説明

オートカッター付きインクジェットプリンターおよびその制御方法

【課題】切断時に記録紙がプラテンから浮き上がりインクジェットヘッドのノズル面に干渉してしまうことのないオートカッター付きインクジェットプリンターとその制御方法を提案すること。
【解決手段】オートカッター付きロール紙プリンター1では、印刷後に記録紙3aを切断位置Bに位置決めする搬送動作(ST5)に並行して、インクジェットヘッド20を印刷終了位置から近い側の第1、第2退避位置(HP、AP)のいずれかに退避させる(ST6)。記録紙切断時において(ST7)、プラテン13側からインクジェットヘッド20側に移動する可動刃32に引きずられて記録紙3aがプラテン13から浮き上がっても、記録紙3がインクジェットヘッド20のノズル面20aに当たることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙などの長尺状の記録紙に印刷を行い、印刷後にオートカッターによって印刷済みの部分を切断して所定の長さのレシートなどとして発行するオートカッター付きインクジェットプリンターに関する。さらに詳しくは、オートカッターによって切断される記録紙が印刷ヘッドのノズル面に干渉することの無いようにしたオートカッター付きインクジェットプリンターおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターでは、インクジェットヘッドのノズル面に対して、記録紙が狭いギャップで対峙した状態でプラテンに沿って搬送される。記録紙がプラテンから浮き上がってノズル面に干渉すると、記録紙がインクで汚れる、ノズル面に記録紙の側から紙粉が付着してノズルの目詰まりが生ずる、ノズル面に記録紙が当たりインクメニスカスが破壊される等といった不具合が引き起こされる。記録紙がプラテンから浮き上がらないようにするために、特許文献1には、記録紙をプラテンに吸引しながら搬送する機構を備えた画像記録装置が開示されている。
【0003】
また、ロール紙などの長尺状の記録紙の印刷済みの部分を切断するためのオートカッターとしては、特許文献2に記載されている固定刃に対して可動刃が旋回する鋏式のもの、特許文献3に記載されている2枚の可動刃を備えた鋏式のもの、特許文献4に記載されているような固定刃に対して可動刃が直線往復移動する形式のもの等が知られている。このようなオートカッターでは、一般にインクジェットヘッドに対して記録紙搬送方向の下流側に隣接した位置において、記録紙搬送路を挟み固定刃と可動刃が対向配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−176243号公報
【特許文献2】特開平09−19890号公報
【特許文献3】特開平11−240216号公報
【特許文献4】特開平05−337875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、記録紙搬送路を挟み、固定刃をインクジェットヘッドと同一の側に配置し、可動刃をインクジェットヘッドに対峙しているプラテンの側に配置すると、可動刃がインクジェットヘッドの側に接近する方向に移動しながら記録紙を切断する。この場合には、記録紙も可動刃に引きずられてプラテンから浮き上がり、インクジェットヘッドに接近する方向に移動してノズル面に干渉するおそれがある。
【0006】
このような可動刃によって記録紙が引きずられてプラテンから浮き上がってノズル面に干渉するという問題点は従来においては認識されていなかった。すなわち、従来のオートカッター付きインクジェットプリンターでは、可動刃がインクジェットヘッドの側に配置された構成が採用されており、このような問題は発生しなかった。
【0007】
そこで、特許文献1に記載のような吸引機構を備えたプラテンを配置することが考えられる。吸引機構などの機構を新たに追加する方法は装置レイアウトなどの関係で採用できない場合があり、また、コスト高、寸法増加につながる。特に、チケット、レシートなどを発行するために用いるロール紙プリンターにおいては、小型化、低コスト化が要求されるので、このようなプリンターには有効な対策ではない。
【0008】
本発明の課題は、可動刃が記録紙搬送路を挟みインクジェットヘッドと反対側に配置されているオートカッターを備えたインクジェットプリンターにおいて、新たな機構を追加することなく、記録紙が切断時に可動刃によってプラテンから浮き上がってインクジェットヘッドのノズル面に干渉することを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のオートカッター付きインクジェットプリンターは、
