説明

オレフィン重合用帯電防止剤及び当該帯電防止剤の製造法

非金属ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含む少なくとも1種の帯電防止作用化合物と、ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子と完全に反応するに足る量の少なくとも1種の金属アルキルとを接触させることによるオレフィン重合用帯電防止剤の製造方法であって、少なくとも1種の帯電防止作用化合物及び少なくとも1種の金属アルキルは各々接触中少なくとも0.01重量%の濃度で存在する、前記オレフィン重合用帯電防止剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン重合用帯電防止剤の製造法、対応する帯電防止剤及びオレフィン重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン類の連続重合では、静電荷を回避するために帯電防止剤を使用する。帯電防止剤に含まれる帯電防止作用化合物は、一般に、酸若しくはエステル基、アミン若しくはアミド基又はヒドロキシル若しくはエーテル基のような極性官能基を持つ有機化合物を含む。典型的な帯電防止剤の構成例は、ポリスルホンコポリマー類、ポリマーポリアミン類、油溶性スルホン酸類、ポリシロキサン類、アルコキシアミン類、ポリグリコールエーテル類等である。
【0003】
さらに、金属アルキル類を、通例、オレフィン重合においてスカベンジャーとして使用し、反応器中に常に存在する痕跡の極性化合物により触媒が破壊されるのを保護する。スカベンジャーは、スカベンジャーが触媒に影響を与え得る前に不純物と反応する。満足のいく活性をこのようにして確保する。
【0004】
以前のすべての帯電防止剤の欠点は、当該帯電防止剤が所望の帯電防止作用を持たないばかりでなく、事実上すべてのオレフィン重合触媒の反応性に顕著に悪影響を与えもする。
【0005】
これらの悪影響を減らすために、例えば、EP−A−1255783号公報において、反応器中にカルボン酸及び金属アルキルを、メタロセン触媒と平行して導入し、金属カルボキシレート塩(帯電防止作用を示すことが知られている)を反応器中でその場で製造させる。
【0006】
このようにして帯電防止剤の毒性作用をたとえ減少させることができても、感受性の高い遷移金属触媒成分の顕著な失活が依然として常に観察される。これは、使用される金属アルキル及び金属アルミノキサンが少量であるほどより顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は前記従来技術の欠点を克服すること及び触媒に失活作用を減少させながら良好な又は改良した帯電防止作用を示すオレフィン重合用帯電防止剤を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚いたことに、今、使用前に金属アルキル類と反応させた慣用帯電防止作用化合物が導電率を改善させこうして帯電防止作用を改善させながら顕著に失活性を減少させることが見出された。
【0009】
したがって、本発明の目的は、
a) 非金属ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含む少なくとも1種の帯電防止作用性化合物と
b) ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子と完全に反応するに足る量の少なくとも1種の金属アルキルとを
接触させることによるオレフィン重合用帯電防止剤の製造法により達成され、ここで、少なくとも1種の帯電防止作用性化合物及び少なくとも1種の金属アルキルは接触する間各々少なくとも0.01重量%の濃度で存在する。帯電防止化合物及び/又は金属アルキル類の混合物を使用するとき、濃度は、非金属ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素を含む帯電防止作用性化合物類の総計又は金属アルキル類の総計を基準とする。
【0010】
重合反応器自身中で金属アルキル類と帯電防止剤との慣用のその場反応に比較して、本発明の方法では帯電防止剤の濃度及び金属アルキルの濃度が顕著に高い。この濃度の増加は、何十倍(a number of orders of magnitude)までも速度定数の増加をもたらし、その結果、帯電防止剤の非金属性ヘテロ原子に結合した水素原子(以下、活性水素と呼ぶ)の本質的に完全な反応をおそらく動力学的に可能にする。第2に、帯電防止剤中の活性水素により金属アルキル及び触媒間の競合がなくなり、これは同様に慣用帯電防止作用化合物と金属アルキルとの前接触により押さえられ、このようにして調製した帯電防止剤の改善した特性の理由であり得る(この説明に拘束されることを望まない)。
