カカオ抽出物を含む美味しい飲料および組成物
本発明の主題は、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物、および食用酸を含む、非チョコレート風味の水溶性乾燥粉末組成物などの、美味しい飲料および組成物に関する。本発明の主題はさらに、その飲料および組成物を配合するプロセスに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物、および食用酸を含む美味しい飲料および組成物に関する。本発明の主題はさらに、その飲料および組成物を配合するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール化合物は、ある種の植物性素材に由来する広い部類の生物活性物質である。植物ポリフェノールは様々な健康上の利益に関連付けられてきた。プロシアニジンを含む特定のポリフェノール化合物はカカオ中に自然に生じる。抽出物、カカオ固形物およびカカオリカーを含むカカオ製品は、適切に加工されれば、カカオ中に見つかる本来のフラバノールおよびプロシアニジンの多くを保持することができる。これらのカカオポリフェノールは、摂取されると、ヒトに著しい健康上の利益を提供できる。例えば、カカオポリフェノールは、動脈の血流依存性血管拡張反応に有益な効果を有し、一酸化窒素/一酸化窒素合成酵素(NO/NOS)活性を向上させる;そのような心血管健康効果が、例えば、1997年10月9日に発行された特許文献1に報告されている。それゆえ、カカオポリフェノール含有量の多いカカオ製品を摂取すると、著しい健康上の利益が得られるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/36497号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、カカオポリフェノールを提供する組成物が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外なことに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の存在下において、ここに記載された条件下で、食用酸には、カカオ抽出物を含む組成物の美味しさを改善すること、カカオ抽出物を含む組成物に美味しそうな色を与えること、非チョコレート風味の組成物にカカオ抽出物およびカカオポリフェノールの健康上の利益を提供すること、およびカカオ抽出物中に含まれるカカオポリフェノールの分散性を増加させることを含むいくつかの利点があることが発見された。
【0006】
1つの実施の形態において、本発明の主題は、食用酸およびその上1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む、美味しい飲料などの飲料およびその調製のための乾燥飲料ミックスに関し、いくつかの実施の形態において、その飲料およびミックスは、甘味料、例えば、スクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せなどの非栄養甘味料を含んでもよい。乾燥飲料ミックスは、赤色から栗色のさらさらした乾燥粉末であってよく、この粉末はここに記載された特定のサイズの粒子を含んでよい。
【0007】
別の実施の形態において、本発明の主題は、甘味料、例えば、非栄養甘味料(スクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せ)、クエン酸、酒石酸および/またはリンゴ酸などの食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物および媒体(carrier)を含む、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物に関する。この組成物は、果実香味料をさらに含んでもよい。この組成物は、ここに記載された特定のサイズの粒子を有するカカオ抽出物を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ここに記載された生物学的研究の前日と当日のサンプリング実例を示す図
【図2】図1による生物学的研究における本発明の主題の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたエピカテキン代謝産物の平均レベルを示すグラフ
【図3】10人の被験者各々に関する本発明の主題の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたエピカテキン代謝産物の平均レベルを示すグラフ
【図4A】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたメチル化されていないエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図4B】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出された3’−O−メチルエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図4C】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出された4’−O−メチルエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図5】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたメチル化されていないエピカテキン代謝産物、3’−O−メチルエピカテキン代謝産物および4’−O−メチルエピカテキン代謝産物の相対レベルを示すグラフ
【図6A】クエン酸含有量の関数としての乾燥飲料ミックス組成物の湿潤時間の傾向を示すグラフ
【図6B】酸対カカオ抽出物の比率の関数としての乾燥飲料ミックス組成物の湿潤時間の傾向を示すグラフ
【図7】いくつかの乾燥飲料ミックス組成物の粒径分布およびこれらの組成物の250>x>105マイクロメートルの粒径分画に関する湿潤時間を示すグラフ。CFはカカオ抽出物を称する
【図8】嗜好評定尺度を使用した70人の被験者の試験サンプルにおける美味しさ試験の結果を示すグラフ(凡例:左の棒は男性の被験者を表し、右の棒は女性の被験者を表す)
【発明を実施するための形態】
【0009】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、天然のままでは苦く、渋い。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物は、典型的に、ココア飲料などのチョコレート風味の組成物に限られてきた。さらに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する非チョコレート風味の組成物は、その抽出物の強い苦味と渋味のために、それほど美味しくはなかった。したがって、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する、美味しい非チョコレート風味の組成物を提供することが都合よいであろう。これにより、カカオポリフェノールの有用な用途が広がるであろう。
【0010】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は典型的に、水に入れると、紫色から茶色になる。色合いは自然であるが、カカオ抽出物を含有する組成物を摂取する人々にとって美味しそうには見えないであろう。したがって、水に入れたときに美味しそうに見える、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物を提供することが都合よいであろう。
【0011】
その抽出プロセスを考えると、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、疎水性であろうから、濡らすのが難しく、その結果、水に入れたときに、分散させるのが難しい材料である。したがって、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物であって、水に入れたときに、より容易に分散される組成物を提供することが都合よいであろう。
【0012】
さらに、ココア製品中のカカオポリフェノールを摂取すると、典型的に、しばしば消費後約2時間で、結果として生じる代謝産物の血漿濃度がピークになることが試験により示された(Schroeter et al., "(-)-Epicatechin mediates beneficial effects of the flavanol-rich cocoa on vascular functions in humans", PNAS, Vol.103, No.4, January 2006, pp.1024-1029を参照)。ここに記載された飲料条件下で少なくとも同じ程度の吸収を達成することが都合よいであろう。
【0013】
「カカオ抽出物」という用語は、カカオ豆、カカオニブ、もしくはカカオ豆かカカオニブから調製された脱脂されていない、ある程度脱脂されたまたは完全に脱脂されたカカオ固形物(例えば、ココアケーキおよびココア粉)を溶媒抽出することによって調製できるカカオポリフェノール(カテキン、エピカテキンおよび/またはプロシアニジン)を含有する溶媒由来の抽出物を称する。例えば、それに関連する開示(カカオ抽出物および抽出プロセスに関する)がここに引用される、Romanczykの米国特許第5554645号、2000年1月18日に発行された米国特許第6015913号(Kealey等)、および2001年11月6日に発行された米国特許第6312753号(Kealey等)の各明細書を参照のこと。当業者には理解されるように、抽出に使用される溶媒(例えば、水性アセトン)に応じて、カカオ抽出物は疎水性であってもよい。さらに、当業者に公知のように、そのカカオ抽出物(粉末形態であり得る)は、ココア飲料およびチョコレートの製造のための従来のカカオ豆加工中に調製されるココア粉とは異なる材料である。従来のカカオ加工の説明については、例えば、Industrial Chocolate Manufacture and Use, 3rd, ed., Ed S.T.Becket, Blackwell Publishing 1999を参照のこと。その上、抽出プロセスに酸が使用される場合、結果として得られるカカオ抽出物はまだ、ここに記載されるように食用酸とまだ組み合わされる、すなわち、そのカカオ抽出物中に残留するどのような酸も、本発明の組成物の食用酸成分の一部とは見なされないことが意図されている。
【0014】
「カカオフラバノール」という用語は、フラバン−3−オールモノマーのカテキンおよびエピカテキンを称する。これらのモノマーは、(+)−カテキンと(−)−エピカテキンおよびそれらのそれぞれのエピマー(例えば、(+)−エピカテキンと(−)−カテキン)並びにその代謝産物(例えば、代謝産物の説明に関して実施例2を参照)を含むそれらの誘導体を含む。当業者が認識できるように、カカオは、ガレート型および/またはガロイル化フラバノールを含まず、それゆえ、「カカオフラバノール」という用語は、没食子酸カテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキンなどを含まない。
【0015】
「カカオプロシアニジン」という用語は、カテキンおよび/またはエピカテキンの天然に生じるまたは合成由来のオリゴマーを称する。
【0016】
「カカオポリフェノール」へのどのような言及も、カカオフラバノールおよび/またはカカオプロシアニジンを含むものと理解すべきである。
【0017】
本発明の組成物は、典型的に、お茶、ワイン、ブドウの種または松樹皮由来のポリフェノール化合物および/または抽出物を含まない。
【0018】
また、式「A」を有するフラバノールおよびnが2から18までおよびそれ以上の整数である式「An」を有するプロシアニジンの少なくとも一方を含む組成物も本発明の範囲に含まれる。「A」は、式:
【化1】
【0019】
並びにその塩、誘導体、および酸化生成物、
を有し、式中、
Rは、3−(α)−OH、3−(β)−OH、3−(α)−O−サッカライド、3−(β)−O−サッカライド、3−(α)−O−C(O)−R1、または3−(β)−O−C(O)−R1であり;
隣接するモノマー間の結合が、4位と6位の間または4位と8位の間で起こり;
4位のモノマーへの結合がαまたはβ立体化学を有し;
X、YおよびZが、少なくとも1つの末端モノマーについて、隣接するモノマーのそこへの結合が4位にあり、必要に応じて、Y=Z=水素であるという条件で、A、水素、およびサッカライド部分からなる群より選択され;
サッカライド部分が、フェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい単糖または二糖部分であり;
R1は、少なくとも1つのヒドロキシ基により必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール部分であってよい。サッカライド部分が、グルコース、キシロース、ラムノース、およびアラビノースからなる群に由来することが都合よい。サッカライド部分並びにR、X、Y、およびZのいずれまたは全ては、任意の位置で、エステル結合を通じてフェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい。フェノール部分は、コーヒー酸、ケイ皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸、およびシナピン酸からなる群より選択される。
【0020】
ある実施の形態において、前記組成物は、Rが3−(α)−OHおよび/または3−(β)−OHである上述した化合物の内の少なくとも1つを含む。
