説明

カウル構造

【課題】カウル本体側の空気導入用の開口部内への水の浸入を防止又は抑制しながら、空気の流入抵抗を抑えることができるカウル構造を得る。
【解決手段】カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36は、カウル本体22のダクト開口部26Bの略車両前方斜め上方側に対向して形成されているので、吸気抵抗が抑えられる。また、カウルルーバ開口部36の車両前方側で車体側に非接触な位置を通りカウルルーバ開口部36を貫通してカウル本体22のダクト開口部26Bの下端位置Aへ向けられたすべての仮想直線に対して、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内に形成された車幅方向壁部38の少なくともいずれかが交わる位置まで延設されているので、ダクト開口部26B内側への水の直進が車幅方向壁部38によって遮られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドガラスの車両下方側に設けられたカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カウルの上部に配設されるカウルルーバにおいては、カウル本体側のダクト開口部内への水の浸入を抑える構造が適用されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造としては、例えば、空気導入開口部と空気導入口とを備えると共に、前記空気導入開口部は、ルーバ本体の上面幅方向に沿って開口されかつ下部が上面開口前縁部の下方へ入込むようにして凹状に形成され、前記空気導入口は、空気導入開口部の入込み部の溝面に形成され、その開口部とカウル内の空間とを連通するような構造がある。
【特許文献1】実開平3−5508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような構造では、ルーバ本体上方側における空気の流れ方向と空気導入口内への空気の導入方向とが同一方向でなく、流入される空気が車両側面視でS字状に回り込む必要があり、そのため、空気の流入抵抗が大きく吸気効率が良くない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、カウル本体側の空気導入用の開口部内への水の浸入を防止又は抑制しながら、空気の流入抵抗を抑えることができるカウル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のカウル構造は、ウインドシールドガラスの車両下方側に車幅方向に沿って配設され、車両後方側部位となる後壁部に空気導入用の第一開口部が形成されたカウル本体と、前記カウル本体の車両上方側において前記ウインドシールドガラスの下端部からフードの後端部にかけて車幅方向に沿って配設され、前記後壁部の略車両前方斜め上方側に対向して上壁部が形成されると共に、前記上壁部に空気導入用の第二開口部が形成されたカウルルーバと、を有し、前記第二開口部内には、車幅方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された少なくとも一つの車幅方向壁部が設けられており、前記第二開口部の車両前方側で車体側に非接触な位置を通り前記第二開口部を貫通して前記第一開口部の下端位置へ向けられたすべての仮想直線に対して、前記車幅方向壁部の少なくともいずれかが交わる位置まで延設されていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のカウル構造によれば、カウル本体の空気導入用の第一開口部が後壁部に形成され、カウルルーバにおける空気導入用の第二開口部は、カウル本体の後壁部の略車両前方斜め上方側に対向して形成された上壁部に形成されているので、車外からの空気は、車両側面視でS字状に回り込むことなく、カウルルーバの第二開口部内からカウル本体の第一開口部側へ流れ込む。
【0007】
また、カウルルーバの第二開口部の車両前方側で車体側に非接触な位置を通り第二開口部を貫通してカウル本体の第一開口部の下端位置へ向けられたすべての仮想直線に対して、カウルルーバの第二開口部内に形成された車幅方向壁部の少なくともいずれか(車幅方向壁部が一つの場合はその一つ)が交わる位置まで延設されているので、例えば、ホース洗車時等にカウルルーバの第二開口部内に水が直進して入っても、車幅方向壁部によって、カウル本体の第一開口部内側への水の直進が遮られる。
【0008】