【0011】
本発明の目的のため、帯電防止作用化合物は反応器中の陰静電荷又は陽静電荷を減少させることができる化学化合物である。当該帯電防止作用化合物は単一化学化合物であることができ又は好ましくは複数帯電防止作用化合物の混合物であることもできる。本発明では、少なくとも1種の帯電防止作用化合物は非金属性ヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(以下、活性水素と呼ぶ)を有する。ヘテロ原子は、原則として、少なくとも2価であり、したがって、炭素に結合を形成するばかりでなく、さらに少なくとも1個の水素原子に結合できる総ての非金属ヘテロ原子であることができる。好適な非金属ヘテロ原子はO、N、S及びPである。
【0012】
少なくとも1種の帯電防止作用性化合物は、好ましくは、少なくとも、0.05μS/cm、より好ましくは少なくとも0.10μS/cm、より好ましくは少なくとも0.20μS/cm、より好ましくは0.50μS/cm、特に好ましくは、1.0μS/cmの導電率を有する。混合物の場合、各成分の内少なくとも1成分が対応する導電率を有するべきである。
【0013】
好適な帯電防止作用性化合物、少なくとも100g/モル、より好ましくは少なくとも150g/モル、特に好ましくは少なくとも200g/モルのモル質量を有する化合物であり、少なくとも1種のこのような帯電防止作用性化合物を含む混合物も好ましい。
【0014】
さらに、有機帯電防止作用性化合物が好適であり、少なくとも5個、特に少なくとも10個の炭素原子を有する化合物が特に利点がある。
【0015】
帯電防止作用化合物は、好ましくは、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、−PH、−PHR及び−SOHから選択される水素含有官能基を有し、式中、Rはアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、ここで、炭素原子の1個以上がヘテロ原子により置換されていても良い。
【0016】
加えて、さらに、例えば、−OR、−COOR、−SO、−SiO、−NR、−CHO、−CO−R等の水素を含有しない官能基も好ましくは存在でき、式中、R及びRは各々互いに独立して、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、ここで、1個以上の炭素原子がヘテロ原子により置換されていても良く、R基及びR基は互いに環を形成しても良い。
【0017】
特に好適な帯電防止作用化合物は、高級多価アルコール類及びそれらのエーテル類、例えば、ソルビトール、ポリアルコール類、ポリアルコールエーテル類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類及び脂肪族アルコール類とのそれらのエーテル類、カルボン酸、アニオン活性物質、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のC12−C22−脂肪酸石けん、一般式ROSOM(M=アルキル金属、アルカリ土類金属、R=アルキル、アリール、アリールアルキル若しくはアルキルアリール)若しくは(RR’)CHOSOMを有する高級1級若しくは2級アルコール類のアルキルサルフェートの塩、多官能アルコールと高級脂肪酸及び硫酸との混合エステル類の塩、C12−C22−スルホン酸若しくは一般式RSOMのそれらの塩、アルキルアリールスルホン酸若しくはそれらの塩(例、ドデシルベンゼンスルホン酸)、リン酸誘導体、例えば、一般式[RO(CHCHO)POOMからなるジ(アルコキシポリエトキシエチル)ホスフェート若しくはフィチン酸誘導体(例えば、EP−A−453116号公報に開示されている)、カチオン活性誘導体、例えば、一般式RNX(式中、Xはハロゲン原子であり、R〜Rは、互いに独立して、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子有する、アルキル基である)の第四級アンモニウム塩を含む帯電防止作用化合物である。また適切なものは、例えば、WO93/24562号公報に開示されているシアノフタロシアニンのような金属錯体である。
【0018】
特に有用な帯電防止作用化合物は、アミン類若しくはアミド類又はそれらの塩類、特にオリゴマー若しくはポリマーアミン類又はアミド類のような非揮発性窒素含有化合物である。言及できる例は、一般式RN[(RO)R][(RO)H]又はRCON[(RO)R][(RO)H](式中、R〜Rはアルキル基であり、Rの場合アルキル基は好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有し、好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有し、n、mは1に等しいか1を超える)ポリエトキシアルキルアミン類又はポリエトキシアルキルアミド類であり、DE−A3108843号公報に記載されている。これらは市販帯電防止剤(例、Uniqema製Atmer163)の構成成分でもある。メジアラン酸(Medialanic acid)カルシウム塩及びN−ステアリルアントラニル酸クロム塩の塩混合物(DE−A3543360号公報に記載)、又はメジアラン酸の金属塩、アントラニル酸の金属塩及びポリアミンの混合物(EP−A0636636号公報に記載)を使用することもできる。
