説明

オンサイト水素燃焼による熱供給で炭化水素の留分を水蒸気改質することにより水素富有ガスと電力とを併産する方法

【課題】必要な煙の流量を制限し、あるいは同じタービンに対して水素生産を増加させるように、熱交換型水蒸気改質反応器の内部で燃焼を実施する。
【解決手段】水蒸気改質反応で必要とされる熱供給が、燃焼排出物(11)の一部で
した水素(5)の燃焼で得られ、該燃焼が熱交換型改質反応器(R1)の内部で実施され、該燃焼に必要な空気(1)がコンプレッサ(C1)により圧縮され、希釈循環路を構成する前記燃焼によって生じた排出物(6)は、一部分が前記熱交換型改質反応器の入口へ再循環されて水素(5)を希釈するとともに、反応器(R1)内の酸素含有量を10モル%未満の値に制限し、燃焼排出物の他の部分(12)がアフターバーン室(CC1)に入り、ここで水素(19)の燃焼により生じたフロー(13)がタービンで減圧され、該タービンがコンプレッサ(C1)に必要なエネルギーを部分的に供給し、電気エネルギーの併産を行うオルタネータを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素富有ガスを生産し、この方法の排出物の一部をなすCO以外のCOを生産せずにガスタービンを介して電気エネルギーを併産する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、一般に、原子力発電所または石炭発電所に比べて安価で、かなり単純であり、建設期間が短い。ガスタービンは、メンテナンスおよび操作の観点から数々の長所を有し、「クリーン」なエネルギー源を構成するが(特に燃料が硫黄を含まないので)、二酸化炭素の放出の問題については解決が必要である。
【0003】
CO排気を削減するという問題に対しては、二つの解決方法を検討できる。第一の解決方法は、タービンから出る煙を洗浄してCOを捕集することによるCO捕集にある。しかし、この解決方法は、捕集圧が低すぎるために、困難であり、比較的効率がよくない。
【0004】
第二の解決方法は、燃焼してもCOを発生しない燃料、すなわち、主に水素を含む燃料を使用することにある。この解決方法は、特許文献1に記載された方法で検討されており、炭化水素含有仕込原料の水蒸気改質により水素を生産し、その一部を用いてタービンの動作に必要な熱供給を行うものである。この概念では、水蒸気改質に必要な熱の供給が、タービンの高温煙と、熱交換型改質反応器内部の水蒸気改質仕込原料との間接的な熱交換によって行われる。
【0005】
本発明は、また、水素生成の分野に関する。
【0006】
水蒸気改質反応器により生産される水素富有ガスは、一般に、当業者により合成ガスと呼ばれている。このガスは、主に、65モル%〜75モル%(乾式ベース)の水素と、6モル%〜10モル%のCOとによる基準比率で水素(H)と二酸化炭素(CO)とを混合して構成され、さらに、7モル%〜16モル%に及ぶ比率で一酸化炭素(CO)を含むことがある。
【0007】
前記合成ガスは、一般に、水蒸気改質反応器の出口で、2個のCO転化反応器(「water gas shift reactor:水性ガスシフト反応器」すなわちW.G.S.)に連続して導入される。いわゆる「高温」の第一の反応器に、いわゆる「低温」の第二の反応器が続き、水の存在下でCOをCOに転化し、水素生産量を増やすことができる。
【0008】
一つまたは複数のCO転化反応器の出口で、合成ガスのCO含有量は、第一の反応器の出口では2モル%〜3モル%に低減され、第二の反応器の出口では0.1モル%〜0.3モル%の含有量に低減される。
【0009】
本発明は、熱交換型水蒸気改質反応器のまさに内部で水素を燃焼させて、必要な煙の流量を制限し、反応領域への熱伝達効率を改善することからなる。しかしながら、水素の燃焼は安全性の問題を提起するので、燃焼排出物を少なくとも部分的に再循環させることが必要不可欠になる。この再循環により、ほぼ不活性な雰囲気で作業が可能になる。
【0010】
