説明

オレフィン系重合体の製造方法およびオレフィン系重合体

【課題】効率的な連続法によりオレフィン系重合体から重合触媒残渣を除去する方法を有するオレフィン系重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の(I)〜(II)の工程を有するオレフィン系重合体の製造方法。
(I)炭化水素溶媒中で1種類以上のオレフィン系単量体を重合する工程。
(II)撹拌装置にオレフィン系重合体を含む重合反応液、水、アルカリ性物質を連続的に導入し、攪拌装置内における液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が下記の式(1)を満たすように攪拌し、攪拌装置から連続的に液を抜き出す工程。
(III)水相を除去する工程。
(IV)オレフィン系重合体を取り出す工程。
P × t2 < 250 (1)
(式中、Pは、攪拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力(kW/m3)、を表し、tは、攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間(分)を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体の製造方法およびオレフィン系重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体の製造では、溶液中でオレフィンと重合触媒により重合する溶液重合法が用いられている。重合反応液から重合体を取り出す際に、重合反応液中の触媒残渣が重合体に混入すると、重合体の特性が低下するため、重合反応液から重合触媒残渣を除去することが行われている。例えば特許文献1においては、重合反応液に水及びアルカリ性物質混合溶液を添加して十分に混合し、その後混合液を静置して水相と炭化水素溶媒相とを分離し、分液により相分離した液から水相を除去することによって、重合触媒残渣を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の方法は、バッチ法による処理方法であり、より効率的に重合触媒残渣を除去する方法が求められていた。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、より効率的な連続法によりオレフィン系重合体から重合触媒残渣を除去する方法を有するオレフィン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、下記の(I)〜(IV)の工程を有するオレフィン系重合体の製造方法に係るものである。
(I)有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下において、炭化水素溶媒中で1種類以上のオレフィン系単量体を重合する工程。
(II)撹拌装置にオレフィン系重合体を含む重合反応液、水、アルカリ性物質を連続的に導入し、攪拌装置内における液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が下記の式(1)を満たすように攪拌し、攪拌装置から連続的に液を抜き出す工程。
(III)攪拌装置から抜き出した液を、炭化水素溶媒相と水相とに分離させ、相分離した液から水相を除去する工程。
(IV)炭化水素溶媒相から、炭化水素溶媒を除去し、オレフィン系重合体を取り出す工程。
P × t2 < 250 (1)
(式中、Pは攪拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力(kW/m3)を表し、tは攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間(分)を表す。)
【0007】
本発明の第2は、前記の製造方法により得られるオレフィン系重合体に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より効率的な連続法によりオレフィン系重合体から重合触媒残渣を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、下記の(I)〜(II)の工程を有する。
(I)有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下において、炭化水素溶媒中で1種類以上のオレフィン系単量体を重合する工程。
(II)撹拌装置にオレフィン系重合体を含む重合反応液、水、アルカリ性物質を連続的に導入し、攪拌装置内における液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が下記の式(1)を満たすように攪拌し、攪拌装置から連続的に液を抜き出す工程。
(III)攪拌装置から抜き出した液を、炭化水素溶媒相と水相とに分離させ、相分離した液から水相を除去する工程。
(IV)炭化水素溶媒相から、炭化水素溶媒を除去し、オレフィン系重合体を取り出す工程。
P × t2 < 250 (1)
(式中、Pは攪拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力(kW/m3)を表し、tは攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間(分)を表す。)
【0010】
本発明におけるオレフィン系単量体としては、α−オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素、ビニル脂環式炭化水素、環状オレフィンをあげることができる。これらは1種類以上用いられる。
【0011】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−オクテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘプテン、3,5−ジメチル−1−オクテン、3,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,6−ジメチル−1−オクテン、3,7−ジメチル−1−オクテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,3,4−トリメチル−1−オクテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,4,4−トリメチル−1−オクテンをあげることができる。
【0012】
α−オレフィンの炭素原子数は、通常2〜20である。
【0013】
アルケニル芳香族炭化水素としては、スチレン、2−フェニルプロピレン、2−フェニルブテン、3−フェニルプロピレンなどのアルケニルベンゼン;p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、p−第2級ブチルスチレンなどのアルキルスチレン;1−ビニルナフタレンなどのアルケニルナフタレンをあげることができる。
【0014】
アルケニル芳香族炭化水素の炭素原子数は、通常8〜27である。
【0015】