【0019】
さらに特に有用な帯電防止作用化合物は、ポリアミン類若しくはポリアミンコポリマー類又はこのような化合物と別の化合物(特に、ポリマー化合物)との混合物である。ポリビニルアミンのような単純ポリアミン類は別として、適切な非揮発性ポリアミン類は、n−オクチルアミン若しくはn−ドデシルアミンのような脂肪族一級モノアミン類又はN−n−ヘキサデシル−1,3−プロパンジアミンのようなN−アルキル−置換脂肪族ジアミンとエピクロロヒドリンとの反応から有利に得られる。これらのポリアミノポリオール類はアミノ基ばかりでなくヒドロキシル基も有する。このようなポリアミンコポリマー類の概要は、US3,917,466号明細書に与えられている。ポリスルホンコポリマー類は、ポリアミン類若しくはポリアミンコポリマー類と共に使用するのに特に適するポリマー類である。ポリスルホンコポリマー類は、好ましくは、大きくは分枝しておらず、オレフィン及びSO単位のモル比が1:1から構成される。適切なポリスルホンコポリマーの概要もUS3,917,466号明細書に与えられている。1−デセンポリスルホンを例として挙げることができる。ポリスルホンコポリマー類、ポリアミン及び長鎖スルホン酸を含む混合物はUS5,026,795号及びUS4,182,810号各明細書に記載されている。
【0020】
特に好適な実施態様では、少なくとも1種の帯電防止作用性化合物は、ポリスルホンコポリマー、ポリマーポリアミン及び油溶性スルホン酸を含む。この種の混合物は、例えば、WO00/68274号又はWO02/040554号公報に記載されている。これらの混合物の反応は、特に、活性水素を含まない化合物に変換される活性水素を含む油溶性スルホン酸をもたらす。好適なスルホネート酸類はモノ置換又はジ置換フェニルスルホン酸又はナフチルスルホン酸である。
【0021】
別の帯電防止作用性化合物は、FR2478654号、US5026795号、EP−A453116号、US4675368号、EP−A584574号又はUS5391657号公報に見出すことができる。
【0022】
本発明の一実施態様では、金属アルキルと前記のような油溶性スルホン酸との反応により製造できる油溶性金属アルキルスルホネートを帯電防止剤は含む。帯電防止剤は、特に好ましくは、ポリスルホンコポリマー及びポリマーポリアミドをさらに含む。
【0023】
本発明の目的では、金属アルキル類は、帯電防止剤の活性水素と反応できる、線状若しくは環式アルキル類、アリール類、アルキルアリール類及び/又はアリールアルキル類を持つ金属類又は半金属類からなる化合物である。ここで、金属アルキル類の混合物を使用することも可能である。適切な金属アルキル類は、一般式(I)
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛であり、特に、Li、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム又は亜鉛であり、R1Gは、水素、C−C10−アルキル基、C−C15−アリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基であり、各々、アルキル基中1〜10個の炭素原子を有し、アリール基中6〜20個の炭素原子を有し、R2G及びR3Gは、各々、水素、ハロゲン、C−C10−アルキル基、C−C15−アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基又はアルコキシ基であり、各々、アルキル基中1〜20個の炭素原子を有し、アリール基中6〜20個の炭素原子を有し、あるいはC−C10−アルキル若しくはC−C15−アリールを持つアルコキシであり、rは、1〜3の整数であり、s及びtは、0〜2の範囲の整数であり、r+s+tの合計はMの価数に相当する。)からなるものであり、金属アルキル類は、普通、触媒用の活性剤と同一でない。種々の式(I)の金属アルキル類の混合物を使用することも可能である。
【0026】
一般式(I)の金属アルキル類中、Mがリチウム、マグネシウム、ホウ素又はアルミニウムであり、R1GがC−C20−アルキルである金属アルキル類が好適である。
【0027】