従来技術の文献の中で特許文献1は、タービンによる熱電併給方法を記載しており、この方法では、タービンに結合される加圧燃焼によって発生した高温ガスの一部を、熱交換または吸熱性化学反応を用いた方法で熱供給源として用いている。そのため、この熱供給は、水蒸気改質反応器の内部の高温煙と水蒸気改質流体との間の間接的な熱交換によって実施可能である。上記特許に記載された方法は、水蒸気改質反応に必要な熱供給を可能にする水素燃焼の制御方法を開示していない。しかも、前記熱供給はオンサイトで行われないで、水蒸気改質反応器の上流に配置されるアフターバーニング室で行われている。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2852358号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、必要な煙の流量を制限し、あるいは同じタービンに対して水素生産を増加させるように、熱交換型水蒸気改質反応器の内部で燃焼を実施することからなる。しかし、水素燃焼は、このような水素燃焼の温度が非常に高く、また速度が非常に速いために、様々な安全性の問題を提起しており、ほぼ不活性な雰囲気での作業を可能にする燃焼排出物の少なくとも一部を再循環することが必要である。本発明に記載された特定の循環路は、こうした再循環を対象としている。
【0012】
本発明の範囲では、結合サイクルにより発生する水蒸気の一部を、水蒸気改質仕込原料と混合して用いることにより、水蒸気改質反応を実施し、水素を発生している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、石油留分の水蒸気改質により合成ガスを生産するとともに電気エネルギーを併産する方法として定義可能であり、水蒸気改質反応に必要な熱供給が、熱交換型水蒸気改質反応器の内部で実施された希釈水素の燃焼により行われ、前記燃焼が、この燃焼に必要な水素の希ガスの役割を果たす前記燃焼排出物の一部分を再循環することにより制御される。
【0014】
本発明は、特に、水蒸気改質吸熱反応に必要な熱供給方式に関し、この熱供給方式は、水蒸気改質反応器のまさに内部で希釈水素を燃焼することにより行われ、以下、これを「オンサイト燃焼」と呼ぶ。
【0015】
本発明の範囲では、水蒸気改質反応で必要とされる熱量が、主に窒素からなる不活性ガス中での希釈水素の燃焼により行われ、以下、これを燃焼排出物または希ガスと呼ぶ。後で詳しく説明する特定の循環路は、この燃焼排出物(または前記希ガス)を対象としている。熱は、まさに反応器内部の希釈循環路との間接的な熱交換により水蒸気改質循環路に伝達される。以下、本文で、水蒸気改質反応器をさす場合、熱交換型改質反応器と呼ぶことにする。
【0016】
本発明による方法は、一方では、燃焼室、次いで減圧タービンに送られる高温の排出物を用いて、他方では、熱交換型改質反応器の下流に配置される方法の様々な地点で平均圧力の水蒸気を発生することによって、たとえば電気エネルギーの併産も可能である。
【0017】
一般に、また、これは本発明の特徴の一つであるが、この方法は、各温度段階で熱を回収可能な仕込原料/排出物または排出物/排出物の熱交換器を用いて、熱の統合性を高めている。
【0018】
本発明による方法のもう一つの重要な特徴は、合成ガス自体に対応する以外のいかなるCO2生産も伴わないことにある。合成ガスに含まれるCO2の捕集は、このようなCO2の生産が高圧で行われるので、通常の方法で実施可能である。
【0019】
従って、本発明による合成ガスの生産方法は、水蒸気改質反応器(R1)で炭化水素含有仕込原料(A)を水蒸気改質することにより合成ガスを生産し、電気エネルギーを併産する方法であって、水蒸気改質反応で必要とされる熱供給が、燃焼排出物(11)の一部で希釈した水素(5)の燃焼で得られ、前記燃焼が熱交換型改質反応器(R1)の内部で実施され、前記燃焼に必要な空気(1)がコンプレッサ(C1)により絶対圧力0.4〜4MPaで圧縮され、希釈循環路を構成する前記燃焼によって生じた排出物(6)は、一部分((7)、その後(11))が、前記熱交換型改質反応器の入口へ再循環されて水素(5)を希釈するとともに、熱交換型改質反応器(R1)内の酸素含有量を10モル%未満の値に制限し、燃焼排出物の他の部分(12)が、アフターバーン室(CC1)に入り、このアフターバーン室(CC1)で水素(19)の燃焼により生じたフロー(13)が、タービン(TD1、TD11またはTD2)で減圧され、前記タービンが、コンプレッサ(C1)に必要なエネルギーを部分的に供給し、また、電気エネルギーの併産を行うオルタネータ(AT1、AT11またはAT2)を駆動する方法である。
【0020】
本発明による合成ガスの生産方法のエネルギーの観点から見た長所の一つは、排出物(6)の出口温度にできるだけ近い温度で熱交換型改質反応器(R1)に燃焼排出物(11)を再投入できることにある。「できるだけ近い」という表現は、排出物(6)と(11)との温度差が10℃未満であり、好適には5℃未満であって、さらに好適には1℃未満であることを意味する。
