説明

オーディオ・ドライバ

オーディオ・ドライバが第一の側と第二の側をもつ振動板(101、103)を有する。振動板(101、103)は第二の側でトランスデューサ要素(109、111)に結合され、音を放射するよう構成されている。トランスデューサ要素(109、111)は電気入力信号を振動板(101、103)の動きに変換する。振動板(101、103)は、振動板の一部(103)が第二の側において少なくとも部分的に空洞(113)を形成するよう構成される。該空洞(113)には空気導路(115)が結合される。空気導路(115)は前記空洞への第一の開口(117)および前記空洞(113)外の第二の開口(119)をもつ。空気導路(115)および空洞(113)は、当該オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数の半分未満の共鳴振動数をもつ共振器を形成する。本発明は、音生成および音響的な気流生成を、両機能の間の効率的な分離を維持しつつ、同時に許容しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーディオ・ドライバに関し、より詳細には同時に音を放射するとともに気流を生成することのできるオーディオ・ドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの応用において、電子回路などの積極的な冷却が望ましいまたは必要である。典型的には、そのような冷却は、機械的なファンを使った空気冷却として、あるいはより極端な場合には水冷却もしくは他の液体冷却として実装される。
【0003】
しかしながら、気流を生成する音響冷却器(acoustic cooler)に基づく空気冷却を使うことも提案されている。実際、多くの応用においてそのような音響冷却(acoustic cooling)が効率および期待寿命の理由によりファンの代替として有利であることが示されている。これらの応用については、音響冷却器は、静穏でありながらできるだけ冷却するよう最適化される。音響冷却は典型的には、音を生成するよりは気流を生成するよう最適化された、ラウドスピーカーのような音響トランスデューサとして実装される。そのような冷却器の一例が欧州特許出願第07122620.3号に開示されている。
【0004】
しかしながら、音響冷却および出力音の両方を用いる応用およびシステムについては、従来のアプローチは、それぞれ音および気流を生成するために二つの異なるラウドスピーカーを必要とする。具体的には、従来の音響冷却は、静穏な動作を維持しながら気流を効率的に生成するために最適化されており、したがって音を生成するためには非常に非効率的である傾向がある。
【0005】
よって、改善されたアプローチが有利であろう。特に、柔軟性を増し、気流生成を改善し、オーディオ生成を改善し、複雑さを減らし、実装を容易にし、および/またはパフォーマンスを改善することを許容するアプローチが有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した欠点の一つまたは複数を単独でまたは任意の組み合わせにおいて好ましくは緩和、軽減または解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面によれば、第一の面と第二の面をもつ、音を放射するための振動板(diaphragm)であって、該振動板の一部が少なくとも部分的に前記第二の面において空洞を形成するよう構成された振動板と;前記第二の面で前記振動板に結合されており、電気入力信号を前記振動板の動きに変換するよう構成されたトランスデューサ要素と;前記空洞に結合され、前記空洞への第一の開口および前記空洞外の第二の開口をもつ空気導路とを有するオーディオ・ドライバであって、前記空気導路と空洞が、当該オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数の半分未満の共鳴振動数をもつヘルムホルツ共振器を形成する、オーディオ・ドライバが提供される。
【0008】
本発明者は、効率的な音生成と気流の音響的な生成を組み合わせることが可能であることを認識するに至った。実際、本発明は、単一のオーディオ・ドライバからの音と気流の改善された同時生成を許容しうる。本オーディオ・ドライバは、特に、改善された品質の音および/または改善された気流を提供しうる。たとえば、本アプローチは、振動板表面積が、たとえばラウドスピーカー用途に好適な、改善された品質の低周波音を提供するのに十分であることを許容しうる。さらに、両方の機能を提供できる、効率的で、製造が容易で、複雑さが低く、および/または低コストのオーディオ・ドライバが達成されうる。本発明は、音および気流生成のための設計上の決定を少なくとも部分的に分離しつつ、音放射および気流生成の両方のための統合されたオーディオ・ドライバ設計を許容しうる。
【0009】
音響共鳴振動数が空気導路および空洞によって与えられるヘルムホルツ共鳴振動数より実質的に高くなるよう本オーディオ・ドライバを設計することによって、音生成および気流生成は、多くの実施形態において、効果的に分離されうる。特に、本設計は、実質的なオーディオ・アーチファクトを生じることなく、高い気流および典型的にはジェットストリーム形成を保証しうる。また、気流生成を実質的に劣化させることなく、効率的で高品質の音再生が達成されうる。
【0010】
特定的には、本発明は、振動板の同じ動きが、オーディオ・ドライバ設計によって分離され、その動きの一部(典型的には空洞および導路のヘルムホルツ共鳴振動数のまわりのより低い周波数の動き)が、音再生に対する少ない影響をもって気流生成をサポートする一方、その動きの他の一部(典型的にはより高い周波数)が気流生成に対する少ない影響をもって音生成をサポートするようにすることを許容しうる。
【0011】
導路は、少数(たとえば一つまたは二つ)の開口のみを空洞の外にもつ閉じた導路であってもよい。導路は、空洞外のすべての開口の面積の平方根を超えるおよび/または当該パイプ/管の断面積の平方根を超える長さをもつパイプまたは管であってもよい。