記録紙搬送路に沿って記録紙を搬送する搬送機構と、
前記記録紙搬送路の前記記録紙の幅方向に移動しながら前記記録紙に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対して記録紙搬送方向に隣接した位置に配置されているオートカッターと、
前記搬送機構による記録紙搬送、前記インクジェットヘッドの移動と印刷および前記オートカッターによる記録紙切断を制御する制御手段とを有し、
前記オートカッターは、前記記録紙搬送路を挟み、前記インクジェットヘッドと同一側の位置に配置された固定刃、および、前記インクジェットヘッドとは反対側の位置に配置された可動刃を備え、当該可動刃が前記固定刃に向かって移動すると、これらの間に位置している前記記録紙の部分が幅方向に切断されるようになっており、
前記制御手段は、前記オートカッターによる記録紙切断を開始させる前に、前記インクジェットヘッドを前記記録紙搬送路上の前記記録紙から幅方向に外れた退避位置に移動させることを特徴としている。
【0010】
本発明では、オートカッターにより記録紙を切断する時点においては、インクジェットヘッドが記録紙の幅方向から外れた退避位置に移動しているので、可動刃に引きずられて記録紙がインクジェットヘッドの側に移動したとしても、記録紙がインクジェットヘッドのノズル面に当たることがない。
【0011】
ここで、インクジェットヘッドを退避位置に移動させるための動作を追加すると、その分、記録紙の印刷から切断までの動作のスループットが低下してしまう。これを回避するために、前記制御手段は、前記記録紙に対する印刷が終了すると、当該記録紙を搬送して前記オートカッターによる切断位置に位置決めさせる搬送動作と、前記インクジェットヘッドを前記退避位置に移動させる退避動作とを同時に行わせることが望ましい。
【0012】
また、インクジェットヘッドを、記録紙搬送路の幅方向の一方の側の第1退避位置および他方の側の第2退避位置のいずれかの位置に移動させることができる。この場合にも、動作のスループットの低下を回避するために、前記制御手段は、前記第1、第2退避位置のうち、印刷終了時点における前記インクジェットヘッドの位置からの移動距離が短い方に移動させることが望ましい。
【0013】
同様に、前記制御手段は、前記記録紙の切断後に次の印刷を行う場合には、当該切断前に行われる前記退避動作において、前記インクジェットヘッドを前記第1、第2退避位置のうち、次の印刷開始位置に近い方に移動させることが望ましい。
【0014】
ここで、所謂、V溝形可動刃(ギロチン形可動刃)と呼ばれる可動刃を備えたオートカッターの場合には、記録紙が幅方向の両端から中央に向けて切断されるので、鋏式のものに比べて、可動刃による記録紙の浮き上がりが発生しやすい。したがって、本発明はこのようなオートカッターを備えたインクジェットプリンターに適用するのに適している。
【0015】
また、本発明は、ロール紙収納部を備えたインクジェットプリンターに適用することができる。この場合、本発明のオートカッター付きインクジェットプリンターは、上記構成に加えて、プリンター本体の内部に形成したロール紙収納部と、前記プリンター本体に開閉可能に取り付けられ、前記ロール紙収納部を開閉するための開閉蓋とを備えた構成とされる。また、前記プリンター本体および前記開閉蓋のうちの一方の側に、前記インクジェットヘッドおよび前記固定刃が搭載され、他方の側に、前記インクジェットヘッドの印刷位置を規定するプラテンおよび前記可動刃が搭載される。
【0016】
また、本発明は、
記録紙搬送路に沿って記録紙を搬送する搬送機構と、
前記記録紙搬送路の前記記録紙の幅方向に移動しながら前記記録紙に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対して記録紙搬送方向に隣接した位置に配置されていて、前記記録紙搬送路を挟み、前記インクジェットヘッドと同一側の位置に配置された固定刃、および、前記インクジェットヘッドとは反対側の位置に配置された可動刃を有するオートカッターとを有するオートカッター付きインクジェットプリンターの制御方法であって、
前記オートカッターの可動刃を移動させて記録紙切断を開始させる前に、前記インクジェットヘッドを前記記録紙搬送路上の前記記録紙から幅方向に外れた退避位置に移動させることを特徴としている。
【0017】