【0021】
さらに、本発明による水蒸気改質方法は、その燃焼循環路において、CO排気をまったく発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の範囲では、合成ガスの生産が、炭化水素の留分の水蒸気改質により得られ、一般には、その平均炭素原子数、または、その分解蒸留間隔を特徴とする。
【0023】
この方法の仕込原料を構成する炭化水素含有留分は、好適には、炭素原子数が1〜20に及ぶ炭化水素からなる留分である。特に、仕込原料は、好適には、70℃〜250℃の蒸留間隔のナフサ留分、または天然ガスとすることができる。ナフサ留分は、また、場合によっては、メタノールまたはエタノール等のアルコールか、または、もっと比重の大きいアルコールを可変比率で含むことができる。
【0024】
以下の説明を適切に理解するには、水蒸気改質吸熱反応に必要な熱供給に使用される燃焼排出物と、合成ガスを構成するCO、CO、H混合物である水蒸気改質方法自体の排出物とを、明確に区別しなければならない。
【0025】
オンサイト燃焼すなわち熱交換型改質反応器の内部での燃焼は、希釈水素と圧縮燃焼用空気とにより行われ、主に水蒸気と希釈窒素とを含む燃焼排出物を生成する。
【0026】
本発明は、熱供給に必要な燃焼排出物の循環路を対象とし、これを、燃焼排出物の循環路と呼び、時には、主に窒素から構成されているために窒素希釈循環路と呼ぶ。
【0027】
燃焼排出物の再循環回路は、少なくとも一つの熱交換段階と、再圧縮段階とを含む。熱交換型改質反応器の技術がどのようなものであっても、こうした改質反応器は、空気(支燃性物質)および水素(燃料)を供給される燃焼回路を含み、燃焼排出物の一部を再循環させ、この3つのフローから熱交換型改質反応器で燃焼を行って、前記燃焼排出物を発生する。
【0028】
燃焼排出物は、少なくとも2つのフローに分離され、第一のフローが、熱交換型改質反応器の入口の酸素含有量を制御可能にすることにより前記熱交換型改質反応器の上流へ再循環される最も重要な燃焼排出物の循環路を構成し、第二のフローが、熱交換型改質反応器の下流に配置されるアフターバーン室に向かって流れる。
【0029】
本発明による燃焼排出物の循環路は、熱交換型改質反応器の入口における前記燃焼排出物の圧力および温度レベルに応じて様々な実施形態を呈することができる。以下、それについて詳しく説明する。
【0030】
主な燃料は、少なくとも部分的に、場合によっては全面的に、水蒸気改質反応から得られる水素であり、この燃料が、前記燃焼排出物の循環路に近い水頭損失で、また、できるだけ高い温度レベルで、燃焼用空気の圧力および燃焼排出物の圧力と同じ圧力により熱交換型改質反応器に投入される。燃料は、別々または燃焼排気物と混合して投入可能である。燃料は、熱交換型改質反応器の一つまたは複数の箇所で投入できる。
【0031】
以下、本発明による方法の基本構成と、二つの変形実施形態とについて詳しく説明する。この説明は、基本構成を示す図1を参照すれば、いっそう理解されるであろう。図2および3の変形実施形態については、基本構成とは異なる一つまたは複数部分について説明するにとどめる。簡略化のために、各フローと、このフローを流すラインとに同じ参照符号を付す。
【0032】
図1に示した基本構成では、熱交換型改質反応器(R1)の後段に単一のアフターバーン室(CC1)が配置されており、このアフターバーン室により、前記熱交換型改質反応器から出る燃焼排出物の温度を1000℃〜1300℃に上昇することができる。これらの温度値は、ガスタービンの従来技術に対応する。
【0033】
燃焼用空気(1)は、コンプレッサ(C1)に送られて、温度180℃〜650℃、絶対圧力0.4MPa〜4MPa、好適には絶対圧力1.5MPa〜2MPaで、圧縮空気(2)を生成する。
【0034】
圧縮空気(2)は、ライン(3)から熱交換型改質反応器(R1)に少なくとも部分的に投入される。圧縮空気は、また、フロー(11)との混合物として熱交換型改質反応器(R1)に投入することもできる。
【0035】
燃焼に必要な水素は、圧縮空気(3)と同じかまたは、それに非常に近い圧力レベルで、ライン(5)から熱交換型改質反応器(R1)に投入される。水素(5)は、別々またはフロー(11)と混合されて熱交換型改質反応器(R1)に投入可能である。水素(5)の流量は、水蒸気改質触媒の出口側の所望の温度レベルにより決定される。この温度は、一般に850℃〜900℃である。通常、水蒸気改質反応の温度は、水素(5)の流量により調節される。