【0012】
本オーディオ・ドライバは、特定的には、導路の長手軸の方向に空気ジェットの形の気流を生成してもよい。気流および/または空気ジェットは、第二の開口から射出されてもよい。
【0013】
本オーディオ・ドライバは、単一の振動板または膜のみを有していてもよい。振動板は、本オーディオ・ドライバの、単一の有意な音生成要素であってもよい。振動板の第一の面は、使用時の聴取位置のほうにねらいを付けられる正面方向に対応していてもよい。第一の面は本オーディオ・ドライバのための主要音放射の方向を向いていてもよい。
【0014】
導路は振動板から離れる方向に伸びてもよい。導路は特に、トランスデューサ要素から離れる振動板の延長に対応する面と交わらなくてもよい。空洞は部分的に閉じているのみでもよい。導路は、空洞からの唯一の空気の出口であってもよい。他の空気出口のあるシナリオでは、導路は優勢な空気出口であってもよい。たとえば、前記振動板の前記少なくとも一部の動きによる空洞からしぼり出される空気の少なくとも50%が空気導路を通じてであってもよい。
【0015】
空気導路は細長い導路であってもよい。空気導路は実質的に、本オーディオ・ドライバのための中心の軸上方向(central on-axis direction)に対応する軸に沿っていてもよい。
【0016】
前記振動板の前記少なくとも一部は、特に、ダスト・キャップを有するまたはダスト・キャップから構成されるのでもよい。これは、製造を容易にするとともに、音と気流生成の間の改善された分離を提供しうる。
【0017】
本発明の任意的な特徴によれば、前記振動板の前記一部は、前記振動板の表面積の20%未満に対応する。
【0018】
これは、改善された音品質および/または改善された気流生成を許容しうる。
【0019】
本発明の任意的な特徴によれば、前記共鳴振動数は100Hzを超えない。
【0020】
これは、気流生成の、生成される音に対する影響を減らしうる。具体的には、気流を生成するために意図される振動板の動きが、聴取者にとってより聞こえにくいことを許容しうる。本特徴は、音生成と気流生成との間の改善された分離を許容しうる。多くの実施形態において、50Hzを超えないヘルムホルツ共鳴振動数について、特に有利なパフォーマンスが達成されうる。低い共鳴振動数は特に、音再生が深いベース周波数まで延びることを許容しつつ、音と気流の生成の間の改善された分離を許容しうる。気流生成から生じるノイズの知覚しやすさも低下させうる。
【0021】
本発明の任意的な特徴によれば、空気導路はパイプの最大の断面寸法の少なくとも三倍の長さをもつパイプを有する。
【0022】
これは、特に有利な動作およびパフォーマンスを許容しうる。特に、改善された気流が生成されることを許容しうるとともに、多くの実施形態において、ジェットストリームが形成され、好ましい方向に向けられることを許容しうる。
【0023】
本発明の任意的な特徴によれば、第二の開口の面積は、前記振動板の前記少なくとも一部の動きの結果として該第二の開口を通じて噴出される空気のジェット形成を提供するよう十分小さい。
【0024】
これは、特に有利な動作およびパフォーマンスを許容しうる。特に、第二の開口の面積および形に対する前記振動板のストロークおよび前記振動板の前記少なくとも一部の面積は、ジェット形成のための基準が満たされるようなものであってもよい。
【0025】
本発明の任意的な特徴によれば、前記振動板の前記少なくとも一部は前記振動板の中央部分である。
【0026】
これは、特に有利な動作、パフォーマンスおよび/または実装を許容しうる。特に、多くの実施形態において振動板の改善された駆動〔ドライブ〕を許容しうる。
【0027】
本発明の任意的な特徴によれば、空気導路は少なくとも部分的に、前記トランスデューサ要素を通じて形成される。
【0028】
これは、特に有利な動作、パフォーマンスおよび/または実装を許容しうる。多くの実施形態において、これは特にコンパクトで効率的な実装を許容しうる。
【0029】
導路は、少なくとも該導路の一部については、トランスデューサ要素によって形成されてもよく、特に、該導路の少なくとも一部については、トランスデューサ要素の永久磁石によって形成されてもよい。導路は、特に、トランスデューサ要素についての中心軸または対称軸に沿って、トランスデューサ要素および/または永久磁石の中を通過してもよい。
【0030】
本発明の任意的な特徴によれば、トランスデューサ要素はボイス・コイルおよび永久磁石を有しており、振動板はボイス・コイルに結合され、空洞は少なくとも部分的には永久磁石によって形成される。
【0031】
これは、特に有利な動作、パフォーマンスおよび/または実装を許容しうる。
【0032】
本発明の任意的な特徴によれば、エンクロージャーと、該エンクロージャーに取り付けられた上記のオーディオ・ドライバとを有するスピーカー装置が提供される。
【0033】
本発明は、音出力および(向き付けられた空気ジェットのような)気流を同時に生成することのできる改善されたスピーカー装置を許容しうる。
【0034】
本オーディオ・ドライバは、前記第一の面がエンクロージャーの外側を向き、前記第二の面が内側を向くよう、前記エンクロージャーに取り付けられてもよい。本オーディオ・ドライバは、前記振動板が前記エンクロージャーの閉鎖の一部をなすよう、前記エンクロージャーの一方の側に取り付けられてもよい。
【0035】
本スピーカー装置は、特にラウドスピーカーであってもよい。
【0036】
本発明の任意的な特徴によれば、第二の開口は前記エンクロージャーの外側にある。
【0037】
これは、多くのシナリオにおいて改善されたパフォーマンスおよび/または容易にされた動作を許容しうる。特に、これは、気流および音の生成特性のさらなる分離を許容しうる。たとえば、エンクロージャーが、最適化された音再生のために設計されることを許容しうるとともに、気流機能の音品質に対する影響が低下することを提供しうる。
