説明

オーディオ・ビデオ信号の入力切換装置、入力切換方法およびオーディオ・ビデオシステム

【課題】ユーザが望むAV信号の伝送経路を維持できるオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置およびオーディオ・ビデオシステムを提供する。
【解決手段】AV信号が入力される複数のAV信号入力部と、他のAV機器と通信する通信部と、複数のAV信号入力部のうち1つを選択する入力選択部と、入力選択部の切り換えを要求する切換要求メッセージを受信したとき、この切換要求メッセージの内容に応じて入力選択部の選択を切り換える選択制御部とを備える。選択制御部は、入力維持モードが設定されているとき、切換要求メッセージを受信しても選択の切り換えを行わず、このメッセージによる切り換えをキャンセルして元に戻す切り換えを行った旨のメッセージを前記通信部を介して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のオーディオ・ビデオ信号のうち1つを選択して再生もしくは出力部から出力するオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置、入力切換方法およびオーディオ・ビデオシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ・ビデオ信号(AV信号)を、ソース機器、シンク機器間でデジタルで伝送する技術としてHDMI(High−Definition Multimedia Interface:高解像度マルチメディアインターフェース)が実用化されている。HDMIのオプション機能として、家電製品同士の相互連携操作を目的としたCEC(Consumer Electronics Control)機能がある。このCECを用いてワンタッチプレイ、リモコンパススルー、システムスタンバイなどの連携動作を行う機能が実現されている。
【0003】
HDMIは、AVストリーム信号を伝送するTDMS(Transition Minimized Differential Signaling)ラインのほか、制御信号を送信する種々のラインが設けられている。そのなかにCECメッセージを伝送するCECラインがある。複数のHDMI入力端子を持つAV機器の場合、TDMSラインは選択された経路のみアクティブになり、ソース機器からシンク機器に向けた1方向の流れにAV信号を伝送するが、CECラインは、選択されていない機器も含め全ての機器とツリー構造状に接続され、機器同士は、CECメッセージに付されたアドレス情報によって互いを識別し双方向に通信を行う。なお、複数のHDMI入力端子を備え、そのいずれか1つを選択する機能を有するAV機器はCECスイッチと呼ばれる。AVシステムにおいて、AVアンプ、テレビ受像機等がCECスイッチの機能を有している。
【0004】
図1を参照してCECの機能について説明する。図1はCECスイッチを含むAVシステムの一例を示す図である。切換機能を持つAVアンプ500に、シンク機器としてテレビ受像機501、ソース機器としてDVDプレーヤ502およびセットトップボックス(STB)503が接続されている。AVアンプ500は、複数の入力(この例の場合には、DVDプレーヤ502およびセットトップボックス503)のうち、1つを選択してテレビ受像機501に出力する機能を有しておりCECスイッチである。
【0005】
このような接続形態のAVシステムで、DVDプレーヤ502のプレイスイッチがオンされると、DVDプレーヤ502がCECメッセージ(Active Sourceメッセージ)を出力し、これによってAVアンプ500は、入力をDVDプレーヤ502側に切り換える。また、セットトップボックス503の電源がオンされると、同様にセットトップボックス503からCECメッセージ(Active Sourceメッセージ)が出力され、これによってAVアンプ500は、入力をセットトップボックス503側に切り換える。なお、このようなHDMI接続に関する技術としては特許文献1のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−054300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1の例で、ユーザがDVDプレーヤ502でディスクを再生してテレビ受像機501で視聴しているときに、セットトップボックス503が自分で電源オンする場合がある。たとえば、録画のためのタイマ機能などである。この場合、セットトップボックス503は、電源オンに伴ってActive Sourceメッセージを出力するため、AVアンプ500は、ユーザがDVDプレーヤ502のコンテンツを視聴しているにもかかわらず、入力をセットトップボックス503側に切り換えてしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は、ユーザが望むAV信号の伝送経路を維持できるオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置、入力切換方法およびオーディオ・ビデオシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明であるオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置は、オーディオ・ビデオ信号が入力される複数のオーディオ・ビデオ信号入力部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記複数のオーディオ・ビデオ信号入力部のうち1つを選択する入力選択部と、前記通信部が、前記入力選択部の切り換えを要求する切換要求メッセージを受信したとき、この切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える選択制御部と、を備え、
前記選択制御部は、入力維持モードを設定する手段と、該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信することを特徴とする。
【0010】
第2の発明であるオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置は、オーディオ・ビデオ信号が入力されるオーディオ・ビデオ信号入力部と、オーディオ・ビデオ信号を生成するオーディオ・ビデオ信号生成部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記オーディオ・ビデオ信号入力部またはオーディオ・ビデオ信号生成部のうち1つを選択する入力選択部と、前記通信部が、前記入力選択部の切り換えを要求する切換要求メッセージを受信したとき、この切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える選択制御部と、を備え、
前記選択制御部は、入力維持モードを設定する手段と、該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信することを特徴とする。
【0011】
なお、前記オーディオ・ビデオ信号入力部を、HDMIのTMDSパケットを受信して処理する処理部とし、前記通信部を、前記HDMIのCECインタフェースを含む処理部としてもよい。
【0012】
また、前記選択制御部が、前記通信部から受信した入力維持モード設定メッセージに応じて前記入力維持モードを設定するようにしてもよい。