【0021】
「組成物」という用語は、以下に限られないが、栄養補給食品、飲料および飲料ミックスを含む。
【0022】
「媒体」という用語は、以下に限られないが、粉末、液体、ゲル、可溶化剤、または結合剤を含む、非毒性であり、組成物の他の成分と有害な様式で相互作用しない当該技術分野で公知のどのような材料も含む。好ましい媒体としては、以下に限られないが、マルトデキストリン、アラビアゴム、デンプン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施の形態において、媒体は、マルトデキストリンであり、および/または使用される媒体は、味および/または渋味が中性である、すなわち、結果として得られる飲料の渋味を含む美味しさへの影響がない。
【0023】
「渋い」という用語は、口腔において乾燥、すぼまること(puckering)および/または粗さとして知覚される触感を称する。渋味の知覚は、始まりはゆっくりとしており、長い持続性により特徴付けられる;その知覚は、瞬時ではなく、展開に時間を要するであろう。多くの化合物が渋い感覚を引き出すが、渋味は、タンパク質を沈殿させる能力と化学的に定義される。当業者には、渋味をどのように評価および/または測定するかが分かるであろう。例えば、苦味、渋味などの特徴を評価するための官能試験方法が、当該技術分野において公知であり、例えば、国際規格(ISO)、および米国材料試験協会(ASTM)などの公認団体の推奨およびガイドラインのように実施される。Hanna Peleg et al., Bitterness and astringency of flavan-3-ol monomers, dimers and trimers, Journal of the Science of Food and Agriculture 79:1123-1128 (1999)も参照のこと。
【0024】
ここに用いたように、「美味しい」という用語は、飲料などの組成物が、飲食した際に、味覚と触感の両方に関して、心地よいまたは好ましい味を有することを意味する。例えば、「美味しい」は、苦味と渋味の要素が組成物の残りのものと調和している(すなわち、甘味と酸味と調和している)ことを意味する(苦味、渋味および後味は、当業者が認識できるように、カカオ抽出物に関連する性質である);「美味しい組成物」は、カカオ抽出物、またはカカオ香味料の存在が、その中に容易に知覚できないことも意味する。食品組成物の美味しさを評価するために、食品化学の技術分野において、嗜好尺度が日常的に使用されており、実施例7(その中の試験結果および引用を参照のこと)に示されるようにここに使用してもよい。最も広く使用されてきた嗜好尺度は、例えば、「非常に嫌い」から「非常に好き」までに及ぶ、食品に関する嗜好をヒトが評定する9等尺度であり、5の中点は好きでも嫌いでもない。それゆえ、本発明の組成物は、ヒトが組成物を少なくとも5およびそれ以上、例えば、6以上と評価した場合に、「美味しい」。実施例7を参照すると、7等嗜好尺度を使用してもよい。
【0025】
「常温で長期保存可能な(shelf-stable)」という用語は、周囲温度および周囲湿度の条件下で貯蔵される製品を称し、その製品は、包装の完全な状態が、貯蔵中、輸送中、小売店での陳列中、および家庭にあるときに維持されていれば、製造業者の指定した賞味期限中ずっと、腐ったり、安全でなくなったりしない。
【0026】
「水溶性組成物」という用語は、「水分散性組成物」と同じものを意味することが意図されており、「水溶性/水分散性組成物」と称してもよい。当業者が認識できるように、ここに記載される乾燥粉末組成物は、水溶性である成分(例えば、食用酸)および水中に分散性である成分(例えば、カカオ抽出物粒子)を含有する。
【0027】
それゆえ、本発明は、食用酸およびその上1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む、美味しい飲料などの飲料およびその調製のための乾燥飲料ミックスに関する。いくつかの実施の形態において、飲料およびミックスは、スクラロースなどの甘味料および/またはマルトデキストリンなどの媒体を含んでよい。幅広いマルトデキストリン、例えば、トウモロコシ系のDE10を使用してよい。
【0028】
別の実施の形態において、本発明の主題は、スクラロースなどの甘味料、食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物およびマルトデキストリンなどの媒体を含む、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物に関する。この組成物は、果実香味料をさらに含んでもよい。さらに別の実施の形態において、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物は、レシチンおよび/または矯味剤および/または渋味マスキング剤、例えば、キナ酸および/またはペクチンを含まない。
【0029】
ここに用いたように、「非チョコレート風味の組成物」という用語は、その組成物が、当該組成物中に使用される抽出物および化合物がカカオ由来であっても、容易に知覚できるチョコレートまたはココアの風味を有さないことを意味し、すなわち、「非チョコレート風味」という用語は、「非ココア風味」と同じものを意味することが意図されている。それゆえ、「非チョコレート風味の組成物」は、ココア/チョコレート風味を有する、ココア粉を含有する組成物とは異なっている。
【0030】
ある実施の形態において、ここに記載される組成物は、非タンパク質組成物である。「非タンパク質組成物」という用語は、例えば、単離された乳タンパク質または大豆タンパク質、粉乳、および/または大豆粉などのタンパク質を含有しない組成物を意味する。いくつかの他の実施の形態において、本発明の組成物は、タンパク質(例えば、乳漿のタンパク質または加水分解物)および/またはアミノ酸アルギニンを含有してもよい。他の実施の形態において、組成物は、グルタミン酸以外のアミノ酸を少なくとも1種類含有してもよい。
【0031】
ある実施の形態において、組成物は、ここに記載された粒径および分布を有するさらさらした粉末であってよい。
【0032】
本発明の主題の組成物は食用酸を含有する。許容される食用酸としては、以下に限られないが、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸およびそれらの組合せが挙げられる。ある実施の形態において、組成物は、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸の粉末もしくはそれらの組合せ、例えば、クエン酸とリンゴ酸の組合せを含有する(例示の組成物が実施例1に示されている)。当業者が認識できるように、アスコルビン酸(VitC)は、米国の摂取目安量(RDI)の要件にしたがって、例えば、RDIの100%までを提供するために加えられ、潜在的な副作用のために多量で使用すべきではない。典型的に、キナ酸およびシュウ酸は本発明の使用には考えられない。
【0033】
いくつかの実施の形態において、乾燥ミックス組成物中の酸(例えば、クエン酸)の量は、18w/wパーセント(18%w/w)以上、例えば、40w/wパーセント(40%w/w)まで、例えば、30から40w/wパーセント(30から40%w/w)、または18から25w/wパーセント(18から25%w/w)である。当業者は、結果として得られる飲料の風味に応じて、酸の量、特に酸の量の上限を最適化できる。例えば、酸の含有量が多すぎると、飲むのに酸っぱすぎる飲料が得られるであろう。
【0034】
pHを減少させる利点としては、カカオ抽出物の苦味と渋味の減少または釣り合い、自然な赤色を組成物に与えること、組成物中のカカオポリフェノールに安定性を与えることが挙げられる。この開示の目的について、「自然な色」は以下のように定義される。
【0035】
組成物への食用酸の添加は、多数の目的を果たす。その添加は、組成物の湿潤性および分散性を増加させ、水中に分散させたときに、組成物のpHを減少させる。食用酸の存在は、組成物を美味しくするように、組成物の苦味と渋味を減少させたりもする。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の苦味と渋味に関連する、口腔内の至る所の乾燥、すぼまることおよび粗さは、食用酸の存在により大幅に減少する。
【0036】
食用酸の存在下でのカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、水に入れたときに、より美味しそうな自然な赤色から栗色を組成物に与える(栗色は、カカオ抽出物の量を増加させると、赤色よりも見た目に明らかになる)。それゆえ、本発明の組成物は、赤色/栗色の乾燥粉末ミックスであってよい。ここに用いたように、「自然な色」は、その色が、酸性pH下で、すなわち、飲料の酸性成分が存在するために、カカオ抽出物(に由来し)に固有であり、着色料を添加することによって、色を意図的に変えることによって達成されないことを意味する。ここに記載した組成物に着色料を加えてもよいが、そのような着色料(例えば、赤色40号、カーマイン)は、必要ではなく、ここに記載される組成物から排除されることが好ましい。特定の食品着色料は、アレルギーを生じさせるかもしれず、また他の理由で消費者にとって魅力的ではないので、このことは都合よい。それゆえ、食品着色料を含まない、乾燥飲料ミックス組成物を含む組成物が、本発明の範囲に含まれる。ここに用いたように、「食品着色料」という用語は、米国の食品医薬品局により定義されたものであるが、果実香味料は特別に排除する。それゆえ、本発明の組成物は、果実香味料を含有してもよい。
【0037】
本発明の組成物の利点の1つは、増加した湿潤性である。この点に関して、食用酸は、湿潤性を増加させ、液体、例えば、水に入れたときに、組成物の沈降性を改善する。湿潤性および沈降性が改善されると、液体中の組成物の溶解/分散がより急速になる。これらの性質を達成することは、以下に記載するように、カカオ抽出物を含有する組成物にとって難題である。
【0038】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、抽出の性質上、疎水性であろう。したがって、そのような抽出物の湿潤性はかなり乏しい。その結果、湿潤性が許容され、結果として、分散性が許容される組成物を与えるために、レシチンなどの乳化剤、湿潤剤が必要であろうと予測される。当業者に公知のように、レシチンはココア粉に基づく飲料ミックスに関して使用され、この場合、液体に入れたときに、ココア粉の迅速な湿潤および分散に必須であり、レシチンがなければ、ココア粉は、許容できない長期間に亘り(1時間まで)、液体の表面に留まり得る。ある種の粉末は、水に入れられたときに湿った小片(crust)またはだまを形成し、これは転じて、だまの内部が濡れるのを防ぎ、それゆえ、だまが浮く、すなわち、だまが沈まず、したがって、その粉末は分散させるのが難しい。上述したように、湿潤性を増加させることにより、粒子が水に取り囲まれ、これにより、沈降がより急速になり、それゆえ、液体中に粉末が溶解/分散する。疎水性であるカカオ抽出物に関して、そのような抽出物を含有する組成物にはレシチンが存在する必要があると予測される。しかしながら、意外なことに、カカオポリフェノールを含む疎水性カカオ抽出物を凝集させ、分散させるのに、レシチンなどの乳化剤は必要ない(実施例4参照)。それゆえ、例えば、乳化剤(例えば、レシチン)を用いずに、カカオ抽出物、食用酸および媒体(例えば、マルトデキストリン)を凝集させることによって調製される、乳化剤(例えば、レシチン)を含まない組成物が、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
さらに、食用酸とのバランスを取るために、組成物に甘味料が加えられる。スクラロース、AceKまたはそれらの組合せなどの甘味料と食用酸との組合せにより、不満足な後味を与えずに、カカオ関連製品に典型的に関連する苦味と渋味がマスキングされたかまたは減少した美味しい組成物が提供される。
【0040】
本発明の主題の組成物は、水などの液体に入れたときに、約0.2%から約0.75%の滴定酸度値(クエン酸として)を有する。溶液の滴定酸度は、食品科学の分野でよく知られており、クエン酸などの存在する有機酸を、水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基と、酸感受性変色指示薬または所定のpHにより示されるように、中性に近い選択された端点まで反応させることによって、測定される。滴定酸度は、ブドウ中の酒石酸、牛乳中の乳酸、またはレモン汁中のクエン酸などの、関心のある酸の百分率として表される。有機酸の緩衝能力が変動するために、滴定酸度とpHとの間には直接的相関関係はない。しかしながら、飲料中のより高い酸レベルは、多くの場合、低いpH値に関連付けられ、その逆もまたそうである。
【0041】
水およびここに記載された水溶性/水分散性組成物(例えば、乾燥飲料ミックス、さらさらした粉末組成物)を含む飲料である、本発明の組成物は、約5未満、例えば、約4未満、例えば、約2から約5、または約2から約4、または約2から約3、または2.6と3の間のpHを有する。ある実施の形態において、飲料のpHは約2.8であってよい。
【0042】
本発明の組成物は、エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10(すなわち、プロファイル1〜10)を含むカカオ抽出物を含んでよい。ある実施の形態において、カカオ抽出物は、エピカテキンおよび/またはオリゴマー2〜10のいずれか1つおよび/またはそれらの組合せを含む。
【0043】
