの付加により生成される)を生成する。さらに、本発明の触媒組成物は、上述のWO02/04119において開示されたCr(III)(2−メトキシフェニル)PN(Me)P(2−メトキシフェニル)触媒に比べて改善された活性/減衰速度の特徴を示す。特に、本発明の触媒組成物は、良好な初期活性を示すが、Cr(III)(2−メトキシフェニル)PN(Me)P(2−メトキシフェニル)触媒よりもに減衰が遅い。
【0014】
本明細書において使用される「三量化」という用語は、3つのオレフィンモノマーの反応から誘導される化合物に富む生成組成物を与えるためのオレフィンモノマーの接触三量化を意味する。三量化という用語は、供給流におけるオレフィンモノマーの全てが同じである場合および供給流が2以上の異なるオレフィンモノマーを含む場合を含む。
【0015】
特に、エチレンの三量化に関して使用される場合の「三量化」という用語は、Cアルケン、特に1−ヘキセンを形成するためのエチレンの三量化を意味する。
【0016】
エチレンの1−ヘキセンへの三量化に関して使用される場合の「三量化選択率」という用語は、生成組成物内に形成されるC画分の量を意味する。
【0017】
エチレンの1−ヘキセンへの三量化に関して使用される場合の「1−ヘキセン選択率」という用語は、生成組成物のC画分内に形成される1−ヘキセンの量を意味する。エチレンの三量化における1−ヘキセンの全体の収率は、「三量化選択率」と「1−ヘキセン選択率」とを掛けた積である。
【0018】
本発明の触媒組成物は、a)クロム、モリブデンまたはタングステン源、b)配位子、およびc)助触媒を含む。
【0019】
これら3つの必須成分のそれぞれは、以下に詳細に記載される。
【0020】
触媒組成物に対するクロム、モリブデンまたはタングステン源、成分(a)は、クロム、モリブデンまたはタングステンの単純な無機および有機塩を含むことができる。単純な無機および有機塩の例は、ハロゲン化物、アセチルアセトネート、カルボキシレート、酸化物、ナイトレートおよびスルフェート等である。クロム、モリブデンまたはタングステンの更なる源は、また、配位および有機金属錯体、例えば、三塩化クロムテトラヒドロフラン錯体、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ヘキサカルボニルクロム等を含むことができる。
【0021】
クロム、モリブデンまたはタングステン源は、また、単純な無機塩、単純な有機塩、配位錯体および有機金属錯体の混合物を含むことができる。
【0022】
本明細書における好ましい実施形態においては、成分(a)は、クロム、特にクロム(III)源である。
【0023】
本明細書における使用に好ましいクロム源は、クロムの単純な無機塩および有機塩である。本明細書における使用にさらに好ましいクロム源は、クロムのハロゲン化物塩、例えば、塩化クロム、臭化クロム、フッ化クロムおよびヨウ化クロム等である。本明細書における使用に特に好ましいクロム源は、塩化クロム、CrClである。
【0024】
本発明の触媒組成物の配位子、成分(b)は、一般式(I);
(R)(R)P−X−P(R)(R) (I)
(式中、Xは、架橋に1〜10個の炭素原子を含む二価有機架橋基であり、RおよびRは、独立に、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ炭化水素基および置換へテロ炭化水素基から選択され(但し、RおよびRが環状芳香族基である場合、それらは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない)、RおよびRは、場合によって置換された環状芳香族基から独立に選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有している)の配位子である。
【0025】
一般式(I)において、Xは、二価有機架橋基を表し、架橋において1〜10個、好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個、特に2〜3個の炭素原子を含む。好ましい実施形態は、架橋において2個の炭素原子を有する。
【0026】
「架橋において」ということによって、2つの燐原子間の最も短い結合であることが理解される。
【0027】
適当な架橋基としては、置換および非置換アルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、架橋において1つまたは複数のヘテロ原子、例えばN、S、SiまたはO等を場合によって含むことができる。好ましくは、アルキレン基は、架橋において炭素原子のみを含む。
【0028】
アルキレン基は、1つまたは複数の置換基で置換することができる。置換基は結合のどの部分にも結合することができる。
【0029】
アルキレン架橋基における置換基は、炭素原子および/またはヘテロ原子を含むことができる。適当な置換基としては、直鎖または分岐、飽和または不飽和芳香族または非芳香族であっても良い炭化水素基が挙げられる。炭化水素置換基は、Si、S、NまたはO等のヘテロ原子を場合によって含んでも良い。適当な芳香族炭化水素置換基としては、環状芳香族基、好ましくは環において5〜10個の炭素原子を有する、フェニルおよびC〜Cアルキルフェニル基等が挙げられる。適当な非芳香族炭化水素置換基としては、好ましくは、1〜10個の炭素原子、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を有する線状または分岐アルキルまたはシクロアルキル基が挙げられる。
【0030】
アルキレン架橋基のその他の適当な置換基としては、塩化物、臭化物およびヨウ化物等のハロゲン化物、チオール、−OH、A−O−、−S−A、−CO−A、−NH、−NHA、−NA、−CO−NA、−PO、−NO、−CO、−SO(ここで、AおよびAは、独立に、好ましくは、1〜10個の炭素原子、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を有する非芳香族基、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルである)が挙げられる。
【0031】
アルキレン架橋基が置換される場合、好ましい置換基は炭化水素基である。特に好ましい炭化水素置換基は、C〜Cアルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0032】
非置換アルキレン架橋基の例としては、メチレン、エチレンおよびトリメチレン基が挙げられる。置換アルキレン架橋基の例としては、2,2−ジメチル−トリメチレン、2,2−ジエチル−トリメチレン、2,2−ジメチル−テトラメチレン、2−メチル、2−ヒドロキシメチル−トリメチレンおよび2,2−ジ−ヒドロキシメチル−トリメチレンが挙げられる。