【0013】
第3の発明は、テレビ受像機などのシンク機器をルートデバイスとして、上記入力切換装置からなるリピータ機器、および、複数のソース機器をツリー状に接続したオーディオ・ビデオシステムであって、前記シンク機器、リピータ機器、ソース機器のうち少なくともシンク機器が、前記入力維持モード設定メッセージを発行することを特徴とする。
【0014】
第4の発明であるオーディオ・ビデオ信号の入力切換方法は、オーディオ・ビデオ信号が入力される複数のオーディオ・ビデオ信号入力部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記複数のオーディオ・ビデオ信号入力部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、を備えた装置で実行される方法であって、
前記通信部を介して受信した切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える手順と、入力維持モードを設定する手順と、該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する手順と、を有することを特徴とする。
【0015】
第5の発明であるオーディオ・ビデオ信号の入力切換方法は、オーディオ・ビデオ信号が外部から入力されるオーディオ・ビデオ信号入力部と、オーディオ・ビデオ信号を生成するオーディオ・ビデオ信号生成部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記オーディオ・ビデオ信号入力部またはオーディオ・ビデオ信号生成部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、を備えた装置で実行される方法であって、
前記通信部を介して受信した切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える手順と、入力維持モードを設定する手順と、該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する手順と、を有するオことを特徴とする。
【0016】
なお、前記オーディオ・ビデオ信号入力部を、HDMIのTMDSパケットを受信して処理する処理部とし、前記通信部を、前記HDMIのCECインタフェースを含む処理部としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、入力維持モードによってユーザが視聴したいAV信号の経路が維持されるとともに、システム上の他の機器もその維持された経路を有効な経路として認識することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的なAVシステムの構成図
【図2】本発明の実施形態であるAVシステムの接続形態を示す図
【図3】CECの論理アドレステーブルを示す図
【図4】AV機器のHDMIに関連する部分のブロック図
【図5】Active sourceメッセージがブロードキャストされた場合のTMDSラインの切り換えを説明する図
【図6】Set Stream Pathメッセージがブロードキャストされた場合のTMDSラインの切り換えを説明する図
【図7】Routing Changeメッセージがブロードキャストされた場合のTMDSラインの切り換えを説明する図
【図8】CECスイッチの入力維持モードに関する動作を示すフローチャート
【図9】入力維持モードの他の形態において、Active sourceメッセージがブロードキャストされた場合のTMDSラインの切り換えを説明する図
【図10】入力維持モードの他の形態において、Active sourceメッセージがブロードキャストされた場合のシーケンス図
【図11】入力維持モードの他の形態において、Set Stream Pathメッセージがブロードキャストされた場合のTMDSラインの切り換えを説明する図
【図12】入力維持モードの他の形態において、Set Stream Pathメッセージがブロードキャストされた場合のシーケンス図
【図13】AVシステムの各機器の入力維持モードの設定/解除に関する動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
《AVシステムの説明》
図2は、この発明が適用されるAV(オーディオ・ビデオ)システムの構成を示す図である。この図は、複数の機器(デバイス)の接続形態すなわちツリー構造を示している。11台の機器が図示のようなツリー構造で、AV機器を接続するインタフェースであるHDMI(High−Definition Multimedia Interface:高解像度マルチメディアインターフェース)により接続されている。ツリー上の各機器には、HDMIの機能により物理アドレスが付され、HDMIのオプションであるCEC(Consumer Electronics Control)の機能により論理アドレスが付されている。物理アドレスは、その機器のツリー内での位置を示すアドレスであり、論理アドレスは、その機器の機能を表すアドレスである。
【0020】
ツリーの最上位に配置されているのがルートデバイス10である。ルートデバイス10には0.0.0.0の物理アドレスが付与される。ルートデバイス10は、AVストリーム信号の最下流に位置するためシンク機器である。一般的にテレビ受像機などの表示装置がルートデバイス10となる。テレビ受像機には、図3の論理アドレステーブルに示すように、論理アドレス0が割り当てられる。以下の説明においては、ルートデバイス10について、シンク機器10またはテレビ受像機10の用語を併用する。
【0021】
このルートデバイス10から下位4階層に10台の機器が接続されており、その階層および接続順に物理アドレスが付されている。HDMI規格では、ルートデバイス10以下物理アドレスの割当範囲内に4階層までの階層的な接続が可能であるとともに、ルートデバイス10から第3階層までの各機器に対して、直下の階層に15台までの機器を並列に接続することが可能である。そして、この接続形態を判りやすく表すために、ルートデバイス10の物理アドレスを0.0.0.0とし、各桁が各階層における枝(入力端子)番号を表すように、ツリー上の各機器に対してA.B.C.D(各値の範囲:0h〜Fh)の物理アドレスが割り振られている。
【0022】
すなわち、ルートデバイス10(物理アドレス:0.0.0.0)の下位側(入力1,2)に接続されている第1階層の2台の機器11、12は、それぞれ1.0.0.0および2.0.0.0の物理アドレスが割り当てられている。機器11(物理アドレス:1.0.0.0)の下位側(入力1,2)に接続されている第2階層の2台の機器13、14は、それぞれ1.1.0.0および1.2.0.0の物理アドレスが割り当てられている。機器12(物理アドレス:2.0.0.0)の下位側(入力1,2)に接続されている第2階層の2台の機器15、16は、それぞれ2.1.0.0および2.2.0.0の物理アドレスが割り当てられている。機器13(物理アドレス:1.1.0.0)の下位側(入力1,2)に接続されている第3階層の2台の機器17、18は、それぞれ1.1.1.0および1.1.2.0の物理アドレスが割り当てられている。機器18(物理アドレス:1.1.2.0)の下位側(入力1,2)に接続されている第4階層の2台の機器19、20は、それぞれ1.1.2.1および1.1.2.2の物理アドレスが割り当てられている。
