説明

オレフィン系樹脂組成物

【課題】 柔軟性、耐久性が改良されたオレフィン系樹脂組成物およびその用途を提供する。
【解決手段】 下記の要件(A−1)および要件(A−2)を満足する非晶性オレフィン系重合体(成分(A))1〜59重量%と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))1〜59重量%と、無機充填材(成分(C))40〜90重量%とを含有するオレフィン系樹脂組成物(但し、前記のオレフィン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)。
要件(A−1)エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られる。
要件(A−2)分子量分布(Mw/Mn)が3以下である。
また、上記のオレフィン系樹脂組成物からなる建装材または電線被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂組成物およびその用途に関するものである。詳しくは、柔軟性、耐久性が改良されたオレフィン系樹脂組成物およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁紙などの建装材、車両用カーペットバッキングや電線被覆材等には、オレフィン系樹脂と無機充填材とを含む組成物が用いられている。
例えば、特許第2586368号公報には、防火壁装材料であり、準不燃(2級)に合格する壁紙に用いられるポリオレフィン系樹脂として、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂と、水酸化マグネシウム単独または水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの混合物を含有する樹脂組成物が記載されている。
【0003】
また、特開平10−17724号公報には、カレンダー加工等のロール加工に好適で、壁紙をはじめとする各種製品の材料に有用なオレフィン系樹脂組成物として、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするオレフィン形樹脂と、金属水和物とを含有するオレフィン系樹脂組成物が記載されている。
【0004】
そして、特開10−314005号公報には、目付量を多くしてもカーペットが極端に硬く、折り曲げ不可能になることがなく、自動車室内への組み入れが容易で、リサイクル性をそこねることがない車両用成形カーペット裏打材として、プロピレンの含有量を50重量%以上にしてエチレンと共重合させてなる結晶化度が10%異化のαオレフィン樹脂と、特定のエチレンαオレフィン樹脂と、充填材とを配合してなう車両用カーペット裏打材が記載されている。
【0005】
さらに、特開2000−119452号公報には、耐摩耗性及び接着強度に優れるエチレン形樹脂組成物及びそれを用いる用途として、エチレン単位とカルボン酸無水物基を含有する単量体単位とからなるエチレン系共重合体および/またはエチレン単位とエポキシ基を含有する単量体単位とからなるエチレン系共重合体と、エチレン−エチレン系不飽和エステル共重合体またはそのケン化物と、無機充填剤を含有する樹脂組成物が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2586368号公報
【特許文献2】特開平10−17724号公報
【特許文献3】特開10−314005号公報
【特許文献4】特開2000−119452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の公報等に記載されている樹脂組成物を用いても、用途によっては柔軟性や、耐久性において、市場の要求を満足できないことがあり、さらなる改良が求められていた。
本発明の目的は、柔軟性、耐久性が改良されたオレフィン系樹脂組成物およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
下記の要件(A−1)および要件(A−2)を満足する非晶性オレフィン系重合体(成分(A))1〜59重量%と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))1〜59重量%と、無機充填材(成分(C))40〜90重量%とを含有するオレフィン系樹脂組成物に係るものである(但し、前記のオレフィン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)。
要件(A−1)エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られる。
要件(A−2)分子量分布(Mw/Mn)が3以下である。
また、本発明は、前記のオレフィン系樹脂組成物からなる建装材または電線被覆材に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性、耐久性が改良されたオレフィン系樹脂組成物およびその用途を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる非晶性オレフィン系重合体(成分(A))は、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られ(要件(A−1))、分子量分布(Mw/Mn)が3以下である(要件(A−2))非晶性オレフィン系重合体である。
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))に用いられる炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、鎖状オレフィンが挙げられ、鎖状オレフィンとしては直鎖状オレフィンまたは分岐状オレフィン等が挙げられる。
そして、直鎖状オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、分岐状オレフィンとしては、例えば、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。
成分(A)に用いられるエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンの組み合わせとしては、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ヘキセン、エチレン/1−ブテン/1−ヘキセン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−オクテン、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン、プロピレン/1−ブテン/1−ヘキセン等が挙げられる。
【0011】
本発明のオレフィン系樹脂組成物の柔軟性を更に高めるという観点から、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))として、好ましくは、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンの炭素原子数の合計が6以上である少なくとも2種以上のオレフィンを共重合して得られる非晶性オレフィン系重合体である。
【0012】