【0033】
本明細書において使用に特に好ましい有機架橋基は、非置換アルキレン架橋基である。特に好ましい有機架橋基は、エチレン、即ち、−CH−CH−である。
【0034】
その他の適当な架橋基は、結合が、非芳香族または芳香族環構造の部分を形成するものである。その様な架橋基は、1つまたは複数の置換または非置換、飽和または不飽和非芳香族環構造および/または1つまたは複数の置換または非置換環状芳香族(ヘテロ芳香族を含む)環構造を含む。非芳香族環構造は、1つまたは複数のヘテロ原子、例えば、N、S、SiまたはO等で割り込まれても良い。好ましくは、その様な架橋基は、さらに、架橋において2〜6個の炭素原子だけを含む。
【0035】
適当な非芳香族環構造としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンテン、3,4−フランおよび3,4−チオフェンが挙げられる。
【0036】
適当な芳香族環構造としては、フェニレン、特に、1,2−フェニレン、およびナフチレン、特に、1,8−または1,2−ナフチレンが挙げられる。
【0037】
環構造は、ヘテロ原子、アルキル基、シクロアルキル基および環状芳香族基を含むあらゆる種類の置換基で置換されても良い。適当な置換基としては、アルキレン架橋基に関して上で述べられたものが挙げられる。2つの燐原子は、隣接位置、即ち、1および2位置において環系に結合されるのが好ましい。
【0038】
およびRは、独立に、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ炭化水素基および置換ヘテロ炭化水素基から選択されるが、RおよびRが環状芳香族基である場合は、それらは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない。
【0039】
本明細書において使用される「炭化水素基」という用語は、炭素および水素原子を含むだけの基を意味する。炭化水素基は、飽和または不飽和、線状または分岐アルキル、非芳香族環または環状芳香族環であっても良い。本明細書において使用に好ましい炭化水素基は、1〜20個の炭素原子を含むものである。
【0040】
本明細書において使用される「置換炭化水素基」という用語は、1つまたは複数の不活性ヘテロ原子含有官能基を含む炭化水素基を意味する。「不活性ヘテロ原子含有官能基」とは、官能基が三量化方法で如何なる実質的な程度でも妨害しないことを意味する。
【0041】
本明細書において使用される「ヘテロ炭化水素基」という用語は、1つまたは複数の炭素原子が、ヘテロ原子、例えば、S、NまたはO等で置き換えられる炭化水素基を意味する。本明細書において使用される「置換ヘテロ炭化水素基」という用語は、1つまたは複数の不活性ヘテロ原子含有官能基を含むヘテロ炭化水素基を意味する。
【0042】
本明細書において使用される「環状芳香族」という用語は、5〜14個の環原子を有し、N、O、およびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を場合によって含む単環式または多環式、芳香族またはヘテロ芳香族環を意味する。好ましくは、環状芳香族基は、単環式または多環式芳香族環、例えば、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフチルまたはアンスラセニル等である。なおさらに好ましい環状芳香族基は、5〜10個の環原子を有する単環式または多環式芳香族環である。特に好ましい環状芳香族基は、5〜6個の炭素原子を含む単環式芳香族環、例えば、フェニルおよびシクロペンタジエニル等であり、最も好ましい環状芳香族基はフェニル基である。
【0043】
本明細書において使用される「置換環状芳香族」という用語は、環状芳香族基が、1つまたは複数の置換基で置換されても良いことを意味する。適当な置換基としては、アルキレン架橋基に関して上で述べられたものが挙げられる。
【0044】
1つの好ましい実施形態においては、RおよびRは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない置換または非置換環状芳香族基から独立に選択される。なおさらに好ましい実施形態においては、RおよびRは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない、場合によって置換されたフェニル基から独立に選択される。特に好ましい実施形態においては、RおよびRは、非置換フェニル基である。
【0045】
およびR基は同じであることが好ましい。
【0046】
およびRは、場合によって置換された環状芳香族基から独立に選択され、各RおよびR基は、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有する。誤解を避けるために、「各RおよびR基は、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有する」という語句は、同じ配位子において、Rが、該オルト位置の1つまたは両方において極性置換基で置換され、Rが、該オルト位置の1つまたは両方において極性置換基で置換されることを意味する。
【0047】
およびRに関する「場合によって置換された」という用語は、少なくとも1つのオルト位置における極性置換基に加えて、RおよびR基が1つまたは複数の置換基を含んでも良いことを意味する。適当な置換基としては、アルキレン架橋基に関して述べられたものが挙げられる。
【0048】
好ましくは、RおよびRは、5〜14個の環原子、好ましくは5〜10個の環原子を有する、場合によって置換された環状芳香族基から独立に選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つにおいて極性置換基を有する。
【0049】
1つの好ましい実施形態においては、RおよびRは、場合によって置換されたフェニル基から独立に選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つにおいて極性置換基を有する。
【0050】
好ましくは、RおよびRのそれぞれは、2つのオルト位置の1つにおいて極性置換基を有する。
【0051】
本明細書において使用される「極性置換基」という用語は、負に帯電した中心を導入する置換基を意味する。
【0052】