請求項2に記載する本発明のカウル構造は、請求項1記載の構成において、前記第一開口部と前記第二開口部とは、車幅方向位置が少なくとも一部重なることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明のカウル構造によれば、カウル本体の第一開口部とカウルルーバの第二開口部とは、車幅方向位置が少なくとも一部重なっているので、車外からの空気は、車幅方向への流動量が抑えられて効率的にカウルルーバの第二開口部内からカウル本体の第一開口部側へ流れる。一方、例えば、ホース洗車時等にカウルルーバの第二開口部内に水が直進して入った場合には、車幅方向壁部によって、カウル本体の第一開口部内側への水の直進が遮られる。
【0010】
請求項3に記載する本発明のカウル構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二開口部内には、車両前後方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された少なくとも一つの前後方向壁部が設けられており、前記前後方向壁部の下端形状が前記車幅方向壁部の下端位置を繋ぐ形状とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載する本発明のカウル構造によれば、カウルルーバの第二開口部内には、車両前後方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された少なくとも一つの前後方向壁部が設けられており、前後方向壁部の下端形状が車幅方向壁部の下端位置を繋ぐ形状となっているので、例えば、ホース洗車時等に車両前後方向に対して斜めに又は車両側方から放水されてカウルルーバの第二開口部内に水が直進して入っても、前後方向壁部によって、カウル本体の第一開口部内側への水の直進がより効果的に遮られる。また、前後方向壁部は、車両前後方向に沿って形成されているので、車外からの空気が流入する際の抵抗には殆どならない。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のカウル構造によれば、カウル本体側の空気導入用の第一開口部内への水の浸入を防止又は抑制しながら、空気の流入抵抗を抑えることができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2に記載のカウル構造によれば、カウル本体側の空気導入用の第一開口部内への水の浸入を防止又は抑制しながら、吸気効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3に記載のカウル構造によれば、車両前後方向に対して斜めに又は車両側方から放水されても、カウル本体側の空気導入用の第一開口部内への水の浸入をより効果的に防止又は抑制することができ、かつ空気の流入抵抗を抑えることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係るカウル構造について図1〜図3を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車幅方向を示している。
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係るカウル構造が適用された車両10(自動車)の一部が車両斜め前方から見た斜視図にて示されている(ワイパアーム等は図示を省略する)。図1に示されるように、ウインドシールドガラス(フロントウインドシールドガラス)12の車両下方側には、フード(エンジンフード)14の後端部14Aに隣接してカウル20が配設されている。カウル20は、左右のフロントピラー16を繋ぐと共に、キャビン内へ向けて流入しようとする空気と水とを分離する機能を有しており、断面内にはワイパシステム(図示省略)を収納している。カウル20は、ウインドシールドガラス12の車両下方側に車幅方向に沿って配設された図3に示される板金製のカウル本体22を備えると共に、カウル本体22の車両上方側に配設された樹脂製のカウルルーバ30を備えている。
【0017】
図1の2−2線に沿った拡大断面図である図2に示されるように、カウル本体22は、ウインドシールドガラス12の下端部12Aに沿って車幅方向に延在されたカウルアウタパネル24を備えている。このカウルアウタパネル24には、ウインドシールドガラス12の下端部12A付近に平行なガラス支持部24Aが設けられている。カウルアウタパネル24のガラス支持部24Aには、ウインドシールドガラス12の下端部12A付近が接着剤25によって固着されている。これによって、カウルアウタパネル24がウインドシールドガラス12の下端部12A付近を支持している。
【0018】
カウルアウタパネル24の車両下方側には、カウルアウタパネル24に接合されたカウルインナパネル26が配置されて車幅方向に沿って延在されている。カウルインナパネル26は、カウル本体22における車両後方側部位を構成する後壁部26Aを含んで構成されている。後壁部26Aは、略車両上下方向に立設されており、空気導入用の第一開口部としてのダクト開口部26Bが貫通によって形成されている。ダクト開口部26Bは、車両用エアコン(図示省略)側に繋がっている。図3に示されるように、ダクト開口部26Bは、本実施形態では、乗員から見て車幅方向左側(図3の紙面上では右側)に形成されている。