ここで、前記記録紙に対する印刷が終了すると、当該記録紙を搬送して前記オートカッターによる切断位置に位置決めさせる搬送動作と、前記インクジェットヘッドを前記退避位置に移動させる退避動作とを同時に行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオートカッター付きインクジェットプリンターおよび制御方法では、オートカッターにより記録紙を切断する時点においては、インクジェットヘッドが記録紙の幅方向から外れた退避位置に移動している。したがって、可動刃に引きずられて記録紙がインクジェットヘッドの側に移動したとしても当該インクジェットヘッドのノズル面に当たることがない。よって、可動刃をインクジェットヘッドとは反対側に配置した場合における、可動刃の移動に起因して記録紙がノズル面に干渉して不具合が生ずるという課題を、新たな機構を追加することなく解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のオートカッター付きロール紙プリンターの外観斜視図である。
【図2】図1のオートカッター付きロール紙プリンターの概略断面図である。
【図3】図1のオートカッターの部分を示す部分断面図である。
【図4】オートカッターの動作を示す説明図である。
【図5】オートカッター付きロール紙プリンターの駆動制御系の概略ブロック図である。
【図6】印刷動作、記録紙切断動作を示す概略フローチャートである。
【図7】記録紙切断時の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したオートカッター付きロール紙プリンターの実施の形態を説明する。なお、本発明はロール紙プリンター以外のオートカッター付きインクジェットプリンターにも適用可能なことは勿論である。
【0021】
(全体構成)
図1はオートカッター付きロール紙プリンターの外観斜視図であり、(a)は開閉蓋が閉じ位置にある状態を示しており、(b)は開閉蓋が開き位置にある状態を示している。カッター付きロール紙プリンター1は、ロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うインクジェットプリンターであり、全体として直方体形状をしたプリンター本体2を備えている。プリンター本体2の前面中央部分にはロール紙3(図2参照)を収納するためのロール紙収納部4の開口部4aが形成されており、開口部4aはプリンター本体2に開閉可能に取り付けられた開閉蓋5によって閉鎖されている。
【0022】
開閉蓋5の上端には記録紙排出ガイド6が取り付けられており、記録紙排出ガイド6とプリンター本体2の開口部4aの上縁部分との間に記録紙排出口7が形成されている。プリンター本体2の開閉蓋5の右側部分には電源スイッチ8、紙送りスイッチ9、複数個の動作状態表示ランプ10などが配列されている。プリンター本体2の開閉蓋5の左側部分には、インクカートリッジを装着するためのインクカートリッジ装着部11の装着口11aが開口しており、この開口からインクカートリッジ装着部11にインクカートリッジ12が装着されている。
【0023】
不図示のロックを解除して開閉蓋5の記録紙排出ガイド6に指を掛けて手前に引くと、開閉蓋5を図1(a)に示す閉じ位置5Aから、下端を中心として前方に倒れた図1(b)に示す開き位置5Bまで開けることができる。開閉蓋5を閉じ位置5Aから開く開動作に伴って、プラテン13と、後述のオートカッター30(図2参照)の可動刃32とが開閉蓋5と一緒にプリンター本体2の前方に移動する。この結果、ロール紙収納部4から記録紙排出口7に至る記録紙搬送路16(図2参照)が開放状態となるので、プリンター前方からロール紙3の装填作業などを簡単に行うことができる。
【0024】
(内部構成)
図2はプリンター本体の概略断面図であり、ロール紙3がロール紙収納部4に装填され、開閉蓋5が閉じ位置5Aにある状態を示してある。プリンター本体2の内部にはロール紙収納部4が形成されており、ここに、ロール紙3が、その中心軸がプリンター幅方向に向いた横置き状態で装填されている。ロール紙3から繰り出される長尺状の記録紙3aは、繰り出しローラー17を介してプリンター後方に向かって斜め上方に延びた後に、テンションローラー18によってプリンター前方に湾曲させられ、しかる後にプリンター前方向に延びて記録紙排出口7に至る記録紙搬送路16に沿って搬送される。テンションローラー18はバネ力によってプリンター後方に付勢されており、テンションローラー18によって記録紙3aには所定の張力が付与される。
【0025】