本発明のオレフィン系樹脂組成物の柔軟性を更に高めるという観点から、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))として、より好ましくは、プロピレン及び炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られる非晶性オレフィン系重合体である。
【0013】
さらに好ましくは、炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンと、プロピレンとを共重合して得られる非晶性プロピレン系重合体である。
【0014】
前記の非晶性プロピレン系重合体として、好ましくは、プロピレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ヘキセン共重合体、プロピレン/1−オクテン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン/1−ブテン/1−ヘキセン共重合体である。
【0015】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))は、エチレンまたは炭素原子数3〜20のα−オレフィン以外の単量体から誘導される構造体単位を含有していてもよく、該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物が挙げられる。
【0016】
上記環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテン等が挙げられる。
【0017】
上記ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0018】
上記ポリエン化合物としては、共役ポリエン化合物や非共役ポリエン化合物が挙げられる。共役ポリエン化合物としては、脂肪族共役ポリエン化合物や脂環族共役ポリエン化合物が挙げられ、非共役ポリエン化合物としては、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環族非共役ポリエン化合物や芳香族非共役ポリエン化合物が挙げられる。これらのポリエン化合物は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等を有していてもよい。
【0019】
上記の脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3―ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、2−メチル−1,3−デカジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−デカジエン等が挙げられる。
【0020】
上記の脂環族共役ポリエン化合物としては、例えば、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン、2−メチル−1,3−シクロヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロヘキサジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−フルオロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0021】
上記の脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,5,9−デカトリエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3.3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、3−メチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,6−ヘプタジエン、4,4−ジメチル−1,6−ヘプタジエン、4−エチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1.6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエン、6,10−ジメチル1,5,9−ウンデカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン8−メチル−1,7−ノナジエン、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン、8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエン等が挙げられる。
【0022】
上記の脂環族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、5−ビニル2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、2−エチル−2,5−ノルボルナジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0023】
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0024】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))が、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとエチレンとを共重合して得られる非晶性オレフィン系重合体である場合、成分(A)に含有されるエチレンから誘導される構造体単位の含有量は、オレフィン系樹脂組成物の柔軟性を高めるという観点から、好ましくは70モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以下である。
【0025】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))が、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとを共重合して得られる非晶性オレフィン系重合体である場合、成分(A)に含有されるプロピレンから誘導される構造体単位の含有量は、オレフィン系樹脂組成物の柔軟性を高めるという観点から、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、さらに一層好ましくは80モル%以上であり、さらになお一層好ましくは90モル%以上である。
【0026】
また、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))が、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとを共重合して得られる非晶性オレフィン系重合体である場合、成分(A)に含有されるプロピレンから誘導される構造体単位の含有量は、オレフィン系樹脂組成物の低温での柔軟性を高めるという観点から、好ましくは99.9モル%以下であり、より好ましくは99モル%以下であり、さらに好ましくは98.5モル%以下であり、さらに一層好ましくは98モル%以下である。
【0027】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))の非晶性は、示差走査熱量測定(DSC)によって、−100〜200℃の温度範囲に、観測される結晶融解ピークとその結晶融解熱量、および、結晶化ピークとその結晶化熱量によって判断される。
