説明

オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒およびそれを用いたポリオレフィンの製造方法

【課題】良好な性状のポリマーを、高活性で得ることができるオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合触媒およびそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】次の特性1及び特性2を満たすイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分など。
特性1:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径が2〜6nmであること。
特性2:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積が0.14ml/g以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒および該触媒を用いたポリオレフィンの製造方法に関し、更に詳しくは、特定の構造を有するイオン交換性層状珪酸塩を用いることにより、オレフィン重合用触媒の活性が高く、低コストでポリオレフィンの製造を可能にする触媒成分、触媒およびポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘土または粘土鉱物をオレフィン重合用触媒成分として利用した触媒の存在下に、オレフィンを重合して、オレフィン重合体を製造することは公知である(例えば、特許文献1参照。)。また、酸処理、塩処理または酸と塩との共存下に処理を行ったイオン交換性層状化合物を成分として含むオレフィン重合触媒も、知られている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
さらに、製造するポリマーの粒子性状の改良や反応器や配管へのファウリング防止のために、あらかじめ予備的な重合を行う方法(例えば、特許文献5、6参照。)や、粘土または粘土鉱物を造粒することにより性状の良い重合パウダーを得る方法も、知られている(例えば、特許文献7参照。)。
【0003】
別の手法として、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理において、処理中に処理剤濃度を変更させたイオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として用いる方法も知られている(例えば、特許文献8参照。)。これは、化学処理中の処理剤濃度を変化することによって、イオン交換性層状珪酸塩の膨潤力が処理中に変化し、化学的および物理的性質を変えることができるため,このようにして製造したイオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として用いた場合、得られたポリマーの粒子性状が良好になるという思想に基づいている。ここで、イオン交換性層状珪酸塩の膨潤力とは、層間に水分子が配位して、層間が押し広げられる程度のことを意味している。
さらに、イオン交換性層状珪酸塩を含む粘土・粘土鉱物は、溶液中で粘土の微粒子(粘土粒子)として分散や凝集という性質を示す。粘土粒子は、溶液の状態(pHや温度など)によって、膨潤し分散したり、膨潤せずに凝集して沈殿したりする。粘土粒子に対する処理の均一性を考えた場合、処理中に高濃度から低濃度へと変化させることで、粘土粒子は、膨潤し分散状態になり、新たな粘土粒子の端面が発生するが、先に処理された部分が続けて処理されるため、酸処理は、不均一進行しサイズの大きな細孔が増えることにつながる。このような不均一処理は、酸処理による金属成分の溶出が結晶層間や結晶構造内に酸が侵入することと関係しているため、結晶構造が歪んだところから優先されるという現象から予想できる。逆に、低濃度から高濃度へと変化させた場合は、処理途中で粘土粒子は、膨潤しにくくなり凝集する。よって、最初は露出し処理が進行していた端面は、濃度変化による凝集で覆い隠された状態になり、処理は進まなくなってしまう。このように凝集した粘土粒子の表面で処理は、進行し,この場合も、処理は不均一に進行しサイズの大きな細孔が発生することになる。
このようにしてサイズの大きな細孔を作ることで、メタロセン錯体を担持させた場合に、活性点が適度に分散し、重合熱が効率良く分散されることから、ポリマー同士の接着が改善される。一方で,活性向上については,触れていない。
【0004】
また、酸処理について着目した技術としては、高い酸濃度により処理したイオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として用いる方法も知られている(例えば、特許文献9参照。)。これは,高濃度の酸で凝集した粘土粒子を局所的に処理することでサイズの大きな細孔を発生させ、オレフィン重合用触媒成分として用いた場合に、ポリマーの粒子性状を改善することができる。同時に、このような製造方法から作られると、表面積も大きく増加させることができ、触媒活性も向上することが記載されている。
【0005】
さらに、最近では、特定の構造を持つイオン交換性層状珪酸塩を用いることにより、ポリマー同士の付着が少なく、反応器への付着等が改良されることも、知られている(例えば、特許文献10〜12参照。)。これらは、ファウリングが起こりやすく製造が困難な低融点ポリマーの重合においても、比較的大きな細孔を持ち、かつ細孔容積が大きいイオン交換性層状珪酸塩を用いることによって、均一に予備重合が進行する触媒系が得られ、嵩密度が高く、凝集量が少ない等、粉体性状の良好な重合ポリマーが得られるというものである。比較実験例として例示されているイオン交換性層状珪酸塩は、比較的小さな細孔を有しているが、化学処理において溶液中のイオン強度が高く、粘土粒子の膨潤力は、限定され、イオン交換性層状珪酸塩の酸処理は、不均一に行われたものとなっており、低活性で、かさ密度は低く、凝集量が多い等、粉体性状の悪い重合ポリマーが得られている。
【0006】
イオン交換性層状珪酸塩は、酸処理によって、表面の不純物が除かれるだけでなく、主として、八面体構造層を構成する原子、例えば、アルミニウムや鉄、マグネシウム等のイオンが溶出し、細孔容積や表面積が増加する。一般的に細孔容積や表面積が増加すると、活性成分の担持量が増加して高い活性を示すことが多い。
しかしながら、これをオレフィン重合用触媒成分として用いた際には、細孔容積や表面積が増加しても、必ずしも高い活性を示さない。上記のようなこれまでの技術だけでは、オレフィン重合用触媒成分について、より高活性な重合用触媒を得るためには、未だ十分でなく、さらなる技術向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−301917号公報
【特許文献2】特開平7−309907号公報
【特許文献3】特開平8−127613号公報
【特許文献4】特開平10−168109号公報
【特許文献5】特開平5−295022号公報
【特許文献6】特開平10−168130号公報
【特許文献7】特開平12−1310号公報
【特許文献8】特開2001−31720号公報
【特許文献9】特開2002−37812号公報
【特許文献10】特開2002−88114号公報
【特許文献11】特開2003−105015号公報
【特許文献12】特開2003−252924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の状況や問題点に鑑み、良好な性状のポリマーを、高活性で得ることができるオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合触媒およびそれを用いたポリオレフィンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の構造を持ったイオン交換性層状珪酸塩を、オレフィン重合用触媒成分として用いることにより、触媒活性の顕著な向上効果を示すとの知見を得た。さらに、本発明者等は、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理を特定のイオン強度にて行い、イオン交換性層状珪酸塩の膨潤力を制御することによる構造変化、特に、八面体構造層を形成する原子の溶出量と細孔容積およびその分布を詳細に検討した結果、イオン交換性層状珪酸塩の持つ細孔のうち、より微小な細孔を多く有するイオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として使用することによって、活性が顕著に向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、次の特性1及び特性2を満たすイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
特性1:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径が2〜6nmであること。
特性2:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積が0.14ml/g以上であること。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、下記の数式(1)で定義される溶液中のイオン強度が0.05〜8.00mol/Lの条件で化学処理されたものであることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
イオン強度(mol/L)=0.5×Σ(溶液中のイオンのモル濃度mol/L×(イオンの電荷数))・・・数式(1)
【0012】
本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定したBET比表面積が270m/g以上であることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩が酸処理されたものであり、酸処理によってイオン交換性層状珪酸塩の八面体構造層を構成する主金属原子の溶出する割合が10〜60%であることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩がスメクタイト族の珪酸塩であることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、下記成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(a):周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):第1〜5のいずれかの発明に係るイオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明に係るオレフィン重合用触媒を使用してオレフィンを重合することを特徴とするポリオレフィンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオレフィン重合用触媒成分を用いることにより、良好な性状のポリオレフィンのポリマーを高活性に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.オレフィン重合用触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒成分には、次の特性1及び特性2を有するイオン交換性層状珪酸塩を使用する。
特性1:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径が2〜6nmであること。
特性2:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積が0.14ml/g以上であること。
【0017】
ここで窒素吸着法による平均細孔径、細孔容積およびBET比表面積の測定方法について、以下に示す。
固体による気体の吸着量は、温度一定の場合、固体と気体が決まれば、吸着相互作用のポテンシャルは、ほぼ一定であると考えることができるので、吸着量は、圧力のみの関数となり、これを一般的に吸着等温線と呼ぶ。吸着ガスを窒素として、液体窒素温度下で吸着等温線を測定した。得られた吸着等温線を用いてBET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。
BET比表面積は、一般的に相対圧P/P(Pは大気圧)=0.05〜0.35付近で、良い直線が得られる範囲で解析され、BETプロットを確認しながら、解析範囲を決めた。
