説明

オーディオ信号増幅装置

【目的】 オーディオ信号増幅装置において、聴取者の聴感上の歪を抑制しながら発熱量を抑制し消費電力を低減させる
【構成】 オーディオ信号増幅装置において、入力オーディオ信号を増幅する増幅部と、増幅部のアイドリング電流を制御するアイドリング電流制御部と、増幅部によって増幅し出力されたオーディオ信号の電圧を検出する電圧検出部を備え、アイドリング電流制御部は、検出されたオーディオ信号電圧が予め定められた基準電圧以上であるとき増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より下げ、基準電圧未満であるとき前記増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より上げるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号を増幅するオーディオ信号増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオーディオ信号増幅装置では、アンプのアイドリング電流を再生信号の大きさにかかわらず一定とした場合、微少信号レベル再生時と同じアイドリング電流を大音量再生時にも流すことになる。その場合、大音量再生時のアンプの発熱が大きく消費電力も多くなる。
このようなアンプの発熱や電力消費を抑制するため、アイドリング電流を信号レベルに応じて制御する装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−027059公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からある特許文献1のような増幅装置は、アイドリング電流を小音量時に下げ大音量時に上げていた。小音量時には、人間の耳はクロスオーバー歪みに敏感になるため、使用者が聴取する音質に悪影響があった。また、大音量時には、発熱が大きく消費電力が増大するという問題点があった。
例えば、従来の増幅装置の一例では、放熱用ヒートシンク部分の発熱を見た場合、小音量時には約50w程度で発熱の90%以上がアイドリング電流に起因し、また、大音量時には約150w程度で発熱の約30%はアイドリング電流に起因し約70%がスピーカ駆動電流に起因するものがあった。
【0005】
本発明では、聴取者の聴感に応じたアイドリング電流の制御を行いながら、大音量再生時のアンプの発熱量を抑制し消費電力を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明に係るオーディオ信号増幅装置は、オーディオ信号を入力する入力部と、前記入力部によって入力されたオーディオ信号を増幅する増幅部と、前記増幅部のアイドリング電流を制御するアイドリング電流制御部と、前記増幅部によって増幅し出力されたオーディオ信号の電圧を検出する信号電圧検出部とを備え、前記アイドリング電流制御部は、前記信号電圧検出部によって検出された電圧が予め定められた基準電圧以上であるとき前記増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より下げ、基準電圧未満であるとき前記増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より上げるように制御するものである。
また、前記基準電圧を調節する操作部を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオーディオ信号増幅装置によれば、聴取者の聴感に適応したアイドリング電流の制御を行い、大音量再生時のアンプの発熱量を抑制し消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のオーディオ信号増幅装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のオーディオ信号増幅装置の第2の実施例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明のオーディオ信号増幅装置の第1の実施例の構成を示すブロック図である。
外部からのオーディオ信号は、入力部1に入力される。増幅部2は、入力部1からのオーディオ信号を増幅し、信号電圧検出部3、及びスピーカ5に出力する。
【0010】
信号電圧検出部3は、増幅部2によって増幅されたオーディオ信号の電圧を検出する。アイドリング電流制御部4は、信号電圧検出部3から検出結果を受信し、検出された電圧が予め定められた基準電圧以上であるとき増幅部2のアイドリング電流を下げ、基準電圧未満であるとき増幅部2のアイドリング電流を上げるように前記増幅部のアイドリング電流を制御する制御信号を増幅部2に出力する。アイドリング電流制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)回路とそのプログラムによって構成され、基準電圧は内臓メモリ等に設定・記憶される。基準電圧、アイドリング電流の調整量は、実際のクロスオーバー歪み率、発熱量に基づいて設定する。
例えば、出力100w(負荷8Ω)以上で発熱量が大きくなる場合には、出力電圧28vを基準電圧として設定し、出力電圧28v以上の発熱量が大きくなる範囲で、アイドリング電流を下げて発熱を抑える。なお、アイドリング電流をどの程度下げるかは、増幅部の回路により異なるため、個別に設定する。
【0011】
増幅部2は、信号電圧検出部3からの制御信号に基づいて、増幅部2内のアイドリング電流を調整する。アイドリング電流は、増幅部の回路によって異なり、例えば、数mAから1A程度の範囲で調整される。
スピーカ5は、増幅部2からのオーディオ信号を音に変換して出力する。