【0036】
燃焼用空気(3)の流量は、燃焼排出物中の酸素が、好適には1モル%未満で、さらに好適には0.5モル%未満になるように制御される。大部分の場合、水素(5)は、CO転化反応器(図では示さず)にシフトした後で、前記排出物に含まれるCOと水を分離した後に、熱交換型改質反応器の排出物から生じる。一般に、COのほとんど全部が、吸収溶媒を用いた捕集装置で捕集される。吸収溶媒は、メタノール(この方法では商品名IFPEXOLとして知られている)か、または添加剤を加えたMEA(メチルエチルアミン)、DEA(ジエチルアミン)、またはMDEA(メチルジエチルアミン)等のアミンとすることができる。
【0037】
主として窒素を含み、また、非凝縮水少々と、わずかな酸素量とを含むフロー(11)は、ライン(11)により熱交換型改質反応器に投入される。
【0038】
このフロー(11)を燃焼排出物、または、その機能を念頭において窒素希釈排出物と呼ぶ。わずかな酸素量とは、一般に割合が1モル%未満で、好適には0.5モル%未満であることを意味する。
【0039】
燃焼排出物は、一般には温度600℃〜1100℃、好適には700℃〜800℃でライン(6)により熱交換型改質反応器を出る。この燃焼排出物(6)は、後述する燃焼排出物の循環路に供給される少なくとも一つの留分(7)と、アフターバーン室(CC1)に投入される留分(12)とに分割される。熱交換型改質反応器(R1)の上流へ再循環されるフロー部分(7)は、燃焼用空気と窒素希釈排出物(11)とを混合した場合に、熱交換型改質反応器の燃焼側の入口で、酸素が一般に10モル%未満、好適には6モル%未満となるようにし、それによって水素の燃焼温度を制限する。
【0040】
前記フロー(11)には様々な投入方式があり、図示したように別々に行うか、空気フロー(3)と混合して行うか、あるいは水素フロー(5)と混合して行う。水素フロー(5)と空気フロー(3)の一方または両方を、熱交換型改質反応器の複数の異なる箇所に投入して、熱交換型改質路内で燃料および/または支燃性物質に一定の分散を生じさせてもよい。本発明は、フロー(11)、(5)、および(3)の一つまたは複数の箇所での投入に完全に適合する。
【0041】
燃焼排気物(7)は、一般に、それ自体が低温レベルで採取される燃焼排出物を冷却剤として有する第一の熱交換器(E1)で冷却され、次いで、場合によっては、第二の熱交換器(E2)内で冷却される。第二の熱交換器は、場合によっては、この熱交換器(E2)内で低圧水蒸気として蒸発する凝縮液から構成してもよい。第二の熱交換器(E2)の冷却剤は、また、水でもよく、そのため、水を予熱してから、燃焼用空気のコンプレッサ(C1)に結合される減圧タービン(TD1)の下流に配置された結合サイクル(CB)に供給する。一定の場合、熱交換器(E2)の冷却剤は、炭化水素含有仕込原料と水蒸気との混合物(図2のA)から構成された、熱交換型改質反応器の仕込原料とすることができる。
【0042】
燃焼排出物(8)の冷却は、空気冷却器(AE1)内または熱交換器内で冷却水により続行され、それによって、ライン(9)を介して分離タンク(D1)に入る前に、前記分離タンク(D1)の入口側圧力で前記燃焼排出物をその露点未満の温度に冷却するようにする。こうした状況で、燃焼排出物(9)に含まれる水の大部分を単なる凝縮により回収できる。
【0043】
一般に、分離タンク(D1)の圧力は、熱交換型改質反応器の出口側(燃焼側で測定された)圧力から、熱交換器(E1)および(E2)と空気冷却器(AE1)とによる燃焼排出物の循環路での水頭損失を差し引いた値に等しい。
【0044】
分離タンク(D1)の後段のもはや水を含まない燃焼排出物(10)は、再循環コンプレッサと呼ばれるコンプレッサ(C2)で、熱交換型改質反応器(R1)の入口側の圧力に戻すことができる圧力レベルに再圧縮されてから、熱交換器(E1)で再加熱され、一般に温度0.5℃〜50℃で、好適には排出物(6)の温度より1℃〜10℃低いフロー(11)として熱交換型改質反応器(R1)に再投入される。
【0045】
燃焼排出物循環路に関しては多数の変形実施形態が存在し、この方法の総合的な経済目標は、燃焼排出物(11)を、燃焼排出物(6)の出口温度にできるだけ近い温度で熱交換型改質反応器(R1)に再投入することにある。
【0046】