また、細孔容積は、吸着側及び脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析により細孔分布を求めた。求めた細孔容積の範囲は、イオン交換性層状珪酸塩の粒子内細孔であることを考慮して、メソ孔細孔(細孔径2〜50nm)を対象とした。尚、細孔の大きさによってミクロ孔、メソ孔、マクロ孔に分けられ、IUPACでは、直径2nm以下の細孔をミクロ孔、直径2〜50nmの細孔をメソ孔、直径50nm以上の細孔をマクロ孔と定義している。
【0018】
本発明では、平均細孔径は、細孔構造を円筒形と仮定して、細孔容積とBET比表面積から、以下の式に従い、算出した。
(平均細孔径)=(4×全細孔容積)/(BET多点法による比表面積)
【0019】
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径は、2〜6nmであり、好ましくは4〜6nmである。平均細孔径が2nm以下になると、金属錯体が担持する部位がなくなってしまうと考えられ、活性が低下する。一方、平均細孔径が6nmを超えると、大きいサイズの細孔が多くなって、触媒の均一な活性化が損なわれ、また、活性点が減少してしまうと考えられ、活性が低下してしまう。
この2〜6nmという大きさは、イオン交換性層状珪酸塩の端面に当たる部分であると考えられる。そのため,凝集体として存在している粒子が、後述する化学処理中に所望のイオン強度の条件によって膨潤、分散し、イオン交換性層状珪酸塩の端面が露出することで、形成されていく細孔を示していると、考えている。
【0020】
また、そのメソ孔細孔のうち、細孔径が2〜6nmの範囲の細孔を微小細孔とした。
本発明では、窒素吸着法により測定したイオン交換性層状珪酸塩の細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は、0.14ml/g以上であり、好ましくは0.15ml/g以上である。上限は、0.4ml/gである。
微小細孔容積が0.14ml/gより小さいと、活性が低下してしまう。この容量は、大きいほうが好ましいが、大きすぎると、粒子が脆くなって形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまう。
後述するように、イオン交換性層状珪酸塩を、イオン強度が低い状態で化学処理する工程を設けることで、粘土粒子の端面で均一に金属の溶出が起こるため、細孔径2〜6nmの細孔量が増加し、微小細孔容積を0.14ml/g以上にすることができる。このような微小細孔量は、粘土粒子の八面体構造を有する主金属原子の割合を化学処理前後で変化させることによる制御も可能で、酸処理前の含有量に対して、10〜60%減少させることが好ましい。
【0021】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、上記2つの特性を有することが好ましいが、更に窒素吸着法により測定したイオン交換性層状珪酸塩のBET比表面積が270m/g以上である特性を有することがより好ましい。比表面積は、活性種となり得る金属錯体の担持部位を制御し、より大きい方が好ましい。これより小さくなると、活性が低下する。一方、活性に対しては大きいことが好ましいが、大きすぎると、粒子が脆くなって形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまう。BET比表面積の上限は、400m/gである。
【0022】
上記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩は、以下の方法によって製造することができる。
本発明に使用されるイオン交換性層状珪酸塩の原料は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で並行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。多くのイオン交換性層状珪酸塩は、天然には粘土鉱物の主成分として産出されるため、その以外の夾雑物(石英やクリストバライト等が挙げられる。)が含まれることが多いが、それらを含んでいても良い。
また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、天然のものに限らず、人工合成物であっても良い。当該、珪酸塩の具体例としては、例えば、「粘土鉱物学」(白水春雄著、朝倉書店、1995年)に記載されている次のようなものが挙げられる。
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルタイト、アンチゴライト等の蛇紋石族。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等。
これらは混合層を形成していてもよい。
【0023】
これらの中では、膨潤性を有するイオン交換性層状珪酸塩が好ましい。また、主成分が2:1型構造を有するイオン交換性層状珪酸塩がより好ましい。さらに好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、特に好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
八面体層を構成する金属の種類としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタンなどであり、その含有量は5〜20wt%である。他にも微量層間イオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有されるイオン)の種類としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属等、工業原料として比較的容易にかつ、安価に入手し得る観点から好ましい。
【0024】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、造粒することが可能であり、また好ましい。造粒方法としては、特に制限されないが、好ましい造粒手法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒、流動層造粒、噴流層造粒、液中造粒、乳化造粒等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒が挙げられる。
【0025】
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。
球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液中における層状ケイ酸塩の濃度は、0.1〜70wt%、好ましくは5〜50wt%、特に好ましくは7〜45wt%、非常に好ましくは10〜40wt%である。上記濃度の上限を超えると、球状粒子が得られず、また上記濃度の下限を下回ると、造粒体の平均粒径が小さくなりすぎる。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0026】
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したものを用いてもよい。
【0027】
造粒したイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、5μm以上、100μm以下であり、球状であることが好ましい。5μm未満の微粒子が多く存在すると、反応器への付着等が起こりやすく、ポリマー同士の凝集、重合プロセスによってはショートパスあるいは長期滞留の要因となってしまい好ましくない。100μm以上の粗粒子については、閉塞が起こりやすい等の問題が生じるために好ましくない。これらを満たす平均粒径とするために、あるいは平均粒径に対して極度に小さい、または大きい粒径を示す粒子が存在する場合には、分級、分別等により粒径を制御してもよい。
【0028】
本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩は、化学処理を行うことによって製造できる。化学処理には、イオン交換性層状珪酸塩を酸類で処理する酸処理、アルカリ類で処理するアルカリ処理、無機塩類で処理する塩類処理、また、有機物で処理する有機物処理など様々な処理がある。化学処理は、単独でも行って良いし、組み合わせても、また、同時に行っても良い。好ましくは、酸類による酸処理を行った後に、その他の化学処理を行うことが良い。また、化学処理とは、本発明において、特に酸類による処理のことを示し、酸類を含んだ状態で、その他の化学処理を同時に行うことが好ましい。
【0029】
本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩を製造するには、低い濃度の酸、つまりイオン強度が低い状態で化学処理を行い、均一溶出が優先して進行するように、調製する。それは、イオン交換性層状珪酸塩が酸処理される際に、イオン交換性層状珪酸塩が膨潤する状態において、穏やかな条件で酸処理し、膨潤させつつ酸により八面体構造層を構成する金属成分の溶出を均一にさせることによって、本発明のイオン交換性層状珪酸塩の特定の細孔構造が得られるためである。
【0030】
化学処理について、以下,さらに詳しく説明する。
イオン交換性層状珪酸塩は、層間に水分子が配位して膨潤する性質を有する。また、溶液中では、微小な粘土粒子として懸濁し、分散または凝集して存在する。分散と凝集は、主に粘土粒子間のファンデルワールス力と静電反発力に支配され、この2つの力の大小関係によって粒子間に働く力が決まる。粘土粒子が水中に懸濁したときの挙動は、粒子の形態、表面電荷、懸濁液のpHなどによって影響され、非常に複雑であるが、基本的には球状粒子の電気二重層に基づいた理論で説明される。
この理論によれば、一般に粘土粒子を分散させるということは、電気二重層の厚みを増加させることにつながり、溶液中のイオン強度を小さくすることが必要となる。逆に、凝集させることは、イオン強度を大きくすることが必要となる。つまり、粘土粒子は、低イオン強度の溶液中では分散した状態となり、そのような状態で化学処理をすることで、凝集しているときには、露出されていない部分も露出し処理されるため、高活性なイオン交換性層状珪酸塩が形成される。さらに、膨潤という現象も、この分散・凝集と同様に、イオン強度が関係しており、高イオン強度下では、層間への水分子の配位は妨げられるため、膨潤しにくくなり、一方、低イオン強度下では、配位しやすい環境となるため、膨潤しやすくなる。
【0031】
本発明は、上記考えや発明思想に基づき、特定の化学処理条件で製造することのできる平均細孔径が2〜6nmで、細孔径2〜6nmの細孔容量が0.14mL/g以上であるイオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として用いると、従来技術から得られたものよりも、高活性に重合が進行することを見出した。
このような特性を有するイオン交換性層状珪酸塩を製造するには、上述のように化学処理中の粘土粒子の懸濁状態を制御して、粘土粒子が適度に分散および膨潤した状態にすることが必要で、化学処理中の溶液のイオン強度がキー(かぎ)となる。
ここで、イオン強度とは、一般的な理化学辞典などに記載されているように、溶液中に存在するイオンのモル濃度にイオンの電荷数の二乗をかけた総和に、さらに0.5をかけたものとして定義する。つまり、イオン強度は、下記の数式(1)で定義される。例えば、硫酸水溶液であれば、濃度2mol/Lの硫酸水溶液におけるイオン強度は、5mol/Lとなる。
イオン強度(mol/L)=0.5×Σ(溶液中のイオンのモル濃度mol/L×(イオンの電荷数))・・・数式(1)
【0032】
本発明で好ましい化学処理におけるイオン強度は、0.05mol/L以上であり、8.00mol/L以下である。また、0.75mol/L以上、8.00mol/L以下であることが好ましく、1.00mol/L以上、7.50mol/L以下であることがより好ましく、1.50mol/L以上、7.00mol/L以下であることがさらに好ましい。
イオン強度が低すぎる場合は、処理に時間を要することから、製造効率が低下し、工業的に有用な方法とは言えない。一方,イオン強度が8.00mol/Lよりも高い場合は、先に述べたように、溶液中で粘土粒子は、膨潤しにくくなり、さらに凝集するために、不均一処理となり、充分な性能を示すイオン交換性層状珪酸塩を得ることはできない。さらに,もっとも最初におこなう化学処理において、溶液中に酸類を含みイオン強度が上記範囲内にあることが好ましい。
【0033】
イオン交換性症状ケイ酸塩の化学処理において、酸類で処理する酸処理について、詳しく説明すると、次のようなことが起こる。