【0023】
HDMIの通信ラインは、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)ライン、DDC(Display Data Channel)ライン、CECラインなどがある。TMDSラインは、AVストリーム信号を上流の機器から下流の機器に向けて伝送するラインである。DDCラインは、TMDSラインのAVストリームをコンテンツ保護するためのHDCP認証に用いられる他、物理アドレスの上位側(TMDS信号の下流側)の機器から下位側(TMDS信号の上流側)の機器に物理アドレス情報をEDID(Extended Display Identification Data)経由で提供する。CECラインは、ツリー接続された全機器に共通の双方向バスが形成されるように接続されており、複数の機器を連携して動作させるためのメッセージ(CECメッセージ)が伝送される。TMDSラインは、下位(上流)の機器から上位(下流)の機器へ一方向にAVストリーム信号を転送するのに対して、CECラインは、双方向バスとしてCECメッセージを双方向に転送する。
【0024】
ここで、ツリーの各枝の下端にある機器14(物理アドレス:1.2.0.0),15(物理アドレス:2.1.0.0),16(物理アドレス:2.2.0.0),17(物理アドレス:1.1.1.0),19(物理アドレス:1.1.2.1),20(物理アドレス:1.1.2.2)は、それぞれソース機器である。ソース機器とは、たとえばDVDプレーヤ、ハードディスクレコーダ、セット・トップ・ボックス(STB)、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータなどの、AVコンテンツを再生、生成(以下、「再生、生成」を単に「生成」と呼ぶ)して出力する機能を有する機器である。AVコンテンツはストリーム信号化されてHDMIのTMDSラインを転送される。また、ツリー構造の途中にある機器11(物理アドレス:1.0.0.0),12(物理アドレス:2.0.0.0),13(物理アドレス:1.1.0.0),18(物理アドレス:1.1.2.0)は、リピータ機器である。この図の各リピータ機器は、下位に複数の機器を接続してツリーを枝分かれさせており、これら複数の枝のいずれかのHDMI入力(TMDSライン)を切り換え可能に選択する機能を有するためCECスイッチと呼ばれる。CECスイッチ11,12はたとえばAVアンプであり、CECスイッチ16、17は、たとえばHDMI切換装置である。これらソース機器14,15,16,17,19,20およびCECスイッチ11,12,16,17に対しては、図3のテーブルに示すようにそれぞれの機器の機能に応じた論理アドレスが割り当てられる。
【0025】
なお、ツリーの階層は、ルートデバイス10が最上位であるが、AVストリーム信号の流れは、ソース機器14,15,16,17,19,20が最上流であり、ルートデバイス(シンク機器)10が最下流である。
【0026】
図2において、ソース機器14(物理アドレス1.2.0.0)が生成したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ11のTMDS入力を入力2(物理アドレス1.2.0.0側)すなわちソース機器14側に切り換える。CECスイッチ12,13,18のTMDS入力がどちらの入力に切り換えられているかは不問である。
【0027】
ソース機器15(物理アドレス2.1.0.0)が生成したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力2(物理アドレス2.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ12のTMDS入力を入力1(物理アドレス2.1.0.0側)すなわちソース機器15側に切り換える。CECスイッチ11,13,18のTMDS入力がどちらの入力に切り換わっているかは不問である。同様に、ソース機器16(物理アドレス2.2.0.0)が生成したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力2(物理アドレス2.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ12のTMDS入力を入力2(物理アドレス2.2.0.0側)すなわちソース機器16側に切り換える。CECスイッチ11,13,18のTMDS入力がどちらの入力に切り換わっているかは不問である。
【0028】
ソース機器17(物理アドレス1.1.1.0)が再生したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ11のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換え、CECスイッチ13のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.1.0側)すなわちソース機器17側に切り換える。CECスイッチ12,18のTMDS入力がどちらの入力に切り換わっているかは不問である。
【0029】
ソース機器19(物理アドレス1.1.2.1)が生成したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ11のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換え、CECスイッチ13のTMDS入力を入力2(物理アドレス1.1.2.0側)に切り換え、CECスイッチ18のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.2.1側)すなわちソース機器19側に切り換える。CECスイッチ12のTMDS入力がどちらの入力に切り換わっているかは不問である。同様に、ソース機器20(物理アドレス1.1.2.2)が生成したAVコンテンツをシンク機器10で再生する場合、シンク機器10のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換え、CECスイッチ11のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換え、CECスイッチ13のTMDS入力を入力2(物理アドレス1.1.2.0側)に切り換え、CECスイッチ18のTMDS入力を入力1(物理アドレス1.1.2.2側)すなわちソース機器20側に切り換える。CECスイッチ12のTMDS入力がどちらの入力に切り換わっているかは不問である。
【0030】
《HDMI周辺の構成の説明》
図4は、上記AVシステムの各機器のHDMIに関連する構成を説明するブロック図である。この図では、説明を容易にするために、シンク機器10、CECスイッチ12、および、ソース機器15,16のみの構成を示す。なお、上述したように、ソース機器15、16は、例えばHDMI出力端子を持つDVDプレーヤやHDDレコーダなどである。CECスイッチ12は、HDMI入力端子と出力端子とを持つAVアンプなどである。シンク機器10は、HDMI入力端子をもつテレビ受像機などである。
【0031】