【0019】
図2に示されるように、このカウルインナパネル26の下端部は、車両前方側へ向けて延設されたカウルロアパネル28の後端部に接合されている。カウルロアパネル28は、車両上方側が開放された樋状に形成されており、排水用の流路を形成している。
【0020】
カウルロアパネル28の前端フランジ部28Aには、カウルルーバ30の脚部32Aが固定されている。カウルルーバ30は、樹脂材料を用いてインジェクション成形することにより一体に形成されており、ウインドシールドガラス12の下端部12Aからフード14の後端部14Aにかけて車幅方向に沿って配設されている。カウル本体22とカウルルーバ30との間には、車幅方向に沿って延びるカウル空間20Aが形成されている。
【0021】
カウルルーバ30は、ウインドシールドガラス12の下端部12Aとフード14の後端部14Aとの間に配設された本体部34を備えると共に、本体部34の車両前方側に前板部32を備えている。前板部32は、本体部34の前端部34Bから屈曲されて車両下方側に一段下がっており、その底部から略車両下方側に延設された脚部32Aがカウルロアパネル28の前端フランジ部28Aに固定されている。
【0022】
カウルルーバ30の本体部34は、雨水等の水をカウル本体22内へ落とし込むことが可能な構成部とされている。この本体部34には、カウル本体22の後壁部26Aの略車両前方斜め上方側に対向する上壁部34Aが形成されている。上壁部34Aは、略水平(より厳密には、車両後方側が若干高くなるように)に配置され、側断面視で車両上方側を径方向内側とする大径の(なだらかな)略円弧状に形成されている。なお、カウルルーバ30の上壁部34Aの車両後方側の先端にはゴム製のシール材18が嵌着されており、組付状態ではこのシール材18のリップ部がウインドシールドガラス12のガラス面に圧接されるようになっている。
【0023】
上壁部34Aには、空気導入用の第二開口部としてのカウルルーバ開口部36(複数の小開口部によって形成された小開口部群となる空気取入れ口)が貫通によって形成されている。図3に示されるように、カウルルーバ開口部36の車幅方向位置は、乗員から見て車幅方向左側(図3の紙面上では右側)とされ、本実施形態では、カウル本体22のダクト開口部26Bの車幅方向位置と重なるように(車幅方向位置を合わせるように)設定されている(車幅方向同位置への設置)。これにより、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36は、カウル本体22のダクト開口部26Bの略車両前方斜め上方側に対向して配設されている。
【0024】
カウルルーバ開口部36内には、車幅方向に沿って形成されて略車両下方側(より厳密には車両後方斜め下方側であり、空気を流入させる方向(図2参照))へ延設された複数の車幅方向壁部38(横ルーバ部)が設けられると共に、車両前後方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された複数の前後方向壁部40(縦ルーバ部)が設けられている。
【0025】
車幅方向壁部38は、カウルルーバ開口部36から流入される空気の風向調整機能と、カウルルーバ開口部36から流入される水に対する水返し機能とを兼ね備えている。ここで、図2に示される車幅方向壁部38の高さ(車両下方側への延設量)は、ダクト開口部26Bの高さ位置やサイズ、カウルルーバ開口部36の開口位置や車両前後方向サイズ、及びダクト開口部26Bとカウルルーバ開口部36との車両前後方向の位置関係等により決定される。
【0026】
より具体的には、カウルルーバ開口部36の車両前方側で車体側に非接触な位置を通りカウルルーバ開口部36を貫通してダクト開口部26Bの下端位置Aへ向けられたすべての仮想直線(図中では、仮想直線の代表線を符号L1、L2、L3で示す。)に対して、車幅方向壁部38の少なくともいずれかが交わる位置まで延設されている。なお、図中の仮想直線L1、L2、L3は、ホース洗車水入りラインに相当し、仮想直線L1は最も傾斜角度の小さい仮想直線である。また、フード14の後端部14Aにおける符号Bは、水入りのハードポイント(すなわち、カウルルーバ開口部36の車両前方側でカウルルーバ開口部36内及びダクト開口部26B内への水の直進を阻止するポイントであって、かつ、カウルルーバ開口部36の車両前方側からカウルルーバ開口部36を貫通してダクト開口部26Bの下端位置Aへ向けられた水の直進方向に仮想直線を引いた場合にこの仮想直線の車両側面視での最小傾斜角度を決定するのに用いられたポイント)を示しており、仮想直線L1は、このハードポイントBの極僅かに車両上方側を通ることになる。