イオン交換性層状珪酸塩を酸で処理すると、先ず、交換性陽イオンが溶出し、溶液中に存在する陽イオンと交換が起こり、次いで、結晶構造に影響を与えて分解し、八面体層を構成する金属が溶出していくようになる。
分解の程度は、酸の濃度、処理時間、酸の種類によって異なるが、マグネシウムを多く含むものが一般に大きく、次いで鉄の多いもの、アルミニウムの多いものの順になる。また、結晶度が高く粒子の大きいものほど、分解性が低いが、これは、酸が結晶層間や結晶構造内に侵入することと関係している。
【0034】
また、溶出については、結晶格子の全ての八面体層にミクロな空隙を有する均一な構造が生成すると考えられる均一溶出と、ある特定の部位の金属イオンが溶出して生成した珪酸と層状珪酸塩の複合体が生成する不均一溶出の機構が考えられる。
高濃度な酸によって長時間酸処理を行うと、すなわちイオン強度が高い場合、不均一溶出が優先して進行して、局所的に酸処理が進行したようになり、細孔構造としては、大きな細孔が増加することになる。従来、細孔容積を増加させることを目的とすれば、高濃度で処理することで得られ、製造効率も高いが、本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩は、得られない。
【0035】
酸処理の条件としては、イオン交換性層状珪酸塩の八面体構造層を構成する主金属原子の溶出する速度を小さくする必要がある。温度は、40〜100℃がよく、好ましくは50〜100℃である。さらに好ましくは、60〜100℃である。あまり温度を低下させると、極端に金属成分の溶出速度が低下し、製造効率が低下する。一方、温度を上げ過ぎると、操作上の安全性が低下する。
また、酸処理時の酸濃度(反応系全体重量に対する酸の重量百分率)は、反応温度にも
よるが、3〜20wt%がよく、好ましくは5〜15wt%、より好ましくは7〜12wt%である。濃度が低くなると、金属成分の溶出が進行せず、製造効率が低下する。一方、酸濃度が高いと、平均細孔径の大きい細孔が増加し、微小細孔が減少してしまい、好ましくない。
【0036】
また、イオン交換性層状珪酸塩の濃度は、3〜50wt%の範囲で調製できる。好ましくは5〜30wt%、さらに好ましくは5〜20wt%である。濃度が低くなると、金属成分の溶出が進行せず、製造効率が低下する。一方、濃度が高いと、スラリーの粘度が上昇してしまい、均一に攪拌混合が困難になる。
【0037】
酸処理は、複数回に分けて行うことも可能である。
使用する酸化合物は、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
【0038】
また、造粒前、造粒時に、特定の微粒子状固体化合物をイオン交換性層状珪酸塩に添加することもよく、この場合には、通常の珪酸塩の酸処理と同時に微粒子状固体を溶出させることも目的の一つである。この場合、微粒子状固体は、中性付近の水中では難溶性を示し、酸性水溶液中では、溶解するものを使用することによって、微粒子状固体が存在していた部分を空孔に変えることが可能となる。
【0039】
化学処理、特に酸処理によって溶出する八面体構造層を構成する主金属原子の割合は、化学処理前の含有量に対して、10〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%、さらに好ましくは25〜50%、特に好ましくは30〜45%である。溶出割合が小さいと、細孔容積が小さく、また、比表面積が小さくなってしまう。一方、溶出割合が大きいと、平均細孔径の大きい細孔が増加し、微小細孔が減少してしまい、好ましくない。
ここで、酸などによって溶出する溶出割合とは、酸処理前のイオン交換性層状珪酸塩の八面体層を構成する主金属原子が、酸処理によって溶出する割合を示すが、その算出方法としては、イオン交換性層状珪酸塩の珪素原子に対する八面体層を構成する主金属原子とのモル比を酸処理によって減少する割合として求めたものである。
本発明において、主金属原子とは、モル数が最多の金属原子を指し、具体的には、アルミニウム(Al)原子、マグネシウム(Mg)原子などが該当する。
【0040】
上記化学処理を実施した後に、洗浄することが好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。洗浄および脱水後は、乾燥を行う。一般的には、乾燥温度は100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能であり、特に好ましくは150〜300℃である。800℃を超えると、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊を生じるおそれがあるので、好ましくない。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては、特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0041】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、膨潤する状態において、穏やかな条件で酸処理し、膨潤させつつ酸で端面を処理することが処理を均一にさせるため、酸処理を施していることが好ましいが、酸処理前、酸処理中または後に、さらに、塩類処理、インターカレーションなどの化学処理を施しても良い。酸処理中に塩を共存させることにより、より酸処理が均一に進行し、好ましい。
【0042】
さらに、一般に、イオン交換性層状珪酸塩には、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して使用するのが好ましい。水の除去には、通常、加熱処理が用いられる。その方法は、特に制限されないが、付着水、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。
加熱時間は0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上である。その際、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが好ましい。
以上、本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩の製造方法を述べてきたが、本発明の特性が得られる製造方法は、上記に限らず、製造することが可能である。
【0043】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、オレフィン重合用触媒成分として、好適に用いられる。オレフィン重合用触媒とは、一般的に、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
本発明では、好適には成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて、オレフィン重合用触媒を調製することがきる。
成分(a):周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):上述したイオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0044】
(1)成分(a)
本発明で使用する成分(a)の周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物は、共役5員環配位子を少なくとも一個有するメタロセン化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物である。
【0045】
【化1】

【0046】
上記一般式(1)〜(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子酸素原子、珪素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子を示し、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期律表4〜6族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びX’は、同一でも異なっていてもよい。)を示す。
【0047】
AおよびA’としては、例えば、シクロペンタジエニル基を挙げることができる。シクロペンタジエニル基は、水素原子を五個有するもの[C−]であってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。
この置換基の例としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときに、その内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。後者の例としては、2個の置換基がそれぞれω−端で結合して、該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、即ちインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、および縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基が挙げられる。
AおよびA’で示される共役五員環配位子の好ましい具体的例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基等が挙げられる。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基、またはアズレニル基である。
【0048】
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば、−Si(R)(R)(R)で示される珪素含有炭化水素基、−P(R)(R)で示されるリン含有炭化水素基、または−B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を示す。
【0049】
さらに、シクロペンタジエニル基上の置換基として、少なくとも1つの第15〜16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有しても良い。この場合、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想から、第15〜16族元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であるメタロセン錯体がさらに好ましい。
第15〜16族元素の配位子上の位置は、特に制限は無いが、2位の置換基上に有することが好ましい。さらに好ましくは2位の置換基が、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式であることが好ましい。また、好ましくはケイ素もしくはハロゲンを含んでもよい炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基は、5員環構造が好ましく、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子、硫黄原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0050】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基類
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基類
【0051】
さらに、具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類およびシリレン基類である。
【0052】
また、Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる金属原子遷移金属を、好ましくは周期律表第4属金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
【0053】
Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。好ましい具体例としては、酸素原子、イオウ原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素、臭素、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0054】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、および炭素数1〜12のアミノ基が特に好ましい。