【0038】
エンクロージャーは、バス・リフレックス〔バスレフ型〕スピーカー・システムを形成してもよいし、あるいはたとえば密閉キャビネット・スピーカー・システムを形成してもよい。
【0039】
本発明の任意的な特徴によれば、本スピーカー装置のシステム音響共鳴振動数は、空洞および空気導路の共鳴振動数より少なくとも50%高い。
【0040】
これは、気流生成の、生成される音に対する影響を低下させうる。特に、気流を生成するために意図された振動板の動きが、聴取者にとって聞こえにくくなることを許容しうる。本特徴は、音生成と気流生成の間の改善された分離を許容しうる。スピーカー装置の最低音響共鳴振動数に対して、低い空洞と導路の共鳴振動数は、特に、気流を生成する振動数における音の再生が非効率的となることを保証し、それによりそれから帰結するオーディオ・レベルを低下させうる。
【0041】
本発明の任意的な特徴によれば、システム音響共鳴振動数は、オーディオ・ドライバのためのバス・リフレックス・ポートの共鳴振動数である。
【0042】
本発明は、聴取者のオーディオ経験に対して影響の少ない気流を同時に提供しつつ、低めの(ベース)周波数において特に高い音品質を提供しうる。
【0043】
本発明の任意的な特徴によれば、上記のオーディオ・ドライバを有し、狭帯域気流駆動信号成分およびオーディオ信号成分を含むよう電気入力信号を生成するための駆動ユニットをさらに有するオーディオ・システムであって、前記狭帯域気流駆動信号は、自由空気音響共鳴振動数よりも前記共鳴振動数に近い中心周波数をもつ、オーディオ・システムが提供される。
【0044】
これは、音再生の音品質に対する影響を低く維持しながら気流を生成する特に有利で効率的な方法を許容しうる。
【0045】
本発明のある側面によれば、上記のオーディオ・ドライバを有する冷却装置が提供される。
【0046】
本発明は、たとえば電子回路のための特に効率的な冷却装置であって、音生成のために同時に使用されることのできるものを許容しうる。
【0047】
本発明のある側面によれば、気流を生成する方法であって、オーディオ・ドライバを提供することを含む方法が提供される。前記オーディオ・ドライバは:第一の面と第二の面をもつ、音を放射するための振動板(diaphragm)であって、該振動板の一部が少なくとも部分的に前記第二の面において空洞を形成するよう構成された振動板と;前記第二の面で前記振動板に結合されており、電気入力信号を前記振動板の動きに変換するよう構成されたトランスデューサ要素と;前記空洞に結合され、前記空洞への第一の開口および前記空洞外の第二の開口をもつ空気導路とを有し、前記空気導路と空洞が、オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数の半分未満の共鳴振動数をもつ共振器を形成する。本方法はさらに、気流信号成分およびオーディオ信号成分を含む電気駆動信号を生成する段階と;前記電気駆動信号を前記トランスデューサ要素に前記電気入力信号として入力する段階とを含む。
【0048】
本発明のこれらおよびその他の側面、特徴および利点は、以下に記載される実施形態を参照することから明白となり、明快にされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施形態について、単に例として、図面を参照しつつ述べる。
【図1】本発明のいくつかの実施形態に基づく、オーディオ・ドライバの断面図の例である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に基づく、オーディオ・ドライバの駆動回路の例を示す図である。
【図3】本発明のいくつかの実施形態に基づく、スピーカー装置の断面図の例である。
【図4】本発明のいくつかの実施形態に基づく、スピーカー装置の断面図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に基づくオーディオ・ドライバの断面図の例を示している。オーディオ・ドライバは特にラウドスピーカー・ユニットである。
【0051】
図1のオーディオ・ドライバは、二重の機能を提供するものであって、オーディオ/音出力と、冷却用などに使用されうる気流出力とを同時に生成するために使用できる。このように、本オーディオ・ドライバは、単一のドライバによって異なる機能が実装されることを許容し、たとえば、コンピュータのような電子装置において、音生成および音響冷却を同時に提供するために実装できる。
【0052】
オーディオ・ドライバは振動板を有しており、該振動板はこの特定の例では、膜101および中央ダスト・キャップ103によって構成される。膜101は、弾性サスペンション107によってスピーカー枠105に取り付けられており、弾性サスペンションによって、振動板がスピーカー枠に対して動くことが許容される。スピーカー枠は、固定部分109(これはスピーカー枠105に対して固定されている)および可動部分111(これはスピーカー枠105に対して可動である)を含むトランスデューサ要素109、111に固定的に接続されている。トランスデューサ要素109、111の可動部分111は振動板の一方の側に接続され、その側は以下では振動板の背面と称される。
【0053】
トランスデューサ要素109、111は交流電気信号を受け取ることができ、該交流電気信号は、固定部分109と可動部分111の間の対応する交互方向の相対運動につながる。図1の例では、固定部分109は永久磁石によって形成され、可動部分111はボイス・コイルによって形成され、これらの部分は以下では場合によりこれらの用語によって言及される。しかしながら、他の実施形態では他の構成、たとえば静的なボイス・コイルと可動の永久磁石、を採用してもよいことは理解されるであろう。
【0054】
図1の例では、変動する電気信号がボイス・コイル111に入力される。結果として生じる変動する磁場が永久磁石の磁場と相互作用して、ボイス・コイル111を、よって振動板を動かす。電気信号は特に、振動板に音出力を生成させるオーディオ信号成分を含む。比較的大きな振動板を使う可能性のため、この音出力の品質は高くてもよく、比較的低周波まで延びてもよい。