本発明による方法の図2と3の変形実施形態では、上記の条件をさらに良好に実現可能である。熱交換型改質反応器(R1)に供給されなかった圧縮空気(4)の部分は、負圧発生装置(V1)の後で燃焼室(CC1)に投入され、燃焼室は、水素(19)による燃焼によって、フロー(12)の温度レベルをできるだけ上昇させ、一般には1000℃〜1300℃の値にすることができる。負圧発生装置(V1)は、循環路(4)に水頭損失を導入して、燃焼室(CC1)の圧力と、熱交換型改質反応器(R1)の出口におけるフロー(12)の圧力とのバランスをとるようにする。
【0047】
フロー(12)は、主に、水素燃焼によって生じる窒素と水蒸気とからなる。燃焼排出物(6)の一部から構成されるフロー(12)は、アフターバーン室(CC1)に投入される。アフターバーン室(CC1)で水素(19)の燃焼によって生じたフロー(13)は、タービン(TD11またはTD2)で減圧され、前記タービンは、コンプレッサ(C1)に必要なエネルギーを部分的に供給し、一定の場合には、オルタネータ(AT11またはAT2)を駆動可能である。
【0048】
減圧された排出物(14)は、大気圧に近い圧力に戻る。このフロー(14)は、図1の熱交換器(CB)により示されたような水蒸気の発生を行う冷却剤として使用可能であり、あるいは、熱交換型改質反応器(R1)の仕込原料を予熱するための冷却剤として使用可能である。フロー(14)の他の用途も可能であり、本発明による方法の範囲に入る。
【0049】
熱交換型改質反応器(R1)で燃焼を行うために使用される水素(5)と、アフターバーン室(CC1)の水素(19)とは、有利には、熱交換型改質反応器(R1)の排出物として生成される水素の少なくとも一部分から構成される。
【0050】
図2と3の変形実施形態は、図1の基本構成に対して、燃焼排出物(6)と同じかまたは高い温度レベルで燃焼排出物(11)を導入することができる。これは、燃料消費量に関する一つの長所である。
【0051】
以下に記載する二つの変形実施形態は、空気(3)、水素(5)、および熱交換型改質反応器(R1)へ再循環する燃焼排出物(11)を投入する様々な方式に適合するものである。図2,3は、この3つの各フローの分離投入を示しているが、フロー(5)と(11)またはフロー(3)と(11)の混合投入ももちろん可能である。
【0052】
第一の変形実施形態を示す図2では、コンプレッサ(C11)により、空気を0.3〜0.8MPaの中間圧力に圧縮できる。圧縮空気(15)の一部は、不活性ガスの循環路に送られる。燃焼排出物(7)は、熱交換器(E1)、(E2)および空気冷却器(AE1)内で同じ冷却構成に従い、また、図1の基本構成と同じ分離タンク(D1)内での水の分離構成に従う。図1と同様に、フロー(10)は、分離タンク(D1)で凝縮される水を含まない不活性ガスである。
【0053】
それに対して、フロー(10)および(15)の混合から生じるフロー(16)は、コンプレッサ(C3)に投入され、このコンプレッサは、好適には0.3〜0.8MPa、一般には1.5〜2.5MPaに圧力レベルを上げることができる。コンプレッサ(C3)の吐出フロー(17)は、熱交換器(E1)で、好適には600℃〜700℃、非常に好適には約680℃の温度に再加熱されてから、水素(20)により燃料供給される燃焼室(CC2)に投入される。
【0054】
燃焼室(CC2)から出るフロー(21)は、好適には、温度レベルが1000℃〜1300℃である。このフロー(21)は、コンプレッサ(C3)に結合されるタービン(TD3)内で、熱交換型改質反応器(R1)に投入される燃焼用空気(3)の圧力レベルに非常に近い圧力レベルに減圧される。
【0055】
減圧された排出物(11)は、熱交換型改質反応器(R1)に投入される。燃焼室(CC2)に投入される水素流量(20)による燃焼を考慮すると、前記排出物(11)は、燃焼排出物の温度に近い温度であり、これは、熱交換型改質反応器(R1)の内部での水素燃焼の観点から好ましいファクターである。
【0056】
図3の第二の変形実施形態では、燃焼排出物の循環路は、図2の変形実施形態と同じである。それに対して、燃焼室「CC2」内の水素(20)の燃焼に必要な燃焼用空気(15)の循環路が異なっており、そのため、コンプレッサ(C3)を小型化できる。約1.5〜2.5MPaの圧力レベルでコンプレッサ(C1)から出た圧縮空気(15)は、少なくとも一部は燃焼室(CC2)に直接導入される。
【0057】
圧縮空気の他の部分(22)は、燃焼室(CC4)に投入されて、そこで水素フロー(23)の燃焼が行われ、燃焼排出物(24)が発生する。この排出物は、コンプレッサ(C1)とオルタネータ(AT12)とに結合されるタービン(TD12)内で減圧される。
【0058】