【0055】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1−メチル−3−トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1−メチル−3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2−メチル−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0056】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1−[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1−[2−メチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−7−フルオロ−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0057】
(21)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン−1,2−ビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3−(2−フリル)−2,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2−(2−(5−メチル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2−(2−(2−(5−トリメチルシリル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2−(2−チエニル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2−(2−(5−メチル)フリル)−4−フェニルインデニル][2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0058】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2−メチルインデニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3,6−ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、
(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0059】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2−メチルインデニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0060】
本発明で使用する遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましく、さらに、置換基に縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基を有する化合物が特に好ましい。
なお、一般式(1)〜(4)で示される遷移金属化合物は、同一の一般式で示される化合物および/または異なる一般式で表される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウム、チタニウムは、ハフニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0061】
(2)成分(c)
成分(c)は、有機アルミニウム化合物である。
本発明で成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR3−n で表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の、mは1〜2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0062】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0063】
(3)オレフィン重合用触媒の調製
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて、触媒とする。
その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に、成分(c)を添加する。
(iii)成分(b)と成分(c)を接触させた後に、成分(a)を添加する。
(iv)成分(a)と成分(c)を接触させた後に、成分(b)を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0064】
好ましい接触方法は、成分(b)と成分(c)を接触させた後、未反応の成分(c)を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分(c)を成分(b)に接触させ、その後、成分(a)を接触させる方法である。この場合のAl/遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜6の範囲である。
【0065】
成分(b)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(a)が存在していても良い)温度は、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この範囲より低い場合は、反応が遅く、また、高い場合は、成分(a)の分解反応が進行するという欠点がある。
また、成分(a)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(b)が存在していても良い)場合には、有機溶媒を溶媒として存在させることが好ましい。この場合の成分(a)の有機溶媒中での濃度は、高い方が好ましい。好ましい成分(a)の有機溶媒中での濃度の下限は、好ましくは3mmol/L、より好ましくは4mmol/L、さらに好ましくは6mmol/Lである。下限を超えると、反応が遅く、十分に反応が進行しないおそれがある。
成分(b)1gにつき、遷移金属錯体が0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。
成分(b)は、酸点を持つことが好ましい。好ましい酸点の量の下限は、成分(b)1gにつきpKa<−8.2以下の強酸点が30μmol、より好ましくは50μmol、さらに好ましくは100μmol、特に好ましくは150μmolである。酸点の量は、特開2000−158707号公報の記載の方法に従い、測定する。
【0066】
これらは、重合槽内で、あるいは重合槽外で接触させ、オレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは、炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数3以上のオレフィンがよい。
【0067】
また、本発明の触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0068】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が、成分(b)1gに対し、好ましくは0.01〜100g、さらに好ましくは0.1〜50gである。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
また、予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、特に好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃である。この範囲を下回ると、反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、一方、上回ると、予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
【0069】
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で実施することもでき、かつこれが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度には、特に制限は無いが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0070】
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いてもよいし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし、静置させてもよい。
【0071】
3.ポリオレフィンの製造方法
前記成分(a)、成分(b)、及び必要に応じて用いられる成分(c)からなるオレフィン重合用触媒を用いて行う重合は、オレフィン単独あるいは該オレフィンと他のコモノマーとを混合接触させることにより、行われる。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0072】
重合し得るオレフィンとしては、炭素数2〜20程度のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7−メチル−1,7−オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンである。共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを選択して用いることができる。
【0073】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜2000kg/cmG、好ましくは0〜60kg/cmGが適当である。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、物性測定に使用した分析機器および測定方法は、以下の通りである。
【0075】
(各種物性測定法)
(1)イオン交換性層状珪酸塩の組成分析:
JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量した。
(2)細孔測定および比表面積測定:
窒素吸脱着法による細孔分布および比表面積を測定した。液体窒素温度下で吸着等温線を測定した。得られた吸着側等温線を用いてBET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。吸着側および脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析によりメソ孔細孔分布を求め、メソ細孔容積および微小細孔容積を求めた。
装置:カンタークローム社製オートソーブ3B
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3MPa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0076】
(3)粒径分布の測定:
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.3、形状係数1.0の条件で測定した。
(4)MFR(メルトマスフローレート):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して、測定した。
(5)ポリマー嵩密度:
重合体(ポリマー)の嵩密度(BD)をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
【0077】
[実施例1]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、純水929gを投入し、96%硫酸104gを滴下した。内温が80℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、さらに、造粒モンモリロナイト(構造:水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:18μm、粒度分布=7〜30μm、組成(wt%):Al=8.87、Si=33.7、主金属原子=Al)を100g添加後撹拌した。このとき、イオン強度は3.30mol/Lであった。