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))として、好ましくは、柔軟性を高めるという観点から、示差走査熱量測定(DSC)によって、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークおよび結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されない非晶性オレフィン系重合体である。
【0028】
また、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))として、好ましくは、本発明のオレフィン系樹脂組成物の柔軟性を高めるという観点から、
[y/(x+y)]≧0.3
の関係を充足する非晶性オレフィン系重合体である。より好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.5
の関係を充足する非晶性オレフィン系重合体である。さらに好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.8
の関係を充足する非晶性オレフィン系重合体である。さらに一層好ましくは、
[y/(x+y)]=1
の関係を充足する非晶性オレフィン系重合体である。
なお、上記の関係式において、xは非晶性オレフィン系重合体(成分(A))に含有されるエチレンから誘導される構造体単位の含有量(モル%)を表し、yは成分(A)に含有される炭素原子数4〜20のα−オレフィンから誘導される構造体単位の含有量(モル%)を表す。
【0029】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))の極限粘度[η]は、本発明のオレフィン系樹脂組成物の強度を高めるという観点から、好ましくは0.1dl/g以上であり、より好ましくは0.3dl/g以上であり、さらに好ましくは0.5dl/g以上であり、さらに一層好ましくは0.7dl/g以上である。
【0030】
また、上記の極限粘度[η]は、本発明のオレフィン系樹脂組成物を成型加工するときの加工性を高めるという観点から、好ましくは10dl/g以下であり、より好ましくは7dl/g以下であり、さらに好ましくは5dl/g以下であり、さらに一層好ましくは4dl/g以下である。
なお、上記の極限粘度[η]は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
【0031】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明のオレフィン系樹脂組成物を粘着した後に剥離するときのべたつきを抑止するという観点から、3以下である(要件(A−2))。なお、上記の分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0032】
非晶性オレフィン系重合体(成分(A))の製造方法としては、公知のチーグラー・ナッタ型触媒または公知のシングルサイト触媒を用いて製造する方法が挙げられる。耐熱性をより高めるという観点から、好ましくは公知のシングルサイト触媒を用いて製造する方法であり、シングルサイト触媒としては、例えば、メタロセン系触媒や非メタロセン系触媒が挙げられる。
【0033】
メタロセン系触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒が挙げられる。
【0034】
非メタロセン系触媒としては、例えば、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開表11−71420号公報等に記載の非メタロセン系触媒が挙げられる。
【0035】
シングルサイト触媒の中でも、容易に入手できるという観点から、好ましくはメタロセン系触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体を用いるメタロセン系触媒である。また、メタロセン系触媒を用いた製造方法としては、例えば、欧州特許出願公開第1,211,287号明細書に記載の方法が挙げられる。
【0036】
本発明で用いられる結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))は、アイソタクチックシークエンス構造またはシンジオタクチックシークエンス構造を主として有する結晶性のポリプロピレン系樹脂であり、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる無機充填材(成分(C))は、通常、用いられる無機充填材であり、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸カルシウム等が挙げられる。また、ウォラストナイト等の繊維型フィラーでもよい。これらの中でも炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機充填材が好ましい。
【0038】
これらの中でも、オレフィン形樹脂組成物が難燃性の壁紙または電線被覆材に用いられる場合、無機充填材(成分(C))としてより好ましくは水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムであり、オレフィン形樹脂組成物が床材に用いられる場合、無機充填材(成分(C))としてより好ましくは炭酸カルシウムである。
【0039】
なお、樹脂成分への分散性を向上させるため、機械的強度を向上させるため、耐摩耗性、耐炭酸ガス白化性、耐湿性、耐油性、耐化学薬品性、加工性等を付与するために、無機充填材(成分(C))の表面を、表面処理剤で処理してもよい。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸またはその金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミニウムカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤が挙げられる。
【0040】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、本発明で用いられる非晶性オレフィン系重合体(成分(A))および結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))以外の公知の樹脂やエラストマーを用いてもよい。
【0041】
上記の公知の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ−4−メチル−ペンテン−1系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0042】