ロール紙収納部4の真上には、記録紙搬送路16におけるプリンター前方に直線状に延びている搬送路部分16aが位置している。搬送路部分16aには、プリンター後側からプリンター前側に向かって印刷位置Aおよび記録紙切断位置Bがこの順番で設けられている。印刷位置Aはプラテン13の上面によって規定されており、プラテン13はプリンター前後方向に延びるプラテンフレーム21に搭載されている。プラテンフレーム21の後端部分にはテンションローラー18が取り付けられている。プラテンフレーム21は開閉蓋5に連結されており、開閉蓋5と共に移動(開閉)する。
【0026】
プラテン13には、キャリッジ19に搭載されたインクジェットヘッド20のノズル面20aが上側から一定のギャップで対峙している。キャリッジ19はプリンター幅方向に架け渡されたキャリッジガイド軸22に沿って移動可能となっており、不図示のキャリッジモーター、ベルト・プーリ機構からなる動力伝達機構を含むキャリッジ駆動機構によって、キャリッジガイド軸22に沿って搬送路部分16aの幅方向に往復移動する。
【0027】
プラテン13のプリンター後側には紙送りローラー23が配置されており、紙送りローラー23には従動ローラー24が下側から圧接されている。プラテン13のプリンター前側における印刷位置Aと記録紙切断位置Bとの間には、排紙ローラー25が配置されており、この排紙ローラー25には上側から従動ローラー26が圧接されている。紙送りローラー23および従動ローラー26はプリンター本体2に搭載されており、従動ローラー24および排紙ローラー25はプラテンフレーム21に搭載されている。
【0028】
記録紙切断位置Bにはオートカッター30が配置されている。オートカッター30は、固定刃31と、可動刃32と、可動刃32を固定刃31に対して接近する方向および離れる方向に移動させる可動刃駆動機構33とを備えている。固定刃31はプリンター本体2の側に取り付けられており、可動刃32および可動刃駆動機構33は開閉蓋側のプラテンフレーム21に搭載されている。
【0029】
この構成のオートカッター付きロール紙プリンター1において、ロール紙3をロール紙収納部4に装填する際には、開閉蓋5を開くことにより開放状態になった開口部4aを介してロール紙3をロール紙収納部4に投入する。ロール紙3から記録紙3aが引き出された状態で、開閉蓋5を閉じると、プラテンフレーム21に搭載されているプラテン13、可動刃32、可動刃駆動機構33、テンションローラー18、従動ローラー24、排紙ローラー25などの部品が元の位置に復帰して記録紙搬送路16が形成される。また、プラテン13がインクジェットヘッド20に一定のギャップで対峙して印刷位置Aを規定する状態になり、可動刃32が記録紙切断位置Bに配置された状態となる。同時に、引き出されていた記録紙3aが記録紙搬送路16上でプラテン13上の印刷位置Aおよび記録紙切断位置Bを通過した状態にセットされる。
【0030】
記録紙3aは紙送りローラー23および従動ローラー24の間を通って印刷位置Aを経由して搬送され、印刷位置Aでは記録紙3aの表面にインクジェットヘッド20によって印刷が施される。また、記録紙3aは、排紙ローラー25および従動ローラー26の間を通って記録紙切断位置Bを経由して搬送され、記録紙切断位置Bではオートカッター14により幅方向に切断される。切断により得られた一定長さの記録紙片がレシートなどとして発行される。
【0031】
(オートカッター)
図3はオートカッター付きロール紙プリンター1におけるオートカッター14を示す部分断面図である。図4はオートカッター14の動作を示す説明図であり、(a)は可動刃32が切断待機位置にある状態を示し、(b)は可動刃32が切断終了位置にある状態を示している。
【0032】
固定刃31は搬送路部分16aに対してインクジェットヘッド20と同一の側に配置されている。固定刃31の刃先31aは下を向いており、搬送路部分16aの幅方向に直線状に延びる刃先輪郭形状をしている。これに対して、可動刃32は反対側のプラテン13の側に配置されており、その刃先32aは上を向いている。刃先32aは、幅方向の両端部から中央に向かって固定刃31から離れる方向に傾斜した刃先輪郭形状(V溝形状)をしている。また、可動刃32は固定刃31に対して開閉蓋5の開き側(プリンター前側)から押し付けられている。
【0033】
可動刃駆動機構33は、カッターモーター34と、このカッターモーター34によって駆動されるクランク機構35とを備えている。可動刃32はクランク機構35によって固定刃31に接近する方向および離れる方向(プリンター上下方向)に往復移動可能である。クランク機構35は、減速歯車列(図示せず)を介してカッターモーター34によって回転駆動される駆動歯車36を備えている。駆動歯車36の端面には回転中心から外れた位置にクランクピン37が取り付けられており、このクランクピン37は上下揺動レバー38に形成した直線状の第1スライド溝39にスライド可能に差し込まれている。