その後80℃を保ちながら660分反応させた。この反応溶液を0.5lの純水に空けることで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後1Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、70g秤取り、次工程に用いた。この粘土は、1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物108gを純水480mlに溶解した水溶液に加えて、室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、0.7Lの純水で3回洗浄し、回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、69.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.2μmの粒子を得た。組成(wt%)は、Alが6.10、Siが38.9であり、Alの溶出率は44%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.17ml/gであった。BET比表面積は290m/gであった。
【0078】
2.触媒調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
化学処理したモンモリロナイト粒子を容積200mlのフラスコに入れ、200℃でおよそ3時間(突沸がおさまってから2時間以上)減圧乾燥した。この乾燥モンモリロナイトの水分含量を測定したところ、水分値は0.92wt%であった。内容積1Lのフラスコに上記乾燥モンモリロナイト20.1gを秤量し、ヘプタン141ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液69.0ml(49.4mmol、濃度141.9mg/l)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mlに調製した。これに、ヘプタン100mlとTnOAのヘプタン溶液3.1ml(濃度143.6mg/ml、1214μmol)を加えた。
ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライド(合成は、特開平10−110136号公報の実施例に従って実施した。)254mg(312.4μmol)にヘプタン(48mL)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。ヘプタンを追加して333mlに調製した。
窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに、上記調製したモンモリロナイト/メタロセン錯体導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度40℃を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持して予備重合を行った。
予備重合終了後、残存プロピレンをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を215ml抜き出した。続いてTiBAのヘプタン溶液8.6ml(6.1mmol)を室温にて加え、その後、40℃にて1時間減圧乾燥した。これにより、触媒1g当たりポリプロピレン2.18g含む予備重合触媒が65.2g得られた。
【0079】
3.プロピレンの重合
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、TiBAのヘプタン溶液2ml(2.02mmol)を加え、水素30ml、液体プロピレン750mlを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。予備重合触媒をヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し重合を開始した。内温を70℃に維持したまま、1時間重合を継続した。その後、エタノール5mlを加え重合反応を停止させた。残ガスをパージしてポリマーを得た。得られたポリマーを90℃で1時間乾燥した。
その結果、240gのポリマーが得られた。触媒活性は、12000g−PP/g−触媒であった。MFRは1.1g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cmであった。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を75℃、反応時間を580分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。その結果、72.5gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.2μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は39%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.7nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は290m/gであった。
【0081】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.12gを含む予備重合触媒を64.8g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、11000g−PP/g−触媒、MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cmであった。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
反応温度を85℃、反応時間を480分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。その結果、73.9gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.8μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は38%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.5nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.15ml/gであった。BET比表面積は311m/gであった。
【0083】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.18gを含む予備重合触媒を65.2g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、10500g−PP/g−触媒、MFRは1.2g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例4]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を100℃、蒸留水を694g,硫酸を84g,反応時間を240分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は3.80mol/Lであった。その結果、70.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.3μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は35%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.0nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は313m/gであった。
【0085】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に、触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.12gを含む予備重合触媒を64.8g得た。これを用いて、水素を重合槽に添加する前にエチレンを16.5g添加し、水素を45ml、触媒を15mg用いた以外は、実施例1記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。
その結果、触媒活性は、19800g−PP/g−触媒、MFRは0.37g/10分、ポリマーの嵩密度は0.46g/cmであった。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例5]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を95℃,反応時間を380分とする以外は、実施例4のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は3.80mol/Lであった。その結果、69.1gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.0μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は39%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.2nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は318m/gであった。
【0087】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.13gを含む予備重合触媒を65.1g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、19700g−PP/g−触媒、MFRは0.44g/10分、ポリマーの嵩密度は0.46g/cmであった。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例6]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を90℃、蒸留水を610g,硫酸を125g,反応時間を330分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は6.02mol/Lであった。その結果、61.8gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.2μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は41%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.14ml/gであった。BET比表面積は290m/gであった。
【0089】
2.触媒の調製およびププロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に、触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.15gを含む予備重合触媒を65.3g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、19500g−PP/g−触媒、MFRは0.41g/10分、ポリマーの嵩密度は0.46g/cmであった。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例7]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を90℃、蒸留水を158g、硫酸を25g、モンモリロナイトを25g、反応時間を300分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は4.65mol/Lであった。その結果、16.5gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.2μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は32%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.0nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.15ml/gであった。BET比表面積は301m/gであった。
