説明

オレフィン重合体組成物およびその成形体

【課題】 流動性および塗装密着性に優れるオレフィン重合体組成物およびその成形体を提供する。
【解決手段】 オレフィン重合体99〜1重量%と、分子量分布が3〜20である変性プロピレン系重合体1〜99重量%とを含有するオレフィン重合体組成物。
上記オレフィン重合体組成物とエラストマーとを含有し、上記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、エラストマー1〜300重量部を含有するオレフィン重合体組成物。
上記オレフィン重合体組成物と無機充填剤とを含有し、上記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、無機充填剤1〜70重量部を含有するオレフィン重合体組成物。
上記オレフィン重合体組成物と導電性カーボンとを含有し、上記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、導電性カーボン0.1〜25重量部を含有するオレフィン重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体組成物に関するものである。さらに詳細には、流動性および塗装密着性に優れるオレフィン重合体組成物およびその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、オレフィン重合体組成物は、機械物性等に優れることから、自動車用部品や家電製品用部品等の用途に用いられている。
例えば、再公表特許WO95/21215号公報には、成形物の表面を洗浄せずに、直接一回の塗装仕上げで塗装膜を形成する手段として、プロピレン系重合体と、エラストマーと、オレフィン系重合体からなる主鎖とビニル系モノマーから誘導される側鎖とからなるグラフト共重合体とを配合してなり、グラフト共重合体における側鎖のグラフト前の重量平均分子量が1,000〜300,000であるポリプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【0003】
また、特開2004−83886号公報には、プライマーレス塗装を前提とした、塗装性と機械物性のバランスを改良する手段として、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、極性官能基のグラフト率が1.2〜20であり、重量平均分子量が1000〜25000であり、極性官能基のグラフト率と重量平均分子量が特定の関係を満たす変性ポリオレフィンを含有するプロピレン系樹脂組成物が記載されている。
【0004】
【特許文献1】WO95/21215号公報
【特許文献2】特開2004−83886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の公報等に記載されているオレフィン重合体組成物の流動性、および、その組成物からなる成形体の塗装密着性については、さらなる改良が望まれていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、流動性および塗装密着性に優れるオレフィン重合体組成物およびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(a)オレフィン重合体99〜1重量%と、(b)Mw/Mnが3〜20である変性プロピレン系重合体1〜99重量%とを含有するオレフィン重合体組成物(ただし、オレフィン重合体組成物の全量を100重量%とする)、および、その成形体に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流動性および塗装密着性に優れるオレフィン重合体組成物およびその成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるオレフィン重合体(成分(a))としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、炭素数4以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン系重合体等が挙げられる。
【0009】
エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−α−オレフィン系共重合体等が挙げられる。
【0010】
エチレン−α−オレフィン系共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
【0011】
エチレン−α−オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる
【0012】
炭素数4以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン系重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
【0013】
炭素数4以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン系重合体としては、例えば、1−ブテン重合体、1−ヘキセン重合体等が挙げられる。
【0014】
プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなるモノマーを重合して得られる共重合体成分と、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーと、プロピレンとの共重合体成分とからなるポリプロピレン共重合体(以下、プロピレンブロック共重合体と呼ぶ。)
等が挙げられる。
【0015】
プロピレン系重合体として、好ましくは、剛性、耐熱性または硬度の観点から、プロピレン単独重合体であり、より好ましくは、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率が0.95以上であるプロピレン単独重合体、より好ましくは0.98以上であるプロピレン単独重合体である。
【0016】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される)。具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0017】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。
【0018】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0019】
プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0020】
プロピレンブロック共重合体における主にプロピレンからなるモノマーを重合して得られる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられ、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーと、プロピレンとの共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0021】
プロピレンブロック共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0022】
プロピレンブロック共重合体として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体である。
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体は、プロピレン単独重合体または、プロピレンと含有量が3重量%以下であるエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分から構成される。
【0023】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の結晶性ポリプロピレン部分の極限粘度[η]Pは、通常、0.7〜5dl/g、好ましくは0.9〜4dl/gであり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布Q値(Mw/Mn)として、好ましくは3以上7未満である。
【0024】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量は25〜65重量%である。