式(I)の特に好適な金属アルキル類は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウムであり、特に、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド及びトリメチルアルミニウム並びにそれらの混合物である。アルミニウムアルキル類のアルコール類を用いる部分加水分解生成物も使用できる。
【0028】
最も有用な金属アルキル類はトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム及びブチルリチウムである。
【0029】
帯電防止作用化合物及び金属アルキルを、各場合で、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、特に少なくとも0.1重量%の濃度で接触させ、充分な反応を確保するようにする。短時間の接触の場合、相対的に高濃度が特に重要である。帯電防止作用化合物及び金属アルキルは稀釈して又は稀釈しないで使用することができ、溶液の使用が好適である。不活性炭化水素又はモノマー若しくはモノマー類の1種における使用が特に好適である。
【0030】
帯電防止作用化合物及び金属アルキルは、接触の間、例えば、精製体、溶液状又は懸濁液で存在できる。2成分の一方は担体の形態で存在できる。
【0031】
金属アルキルは、ヘテロ原子に結合する水素(以下、活性水素とも呼ぶ)を結合するのに足る量で使用する。金属アルキルを帯電防止化合物中に含まれる活性水素に対して少なくとも化学両論量で使用するときに特に良好な結果が達成される。化学両論量の1.1〜1.5倍の過剰が特に好適である。
【0032】
このようにして製造した帯電防止剤を全ての慣用法により反応器中に導入することができる。帯電防止剤を、その他の材料と別個に反応器中に導入できる。しかし、アルカン類のような不活性溶媒中の溶液として導入するのが好ましい。
【0033】
反応器中に直接又は反応器に導くライン中に好ましくは導入される。
【0034】
帯電防止作用性化合物と金属アルキルとを接触させることによる帯電防止剤の製造は、重合前に別の装置で行うことができるが、しかし、使用直前に反応器中で帯電防止剤を製造するのが好ましい。反応器に導くライン中又はこのようなラインに接続した容器中で接触させるのが特に好適である。
【0035】
帯電防止剤を触媒と接触状態にする前に接触を行い、接触時間は活性水素の完全反応を確実にするのに足る時間であるべきである。帯電防止作用化合物と金属アルキルとの接触は、反応器への導入前、好ましくは、反応器への導入前少なくとも5秒間で行う。反応器への導入前、10秒〜10時間、より好ましくは、15秒〜1時間、特に好ましくは20秒〜30分が好適である。
【0036】
本発明は、20〜200℃の温度及び0.1〜20MPaの圧力で、本発明の帯電防止混合物を使用する重合触媒の存在下で、不飽和モノマー類、特に1−オレフィン類の重合法をさらに提供する。
【0037】
この方法は、特にオレフィン類の重合に、そして特別に1−オレフィン類(α−オレフィン類、すなわち、末端二重結合を持つ炭化水素)の重合に適切であるが、これらに限定されない。適切なモノマーは、官能化したオレフィン性不飽和化合物、例えば、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル若しくはアミド誘導体、例えば、アクリレート、メタクリレート、若しくはアクリロニトリルであることができる。アリール置換1−オレフィン類を含む非極性オレフィン化合物が好適である。特に好適な1−オレフィン類は、線状若しくは分枝C−C12−1−アルケン類、特に、線状C−C10−1−アルケン類、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン 又は分枝C−C10−アルケン類、例えば、4−メチル−1−ペンテン、共役及び非共役ジエン類、例えば、1,3−ブタジエン、1.4−ヘキサジエン若しくは1,7−オクタジエン又はビニル芳香族化合物、例えば、スチレン若しくは置換スチレンである。種々のα−オレフィン類の混合物を重合させることも可能である。適切なオレフィン類には、二重結合が1個以上の環系を有することのできる環状構造の部分であるものも含まれる。例は、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン若しくはメチルノルボルネン又はジエン類、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン若しくはノルボルナジエン若しくはエチルノルボルナジエンである。二種以上のオレフィン類の混合物を重合させることも可能である。
【0038】