【0091】
2.触媒の調製およびププロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に、触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.13gを含む予備重合触媒を65.3g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、21600g−PP/g−触媒、MFRは0.45g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例8]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を90℃、蒸留水を461g、硫酸を41.3g、反応時間を1200分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は2.66mol/Lであった。その結果、62.5gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.4μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は40%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.4nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.18ml/gであった。BET比表面積は335m/gであった。
【0093】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.19gを含む予備重合触媒を65.4g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、20900g−PP/g−触媒、MFRは0.56g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例9]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を90℃、蒸留水を687g、硫酸を41.4g、モンモリロナイトを51g、反応時間を1440分とする以外は、実施例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は1.76mol/Lであった。その結果、66.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.0μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は36%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.3nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は305m/gであった。
【0095】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.20gを含む予備重合触媒を65.1g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、18000g−PP/g−触媒、MFRは1.50g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例10]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の温度を85℃,反応時間を660分とする以外は、実施例4のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。イオン強度は3.80mol/Lであった。その結果、58.8gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.0μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は41%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.3nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.18ml/gであった。BET比表面積は324m/gであった。
【0097】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.18gを含む予備重合触媒を65.1g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、21000g−PP/g−触媒、MFRは0.56g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例11]
1.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドの代わりに、(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムクロライド(合成は、特開平10−110136号公報の実施例に従って実施した。)220mg(303.4μmol)を使用する以外は、実施例1の化学処理モンモリロナイトを使用し、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.09gを含む予備重合触媒を62.91g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、15000g−PP/g−触媒、MFRは0.9g/10分、ポリマーの嵩密度は0.48g/cmであった。結果を表1に示す。
【0099】
[比較例1]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2264gを投入し、96%硫酸670gを滴下した。内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、さらに造粒モンモリロナイト(構造:水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:18μm、粒度分布=7〜30μm、組成(wt%):Al=9.11、Si=32.9、主金属原子=Al)を400g添加後撹拌した。このとき、酸濃度は19.7wt%で、粘土に対する酸濃度は16.4mmol/gであった。また、イオン強度は8.87mol/Lであった。その後、90℃を保ちながら240分反応させた。この反応溶液を2Lの純水に空けることで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後4Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、100g秤取り次工程に用いた。1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物108gを純水481mlに溶解した水溶液に回収したケーキを加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、3Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、73.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径17.1μmの粒子を72.3g得た。
化学処理モンモリロナイトの組成(wt%)は、Alが6.52、Siが38.2含まれており、AlとSiのモル比は0.178であり、Alの溶出率は39%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.9nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.13ml/gであった。BET比表面積は260m/gであった。
【0100】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.16gを含む予備重合触媒を63.1g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、8000g−PP/g−触媒、MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cmであった。結果を表1に示す。
【0101】
[比較例2]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理時の反応時間を480分とする以外は、比較例1のイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。その結果、43.8gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.2μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は63%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は7.1nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.12ml/gであった。BET比表面積は255m/gであった。
【0102】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.20gを含む予備重合触媒を63.8g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、6500g−PP/g−触媒、MFRは1.7g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cmであった。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例3]
純水を45.6g、酸濃度を40.0%とし、反応時間を300分とする以外は、実施例1と同様にして、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理を行った。イオン強度は25.12mol/Lであった。その結果、51.0gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.8μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は52%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は8.4nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.08ml/gであった。BET比表面積は214m/gであった。
【0104】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン1.98gを含む予備重合触媒を59.6g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、5200g−PP/g−触媒、MFRは2.0g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cmであった。結果を表1に示す。
【0105】
[比較例4]
酸処理の反応を還流条件で、反応時間を120分で行う以外は、比較例1と同様にしてイオン交換性層状珪酸塩の化学処理を行った。その結果、72.5gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.8μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は37%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.13ml/gであった。BET比表面積は240m/gであった。
【0106】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.08gを含む予備重合触媒を61.6g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、8200g−PP/g−触媒、MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cmであった。結果を表1に示す。
【0107】
[比較例5]