上記のエラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、天然ゴム、ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ゴム、ポリアクリロニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、部分水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコンゴム、ウレタンゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0043】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、公知の方法によって、架橋を施してもよく、架橋としては、例えば、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋、電子線架橋等が挙げられる。
【0044】
架橋剤としては、硫黄、フェノール樹脂、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、p−キノンジオキシムおよび、ビスマレイミド系の架橋剤等が挙げられる。
架橋剤には、架橋速度を調節するために、架橋促進剤を組合せて用いてもよく、架橋促進剤としては、例えば、鉛丹やジベンゾチアゾイルサルファイドのような酸化剤が挙げられる。
【0045】
また、架橋剤には、金属酸化物やステアリン酸のような分散剤を組合せて用いてもよく、前記の金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは、酸化亜鉛、酸化マグネシウムである。
そして、本発明のオレフィン系樹脂組成物には、架橋剤の存在下で動的架橋を施してもよい。
【0046】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂等を組合せて用いてもよい。
【0047】
上記ロジン系樹脂としては、例えば、天然ロジン、重合ロジン、部分水添ロジン、完全水添ロジン、これらロジンのエステル化物(例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、エチレングリコールエステルやメチルエステル)、ロジン誘導体(例えば、不均化ロジン、フマール化ロジンやライム化ロジン)等が挙げられる。
【0048】
上記ポリテルペン系樹脂としては、例えば、環状テルペン(例えば、α−ピネン、β−ピネンやジペンテン)の単独重合体、上記環状テルペンの共重合体、上記環状テルペンとフェノール系化合物(フェノールやビスフェノール)との共重合体であるテルペン−フェノール系樹脂(例えば、α−ピネン−フェノール樹脂、ジペンテン−フェノール樹脂やテルペン−ビスフェノール樹脂)、上記環状テルペンと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。
【0049】
好ましいポリテルペン系樹脂としては、例えば、YSレジンTO―105やクリアロン(以上、ヤスハラケミカル社製の商品名)、アルコン、エステルガムやペンセル(以上、荒川化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0050】
上記合成石油樹脂としては、例えば、ナフサ分解油のC5留分、C6〜C11留分、その他のオレフィン系留分の単独重合体や共重合体、これらの単独重合体や共重合体の水添物である脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂肪族−脂環族共重合樹脂等が挙げられる。
さらに、合成石油樹脂としては、例えば、上記のナフサ分解油と上記のテルペンとの共重合体や、該共重合体の水添物である共重合系石油樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記のナフサ分解油のC5留分として、好ましくは、メチルブテン類、ペンテン類、ジシクロペンタジエン等が挙げられ、メチルブテン類としては、例えば、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン等が挙げられ、ペンテン類としては、例えば、1−ペンテン、2−ペンテン等が挙げられる。
【0052】
また、C6〜C11留分として、好ましくは、インデン、スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、メチルスチレン(例えば、α−メチルスチレンやβ−メチルスチレン)、メチルインデン、エチルインデン、ビニルキシレン、プロペニルベンゼン等が挙げられる。
そして、その他オレフィン系留分として、好ましくは、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、オクタジエン等が挙げられる。
【0053】
上記フェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、アルキルフェノールとアセチレンとの縮合によって得られるアルキルフェノール−アセチレン樹脂、これら樹脂の変性物等が挙げられる。ここで、上記のフェノール系樹脂としては、フェノールを酸触媒でメチロール化したノボラック型樹脂や、アルカリ触媒でメチロール化したレゾール型樹脂のいずれであってもよい。
【0054】
上記キシレン系樹脂としては、例えば、m−キシレンとホルムアルデヒドとからなるキシレン−ホルムアルデヒド樹脂や、これに第3成分を添加して反応させた変性樹脂等が挙げられる。
【0055】
上記スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの低分子量品、α−メチルスチレンとビニルトルエンとの共重合樹脂、スチレンとアクリロニトリルとインデンとの共重合樹脂等が挙げられる。
【0056】
上記イソプレン系樹脂としては、例えば、イソプレンの二量化物であるC10脂環式化合物とC10鎖状化合物とを共重合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0057】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、安定剤、添加剤、充填剤、鉱物油系軟化剤等を用いてもよい。
安定剤としては、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0058】
添加剤としては、例えば、帯電防止剤、スリップ剤、内部剥離剤、着色剤、分散剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、アラミド繊維、硫酸バリウム、ガラスフレーク、フッ素樹脂等が挙げられる。
鉱物油系軟化剤としては、例えば、ナフテン油、パラフィン系鉱物油等が挙げられる。
【0059】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤を用いてもよい。難燃剤としては、例えば、りん化合物、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等が挙げられる。
りん化合物としては、例えば、ポリりん酸アンモニウム、エチレンビストリス(2−シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、及び、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0060】
塩素系難燃剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等が挙げられる。
臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモジペンタエリスリトール等が挙げられる。
これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0061】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、発泡剤を用いて、本発明のオレフィン系樹脂組成物を発泡体に成形してもよい。発泡剤としては、例えば、無機発泡剤、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルフォニルヒドラジド等が挙げられる。
無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
【0062】
ニトロソ化合物としては、例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、アゾカルボナミド、アゾイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0063】
スルフォニルヒドラジドとしては、例えば、ベンゼンスルフォニルヒドラジン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、トルエンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド誘導体等が挙げられる。
また、上記の発泡剤には、発泡助剤を組合せて用いてもよく、発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、尿素、尿素誘導体等が挙げられる。
【0064】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、高周波加工助材を用いてもよく、高周波加工助材としては、極性ポリマーが挙げられ、例えば、エチレンと少なくとも1種の極性モノマーとの共重合体が挙げられる。
極性モノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸のモノエス、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、飽和カルボン酸のビニルエステル、これらの酸やエステルのアイオノマー等が挙げられる。
【0065】
モノカルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸およびクロトン酸等が挙げられ、ジカルボン酸としてはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、メタクリル酸エステルとしてはメチルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸エステルとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられ、飽和カルボン酸のビニルエステルとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0066】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))1〜59重量%と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))1〜59重量%と、無機充填材(成分(C))40〜90重量%とを含有するオレフィン系樹脂組成物である。但し、前記のオレフィン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする。
【0067】
好ましくは、非晶性オレフィン系重合体(成分(A))5〜49重量%、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))1〜45重量%、無機充填材(成分(C))50〜80重量%を含有するオレフィン系樹脂組成物である。
より好ましくは、成分(A)10〜45重量%、成分(B)5〜40重量%、成分(C)50〜70重量%を含有するオレフィン系樹脂組成物である。
【0068】
成分(A)の含有量が過少であると得られる組成物の耐久性、柔軟性が劣ることがあり、成分(A)の含有量が過多であると得られる組成物の流動性が劣ることがある。
成分(B)の含有量が過少であると得られる組成物の耐熱性、加工性が劣ることがあり、成分(B)の含有量が過多であると得られる組成物の柔軟性が劣ることがある。
成分(C)の含有量が過少であると得られる組成物の重量感、難燃性が劣ることがあり、成分(C)の含有量が過多であると得られる組成物の柔軟性が劣ることがある。
【0069】
本発明のオレフィン系樹脂組成物の製造方法としては、本発明のオレフィン系樹脂組成物に用いられる非晶性オレフィン系重合体(成分(A))と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))と、無機充填材(成分(C))、および、必要に応じて用いられるその他の成分をブレンドする方法が挙げられる。
【0070】
本発明のオレフィン系樹脂組成物に用いられる成分をブレンドする方法としては、例えば、通常の混練り装置で混練する方法が挙げられる。混練り装置としては、例えば、ラバーミル、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸または二軸押出機等が挙げられる。混練り装置は、密閉式および開放式のいずれの形式であってもよく、好ましくは不活性ガスによって置換し得る密閉式装置である。
【0071】
混練り温度は、通常120〜250℃であり、好ましくは140〜240℃である。混練り時間は、用いられる成分の種類や量、または、混練り装置の種類に応じて、適宜、決定すればよい。例えば、加圧ニーダーやバンバリーミキサー等の混練り装置を使用する場合、通常、約3〜10分程度である。
【0072】
また、本発明のオレフィン系樹脂組成物に用いられる成分をブレンドする方法としては、各成分を一括して混練する方法や、各成分の一部を混練りした後、残部を添加して混練りを継続する多段分割混練り法が挙げられる。
【0073】
本発明のオレフィン系樹脂組成物からなる成形体としては、例えば、単層シート、多層積層体、発泡体等が挙げられ、その用途としては、例えば、壁紙、床材、内装材、建築材料、電線被覆材等が挙げられる。
【0074】
本発明のオレフィン系樹脂組成物を用いた壁紙は、カレンダー成形法、押出し成型法等によって、本発明の組成物と難燃紙等とを貼り合わせて作成される。このとき、本発明の組成物を発泡させることによって、さらに良好な風合いを持つ壁紙が得られる。さらに、表面コート処理や表層に他の樹脂を積層することによって、耐傷つき性や汚れ防止性に優れる壁紙が得られる。
【0075】
本発明のオレフィン系樹脂組成物を用いた床タイルや長尺床シートにおいて、表面コートや表層に他の樹脂を積層することによって、耐傷つき性や汚れ防止性に優れる床タイルや長尺床シートが得られる。
【0076】
本発明のオレフィン系樹脂組成物を用いたタイルカーペット、自動車用カーペット等の床材は、本発明の樹脂組成物とカーペットとを貼合することによって製造される。
【0077】
本発明のオレフィン系樹脂組成物を用いた電線被覆材は、電線の絶縁層として用いられる。本発明の樹脂組成物にシリコーン系の難燃剤を配合することによって、より高い難燃性を有する電線被覆材が得られる。
【0078】