【0055】
図1のオーディオ・ドライバはさらに、振動板の一部が少なくとも部分的に振動板の背面の空洞113を形成するよう構築される。今の個別的な例では、振動板の、空洞113を(部分的に)形成する部分はダスト・キャップ103に対応するが、他の実施形態では振動板の他の部分が空洞113を形成してもよいことは理解されるであろう。空洞113を形成するためにダスト・キャップ103を使うことは、製造を容易にし、(多くのスピーカー設計において)すでに存在するコンポーネントを追加的な機能を実行するために使うので、特に有利な実装を提供する。さらに、ダスト・キャップの使用は、気流の生成と音の生成のための機能の分離を改善しうる。また、ダスト・キャップは、特に好適な幾何学形状を有する傾向がある(大きさと形の両方の面で)。たとえば、ダスト・キャップ103は、空洞113内の空気のより大きな体積を与える凹型を有する。
【0056】
今の例では、空洞113は実質的にダスト・キャップ103およびトランスデューサ要素109、111によって、主としてダスト・キャップ103およびトランスデューサの固定部分109(すなわち永久磁石109)によって形成される。
【0057】
オーディオ・ドライバはさらに、空洞に結合され、空洞への第一の開口117およびオーディオ・ドライバ外部の自由空気空間への第二の開口119を有する空気導路115を有する。今の特定の例では、空気導路115は実質的に円筒状のパイプまたは管〔チューブ〕によって形成される。しかしながら、他の実施形態では他の空気出口が使用されてもよく、オーディオ・ドライバはたとえば異なるまたは変動する断面積を有する空気導路を使ってもよく、および/または複数の空気導路を有していてもよいことは理解されるであろう。
【0058】
いくつかの例では、空洞113は、空気導路115のほかは完全に閉じていてもよい(すなわち、空洞の唯一の開口は第一の開口117であってもよい)。しかしながら、他の実施形態では、空洞113は(第一の開口117のほか)部分的にのみ閉鎖されていてもよい。
【0059】
図1のオーディオ・ドライバでは、ボイス・コイル111周辺の空気ギャップを通じて若干の漏れが発生してもよい。しかしながら、たいていの実施形態では、小規模な漏れは受け容れ可能であり、典型的には、任意の空気ギャップの音響抵抗を空気導路115の損失に比して高く維持することによって、低く保たれる。たとえば、図1のオーディオ・ドライバにおいて、ボイス・コイル109のまわりの空気ギャップの音響抵抗は、高い音響抵抗をもつスパイダー121を含めることによって、高めることができる。
【0060】
多くの実施形態において、オーディオ・ドライバは、空洞からしぼり出される空気の少なくとも60%、より好ましくは80%もしくは90%より多くが空気導路115によってしぼり出されるよう、構築される。
【0061】
図1のオーディオ・ドライバはこのように、二重の機能を提供するよう構築される。特に、オーディオ・ドライバは、ボイス・コイル109に加えられる駆動信号のオーディオ信号成分に従った振動板の動きによって音を放射する。ラウドスピーカー振動板(コーン101およびダスト・キャップ103)の正面側は音を放射するために使われる。コーン101の背面側も音を放射するために使われる。さらに、ダスト・キャップ103は、空洞113内の圧力を生成するために使われる。その圧力の結果、空気が第一の開口117を介して空気導路115を通り、第二の開口119からしぼり出される。このように、ダスト・キャップ103が(特にボイス・コイル111に加えられる駆動信号の気流信号成分に応答して)動くとき、音トランスデューサ109、111に向かう動きは空洞113中の空気に対する圧力を増加させ、それにより空気導路115から出る気流を生じる。このように、本オーディオ・ドライバは、音源および気流発生器(ブロワー)として同時に使われる。
【0062】
オーディオ・ドライバは、それら異なる機能の効果的な分離を与え、それにより一方の機能の提供による他方のパフォーマンスに対する影響を減らするよう構築される。
【0063】
具体的には、オーディオ・ドライバは、空気導路115および空洞113が、オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴の半分より高くないヘルムホルツ共鳴振動数をもつ共振器を形成するよう、構築される。
【0064】
こうして、空洞113および空気導路115は、
【0065】
【数1】

で表せるヘルムホルツ共鳴振動数fhをもつヘルムホルツ共振器を形成するよう、寸法を決められ、構築される。ここで、
c0は空気中の音速(m/s)
Spは導路117、119の断面積(m2
Lpは導路117、119の長さ(m)
Vは空洞113の体積(m3
である。
【0066】
さらに、この共振器は、オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴が、空洞113および導路115の共鳴振動数(以下、簡単のため、気流共鳴振動数(air flow resonance frequency)と称する)の少なくとも二倍であるよう構築される。これは、ボイス・コイル111に入力される信号が、振動板を気流共鳴振動数付近の周波数で動くようにする気流信号成分をもつことを許容し、それにより高度に効率的な気流生成を提供する。さらに、気流共鳴振動数は自由空気音響共鳴振動数(free air acoustic resonance frequency)から有意に隔たっているので、オーディオ・ドライバはこの周波数で非常に非効率的な音生成を提供し、これは、気流信号成分から帰結する音が小さなボリュームをもち、高度に減衰されるという結果につながる。同時に、ボイス・コイルに入力される信号の音信号成分が、気流生成のパフォーマンスに有意な影響なしに、効率的に放射されることを許容する。
【0067】