【0034】
上下揺動レバー38は、一方の端部の支軸40を中心としてクランクピン37の回転に伴って上下に揺動される。上下揺動レバー38にはその幅方向の中央部分に第2スライド溝41が形成されており、ここには、可動刃32の幅方向の中心位置に固定したスライドピン42がスライド可能な状態で差し込まれている。上下揺動レバー38が上下に揺動すると、それに伴って、可動刃32が上下方向に移動する。
【0035】
図4(a)に示す可動刃32が切断待機位置にある状態から、駆動歯車36を180度回転すると、図4(b)に示すように可動刃32が切断終了位置まで移動する。駆動歯車36が一回転すると可動刃32が元の切断待機位置に戻る。本例では、可動刃32の刃先32aの幅方向の中央部に凹部32bが形成されており、記録紙3aは幅方向の中央部に切り残しができるパーシャルカット状態になる。なお、本発明においては、フルカットを行うようにしてもよく、鋏式のオートカッターを用いることも可能である。
【0036】
(駆動制御系)
図5はオートカッター付きロール紙プリンター1の駆動制御系を示す概略ブロック図である。駆動制御系はCPU、ROM、RAMなどを含むMPUを中心に構成された駆動制御部50を備えている。駆動制御部50には、記録紙搬送路16に配置されている記録紙センサー、キャリッジの移動位置を検出するためのキャリッジセンサーなどを含む各種のセンサー群51から各種の検出信号が供給される。
【0037】
駆動制御部50は、これらの検出信号に基づき、モータードライバー52を介して紙送りモーター53を駆動して記録紙3aの搬送動作を制御する。また、記録紙3aの搬送に同期させて、モータードライバー54およびヘッドドライバー55を介して、キャリッジモーター56およびインクジェットヘッド20を駆動して、上位機器60から供給される印刷指令、印刷データに基づき、記録紙3a上に印刷データを印刷する印刷動作を制御する。さらに、オートカッター30によるオートカットモードが指定されている場合、あるいは、上位機器60から供給されるオートカット指令を受けると、一連の印刷動作の終了後に、モータードライバー57を介してカッターモーター34を駆動して記録紙切断動作を行わせる。
【0038】
(印刷およびオートカット動作の例)
図6はオートカッター付きロール紙プリンター1のオートカット時の印刷動作を示す概略フローチャートであり、図7はその動作説明図である。これらの図を参照して説明すると、上位機器から印刷指令および印刷データを受けると(図6のステップST1)、ロール紙プリンター1の駆動制御部50は、紙送りモーター53を駆動して記録紙3aの印刷開始位置が印刷位置Aに位置するように位置決め用の搬送を行う。また、キャリッジモーター46を駆動してキャリッジ19を移動させてインクジェットヘッドをホームポジションHP(第1退避位置)から印刷領域内の印刷開始位置に位置決めする(図6のステップST2)。
【0039】
この後は、インクジェットヘッド20を印刷領域C内において行方向(記録紙搬送路16の幅方向、記録紙3aの幅方向)に移動させながらインク液滴を吐出する行印刷動作と、記録紙3aを1行分送り出す紙送り動作を交互に行って、プラテン13上を搬送される記録紙3aの部分に印刷を行う(図6のステップST3)。
【0040】
一連の印刷動作が終了すると(図6のステップST4)、印刷済みの記録紙部分の後側の切断対象の部位をオートカッター30による切断位置Bに位置決めするために記録紙3aの搬送動作を行う(図6のステップST5)。この搬送動作と並行して、図7(a)に示すように、インクジェットヘッドをホームポジションHP(第1退避位置)あるいは印刷領域Cから記録紙搬送路16の幅方向の反対側に外れたアウエイポジションAP(第2退避位置)に移動させる退避動作を行う(図6のステップST6)。
【0041】
本例では印刷終了時におけるインクジェットヘッド20の行方向の位置から移動距離が近い側の退避位置にインクジェットヘッド20を移動させる。いずれの退避位置に対しても同一の移動距離の場合にはホームポジションHPに移動させる。記録紙3aの切断対象の部位が切断位置Bに位置決めされ、インクジェットヘッド20がいずれかの退避位置に移動した後に、オートカッター30による記録紙切断動作を開始させる(図6のステップST7)。
【0042】