タービン「TD12」を出た減圧排出物(2)は、圧力レベルが約0.3〜0.4MPaで、好適には温度が約600〜700℃である。減圧された排出物は、ライン(3)を介して一部が熱交換型改質反応器(R1)に投入され、一部が、基本構成で説明したのと同じ構成に従って、ライン(4)と負圧発生装置(V1)とを介して燃焼室(CC1)に送られる。
【0059】
アフターバーン室(CC1)を出た排出物(13)は、タービン(TD2)内で減圧され、タービンは、基本構成および第一の変形実施形態とは違って、コンプレッサ(C1)または(C11)をもはや駆動せず、電気エネルギーを発生するオルタネータ(AT2)だけを駆動する。この変形実施形態により、第一の変形実施形態(図2)または基本構成(図1)よりも多くの電気エネルギーを発生可能である。この変形実施形態は、電気エネルギーの併産を調整する可能性を示している。
【0060】
実施例1
この実施例は、本発明による方法を説明するものとして挙げられており、図1の基本構成に対応する。水蒸気改質仕込原料は、メタン90(モル)%、エタン8モル%、二酸化炭素2モル%からなる。仕込原料の流量は、3500キロモル/時である。水蒸気改質仕込原料と共に導入される水の量は、水1に対して炭素3である。
【0061】
水蒸気改質仕込原料に水の量を加えたものがフロー(A)を構成する。反応(B)の排出物の流量は、21490キロモル/時である。水蒸気改質触媒は、ニッケルを主成分とする触媒をアルミナ(商品名KATALCO23−4Q、Johnson Mattey社)に担持したものである。
【0062】
反応条件は次の通りである。
【0063】
触媒の出口温度:900℃
圧力:入口で2.5MPa(1MPa=10バール)
コンプレッサ(C1)で、流量70240キロモル/時の空気(1)を圧力レベル2MPaに圧縮する。温度500℃で圧縮空気(3)を熱交換型改質反応器(R1)に投入する。燃焼排気物中の酸素含有量を0.5モル%に維持するように、空気(3)の流量を調節する。
【0064】
高温および低温のCO転化反応器へのシフト後に排気物(B)から送られ、また、CO捕集ユニット(図1では示さず)から送られる燃焼用水素(5)を、部分流量3450キロモル/時で熱交換型改質反応器(R1)に別々に投入する。燃焼排出物(11)を流量31400キロモル/時で熱交換型改質反応器(R1)に別々に投入する。
【0065】
熱交換型改質反応器(R1)へのフロー(6)の再循環率は80%である。熱交換器(E1)の位置の温度は約50℃とする。
【0066】
低温および高温のシフト反応およびCOの分離後に水蒸気改質排出物から出る水素の総生産量は12830キロモル/時すなわち287536Nm/時である。水素の純生産量すなわち水素の総生産量から煙管側の二つの水素消費(フロー(5)とフロー(19))とを引いた量は、2780キロモル/時すなわち62310Nm/時である。
【0067】
オルタネータ(AT1)が発生する電力は92.2MWである。これは、タービン(TD1)が送る電力から、コンプレッサ(C1)に必要な電力を引いた値である。結合サイクル(CB)が発生する電力は、98.8MWである。従って、結合サイクル(CB)+オルタネータ(AT1)の総電力は、電気量191MWである。
【0068】
下表1は、燃焼排出物の循環路を構成する各フローの流量および組成と、温度レベルおよび圧力レベルとを示している。フローの番号は図1に対応する。
【表1】

【0069】
実施例2
この二番目の実施例は、図2が示す第一の変形実施形態に対応する。水蒸気改質仕込原料の流量は、7450キロモル/時である。水蒸気改質仕込原料と共に導入される水量は、水1に対して炭素3である。
【0070】
反応条件は次の通りである。
【0071】
触媒の出口温度:900℃
圧力:入口で2.5MPa(1MPa=10バール)
流量70240キロモル/時の空気(1)をコンプレッサ(C11)で圧力レベル0.5MPaに圧縮する。圧縮空気(3)の一部を、温度180℃で熱交換型改質反応器(R1)に投入する。燃焼排気物(6)中の酸素含有量を0.3モル%に維持するように、空気(3)の流量を調節する。
【0072】
高温および低温のCO転化反応器へのシフト後に排気物(B)から送られ、また、CO捕集ユニット(図2では示さず)から送られる燃焼水素(5)を、部分流量2460キロモル/時で熱交換型改質反応器(R1)に別々に投入する。
【0073】