酸処理の反応温度を80℃、反応時間を450分で行う以外は、比較例1と同様にしてイオン交換性層状珪酸塩の化学処理を行った。その結果、68.8gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.5μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は37%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.0nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.13ml/gであった。BET比表面積は252m/gであった。
【0108】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.20gを含む予備重合触媒を63.7g得た。これを用いて、実施例1記載と同様にして、プロピレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、7500g−PP/g−触媒、MFRは1.7g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cmであった。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例6]
蒸留水を231.3g、硫酸を496.7gとし、反応時間を240分とする以外は、実施例1と同等してイオン交換性層状珪酸塩の化学処理を行った。イオン強度は63.34mol/Lであった。その結果、57.5gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が17.5μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は44%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.9nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.11ml/gであった。BET比表面積は214m/gであった。
【0110】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.20gを含む予備重合触媒を63.7g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、3200g−PP/g−触媒、MFRは1.8g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0111】
[比較例7]
蒸留水を483.3g、硫酸を294.3gとし、反応時間を180分で行う以外は、比較例1と同様にしてイオン交換性層状珪酸塩の化学処理を行った。イオン強度は、15.16mol/Lであった。その結果、72.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が18.0μmの粒子を得た。組成分析の結果、Alの溶出率は37%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.4nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.09ml/gであった。BET比表面積は236m/gであった。
【0112】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.21gを含む予備重合触媒を63.5g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、4000g−PP/g−触媒、MFRは1.8g/10分、ポリマーの嵩密度は0.45g/cmであった。結果を表1に示す。
【0113】
[比較例8]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
35%塩酸30gを脱塩水70mlに希釈し、次いで、市販のモンモリロナイト(クニピアF、主金属原子=Al)11.7gを分散させ、攪拌しながら昇温し2時間沸点処理を行った。このときの酸濃度は9.4wt%,イオン強度は3.22mol/Lであった。その後、脱塩水で十分洗浄し、予備乾燥した後、200℃減圧下で2時間乾燥させて化学処理モンモリロナイトを得た。
組成分析の結果、Alの溶出率は41%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.5nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.05ml/gであった。BET比表面積は230m/gであった。
【0114】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
100mlのフラスコに上記で得た化学処理モンモリロナイト3gを採取し、トルエン20mlに分散させてスラリーとし、室温にて撹拌下でトリエチルアルミニウム13mlを添加した。室温で1時間撹拌した後、デカンテーションによって上澄み液を除去し、固体部をトルエンで洗浄し、固体触媒成分を得た。
上記固体触媒成分100mgを秤量し、トリエチルアルミ0.5mmol(Al原子換算)を加えた。ここに,実施例9で用いた(r)−ジメチルシリレンビス{1,1´−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ジルコニウムジクロライド0.975mg(1.5μmol)をトルエン3mlに希釈して導入した。
これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、5000g−PP/g−触媒、MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.28g/cmであった。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例9]
1.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドの代わりに、実施例10で用いた(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムクロライド217mg(299.3μmol)を使用する以外は、比較例1の化学処理モンモリロナイトを使用し、実施例1記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.12gを含む予備重合触媒を63.5g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、13100g−PP/g−触媒、MFRは1.1g/10分、ポリマーの嵩密度は0.47g/cmであった。結果を表1に示す。
【0116】
[比較例10]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
3リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコを使用し、蒸留水1590ミリリットル、硫酸マグネシウム7水和物318g、続いて濃硫酸(96%)261gをゆっくりと添加し、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径25μm、粒度分布10〜60μm,組成(重量%):Al8.45、Mg2.14、Fe2.34、Si32.8、Na2.62、主金属原子=Al)を240g分散させ、101℃℃まで1時間かけ昇温し、2時間その温度を維持した後、1時間で50℃まで冷却した。イオン強度は8.55ml/Lであった。このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。さらに、このケーキを蒸留水で最終洗浄液のpHが3.5を越えるまで洗浄し、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し,201.2gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き75μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が24.7μmの粒子を得た。
組成分析の結果、Alの溶出率は22%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は4.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.33ml/gであった。BET比表面積は275m/gであった。
【0117】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
前記化学処理したモンモリロナイトを減圧下、200℃で、2時間乾燥を実施した。内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に、上記で得た乾燥モンモリロナイト20gを導入し、トルエンを3%含むヘプタン(以下、混合ヘプタンと略称する)、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.596M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄(残液率1%未満)し、珪酸塩スラリーを200mlに調製した。
次に、予め(r)−ジメチルシリレンビス{1−[2―メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリドを218mg(0.3mmol)に混合ヘプタンを87ml添加し、充分撹拌した後に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.706M)を4.25ml加え、室温にて1時間反応させた。
その後、先に調製した珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調製した。続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに、先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、50℃に昇温後、さらに2時間維持した。サイホンにて予備重合触媒スラリーを回収し、上澄みを約300ml除き、45℃にて減圧下乾燥した。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン0.49gを含む予備重合触媒を30.1g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、11000g−PP/g−触媒、MFRは2.45g/10分、ポリマーの嵩密度は0.31g/cmであった。結果を表1に示す。
【0118】
[比較例11]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
処理(維持)時間を8時間とする以外は、比較例10と同様に実施した。185.4gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き75μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が24.8μmの粒子を得た。
組成分析の結果、Alの溶出率は31%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.2nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.13ml/gであった。BET比表面積は326m/gであった。
【0119】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、比較例10に記載の方法と同様に、触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン0.76gを含む予備重合触媒を35.5g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレン重合を行った。その結果、触媒活性は、10000g−PP/g−触媒、MFRは0.52g/10分、ポリマーの嵩密度は0.35g/cmであった。結果を表1に示す。
【0120】
[比較例12]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた500mLの丸形三口フラスコに、蒸留水180gを投入し、98%硫酸20gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、モンモリロナイト30g添加後撹拌した。イオン強度は3.33mol/Lであった。