ソース機器15は、メイン基板50、HDMI用のマイコン51、CECインタフェース52、HDMIトランスミッタ54およびHDMI出力部58を備えている。メイン基板50は、メインCPUを備え、映像信号および/または音声信号を含むAV信号を生成する。例えば、このソース機器15がDVDプレーヤであれば、DVDに記録されているデータを読み出してデコードし、AV信号として出力する。HDMIトランスミッタ54は、メイン基板50から入力されたAV信号をストリーム信号に変換し、このAVストリーム信号を、HDMI出力部58、およびHDMIケーブル60のTMDSライン61を介してCECスイッチ12へ転送する。
【0032】
マイコン51は、メイン基板50のオン/オフにかかわらず常に動作している。マイコン51に接続されているCECインタフェース52は、HDMI出力部58を介して、HDMIケーブル60のCECライン62に接続されている。マイコン51は、CECインタフェース52のほか、図示しないリモコン受信部やタイマなどを監視し、CECインタフェース52が受信したCECメッセージ、または、リモコン受信部、タイマから入力された信号に基づいてメイン基板50のオン/オフを制御するとともに、メイン基板50に対して、CECインタフェース52が受信したメッセージやリモコン受信部、タイマから入力された信号の内容を通知する。また、マイコン51は、メイン基板50から入力されたコマンドをCECメッセージに編集し、CECインタフェース52、HDMI出力部58を介してCECライン62に送出する。
以上はソース機器15についての説明であるが、ソース機器16も同様の構成であるため、説明を省略する。
【0033】
CECスイッチ12は、メイン基板40、HDMI用のマイコン41、CECインタフェース42、HDMIレシーバ43、HDMIトランスミッタ44、HDMIセレクタ45、HDMI入力部46,47、および、HDMI出力部48を備えている。HDMIセレクタ45は、HDMI入力部46,47の入力のうちTMDSライン61に接続されるTMDS端子46A,47Aのみを選択する。CECライン62に接続される46B,47Bは、HDMIセレクタ45を通らずに、HDMI出力部48のCEC端子48Bとともに、CECインタフェース42により相互に接続されている。
【0034】
HDMIセレクタ45は、選択したHDMI入力部46または47から入力されたAVトスリーム信号をHDMIレシーバ43に入力する。HDMIレシーバ43は、AVストリーム信号を受信して、ビデオ信号、オーディオ信号、同期信号などからなるAV信号に復調し、このAV信号をメイン基板40に入力する。メイン基板40は、入力されたAV信号を処理する。たとえば、このCECスイッチ12がAVアンプであれば、オーディオ信号を、イコライズ、リップシンク、増幅などの処理をしたのちスピーカへ出力する。そしてさらに、AV信号をそのままHDMIトランスミッタ44に出力する。なお、このCECスイッチ12がHDMI切換装置であれば、AV信号をHDMIレシーバ43から直接HDMIトランスミッタ44に転送する。HDMIトランスミッタ44は、入力されたAV信号をストリーム信号に変換し、このAVストリーム信号をHDMI出力部48からシンク機器10へ送出する。
【0035】
マイコン41は、メイン基板40のオン/オフにかかわらず常に動作している。マイコン41に接続されているCECインタフェース42は、上述したように、HDMI入力部46,47を介してHDMIケーブル60のCECライン61に接続されているとともに、HDMI出力部48を介してHDMIケーブル60のCECライン62に接続されている。マイコン41は、CECインタフェース42のほか、図示しないリモコン受信部やタイマなどを監視し、CECインタフェース42が受信したCECメッセージ、または、リモコン受信部、タイマから入力された信号に基づいてメイン基板40のオン/オフを制御するとともに、メイン基板40に対して、CECインタフェース42が受信したメッセージやリモコン受信部、タイマから入力された信号の内容を通知する。また、マイコン41は、メイン基板40から入力されたコマンドをCECメッセージに編集し、CECインタフェース42、HDMI入力部46,47およびDHMI出力部48を介してCECライン62に送出する。
【0036】
シンク機器10は、メイン基板30、HDMI用のマイコン31、CECインタフェース32、HDMIレシーバ33、および、HDMI入力部36を備えている。なお、図2に示したシンク機器10は、CECスイッチ12と同様に複数(2つ)のHDMI入力部を有しているが、この図では省略している。
【0037】
HDMI入力部36から入力されたAVトスリーム信号はHDMIレシーバ33に入力される。HDMIレシーバ33は、AVストリーム信号を受信して、ビデオ信号、オーディオ信号、同期信号などからなるAV信号に復調し、このAV信号をメイン基板30に入力する。メイン基板30は、オーディオ信号をオーディオ回路に入力するとともに、ビデオ信号をビデオメモリに展開してディスプレイに表示する等の処理を行う。
【0038】
マイコン31は、メイン基板30のオン/オフにかかわらず常に動作している。マイコン31に接続されているCECインタフェース32は、HDMI入力部36を介してHDMIケーブル60のCECライン62に接続されている。マイコン31は、CECインタフェース32のほか、図示しないリモコン受信部やタイマなどを監視し、CECインタフェース32が受信したCECメッセージ、または、リモコン受信部、タイマから入力された信号に基づいてメイン基板30のオン/オフを制御するとともに、メイン基板30に対して、CECインタフェース32が受信したメッセージやリモコン受信部、タイマから入力された信号の内容を通知する。また、マイコン31は、メイン基板30から入力されたコマンドをCECメッセージに編集し、CECインタフェース32、HDMI入力部36を介してCECライン62に送出する。
【0039】
《ワンタッチプレイ機能の説明》
HDMIのCECを用いたシステム制御機能には、ワンタッチプレイ(one−touch play)機能やリモコンパススルー(remote control pass−through)機能などがある。ワンタッチプレイ機能とは、DVDプレーヤなどのソース機器の再生動作に連動して、システム内の必要な機器が自動的に電源オンし、このソース機器からテレビ受像機10に至るAVストリーム信号の伝送経路が自動的にアクティブにされる機能である。すなわち、ユーザがDVDプレーヤにディスクを挿入し再生ボタンを押すと、DVDプレーヤからCECメッセージ(Active Sourceメッセージ)が発行され、DVDプレーヤからテレビ受像機10に至るツリーの枝上にあるCECスイッチがこの伝送経路を有効にするように入力を切り換える。同時に、テレビ受像機10における必要な操作(電源オンなど)を行わせるCECメッセージも同時に発行され、ユーザがDVDプレーヤに対するワンタッチ操作のみでDVDのコンテンツをテレビ受像機10で再生させることが可能になるというものである。
【0040】
また、リモコンパススルー機能とは、ユーザが、ある機器(たとえばテレビ受像機10)に対するリモコン操作によって、そのときアクティブな(若しくはそのとき認識されている)ソース機器を操作できる機能である。テレビ受像機10は、受信したリモコン信号を解釈し、CECメッセージに変換して現在アクティブなソース機器に対して送信する。テレビリモコンで入力可能な種々のコマンド、たとえば再生機器や録画機器の再生(プレイバック)操作やメニュー操作などがCECメッセージに変換される。これにより、ユーザは、テレビ受像機10のリモコンをソース機器のリモコンに持ち替えることなくソース機器を操作することができる。
【0041】
以下、図面を参照してワンタッチプレイ機能について説明する。