ビニル脂環式炭化水素とは、ビニル基を含有する脂環式炭化水素化合物を指す。ビニル脂環式炭化水素としては、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロペンタン、アリルシクロオクタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1−ビニルアダマンタン、4−ビニル−1−シクロヘキセンをあげることができる。
【0016】
環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテンなどの単環系環状オレフィン;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどの二環系環状オレフィン;1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン;トリシクロウンデセン、トリシクロデセンなどの三環系環状オレフィン;テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセンなどの四環系環状オレフィン;ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセンなどの五環系環状オレフィン;5−アセチルノルボルネン、5−アセチルオキシノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセンなどの置換環状オレフィンをあげることができる。
【0017】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、オレフィン系単量体が炭素原子数1〜20のα−オレフィンのうちの少なくとも1つを含んでいる場合において好適である。
【0018】
有機アルミニウム化合物を含有する触媒としては、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とを含有する触媒をあげることができる。遷移金属化合物としては、メタロセン系化合物をあげることができる。メタロセン系化合物として好適な化合物として、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムからなる原子群より選択される少なくとも1個の原子と、少なくとも1個のシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基とを含有する化合物をあげることができる。
【0019】
シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基としては、η5−シクロペンタジエニル基、η5−メチルシクロペンタジエニル基、η5−tert−ブチルシクロペンタジエニル基、η5−ジメチルシクロペンタジエニル基、η5−テトラメチルシクロペンタジエニル基などのη5−(置換)シクロペンタジエニル基;η5−インデニル基、η5−メチルインデニル基などのη5−(置換)インデニル基;η5−フルオレニル基、η5−メチルフルオレニル基、などのη5−(置換)フルオレニル基をあげることができる。
【0020】
チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムからなる原子群より選択される少なくとも1個の原子と、少なくとも1個のシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基とを含有する化合物としては、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドをあげることができる。
【0021】
前記の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物;ジメチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライドなどのハロゲン原子含有アルキルアルミニウム化合物;メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサンなどのアルミノキサン化合物をあげることができる。これらは1種類以上用いられる。
【0022】
本発明で使用される触媒系は、ホウ素化合物を含有していてもよい。ホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができる。
【0023】
有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子と遷移金属化合物中の遷移金属原子とのモル比は通常0.1以上10000以下である。ホウ素化合物を使用する場合、ホウ素化合物のホウ素原子とメタロセン系金属化合物の遷移金属原子とのモル比は通常100以下である。
【0024】
オレフィン系単量体の重合は、炭化水素溶媒中で行う。炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などをあげることができる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
溶液中における各触媒成分の濃度は、遷移金属化合物が、通常0.01μmol/g〜500μmol/gであり、有機アルミニウム化合物が、Al原子換算で、通常0.01μmol/g〜10000μmol/gである。
【0026】
オレフィン系単量体を重合する工程において、重合反応の温度は、通常50℃〜200℃である。重合時間は、通常5秒〜72時間である。
【0027】
重合反応後の重合反応液中におけるオレフィン系重合体の濃度は、好ましくは2重量%〜40重量%である。
【0028】
重合反応後、撹拌装置にオレフィン系重合体を含む重合反応液、水、アルカリ性物質を連続的に導入し、攪拌装置内における液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が下記の式(1)を満たすように攪拌し、攪拌装置から連続的に液を抜き出す。
P × t2 < 250 (1)
(式中、Pは攪拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力(kW/m3)を表し、tは攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間(分)を表す。)
【0029】
攪拌装置は、攪拌翼を備えた攪拌槽が好適に用いられる。攪拌翼としては、傾斜パドル翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼など、公知のものを用いることができる。
【0030】
撹拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力Pは、好ましくは0.1kW/m3〜2.0kW/m3である。また、攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間tは0.1分〜20分である。
【0031】
アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどをあげることができ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0032】
攪拌装置に導入される水とアルカリ性物質との合計量は、重合反応液100重量部に対して、攪拌後の液から水相をより容易に除去できるようにするため、好ましくは10重量部以上であり、また、後処理を容易にするため、好ましくは100重量部以下である。