本明細書において使用に適した極性置換基としては、場合によって分岐したC〜C20アルコキシ基、即ち、酸素架橋原子を介してRおよびR環状芳香族環に結合した炭化水素基;場合によって置換されたC〜C14アリーロキシ基、即ち、酸素架橋原子を介してRおよびR環状芳香族環に結合した場合によって置換された環状芳香族基;場合によって分岐したC〜C20アルキル(C〜C20)アルコキシ基、即ち、C〜C20アルコキシ基を有するC〜C20炭化水素基;ヒドロキシル;アミノ;(ジ−)C〜Cアルキルアミノ;ニトロ;C〜Cアルキルスルファニル;C〜CアルキルチオC〜Cアルキル基;およびトシル基が挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。
【0053】
適当な極性置換基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、フェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、トリメチルシロキシ、ジメチルアミノ、メチルスルファニル、トシル、メトキシメチル、メチルチオメチル、1,3−オキサゾリル、ヒドロキシル、アミノ、スルフェート、ニトロ等が挙げられる。
【0054】
好ましくは、RおよびRにおける極性置換基は、場合によって分岐したC〜C20アルコキシ基、場合によって置換されたC〜C14アリーロキシ基および場合によって分岐したC〜C20アルキル(C〜C20)アルコキシ基から独立に選択される。さらに好ましくは、RおよびRにおける極性置換基は、場合によって分岐したC〜C20アルコキシ基、特に、場合によって分岐したC〜Cアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシまたはイソプロポキシ等から独立に選択される。RおよびRにおける特に好ましい極性置換基はメトキシである。
【0055】
およびR基は同じで、同じ数とタイプの極性置換基を有することが好ましい。Rが、該2つのオルト位置の1つにおいて1つの極性置換基のみを有し、Rが、該2つのオルト位置の1つにおいて1つの極性置換基のみを有することが特に好ましい。
【0056】
式(I)による配位子は、当業者に知られているまたは刊行物において開示されている方法を使用して調製することができる。その様な化合物の例は、(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)、(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)、(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)、(2−エトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−エトキシフェニル)(フェニル)、(2−エトキシフェニル)(フェニル)PCHP(2−エトキシフェニル)(フェニル)、(2−エトキシフェニル)(フェニル)PCHCHCHP(2−エトキシフェニル)(フェニル)、(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)、(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)PCHP(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)、(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)PCHCHCHP(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)である。
【0057】
本明細書において使用するのに特に好ましい配位子は、(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)である。
【0058】
クロム、モリブデンまたはタングステン源、成分(a)および配位子、成分(b)は、本発明の触媒組成物において、10000:1〜1:10000、好ましくは100:1〜1:100、さらに好ましくは10:1〜1:10の範囲の割合において存在することができる。最も好ましくは、成分(a)および(b)は、3:1〜1:3の範囲の割合において存在する。一般的に、(a)および(b)の量はほぼ等しく、即ち、1.5:1〜1:1.5の範囲の割合である。
【0059】
助触媒、成分(c)は、基本的には、クロム、モリブデンまたはタングステン、成分(a)および配位子、成分(b)と一緒に活性触媒を生成する任意の化合物または化合物の混合物であっても良い。
【0060】
助触媒として使用するのに適する化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物および無機酸ならびに塩、例えば、テトラフルオロホウ酸エーテレート、銀テトラフルオロボレート、ナトリウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0061】
特に好ましい助触媒は、有機アルミニウム化合物である。本明細書において使用するのに適当な有機アルミニウム化合物は、式AlR(ここで、各Rは、C〜C30アルキル、酸素またはハロゲン化物、または、LiAlH等の化合物等から独立に選択される)を有するものである。適当な有機アルミニウム化合物の非限定的例としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ−イソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドおよびアルモキサンが挙げられる。有機アルミニウム化合物の混合物も、本明細書における使用にとって適当である。
【0062】
本明細書における好ましい実施形態においては、助触媒はアルモキサン助触媒である。これらのアルモキサン助触媒は、任意のアルモキサン化合物またはアルモキサン化合物の混合物を含んでも良い。アルモキサンは、アルキルアルミニウム化合物、例えば、上述のものまたは市販品であるものに調節された水を添加することにより調製されても良い。この文脈においては、この明細書内で使用される「アルモキサン」という用語は、相当するトリアルキルアルミニウムの或る割合、一般的には、約10重量%、場合によっては50重量%までを含んでも良い市販のアルモキサンを含むことに注意されるべきである。例えば、市販のメチルアルモキサン(MAO)は、通常、凡そ10重量%のトリメチルアルミニウム(TMA)を含むが、変性メチルアルモキサン(MMAO)は、TMAおよびトリ−イソブチルアルミニウム(TIBA)の両方を含む。アルモキサンの調製において、水対アルミニウム化合物のモル比は、好ましくは、0.01:1〜2.0:1、さらに好ましくは0.02:1〜1.2:1、なおさらに好ましくは0.4:1〜1:1、特に0.5:1の範囲にある。これらのアルモキサン化合物は、線状、環状かごまたはこれらの混合物であっても良い。好ましいアルモキサンは、式R(RAlO)n(ここで、nは、約2〜50の数であり、RおよびRは、C〜Cアルキル基である)の線状アルモキサンである。最も好ましいアルモキサンは、TMAおよびTIBAの両方を含むメチルアルモキサン(MAO)または変性メチルアルモキサン(MMAO)である。