本発明の主題の組成物は、カカオポリフェノールに関連する健康上の利益を提供するために、一杯分(すなわち、製品の単位当たり)少なくとも約100ミリグラムであって、組成物が美味しいままであるために一杯分約1000mg以下の総フラバノール含有量(モノマーとオリゴマーを含む)を有する。総フラバノール含有量は、例えば、組成物の一杯分少なくとも約200から約1000ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約750ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約525ミリグラム、または一杯分少なくとも約350ミリグラムであってよい。実施例に示されるように、乾燥ミックス組成物の一杯分の量は、6グラムと7グラムの間であってよい。ある実施の形態において、組成物は、少なくとも5mg/gの(−)−エピカテキンおよび/または少なくとも53mg/gの総エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含有してよい。組成物のカカオポリフェノール含有量は、"Method performance adn multi-laboratory assessment of a normal phase high pressure liquid chromatography-fluorescence detection method for the quantitation of flavanols and procyanidins in cocoa and chocolate containing samples," Rebecca J. Robbins, Jadwiga Leonczak, J. Christopher, Julia Li, Cathernie Kwik-Uribe, Ronald L. Prior, and Liwei Gu, Journal of Chromatography A, 1216 (2009) 4831-4840に記載されている方法によって測定される。
【0044】
本発明の主題の組成物に使用されるカカオ抽出物は、この抽出物の粒径を減少させるために粉砕しても差し支えない。粉砕されたカカオ抽出物は、典型的に、粉砕されたカカオ抽出物のグラム当たり、少なくとも約300ミリグラムのカカオポリフェノール(プロファイル1〜10、フラバノールおよびプロシアニジンオリゴマー)、例えば、約300から約700ミリグラム、または少なくとも約400ミリグラム、または約400から約600ミリグラム、または約400から約500ミリグラムのカカオポリフェノールを含有する。本発明の主題の組成物中に存在するカカオ抽出物は、約75マイクロメートル以下、好ましくは約30マイクロメートル以下、より好ましくは約20マイクロメートル以下、最も好ましくは約10マイクロメートル以下の減少した粒径を有するであろう。この減少した粒径により、渋味がさらに減少し、これにより転じて、組成物がより美味しくなる。
【0045】
しかしながら、乾燥粉末飲料組成物のより小さい(微細な)粒径(例えば、カカオ抽出物および他の成分が酸粒子と共に凝集した後の)は、水に入れられると、飲料ミックス組成物の湿潤性に、次いで、沈降性に悪影響を及ぼすかもしれず、それゆえ、本発明の組成物における望ましい粒径(例えば、凝集後の粒径)は、乾燥粉末組成物を水と混合したときに、ここに記載された美味しい飲料となるように、他の要因(例えば、酸含有量)の組合せに関して、実験的に決定した。
【0046】
ある実施の形態において、本発明の組成物は、以下の分散性試験を満たすべきである。ここに用いたように、「水溶性組成物が所定の分散性試験を満たす」という句は、その組成物が、この手法にしたがう以下の要件を満足することを意味する。粉末ミックス製品(6〜7gの間)は、冷水(4℃と10℃の間、38〜50F)の16液量オンス(1/2リットル)のボトルに入れた後、10秒以内で表面にだまになった粉末または粉末片が目に見えないように湿らなければならない。その製品は、ほぼ同時に、ボトルの底に向かって沈降すべきである。湿りが評価された後、次いで、ボトルを20秒間振盪し、10秒間休止し、さらに10秒間振盪し、次いで、底に沈降した目に見える粉末が存在するか否かについて評価される。次いで、飲料を、メッシュの0.420mm(420マイクロメートル)に相当する米国篩シリーズ(US Seive Series)によるメッシュサイズ40を通して注いで、スクリーン上に多数の粒子のだまが見られないべきである。メッシュの記数法は、スクリーンのリニアインチ当たりにいくつの開口が存在するかの尺度である。米国篩シリーズの値は、当業者に公知であり、例えば、http://www.azom.com/details.asp?ArticleID=1417に見つけられる。米国篩シリーズは、当業者に公知のように、ASTM規格によっても定義されている。
【0047】
粒径分布は、乾燥飲料組成物の水による分散性に影響する。粒径に関する本発明の飲料ミックス組成物の例は以下のとおりである:粒径は、本開示および特許請求の範囲に亘りw/wパーセントで表される。841マイクロメートルより大きい(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20上に残る)粒子の量は、約5パーセント(5%)以下、例えば、3パーセント(3%)以下、または例えば、1パーセント(1%)以下である。74マイクロメートル以下の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ200を通って落ちる)粒子の量は、約5または4パーセント(5%または4%)以下、例えば、3パーセント(3%)以下、または例えば、1パーセント(1%)以下である。421と841マイクロメートルの間の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後にメッシュサイズ40上に残る粒子の)粒径について、この粒径は、組成物の酸レベルに応じて、約40パーセント(40%)以下または約20パーセント(20%)以下、もしくは20から40パーセント(20から40%)の範囲の量である。典型的に、251と420マイクロメートルの間の範囲の粒子(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちて、メッシュサイズ60上に残る粒子)の量は、30から50パーセント(30〜50%)の範囲にあってよい。先に例示した粒径のどの組合せを有する組成物も、本発明の追加の実施の形態の範囲に含まれる。
【0048】
組成物のいくつかの例において、上述した粒径は、組成物の酸含有量に応じて調節してもよい。例えば、26パーセント(26%)以上または30パーセント(30%)以上の酸(例えば、クエン酸)を含む組成物について、421と841マイクロメートルの間の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後にメッシュサイズ40上に残る粒子の)粒径は、約40パーセント(40%)以下の量である。18w/wパーセント(18%)から25w/wパーセント(25%)までの酸(例えば、クエン酸)、例えば、20w/wパーセント(20%)から25w/wパーセント(25%)までの酸(例えば、クエン酸)を含む組成物について、421マイクロメートルと841マイクロメートルの間の粒径(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後に、メッシュサイズ40上に残る粒子)は20w/wパーセント(20%)以下である。18%未満の酸を含む組成物の湿潤性、沈降性および分散性はあまり望ましくない。
【0049】
前記組成物は、甘味料、充填剤、流動調節剤、天然の香味料、ビタミン類、ミネラル類、緩衝剤および他の材料などの追加の要素を有してもよい。
【0050】
適切な甘味料(栄養性および非栄養性)としては、食品に一般に使用されるものが挙げられ、以下に限られないが、スクロース(例えば、サトウキビや砂糖大根からの)、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、グルコースシロップまたはその固形物、コーンシロップまたはその固形物、転化糖、加水分解ラクトース、ハチミツ、メープルシュガー、黒砂糖、モラセス、高効能甘味料、糖アルコール(ポリオール)、充填剤、またはそれらの組合せが挙げられる。当該技術分野において、以下のものが高効能甘味料と認識されている:アステルパーム、チクロ、サッカリン、アセスルファム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、スクラロース、アリテーム、ステビア甘味料、グリシルリジン、タウマチン、アセスルファムK、およびその混合物。糖アルコールの例としては、当該技術分野において一般に使用されているものが挙げられ、以下に限られないが、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、およびラクチトールなどが挙げられる。特に好ましい甘味料としては、スクロースおよびスクラロース並びにスクラロースとAceKとの組合せが挙げられる。本発明の目的について、都合よい甘味料は、スクラロースの場合におけるように、甘味を提供し、かつ苦味と渋味をマスキングする(すなわち、苦味/渋味遮断薬として働く)。アスパルテームは、例えば、スクラロースの場合と同じ条件下で比較した場合、カカオ抽出物の存在下で甘味を提供する(著しい後味がなく)能力がないために、本発明のある実施の形態においては使用されない(実施例3参照)。
【0051】
前記組成物は、一般に高効能甘味料と組み合わせて用いられるものなどの充填剤も含有してよい。「充填剤」としては、食品に一般に使用されるものが挙げられ、以下に限られないが、ポリデキストロース、セルロースとその誘導体、マルトデキストリン、およびアラビアゴムが挙げられる。ある実施の形態において、充填剤は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0052】
前記組成物は、マルトデキストリン、アラビアゴム、デンプン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物などの媒体も含有してよい。ある実施の形態において、媒体は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0053】
前記組成物は、以下に限られないが、二酸化ケイ素および酸化マグネシウムを含む、流動調節剤も含有してよい。ある実施の形態において、流動調節剤は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0054】
前記組成物または飲料は、以下に限られないが、天然または人工の果実香味料、バニリン、スパイス類、および天然の搾られた柑橘油またはスパイスオイル、並びにそれらの組合せを含む香味料も含有してよい。実験により、ベリー、柑橘類(例えば、グレープフルーツ)、パイナップルまたはプラムの香味料などの特定の香味料が好ましい。
【0055】
本発明の組成物の例を以下に挙げる。カカオ抽出物、食用酸およびスクラロースを含む水溶性/水分散性組成物(例えば、非チョコレート風味の組成物);そのような組成物において、カカオ抽出物は、カテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10またはその少なくとも1つの化合物を含んでもよく、組成物の単位当たり総カカオポリフェノールの量は、少なくとも53mg/gのカテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10であってよく、(−)−エピカテキンは少なくとも5mg/gであり;食用酸は、クエン酸、リンゴ酸および/または酒石酸から選択されてよく;酸の量は、乾燥組成物の少なくとも18w/w%であってよく、粒径範囲の量は、841マイクロメートル超の粒子が5%以下、74マイクロメートル以下の粒子が4%以下、420マイクロメートルと840マイクロメートルとの間の範囲にある粒子が20%から40%以下である。
【0056】
前記組成物の他の例において、組成物(例えば、乾燥飲料ミックス組成物)は、カカオ抽出物、食用酸および甘味料を含み、食用酸のカカオ抽出物に対する比は0.8以上である。食用酸は、そのような組成物において少なくとも18w/wパーセントの量であってよい。
【0057】
ある他の実施の形態において、水溶性組成物(例えば、非チョコレート風味の組成物)は、カカオ抽出物、食用酸(例えば、クエン酸)、非栄養甘味料(例えば、スクラロース)、媒体(例えば、マルトデキストリン)および果物香味料から実質的になる。この段落に記載された実施の形態の目的について、「から実質的になる」という移行句は、その組成物が、列記された成分以外に、飲料の苦味および渋味を含む美味しさに影響しない他の成分も含んでよいことを意味する。
【0058】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む組成物の投与は、経口投与であることが好ましい。
【0059】
本発明を、以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1−飲料ミックス
本発明の飲料ミックスは、例えば、飲料ミックスの成分を任意の順序で加えることによって調製することができる。
【0061】
飲料ミックスを、上述した各成分についての百分率で10ポンド(約4.54kg)のバッチで最初に製造した。マルトデキストリンDE−10のほとんどをボウルに入れ、クエン酸、アスコルビン酸、30μm未満の平均粒径に微粉処理されたカカオ抽出物、香味料およびクエン酸三カリウムと組み合わせた。次いで、このブレンドをアグロメレータ(agglomerator)内に入れた。高温空気を用いてブレンドを流動化させながら、このブレンドにマルトデキストリンとスクラロースとの溶液を同時に噴霧した。凝塊形成後に、固化防止剤である二酸化ケイ素を加えた。6.6gの量のミックスを500mLの水に加えて、pHが約2.8となった。