【0025】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η]EPは、通常、1.5〜9dl/gであり、好ましくは2〜8dl/gである。
【0026】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常、5〜120g/10分であり、好ましくは5〜100g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0027】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
【0028】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の製造方法で用いられる公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(2)有機アルミニウム化合物および(3)電子供与体成分から形成される触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0029】
上記の製造方法で用いられる公知の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、気相重合等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも良く、また、これらの重合方法を任意に組み合わせても良い。
【0030】
上記の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)からなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のプロピレン重合体部(成分(X))を重合した後、得られた成分(X)を次の重合槽に移し、その重合槽で上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体のプロピレン−エチレン共重合体部(成分(Y))を連続的に重合する方法である。工業的かつ経済的な観点から、より好ましくは連続式の気相重合法である。
【0031】
上記の製造方法で用いられる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めれば良い。
【0032】
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いても良い。
【0033】
上記(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(1)および有機アルミニウム化合物(2)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0034】
変性プロピレン系重合体(成分(b))の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]は、通常、0.5〜3dl/gであり、好ましくは0.7〜2dl/gである。
【0035】
成分(b)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値:Mw/Mn)は、通常、3〜20であり、好ましくは3〜10であり、より好ましくは3〜8であり、さらに好ましくは4〜8である。
【0036】
本発明のオレフィン重合体組成物は、オレフィン重合体(a)99〜1重量%と、変性プロピレン系重合体(b)1〜99重量%とを含有するオレフィン重合体組成物(ただし、オレフィン重合体組成物の全量を100重量%とする)である。
オレフィン重合体(a)および変性プロピレン系重合体(b)のそれぞれの含有量として、好ましくは、機械物性および経済性の観点から、オレフィン重合体(a)90〜10重量%と、変性プロピレン系重合体(b)10〜90重量%、さらに好ましくはオレフィン重合体(a)85〜10重量%と、変性プロピレン系重合体(b)15〜90重量%である。
【0037】
本発明で用いられる変性プロピレン系重合体(b)として、好ましくは、少なくとも1種の極性基を有する変性プロピレン系重合体であり、極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イミダゾリル基、ピリジリル基、ピペリジリル基、シリル基、シアノ基、イソシアネート基、オキサゾリル基等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシル基である。
【0038】
本発明で用いられる変性プロピレン系重合体(b)として、好ましくは、プロピレン系重合体(A)と、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)と、有機過酸化物(C)とを加熱処理して得られる変性プロピレン系重合体である。これらの変性プロピレン系重合体を単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0039】
プロピレン系重合体(A)は、前述の本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(a))と同様の重合体が挙げられ、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなるモノマーを重合して得られる共重合体成分と、エチレンおよびα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーと、プロピレンとの共重合体成分とからなるポリプロピレン共重合体(以下、プロピレンブロック共重合体と呼ぶ。)等が挙げられる。
【0040】
プロピレン系重合体(A)として用いられるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、前述の本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(a))で用いられるα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0041】
プロピレン系重合体(A)として、好ましくは、流動性の観点から、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度が5dl/g以上15dl/g以下であるプロピレン系重合体成分(A1)0.05〜90重量%と、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度が0.1dl/g以上5dl/g未満であるプロピレン系重合体成分(A2)10〜99.5重量%とを含有するプロピレン系重合体である(但し、プロピレン系重合体(A)の全量を100重量%とする)。
【0042】
成分(A1)としては、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体であり、例えば、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられ、α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−ヘキセン等が挙げられる。
【0043】
成分(A1)として、好ましくは結晶性プロピレン系重合体であり、例えば、プロピレンの単独重合体、エチレン含量が0.5〜8重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと、1〜20重量%の炭素数4〜12のα−オレフィンを含有するプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等との共重合体が挙げられる。
成分(A1)として、より好ましくはプロピレンの単独重合体もしくはプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレン含有量は、0.5〜8重量%である。
【0044】
成分(A1)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A1は、分子量分布を広くし、流動性を向上させるという観点や、プロピレン系重合体の加熱処理を可能にするという観点から、5dl/g以上15dl/g以下であり、好ましくは6dl/g以上15dl/g以下、さらに好ましくは6dl/g以上9dl/g以下である。
【0045】