【0063】
その他の適当な助触媒としては、WO02/04119において開示されているものが挙げられる。
【0064】
本発明において使用される助触媒の量は、一般的にクロム、モリブデンまたはタングステンの原子当り、0.1〜20,000、好ましくは1〜2000の範囲における割合のアルミニウムまたはホウ素原子を与えることに十分な量である。
【0065】
本発明の触媒組成物は、また、少なくとも1つのその他の三量化触媒と混合されても良い。
【0066】
3つの必須触媒成分、(a)、(b)および(c)は、一緒に同時にまたは順番に、任意の順序で添加して活性触媒を用意することができる。3つの必須触媒成分は、任意の適当な溶媒の存在において接触させても良い。適当な溶媒は、当業者に知られている。適当な溶媒の例は、WO02/04119において開示されているものである。
【0067】
本発明の触媒組成物は、オレフィンモノマーの存在において(即ち、「in−situ」)または不存在において調製されても良い。触媒組成物の3つの必須成分は、オレフィンモノマーの不存在において完全に組み合わされても良く、またはオレフィンモノマーは、触媒成分と接触する前に、触媒成分と同時に、または触媒成分と接触させる方法における任意の時点で含まれても良い。
【0068】
3つの必須触媒成分は、担持材料上で担持されなくてもまたは担持されても良い。適当な担持材料の例は、WO02/04119において見出すことができる。
【0069】
本発明の三量化方法において使用するのに適当なオレフィンモノマーは、三量体に転換できる任意のオレフィンモノマーであることができる。適当なオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、場合によって分岐したC〜C20α−オレフィン、場合によって分岐したC〜C20内部オレフィン、場合によって分岐したC〜C20ビニリデンオレフィン、場合によって分岐したC〜C20シクロオレフィンおよび場合によって分岐したC〜C20ジエンならびに場合によって分岐したC〜C20官能化オレフィンが挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。適当なオレフィンモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペント−1−エン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、スチレン、2−ブテン、1−エチル−1−ヘキセン、シクロヘキセン、ノルボルネン等が挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。
【0070】
オレフィンモノマーの混合物も、本発明方法において使用することができる。
【0071】
本発明の三量化方法において使用するのに好ましいオレフィンモノマーは、プロピレンおよびエチレンである。特に好ましいものはエチレンである。
【0072】
本発明の触媒組成物および方法は、エチレンの1−ヘキセンへの三量化にとって特に有用である。
【0073】
本発明の三量化方法は、当業者に知られているまたは刊行物、例えば、WO02/04119において開示されている方法の条件の範囲下で行うことができる。
【0074】
三量化反応は、溶液相、スラリー相、気相またはバルク相において行うことができる。
【0075】
三量化が溶液またはスラリー相で行われる場合、三量化条件下で実質的に不活性である希釈剤または溶媒が使用されても良い。適当な希釈剤または溶媒は、脂肪族および芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素であり、三量化条件下で実質的に不活性であるオレフィン、例えば、WO02/04119において開示されているものが使用されても良い。
【0076】
本発明の三量化方法は、当業者に良く知られている方法の条件の広範囲の下で行われても良い。一般的に、温度は、−100℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは25℃〜100℃の範囲である。一般的に、圧力は、0〜100barg、好ましくは1〜50bargの範囲である。
【0077】
本発明の三量化方法は、当業者に良く知られている多数の反応器の任意の1つにおいて行われても良い。一般的に、本発明の三量化方法は、バッチ、半バッチまたは連続方式において行われる。
【0078】
生成物、反応体および触媒の分離は、当業者に知られている任意の方法、例えば、蒸留、ろ過、遠心分離、液/液分離、抽出等によって行うことができる。
【0079】
反応器、溶媒、分離方法等についての更なる詳細を含めて、適当な三量化反応条件に関する更なる詳細は、WO02/04119において見出すことができる。
【0080】
エチレンの1−ヘキセンへの接触三量化のための本発明の触媒組成物および方法の使用は、反応において形成される全てのその他の生成物以上に1−ヘキセンに対して極めて高い選択率を用意する。
【0081】
本発明の触媒組成物は、本発明のタイプの配位子を含まない(ただし、WO02/04119において開示されている、式−PN(CH)P−の配位子を含む)同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率よりも大きい、エチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率を与える。好ましくは、本発明の触媒組成物は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率よりも35%まで大きい、エチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率を与える。さらに好ましくは、本発明の触媒組成物は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率よりも少なくとも5%大きい、エチレンの三量化からの1−ヘキセンの全体の収率を与える。
【0082】