特に有利なパフォーマンスは、多くの実施形態において、気流共鳴振動数を100Hzを超えないよう、あるいは実施形態によっては60Hzまたは30Hzさえ超えないよう制御することによって与えられる。そのような低周波数は、他のスピーカー設計上の要件および選好のためにしばしば好適な寸法その他(たとえば全体的なサイズ、オーディオ・パフォーマンスなど)を使いつつ達成できる。さらに、そのような低周波数は、気流動作が、人間の聴覚知覚が非常に鈍感な低い周波数になることを保証し、したがって気流信号成分からの知覚される音がさらに低くなる結果につながる。さらに、気流共鳴と音生成のために使われる周波数区間の間の高度な分離を許容し、それによりドライバが低周波でも使われることを許容する。
【0068】
オーディオ・ドライバの自由空気共鳴振動数は特に、オーディオ・ドライバのための最低共鳴振動数として決定されてもよい。これはたとえば、一定振幅(および変動周波数)の単一音〔トーン〕によって駆動されるときに出力される音レベルにおいてピークが生じる最低周波数として決定されてもよいし、あるいはたとえばオーディオ・ドライバのサスペンション・スチフネスおよび動く質量から解析的に決定されてもよい。
【0069】
図1のオーディオ・ドライバはこのように、ボイス・コイル111に単一の駆動信号が印加されることを許容する。ここで、該単一の駆動信号は気流信号成分と音再生信号成分の両方を含む。これら二つの信号は典型的には周波数領域において分離されており、気流信号成分は気流共鳴振動数に近い狭帯域信号であり、音再生信号成分はより高い周波数を含み、特に人間によって知覚できる可聴帯域を含みうる。
【0070】
図2は、図1のオーディオ・ドライバについての駆動システムの例を示している。この例では、オーディオ信号yinは好適なオーディオ源から受領される。オーディオ信号yinは音響共鳴振動数に近くてもよい所与のカットオフ周波数より下の周波数を減衰させる高域通過フィルタ201に入力される。多くの実施形態において、高域通過フィルタ201の3dBカットオフ周波数は有利には、[50Hz;150Hz]の周波数区間内であり、しばしばさらに有利には[70Hz;120Hz]の周波数区間内である。
【0071】
さらに、駆動システムは、オーディオ・ドライバの気流共鳴振動数に近い中心周波数をもつ狭帯域周波数信号を生成する気流信号成分源203を有する。特に、狭帯域信号の3dBドロップ・オフ周波数は、気流共鳴振動数から、30Hz以内、しばしばより有利には20Hzまたはさらには10Hz以内であってもよい。
【0072】
図2の例では、気流信号成分源203はオーディオ・ドライバの気流共鳴振動数に非常に近い周波数をもつ単一トーン信号(すなわち、実質的には正弦波)を生成する。実際、気流信号成分源203は気流共鳴振動数と同一の周波数をもつトーン信号を与えようとする。多くの実施形態では、生成されたトーン信号の周波数は有利には気流共鳴振動数から10Hz以内、またはさらにはより有利には5Hz以内に維持される。
【0073】
気流信号成分源203は、生成されたトーン信号(周波数fcoolをもつ)を利得因子gcoolに従ってスケーリングする利得205に結合されている。こうして、結果として得られる気流信号成分の振幅はgcoolに等しい。利得205は、組み合わせ器207に結合されており、組み合わせ器207には高域通過フィルタ201も結合されている。組み合わせ器207は、高域通過フィルタ201からのオーディオ信号成分と利得205からの気流信号成分とを組み合わせる(今の個別的な例では単に加算する)ことで単一の駆動信号youtを生成する。この駆動信号は次いでボイス・コイル111に入力される。こうして、狭帯域の気流駆動信号成分およびオーディオ信号成分を含む単一の駆動信号が生成される。狭帯域気流駆動信号の中心周波数はさらに、オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数(free air acoustic resonance frequency)よりも気流共鳴振動数(air flow resonance frequency)に近く、有利には、気流共鳴振動数から30Hz、20Hzまたさらには10Hz以内であってもよい。
【0074】
このように、図1のオーディオ・ドライバは、両方の機能を提供するために単一の駆動信号が印加されることを許容する。さらに、この信号の個々の駆動成分は個々に制御され、それにより効果的な動作および分離を提供してもよい。特定の例として、気流生成は、音再生信号成分とは独立にスケール因子gcoolによって制御できる。よって、気流の量および音のボリューム・レベルは個々に、別個に制御できる。
【0075】
図1の例では、オーディオ・ドライバは、第二の開口から出る生成された気流が空気ジェットを形成するよう構成される。ジェットは、開口から周囲の媒体(空気)中に放出される流体(空気)のコヒーレントな流れを与えうる。図1の例では、ダスト・キャップ103が背面方向に(トランスデューサ109、111のほうに)動くとき、空気ジェットが第二の開口からしぼり出されるよう、寸法が選択される。
【0076】
これは、具体的には、ジェット形成を生じるために領域119における十分大きな空気速度を生成することによって達成される。より具体的には、ジェット形成のための基準は、ストロハル(Strouhal)数が十分小さい(<0.4)べきであることによって指定される。
【0077】
ストロハル数=(f・d)/v
ストロハル数<0.4
ここで、fは気流の(すなわち気流駆動信号の)周波数。これは典型的には空洞および導路のヘルムホルツ振動数と考えられる。
dは第二の開口119の直径
vは第二の開口119での速度
である。
【0078】
こうして、第二の開口119の面積は、振動板の前記少なくとも一部の動きの結果として、第二の開口119を通じて射出される空気について、ジェット形成を与えるのに十分小さいよう設計される。
【0079】
こうして、今の例では、開口面積および/または半径は、ジェット形成を維持するために、周波数および空気の速度に対して、十分小さく維持される。