ここで、オートカッター30による切断時においては、可動刃32がプラテン13の側からインクジェットヘッド側の固定刃31の側に押し上げられて記録紙3aが切断される。この可動刃32の移動によって記録紙3aの切断部分が上方に引きずられ、プラテン13上に位置している記録紙3aの部分3Aもプラテン13から浮き上がってしまうことがある。インクジェットヘッド20が印刷領域C内に位置している場合には、図7(b)に示すように、浮き上がった記録紙の部分3Aがインクジェットヘッド20のノズル面20aに当たり、記録紙の部分3Aがインク液滴で汚れる、記録紙の部分3Aからノズル面20aの側に紙粉が付着してノズルの目詰まりが生ずる、記録紙の部分3Aがノズルのインクメニスカスを破壊してしまう等の弊害が引き起こされる可能性がある。
【0043】
本実施の形態では、インクジェットヘッド20が印刷領域Cから幅方向に外れた位置(記録紙3aに対して幅方向に外れた位置)に退避しており、記録紙3aが可動刃32によって引き上げられたとしてもインクジェットヘッド20のノズル面20aに当たることがない。なお、本例では、ホームポジションHPおよび反対側のキャリッジ折り返し端であるアウエイポジションAPを退避位置として設定しているが、退避位置はこれらの位置に限定されるものでなく、記録紙3aの幅方向に外れた位置であればよいので、これらのポジションから幅方向にずれた別の位置を退避位置として設定することも可能である。
【0044】
また、本実施の形態では、印刷終了後のインクジェットヘッド20を退避位置に移動させる動作を、記録紙3aを切断位置Bに位置決めする搬送動作と並行して行うようにしている。さらに、印刷終了位置のインクジェットヘッド20を、その位置から近い側の退避位置に移動させるようにしている。したがって、インクジェットヘッド20を退避させることに起因する印刷動作のスループットの低下を回避でき、あるいは、その低下を最小限に抑制できる。
【0045】
次に、記録紙3aの切断動作が終了した後は、次の印刷指令および印刷データがない場合には動作を終了する。次の印刷を行う場合には、いずれか一方の退避位置にあるインクジェットヘッド20を印刷開始位置に移動させた後に印刷動作を開始する(図6のステップST8、ST2)。
【0046】
ここで、記録紙3aの切断動作の後に次の印刷を行う場合には、当該切断動作の前に行われる退避動作において、インクジェットヘッド20を第1、第2退避位置(HP、AP)のうち、次の印刷開始位置に近い方に移動させるようにしてもよい。このようにすれば、次の印刷動作の開始前において、インクジェットヘッド20を印刷開始位置に短時間で移動させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ロール紙プリンター、2 プリンター本体、3 ロール紙、3a 記録紙、3A 記録紙の部分、4 ロール紙収納部、4a 開口部、5 開閉蓋、5A 閉じ位置、5B 開き位置、6 記録紙排出ガイド、7 記録紙排出口、8 電源スイッチ、9 スイッチ、10 動作状態表示ランプ、11 インクカートリッジ装着部、11a 装着口、12 インクカートリッジ、13 プラテン、16 記録紙搬送路、16a 搬送路部分、17 繰り出しローラー、18 テンションローラー、19 キャリッジ、20 インクジェットヘッド、20a ノズル面、21 プラテンフレーム、22 キャリッジガイド軸、23 紙送りローラー、24 従動ローラー、25 排紙ローラー、26 従動ローラー、30 オートカッター、31 固定刃、31a 刃先、32 可動刃、32a 刃先、32b 凹部、33 可動刃駆動機構、34 カッターモーター、35 クランク機構、36 駆動歯車、37 クランクピン、38 上下揺動レバー、39 第1スライド溝、40 支軸、41 第2スライド溝、42 スライドピン、50 駆動制御部、51 センサー群、52・54・57 モータードライバー、53 紙送りモーター、55 ヘッドドライバー、56 キャリッジモーター、60 上位機器、HP ホームポジション(第1退避位置)、AP アウエイポジション(第2退避位置)、A 印刷位置、B 切断位置、C 印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙搬送路に沿って記録紙を搬送する搬送機構と、
前記記録紙搬送路の前記記録紙の幅方向に移動しながら前記記録紙に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対して記録紙搬送方向に隣接した位置に配置されているオートカッターと、
前記搬送機構による記録紙搬送、前記インクジェットヘッドの移動と印刷および前記オートカッターによる記録紙切断を制御する制御手段とを有し、