本発明の触媒組成物を使用してエチレンの三量化から製造される1−ヘキセンの量は、最終生成組成物の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%である。
【0083】
本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化に対する三量化選択率(即ち、生成組成物におけるC画分の量)は、少なくとも80重量%である。好ましくは、本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化に対する三量化選択率は、本発明のタイプの配位子を含まない(ただし、WO02/04119において開示されている、式−PN(CH)P−の配位子を含む)同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化からのC化合物の製造に対する三量化選択率よりも大きい。好ましくは、本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化に対する三量化選択率は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化に対する三量化選択率よりも40%まで大きい。また、本発明の触媒組成物は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化対する三量化選択率よりも少なくとも5%大きい、エチレンの三量化に対する三量化選択率を有することが好ましい。
【0084】
本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化におけるC10副生成物化合物の生成は、好ましくは、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物(例えば、Cr(III)(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル))を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化において生成されるC10副生成物化合物の水準の多くて60%である。さらに好ましくは、本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化におけるC10副生成物化合物の生成は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化において生成されるC10副生成物化合物の水準の多くて50%である。なおさらに好ましくは、本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化におけるC10副生成物化合物の生成は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化において生成されるC10副生成物化合物の水準の多くて30%である。特に好ましい実施形態においては、本発明の触媒組成物を使用するエチレンの三量化におけるC10副生成物化合物の生成は、本発明のタイプの配位子を含まない同等の触媒組成物を使用して、同じ反応条件下でのエチレンの三量化において生成されるC10副生成物化合物の水準の多くて20%である。
【0085】
本発明の触媒組成物および方法は、以下の非限定的実施例によって例示される。
【0086】
(実施例)
配位子成分およびクロム源を含む多数の組成物(組成物1、2および3)を、以下に記載される三量化反応において使用するために調製した。
【0087】
組成物1
CrClと1:1の比における(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)
【0088】
(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)配位子は、以下の方法により調製される。
窒素雰囲気下で、ペンタン(150ml)中のo−ブロモアニソール(0.54モル)の溶液に、n−ブチルリチウム溶液(337ml、0.54モル)を、一定に撹拌しながらゆっくりと添加する。混合物を終夜撹拌し、その後、撹拌を停止して懸濁液を静置する。溶液をデカントし、o−アニシルリチウムの固体残渣をペンタンで洗浄し、高真空下で乾燥する。
【0089】
0.20モルのo−アニシルリチウムをジエチルエーテル(400ml)に溶解し、−20℃に冷却する。0.1モルのエチルフェニルホスフィネートを、一定の撹拌下でこの溶液にゆっくりと添加する。次いで、溶液を25℃まで到達させ、その後、溶液を、次いで、2時間還流する。次いで、溶液を冷却し、その後、0.1M塩酸(150ml)を添加する。次いで、生成物を、50mlのジクロロメタンで三回抽出する。次いで、一緒にした有機層を混合し、硫酸マグネシウムを使用して乾燥する。次いで、溶媒を除去して油を得、次いで、過剰のアニソールを、真空下で加温(70℃)することにより除去する。最後の微量のアニソールを、得られた白色固体((2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィンオキシド)をジエチルエーテルで洗浄することにより除去し、クロロホルム/ジエチルエーテルから再結晶化する。
【0090】
40ミリモルの(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィンオキシドをテトラヒドロフラン(600ml)に添加し、それにn−ブチルリチウム溶液(25ml、40ミリモル)を、0℃で添加する。形成されたリチウム塩のオレンジ色の均質溶液を室温で1時間撹拌し、次いで、0℃に冷却する。この溶液に、1,2−エタンジイルビス−トシレート(20ミリモル)を添加する。次いで、溶液の温度を室温まで上げる。この溶液を終夜加熱還流するとスラリーが形成する。次いで、混合物を冷却し、反応混合物を水の添加により急冷する。次いで、生成物をジクロロメタンで抽出し(3x100ml)、硫酸マグネシウムで乾燥する。溶液の濃縮は、白色固体として、1,2−エタンジイル(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィンオキシド生成物を与える。
【0091】
テトラヒドロフラン(250ml)中の1,2−エタンジイル(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィンオキシド生成物の2ミリモル溶液に、水素化アルミニウム(AlH.1/3(CO、20ミリモル)を滴状添加する。次いで、溶液を完了まで(通常、終夜)還流し、その後、反応物をメタノール(10ml)の添加により急冷し、アルミニウム塩沈殿物を濾過する。次いで、濾液を濃縮する。メタノールの添加により、結晶性(2−メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(2−メトキシフェニル)(フェニル)生成物を与える。