ユーザが、いずれかのソース機器に対してAVコンテンツの生成を開始させる操作をしたとき、そのソース機器はAVコンテンツを再生してテレビ受像機10(論理アドレス:0)に向けてAVストリーム信号の転送を開始しようとする。このとき、ソース機器は、自己の保有する物理アドレス(A.B.C.D)を引数に付けたActive Sourceメッセージ<Active Source>[A.B.C.D]をブロードキャストする。なお、ブロードキャストとは、HDMIで接続されている全ての機器を宛先としたCECメッセージの発行である。これに応じて、テレビ受像機10、および、テレビ受像機10とソース機器(A.B.C.D)との間に位置するCECスイッチは、テレビ受像機10とソース機器間のAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにするため入力を切り換える。
【0042】
たとえば、図5に示すように、ソース機器20(物理アドレス:1.1.2.2)から<Active Source>[1.1.2.2]がブロードキャストされた場合、CECスイッチ18(物理アドレス:1.1.2.0)が入力を入力2(物理アドレス1.1.2.2側)に切り換え、CECスイッチ13(物理アドレス:1.1.0.0)が入力を入力2(物理アドレス1.1.2.0側)に切り換え、CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)が入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換え、テレビ受像機10(物理アドレス:0.0.0.0)が入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換える。ここで、「切り換え」とは、元々切換先の入力が選択されている場合にその選択状態を維持することを含んでいる。これにより、ソース機器20(物理アドレス:1.1.2.2)から、テレビ受像機10(論理アドレス0、物理アドレス0.0.0.0)へのAVストリーム信号の伝送経路がアクティブになる。
【0043】
同時に、論理アドレス0のシンク機器であるテレビ受像機10には、現在再生中の(アクティブな)ソース機器がソース機器20であることが記憶される。これにより、テレビ受像機10に対するリモコンコードの入力に応じてテレビ受像機10が発行するリモコンパススルーのメッセージは、テレビ受像機10からソース機器20宛に送信される。
【0044】
なお、Active Sourceメッセージの発行は、ユーザの操作に基づく場合に限定されない。たとえば、タイマによる起動などに基づいて発行してもよい。
【0045】
逆に、テレビ受像機10から、特定のソース機器を指定して、その機器までのAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにさせたい場合、指定する機器の物理アドレスA.B.C.Dを引数に付けて<Set Stream Path>[A.B.C.D]メッセージがブロードキャストされる。これに応じて、テレビ受像機10と指定されソース機器との間に位置するCECスイッチは、テレビ受像機10と物理アドレスで指定された機器間のAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにするため入力切換をする。
【0046】
図6は、テレビ受像機10(物理アドレス:0.0.0.0)から、ソース機器19(物理アドレス:1.1.2.1)へのAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにするためのメッセージである<Set Stream Path>[1.1.2.1]がブロードキャストされたときのTMDSラインの切り換え形態を示す図である。この場合、CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)が入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換え、CECスイッチ13(物理アドレス:1.1.0.0)が入力を入力2(物理アドレス1.1.2.0側)に切り換え、CECスイッチ18(物理アドレス:1.1.2.0)が入力を入力2(物理アドレス1.1.2.1側)に切り換える。なお、テレビ受像機10は、CECメッセージによらず内部の制御により入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換えている。ここで、「切り換え」とは、元々切換先の入力が選択されている場合にその選択状態を維持することを含んでいる。これにより、テレビ受像機10(物理アドレス0.0.0.0)からソース機器19(物理アドレス:1.1.2.1)までのAVストリーム信号の伝送経路がアクティブになる。
【0047】
なお、指定された物理アドレスに位置する機器(図6の例の場合、ソース機器19)は、AVストリーム信号を安定して出力可能な状態にあれば、<Active Source>メッセージをブロードキャストする。
【0048】
これにより、現在アクティブなソース機器がソース機器19であることがテレビ受像機10に記憶され、以後のリモコンパススルーのメッセージはソース機器19宛に送信される。
【0049】
また、CECスイッチが、ユーザにより直接操作され、HDMIの入力が切り換えられた場合には、Routing Changeメッセージが発行される。Routing Changeメッセージは、切換元のHDMI入力部の物理アドレスと切換先のHDMI入力部の物理アドレスを引数にした<Routing Change>[切換元物理アドレス][切換先物理アドレス]をブロードキャストする。たとえば、図7に示すように、CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)が、入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)から入力2(物理アドレス1.2.0.0側)に切り換えた場合、<Routing Change>[1.1.0.0][1.2.0.0]をブロードキャストする。
【0050】
この図7に示したように切り換えたのち、逆に、CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)が、入力を入力2(物理アドレス1.2.0.0側)から入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換えた場合、<Routing Change>[1.2.0.0][1.1.0.0]をブロードキャストする。この第2の切り換えにより、第1の切り換えによってアクティブな経路から外れていたCECスイッチ13からソース機器19までの経路が再びアクティブなAVストリーム信号の伝送経路に含まれるようになる。
【0051】
Routing Changeメッセージが発行されることにより、アクティブなソース機器も切り換えられる。図7の例では、アクティブな機器が、ソース機器19からソース機器14に切り換えられる。これに応じて論理アドレス0のテレビ受像機10から発行されるリモコン・パス・スルー・メッセージの宛先も1.1.2.1から1.2.0.0に切り換えられる。
【0052】
《入力維持モードの説明》