成分(A1)の示差走査熱量計によって測定される昇温サーモグラムの融解ピーク温度TmA1は130〜170℃であり、好ましくは145〜165℃である。
【0046】
成分(A2)としては、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体であり、具体的には、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0047】
成分(A2)として用いられるプロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体は、成分(A1)と同様の重合体が挙げられる。
成分(A2)に用いられる炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしても、成分(A1)と同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0048】
成分(A2)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A2は、変性プロピレン系重合体の製造安定性を高めるという観点や、分子量分布を広くし、流動性を向上させるという観点から、0.1dl/g以上5dl/g未満であり、好ましくは0.3dl/g以上3dl/g以下であり、より好ましくは0.5dl/g以上1.5dl/g以下である。
【0049】
成分(A2)の示差走査熱量計によって測定される昇温サーモグラムの融解ピーク温度TmA2は130〜170℃であり、好ましくは145〜165℃である。
【0050】
プロピレン系重合体(A)の全体の極限粘度[η]Tは3dl/g以上15dl/g以下であり、好ましくは4dl/g以上15dl/g以下、より好ましくは5dl/g以上10dl/g以下である。
【0051】
プロピレン系重合体(A)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布Q値(Mw/Mn)は、3以上10未満であり、好ましくは3以上8以下、さらに好ましくは3以上7以下である。
【0052】
プロピレン系重合体(A)に含有される成分(A1)の含有量は、分子量分布を広くし、流動性を向上させるという観点や、プロピレン系重合体の加熱処理を可能にするという観点から、0.05〜90重量%であり、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは40〜75重量%、さらに好ましくは51〜75重量%である。(すなわち、成分(A2)の含有量は10〜99.5重量%であり、好ましくは15〜90重量%、より好ましくは25〜60重量%、さらに好ましくは25〜49重量%である。)ただし、プロピレン系重合体(A)の全量を100重量%とする。
【0053】
本発明で用いられるエチレン性不飽和結合含有モノマー(成分(B))は、同一分子内に少なくとも一種の不飽和基を持つ化合物、および/または、製造工程内で脱水反応等により構造が変化し、同一分子内に少なくとも一種の不飽和基を持つ構造に変化する化合物である。
成分(B)として、好ましくは、25℃、1気圧下において、液状である化合物である。
【0054】
成分(B)としては、芳香族ビニルモノマーや(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタアクリレート等が挙げられる。
【0055】
成分(B)として、好ましくは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イミダゾリル基、ピリジリル基、ピペリジリル基、シリル基、シアノ基、イソシアネート基、オキサゾリル基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するエチレン性不飽和結合含有極性モノマーである。
【0056】
成分(B)として、好ましいエチレン性不飽和結合含有極性モノマーとしては、ヒドロキシル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、アミド基含有化合物、イミダゾリル基含有化合物、ピリジリル基含有化合物、ピペリジリル基含有化合物、シリル基含有化合物、シアノ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、オキサゾリル基含有化合物などが挙げられる。
【0057】
ヒドロキシル基含有化合物としては、下記の構造式(1)または(2)で表される化合物が挙げられる。

(構造式(1)または(2)において、R1は水素原子または炭素数が1〜6個のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜20個のアルキレン基および/またはシクロアルキレン基を表し、R3は(Cn2nO)mを表す。nおよびmは、それぞれ、独立に1以上の整数を表す。)
【0058】
上記の構造式(1)または(2)で表される化合物としては、例えば、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
上記構造式(1)または(2)で表される化合物以外のヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、アリルアルコール、9−デセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、プロパギルアルコール等の不飽和アルコール;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のアリルエーテル;p−ビニルフェノール、2−プロペニルフェノール等のアルケニルフェノールなどが挙げられる。
【0060】
カルボキシル基含有化合物としては、α、β−不飽和ジカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、前記α、β−不飽和ジカルボン酸または前記不飽和モノカルボン酸の酸無水物、および、前記α、β−不飽和ジカルボン酸または前記不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。
α、β−不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等が挙げられる。
前記α、β−不飽和ジカルボン酸または前記不飽和モノカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、アクリル酸無水物等が挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0062】
アミノ基含有化合物としては、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、ビニルモルホリン、3級アミノ基含有不飽和イミド化合物、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、3級アミノ基含有芳香族ビニル化合物、4級アンモニウム塩基含有不飽和化合物等が挙げられる。
3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニルモルホリンとしては、例えば、4−ビニルモルホリン、2−メチル−4−ビニルモルホリン、4−アリルモルホリン等が挙げられる。
3級アミノ基含有不飽和イミド化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物とアミン化合物との反応生成物が挙げられる。
3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
4級アンモニウム塩基含有不飽和化合物としては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド等の3級アミノ基含有不飽和化合物をカチオン化剤でカチオン化した化合物等が挙げられる。
【0063】
カチオン化剤としては、ハロゲン化アルキル誘導体類、ハロ酢酸アルキル類、ジアルキル硫酸類、無機酸類、有機酸類、3級アミン鉱酸塩エピハロヒドリン付加物等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル誘導体類としては、例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化ブチル、塩化オクチル、塩化ラウリル、塩化ステアリル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化フェネチル、塩化アリル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ブチル、臭化オクチル、臭化ラウリル、臭化ステアリル、臭化ベンジル、臭化アリル、沃化メチル、沃化エチル、沃化ブチル、沃化オクチル、沃化ラウリル、沃化ステアリル、沃化ベンジル等が挙げられる。