【0080】
そのような空気ジェットを生成することの利点は、散逸なしに長い距離を進むことができるということである。実際、典型的には、開口直径の約10倍の長さをもつジェットが達成できる。
【0081】
さらに、ジェット形成および放出される空気の方向性の側面は、空気導路115が細長い空気導路として実装されることによってさらに高められる。
【0082】
特に、空気導路115は、当該パイプの最大断面寸法の少なくとも三倍の長さをもつパイプとして実装される。こうして、円形パイプ(すなわち、パイプの中空の開口が円形)について、最大断面寸法は直径であり、よってパイプは該パイプの直径の少なくとも三倍である。実施形態によっては、パイプの長さは有利には、最大断面寸法の少なくとも五倍であってもよい。
【0083】
空気導路115の細長い性質はさらに、所望の方向にジェット・ストリームを向き付けることを容易にしうるとともに、ジェットを、冷却すべき要素または領域に向けるために使用されうる。
【0084】
また、図1の例では、空洞113の体積は、第一の開口の面積に対して比較的小さく維持され、具体的には、空洞113の体積は
20(√A)3
未満である。ここで、Aは第一の開口117の面積である。
【0085】
空洞の体積を比較的小さく維持することにより、振動板(および特にダスト・キャップ103)の比較的少ない偏位でも強いジェットを射出するのに十分な空気圧力の生成を許容することが保証できる。
【0086】
このように、図1のオーディオ・ドライバは、パイプまたは管に接続されたラウドスピーカーからなる。本発明者は、そのようなシステムはシンセティック・ジェット・アクチュエータ(synthetic jet actuator)として使われるのに好適であることを見出した。空気の音響的な動きはパイプ/管の出口における脈動するジェットの形成につながる:サイクルの半分の間に(振動板がトランスデューサ109、111のほうに動くときに)空気がパイプから押し出される。すると、出口の端において流れの分離(flow separation)が起こり、ジェットが形成される。
【0087】
サイクルの吸入部分では空気がパイプ中に吸い込まれるが、サイクルの空気出力部分とは異なり、この過程の方向性はずっと低い。すなわち、空気は幅広い範囲の方向から吸い込まれる。完全なサイクルにわたって平均すると、空気領域中に注入される正味の質量はない。しかしながら、吸入時の空気の内向きの動きとジェットの形の外向きの動きの間の上記の差のため、空気領域中に正味の運動量が注入される。したがって、シンセティック・ジェット・アクチュエータは、ゼロ正味質量束・非ゼロ運動量束デバイスとしても知られる。
【0088】
今の例では、振動板のうち、(部分的に)空洞を形成し、気流を引き起こす部分はダスト・キャップ103に対応する。しかしながら、他の実施形態では、たとえば膜103の領域など、振動板の他の部分が使われてもよい。たとえば、空洞は、振動板の中心に対して等距離の小さな環状同心リングとして形成されてもよい。しかしながら、たいていの実施形態では、振動板のうち、空洞を形成し、気流を与えるために使われる部分の面積は、振動板の全面積の20%未満である。これは、気流生成の音再生に対する影響が減らされることを許容でき、多くのシナリオにおいて実装および製造を容易にしうる。
【0089】
また、今の例では、振動板のうち(部分的に)空洞を形成する部分は振動板の中央部であり、特に、振動板の中心点を含む振動板の部分である。こうして、空洞を形成し気流を生成する部分は振動板についての対称の中心点を含む。これは、製造を容易にでき、多くのシナリオにおいて特に有利な実装を与えうる。
【0090】
今の例では、空洞113は主として振動板の前記部分(特にダスト・キャップ103)およびトランスデューサ(それも特に固定部分109)によって形成される。さらに、空気導路は少なくとも部分的にトランスデューサ要素109、111を通って形成され、特に、部分的にはトランスデューサ要素109、111によって形成される。今の例では、空気導路115は、固定部分109を通る円筒状の開口によって、および固定部分からさらなる後方への中空の突起によって形成される。これは、高度に効率的な実装および容易にされた製造を提供しうる。
【0091】
図1のオーディオ・ドライバは、たとえば、スピーカー装置として使用されてもよい。ここで、本オーディオ・ドライバは好適なエンクロージャーに(可能性としては他のオーディオ・ドライバと一緒に)取り付けられる。そのようなシステムでは、オーディオ生成はエンクロージャーの設計によって制御されうる。
【0092】
いくつかのそのようなスピーカー装置では、第二の開口119はエンクロージャーの外側である。これは、空気ジェット/流れがエンクロージャーの外側の要素または特徴に向けて向き付けられることを許容でき、さらにエンクロージャーおよびスピーカー装置のオーディオ設計が気流動作から高度に独立かつ別個となることを許容しうる。同様に、気流の生成および使用は、エンクロージャー・オーディオ設計のための特定の特性または要求によって制限される必要はない。
【0093】
図3は、スピーカー・エンクロージャー303内に取り付けられた図1のオーディオ・ドライバの例を示している。図のように、エンクロージャー303は、エンクロージャーから外に延びる空気導路115とともに密閉されたキャビネットを形成し、それにより、生成された空気ジェットが、たとえば気流によって冷却される必要のある任意の外部要素のほうに向き付けられることを許容する。
【0094】
今の例では、密閉されたキャビネット・エンクロージャー303は、気流機能を考慮することなく、所望されるオーディオ特性を提供するよう設計されてもよい。特に、内部の閉鎖された体積Vbは単に、振動板に対する追加的なばねとして作用し、したがって、当業者には知られているように、所望される音響振る舞いを与えるような寸法にできる。図3の特定の例はこのように、振動板の第一の方向に(すなわち、振動板から出発してトランスデューサ要素から離れる方向である前方方向に)音が放射されるスピーカー装置を提供する。同時に、空気ジェットの形の気流が生成され、背面方向に向き付けられる。