【0033】
アルカリ性物質は、予め水に溶解させた状態で攪拌装置に導入してもよい。また、攪拌装置に導入する前に、水、アルカリ性物質、重合反応液を配管内などで予備的に混合してもよい。
【0034】
攪拌は、攪拌装置内における重合反応液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が上記式(1)を満たすように行われる。P×t2の値が250よりも大きいと、水相と炭化水素溶媒相の分離が困難になる。
【0035】
攪拌装置内における液の温度は、通常は20℃以上である。また、水相と炭化水素溶媒相の分離を容易にするため、好ましくは60℃以下である。
【0036】
攪拌後の水相のpHは、重合触媒成分に由来する金属分残渣を除去する効率を高めるため、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上である。また、経済性を高めるため、好ましくは13.5以下である。
【0037】
アルカリ性物質の量は、上記のpHを達成するように選択される。通常は、水とアルカリ性物質との合計量を100重量%として、0.01重量%以上3重量%以下である。
【0038】
攪拌後の液は、炭化水素溶媒相と水相とに分離させ、相分離した液から水相を除去する。炭化水素溶媒相と水相とに分離させ、相分離した液から水相を除去する好ましい方法として、攪拌後の液を分液ドラムなどの別の槽に連続的に移送し、当該槽に滞留させて水相と炭化水素溶媒相とに分離し、水相及び炭化水素溶媒相をそれぞれ連続的に分液ドラムから抜き出す方法をあげることができる。当該槽における平均滞留時間は、好ましくは0.1〜5.0時間であり、より好ましくは0.5時間〜2.0時間である。
【0039】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、オレフィン系重合体に残る触媒残渣の量をさらに低減させるために、水相と炭化水素溶媒相とを分離し、相分離した液から水相を除去した後において、炭化水素溶媒相を水洗する工程を有していてもよい。炭化水素溶媒相を水洗する方法としては、炭化水素溶媒相に水を添加し、攪拌し、水相と炭化水素溶媒相を分離し、相分離した液から水相を除去する方法をあげることができる。
【0040】
相分離した液から水相を除去した後、炭化水素溶媒相から炭化水素溶媒を除去し、オレフィン系重合体を取り出す。炭化水素溶媒相から炭化水素溶媒を除去し、オレフィン系重合体を取り出す方法としては、真空乾燥機などにより炭化水素溶媒を除去する方法や、アセトンなどの、オレフィン系重合体の貧溶媒中に炭化水素溶媒相を投入し、オレフィン系重合体を析出させ、回収する方法など、公知の方法を用いることができる。
【0041】
本発明の製造方法によれば、連続法によりオレフィン系重合体から重合触媒残渣を効率よく除去することができる。また、水相を除去する際、炭化水素溶媒相と水相の分離性が良好となる。
【0042】
本発明の製造方法により得られたオレフィン系重合体は、重合触媒残渣に伴う特性低下が大幅に抑制されており、各種分野における材料等として好適に用いることができる。たとえば、本発明により得られた環状オレフィン系重合体は、光ディスク基板、カメラ用レンズなどの光学材料の分野、ブリスターバック用シートなどの包装材料の分野に好適に用いられる。
【実施例】
【0043】
実施例1
ヘキサン溶媒中において、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを触媒として、エチレン、ビニルシクロヘキサンを重合し、オレフィン系重合体を得た。前記重合体を含む重合反応液に、当該重合反応液を100重量部として水酸化ナトリウム0.4重量部および水20重量部を添加し、水酸化ナトリウムおよび水が添加された重合反応液を、攪拌翼を備えた攪拌槽に連続的に導入した。撹拌槽内において、攪拌動力を0.9kW/m3、攪拌装置内における平均滞留時間を15分、液温を40℃として攪拌混合した。ついで、攪拌槽内から液を連続的に抜き出し、抜き出し後の液を分液ドラムに連続的に導入し、分液ドラム内での平均滞留時間が0.8時間となるようにして水相と炭化水素溶媒相とを分離し、水相及び炭化水素溶媒相をそれぞれ連続的に抜き出すことにより、水相を除去した。分離後の水相のpHは13.1であった。分離した水相の一部を採取し、観察することにより、水相側に炭化水素溶媒の混入が生じないかどうかを確認した。次に、炭化水素溶媒相に水20重量部を添加し、上記と同様の方法で攪拌混合し、水相と炭化水素溶媒相とを分離し、相分離した液から水相を除去した。得られた炭化水素溶媒相をアセトン中に滴下し、析出した重合体を回収し、減圧乾燥した。得られた重合体中のAl原子の含有量(ppm)をIPC発光分析法により測定した。結果を表1に示す。重合体中の重合触媒残渣の残存量は低減されており、炭化水素溶媒相と水相の分離も良好であった。
【0044】
比較例1
攪拌動力を2.9kW/m3とした以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系重合体を得た。水相における炭化水素溶媒相の混入の観察結果、及びAl原子の含有量(ppm)をIPC発光分析法により測定した結果を表1に示す。水相側への炭化水素溶媒相の混入が生じており、水相は油滴が分散して白濁していた。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(I)〜(IV)の工程を有するオレフィン系重合体の製造方法。
(I)有機アルミニウム化合物を含有する触媒系の存在下において、炭化水素溶媒中で1種類以上のオレフィン系単量体を重合する工程。
(II)撹拌装置にオレフィン系重合体を含む重合反応液、水、アルカリ性物質を連続的に導入し、攪拌装置内における液の単位体積当たりの攪拌動力、平均滞留時間が下記の式(1)を満たすように攪拌し、攪拌装置から連続的に液を抜き出す工程。
(III)攪拌装置から抜き出した液を、炭化水素溶媒相と水相とに分離させ、相分離した液から水相を除去する工程。
(IV)炭化水素溶媒相から、炭化水素溶媒を除去し、オレフィン系重合体を取り出す工程。
P × t2 < 250 (1)
(式中、Pは攪拌装置内での単位体積当たりの攪拌動力(kW/m3)を表し、tは攪拌装置での重合反応液の平均滞留時間(分)を表す。)
【請求項2】
攪拌後の水相のpHが9以上13.5以下である請求項1に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項3】
攪拌装置に導入する水とアルカリ性物質との合計量が、重合反応液100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下である請求項1又は2に記載のオレフィン系重合体製造方法。
【請求項4】
攪拌装置内における液の温度が20℃以上60℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られるオレフィン系重合体。

【公開番号】特開2012−211292(P2012−211292A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78766(P2011−78766)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】