ハロ酢酸アルキル類としては、例えば、モノクロル酢酸メチル、モノクロル酢酸エチル、ブロモ酢酸エチル等が挙げられる。
ジアルキル硫酸類としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
無機酸類としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。
有機酸類としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。
3級アミン鉱酸塩エピハロヒドリン付加物としては、例えば、N−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0064】
アミド基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
イミダゾリル基含有化合物としては、ビニルイミダゾール等が挙げられ、ビニルイミダゾールとしては、例えば、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、2−ラウリル−1−ビニルイミダゾール、4−t−ブチル−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
ピリジリル基含有化合物としては、ビニルピリジン等が挙げられ、ビニルピリジンとしては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、6−メチル−5−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−ラウリル−4−ビニルピリジン、2−ラウリル−5−ビニルピリジン、2−t−ブチル−4−ビニルピリジン、2−t−ブチル−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0067】
ピペリジリル基含有化合物としては、ビニルピペリジン、ビニルピペラジン等が挙げられ、ビニルピペリジン、としては、例えば、1−ビニルピペリジン、4−メチル−4−ビニルピペリジン等が挙げられ、ビニルピペラジンとしては、例えば、2−ラウリル−1−ビニルピペラジン、4−メチルピペラジノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
シリル基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0069】
シアノ基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0070】
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアナート、クロトイルイソシアナート、クロトン酸イソシアナートエチルエステル、クロトン酸イソシアナートブチルエステル、クロトン酸イソシアナートエチルエチレングリコール、クロトン酸イソシアナートエチルジエチレングリコール、クロトン酸イソシアナートエチルトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートオクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートラウリルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートヘキサデシルエステル、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチレングリコール、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチルジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸イソシアナートエチルトリエチレングリコール等が挙げられる。
【0071】
オキサゾリル基含有化合物としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−オキサゾリン等が挙げられる。
【0072】
成分(B)として、好ましくは、ヒドロキシル基含有化合物であり、より好ましくは2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドである。
【0073】
本発明で用いられる有機過酸化物(成分(C))としては、従来公知の有機過酸化物が挙げられ、例えば、半減期が1分となる分解温度が120℃未満である有機過酸化物を挙げることができる。例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物(分子骨格中に下記構造式(3)で表される構造を有する化合物(I)やアルキルパーエステル化合物(下記構造式(4)で表される構造を有する化合物(II))等が挙げられる。

【0074】
構造式(3)で表される構造を有する化合物(I)としては、ジ−3−メトキシブチル パーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシル パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピル パーオキシジカルボネート、t−ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカルボネート等があげられる。
構造式(4)で表される構造を有する化合物(II)としては、1,1,3,3−テトラメチル ブチル ネオデカノエート、α―クミル パーオキシ ネオデカノエート、t−ブチル パーオキシ ネオデカノエート等が挙げられる。
【0075】
また、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物も挙げられる。例えば、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0076】
エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)が25℃、1気圧下において、液状である場合には、有機多孔質パウダー(D)などの液状物を含浸できる成分を用いて、本発明の変性プロピレン系重合体の製造効率を高めてもよい。
【0077】
有機多孔質パウダー(D)としては、1〜7000μmの粒径、0.1〜1000m2/gの比表面積、0.05〜10μmの細孔径、5〜90%の空隙率を有する粉状もしくは粒状のポリマーが挙げられる。
【0078】
有機多孔質パウダー(D)の比表面積は、好ましくは10〜800m2/g、さらに好ましくは30〜300m2/gである。また有機多孔質パウダーの空隙率は、好ましくは30〜85%、より好ましくは50〜85%である。
【0079】
有機多孔質パウダー(D)は、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)、有機過酸化物(C)には溶解しないものである。
【0080】
有機多孔質パウダー(D)として、一般には、α−オレフィン重合体、芳香族不飽和炭化水素重合体、極性基含有重合体等が挙げられる。
α−オレフィン重合体としては、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。
芳香族不飽和炭化水素重合体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。
極性基含有重合体としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0081】
有機多孔質パウダー(D)は、例えば、ポリマーに対して適度の溶解能を持つ溶媒により当該ポリマー粒子と処理して細孔を形成させることによって製造することができる。
また、有機多孔質パウダー(D)として、市販品を用いても良く、例えば、MEMBRANA社から販売されているAccurel(商品名、日本名:アキュレル)の各種グレードを用いても良い。
【0082】