【0095】
図4は、スピーカー・エンクロージャー403に取り付けられた図1のオーディオ・ドライバ401のもう一つの例を示している。この例において、エンクロージャー403は、生成される音の低周波をさらに向上させるために使用できるバス・リフレックス・ポート405を含んでいる。バス・リフレックスは、低い周波数に同調させられることができ、それによりオーディオ・ドライバ401の有効周波数範囲を拡張する。
【0096】
密閉型キャビネットおよびバス・リフレックス・ポートの両方の例において、また他の多くの実装についても、空洞および導路の共鳴振動数は結果として得られる(最低の)システム共鳴振動数より低く保たれる。特に、エンクロージャー内にオーディオ・ドライバを取り付けるとき、オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数がエンクロージャーによって修正されて、組み合わされたシステムの音響共鳴振動数を与えてもよい。組み合わされたシステムの音響共鳴振動数は典型的にはオーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数より低い。
【0097】
このように、これらのシステム音響共鳴振動数(system acoustic resonance frequency)はオーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数より低くてもよいが、それでも典型的には気流共鳴振動数よりは高く設計される。多くの実施形態において、気流共鳴振動数より少なくとも30%、50%またさらには100%も高いスピーカー装置のシステム共鳴振動数によって、有利な性能が達成される。たとえば、図4のシステムについては、バス・リフレックス・ポート405の共鳴振動数は、気流共鳴振動数より実質的に高く設計される。
【0098】
このことは、エンクロージャー内にオーディオ・ドライバを取り付け、その結果有効周波数範囲が拡張するにもかかわらず、気流機能と音生成機能がいまだに有効に分離されることを保証する。たとえば、図4のバス・リフレックス・キャビネットが60Hzに同調させられるなら、気流機能は30Hzに同調させられてもよい。この周波数では、ポートとコーンの音圧が実効的に打ち消し合うので、バス・リフレックス・キャビネットは音を生成することには非常に非効率的である。60Hz以上の周波数については、気流機能は非常に非効率的になる一方、この範囲では音生成は非常に効率的になる。もう一つの例として、図3のスピーカー装置の密閉ボックス共鳴周波数が60Hzに同調させられるなら、気流機能は30Hzに同調させられてもよい。よって、気流効果は30Hzで最大出力をもつことになる。しかしながら、この周波数では、密閉ボックス・キャビネットは、音を生成するときには非常に非効率的である。しかしながら、60Hz以上の周波数では、密閉ボックスは非常に効率的であり、気流機能はますます効率が悪くなる。
【0099】
記載されたアプローチは多くの異なる用途のために使用されうることは理解されるであろう。たとえば、記載されたオーディオ・ドライバは、冷却されるべき要素またはエリアに向けられることのできる冷却気流を生成するために使われてもよい。さらに、細長い空気導路(パイプまたは管のような)の使用は、この気流が冷却されるべきエリアまたは要素のほうに向けられるのを容易にしうる。実際、いくつかの実施形態では、空気導路は少なくとも部分的に、柔軟な材料を使って生成されてもよい。それにより、空気ジェットを所望の方向に向けるよう、空気導路は手動で簡単に修正できる。さらに、この効率的な冷却は、同時に比較的高品質の音生成を提供しつつ、達成できる。このように、同じオーディオ・ドライバが、複数の目的のために同時に使用されることができ、それによりコストおよび複雑さが軽減される。たとえば、コンピュータは、音出力を与えるとともに内部冷却を与えるオーディオ・ドライバを使用してもよい。そのような実装はたとえば、小さな外形が決定的であるラップトップのようなポータブル・コンピュータに特に好適でありうる。
【0100】
しかしながら、生成された気流は、たとえばユーザーに対する触感出力を生成するなど、他の用途のために使用されてもよい。たとえば、空気導路は、空気ジェットがユーザーによって感じられるよう、ユーザーのほうに向けられてもよい。これはたとえば、バーチャル・アプリケーション(たとえばゲーム)のための向上された効果を提供してもよいし、あるいは多モード・フィードバックのために使われてもよい。たとえば、ユーザーの顔に向けられた気流がアラーム指示として使われてもよい。
【0101】
上記の記述は明確のため種々の機能ユニットおよび要素を参照して本発明の実施形態を記述してきたことは理解されるであろう。しかしながら、個別的な機能ユニットへの言及は、厳密な論理的または物理的構造または編成を示すというよりは、単に、記載される機能を提供するための好適な手段に言及したものと見るべきである。
【0102】
本発明のある実施形態の要素および構成要素は物理的、機能的および論理的にいかなる好適な仕方で実装されてもよい。
【0103】
本発明は、いくつかの実施形態との関連で記述されてきたが、本稿に記載される特定の形に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は付属の請求項によってのみ限定される。さらに、ある特徴が特定の実施形態との関連で記述されているように見えたとしても、当業者は、記述される諸実施形態のさまざまな特徴が本発明に従って組み合わされてもよいことを認識するであろう。請求項において、「有する」「含む」の語は他の要素またはステップの存在を排除するものではない。
【0104】