【0092】
組成物2(比較)
CrClと1:1の比における(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)
【0093】
(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)配位子を、20mlのジエチルエーテル中の(2−メトキシフェニル)PNEt1.59g(5ミリモル)の溶液を最初に形成することにより調製した。この溶液に、ジエチルエーテル中の1MHCl溶液(10ミリモルHCl)10mlを不活性雰囲気下で室温で添加した。この様に形成された懸濁液を終夜撹拌した。ジエチルエーテルを真空下で生成物から除去し、20mlの乾燥トルエンを添加した。得られた溶液を濾過し、トルエンを真空下で濾液から除去して、白色固体の(2−メトキシフェニル)PCl生成物を得た。
【0094】
20mlの乾燥ジクロロメタン中のトリエチルアミン0.51g(5ミリモル)の溶液を(2−メトキシフェニル)PCl生成物に添加した。得られた混合物に、THF(2.5ミリモル)中の2MHNMe溶液1.25mlを添加し、終夜撹拌した。溶媒を、得られた溶液から真空下で除去し、20mlの乾燥トルエンを添加した。次いで、混合物を濾過した。トルエンを濾液から真空下で除去し、10mlのメタノールを添加した。懸濁液を今一度濾過し、固体白色の(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)生成物を単離した。
【0095】
組成物3(比較)
CrClと1:1の比における(2−メトキシフェニル)(フェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)
【0096】
(2−メトキシフェニル)(フェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)配位子を、最初に80mlのTHF中の0.42gのリチウム(60ミリモル)の懸濁液を形成し、これに9.66gの(2−メトキシフェニル)P(フェニル)(30ミリモル)を0℃でアルゴン雰囲気下で添加して調製した。混合物を4時間撹拌し、その後、メタノールの5mlアリコートを添加した。60mlのトルエンを混合物に添加し、その後、溶液を40mlの水で2回抽出した。次いで、抽出したトルエン溶液を凡そ20mlの容積に濃縮し、懸濁液を形成した。濃縮されたトルエン溶液を濾過し、4.6gのCCl(24ミリモル)をトルエン濾液に添加し、次いで、90℃で2時間撹拌した。反応から発生したHClガスをアルカリ浴において「捕捉」した。次いで、混合物を室温に冷却し、窒素でパージして、溶液において存在する残りのHClの全てを除去した。
【0097】
室温で、トリエチルアミンの5mlアリコートを濃縮されたトルエン溶液に添加し、2〜3分間放置し、その後、6mlの2MHNMe(12ミリモル)を一度に2〜3滴添加した。懸濁液を濾過し、20mlのトルエンで洗浄した。トルエン濾液およびトルエン洗浄画分を一緒にした。一緒にしたトルエン画分を蒸発乾固し、30mlのメタノールを添加した。メタノール溶液を、−35℃で終夜放置し、白色の(2−メトキシフェニル)(フェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)沈殿物が溶液において形成した。次いで、沈殿した配位子を単離した。
【0098】
沈殿した配位子は、2つの異性体、即ち、ラセミ異性体(配位子のRRおよび/またはSS光学異性体)およびメソ異性体(配位子のRS光学異性体)から成っていた。これら2つの異性体の比率は、2つの異なる異性体それぞれに相当する63.18および64.8ppmにおけるピークで、31PNMRにより決定された。(2−メトキシフェニル)(フェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)のサンプルは、実施例において使用した。これら2つのサンプルは、ラセミ異性体およびメソ異性体それぞれが57/43および92/8の重量比で構成されていた。
【0099】
エンデバー(Endeavor)手順
実施例1〜8は、以下の設備および手順を使用して行われた。「エンデバー」(Argonaut Technologies、Inc.の商標)は、8つのガラス内張り15ml反応器を含む複数反応器設備であり、加圧下(30barまで)で行われる反応のために使用された。当面の反応は、5〜10ml容量規模で行われた。
【0100】
エチレンの1−ヘキセンへの三量化のための手順は次の通りに行われた。
【0101】
反応器を、エチレンで、100℃および30barの圧力で三回パージした。次いで、反応器を、20〜30barのエチレン圧を維持しながら室温まで冷却するために放置した。エチレンの注入バルブを閉じ、反応器を終夜放置した。また、反応器内部のエチレン圧を終夜監視して、反応器の漏れをテストした。こうして反応器を、次の日の反応のために準備した。
【0102】
触媒プレミックス溶液を、使用される適当な触媒のために調製した。触媒プレミックス溶液は、10マイクロモルの組成物1、2または3を秤量し、7.4gの乾燥トルエンを添加し、1.26g(3ミリモル)の変性メチルアルモキサン(以降、MMAOと称する)溶液(ヘプタン中の6.4重量%のAl、Witco Co.から提供された)を添加して調製した。この様にして調製されたプレミックス溶液(10ml)は、合計で10マイクロモルのCrおよび3ミリモルのAl(1mMCr、0.3MAl)を含み、したがって、300:1のAl:Cr比であった。プレミックス溶液を窒素雰囲気下で、室温および大気圧下で終夜撹拌した。
【0103】
0.2M MMAOスカベンジャー溶液(5ml)を、3.9gのトルエンに1ミリモル(422mg)量のMMAO溶液(ヘプタン中の6.4重量%のAl)を添加して調製した。
【0104】
次いで、反応器を、適当量の0.2M MMAOスカベンジャー溶液および2.5mlの追加のトルエンで充填した。次いで、反応器を80℃に加熱し、エチレンで所望の反応圧まで加圧した。三量化反応を開始するために、プレミックス溶液のアリコートを反応器に注入した。次いで、いくらか残っている触媒プレミックス溶液の注入ラインをパージするためにさらに0.5mlのトルエンを注入した。
【0105】