以上のようなワンタッチプレー機能を備えたHDMIで接続されたAVシステムにおいて、ユーザが、特定のAVコンテンツをテレビ受像機10で視聴しているとき、他のソース機器がCECメッセージしたことにより、テレビ受像機10へのAVストリーム信号の伝送経路が切り換えられてしまう場合がある。例えば、ユーザがテレビ放送を視聴しているときにHDDレコーダが録画等のために起動してActive Sourceメッセージが出力された場合、ユーザがHDDレコーダの録画コンテンツを視聴しているときにSTB(セット・トップ・ボックス)がEPG(電子番組表)の取得等のために起動してActive Sourceメッセージが出力された場合などである。
【0053】
この実施形態のAVシステムでは、このような無用なTMDSラインの切り換えが行われないように、上記のようなAVストリーム信号の伝送経路の切り換えを要求するCECメッセージ(以下、切換要求メッセージと呼ぶ)によって、TMDSラインの切り換えを行わないモードである入力維持モードを各機器に設定可能になっている。以下、入力維持モードについて説明する。
【0054】
ユーザは、視聴するAVコンテンツを選択し、そのルート機器を指定して、そのソース機器からテレビ受像機10に至るAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにすると、AVシステム中のCECスイッチに対して入力維持モードを設定する。この入力維持モードの設定はCECスイッチに対する直接の操作で設定すればよい。また、後述するようにCECラインを用いた特定のメッセージを用いて設定するようにしてもよい。入力維持モードが設定されると、いずれかの機器から切換要求メッセージが発行されても、各CECスイッチはこのメッセージを無視してTMDSラインの切り換えは行わない。
【0055】
ただし、Active Sourceメッセージ、Set Stream Pathメッセージなどの切換要求メッセージがブロードキャスト発行されると、システム上の各機器は、このメッセージによりテレビ受像機10に対してアクティブなソース機器が切り換わったものと認識する。仮にこの状態で放置した場合、リモコンパススルーのメッセージのように特定の機器、例えば現在TV受像機10で再生中のソース機器を指定したメッセージが、切換要求メッセージによってアクティブになったと認識された機器宛に発行され、この切換要求メッセージを無視することによってAVストリーム信号の伝送経路が維持されている機器とは異なる機器に届いてしまう可能性がある。
【0056】
そこで、入力維持モードが設定されているCECスイッチが切換要求メッセージによる切換対象となった場合、このCECメッセージを打ち消す(AVストリーム信号の伝送経路を元にもどす)内容のCECメッセージ(以下、リバースメッセージと呼ぶ)をブロードキャスト発行する。このリバースメッセージにより、各機器が認識するアクティブなAVストリーム信号の伝送経路(アクティブなソース機器)を入力切換要求メッセージを無視してアクティブ状態が維持されているAVストリーム信号の伝送経路に一致させる。
【0057】
ここで、リバースメッセージは、上記無視された切換要求メッセージによって接続されるはずであった入力の物理アドレスを切換元とし、維持している入力の物理アドレスを切換先とするRouting Changeメッセージとすればよい。
【0058】
なお、この場合において、テレビ受像機10に内蔵のチューナを用いてテレビ放送を視聴する場合には、テレビ受像機10自身がソース機器となる。
【0059】
図8は、上記CECスイッチの入力維持モードに関連する動作を示すフローチャートである。
【0060】
図8(A)は、入力維持モードを設定操作が行われた場合のCECスイッチの動作を示すフローチャートである。入力維持モードを設定する操作が行われると(S1)、入力維持モードを設定する(S2)。たとえば入力維持モードフラグをセットする。そして、現在の入力の切り換え状態を記憶する(S3)。この動作はHDMI用のマイコンが行えばよい。
【0061】
図8(B)は、切換要求メッセージが入力されたCECスイッチの動作を示すフローチャートである。切換要求メッセージを受信すると(S11)、自装置が切換対象となっているかを判断する(S12)。自装置が切換対象となっているとは、この切換要求メッセージが要求するAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにするためには自装置の入力を切り換える必要があるという意味である。切換対象でなければ(S12でNO)、そのまま動作を終了する。切換対象になっていれば(S12YES)、現在入力維持モードが設定されているかを判断する(S13)。この判定は入力維持モードフラグがセットしているか否かなどで判定すればよい。入力維持モードが設定されていなければ(S13でNO)、HDMIの入力(TMDSライン)を切換要求メッセージの指示どおりに切り換える(S14)。そして動作を終了する。入力維持モードが設定されていれば(S13でYES)、この切換要求メッセージを打ち消すようなリバースメッセージをブロードキャスト発行する(S15)。そして動作を終了する。このフローチャートの動作は、メイン基板40のCPUの制御よって行えばよい。
【0062】
図8(C)は、入力維持モードを解除する操作が行われた場合のCECスイッチの動作を示すフローチャートである。入力維持モードを解除する操作が行われると(S6)、入力維持モードを解除する(S7)。この処理は、たとえば入力維持モードフラグをリセットする処理である。
【0063】
なお、入力維持モードを設定するCECスイッチは、システム内の一部のCECスイッチであってもよく、全部のCECスイッチであってもよい。
【0064】
以下、図9〜図12を参照して図2の構成のAVシステムにおいて、CECスイッチ13(物理アドレス:1.1.0.0)に対して入力維持モードが設定された場合について説明する。
【0065】
図9、図10は、ソース機器17(物理アドレス:1.1.1.0)がアクティブ、且つ、CECスイッチ13(物理アドレス:1.1.0.0)に対して入力維持モードが設定された状態で、ソース機器20(物理アドレス:1.1.2.2)からActive Sourceメッセージが発行された場合を説明する図である。
【0066】
ソース機器20が動作を開始してワンタッチプレーのメッセージである<Active Source(1.1.2.2)>がブロードキャストされる。このソース機器20とテレビ受像機10をつなぐ経路上にある機器が切換対象の機器である。CECスイッチ18(物理アドレス:1.1.2.0)は、上記経路をアクティブにするため、入力を入力2(物理アドレス1.1.2.2側)に切り換える。CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)は、上記経路をアクティブにするため、入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換える。また、テレビ受像機10(物理アドレス:0.0.0.0)は、上記経路をアクティブにするため、入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換える。一方、CECスイッチ13は、入力維持モードが適用されているため、入力が入力1(物理アドレス1.1.1.0側)に固定され、入力切換を行わない。
【0067】