さらに、個々の特徴が異なる請求項に含められていたとしても、それらの特徴は有利に組み合わされる可能性もありうるのであって、異なる請求項に含まれていることが、特徴の組み合わせが実現可能および/または有利でないことを含意することはない。また、ある特徴があるカテゴリーの請求項に含まれていることは、そのカテゴリーへの限定を含意するものではなく、むしろその特徴が適宜、他の請求項カテゴリーにも等しく適用可能であることを示す。さらに、請求項における特徴の順序は、それらの特徴が作動させられねばならないいかなる特定の順序も含意しない。特に、方法請求項における個々のステップの順序はそれらのステップがこの順序に実行されねばならないことを含意するものではない。むしろ、ステップはいかなる好適な順序で実行されてもよい。さらに、単数形での言及は複数を排除しない。よって、「ある」「第一の」「第二の」などの言及は、複数を排除しない。請求項に参照符号があったとしても、単に明確にする例として与えられているのであって、いかなる仕方であれ特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・第一の側と第二の側をもつ、音を放射する振動板であって、該振動板の一部が前記第二の側において少なくとも部分的に空洞を形成するよう構成された振動板と;
・前記第二の側で前記振動板に結合されており、電気入力信号を前記振動板の動きに変換するよう構成されたトランスデューサ要素と;
・前記空洞に結合され、前記空洞への第一の開口および前記空洞外の第二の開口をもつ空気導路とを有するオーディオ・ドライバであって、
前記空気導路および空洞が、当該オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数の半分未満の共鳴振動数をもつヘルムホルツ共振器を形成する、
オーディオ・ドライバ。
【請求項2】
前記振動板の前記一部は、前記振動板の表面積の20%未満に対応する、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項3】
前記共鳴振動数は100Hzを超えない、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項4】
前記空気導路はパイプを有し、該パイプは該パイプの最大の断面寸法の少なくとも三倍の長さをもつ、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項5】
前記第二の開口の面積は、前記振動板の前記少なくとも一部の動きの結果として該第二の開口を通じて噴出される空気のジェット形成を与えるよう十分小さい、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項6】
前記振動板の前記少なくとも一部は前記振動板の中央部分である、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項7】
前記空気導路は少なくとも部分的に、前記トランスデューサ要素を通って形成される、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項8】
前記トランスデューサ要素はボイス・コイルおよび永久磁石を有しており、前記振動板は前記ボイス・コイルに結合され、前記空洞は少なくとも部分的には前記永久磁石によって形成される、請求項1記載のオーディオ・ドライバ。
【請求項9】
・エンクロージャーと;
・該エンクロージャーに取り付けられた請求項1記載のオーディオ・ドライバとを有するスピーカー装置。
【請求項10】
前記第二の開口が前記エンクロージャーの外側にある、請求項9記載のスピーカー装置。
【請求項11】
当該スピーカー装置のシステム音響共鳴振動数は、前記空洞および前記空気導路の共鳴振動数より少なくとも50%高い、請求項10記載のスピーカー装置。
【請求項12】
前記システム音響共鳴振動数は、前記オーディオ・ドライバのためのバス・リフレックス・ポートの共鳴振動数である、請求項10記載のスピーカー装置。
【請求項13】
請求項1記載のオーディオ・ドライバを有し、狭帯域気流駆動信号成分およびオーディオ信号成分を含むよう前記電気入力信号を生成する駆動ユニットをさらに有するオーディオ・システムであって、前記狭帯域気流駆動信号は、前記自由空気音響共鳴振動数よりも前記共鳴振動数に近い中心周波数をもつ、オーディオ・システム。
【請求項14】
請求項1記載のオーディオ・ドライバを有する冷却装置。
【請求項15】
気流を生成する方法であって、当該方法は:
オーディオ・ドライバを提供する段階を含み、前記オーディオ・ドライバは:
・第一の側と第二の側をもつ、音を放射する振動板であって、該振動板の一部が前記第二の側において少なくとも部分的に空洞を形成するよう構成された振動板と;
・前記第二の側で前記振動板に結合されており、電気入力信号を前記振動板の動きに変換するよう構成されたトランスデューサ要素と;
・前記空洞に結合され、前記空洞への第一の開口および前記空洞外の第二の開口をもつ空気導路とを有し、
前記空気導路および空洞が、前記オーディオ・ドライバの自由空気音響共鳴振動数の半分未満の共鳴振動数をもつ共振器を形成し、
当該方法はさらに、
気流信号成分およびオーディオ信号成分を含む電気駆動信号を生成する段階と;
前記電気駆動信号を前記トランスデューサ要素に前記電気入力信号として入力する段階とを含む、
方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−523735(P2012−523735A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504120(P2012−504120)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051481
【国際公開番号】WO2010/116322
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(308005039)
【Fターム(参考)】