本発明の方法はエチレン又はプロピレンの単独重合又は共重合に特に使用することができる。エチレン重合のコモノマーとして、40重量%までのC−C−1−アルケン類、特に、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び/又は1−オクテンを使用するのが好適である。プロピレン重合における好適なコモノマー類は、40重量%までのエチレン及び/又はブテンである。エチレンが20重量%までの1−ヘキセン及び/又は1−ブテンと共重合させるのが特に好適である。
【0039】
オレフィン類の重合は全ての慣用オレフィン重合触媒を使用して行うことができる。シングルサイト触媒類を使用するのが好適である。本発明の目的のため、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。特に適したシングルサイト触媒は、大きい(bulky)シグマ−又はパイ−結合有機リガンド、例えば、bis−cp若しくはmono−cpコンプレックスに基づく触媒(以下、メタロセン触媒とも呼ぶ)、又は後遷移金属錯体(later transition metal complexes)、特に鉄−ビスマイン(bismine)錯体に基づく触媒を含むものである。
【0040】
さらに、酸化クロムに基づくフィリップス触媒又はTi系チグラー触媒を使用することも可能である。オレフィン重合における既知触媒の製造及び使用は一般的に知られている。
【0041】
ハイブリッド触媒と組み合わせる方法が好適である。本発明の目的のため、ハイブリッド触媒は、少なくとも二種の化学的に異なる出発物質から誘導され、少なくとも二種の異なる種類の活性部位を有する触媒系である。異なる活性部位は、種々のシングルサイト触媒中に含まれる活性部位であることができる。しかし、チグラー・ナッタ触媒又はクロムに基づく触媒、例えば、フィリップス触媒から誘導される活性部位を使用することも可能である。
【0042】
特に好適なハイブリッド触媒は、後遷移金属錯体、特に鉄−ビスマイン錯体、及び少なくとも1種の別のモノ−cp若しくはビス−cpメタロセン又はチグラー触媒を含むものである。
【0043】
重合プロセスは、0〜200℃、好ましくは、25〜150℃、特に好ましくは、40〜130℃の範囲の温度、0.05〜10MPa、特に好ましくは、0.3〜4MPaの圧力下で、全ての工業的に公知の低圧力重合法を使用して実行できる。重合は、回分式又は、好ましくは、1以上の段階の連続式で行うことができる。溶液法、懸濁法、攪拌気相法及び気相流動床法全てが可能である。この種のプロセスは、一般に、当業者に知られている。上記重合法のうち、気相重合、特に、気相流動床反応器、溶液重合及び懸濁法、特に、ループ式反応器や攪拌タンク反応器が好適である。
【0044】
懸濁重合の場合、重合は、通例、懸濁媒体、例えば、イソブタンのような不活性炭化水素若しくは炭化水素の混合物中又はモノマー類自身中で行う。懸濁重合温度は、通例、−20〜115℃の範囲であり、懸濁重合圧力は0.1〜10MPaの範囲である。懸濁中の固形分は一般に10〜80%の範囲である。重合は、回分式(例えば、攪拌オートクレーブ中)及び連続式(例えば、管状反応器中、好ましくは、ループ式反応器中)の双方で行うことができる。特に、米国特許第3242150号及び米国特許第3248179号明細書に記載されている通りのフィリップスPFプロセスにより行うことができる。
【0045】
適切な懸濁媒体は、懸濁用反応器に使用されるのに一般的に知られている全ての媒体である。懸濁媒体は不活性であるべきであり、反応条件下で液状若しくは超臨界状態であるべきであり、蒸留により反応生成混合物から出発物質が回収できるように(可能なら)使用するモノマー類やコモノマー類の沸点と有意に異なる沸点を示すべきである。通例の懸濁媒体は4〜12個の炭素原子を有する飽和炭化水素であり、例えば、イソブタン、ブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタン及びヘキサン、又はその混合物であり、ジーゼル油としても知られている。
【0046】
さらに、好適な懸濁法では、チグラー触媒の共存下で、2又は好ましくは3若しくは4個の攪拌容器のカスケードで重合が行われる。各反応器中で製造されるポリマー画分のモル質量は、好ましくは、反応混合物に水素を添加することにより設定する。重合法は、好ましくは、最高水素濃度でしかも最低コモノマー濃度(モノマー量を基準)で行い、第1反応器中で設定される。後続の反応器では、水素濃度を徐々に減少させ、コモノマー濃度を変化させる(各場合でモノマー量を基準)。好ましくは、モノマーとしてエチレン又はプロピレンを使用し、好ましくは、コモノマーとして、4〜10個の炭素原子を有する1−オレフィンを使用する。
【0047】