変性プロピレン系重合体(b)が、プロピレン系重合体(A)と、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)と、有機過酸化物(C)と、有機多孔質パウダー(D)を加熱処理して得られる変性プロピレン系重合体である場合、加熱処理に用いられるプロピレン系重合体(A)と、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)と、有機過酸化物(C)と、有機多孔質パウダー(D)のそれぞれの重量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)0.1〜50重量部と、有機過酸化物(C)0.01〜20重量部と、有機多孔質パウダー(D)0.1〜20重量部である。
【0083】
好ましくは、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)0.5〜15重量部と、有機過酸化物(C)0.3〜10重量部と、有機多孔質パウダー(D)0.1〜15重量部である。
【0084】
さらに好ましくは、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)1〜15重量部と、有機過酸化物(C)0.5〜5重量部と、有機多孔質パウダー(D)0.1〜15重量部である。
【0085】
本発明で用いられる変性プロピレン系重合体(成分(b))の製造方法としては、従来公知の方法が挙げられる。プロピレン系重合体(成分(A))と、エチレン性不飽和結合含有モノマー(成分(B))と、有機過酸化物(成分(C))と、有機多孔質パウダー(D)とを、例えば、有機溶媒の溶液中で加熱処理する溶液法や、押出機等の溶融混練装置を用いて加熱処理する溶融混練法等が挙げられる。
【0086】
成分(b)の製造方法として、好ましくは、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、成分(D)とを溶融混練する方法である。溶融混練の方法としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機または二軸押出機等の公知の溶融混練装置を用いる溶融混練方法が挙げられる。
より好ましくは、一軸押出機または二軸押出機を用いて、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、成分(D)とを押出機の供給口から供給して溶融混練を行う方法である。
【0087】
押出機の混練を行う部分の温度(例えば、押出機ならシリンダー温度)は、通常、50〜300℃であり、好ましくは100〜250℃である。押出機の混練を行う部分の温度は、混練を前半と後半の二段階に分け、前半より後半の温度を高めに設定しても良い。
混練時間は、通常、0.1〜30分間であり、好ましくは0.5〜5分間である。
【0088】
本発明で用いられるエラストマー(c)は、ゴム成分を含有するエラストマーであり、例えば、モノビニル置換芳香族炭化水素化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム、または、これらの混合物からなるエラストマー等が挙げられる。
【0089】
モノビニル置換芳香族炭化水素化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物としては、下記の式(5)または式(6)で表されるブロック共重合体のY部を水素添加して得られた水素添加物である。
X−Y 式(5)
X(−Y−X)n 式(6)
(式中、Xはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロック、Yは共役ジエン重合体ブロックを表し、nは1〜5の整数を表し、nとして、好ましくは1または2である。)
【0090】
前記式(5)または(6)のXで表される重合体ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、スチレンまたはその誘導体等が挙げられ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノビニル置換芳香族炭化水素は、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。好ましくは、スチレンである。
【0091】
前記式(5)または(6)のYで表される重合体ブロックを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。これらは、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。好ましくは、ブタジエンまたはイソプレンである。
共役ジエンとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2−結合の割合は、通常、20〜80重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。
【0092】
前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物において、共役ジエン重合体ブロック(Y部)の水素添加率は、通常、90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上である(ただし、Y部の全量を100モル%とする)。また、X部の含有量は、通常、1〜30重量%であり、好ましくは10〜25重量%である(ただし、前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物の全量を100重量%とする)。
前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物のメルトフローレート(MFR、ASTM D−1238、230℃、2.16kg荷重)は、通常、好ましくは30g/10分以下であり、より好ましくは1〜10g/10分である。
【0093】
前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物としては、水素添加によって得られるスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。
例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体の水素添加によって得られるスチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体の水素添加によって得られるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・イソプレンジブロック共重合体の水素添加によって得られるスチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)等が挙げられる。
【0094】
水素添加前のブロック共重合体の製造方法としては、例えば、不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、各モノマーのブロック共重合を行わせる方法等が挙げられる。詳細な製造方法としては、例えば、特公昭40−23798号公報等に記載されている製造方法が挙げられる。
【0095】
前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加処理の方法としては、例えば、前記のブロック共重合体を不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行う方法が挙げられる。詳細な方法としては、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭46−20814号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0096】
前記式(5)または(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物としては、市販品を用いても良く、例えば、クレイトンG1657(クレイトンポリマーズジャパン(株)製品、商標)、セプトン2004(クラレ(株)製品、商標)、タフテックH1052、タフテックH1062(旭化成ケミカルズ(株)製品、商標)等が挙げられる。
【0097】