【0062】
実施例2−生物学的研究
ヒトの被験者が実施例1に記載されたカカオポリフェノール飲料ミックスを摂取した後、血漿中のエピカテキン代謝産物レベルを測定し、エピカテキンが飲料から吸収されたことが示された。
【0063】
この研究について、健康な男性と女性の被験者[n=10、6人の男性と4人の女性]を募った。これら被験者に、研究の前日と研究の当日に低フラバノール規定食に従い、研究の開始前の最後の12時間は断食するように頼んだ。研究の当日に、被験者は250mlの水を摂取して同じ水和レベルを確保し、1時間後に本発明の製品を摂取した。
【0064】
被験者は、上述した手法を使用して測定された製品のg当たりで53mgのフラバノール[プロファイル1〜10]を含有するカカオポリフェノール飲料を摂取した。製品は、350ml(12オンス)の水中に6.6gの試験材料を溶解させることによって調製した飲料の形態で摂取された。被験者に、2分未満で製品を摂取するように頼んだ。この飲料で投与されるフラバノール[プロファイル1〜10]の総量は少なくとも約350mgである。志願者の平均体重によれば、この量のフラバノールは、体重kg当たり5.1±0.9mgのフラバノールの平均投与量に相当した。
【0065】
血液サンプルを全ての被験者から製品の摂取前と1、2および4時間後に採取した。サンプリング実例について、図1を参照のこと。血漿中のエピカテキン代謝産物レベルの測定:40分間に亘る37℃でのβ−グルクロニダーゼおよびスルファターゼによる処理後に、血漿サンプル中で非メチル化エピカテキン、3’−O−メチルエピカテキンおよび4’−O−メチルエピカテキンを定量した。血漿中のエピカテキン代謝産物の合計を、非メチル化エピカテキン、3’−O−メチルエピカテキンおよび4’−O−メチルエピカテキンの代謝産物のレベルの合計として計算した。
【0066】
図2から5並びに以下の表1および2に示されるように、カカオポリフェノール飲料の摂取前と、カカオポリフェノール飲料を摂取してから1、2および4時間後に採取した血液サンプルにおいて、血漿中のエピカテキン代謝産物が検出され、本発明の飲料の投与の際の吸収を示した。
【0067】
この研究は、酸性基質中のカカオポリフェノールの摂取により、ヒトにおけるエピカテキン代謝産物の血漿レベルが著しく増加することを示した。
【表1】
【表2】
【0068】
実施例3−甘味料に関する美味しさの試験
本発明の美味しい飲料に到達するために、様々な甘味料を試験した。以下の試験対象甘味料を使用して、いくつかの飲料ミックスを実施例1に記載したように調製した:スクラロース、アスパルテーム、タウマチン(Talin(登録商標)、英国、Overseal Natural Ingredients, Ltd.)、精製レビアナ(結晶質レバウディオサイドA、米国、ミネソタ州ウェイサタ所在のCargill, Inc.)、これらは、乾燥粉末ミックスを試験するために同量で加えた(すなわち、40mg/240mlの水)。複数数の熟練の味見人(n=2)による官能試験によって、最も望ましいレベルの甘味(後味の量が最も少なく、酸味、苦味および渋味と調和がとれた)がスクラロースにより得られたと判定された。反対に、アスパルテームおよびタウマチンの添加により、渋味が減少したが、甘味を与え損なった;レビアナは、渋味を減少し損ない、甘味も与えなかった。別の実験において、スクラロースとAceKの組合せ(60:40)は、甘味を与え、苦味と渋味を減少させた。
【0069】
実施例4−乾燥飲料ミックスの湿潤性研究
いくつかの試験飲料の凝集サンプルを調製して、本発明の飲料の最終的な性質(例えば、湿潤時間、分散性、色、味覚など)への、酸、カカオ抽出物、マルトデキストリン、およびその様々な比などの様々な飲料成分の役割を、もしあれば調査した。カカオ抽出物を、例えば、Romanczykへの米国特許第5554645号明細書に記載されたように、水性アセトン抽出物により調製した。成分は、実施例1に記載されたように処理した。湿潤時間は、「ストレス」条件下で、すなわち、200mlの水当たり20gの多量の飲料配合物を含む(500ml中の6.6gの代わりに)「強力飲料」を使用して、測定した。結果が、表3および図6Aと6Bに報告されており、もしくは目視によりまたは試飲により観察し、ここに記載されている。
【0070】
酸の量は着色に影響した。例えば、pHを増加させることによって、赤色から茶色に移るにつれて、飲料はより濃い色合いになった。カカオ抽出物の渋味と苦味を減少させる、美味しい味覚には、少なくとも18%w/wの酸が必要であると判定された。
【0071】
表3に戻ると、酸とレシチンを含まない、21.4%w/wのカカオ抽出物を含有する組成物は、非常に乏しい湿潤性を有し、湿るのに180秒(3分間)が必要であった;反対に、酸を含まないが、レシチンを含む同量のカカオ抽出物を有する組成物では、湿るのに8.9秒しか必要なかった(欄5および6を比較)。カカオ抽出物の乏しい湿潤性(固有の疎水性のため)を考えると、湿潤性が許容される組成物を調製するために、1〜2%のレシチンを添加することが必要であると予測された。意外なことに、クエン酸の存在下では、カカオ抽出物は、容易かつ迅速に、凝集し、良好な湿潤性を有する製品を与えられる(酸を含有するサンプルの全てを欄5と比較する)。しかしながら、酸の量(%w/w)は湿潤時間に影響し、酸の量が多いと(カカオ抽出物は一定の含有量で)、湿潤時間が短くなることを示す傾向が観察された;例えば、欄7、8および9と、欄13および14とを比較する。当業者には認識されるであろうように、カカオ抽出物の量は、その疎水性のために湿潤時間に影響し、したがって、以下にさらに論じるように、カカオ抽出物の量を考慮して、表3のデータを分析した。
【0072】
表3のデータに観察された傾向が、表3のデータをプロットしている図6Aおよぴ6Bに示されている。配合5(酸もレシチンも含まれていなかった)のこの高い値(180秒)のために;むしろ、ゼロパーセントの酸について示されたデータ点は、レシチン含有配合物に関するものである。図6Aを参照すると、酸の量が増加すると、湿潤時間が減少する傾向が観察された。しかしながら、どの1つの特定の酸含有量でも、カカオ抽出物の量が増加すると、湿潤時間が増加する−それゆえ、20%w/wのクエン酸を有する3つの配合物(表3の欄2、8および13の配合物)は、異なる湿潤時間を有した。湿潤時間は、カカオ抽出物の量と共に増加する。さらに図6Aを参照すると、30%w/wのクエン酸を有する配合物(表3の欄10、11および12の配合物)について、同様の傾向が観察された−カカオ抽出物の量が多いほど、湿潤時間が長くなる。湿潤時間と酸のカカオ抽出物に対する比の間の傾向が、図6Bにさらに示されている−この比が大きいほど、湿潤時間が短くなる。酸のカカオ抽出物に対する比が0.8以上では、より短い湿潤時間(例えば、10秒以下)に向かう傾向があった。
【0073】
追加の研究により、リンゴ酸と酒石酸が、クエン酸系粉末のものと同様の性質を提供したことが示された。いくつかの果物香味料は酸の置換または組合せによってよりよく強調することができるので、味覚の変更に関して、このことは有用である。
【表3】
【0074】
実施例5−粒径分布および湿潤時間
異なるレベルのクエン酸を含有する、表3に示されたいくつかの飲料の試作品についての粒径分布および湿潤時間も研究した。この実施例で分析した飲料ミックスサンプルは、実施例4のサンプルと同じバッチに属した。全飲料配合物の湿潤時間が測定された、実施例4および表3に報告された結果とは反対に、ここでは、粒径250>x>105マイクロメートルを有する特定の分画の湿潤時間を測定した。最終的な組成物について、湿潤性および分散性に関する所望の粒子分布を決定するために、このことを行った。飲料ミックスは、本明細書に記載された篩を使用して、サイズに基づいて、細分した。この実験からのデータが表4に示されており、そのデータのいくつかが図7のグラフに示されている。
【0075】
最終的な飲料ミックスにおける粒径分布の重要性が、例えば、表3の欄5、すなわち、180秒の乏しい湿潤時間を有する、酸を含まない飲料配合物が、表4の欄6、すなわち、10.6秒の湿潤時間を有する、酸を含まない類似の組成の250>x>105マイクロメートルの分画と比較することによって、示される。重要なことには、表4の酸を含まない組成物は、凝集しなかった約7.5%w/wのカカオ抽出物粒子を有し、これらの粒子(カカオ抽出物の微小粉砕(micromilling)から生じる小さいサイズのために、「微細」と称される)は、疎水性であり、表3に反映されるように、全体的な最終飲料ミックス組成物の湿潤性および分散性に悪影響を与える。したがって、そのような粒子のw/w百分率は、本明細書に記載されたように、減少させるべきである。425マイクロメートル超のサイズを有する粒子は、そのサイズのために分散させるのが難しく、したがって、その量は、本明細書に記載されたように、最少にすべきである。
【0076】
表4を参照すると(列B〜Gを参照)、250>x>105マイクロメートルの分画の湿潤時間への様々な酸の含有量の影響を比較した場合、ある傾向が観察された−酸の含有量が増加すると、湿潤時間が減少する。この傾向が図7に示されている(この傾向線は、分画250>x>105マイクロメートルについて観察されたデータのみを示していることに留意のこと)。表4の列Hの組成物に関するデータは、図7に示された分析には含まれなかった。何故ならば、その組成物が、サイズが250>x>105マイクロメートルの粒子の量を望ましくないほど少なくしか含有せず(4.5%w/w)、それゆえ、全体の組成物の挙動を示さないであろうからである。
【表4】
【0077】
実施例6−飲料ミックス
実施例1に記載された手法にしたがって、以下の乾燥飲料ミックスを調製した。このミックスは、少なくとも5mg/gの(−)−エピカテキンおよび少なくとも53mg/gの総フラバノールおよびプロシアニジン(プロファイル1〜10)を含有した。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例7−飲料の美味しさ試験
いくつかの果物香味料を有する飲料ミックスの美味しさを試験するために、以下の試験を行った。
【0081】
70人の被験者に、飲料(500mlの水中に6.6gの乾燥飲料ミックスを溶解させることによって調製した)を飲み、7等嗜好尺度を使用して(Hedonic Test in Manual on Sensory Testing Methods, ASTM committee E18, page 32を参照)、全体の好みについて飲料の美味しさを評価するように頼んだ。数字の7が「とても好き」を表し、数字の1が「とても嫌い」を表した。5以上のスコアの結果を「美味しい」と考えた。当業者が認識できるように、飲料の嫌いのいくつかは、ある飲料風味(例えば、柑橘類対プラム)についての特定の嫌いの結果であって、苦味および/または渋味によるものではないであろう。結果が図8に示されている。
【0082】
別の実験において、77人の被験者に飲料を評価してもらった。その結果が、以下の表5に示されている。
【表5】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物、および食用酸を含む美味しい飲料および組成物に関する。本発明の主題はさらに、その飲料および組成物を配合するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール化合物は、ある種の植物性素材に由来する広い部類の生物活性物質である。植物ポリフェノールは様々な健康上の利益に関連付けられてきた。プロシアニジンを含む特定のポリフェノール化合物はカカオ中に自然に生じる。抽出物、カカオ固形物およびカカオリカーを含むカカオ製品は、適切に加工されれば、カカオ中に見つかる本来のフラバノールおよびプロシアニジンの多くを保持することができる。これらのカカオポリフェノールは、摂取されると、ヒトに著しい健康上の利益を提供できる。例えば、カカオポリフェノールは、動脈の血流依存性血管拡張反応に有益な効果を有し、一酸化窒素/一酸化窒素合成酵素(NO/NOS)活性を向上させる;そのような心血管健康効果が、例えば、1997年10月9日に発行された特許文献1に報告されている。それゆえ、カカオポリフェノール含有量の多いカカオ製品を摂取すると、著しい健康上の利益が得られるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/36497号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、カカオポリフェノールを提供する組成物が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外なことに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の存在下において、ここに記載された条件下で、食用酸には、カカオ抽出物を含む組成物の美味しさを改善すること、カカオ抽出物を含む組成物に美味しそうな色を与えること、非チョコレート風味の組成物にカカオ抽出物およびカカオポリフェノールの健康上の利益を提供すること、およびカカオ抽出物中に含まれるカカオポリフェノールの分散性を増加させることを含むいくつかの利点があることが発見された。
【0006】
1つの実施の形態において、本発明の主題は、食用酸およびその上1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む、美味しい飲料などの飲料およびその調製のための乾燥飲料ミックスに関し、いくつかの実施の形態において、その飲料およびミックスは、甘味料、例えば、スクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せなどの非栄養甘味料を含んでもよい。乾燥飲料ミックスは、赤色から栗色のさらさらした乾燥粉末であってよく、この粉末はここに記載された特定のサイズの粒子を含んでよい。