チグラー触媒は、一般に、水素濃度の上昇に伴って当該触媒の重合活性の減少を受けるので、又、総変換率の増加に伴って懸濁液のプロセス関連稀釈がもたらされるので、第1反応器中の反応性ポリマー粒子が最長平均滞留時間を示す。この理由のため、添加したモノマーのホモポリマーへの、又は添加したモノマー及びコモノマーのコポリマーへの最高変換率は、下流反応器と比較して、第1反応器中で達成される。
【0048】
ループ反応器中では、重合混合物を循環反応管を介して連続的にポンプ汲み入れする。ポンプ循環の結果として、反応混合物の連続混合が達成され、中に導入した触媒及び供給したモノマーを反応混合物中に分配する。さらに、ポンプ循環は懸濁したポリマーの沈降を防止する。ポンプ循環により反応器壁より反応熱の除去も促進される。一般に、これらの反応器は、1脚以上の上昇管及び1脚以上の下降管を有し、これらは反応熱除去用の冷却用ジャケットにより囲まれ、さらに上記垂直管と連結する水平管部分も有する循環反応器から本質的に構成される。インペラーポンプ、触媒供給設備及びモノマー供給設備並びに排出設備(したがって、一般に、沈降脚)が、通例、管低部に設けられている。しかし、反応器は3管以上の垂直管部分も設置することができ、その結果、蛇行配置(meandering arrangement)が得られる。
【0049】
ポリマーは、一般に、沈降脚を介してループ反応器から連続的に排出される。これらの沈降脚は垂直アタッチメントであり、反応管低部から分岐し、その中でポリマー粒子が沈降できる。ポリマー沈降が特定程度起こった後、沈降脚の低部末端のバルブを短期間開放し、沈降したポリマーを不連続的に排出する。
【0050】
好適な実施態様では、ループ反応器中で、懸濁媒体を基準に、少なくとも10モル%、好ましくは、少なくとも15モル%、特に好ましくは、少なくとも17モル%のエチレン濃度で懸濁重合を行う。これらの態様の目的のため、懸濁媒体は、イソブタン単独のような導入懸濁媒体でなく、溶媒中に溶解したモノマー類を含むこの導入懸濁媒体の混合物である。懸濁媒体のガスクロマトグラフ分析によりエチレン濃度を容易に決定できる。好適な重合プロセスは、水平若しくは垂直攪拌気相又は流動気相中で行う。
【0051】
流動床反応器中の気相重合が特に好適であり、当該反応器中で、反応器の低部末端に循環反応器ガスを供給し、その上部末端で再度排出する。1−オレフィンの重合についてこのようなプロセスを使用するとき、循環反応器ガスは、通例、重合される1−オレフィンの混合物であり、所望の場合、水素のような分子量調節剤や窒素のような不活性気体及び/又はエタン、プロパン、ブタン、ペンタン若しくはヘキサンのような低級アルカン類の混合物である。さらに低級アルカン類と組み合わせるのが適切である場合、プロパンの使用は好適である。反応器ガスの速度は、第1に、重合領域として作用する管中に存在する微細分割したポリマーの混合床を流動するのに充分高くなければならず、第2に、効率的に重合熱の除去(濃縮しないで)するのに足るものでなければならない。重合は、濃縮した形態若しくは超濃縮した形態で行うこともでき、循環ガスの一部は露点未満に冷却し、二相混合物として又は液相と気相として分離して共に反応器中に戻され、反応ガスを冷却するのに蒸発のエンタルピーの追加の使用をするようにする。
【0052】
気相流動床反応器では、0.1〜10MPa、好ましくは、0.5〜8MPa及び特に好ましくは、1.0〜3MPaの圧力で行うことを推薦できる。加えて、冷却容量は、流動床中の(共)重合を行う温度に依存する。プロセスは、30〜160℃、特に好ましくは65〜125℃の温度で有利に行われ、この範囲の上部の温度は、相対的に高密度のコポリマーに好適であり、低部の温度はより低密度のコポリマーに好適である。
【0053】
2箇所の重合領域が互いに連結した多領域反応器を使用することも可能であり、ポリマーはこれらの2領域間を複数回交互に通過し、これらの2領域は異なる重合条件を有することもできる。このような反応器は、例えば、WO97/04015号及びWO00/02929号公報に記載されている。
【0054】
異なるあるいは同一重合プロセスも、所望の場合、互いに連続して連結することもでき、こうして重合カスケードを形成する。2以上の同一又は異なるプロセスを使用する反応器を操作することもできる。しかし、重合は、好ましくは、単一反応器中で行う。
【0055】
上記した全ての文献を本願に参照として含める。本特許出願の全ての割合及び比率は、特記しない限り対応する混合物の総重量を基準とした重量基準である。ガス混合物の場合全ての数字は、特記しない限り容量である。
【0056】
触媒のクロム含量は過酸化物錯体を経て光度計により決定した。
【0057】
ポリマー試料の密度は、DIN EN ISO 1183−1、変法Aに準拠して決定した。
【0058】
極限粘度η(ポリマー濃度の外挿における粘度数の限度値を0にして表示する)は、自動ウンベローデ粘度計(Lauda PVS 1)を使用して、ISO 1628−1:1998に準拠して135℃で溶媒としてデカリン中の濃度0.001g/mlで行った。