この状態では、TV受像機10がCEC上認識しているアクティブなソース機器(アクティブなAVストリーム信号の伝送経路の最上流の機器)は、ソース機器20(物理アドレス:1.1.2.2)となるが、CECスイッチ13が入力を切り換えなかったため、実際にTV受像機10で再生される映像(音声)は、ソース機器17(物理アドレス:1.1.1.0)のものである。このままでは、TV受像機10からのリモコンパススルー機能の操作対象がソース機器20となり、TMDS経路で再生が継続されているソース機器とCECによる操作対象であるソース機器が不一致、すなわち、再生/操作の対象が不一致となってしまう。
【0068】
そこで、入力維持モードが設定されているCECスイッチ13が、<Routing Change>[1.1.2.0][1.1.1.0]をブロードキャストする。これにより、TV受像機10を含むシステム上の機器が認識するアクティブなソース機器がソース機器17に復帰する。これにより、上記再生/操作の対象の不一致が解消される。なお、ソース機器20が<Active Source>[1.1.2.2]をブロードキャストしてから、CECスイッチ13が、<Routing Change>[1.1.2.0][1.1.1.0]をブロードキャストするまでの時間はわずかであるため、実質上、上記再生/操作の対象の不一致は発生しない。
【0069】
図11、図12は、ソース機器17(物理アドレス:1.1.1.0)がアクティブ、且つ、CECスイッチ13(物理アドレス:1.1.0.0)に対して入力維持モードが設定された状態で、テレビ受像機10(物理アドレス:0.0.0.0)からSet Stream Pathメッセージが発行された場合を説明する図である。すなわち、TV受像機10から切換要求メッセージがブロードキャストされた場合であっても入力維持モードの適用が可能である。
【0070】
TV受像機10がソース機器19(物理アドレス:1.1.2.1)のコンテンツを表示させようとするとき、TV受像機10は入力を入力1(物理アドレス1.0.0.0側)に切り換え、<Set Stream Path>[1.1.2.1]をブロードキャストする。ソース機器19とテレビ受像機10をつなぐAVストリーム信号の伝送経路上にある機器が切換対象の機器である。CECスイッチ11(物理アドレス:1.0.0.0)は、上記経路をアクティブにするため、入力を入力1(物理アドレス1.1.0.0側)に切り換える。CECスイッチ18(物理アドレス:1.1.2.0)は、上記経路をアクティブにするため、入力を入力1(物理アドレス1.1.2.1側)に切り換える。一方、CECスイッチ13は、入力維持モードが適用されているため、入力が入力1(物理アドレス1.1.1.0側)に固定され、入力切換を行わない。
【0071】
この状態では、TV受像機10がCEC上認識しているアクティブなソース機器は、ソース機器19(物理アドレス:1.1.2.1)となるが、CECスイッチ13が入力を切り換えなかったため、実際にTV受像機10で再生される映像(音声)は、ソース機器17(物理アドレス:1.1.1.0)のものである。このままでは、TV受像機10からのリモコンパススルー機能の操作対象がソース機器19となり、再生/操作の対象が不一致となってしまう。
【0072】
そこで、入力維持モードが設定されているCECスイッチ13が、<Routing Change>[1.1.2.0][1.1.1.0]をブロードキャストする。これにより、TV受像機10を含むシステム上の機器が認識するアクティブなソース機器がソース機器17に復帰する。これにりよ、上記再生/操作の対象の不一致が解消される。なお、テレビ受像機10が<Set Stream Path>[1.1.2.1]をブロードキャストしてから、CECスイッチ13が、<Routing Change>[1.1.2.0][1.1.1.0]をブロードキャストするまでの時間はわずかであるため、実質上、上記再生/操作の対象の不一致は発生しない。
【0073】
《尚書き》
なお、一般的なAVアンプは、HDMI入力部を備えておりリピータ機器に分類されるが、内蔵のラジオチューナの受信音声やアナログ入力のオーディオ信号などをAVストリーム信号としてHDMI出力する場合があり、この場合、グラフィカルユーザーインターフェースを備えるなど映像出力可能な機器であればソース機器として振舞うことができる。このAVアンプをアクティブなソース機器として、すなわち、このAVアンプが生成したAVストリーム信号をテレビ受像機10で再生するために入力維持モードが設定されている場合、このAVアンプは、他の機器からブロードキャストされた切換要求メッセージに対するリバースメッセージとして、Routing Changeメッセージではなく、自分自身の物理アドレスをパラメータとしたActive Sourceメッセージをブロードキャストする。
【0074】
以上の実施形態では、入力維持モードが設定されている間は、テレビ受像機10が発行するSet Stream Pathメッセージも無視の対象となっているが、ユーザがテレビ受像機10を操作することによって発行されるSet Stream Pathメッセージは有効としてAVストリーム信号の伝送経路を切り換えてもよい。このSet Stream Pathメッセージによって入力維持モードを自動的に解除してもよく、また、このSet Stream Pathメッセージによってアクティブになった経路(ソース機器)を維持対象として入力維持モードを継続してもよい。
【0075】
《変形例》
上記実施形態では、それぞれの機器に対して直接操作することによって、入力維持モードを設定/解除している。入力維持モードの設定/解除をCECラインを用いたメッセージでシステム全体で一括して行えるようにしてもよい。以下、このような実施形態について説明する。
【0076】
ユーザは、視聴するAVコンテンツを選択し、そのルート機器を指定して、そのソース機器からテレビ受像機10に至るAVストリーム信号の伝送経路をアクティブにすると、AVシステムの全機器に対して入力維持モードを設定する。この入力維持モードの設定はCECのメッセージを用いて行えばよい。入力維持モードが設定されると、いずれかの機器から切換要求メッセージが発行されても、各CECスイッチはこのメッセージを無視してTMDSラインの切り換えは行わない。
【0077】
図13(A)は、テレビ受像機10に入力維持モード設定の操作が行われた場合のテレビ受像機10の動作を示すフローチャートである。ユーザにより、入力維持モードを設定する操作が行われると(S21)、自装置に入力維持モードを設定する(S22)。たとえば、入力維持モードフラグをセットする。そして入力維持モードを設定する旨のCECメッセージをブロードキャストする(S23)。なお、S2の入力維持モードの設定(フラグのセット)はHDMI用のマイコン31が行い、S1およびS3の動作はメイン基板30のCPUが行えばよい。
【0078】
図13(B)は、入力維持モードを設定するCECメッセージを受信した場合の各機器の動作を示すフローチャートである。入力維持モードを設定する旨のCECメッセージを受信すると(S26)、自装置に入力維持モードを設定する(S27)。たとえば入力維持モードフラグをセットする。そして、現在の入力の切り換え状態を記憶する(S28)。この動作はHDMI用のマイコンが行えばよい。以上の図13(A)、(B)の処理により、AVシステム全体に入力維持モードが設定される。
【0079】
図13(C)は、テレビ受像機10に入力維持モード解除の操作が行われた場合のテレビ受像機10の動作を示すフローチャートである。ユーザにより、入力維持モードを解除する操作が行われると(S31)、自装置の入力維持モードを解除する(S32)。この処理は、たとえば入力維持モードフラグをリセットする処理である。そして入力維持モードを解除する旨のCECメッセージをブロードキャストする(S33)。