成分(c)として用いられるエチレン−プロピレンランダム共重合ゴムのエチレンとプロピレンとの共重合割合は、重量比(エチレン/プロピレン)で表して、好ましくは20/80〜95/5であり、より好ましくは30/70〜70/30である。
【0098】
また、成分(c)として用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴムのエチレンとα−オレフィンとの共重合割合は、重量比(エチレン/プロピレン)で表して、好ましくは20/80〜95/5であり、より好ましくは30/70〜70/30である。
【0099】
前記エチレン−プロピレンランダム共重合ゴムまたは前記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、ASTM D−1238、230℃、2.16kg荷重)は、通常、0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜60g/10分である。
【0100】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムに用いられるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。α−オレフィンとして、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンである。
【0101】
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合ゴム、または、上記のエチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴムの製造方法としては、オレフィン重合触媒を用いて、エチレンとプロピレンとを共重合させる方法、または、エチレンとα−オレフィンとを共重合させる方法が挙げられる。
【0102】
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合ゴム、または、上記のエチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴムの製造に用いられるオレフィン重合触媒として、好ましくは、本発明のオレフィン重合体組成物の低温での衝撃強度を向上させるという観点から、分子量分布および組成分布が狭いエチレン−プロピレンランダム共重合ゴム、または、エチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴムが得られるシングルサイト触媒である。
【0103】
シングルサイト触媒としては、例えば、シクロペンタジエン骨格を有する化合物がジルコニウム金属等の遷移金属原子に配位したメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物等とを含むメタロセン系触媒が挙げられる。
【0104】
本発明で用いられるエラストマー(成分(c))には、必要に応じて、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴム、または、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムを含有させても良い。
【0105】
エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムで用いられるα−オレフィンとしては、前述のエチレン−α−オレフィンランダム共重合ゴムで用いられる炭素数4〜20のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
また、非共役ポリエンとしては、例えば、非環状ジエン、鎖状の非共役ジエン、トリエン等が挙げられる。
非環状ジエンとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
鎖状の非共役ジエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等が挙げられる。
トリエンとしては、例えば、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネンなどのトリエン等が挙げられる。
【0106】
これらの非共役ポリエンは、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
非共役ポリエンとして、好ましくは、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0107】
エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴム、または、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムのメルトフローレート(MFR、ASTM D−1238、230℃、荷重2160g)としては、通常、1g/10分以下であり、より好ましくは0.1〜0.5g/10分である。
【0108】
エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴムのエチレンとプロピレンとの共重合割合は、モル比(エチレン/プロピレン)で表して、通常、90/10〜40/60であり、好ましくは85/15〜50/50である。
【0109】
エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムのエチレンとα−オレフィンとの共重合割合は、モル比(エチレン/α−オレフィン)で表して、通常、90/10〜40/60であり、好ましくは85/15〜50/50である。
【0110】
また、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合ゴム、または、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムの非共役ポリエン成分の割合は、共重合ゴムのヨウ素価で表して、通常、1〜40であり、好ましくは2〜35である。
【0111】
エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)が挙げられ、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合ゴムとしては、例えば、エチレン−1−ブテン−ジエン三元共重合体が挙げられる。
【0112】
エラストマー(c)の含有量は、オレフィン重合体(a)と、変性プロピレン系重合体(b)とを含有するオレフィン重合体組成物100重量部に対して、1〜300重量部であり、好ましくは、耐衝撃性向上の観点から1〜100重量部、さらに好ましくは5〜70重量部である。
【0113】
本発明で用いられる無機充填剤(d)は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、セピオライト、ワラストナイト、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、硫酸バリウム、ガラスフレーク等が挙げられるが、好ましくはタルクである。
【0114】
無機充填剤(d)の平均粒子径としては、通常、0.01〜50μmであり、好ましくは0.1〜30μmであり、より好ましくは0.1〜5μmである。ここで無機充填剤の平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0115】
無機充填剤(d)は、無処理のまま使用しても良く、または、プロピレン系重合体組成物との界面接着性または分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。
【0116】
無機充填剤(d)の含有量は、オレフィン重合体(a)と、変性プロピレン系重合体(b)とを含有するオレフィン重合体組成物100重量部に対して、1〜70重量部であり、好ましくは、剛性向上の観点から5〜70重量部であり、より好ましくは10〜50重量部である。
【0117】
本発明で用いられる導電性カーボン(e)は、表面層がグラファイト構造を有する導電性カーボンである。導電性カーボンの形状は、ストラクチャーを形成していても良く、チューブ状であっても良い。 また、導電化効率を高めるという観点から、好ましくは、断面径に対する長さの比が大きく、細孔が多く非表面積が大きい導電性カーボンである。
【0118】