【0007】
別の実施の形態において、本発明の主題は、甘味料、例えば、非栄養甘味料(スクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せ)、クエン酸、酒石酸および/またはリンゴ酸などの食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物および媒体(carrier)を含む、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物に関する。この組成物は、果実香味料をさらに含んでもよい。この組成物は、ここに記載された特定のサイズの粒子を有するカカオ抽出物を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ここに記載された生物学的研究の前日と当日のサンプリング実例を示す図
【図2】図1による生物学的研究における本発明の主題の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたエピカテキン代謝産物の平均レベルを示すグラフ
【図3】10人の被験者各々に関する本発明の主題の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたエピカテキン代謝産物の平均レベルを示すグラフ
【図4A】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたメチル化されていないエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図4B】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出された3’−O−メチルエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図4C】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出された4’−O−メチルエピカテキン代謝産物のレベルを示すグラフ
【図5】本発明の組成物の摂取から0、1、2および4時間後の血漿中に検出されたメチル化されていないエピカテキン代謝産物、3’−O−メチルエピカテキン代謝産物および4’−O−メチルエピカテキン代謝産物の相対レベルを示すグラフ
【図6A】クエン酸含有量の関数としての乾燥飲料ミックス組成物の湿潤時間の傾向を示すグラフ
【図6B】酸対カカオ抽出物の比率の関数としての乾燥飲料ミックス組成物の湿潤時間の傾向を示すグラフ
【図7】いくつかの乾燥飲料ミックス組成物の粒径分布およびこれらの組成物の250>x>105マイクロメートルの粒径分画に関する湿潤時間を示すグラフ。CFはカカオ抽出物を称する
【図8】嗜好評定尺度を使用した70人の被験者の試験サンプルにおける美味しさ試験の結果を示すグラフ(凡例:左の棒は男性の被験者を表し、右の棒は女性の被験者を表す)
【発明を実施するための形態】
【0009】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、天然のままでは苦く、渋い。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物は、典型的に、ココア飲料などのチョコレート風味の組成物に限られてきた。さらに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する非チョコレート風味の組成物は、その抽出物の強い苦味と渋味のために、それほど美味しくはなかった。したがって、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する、美味しい非チョコレート風味の組成物を提供することが都合よいであろう。これにより、カカオポリフェノールの有用な用途が広がるであろう。
【0010】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は典型的に、水に入れると、紫色から茶色になる。色合いは自然であるが、カカオ抽出物を含有する組成物を摂取する人々にとって美味しそうには見えないであろう。したがって、水に入れたときに美味しそうに見える、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物を提供することが都合よいであろう。
【0011】
その抽出プロセスを考えると、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、疎水性であろうから、濡らすのが難しく、その結果、水に入れたときに、分散させるのが難しい材料である。したがって、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物であって、水に入れたときに、より容易に分散される組成物を提供することが都合よいであろう。
【0012】
さらに、ココア製品中のカカオポリフェノールを摂取すると、典型的に、しばしば消費後約2時間で、結果として生じる代謝産物の血漿濃度がピークになることが試験により示された(Schroeter et al., "(-)-Epicatechin mediates beneficial effects of the flavanol-rich cocoa on vascular functions in humans", PNAS, Vol.103, No.4, January 2006, pp.1024-1029を参照)。ここに記載された飲料条件下で少なくとも同じ程度の吸収を達成することが都合よいであろう。
【0013】
「カカオ抽出物」という用語は、カカオ豆、カカオニブ、もしくはカカオ豆かカカオニブから調製された脱脂されていない、ある程度脱脂されたまたは完全に脱脂されたカカオ固形物(例えば、ココアケーキおよびココア粉)を溶媒抽出することによって調製できるカカオポリフェノール(カテキン、エピカテキンおよび/またはプロシアニジン)を含有する溶媒由来の抽出物を称する。例えば、それに関連する開示(カカオ抽出物および抽出プロセスに関する)がここに引用される、Romanczykの米国特許第5554645号、2000年1月18日に発行された米国特許第6015913号(Kealey等)、および2001年11月6日に発行された米国特許第6312753号(Kealey等)の各明細書を参照のこと。当業者には理解されるように、抽出に使用される溶媒(例えば、水性アセトン)に応じて、カカオ抽出物は疎水性であってもよい。さらに、当業者に公知のように、そのカカオ抽出物(粉末形態であり得る)は、ココア飲料およびチョコレートの製造のための従来のカカオ豆加工中に調製されるココア粉とは異なる材料である。従来のカカオ加工の説明については、例えば、Industrial Chocolate Manufacture and Use, 3rd, ed., Ed S.T.Becket, Blackwell Publishing 1999を参照のこと。その上、抽出プロセスに酸が使用される場合、結果として得られるカカオ抽出物はまだ、ここに記載されるように食用酸とまだ組み合わされる、すなわち、そのカカオ抽出物中に残留するどのような酸も、本発明の組成物の食用酸成分の一部とは見なされないことが意図されている。
【0014】
「カカオフラバノール」という用語は、フラバン−3−オールモノマーのカテキンおよびエピカテキンを称する。これらのモノマーは、(+)−カテキンと(−)−エピカテキンおよびそれらのそれぞれのエピマー(例えば、(+)−エピカテキンと(−)−カテキン)並びにその代謝産物(例えば、代謝産物の説明に関して実施例2を参照)を含むそれらの誘導体を含む。当業者が認識できるように、カカオは、ガレート型および/またはガロイル化フラバノールを含まず、それゆえ、「カカオフラバノール」という用語は、没食子酸カテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキンなどを含まない。
【0015】
「カカオプロシアニジン」という用語は、カテキンおよび/またはエピカテキンの天然に生じるまたは合成由来のオリゴマーを称する。
【0016】
「カカオポリフェノール」へのどのような言及も、カカオフラバノールおよび/またはカカオプロシアニジンを含むものと理解すべきである。
【0017】
本発明の組成物は、典型的に、お茶、ワイン、ブドウの種または松樹皮由来のポリフェノール化合物および/または抽出物を含まない。
【0018】
また、式「A」を有するフラバノールおよびnが2から18までおよびそれ以上の整数である式「An」を有するプロシアニジンの少なくとも一方を含む組成物も本発明の範囲に含まれる。「A」は、式:
【化1】
【0019】
並びにその塩、誘導体、および酸化生成物、
を有し、式中、
Rは、3−(α)−OH、3−(β)−OH、3−(α)−O−サッカライド、3−(β)−O−サッカライド、3−(α)−O−C(O)−R1、または3−(β)−O−C(O)−R1であり;
隣接するモノマー間の結合が、4位と6位の間または4位と8位の間で起こり;
4位のモノマーへの結合がαまたはβ立体化学を有し;
X、YおよびZが、少なくとも1つの末端モノマーについて、隣接するモノマーのそこへの結合が4位にあり、必要に応じて、Y=Z=水素であるという条件で、A、水素、およびサッカライド部分からなる群より選択され;
サッカライド部分が、フェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい単糖または二糖部分であり;
R1は、少なくとも1つのヒドロキシ基により必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール部分であってよい。サッカライド部分が、グルコース、キシロース、ラムノース、およびアラビノースからなる群に由来することが都合よい。サッカライド部分並びにR、X、Y、およびZのいずれまたは全ては、任意の位置で、エステル結合を通じてフェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい。フェノール部分は、コーヒー酸、ケイ皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸、およびシナピン酸からなる群より選択される。
【0020】
ある実施の形態において、前記組成物は、Rが3−(α)−OHおよび/または3−(β)−OHである上述した化合物の内の少なくとも1つを含む。
【0021】
「組成物」という用語は、以下に限られないが、栄養補給食品、飲料および飲料ミックスを含む。
【0022】
「媒体」という用語は、以下に限られないが、粉末、液体、ゲル、可溶化剤、または結合剤を含む、非毒性であり、組成物の他の成分と有害な様式で相互作用しない当該技術分野で公知のどのような材料も含む。好ましい媒体としては、以下に限られないが、マルトデキストリン、アラビアゴム、デンプン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの混合物が挙げられる。ある実施の形態において、媒体は、マルトデキストリンであり、および/または使用される媒体は、味および/または渋味が中性である、すなわち、結果として得られる飲料の渋味を含む美味しさへの影響がない。
【0023】
「渋い」という用語は、口腔において乾燥、すぼまること(puckering)および/または粗さとして知覚される触感を称する。渋味の知覚は、始まりはゆっくりとしており、長い持続性により特徴付けられる;その知覚は、瞬時ではなく、展開に時間を要するであろう。多くの化合物が渋い感覚を引き出すが、渋味は、タンパク質を沈殿させる能力と化学的に定義される。当業者には、渋味をどのように評価および/または測定するかが分かるであろう。例えば、苦味、渋味などの特徴を評価するための官能試験方法が、当該技術分野において公知であり、例えば、国際規格(ISO)、および米国材料試験協会(ASTM)などの公認団体の推奨およびガイドラインのように実施される。Hanna Peleg et al., Bitterness and astringency of flavan-3-ol monomers, dimers and trimers, Journal of the Science of Food and Agriculture 79:1123-1128 (1999)も参照のこと。
【0024】
ここに用いたように、「美味しい」という用語は、飲料などの組成物が、飲食した際に、味覚と触感の両方に関して、心地よいまたは好ましい味を有することを意味する。例えば、「美味しい」は、苦味と渋味の要素が組成物の残りのものと調和している(すなわち、甘味と酸味と調和している)ことを意味する(苦味、渋味および後味は、当業者が認識できるように、カカオ抽出物に関連する性質である);「美味しい組成物」は、カカオ抽出物、またはカカオ香味料の存在が、その中に容易に知覚できないことも意味する。食品組成物の美味しさを評価するために、食品化学の技術分野において、嗜好尺度が日常的に使用されており、実施例7(その中の試験結果および引用を参照のこと)に示されるようにここに使用してもよい。最も広く使用されてきた嗜好尺度は、例えば、「非常に嫌い」から「非常に好き」までに及ぶ、食品に関する嗜好をヒトが評定する9等尺度であり、5の中点は好きでも嫌いでもない。それゆえ、本発明の組成物は、ヒトが組成物を少なくとも5およびそれ以上、例えば、6以上と評価した場合に、「美味しい」。実施例7を参照すると、7等嗜好尺度を使用してもよい。
【0025】
「常温で長期保存可能な(shelf-stable)」という用語は、周囲温度および周囲湿度の条件下で貯蔵される製品を称し、その製品は、包装の完全な状態が、貯蔵中、輸送中、小売店での陳列中、および家庭にあるときに維持されていれば、製造業者の指定した賞味期限中ずっと、腐ったり、安全でなくなったりしない。