その後、90℃で1時間反応させた。このスラリーを150mLの蒸留水に注いで反応を停止し、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過した。得られたケーキを500mLの蒸留水に分散させ撹拌後濾過した。この操作を5回繰りかえした。回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。
その結果、22gの化学処理体を得た。これを目開き75μmの篩にて篩い分けし、平均粒径が24.8μmの粒子を得た。
組成分析の結果、Alの溶出率は5%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.3nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.08ml/gであった。BET比表面積は123m2/gであった。
この酸処理モンモリロナイトを容積200mLのフラスコに入れ、200℃で減圧乾燥させガスの発生が収まってから、さらに2時間減圧乾燥した。
【0121】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
内容積200mLのフラスコに上記乾燥した化学処理モンモリロナイト3gを秤量し、ヘプタン10mL、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液20mL(7.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、トルエンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を5mlにあわせた。
次に、予め(r)−ジメチルシリレンビス{1−[2―メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリドを33mg(0.04mmol)に混合ヘプタンを13ml添加し、充分撹拌した後に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.706M)を6.3ml加え、室温にて1時間反応させておき,前記の有機アルミニウム化合物処理モンモリロナイトのヘプタンスラリー(5ml)に全量添加した。室温で1時間撹拌した後、室温、減圧下で溶媒を留去することにより、担持触媒を得た。重合を行う前に、担持触媒をヘプタンで希釈(10mg固体触媒/mlヘプタン)し、重合評価に用いた。重合は、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。
その結果、触媒活性は、5000g−PP/g−触媒、MFRは3.2g/10分、ポリマーの嵩密度は0.40g/cmであった。結果を表1に示す。
【0122】
[比較例13]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で8.2wt%硫酸マグネシウム水溶液(793g)に、水澤化学社製ベンクレイSL(スメクタイト:100g,Al/Si=0.283、主金属原子=Al)を30℃で加えてスラリー化した。このスラリーを0.6℃/分で2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で60分反応させた。このときのイオン強度は3.79mol/Lであった。
その後100℃のままその反応スラリーに96%硫酸(109g)を12分かけて滴下、さらに108分間100℃で反応させた。このときのイオン強度は8.16mol/Lであった。
この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH3まで洗浄した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト22.9gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:7.6wt%、Si:34.5wt%、Mg1.9wt%、Fe:2.2wt%、Na<0.2wt%であり、Al/Si=0.229[mol/mol],Alの溶出量は19%であった。また、平窒素吸着法により測定した平均細孔径は6.1nm,2−6nmの範囲の微小細孔量は0.14mL/g,表面積は268m/gであった。
【0123】
2.予備重合(以下の操作は、すべて乾燥窒素雰囲気下で行った。)
上で得られた化学処理スメクタイト20gをヘプタン(183mL)スラリーとし、これにトリエチルアルミニウム(10mmol:濃度68mg/mLのヘプタン溶液を16.8mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで1/100まで洗浄した。このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
また、別途ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−(p−クロロフェニル)ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド(0.3mmol)のトルエン87mL溶液にトリイソブチルアルミニウム(3mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を4.26mL)を加えて反応させた溶液を、上記オートクレーブに加えた。さらに、ヘプタンを210mL追加したのち40℃でプロピレンを20g/hの速度で2時間フィードし、予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、さらに2時間40℃で残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みを除去した後、失活防止剤としてトリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を17mL)を加えて10分攪拌した。この固体を3時間減圧乾燥することにより、触媒1g当たりポリプロピレン1.50gを含む乾燥予備重合触媒を50.2g得た。
【0124】
3.プロピレンとエチレンの重合
このようにして得た触媒を用いて,実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。
その結果、触媒活性は、12000g−PP/g−触媒、MFRは1.1g/10分、ポリマーの嵩密度は0.40g/cmであった。結果を表1に示す。
【0125】
[比較例14]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で8.2wt%硫酸マグネシウム水溶液(793g)に96%硫酸(27g)を加え、さらに水沢化学社製ベンクレイSL(100g)を30℃で加えてスラリー化した。このときイオン強度は4.88mol/Lであった。
このスラリーを0.6℃/分で2時間かけて100℃まで昇温し100℃で60分反応させた。その後100℃のままその反応スラリーに96%硫酸(191g)を26分かけて滴下し、さらに94分間100℃で反応させた。このときイオン強度は12.49mol/Lであった。
この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH3まで洗浄した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより化学処理スメクタイト33.0gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.5wt%、Si:35.3wt%、であり、Al/Si=0.192[mol/mol]で、Alの溶出率は32%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.7nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.11ml/gであった。BET比表面積は277m/gであった。
【0126】
2.触媒の調製およびプロピレンとエチレンの重合
上記記載の化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、比較例11に記載の方法と同様に触媒の調製を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン0.66gを含む予備重合触媒を33.2g得た。これを用いて、実施例4記載と同様にして、プロピレンとエチレンの重合を行った。その結果、触媒活性は、10000g−PP/g−触媒、MFRは1.6g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cmであった。結果を表1に示す。
尚、表1中、微小細孔は、細孔径2〜6nmの微小細孔容積であり、細孔容積は、メソ細孔容積である。
【0127】
【表1】

【0128】
表1から、プロピレンの単独重合で評価した実施例1〜3の触媒は、イオン交換性層状珪酸塩の平均細孔径が2〜6nmであり、かつ微小細孔容量が0.14ml/g以上と大きいため、同じ条件で評価した比較例1〜5の触媒に比べて,触媒活性が高いことがわかる。また、エチレンとプロピレンの共重合で評価した実施例4〜11の触媒も、同様に、同じ条件で評価した比較例6〜14の触媒に比べて、触媒活性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の特定のイオン交換性層状珪酸塩からなるオレフィン重合用触媒成分、およびそれを用いたオレフィン重合用触媒は、重合が高活性に進行し、得られるポリマーパウダーのかさ密度が高く、良好な性状のポリオレフィンの製造が可能となり、産業上、利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の特性1及び特性2を満たすイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
特性1:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径が2〜6nmであること。
特性2:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積が0.14ml/g以上であること。
【請求項2】
下記の数式(1)で定義される溶液中のイオン強度が0.05〜8.00mol/Lの条件で化学処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒成分。
イオン強度(mol/L)=0.5×Σ(溶液中のイオンのモル濃度mol/L×(イオンの電荷数))・・・数式(1)
【請求項3】
前記イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定したBET比表面積が270m/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項4】
前記イオン交換性層状珪酸塩が酸処理されたものであり、酸処理によってイオン交換性層状珪酸塩の八面体構造層を構成する主金属原子の溶出する割合が10〜60%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項5】
前記イオン交換性層状珪酸塩がスメクタイト族の珪酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項6】
下記成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
成分(a):周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):請求項1〜5のいずれかに記載のイオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【請求項7】
請求項6に記載のオレフィン重合用触媒を使用してオレフィンを重合することを特徴とするポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2012−214745(P2012−214745A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70510(P2012−70510)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】