導電性カーボン(e)としては、一次粒子径が10〜100nm、比表面積が100〜1500m2/g、細孔率を示すDBP吸油量が50〜600cm3/100gのカーボンブラックや、直径10〜100nm、管長0.1〜1000μmのカーボンナノチューブ、炭素数60〜540のフラーレンから選ばれた少なくとも1種の導電性カーボンが挙げられ、好ましくはカーボンブラックである。
【0119】
カーボンブラックの粒子径として、好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは15〜60nmである。なお、粒子径は、透過型電子顕微鏡によって測定する。
カーボンブラックのDBP吸収量として、好ましくは50〜600ml/100gであり、より好ましくは100〜600ml/100gである。なお、DBP吸収量は、ジブチルフタレートアブソーブドメーターによって、JIS K6221に準拠して測定する。
カーボンブラックの比表面積として、好ましくは100〜1500m2/gであり、より好ましくは150〜1500m2/gであり、さらに好ましくは200〜1500m2/gである。なお、比表面積は、液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定する。
【0120】
上記のカーボンブラックは、市販品を用いても良く、例えば、ライオン社製「ケッチェンブラックEC」や「ケッチェンブラックEC600JD」等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0121】
導電性カーボン(e)の含有量は、オレフィン重合体(a)と、変性プロピレン系重合体(b)とを含有するオレフィン重合体組成物100重量部に対して、0.1〜25重量部であり、導電性と経済性のバランスの観点から1〜22重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0122】
本発明のオレフィン重合体組成物の製造方法は、各成分を混練する方法が挙げられ、混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。混練の温度は、通常、170〜250℃であり、時間は、通常、1〜20分である。また、各成分の混練は同時に行なってもよく、分割して行なってもよい。
【0123】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、必要に応じて、添加剤を含有させても良く、例えば、酸化防止剤、中和剤、耐候剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0124】
本発明の成形体は、本発明のオレフィン重合体組成物からなる成形体であり、本発明のオレフィン重合体組成物を成形する方法としては、射出成形、押出成形、回転成形、真空成形、発泡成形、ブロー成形などが挙げられる。
【0125】
本発明のオレフィン重合体組成物またはそれからなる成形体の用途としては、例えば、自動車内装部品または外装部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品等が挙げられる。
自動車内装部品としては、例えば、インストルメンタルパネル、トリム、ドアーパネル、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバー等が挙げられ、自動車外装部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ホイールカバー等が挙げられ、二輪車部品としては、例えば、カウリング、マフラーカバー等が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。
実施例または比較例では、以下に示した樹脂および添加剤を用いた。
(1)ポリプロピレン
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(PP、ノーブレン AU161C、住友化学(株)製)
【0127】
(2)変性ポリプロピレン(OH−PP1、OH−PP2、OH−PP3)
変性ポリプロピレンは、以下の試料を用いて、表1に示した量で配合して、以下の製造例1〜3に示した方法で製造した。
(A)ポリプロピレン
H−PP1:
プロピレン系重合体、特願2003−387520号の実施例に記載のプロピレン系重合体(HMS−3)の製造方法を用いて、製造した。
H−PP2:
プロピレン単独重合体、[η]:3.0dl/g、特開平7−216017記載の固体触媒成分を用いて気相重合法によって製造した。
【0128】
(B2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、東京化成工業社製)
【0129】
(C)有機過酸化物
t−ブチルパーオキシベンゾエート(Kb−B、化薬アクゾ社製 カヤブチルB)
【0130】
(D)多孔質ポリプロピレン
MEMBRANA社製 MP−1000
(E)造核剤
ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化工業社製 アデカスタブ NA−11)
【0131】
〔製造例1〕
変性ポリプロピレン(OH−PP1)の製造
H−PP1 100重量部、HEMA 10重量部、Kb−B 2.0重量部、MP−1000 3重量部、NA−11 0.3重量部および各種安定剤(チバ・スペシャルティケミカルズ社製 IRGANOX1010、チバ・スペシャルティケミカルズ社製 IRGAFOS168)を均一混合し、二軸混練押出機(商品名 KZW15−45MG、同方向回転型スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて、設定温度180℃、スクリュー回転速度500rpmの条件で溶融混練して、水酸基含有プロピレン系重合体(B−(1))を得た。得られた変性プロピレン系重合体のグラフト率は2.1wt%、極限粘度[η]は0.86dl/g、Mw/Mnは3.1であった。
【0132】
〔製造例2〕
変性ポリプロピレン(OH−PP2)の製造
HEMA 12重量部、Kb−B 1.5重量部、MP−1000 5重量部を用いた以外は、製造例1と同様に行い、水酸基含有プロピレン系重合体(B−(2))を得た。得られた変性プロピレン系重合体のグラフト率は2.2wt%、極限粘度[η]は0.86dl/g、Mw/Mnは5.8であった。
【0133】
〔製造例3〕
変性ポリプロピレン(OH−PP3)の製造
H−PP2 100重量部を用いた以外は、製造例2と同様に行い、水酸基含有プロピレン系重合体(B−(3))を得た。得られた変性プロピレン系重合体のグラフト率は1.9wt%、極限粘度[η]は0.85dl/g、Mw/Mnは2.7であった。
【0134】
【表1】

【0135】
(3)高密度ポリエチレン
京葉ポリエチレン(株)製 SX241(以下、「HDPE」と称する。)
【0136】
(4)ゴム
住友化学(株)製 SPO N0461(以下、「EBR」と称する。)
ダウ ケミカル社製 エンゲージ8842(以下、「EOR」と称する。)
旭化成ケミカルズ(株)製 タフテックH1062(以下、「SEBS」と称する。)
【0137】
(5)タルク
林化成(株)製 商品名MW HS−T(平均粒径:2μm)
(6)導電性カーボン(CB)
ライオン(株)製 商品名ケッチェンブラックEC600JD(DBP吸油量:495ml/g)
【0138】
実施例1〜3、比較例1〜2
前記の樹脂(1)、(2)、(3)、(4)および添加剤(5)、(6)を表2に示した通りに配合し、その後二軸混練押出機(商品名 KZW15−45MG、同方向回転型スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて、設定温度220℃、スクリュー回転速度500rpmの条件で溶融混練して、プロピレン系重合体組成物のペレットを得た。このペレットを用い、射出成形機(東洋機械金属社製 TU−15)を用いて、シリンダー設定温度220℃、金型設定温度50℃の条件で射出成形を行い、成形体を得た。得られたプロピレン系重合体組成物射出成形体の物性評価結果を表2に示した。
【0139】
実施例および比較例における評価方法を以下に示した。
(1)変性オレフィン系重合体中のグラフト量(水酸基含有モノマー単位含有量、単位:重量%)
サンプルを沸騰キシレンに溶解し、得られたサンプルの溶液を大量のメタノールに攪拌しながら滴下してサンプルを再沈殿させて回収した。回収したサンプルを真空乾燥した後(80℃、8時間)、熱プレスにより厚さ100μm程度のフィルムを作成した。この作成したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、1730cm-1付近の吸収からグラフト量を定量した。または13C−NMRにて測定した。