【0027】
本実施形態では、すべての前記仮想直線のうち最も傾斜角度の小さい仮想直線L1よりも車両後方側に配設される車幅方向壁部38の下端位置は、次のように設定されている。すなわち、部分拡大図を適宜参照しながら図2に基づいて説明すると、前記仮想直線のうち最も傾斜角度の小さい仮想直線L1よりも車両後方側となる車幅方向壁部38のうち、最も車両前方側に位置する(図中では右から三番目の)車幅方向壁部38(38A)の下端位置は、仮想直線L1と交わる高さ位置に設定されている。また、この車幅方向壁部38(38A)に対して車両後方側に隣接して位置する(図中では右から二番目の)車幅方向壁部38(38B)は、車両前側に隣接して位置する車幅方向壁部38(A)の上端部とダクト開口部26Bの下端位置Aとを結ぶ仮想直線L2上に交わる高さ位置に設定されている。また同様に、この車幅方向壁部38(38B)に対して車両後方側に隣接して位置する(図中では一番右の)車幅方向壁部38(38C)は、車両前側に隣接して位置する車幅方向壁部38(38B)の上端部とダクト開口部26Bの下端位置Aとを結ぶ仮想直線L3上に交わる高さ位置に設定されている。なお、最も車両後方側に形成された車幅方向壁部38(38C)は、すべての前記仮想直線のうち仮想直線L3よりも傾斜角度を大きくした仮想直線のいずれとも交わるように設定されている。
【0028】
また、車両前後方向に沿って形成された前後方向壁部40の下端位置は、車幅方向壁部38の下端を繋ぐ高さ位置とされ、前後方向壁部40の下端形状は、車幅方向壁部38の下端位置を繋ぐ形状とされている。
【0029】
以上により、カウルルーバ開口部36内は、カウルルーバ開口部36が複数に分割されて小開口部が複数形成されたような形状、すなわち、枯葉等の侵入を阻止可能なメッシュ状(格子状)となっている。また、カウルルーバ30は、車幅方向壁部38や前後方向壁部40が水返しリブとして機能し、車両前方側や車両側方側からの放水時にダクト開口部26Bへの水入りを防止する水入り防止可能(又は抑制可能)なカウルルーバ構造となっている。
【0030】
なお、カウルルーバ30は、前述の通りインジェクション成形することにより一体に形成されており、車幅方向壁部38や前後方向壁部40は、所定の成形方向(抜き方向)に向かって延設(延長)されている。このため、車幅方向壁部38や前後方向壁部40の部分を別部品化する必要がなく、カウルルーバ30を一部品にすることができるので生産性も良い。
【0031】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
カウル本体22の空気導入用のダクト開口部26Bが後壁部26Aに形成され、カウルルーバ30における空気導入用のカウルルーバ開口部36は、カウル本体22の後壁部26Aの略車両前方斜め上方側に対向して形成された上壁部34Aに形成されているので、車外からの空気は、車両側面視でS字状に回り込むことなく、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内からカウル本体22のダクト開口部26B側へ流れ込む(矢印C方向参照)。
【0033】
補足すると、水の浸入を抑えるために、車外からの空気を車両側面視でS字状に回り込ませるような対比構造では、空気の流入抵抗が上がり、圧損率が高くなってしまう。これに対して、本実施形態に係るカウル構造では、空気の流入抵抗が小さく、吸気負荷が抑えられる。
【0034】
ここで、本実施形態に係るカウル構造では、カウル本体22のダクト開口部26Bとカウルルーバ30のカウルルーバ開口部36とは、車幅方向位置が重なっているので(図3参照)、車外からの空気は、車幅方向への流動量が殆どなく、効率的にカウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内からカウル本体22のダクト開口部26B側へ流れる(矢印C方向参照)。このため、エアコン作動時の吸気抵抗が低減でき、吸気効率が向上する。
【0035】
また、ダクト開口部26Bの前記車幅方向位置の設定に伴う他の効果として、吸気の車幅方向への流動(回り込み)が殆どないことで、吸気は、カウル本体22からの熱影響を殆ど受けないという効果もある。すなわち、カウル本体22のカウルロアパネル28は、その直下側からはエンジンルーム42の熱影響を受けるため、吸気がカウルロアパネル28上を通る際には、カウル本体22を介してエンジンルーム42側の熱(エンジン熱)が吸気に伝わることになるが、本実施形態の場合には、吸気の車幅方向への流動(回り込み)が殆どないので、吸気はエンジン熱の影響を殆ど受けない。その結果、例えば、カウル本体(22)のダクト開口部(26B)とカウルルーバ(30)のカウルルーバ開口部(36)との車幅方向位置が車幅方向反対側に設定された対比構造と比べると、吸気温度が上昇しないので、前記対比構造に比べて、吸気を冷やすためのエアコン稼働による負荷(ロス)が抑えられて燃費が向上する。なお、エアコン非使用での走行時においても、カウル空間20A経由での生暖かい風がキャビン側に入ってこないというメリットがある。