圧縮空気の別の部分(15)については、コンプレッサ(C3)内で、排出物(17)が2MPaの圧力レベルになるまで希釈窒素(10)により圧縮する。燃焼室(CC2)の燃焼排出物(21)の酸素含有量を0.3%に保持するように流量を調節する。
【0074】
高温および低温のCO転化反応器へのシフト後に排気物(B)から送られ、またCO捕集ユニット(図2では示さず)から送られる燃焼水素(20)を、部分流量16030キロモル/時で燃焼室(CC2)に別々に投入する。タービン(TD3)で減圧される燃焼排出物(21)を、フロー(11)により、流量219000キロモル/時で改質反応器(R1)に別々に投入する。水蒸気改質反応器へのフロー(6)の再循環率は80%である。熱交換器(E1)の位置の温度は約35℃とする。
【0075】
低温および高温のCOの転化反応およびCOの分離後に水蒸気改質排出物から出る水素の総生産量は27300キロモル/時すなわち612060Nm/時である。水素の純生産量すなわち水素の総生産量から煙管側の二つの水素消費量(フロー(5)とフロー(19))とを引いた量は、2770キロモル/時すなわち62070Nm/時である。
【0076】
オルタネータ(AT3)が発生する電力は249MWである。これは、タービン(TD3)から送られる電力から、コンプレッサ(C3)に必要な電力を引いた値である。オルタネータ(AT11)が発生する電力は、76MWである。これは、タービン(TD11)から送られる電力から、コンプレッサ(C11)に必要な電力を引いた値である。結合サイクル(CB)が発生する電力は、152MWである。従って、結合サイクル(CB)、オルタネータ(AT11)および(AT3)が発生する総電力は、電気量477MWである。
【0077】
下表2は、燃焼排出物の循環路を構成する各フローの流量および組成と、温度レベルおよび圧力レベルとを示している。フローの番号は図2に対応する。
【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】燃焼排出物の循環路が、この循環路の水頭損失を補償するための再圧縮段階だけを含む、本発明による方法の基本構成を示す図である。
【図2】燃焼排出物の循環路が、再圧縮段階と、水素による燃焼による少なくとも一つの再加熱段階とを含み、前記再加熱段階に続いて減圧段階が行われるか、または行われない、第一の変形実施形態による本発明の方法を示す図である。空気の圧縮は、基本構成よりも低い圧力になるまで行われる。
【図3】窒素循環路が、再圧縮段階と、水蒸気改質反応に必要な燃焼用空気をコンプレッサから直接送られる空気供給で水素燃焼する少なくとも一つの再加熱段階とを含み、前記再加熱段階に続いて減圧段階が行われるか、または行われない、第二の変形実施形態による本発明の方法を示す図である。空気の圧縮は、基本構成と同じ圧力レベルまで行われる。
【符号の説明】
【0079】
A 炭化水素仕込原料
B 燃焼廃棄物
R1 熱交換型改質反応器
TD1、TD3、TD11、TD12 タービン
C1、C2、C3、C11 コンプレッサ
CC1、CC2、CC4 アフターバーン室または燃焼室
AT1、AT3、AT11 オルタネータ
D1 分離タンク
E1 第一の熱交換器
E2 第二の熱交換器
AE1 空気冷却器
V1 負圧発生装置
CB 結合サイクル
1 燃焼用空気
2、3 圧縮空気
5 水素
6 燃焼排出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気改質反応器(R1)で炭化水素含有仕込原料(A)を水蒸気改質することにより合成ガスを生産し、電気エネルギーを併産する方法であって、水蒸気改質反応で必要とされる熱供給が、燃焼排出物(11)の一部で希釈した水素(5)の燃焼で得られ、前記燃焼が熱交換型改質反応器(R1)の内部で実施され、前記燃焼に必要な空気(1)がコンプレッサ(C1)により絶対圧力0.4〜4MPaで圧縮され、希釈循環路を構成する前記燃焼によって生じた排出物(6)は、一部分((7)、その後(11))が、前記熱交換型改質反応器の入口へ再循環されて水素(5)を希釈するとともに、熱交換型改質反応器(R1)内の酸素含有量を10モル%未満の値に制限し、燃焼排出物の他の部分(12)が、アフターバーン室(CC1)に入り、このアフターバーン室(CC1)で水素(19)の燃焼により生じたフロー(13)が、タービン(TD1、TD11またはTD2)で減圧され、前記タービンが、コンプレッサ(C1)に必要なエネルギーを部分的に供給し、また、電気エネルギーの併産を行うオルタネータ(AT1、AT11またはAT2)を駆動する方法。
【請求項2】