前記オートカッターは、前記記録紙搬送路を挟み、前記インクジェットヘッドと同一側の位置に配置された固定刃、および、前記インクジェットヘッドとは反対側の位置に配置された可動刃を備え、当該可動刃が前記固定刃に向かって移動すると、これらの間に位置している前記記録紙の部分が幅方向に切断されるようになっており、
前記制御手段は、前記オートカッターによる記録紙切断を開始させる前に、前記インクジェットヘッドを前記記録紙搬送路上の前記記録紙から幅方向に外れた退避位置に移動させることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御手段は、前記記録紙に対する印刷が終了すると、当該記録紙を搬送して前記オートカッターによる切断位置に位置決めさせる搬送動作と、前記インクジェットヘッドを前記退避位置に移動させる退避動作とを同時に行わせることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記退避位置には、前記記録紙搬送路の幅方向の一方の側の第1退避位置および他方の側の第2退避位置が含まれており、
前記制御手段は、前記第1、第2退避位置のうち、印刷終了時点における前記インクジェットヘッドの位置からの移動距離が短い方に移動させることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記制御手段は、前記記録紙の切断後に次の印刷を行う場合には、当該切断前に行われる前記退避動作において、前記インクジェットヘッドを前記第1、第2退避位置のうち、次の印刷開始位置に近い方に移動させることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記固定刃はその幅方向に延びる直線状の輪郭の刃先を備え、
前記可動刃は、その幅方向の両端部から中央部に向けて前記固定刃の直線状の刃先から遠ざかる方向に直線状に傾斜した輪郭の刃先を備えており、
前記可動刃の移動に伴って、前記記録紙の幅方向の両端から中央に向けて当該記録紙が切断されることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
プリンター本体の内部に形成したロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部を開閉するために、前記プリンター本体に開閉可能に取り付けられている開閉蓋とを有し、
前記プリンター本体および前記開閉蓋のうちの一方の側には、前記インクジェットヘッドおよび前記固定刃が搭載され、他方の側には、前記インクジェットヘッドの印刷位置を規定するプラテンおよび前記可動刃が搭載されていることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンター。
【請求項7】
記録紙搬送路に沿って記録紙を搬送する搬送機構と、
前記記録紙搬送路の前記記録紙の幅方向に移動しながら前記記録紙に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対して記録紙搬送方向に隣接した位置に配置されていて、前記記録紙搬送路を挟み、前記インクジェットヘッドと同一側の位置に配置された固定刃、および、前記インクジェットヘッドとは反対側の位置に配置された可動刃を有するオートカッターとを備えるオートカッター付きインクジェットプリンターの制御方法であって、
前記オートカッターの可動刃を移動させて記録紙切断を開始させる前に、前記インクジェットヘッドを前記記録紙搬送路上の前記記録紙から幅方向に外れた退避位置に移動させることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンターの制御方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記記録紙に対する印刷が終了すると、当該記録紙を搬送して前記オートカッターによる切断位置に位置決めさせる搬送動作と、前記インクジェットヘッドを前記退避位置に移動させる退避動作とを同時に行わせることを特徴とするオートカッター付きインクジェットプリンターの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143601(P2011−143601A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5663(P2010−5663)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】