【0036】
また、本実施形態に係るカウル構造では、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36の車両前方側で車体側(ハードポイントB)に非接触な位置を通りカウルルーバ開口部36を貫通してカウル本体22のダクト開口部26Bの下端位置Aへ向けられたすべての仮想直線(L1、L2、L3参照)に対して、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内に形成された車幅方向壁部38の少なくともいずれかが交わる位置まで延設されているので、例えば、ホース洗車時等にカウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内に水が直進して入っても、車幅方向壁部38によって、カウル本体22のダクト開口部26B内側への水の直進が遮られる。車幅方向壁部38に当って滴下された水は、カウルロアパネル28の排水用流路に沿って流れて排水される。
【0037】
また、カウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内には、車両前後方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された複数の前後方向壁部40が設けられており、前後方向壁部40の下端形状が車幅方向壁部38の下端位置を繋ぐ形状となっているので、例えば、ホース洗車時等に車両前後方向に対して斜めに又は車両側方から放水されてカウルルーバ30のカウルルーバ開口部36内に水が直進して入っても、前後方向壁部40によって、カウル本体22のダクト開口部26B内側への水の直進がより効果的に遮られる。ここで、前後方向壁部40は、車両前後方向に沿って形成されているので、車外からの空気が流入する際の抵抗には殆どならない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るカウル構造によれば、カウル本体22側の空気導入用のダクト開口部26B内への水の浸入を防止又は抑制しながら、空気の流入抵抗を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態のカウルルーバ30は、インジェクション成形することにより一体形成可能なので、部品点数が抑えられ、コスト削減も可能になる。補足すると、例えば、前記特許文献1(実開平3−5508号公報)のような構造では、成形上の都合より、(流入口を含む)側断面視でZ字形状の部分を別体として成形したうえでカウルルーバ本体に取り付ける必要があるが、本実施形態のカウルルーバ30では、そのような必要もない。
【0040】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、第一開口部としてのダクト開口部26Bと第二開口部としてのカウルルーバ開口部36とは、車幅方向位置が完全に重なっており、吸気効率の観点からはこのような構成が最も好ましいが、第一開口部及び第二開口部の車幅方向位置関係は、例えば、意匠上の制約等によって完全に重ねることができない場合には、第一開口部の車幅方向位置と第二開口部の車幅方向位置とが一部のみ重なるような設定や、第一開口部の車幅方向位置と第二開口部の車幅方向位置とが車幅方向の同じ一方側に設定されるが重ならないような設定等のように他の位置関係としてもよい。ここで、第一開口部の車幅方向位置と第二開口部の車幅方向位置とが少なくとも車幅方向の同じ一方側に設定されていれば、例えば、車幅方向で異なる側(すなわち、一方が車幅方向右側で他方が車幅方向左側)に第一開口部及び第二開口部が設定される場合に比べて、吸気効率がよい。
【0041】
また、上記実施形態では、カウルルーバ30の略水平な上壁部34A(略水平面部)に第二開口部としてのカウルルーバ開口部36が形成されているが、例えば、カウルルーバの上壁部が上記実施形態と同様の位置に配設されてかつ側断面視で車両上方側を径方向内側とする上記実施形態に比べて小径の略円弧状に形成されている場合等に、第二開口部は、上壁部において車両後方斜め上方側へ(一例として約45°程度に)傾斜した傾斜面部に形成されてもよく、第二開口部の形成部は、必ずしも略水平面部には限定されない。
【0042】