【0026】
「水溶性組成物」という用語は、「水分散性組成物」と同じものを意味することが意図されており、「水溶性/水分散性組成物」と称してもよい。当業者が認識できるように、ここに記載される乾燥粉末組成物は、水溶性である成分(例えば、食用酸)および水中に分散性である成分(例えば、カカオ抽出物粒子)を含有する。
【0027】
それゆえ、本発明は、食用酸およびその上1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む、美味しい飲料などの飲料およびその調製のための乾燥飲料ミックスに関する。いくつかの実施の形態において、飲料およびミックスは、スクラロースなどの甘味料および/またはマルトデキストリンなどの媒体を含んでよい。幅広いマルトデキストリン、例えば、トウモロコシ系のDE10を使用してよい。
【0028】
別の実施の形態において、本発明の主題は、スクラロースなどの甘味料、食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物およびマルトデキストリンなどの媒体を含む、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物に関する。この組成物は、果実香味料をさらに含んでもよい。さらに別の実施の形態において、非チョコレート風味の水溶性/水分散性組成物は、レシチンおよび/または矯味剤および/または渋味マスキング剤、例えば、キナ酸および/またはペクチンを含まない。
【0029】
ここに用いたように、「非チョコレート風味の組成物」という用語は、その組成物が、当該組成物中に使用される抽出物および化合物がカカオ由来であっても、容易に知覚できるチョコレートまたはココアの風味を有さないことを意味し、すなわち、「非チョコレート風味」という用語は、「非ココア風味」と同じものを意味することが意図されている。それゆえ、「非チョコレート風味の組成物」は、ココア/チョコレート風味を有する、ココア粉を含有する組成物とは異なっている。
【0030】
ある実施の形態において、ここに記載される組成物は、非タンパク質組成物である。「非タンパク質組成物」という用語は、例えば、単離された乳タンパク質または大豆タンパク質、粉乳、および/または大豆粉などのタンパク質を含有しない組成物を意味する。いくつかの他の実施の形態において、本発明の組成物は、タンパク質(例えば、乳漿のタンパク質または加水分解物)および/またはアミノ酸アルギニンを含有してもよい。他の実施の形態において、組成物は、グルタミン酸以外のアミノ酸を少なくとも1種類含有してもよい。
【0031】
ある実施の形態において、組成物は、ここに記載された粒径および分布を有するさらさらした粉末であってよい。
【0032】
本発明の主題の組成物は食用酸を含有する。許容される食用酸としては、以下に限られないが、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸およびそれらの組合せが挙げられる。ある実施の形態において、組成物は、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸の粉末もしくはそれらの組合せ、例えば、クエン酸とリンゴ酸の組合せを含有する(例示の組成物が実施例1に示されている)。当業者が認識できるように、アスコルビン酸(VitC)は、米国の摂取目安量(RDI)の要件にしたがって、例えば、RDIの100%までを提供するために加えられ、潜在的な副作用のために多量で使用すべきではない。典型的に、キナ酸およびシュウ酸は本発明の使用には考えられない。
【0033】
いくつかの実施の形態において、乾燥ミックス組成物中の酸(例えば、クエン酸)の量は、18w/wパーセント(18%w/w)以上、例えば、40w/wパーセント(40%w/w)まで、例えば、30から40w/wパーセント(30から40%w/w)、または18から25w/wパーセント(18から25%w/w)である。当業者は、結果として得られる飲料の風味に応じて、酸の量、特に酸の量の上限を最適化できる。例えば、酸の含有量が多すぎると、飲むのに酸っぱすぎる飲料が得られるであろう。
【0034】
pHを減少させる利点としては、カカオ抽出物の苦味と渋味の減少または釣り合い、自然な赤色を組成物に与えること、組成物中のカカオポリフェノールに安定性を与えることが挙げられる。この開示の目的について、「自然な色」は以下のように定義される。
【0035】
組成物への食用酸の添加は、多数の目的を果たす。その添加は、組成物の湿潤性および分散性を増加させ、水中に分散させたときに、組成物のpHを減少させる。食用酸の存在は、組成物を美味しくするように、組成物の苦味と渋味を減少させたりもする。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の苦味と渋味に関連する、口腔内の至る所の乾燥、すぼまることおよび粗さは、食用酸の存在により大幅に減少する。
【0036】
食用酸の存在下でのカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、水に入れたときに、より美味しそうな自然な赤色から栗色を組成物に与える(栗色は、カカオ抽出物の量を増加させると、赤色よりも見た目に明らかになる)。それゆえ、本発明の組成物は、赤色/栗色の乾燥粉末ミックスであってよい。ここに用いたように、「自然な色」は、その色が、酸性pH下で、すなわち、飲料の酸性成分が存在するために、カカオ抽出物(に由来し)に固有であり、着色料を添加することによって、色を意図的に変えることによって達成されないことを意味する。ここに記載した組成物に着色料を加えてもよいが、そのような着色料(例えば、赤色40号、カーマイン)は、必要ではなく、ここに記載される組成物から排除されることが好ましい。特定の食品着色料は、アレルギーを生じさせるかもしれず、また他の理由で消費者にとって魅力的ではないので、このことは都合よい。それゆえ、食品着色料を含まない、乾燥飲料ミックス組成物を含む組成物が、本発明の範囲に含まれる。ここに用いたように、「食品着色料」という用語は、米国の食品医薬品局により定義されたものであるが、果実香味料は特別に排除する。それゆえ、本発明の組成物は、果実香味料を含有してもよい。
【0037】
本発明の組成物の利点の1つは、増加した湿潤性である。この点に関して、食用酸は、湿潤性を増加させ、液体、例えば、水に入れたときに、組成物の沈降性を改善する。湿潤性および沈降性が改善されると、液体中の組成物の溶解/分散がより急速になる。これらの性質を達成することは、以下に記載するように、カカオ抽出物を含有する組成物にとって難題である。
【0038】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、抽出の性質上、疎水性であろう。したがって、そのような抽出物の湿潤性はかなり乏しい。その結果、湿潤性が許容され、結果として、分散性が許容される組成物を与えるために、レシチンなどの乳化剤、湿潤剤が必要であろうと予測される。当業者に公知のように、レシチンはココア粉に基づく飲料ミックスに関して使用され、この場合、液体に入れたときに、ココア粉の迅速な湿潤および分散に必須であり、レシチンがなければ、ココア粉は、許容できない長期間に亘り(1時間まで)、液体の表面に留まり得る。ある種の粉末は、水に入れられたときに湿った小片(crust)またはだまを形成し、これは転じて、だまの内部が濡れるのを防ぎ、それゆえ、だまが浮く、すなわち、だまが沈まず、したがって、その粉末は分散させるのが難しい。上述したように、湿潤性を増加させることにより、粒子が水に取り囲まれ、これにより、沈降がより急速になり、それゆえ、液体中に粉末が溶解/分散する。疎水性であるカカオ抽出物に関して、そのような抽出物を含有する組成物にはレシチンが存在する必要があると予測される。しかしながら、意外なことに、カカオポリフェノールを含む疎水性カカオ抽出物を凝集させ、分散させるのに、レシチンなどの乳化剤は必要ない(実施例4参照)。それゆえ、例えば、乳化剤(例えば、レシチン)を用いずに、カカオ抽出物、食用酸および媒体(例えば、マルトデキストリン)を凝集させることによって調製される、乳化剤(例えば、レシチン)を含まない組成物が、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
さらに、食用酸とのバランスを取るために、組成物に甘味料が加えられる。スクラロース、AceKまたはそれらの組合せなどの甘味料と食用酸との組合せにより、不満足な後味を与えずに、カカオ関連製品に典型的に関連する苦味と渋味がマスキングされたかまたは減少した美味しい組成物が提供される。
【0040】
本発明の主題の組成物は、水などの液体に入れたときに、約0.2%から約0.75%の滴定酸度値(クエン酸として)を有する。溶液の滴定酸度は、食品科学の分野でよく知られており、クエン酸などの存在する有機酸を、水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基と、酸感受性変色指示薬または所定のpHにより示されるように、中性に近い選択された端点まで反応させることによって、測定される。滴定酸度は、ブドウ中の酒石酸、牛乳中の乳酸、またはレモン汁中のクエン酸などの、関心のある酸の百分率として表される。有機酸の緩衝能力が変動するために、滴定酸度とpHとの間には直接的相関関係はない。しかしながら、飲料中のより高い酸レベルは、多くの場合、低いpH値に関連付けられ、その逆もまたそうである。
【0041】
水およびここに記載された水溶性/水分散性組成物(例えば、乾燥飲料ミックス、さらさらした粉末組成物)を含む飲料である、本発明の組成物は、約5未満、例えば、約4未満、例えば、約2から約5、または約2から約4、または約2から約3、または2.6と3の間のpHを有する。ある実施の形態において、飲料のpHは約2.8であってよい。
【0042】
本発明の組成物は、エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10(すなわち、プロファイル1〜10)を含むカカオ抽出物を含んでよい。ある実施の形態において、カカオ抽出物は、エピカテキンおよび/またはオリゴマー2〜10のいずれか1つおよび/またはそれらの組合せを含む。
【0043】
本発明の主題の組成物は、カカオポリフェノールに関連する健康上の利益を提供するために、一杯分(すなわち、製品の単位当たり)少なくとも約100ミリグラムであって、組成物が美味しいままであるために一杯分約1000mg以下の総フラバノール含有量(モノマーとオリゴマーを含む)を有する。総フラバノール含有量は、例えば、組成物の一杯分少なくとも約200から約1000ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約750ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約525ミリグラム、または一杯分少なくとも約350ミリグラムであってよい。実施例に示されるように、乾燥ミックス組成物の一杯分の量は、6グラムと7グラムの間であってよい。ある実施の形態において、組成物は、少なくとも5mg/gの(−)−エピカテキンおよび/または少なくとも53mg/gの総エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含有してよい。組成物のカカオポリフェノール含有量は、"Method performance adn multi-laboratory assessment of a normal phase high pressure liquid chromatography-fluorescence detection method for the quantitation of flavanols and procyanidins in cocoa and chocolate containing samples," Rebecca J. Robbins, Jadwiga Leonczak, J. Christopher, Julia Li, Cathernie Kwik-Uribe, Ronald L. Prior, and Liwei Gu, Journal of Chromatography A, 1216 (2009) 4831-4840に記載されている方法によって測定される。
【0044】
本発明の主題の組成物に使用されるカカオ抽出物は、この抽出物の粒径を減少させるために粉砕しても差し支えない。粉砕されたカカオ抽出物は、典型的に、粉砕されたカカオ抽出物のグラム当たり、少なくとも約300ミリグラムのカカオポリフェノール(プロファイル1〜10、フラバノールおよびプロシアニジンオリゴマー)、例えば、約300から約700ミリグラム、または少なくとも約400ミリグラム、または約400から約600ミリグラム、または約400から約500ミリグラムのカカオポリフェノールを含有する。本発明の主題の組成物中に存在するカカオ抽出物は、約75マイクロメートル以下、好ましくは約30マイクロメートル以下、より好ましくは約20マイクロメートル以下、最も好ましくは約10マイクロメートル以下の減少した粒径を有するであろう。この減少した粒径により、渋味がさらに減少し、これにより転じて、組成物がより美味しくなる。
【0045】
しかしながら、乾燥粉末飲料組成物のより小さい(微細な)粒径(例えば、カカオ抽出物および他の成分が酸粒子と共に凝集した後の)は、水に入れられると、飲料ミックス組成物の湿潤性に、次いで、沈降性に悪影響を及ぼすかもしれず、それゆえ、本発明の組成物における望ましい粒径(例えば、凝集後の粒径)は、乾燥粉末組成物を水と混合したときに、ここに記載された美味しい飲料となるように、他の要因(例えば、酸含有量)の組合せに関して、実験的に決定した。