排出物(6)の出口温度にできるだけ近い温度で熱交換型改質反応器(R1)に燃焼排出物(11)を再投入し、排出物(6)と燃焼排出物(11)との温度差が10℃未満であり、好適には5℃未満である、請求項1に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項3】
燃焼用空気が絶対圧力1.5〜2.0で圧縮される、請求項1または2に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項4】
熱交換型改質反応器(R1)の上流へ再循環する燃焼排出物(7)の割合が、燃焼排出物(6)の20モル%〜90モル%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項5】
再循環燃焼排出物(11)を熱交換型改質反応器(R1)に単独で投入する場合、再循環フロー(7)が燃焼排出物(6)の30モル%〜60モル%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項6】
再循環燃焼排出物(11)を燃焼用空気(3)と混合して熱交換型改質反応器(R1)に投入する場合、再循環フロー(7)が燃焼排出物(6)の60モル%〜90モル%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項7】
燃焼排出物(6)が、燃焼室(CC1)に投入される第一のフロー(12)と、第二のフロー(7)とに分割され、第二のフローが、燃焼排出物(11)を冷却剤として用いる第一の熱交換器(E1)で冷却されてから、この方法の外部の冷却剤を用いる第二の熱交換器(E2)で冷却され、次いで空気冷却器(AE1)で冷却され、空気冷却器から出るフロー(9)が、分離タンク(D1)に投入され、そこから出るフロー(10)がもはやほとんど水を含有せず、前記フロー(10)が、コンプレッサ(C2)で、熱交換型改質反応器(R1)の圧力レベルと同じ圧力レベルに再圧縮されてから、熱交換器(E1)で再度加熱され、燃焼排出物(6)の温度より1℃〜5℃低い温度でフロー(11)として熱交換型改質反応器(R1)に再投入される、請求項1から6のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項8】
分離タンク(D1)の後段の、もはやほとんど水を含有しない燃焼排出物(10)が、コンプレッサ(C3)で熱交換型改質反応器(R1)の圧力より高い圧力レベルに再圧縮されてから、熱交換器(E1)で再加熱されて、燃料として水素(20)を用いるアフターバーン室(CC2)に投入され、前記アフターバーン室で温度1000℃〜1300℃、好適には約1200℃にされ、減圧タービン(TD3)で熱交換型改質反応器(R1)と同じ圧力レベルまで減圧されてから、燃焼排出物(6)にできるだけ近い温度でフロー(11)により前記熱交換型改質反応器(R1)に再投入される、請求項1から6のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項9】
熱交換型改質反応器(R1)に投入される圧縮空気(3)が、以下の循環路により得られ、すなわち、コンプレッサ(C1)に供給空気(1)を投入し、該コンプレッサが圧縮空気を生産し、その第一のフロー(15)が、水素フロー(20)で動作する第一の燃焼室(CC2)に供給され、第一の燃焼室が燃焼排出物(21)を発生し、この燃焼排出物がタービン(TD3)内で減圧されて、熱交換型改質反応器(R1)に投入されるフロー(11)を生成し、また第二のフロー(22)が、水素(23)が供給される第二の燃焼室(CC4)に投入され、この燃焼室(CC4)の排出物(24)が、減圧タービン(TD12)に投入されてフロー(2)を構成し、このフローの一部(3)が、熱交換型改質反応器(R1)を供給する圧縮空気流を構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。
【請求項10】
燃焼循環路がCO排気を発生しない、請求項1から9のいずれか一項に記載の合成ガスの生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302553(P2007−302553A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124031(P2007−124031)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】