また、上記実施形態では、第二開口部としてのカウルルーバ開口部36内に車幅方向壁部38と前後方向壁部40とが設けられることによって、カウルルーバ開口部36内をメッシュ状にしており、このような構成が好ましいが、例えば、第二開口部(カウルルーバ開口部(36))内に車幅方向壁部(38)のみが設けられることによって、第二開口部を分割して車幅方向にスリット状の小開口部が形成されたような構造にしてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、第二開口部としてのカウルルーバ開口部36内に車幅方向壁部38が複数設けられており、このような構成が好ましいが、車幅方向壁部は、例えば、第二開口部内に一つのみ設けられ、かつ、第二開口部の車両前方側で車体側に非接触な位置を通り第二開口部を貫通して第一開口部の下端位置へ向けられたすべての仮想直線に対して、当該車幅方向壁部の下端部が交わる位置まで延設されているような構成としてもよい。
【0044】
さらにまた、上記実施形態では、第二開口部としてのカウルルーバ開口部36内に前後方向壁部40が複数設けられており、このような構成が好ましいが、前後方向壁部は、例えば、第二開口部内に一つのみ設けられ、かつ、その下端形状が車幅方向壁部の下端位置を繋ぐ形状とされるような構成としてもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、最も傾斜角度の小さい仮想直線L1は、フード14の後端部14AのハードポイントBの極僅かに車両上方側を通っているが、例えば、フード(14)の後端部(14A)が被覆部材によって被覆されている場合には、当該被覆部材上がハードポイントとなり、最も傾斜角度の小さい仮想直線(L1)は、当該被覆部材上のハードポイントの極僅かに車両上方側を通ることになる。また、他の例として、例えば、カウルルーバ(30)の本体部(34)の前端部(34B)がフード(14)の後端部(14A)と同程度の高さ位置まで車両上方側に突出しているような場合には、このカウルルーバ(30)の本体部(34)の前端部(34B)が水入りのハードポイントとなり、最も傾斜角度の小さい仮想直線(L1)は、カウルルーバ(30)の本体部(34)の前端部(34B)におけるハードポイントの極僅かに車両上方側を通ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るカウル構造が適用された車両の一部を車両斜め前方から見た状態で示す斜視図である(ワイパアーム等は図示を省略する)。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカウル構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
12 ウインドシールドガラス
12A ウインドシールドガラスの下端部
14 フード
14A フードの後端部
20 カウル
22 カウル本体
26A 後壁部
26B ダクト開口部(第一開口部)
30 カウルルーバ
34A 上壁部
36 カウルルーバ開口部(第二開口部)
38 車幅方向壁部
40 前後方向壁部
A ダクト開口部の下端位置(第一開口部の下端位置)
L1、L2、L3 仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラスの車両下方側に車幅方向に沿って配設され、車両後方側部位となる後壁部に空気導入用の第一開口部が形成されたカウル本体と、
前記カウル本体の車両上方側において前記ウインドシールドガラスの下端部からフードの後端部にかけて車幅方向に沿って配設され、前記後壁部の略車両前方斜め上方側に対向して上壁部が形成されると共に、前記上壁部に空気導入用の第二開口部が形成されたカウルルーバと、
を有し、前記第二開口部内には、車幅方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された少なくとも一つの車幅方向壁部が設けられており、
前記第二開口部の車両前方側で車体側に非接触な位置を通り前記第二開口部を貫通して前記第一開口部の下端位置へ向けられたすべての仮想直線に対して、前記車幅方向壁部の少なくともいずれかが交わる位置まで延設されていることを特徴とするカウル構造。
【請求項2】
前記第一開口部と前記第二開口部とは、車幅方向位置が少なくとも一部重なることを特徴とする請求項1記載のカウル構造。
【請求項3】
前記第二開口部内には、車両前後方向に沿って形成されて略車両下方側へ延設された少なくとも一つの前後方向壁部が設けられており、
前記前後方向壁部の下端形状が前記車幅方向壁部の下端位置を繋ぐ形状とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−190510(P2009−190510A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31827(P2008−31827)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】