【0012】
小音量再生時には、人間の耳はクロスオーバー歪みに敏感になるため、十分なアイドリング電流が必要となるが、大音量再生時には、音量にマスクされてしまうため、人間の耳はクロスオーバー歪みに鈍感になる。本発明では、このような特性を利用して、再生信号の大小をリアルタイムに検出し、アイドリング電流をダイナミックに制御する。小音量再生時には、十分なアイドリング電流を流してクロスオーバー歪みを抑制し、オーディオ信号の品位を保つ。オーディオ信号の品位を充分に保つためには、例えば、クロスオーバー歪みを0.5%以下に抑制するようにアイドリング電流を設定する。クロスオーバー歪みとアイドリング電流の関係は、増幅回路により異なるので、ケースバイケースで設定される。
【0013】
大音量再生時にはアイドリング電流を減らし、クロスオーバー歪み率を犠牲にして発熱を抑制し、消費電力を低減する。
大音量時にクロスオーバー歪み率を、例えば音楽を楽しめる実用的な上限として1%まで許容すれば、ヒートシンク部分からの発熱量を15%程度抑制できる場合があり、この場合には、ヒートシンク部分の回路の消費電力が約150wから約130wに低減される。
聴取者の聴感上、実用に耐えうるクロスオーバー歪みの上限は、3%程度と考えられるので、再生するオーディオ信号の種類(音声、楽音、音楽ジャンル等)により、また聴取者の許容範囲により、クロスオーバー歪みの上限を3%として更に発熱量を抑制することもできる。
【0014】
小音量時には、使用者が聴取する音質へのクロスオーバー歪みの悪影響を抑制し、大音量時には、クロスオーバー歪みが音量にマスクされて人間の耳はクロスオーバー歪みに鈍感になるため、使用者が聴取する音質を維持しながらアイドリング電流を下げることが可能になる。
【0015】
図2は、本発明のオーディオ信号増幅装置の第2の実施例の構成を示すブロック図である。
図2に示すオーディオ信号増幅装置は、図1に示した第1の実施例のオーディオ信号増幅装置に、操作部6を加えた構成である。図2に示すオーディオ信号増幅装置において、図1に示したオーディオ信号増幅装置と共通の構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0016】
操作部6は、アイドリング電流制御部4に接続され、アイドリング電流を制御するための基準電圧を調節する操作ボタン、ダイヤル等を備える。利用者が、実際の使用状況における発熱状況、再生音質に対応して、基準電圧を調節することができる。
なお、操作部6の調節量は、基準電圧値とするほか、基準電圧に対応した発熱量や消費電力、または基準電圧に対応したクロスオーバー歪み率を調節量として示し、利用者が操作するとき、直感的に理解し調節操作しやすい表示とすることもできる。
【0017】
図1に示した第1の実施例では、アイドリング電流を制御するための基準電圧を、オーディオ信号増幅装置の製造者が設定し、オーディオ信号増幅装置の利用者は、アイドリング電流の制御を意識することなく利用することができることを想定している。
図2に示す第2の実施例では、オーディオ信号増幅装置の利用者が基準電圧を調節できる構成とする。実際の使用状況(オーディオ信号の種類(音声、楽音、音楽ジャンル等)と音質の関係、発熱温度、聴取者の聴感上の許容範囲)に即して、利用者自身が調節して利用することができることを想定している。
【0018】
本発明のオーディオ信号増幅装置は、小音量時には、クロスオーバー歪み率が聴感的に問題にならない程度のアイドリング電流として音質劣化の少ないオーディオ再生を行い、大音量時には、小音量時よりもアイドリング電流を下げてオーディオ再生時の発熱を抑えて、利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
電池駆動のラジオ、拡声器、携帯電話などに利用することにより、消費電力を削減し電池寿命を延長することができる。
カーオーディオなど、広さが限られ環境条件によっては高温になりうる車室内で、アンプ発熱を低減させる効果が得られる。
【符号の説明】
【0020】
1 入力部
2 増幅部
3 信号電圧検出部
4 アイドリング電流制御部
5 スピーカ
6 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を入力する入力部と、前記入力部によって入力されたオーディオ信号を増幅する増幅部と、前記増幅部のアイドリング電流を制御するアイドリング電流制御部と、前記増幅部によって増幅し出力されたオーディオ信号の電圧を検出する信号電圧検出部とを備え、前記アイドリング電流制御部は、前記信号電圧検出部によって検出された電圧が予め定められた基準電圧以上であるとき前記増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より下げ、基準電圧未満であるとき前記増幅部のアイドリング電流を通常動作時のアイドリング電流より上げるように制御することを特徴とするオーディオ信号増幅装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオ信号増幅装置であって、前記基準電圧を調節する操作部を備えたことを特徴とするオーディオ信号増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−209748(P2012−209748A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73591(P2011−73591)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(309039716)株式会社ディーアンドエムホールディングス (37)
【Fターム(参考)】