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、巾木材、天井材等の建築用内装材(建装材)としてより好適に用いられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例、および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の物性測定は、以下の方法で行った。
(1)非晶性オレフィン系重合体の単量体組成(単位:モル%)
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレン単位由来のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテン単位由来のメチル炭素スペクトルとの強度比からプロピレン単位と1−ブテン単位の組成比を算出した。
【0080】
(2)極限粘度([η]、単位:dl/g)
135℃において、ウベローデ粘度計を用いて行った。テトラリン単位体積あたりの非晶性オレフィン系重合体の濃度cが、0.6、1.0、1.5mg/mlである非晶性オレフィン系重合体のテトラリン溶液を調整し、135℃における極限粘度を測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度での比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度[η]として求めた。
【0081】
(3)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により、下記の条件で測定を行った。
装置 :Waters社製 150C ALC/GPC
カラム :昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度 :140℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/min
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器 :示差屈折
【0082】
(4)結晶融解ピーク(単位:℃)、結晶融解熱量(単位:J/g)、結晶化ピーク(単位:℃)、結晶化熱量(単位:J/g)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い以下の条件で測定した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。この(ii)で観察されるピークが結晶化ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の結晶化ピークの有無を確認した。
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。この(iii)で観察されるピークが結晶の融解ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の融解ピークの有無を確認した。
【0083】
(5)硬度(Shore−D)
温度23℃、湿度55%の条件下で、JIS K6253に準じたショアーD法により、硬度を測定した。
【0084】
(6)引張試験(応力、単位:MPa、伸び、単位:%)
JIS K6251に規定された方法に従い、ダンベル形状3号形により引張破断応力および伸びを測定した。
【0085】
(7)傷深さ(単位:μ)
以下の手順で試験した。
(i)厚さ2mmのプレスシートの表面を、新東科学製の商品名がトライボギアなる表面性測定機の、荷重200gまたは500gをかけた引掻針で引掻いて傷を付けた。
(ii)傷の深さを、東京精密製の商品名がサーフコムなる接触式の表面粗さ計で、μmオーダーの尺度で測定した。
【0086】
<実施例1>
[1]非晶性オレフィン系重合体の製造
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、プロピレンと1−ブテンとを、分子量調節として水素を用い、以下の方法で連続的に共重合させて、本発明の非晶性α−オレフィン系重合体にあたるプロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部から、重合溶媒としてのヘキサンを100L/時間の供給速度で、プロピレンを24.00Kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81Kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、反応混合物を連続的に抜き出した。
重合器の下部から、重合触媒の成分として、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマー及び水洗浄し、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。該共重合体の生成速度は7.10Kg/時間であった。
得られたプロピレン−1−ブテン共重合体の物性評価結果を表1に示した。
概共重合体中のエチレン単位の含有量(モル%)をx、炭素原子数4〜20のα-オレフィン単位の含有量(モル%)をyとすると、x=0、y=4であり、[y/(x+y)]=1となるので、(イ)の非晶性オレフィン系重合体の要件を満足する。
【0087】
【表1】

【0088】
[2]組成物の製造
表2に示した組成物をラボプラストミルで230℃、60回転/分、30分混練し、オレフィン系樹脂組成物を得た。これらの試料について硬度、引張破断強度、伸び及び傷深さを測定しその結果を表2に示した。
【0089】
【表2】

PP:結晶性ポリプロピレン(住友化学工業(株)製 ノーブレンS131)
SEBS:水添スチレン系熱可塑性エラストマー (旭化成(株)製タフテックH1052)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(A−1)および要件(A−2)を満足する非晶性オレフィン系重合体(成分(A))1〜59重量%と、結晶性ポリプロピレン系樹脂(成分(B))1〜59重量%と、無機充填材(成分(C))40〜90重量%とを含有するオレフィン系樹脂組成物(但し、前記オレフィン系樹脂組成物の全重量を100重量%とする)。
要件(A−1)エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られる。
要件(A−2)分子量分布(Mw/Mn)が3以下である。
【請求項2】
無機充填材(成分(C))が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機充填材である請求項1に記載のオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂組成物からなる建装材。
【請求項4】
請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂組成物からなる電線被覆材。

【公開番号】特開2006−83327(P2006−83327A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271230(P2004−271230)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】