反応を、エチレンの最大摂取が達成された時またはエチレンの注入バルブを閉鎖する設定時間後に停止し、室温まで冷却し、減圧し、反応器を開放した。本明細書において使用される「エチレンの最大摂取が達成された時」という用語は、反応において消費されたエチレンの量が、1−ヘキセンの特定の所望容量を生成するのに必要とされるエチレンの量に相当することを意味する。例えば、5mlの最終容量の1−ヘキセン(0.04モル)を必要とする場合、5mlの最終容量の1−ヘキセンを生成するために必要とされるエチレンのモル数は0.12モルであり、したがって、反応器へのエチレンの供給量は、いったん0.12モルのエチレンが供給されたら停止する。これは、「エンデバー」における反応器の容量が凡そ15mlであり、したがって、生成物および任意の残留出発物質の所望の最終容量が15ml未満であったので重要なことである。一般的に、5〜10mlの最終容量が望まれた。
【0106】
生成混合物を収集し、計量した。計量した量を、既知量のヘキシルベンゼン内部標準で、ガスクロマトグラフィー(GC)(50m CPSIL 5 CB y 0.25カラム、ヘリウムキャリアガス、FID検出器)を使用して分析した。
【実施例1】
【0107】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで8barに加圧した。組成物1を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を、エチレンの最大摂取が達成された時(161分)に停止した。
【0108】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例2】
【0109】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで20barに加圧した。組成物1を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を、エチレンの最大摂取が達成された時(96分)に停止した。
【0110】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例3】
【0111】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで8barに加圧した。組成物1を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を1時間後に停止した。
【0112】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例4】
【0113】
この実験においては、0.35mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで15barに加圧した。組成物1を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.35mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を1時間後に停止した。
【0114】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例5】
【0115】
(比較)
【0116】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで8barに加圧した。組成物2を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を、エチレンの最大摂取が達成された時(105分)に停止した。
【0117】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例6】
【0118】
(比較)
【0119】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで20barに加圧した。然しながら、反応器の供給速度を超える高い反応速度のために、反応中の圧力は7〜10barに過ぎなかった。組成物2を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を、エチレンの最大摂取が達成された時(96分)に停止した。
【0120】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例7】
【0121】
(比較)
【0122】
この実験においては、0.5mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで8barに加圧した。組成物2を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.5mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を1時間後に停止した。
【0123】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【実施例8】
【0124】
(比較)
【0125】
この実験においては、0.35mlの0.2M MMAOスカベンジャー溶液を含み、80℃に加熱された反応器を、エチレンで15barに加圧した。組成物2を含む触媒プレミックス溶液のアリコート0.35mlを反応器に注入して反応を開始した(500:1のAl:Cr比)。反応を1時間後に停止した。
【0126】
生成混合物をGCで分析した。結果は表1において見出すことができる。
【0127】
【表1】

【0128】
1リットルバッチ反応器手順
1リットルのバッチ反応器を、窒素雰囲気下で70℃に加熱し、Nで三回パージし、真空下で5分間排気した。反応器に、250mlの乾燥トルエンおよび1gのMAO溶液(トルエン中の5.11%のAl)の溶液を添加、少なくとも2時間、70℃で、反応器を漬込み(ピクルス)状態にした。
【0129】
トルエンおよびMAO(ピクルス)溶液を除去し、反応器を、反応器温度を70℃に維持しながら5分間排気した。次いで、反応器に250mlの乾燥トルエンを再度充填し、エチレンで反応圧力に加圧し、適当量のMAOスカベンジャーを注入した。次いで、溶液を、少なくとも5分間、70℃で撹拌した。
【0130】
触媒プレミックス溶液を、10マイクロモルの組成物1、2または3を秤量し、7.1gの乾燥トルエンを添加し、1.59g(3ミリモル)のMAO溶液(トルエン中の5.11重量%のAl)を添加して調製した。この様にして調製されたプレミックス溶液(10ml)は、合計で10マイクロモルのCrおよび3ミリモルのAl(1mMCr、0.3MAl)を含み、したがって、300:1のAl:Cr比に相当した。
【0131】