【0046】
ある実施の形態において、本発明の組成物は、以下の分散性試験を満たすべきである。ここに用いたように、「水溶性組成物が所定の分散性試験を満たす」という句は、その組成物が、この手法にしたがう以下の要件を満足することを意味する。粉末ミックス製品(6〜7gの間)は、冷水(4℃と10℃の間、38〜50F)の16液量オンス(1/2リットル)のボトルに入れた後、10秒以内で表面にだまになった粉末または粉末片が目に見えないように湿らなければならない。その製品は、ほぼ同時に、ボトルの底に向かって沈降すべきである。湿りが評価された後、次いで、ボトルを20秒間振盪し、10秒間休止し、さらに10秒間振盪し、次いで、底に沈降した目に見える粉末が存在するか否かについて評価される。次いで、飲料を、メッシュの0.420mm(420マイクロメートル)に相当する米国篩シリーズ(US Seive Series)によるメッシュサイズ40を通して注いで、スクリーン上に多数の粒子のだまが見られないべきである。メッシュの記数法は、スクリーンのリニアインチ当たりにいくつの開口が存在するかの尺度である。米国篩シリーズの値は、当業者に公知であり、例えば、http://www.azom.com/details.asp?ArticleID=1417に見つけられる。米国篩シリーズは、当業者に公知のように、ASTM規格によっても定義されている。
【0047】
粒径分布は、乾燥飲料組成物の水による分散性に影響する。粒径に関する本発明の飲料ミックス組成物の例は以下のとおりである:粒径は、本開示および特許請求の範囲に亘りw/wパーセントで表される。841マイクロメートルより大きい(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20上に残る)粒子の量は、約5パーセント(5%)以下、例えば、3パーセント(3%)以下、または例えば、1パーセント(1%)以下である。74マイクロメートル以下の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ200を通って落ちる)粒子の量は、約5または4パーセント(5%または4%)以下、例えば、3パーセント(3%)以下、または例えば、1パーセント(1%)以下である。421と841マイクロメートルの間の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後にメッシュサイズ40上に残る粒子の)粒径について、この粒径は、組成物の酸レベルに応じて、約40パーセント(40%)以下または約20パーセント(20%)以下、もしくは20から40パーセント(20から40%)の範囲の量である。典型的に、251と420マイクロメートルの間の範囲の粒子(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちて、メッシュサイズ60上に残る粒子)の量は、30から50パーセント(30〜50%)の範囲にあってよい。先に例示した粒径のどの組合せを有する組成物も、本発明の追加の実施の形態の範囲に含まれる。
【0048】
組成物のいくつかの例において、上述した粒径は、組成物の酸含有量に応じて調節してもよい。例えば、26パーセント(26%)以上または30パーセント(30%)以上の酸(例えば、クエン酸)を含む組成物について、421と841マイクロメートルの間の(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後にメッシュサイズ40上に残る粒子の)粒径は、約40パーセント(40%)以下の量である。18w/wパーセント(18%)から25w/wパーセント(25%)までの酸(例えば、クエン酸)、例えば、20w/wパーセント(20%)から25w/wパーセント(25%)までの酸(例えば、クエン酸)を含む組成物について、421マイクロメートルと841マイクロメートルの間の粒径(すなわち、米国篩シリーズのメッシュサイズ20を通って落ちた後に、メッシュサイズ40上に残る粒子)は20w/wパーセント(20%)以下である。18%未満の酸を含む組成物の湿潤性、沈降性および分散性はあまり望ましくない。
【0049】
前記組成物は、甘味料、充填剤、流動調節剤、天然の香味料、ビタミン類、ミネラル類、緩衝剤および他の材料などの追加の要素を有してもよい。
【0050】
適切な甘味料(栄養性および非栄養性)としては、食品に一般に使用されるものが挙げられ、以下に限られないが、スクロース(例えば、サトウキビや砂糖大根からの)、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、グルコースシロップまたはその固形物、コーンシロップまたはその固形物、転化糖、加水分解ラクトース、ハチミツ、メープルシュガー、黒砂糖、モラセス、高効能甘味料、糖アルコール(ポリオール)、充填剤、またはそれらの組合せが挙げられる。当該技術分野において、以下のものが高効能甘味料と認識されている:アステルパーム、チクロ、サッカリン、アセスルファム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、スクラロース、アリテーム、ステビア甘味料、グリシルリジン、タウマチン、アセスルファムK、およびその混合物。糖アルコールの例としては、当該技術分野において一般に使用されているものが挙げられ、以下に限られないが、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、およびラクチトールなどが挙げられる。特に好ましい甘味料としては、スクロースおよびスクラロース並びにスクラロースとAceKとの組合せが挙げられる。本発明の目的について、都合よい甘味料は、スクラロースの場合におけるように、甘味を提供し、かつ苦味と渋味をマスキングする(すなわち、苦味/渋味遮断薬として働く)。アスパルテームは、例えば、スクラロースの場合と同じ条件下で比較した場合、カカオ抽出物の存在下で甘味を提供する(著しい後味がなく)能力がないために、本発明のある実施の形態においては使用されない(実施例3参照)。
【0051】
前記組成物は、一般に高効能甘味料と組み合わせて用いられるものなどの充填剤も含有してよい。「充填剤」としては、食品に一般に使用されるものが挙げられ、以下に限られないが、ポリデキストロース、セルロースとその誘導体、マルトデキストリン、およびアラビアゴムが挙げられる。ある実施の形態において、充填剤は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0052】
前記組成物は、マルトデキストリン、アラビアゴム、デンプン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物などの媒体も含有してよい。ある実施の形態において、媒体は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0053】
前記組成物は、以下に限られないが、二酸化ケイ素および酸化マグネシウムを含む、流動調節剤も含有してよい。ある実施の形態において、流動調節剤は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響を与えない。
【0054】
前記組成物または飲料は、以下に限られないが、天然または人工の果実香味料、バニリン、スパイス類、および天然の搾られた柑橘油またはスパイスオイル、並びにそれらの組合せを含む香味料も含有してよい。実験により、ベリー、柑橘類(例えば、グレープフルーツ)、パイナップルまたはプラムの香味料などの特定の香味料が好ましい。
【0055】
本発明の組成物の例を以下に挙げる。カカオ抽出物、食用酸およびスクラロースを含む水溶性/水分散性組成物(例えば、非チョコレート風味の組成物);そのような組成物において、カカオ抽出物は、カテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10またはその少なくとも1つの化合物を含んでもよく、組成物の単位当たり総カカオポリフェノールの量は、少なくとも53mg/gのカテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10であってよく、(−)−エピカテキンは少なくとも5mg/gであり;食用酸は、クエン酸、リンゴ酸および/または酒石酸から選択されてよく;酸の量は、乾燥組成物の少なくとも18w/w%であってよく、粒径範囲の量は、841マイクロメートル超の粒子が5%以下、74マイクロメートル以下の粒子が4%以下、420マイクロメートルと840マイクロメートルとの間の範囲にある粒子が20%から40%以下である。
【0056】
前記組成物の他の例において、組成物(例えば、乾燥飲料ミックス組成物)は、カカオ抽出物、食用酸および甘味料を含み、食用酸のカカオ抽出物に対する比は0.8以上である。食用酸は、そのような組成物において少なくとも18w/wパーセントの量であってよい。
【0057】
ある他の実施の形態において、水溶性組成物(例えば、非チョコレート風味の組成物)は、カカオ抽出物、食用酸(例えば、クエン酸)、非栄養甘味料(例えば、スクラロース)、媒体(例えば、マルトデキストリン)および果物香味料から実質的になる。この段落に記載された実施の形態の目的について、「から実質的になる」という移行句は、その組成物が、列記された成分以外に、飲料の苦味および渋味を含む美味しさに影響しない他の成分も含んでよいことを意味する。
【0058】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む組成物の投与は、経口投与であることが好ましい。
【0059】
本発明を、以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1−飲料ミックス
本発明の飲料ミックスは、例えば、飲料ミックスの成分を任意の順序で加えることによって調製することができる。
【0061】
飲料ミックスを、上述した各成分についての百分率で10ポンド(約4.54kg)のバッチで最初に製造した。マルトデキストリンDE−10のほとんどをボウルに入れ、クエン酸、アスコルビン酸、30μm未満の平均粒径に微粉処理されたカカオ抽出物、香味料およびクエン酸三カリウムと組み合わせた。次いで、このブレンドをアグロメレータ(agglomerator)内に入れた。高温空気を用いてブレンドを流動化させながら、このブレンドにマルトデキストリンとスクラロースとの溶液を同時に噴霧した。凝塊形成後に、固化防止剤である二酸化ケイ素を加えた。6.6gの量のミックスを500mLの水に加えて、pHが約2.8となった。
【0062】
実施例2−生物学的研究
ヒトの被験者が実施例1に記載されたカカオポリフェノール飲料ミックスを摂取した後、血漿中のエピカテキン代謝産物レベルを測定し、エピカテキンが飲料から吸収されたことが示された。
【0063】
この研究について、健康な男性と女性の被験者[n=10、6人の男性と4人の女性]を募った。これら被験者に、研究の前日と研究の当日に低フラバノール規定食に従い、研究の開始前の最後の12時間は断食するように頼んだ。研究の当日に、被験者は250mlの水を摂取して同じ水和レベルを確保し、1時間後に本発明の製品を摂取した。
【0064】
被験者は、上述した手法を使用して測定された製品のg当たりで53mgのフラバノール[プロファイル1〜10]を含有するカカオポリフェノール飲料を摂取した。製品は、350ml(12オンス)の水中に6.6gの試験材料を溶解させることによって調製した飲料の形態で摂取された。被験者に、2分未満で製品を摂取するように頼んだ。この飲料で投与されるフラバノール[プロファイル1〜10]の総量は少なくとも約350mgである。志願者の平均体重によれば、この量のフラバノールは、体重kg当たり5.1±0.9mgのフラバノールの平均投与量に相当した。
【0065】
血液サンプルを全ての被験者から製品の摂取前と1、2および4時間後に採取した。サンプリング実例について、図1を参照のこと。血漿中のエピカテキン代謝産物レベルの測定:40分間に亘る37℃でのβ−グルクロニダーゼおよびスルファターゼによる処理後に、血漿サンプル中で非メチル化エピカテキン、3’−O−メチルエピカテキンおよび4’−O−メチルエピカテキンを定量した。血漿中のエピカテキン代謝産物の合計を、非メチル化エピカテキン、3’−O−メチルエピカテキンおよび4’−O−メチルエピカテキンの代謝産物のレベルの合計として計算した。
【0066】
図2から5並びに以下の表1および2に示されるように、カカオポリフェノール飲料の摂取前と、カカオポリフェノール飲料を摂取してから1、2および4時間後に採取した血液サンプルにおいて、血漿中のエピカテキン代謝産物が検出され、本発明の飲料の投与の際の吸収を示した。
【0067】
この研究は、酸性基質中のカカオポリフェノールの摂取により、ヒトにおけるエピカテキン代謝産物の血漿レベルが著しく増加することを示した。
【表1】
【表2】
【0068】
実施例3−甘味料に関する美味しさの試験
本発明の美味しい飲料に到達するために、様々な甘味料を試験した。以下の試験対象甘味料を使用して、いくつかの飲料ミックスを実施例1に記載したように調製した:スクラロース、アスパルテーム、タウマチン(Talin(登録商標)、英国、Overseal Natural Ingredients, Ltd.)、精製レビアナ(結晶質レバウディオサイドA、米国、ミネソタ州ウェイサタ所在のCargill, Inc.)、これらは、乾燥粉末ミックスを試験するために同量で加えた(すなわち、40mg/240mlの水)。複数数の熟練の味見人(n=2)による官能試験によって、最も望ましいレベルの甘味(後味の量が最も少なく、酸味、苦味および渋味と調和がとれた)がスクラロースにより得られたと判定された。反対に、アスパルテームおよびタウマチンの添加により、渋味が減少したが、甘味を与え損なった;レビアナは、渋味を減少し損ない、甘味も与えなかった。別の実験において、スクラロースとAceKの組合せ(60:40)は、甘味を与え、苦味と渋味を減少させた。