【0059】
溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン及び1ml/分、140℃使用してDIN 55672に基づく方法により高温ゲル透過クロマトグラフィーによりモル質量を決定した。Waters 150CでPE標準品により基準化を行った。データの評価は、HS−Entwicklungsgesellschaft fur wissenschaftiche Hard−und Software mbH、Ober−Hibersheim 製ソフトウエア Win−GPCを使用して行った。モル質量分布及びそれから誘導される平均Mn、Mw及びMw/Mnは、DIN55672に基づきWATERS 150Cを使用して高温ゲル透過クロマトグラフィーにより行った。直列に連結したカラムは:下記の条件下の、3×SHODEX AT 806MS、1×SHODEX UT 807及び1×SHODEX AT−G、下記の条件下:溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(0.025重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールで安定化)、流れ:1ml/分、500μl注入量、温度:135℃、PE標準品を使用する較正で行う。評価をWIN−GPCにより行った。カラムは、100〜10g/モルのモル質量を有するポリエチレン標準品により基準化した。ポリマーの重量平均モル質量(Mw)及び数平均モル質量(Mn)並びに重量平均モル質量対数平均モル質量の比(Mw/Mn)を決定した。
【0060】
嵩密度をDIN 53468に準拠してポリマー粉末で測定した。
【0061】
溶融質量流量(melt mass flow rate)MFR(MI)、MFR21(HLMI)を、ISO 1133に準拠して190℃の温度及び2.16又は21.6kgの重量で決定した。
【0062】
微粉(fine dust)含量は、125μm未満の粒度を有するプリマー粒子の割合である。粒度は篩分析により決定した。
【実施例】
【0063】
本発明を下記の実施例により例証するが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
(実施例1及び比較例1)
a)触媒の製造
EP A 0589350号明細書に記載されている通りにして1重量%のクロム含量の触媒を調製した。
b)活性化
触媒前駆体の活性化を表1に示したか焼温度で行った。触媒の総質量を基準に、2.5重量%のアンモニウムヘキサフルオロシリケート(ASF)を加えた。活性化を行うために、触媒前駆体を1時間にわたって350℃に加熱し、この温度に1時間維持し、続いて、か焼温度に加熱し、この温度に2時間維持し、続いて冷却し、窒素下350℃以下の温度で冷却を行った。
c)重合
重合を0.2mPFループ反応器中でイソブタンの懸濁プロセスとして行った。溶融質量流量(MFR21)及び密度をエチレン濃度又はヘキセン濃度により設定した。反応気圧は3.9MPaだった。
【0065】
比較例C1では、精製Costelan AS 100(ヘキサン中0.44重量%)を重合に使用し、実施例1では、ヘキサン中の0.44重量%濃度のCostelan AS 100(Costelan製、Eschborn、Germany)2部とヘキサン中0.40重量%濃度のトリヘキシルアルミニウム(THA)1部を混合することにより調製した帯電防止剤を使用した。重合条件及び結果を表1に要約する。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から、本発明の帯電防止混合物はより高い生産性と嵩密度をもたらし、併せて、より低い微粉含量及び混練物質のMFR降下(均質化後顆粒で測定したMFRと粉末で測定したMFRとの差)ももたらす。触媒に対するTHAを含有する帯電防止混合物の毒性作用は、純帯電防止剤の毒性作用よりも顕著に低く、驚いたことに帯電防止作用はさらに改良される。
【0068】
本発明の混合物は、高い触媒効率及びより高い嵩密度(すなわち、より高い反応器ポリマー密度)の結果として生産コストを相当に低減化でき、同時に、改善した製品品質を達成できる。顆粒化していないポリマー粉末のプロセスは、より高い嵩密度の結果としてプロセスプラントの処理量を増加させることができる。
【0069】
(実施例2)
Costelan AS 100とトリヘキシルアルミニウム(THA)との混合物を製造した。Costelan AS 100及びさらにTHAの双方がヘキサンの希釈溶液として存在し、これの溶液を2:1の比率で混合した。すべての場合で均質溶液を得た。すべての測定を20℃の温度で行った。混合状態のヘキサン中のCostelan AS 100及びTHAの濃度を表2に示す。