撹拌後、三量化反応を、加圧反応器中に触媒プレミックス溶液のアリコートを注入することにより開始した。次いで、反応器を80℃の反応温度まで加熱した。反応を、反応圧力を維持しながら既知量の時間進め、反応器を約30℃に急速冷却して(凡そ5分)停止した。反応器内容物を、1リットルバッチ反応器の底部から除去した。
【0132】
形成された生成混合物を収集し、計量した。計量した量を、ヘキシルベンゼン内部標準を使用するGC分析のために使用した。
【実施例9】
【0133】
組成物1を使用して調製した触媒プレミックス溶液のアリコート10mlを、スカベンジャーとして3ミリモルのMAO(1.59gのMAO溶液)を含む1リットル反応器に注入した。反応を80℃で、15barのエチレン環境下で行った。反応を5時間後に停止した。合計275リットルのエチレンが消費された。
【0134】
生成混合物をGCで分析した。結果は表2において見出すことができる。
【実施例10】
【0135】
(比較)
【0136】
組成物2を使用して調製した触媒プレミックス溶液のアリコート2mlを、スカベンジャーとして0.6ミリモルのMAO(317mgのMAO溶液)を含む1リットル反応器に注入した。反応を80℃で、15barのエチレン環境下で行った。205分後、追加の2mlの触媒プレミックス溶液を注入した。反応を4.5時間後に停止した。合計325リットルのエチレンが消費された。
【0137】
生成混合物をGCで分析した。結果は表2において見出すことができる。
【実施例11】
【0138】
(比較)
【0139】
57/43の混合物比において、組成物3を使用して調製した触媒プレミックス溶液のアリコート2mlを、スカベンジャーとして0.6ミリモルのMAO(317mgのMAO溶液)を含む1リットル反応器に注入した。反応を80℃で、15barのエチレン環境下で行った。反応を3時間後に停止した。合計250リットルのエチレンが消費された。
【0140】
生成混合物をGCで分析した。結果は表2において見出すことができる。
【実施例12】
【0141】
(比較)
【0142】
92/8の混合物比において、組成物3を使用して調製した触媒プレミックス溶液のアリコート2mlを、スカベンジャーとして0.6ミリモルのMAO(317mgのMAO溶液)を含む1リットル反応器に注入した。反応を80℃で、15barのエチレン環境下で行った。反応を4.5時間後に停止した。合計308リットルのエチレンが消費された。
【0143】
生成混合物をGCで分析した。結果は表2において見出すことができる。
【0144】
【表2】

【0145】
上記表1および2から、上記で定義された式(I)の配位子、特に、(メトキシフェニル)(フェニル)PCHCHP(メトキシフェニル)(フェニル)を含む本発明による触媒組成物の使用は、同等の反応条件下で、式(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)(WO02/04119の実施例において開示されている)を有する配位子または式(2−メトキシフェニル)(フェニル)PN(CH)P(メトキシフェニル)(フェニル)を有する配位子(そのいずれもが、上記で定義された式(I)に含まれない)を含む同等の触媒組成物を使用するよりも、C10副生成物の減少した収率をもたらすことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クロム、モリブデンまたはタングステン源、
b)一般式(I)の配位子;
(R)(R)P−X−P(R)(R) (I)
(式中、
Xは、二価有機架橋基であり、
およびRは、独立に、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ炭化水素基および置換へテロ炭化水素基から選択され(但し、RおよびRが環状芳香族基である場合、それらは、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない)、RおよびRは、独立に、場合によって置換された環状芳香族基から選択され、各RおよびRは、オルト位置の少なくとも1つに極性置換基を有している)および
c)助触媒
を含む、オレフィンモノマーの三量化に適した触媒組成物。
【請求項2】
二価有機架橋基Xが、架橋において2から6個の炭素原子を含むアルキレン基である請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
二価有機架橋基Xが、−CHCH−である請求項1または2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
およびRが、いずれのオルト位置においても極性置換基を含まない、場合によって置換されたフェニル基から独立に選択される請求項1から3のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項5】
およびRが、場合によって置換されたフェニル基から独立に選択され、極性置換基が、場合によって分岐したC〜C20アルコキシ基である請求項1から4のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項6】
およびRが、2−メトキシフェニル基である請求項1から5のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項7】
助触媒がメチルアルモキサンまたは変性メチルアルモキサンから選択される請求項1から6のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項8】
成分a)がクロム源である請求項1から7のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項9】
クロム源がCrClである請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのオレフィンモノマーを三量化反応条件下で、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒組成物と接触させることを含む、オレフィンモノマーの三量化方法。

【公表番号】特表2007−508128(P2007−508128A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530281(P2006−530281)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052469
【国際公開番号】WO2005/039758
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】