【0140】
(2)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて測定した。プロピレン単独重合体については、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で測定した。
【0141】
(3)分子量分布(Q値、Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により、下記条件で測定した(Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す)。
機種:150CV型(ミリポアウォーターズ社製)
カラム:Shodex M/S 80
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
サンプル濃度:5mg/8mL
検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。この条件で測定された標準ポリスチレン(NBS706:Mw/Mn=2.0)のMw/Mnは1.9〜2.0であった。
【0142】
(4)融解ピーク温度(Tm、単位:℃)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7)を用い、ポリマーを220℃で5分間熱処理後、降温速度300℃/分で150℃まで冷却して150℃において1分間保温し、さらに降温速度5℃/分で50℃まで冷却して50℃において1分間保温し、さらに50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際の融解ピーク温度をTmとして求めた。
【0143】
(5)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
【0144】
(6)引張破断伸び(UE、単位:%)
JIS−K−7161に規定された方法に従って、測定した。射出成形によって成形された厚みが2.0mmである試験片を用いて測定した。引張速度は50mm/分で、測定温度は23℃であった。
【0145】
(7)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
JIS−K−7171に規定された方法に従って、測定した。射出成形によって成形された厚みが4.0mmであり、スパン長さが64mmである試験片を用いて、荷重速度は2.0mm/分で、測定温度は23℃であった。
【0146】
(8)Izod衝撃強度(Izod、単位:kJ/m2
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。試験片は、射出成形によって成形された厚みが4.0mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いた。測定温度は23℃であった。
【0147】
(9)荷重撓み温度(HDT、単位:℃)
JIS−K−7191−2に規定された方法に従って、測定した。ファイバーストレスは0.45MPaで測定した。
【0148】
(10)塗装密着試験
射出成形機(東洋機械金属社製 TU−15)を用いて、成形温度220℃で、金型温度50℃で、幅480×長さ480×厚み2mm平板を成形した。その後、平板表面を純水もしくはイソプロパノール(IPA)で、ガーゼを用いて拭いて処理した後、風乾し、中塗り(関西ペイント(株)製ソフレツクスカラーベース)を施し、中塗り層の厚みを18μmとし、トップコート(関西ペイント(株)製ソフレックスクリヤーコート)を施し、トップコート層の厚みを30μmとした。
次に、焼き付け温度120℃で20分間保持することによって、塗装成形品を得た。
密着テストは、ニチバン社製24mm幅セロテープ(登録商標)による1mm□ゴバン目テストでの残率(%)評価(90°剥離)で行った。
【0149】
(11)せん断粘度比
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、低せん断速度(6.08sec-1)と高せん断速度(2432sec-1)におけるせん断粘度を測定し、せん断粘度比(6.08sec-1でのせん断粘度/2432sec-1でのせん断粘度)を測定した。測定温度は220℃、オリフィスのL/Dは40で行った。
当該せん断粘度比は、せん断速度に対するせん断粘度依存性を示しており、粘度比が大きいほど、加工時の流動性にすぐれることを示す。
【0150】
本発明の要件を満足する実施例1〜3は、流動性および塗装密着性に優れるものであることが分かる。
これに対して、本発明の要件である変性ポリプロピレンの分子量分布を満足しない比較例1は、せん断粘度比が小さい、すなわち流動性が不充分であり、本発明の要件である変性ポリプロピレンの分子量分布を満足しないを満足しない比較例2は、塗装密着性が不充分であることが分かる。
【0151】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オレフィン重合体99〜1重量%と、(b)分子量分布(Mw/Mn)が3〜20である変性プロピレン系重合体1〜99重量%とを含有するオレフィン重合体組成物(ただし、オレフィン重合体組成物の全量を100重量%とする)。
【請求項2】
変性プロピレン系重合体(b)が、ヒドロキシル基を有する変性プロピレン系重合体である請求項1記載のオレフィン重合体組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオレフィン重合体組成物と(c)エラストマーとを含有し、前記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、(c)エラストマー1〜300重量部を含有するオレフィン重合体組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のオレフィン重合体組成物と(d)無機充填剤とを含有し、前記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、(d)無機充填剤1〜70重量部を含有するオレフィン重合体組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のオレフィン重合体組成物と(e)導電性カーボンとを含有し、前記オレフィン重合体組成物100重量部に対して、(e)導電性カーボン0.1〜25重量部を含有するオレフィン重合体組成物。
【請求項6】
変性プロピレン系重合体(b)が、プロピレン系重合体(A)と、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)と、有機過酸化物(C)とを加熱処理して得られる変性プロピレン系重合体であって、
プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、エチレン性不飽和結合含有モノマー(B)0.1〜50重量部と、有機過酸化物(C)0.01〜20重量部とを加熱処理して得られる変性プロピレン系重合体である請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合体組成物。
【請求項7】
プロピレン系重合体(A)が、
135℃のテトラリン中で測定される極限粘度が5dl/g以上15dl/g以下であるプロピレン系重合体成分(A1)0.05〜90重量%と、
135℃のテトラリン中で測定される極限粘度が0.1dl/g以上5dl/g未満であるプロピレン系重合体成分(A2)10〜99.5重量%と
を含有するプロピレン系重合体(但し、プロピレン系重合体(A)の全量を100重量%とする)
である請求項6に記載のオレフィン重合体組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン重合体組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2007−31606(P2007−31606A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218498(P2005−218498)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】