【0070】
混合後直ちにこれらの溶液の導電率を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から、新規な配合物は低濃度で顕著に改良した導電率を示すことが分かる。驚いたことに、THA及びCostelan AS 100の混合物は、個々の成分の合計よりも高い導電率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)非金属ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含む少なくとも1種の帯電防止作用化合物と
b)ヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子と完全に反応するに足る量の少なくとも1種の金属アルキルと
を接触させることによるオレフィン重合用帯電防止剤の製造方法であって、少なくとも1種の帯電防止作用化合物及び少なくとも1種の金属アルキルは各々接触中少なくとも0.01重量%の濃度で存在する、前記オレフィン重合用帯電防止剤の製造方法。
【請求項2】
帯電防止作用化合物は、−OH、−COOH、−NH、−NHR、−SH、−PH、−PHR及び−SOHから選択される官能基を含み、式中、Rはアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、ここで、炭素原子の1個以上がヘテロ原子により置換されていても良い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
帯電防止作用化合物(1)はポリスルホンコポリマー、ポリマーポリアミン及び油溶性スルホン酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属アルキルはアルミニウムアルキル類、リチウムアルキル類、ホウ素アルキル類及び亜鉛アルキル類の中から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得ることのできる、ポリオレフィン用帯電防止剤。
【請求項6】
油溶性スルホン酸の金属アルキルスルホネートを含む請求項5に記載の帯電防止剤。
【請求項7】
ポリスルホンコポリマー及びポリマーポリアミンを含む請求項6に記載の帯電防止剤。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の帯電防止混合物及び重合用触媒の共存下で、重合用反応器中で、1−オレフィン類を20〜200℃の温度及び0.1〜20MPaの圧力で重合させる方法。
【請求項9】
金属アルキルと帯電防止化合物との接触を反応器中に導入前直ちに又は導入中に行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属アルキルと帯電防止化合物との接触時間が、重合反応器中への導入まで10秒〜10時間である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
重合触媒が、少なくとも1種のチグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒又は遷移金属配意化合物、特にメタロセン及び/又は後遷移金属錯体を含む触媒を含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
エチレンを単独重合させる、又はエチレンを40重量%(総ポリマー基準)までのプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテンと共重合させる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
プロピレンを単独重合させる、又はプロピレンを40重量%(総ポリマー基準)までのエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテンと共重合させる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
重合反応器が気相流動床を含む、請求項8〜13のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−536673(P2009−536673A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508219(P2009−508219)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003944
【国際公開番号】WO2007/131646
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】