【0080】
図13(D)は、入力維持モードを解除するCECメッセージを受信した場合の各機器の動作を示すフローチャートである。入力維持モードを解除する旨のCECメッセージを受信すると(S36)、自装置の入力維持モードを解除する(S37)。この処理は、たとえば入力維持モードフラグをリセットする処理である。以上の図13(C)、(D)の処理により、AVシステムの入力維持モードが解除される。
【0081】
なお、ユーザが入力維持モードの設定/解除の操作を行う機器はテレビ受像機10に限定されない。また、入力維持モードをシステム全体に通知する手段はCECメッセージに限定されない。
【0082】
また、システム全体に入力維持モードを設定るすメッセージ以外に、個別の機器(CECスイッチ)に対して入力維持モードの設定指示するメッセージを設けてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 シンク機器(テレビ受像機、ルートデバイス)
11,12,13,18 CECスイッチ
14,15,16,17,19,20 ソース機器
32,42,52 CECインタフェース
36,46,47 HDMI入力部
48,58 HDMI出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ・ビデオ信号が入力される複数のオーディオ・ビデオ信号入力部と、
他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、
前記複数のオーディオ・ビデオ信号入力部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、
前記通信部が、前記入力選択部の切り換えを要求する切換要求メッセージを受信したとき、この切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える選択制御部と、
を備え、
前記選択制御部は、
入力維持モードを設定する手段と、
該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する
オーディオ・ビデオ信号の入力切換装置。
【請求項2】
オーディオ・ビデオ信号が外部から入力されるオーディオ・ビデオ信号入力部と、
オーディオ・ビデオ信号を生成するオーディオ・ビデオ信号生成部と、
他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、
前記オーディオ・ビデオ信号入力部またはオーディオ・ビデオ信号生成部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、
前記通信部が、前記入力選択部の切り換えを要求する切換要求メッセージを受信したとき、この切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える選択制御部と、
を備え、
前記選択制御部は、
入力維持モードを設定する手段と、
該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する
オーディオ・ビデオ信号の入力切換装置。
【請求項3】
前記オーディオ・ビデオ信号入力部は、HDMI(High−Definition Multimedia Interface:高解像度マルチメディアインターフェース)のTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)パケットを受信して処理する処理部であり、
前記通信部は、前記HDMIのCEC(Consumer Electronics Control)インタフェースを含む処理部である
請求項1または請求項2に記載のオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置。

【請求項4】
前記選択制御部は、前記通信部から受信した入力維持モード設定メッセージに応じて前記入力維持モードを設定する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオーディオ・ビデオ信号の入力切換装置。
【請求項5】
テレビ受像機などのシンク機器をルートデバイスとして、請求項4に記載の入力切換装置からなるリピータ機器、および、複数のソース機器をツリー状に接続したオーディオ・ビデオシステムであって、
前記シンク機器、リピータ機器、ソース機器のうち少なくともシンク機器が、前記入力維持モード設定メッセージを発行するオーディオ・ビデオシステム。
【請求項6】
オーディオ・ビデオ信号が入力される複数のオーディオ・ビデオ信号入力部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記複数のオーディオ・ビデオ信号入力部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、を備えた装置で実行される方法であって、
前記通信部を介して受信した切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える手順と、
入力維持モードを設定する手順と、
該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する手順と、
を有するオーディオ・ビデオ信号の入力切換方法。
【請求項7】
オーディオ・ビデオ信号が外部から入力されるオーディオ・ビデオ信号入力部と、オーディオ・ビデオ信号を生成するオーディオ・ビデオ信号生成部と、他のオーディオ・ビデオ機器と通信する通信部と、前記オーディオ・ビデオ信号入力部またはオーディオ・ビデオ信号生成部のうち1つを選択して前記オーディオ・ビデオ信号を入力する入力選択部と、を備えた装置で実行される方法であって、
前記通信部を介して受信した切換要求メッセージの内容に応じて前記入力選択部の選択を切り換える手順と、
入力維持モードを設定する手順と、
該入力維持モードが設定されているとき、前記切換要求メッセージを受信しても前記選択の切り換えを行わず、該受信した切換要求メッセージが要求する切り換えをキャンセルする切り換えを行う旨のメッセージを前記通信部を介して送信する手順と、
を有するオーディオ・ビデオ信号の入力切換方法。
【請求項8】
前記オーディオ・ビデオ信号入力部は、HDMI(High−Definition Multimedia Interface:高解像度マルチメディアインターフェース)のTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)パケットを受信して処理する処理部であり、
前記通信部は、前記HDMIのCEC(Consumer Electronics Control)インタフェースを含む処理部である
請求項6または請求項7に記載のオーディオ・ビデオ信号の入力切換方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−78089(P2013−78089A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218358(P2011−218358)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】