【0069】
実施例4−乾燥飲料ミックスの湿潤性研究
いくつかの試験飲料の凝集サンプルを調製して、本発明の飲料の最終的な性質(例えば、湿潤時間、分散性、色、味覚など)への、酸、カカオ抽出物、マルトデキストリン、およびその様々な比などの様々な飲料成分の役割を、もしあれば調査した。カカオ抽出物を、例えば、Romanczykへの米国特許第5554645号明細書に記載されたように、水性アセトン抽出物により調製した。成分は、実施例1に記載されたように処理した。湿潤時間は、「ストレス」条件下で、すなわち、200mlの水当たり20gの多量の飲料配合物を含む(500ml中の6.6gの代わりに)「強力飲料」を使用して、測定した。結果が、表3および図6Aと6Bに報告されており、もしくは目視によりまたは試飲により観察し、ここに記載されている。
【0070】
酸の量は着色に影響した。例えば、pHを増加させることによって、赤色から茶色に移るにつれて、飲料はより濃い色合いになった。カカオ抽出物の渋味と苦味を減少させる、美味しい味覚には、少なくとも18%w/wの酸が必要であると判定された。
【0071】
表3に戻ると、酸とレシチンを含まない、21.4%w/wのカカオ抽出物を含有する組成物は、非常に乏しい湿潤性を有し、湿るのに180秒(3分間)が必要であった;反対に、酸を含まないが、レシチンを含む同量のカカオ抽出物を有する組成物では、湿るのに8.9秒しか必要なかった(欄5および6を比較)。カカオ抽出物の乏しい湿潤性(固有の疎水性のため)を考えると、湿潤性が許容される組成物を調製するために、1〜2%のレシチンを添加することが必要であると予測された。意外なことに、クエン酸の存在下では、カカオ抽出物は、容易かつ迅速に、凝集し、良好な湿潤性を有する製品を与えられる(酸を含有するサンプルの全てを欄5と比較する)。しかしながら、酸の量(%w/w)は湿潤時間に影響し、酸の量が多いと(カカオ抽出物は一定の含有量で)、湿潤時間が短くなることを示す傾向が観察された;例えば、欄7、8および9と、欄13および14とを比較する。当業者には認識されるであろうように、カカオ抽出物の量は、その疎水性のために湿潤時間に影響し、したがって、以下にさらに論じるように、カカオ抽出物の量を考慮して、表3のデータを分析した。
【0072】
表3のデータに観察された傾向が、表3のデータをプロットしている図6Aおよぴ6Bに示されている。配合5(酸もレシチンも含まれていなかった)のこの高い値(180秒)のために;むしろ、ゼロパーセントの酸について示されたデータ点は、レシチン含有配合物に関するものである。図6Aを参照すると、酸の量が増加すると、湿潤時間が減少する傾向が観察された。しかしながら、どの1つの特定の酸含有量でも、カカオ抽出物の量が増加すると、湿潤時間が増加する−それゆえ、20%w/wのクエン酸を有する3つの配合物(表3の欄2、8および13の配合物)は、異なる湿潤時間を有した。湿潤時間は、カカオ抽出物の量と共に増加する。さらに図6Aを参照すると、30%w/wのクエン酸を有する配合物(表3の欄10、11および12の配合物)について、同様の傾向が観察された−カカオ抽出物の量が多いほど、湿潤時間が長くなる。湿潤時間と酸のカカオ抽出物に対する比の間の傾向が、図6Bにさらに示されている−この比が大きいほど、湿潤時間が短くなる。酸のカカオ抽出物に対する比が0.8以上では、より短い湿潤時間(例えば、10秒以下)に向かう傾向があった。
【0073】
追加の研究により、リンゴ酸と酒石酸が、クエン酸系粉末のものと同様の性質を提供したことが示された。いくつかの果物香味料は酸の置換または組合せによってよりよく強調することができるので、味覚の変更に関して、このことは有用である。
【表3】
【0074】
実施例5−粒径分布および湿潤時間
異なるレベルのクエン酸を含有する、表3に示されたいくつかの飲料の試作品についての粒径分布および湿潤時間も研究した。この実施例で分析した飲料ミックスサンプルは、実施例4のサンプルと同じバッチに属した。全飲料配合物の湿潤時間が測定された、実施例4および表3に報告された結果とは反対に、ここでは、粒径250>x>105マイクロメートルを有する特定の分画の湿潤時間を測定した。最終的な組成物について、湿潤性および分散性に関する所望の粒子分布を決定するために、このことを行った。飲料ミックスは、本明細書に記載された篩を使用して、サイズに基づいて、細分した。この実験からのデータが表4に示されており、そのデータのいくつかが図7のグラフに示されている。
【0075】
最終的な飲料ミックスにおける粒径分布の重要性が、例えば、表3の欄5、すなわち、180秒の乏しい湿潤時間を有する、酸を含まない飲料配合物が、表4の欄6、すなわち、10.6秒の湿潤時間を有する、酸を含まない類似の組成の250>x>105マイクロメートルの分画と比較することによって、示される。重要なことには、表4の酸を含まない組成物は、凝集しなかった約7.5%w/wのカカオ抽出物粒子を有し、これらの粒子(カカオ抽出物の微小粉砕(micromilling)から生じる小さいサイズのために、「微細」と称される)は、疎水性であり、表3に反映されるように、全体的な最終飲料ミックス組成物の湿潤性および分散性に悪影響を与える。したがって、そのような粒子のw/w百分率は、本明細書に記載されたように、減少させるべきである。425マイクロメートル超のサイズを有する粒子は、そのサイズのために分散させるのが難しく、したがって、その量は、本明細書に記載されたように、最少にすべきである。
【0076】
表4を参照すると(列B〜Gを参照)、250>x>105マイクロメートルの分画の湿潤時間への様々な酸の含有量の影響を比較した場合、ある傾向が観察された−酸の含有量が増加すると、湿潤時間が減少する。この傾向が図7に示されている(この傾向線は、分画250>x>105マイクロメートルについて観察されたデータのみを示していることに留意のこと)。表4の列Hの組成物に関するデータは、図7に示された分析には含まれなかった。何故ならば、その組成物が、サイズが250>x>105マイクロメートルの粒子の量を望ましくないほど少なくしか含有せず(4.5%w/w)、それゆえ、全体の組成物の挙動を示さないであろうからである。
【表4】
【0077】
実施例6−飲料ミックス
実施例1に記載された手法にしたがって、以下の乾燥飲料ミックスを調製した。このミックスは、少なくとも5mg/gの(−)−エピカテキンおよび少なくとも53mg/gの総フラバノールおよびプロシアニジン(プロファイル1〜10)を含有した。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例7−飲料の美味しさ試験
いくつかの果物香味料を有する飲料ミックスの美味しさを試験するために、以下の試験を行った。
【0081】
70人の被験者に、飲料(500mlの水中に6.6gの乾燥飲料ミックスを溶解させることによって調製した)を飲み、7等嗜好尺度を使用して(Hedonic Test in Manual on Sensory Testing Methods, ASTM committee E18, page 32を参照)、全体の好みについて飲料の美味しさを評価するように頼んだ。数字の7が「とても好き」を表し、数字の1が「とても嫌い」を表した。5以上のスコアの結果を「美味しい」と考えた。当業者が認識できるように、飲料の嫌いのいくつかは、ある飲料風味(例えば、柑橘類対プラム)についての特定の嫌いの結果であって、苦味および/または渋味によるものではないであろう。結果が図8に示されている。
【0082】
別の実験において、77人の被験者に飲料を評価してもらった。その結果が、以下の表5に示されている。
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用酸と、カテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含むカカオ抽出物と、スクラロースと、水とを含む美味しい飲料。
【請求項2】
スクラロース、食用酸、カカオ抽出物および媒体を含む、非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項3】
前記媒体がマルトデキストリンであることを特徴とする請求項2記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項4】
水および請求項3記載の非チョコレート風味の水溶性組成物を含む飲料。
【請求項5】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項4記載の飲料。
【請求項6】
pHが約2から約4までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項7】
pHが約2から約3までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項8】
pHが約2.6から約3までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項9】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項10】
前記媒体がマルトデキストリンであることを特徴とする請求項9記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項11】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、所定の分散性試験を満たすことを特徴とする水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項12】
前記甘味料がスクラロース、アセスルファムKまたはそれらの組合せであることを特徴とする請求項11記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項13】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項12記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項14】
前記食用酸が40w/wパーセント以下の量であることを特徴とする請求項13記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項15】
さらにマルトデキストリンを含むことを特徴とする請求項14記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項16】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、該組成物が、以下の粒径分布:(i)841マイクロメートルより大きい粒子が5パーセント以下;(ii)74マイクロメートル以下の粒子が4パーセント以下;(iii)421マイクロメートルと841マイクロメートルの間の範囲にある粒子が20パーセントと40パーセントの間である;を有する粒子を含む水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項17】
前記組成物が、841マイクロメートルより大きい粒子が1パーセント以下しか含まないことを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項18】
前記食用酸が25パーセント以下の量であり、251マイクロメートルと420マイクロメートルの間の範囲にある粒子の量が20パーセント以下であることを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項19】
前記食用酸が少なくとも30パーセントの量であり、251マイクロメートルと420マイクロメートルの間の範囲にある粒子の量が40パーセント以下であることを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項20】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項21】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項19記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項22】
甘味料、食用酸、カカオ抽出物および媒体を含む非チョコレート風味の水溶性組成物であって、前記甘味料がスクラロース、アセスルファムKまたはそれらの組合せであり、前記カカオ抽出物の粒径が約75マイクロメートル以下であることを特徴とする非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項23】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、前記食用酸のカカオ抽出物に対する比が0.8以上であることを特徴とする水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項24】
(i)カカオ抽出物、(ii)食用酸、(iii)非栄養甘味料および(iv)媒体から実質的になる凝集混合物を含む水分散性飲料ミックス。
【請求項1】
食用酸と、カテキン、エピカテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含むカカオ抽出物と、スクラロースと、水とを含む美味しい飲料。
【請求項2】
スクラロース、食用酸、カカオ抽出物および媒体を含む、非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項3】
前記媒体がマルトデキストリンであることを特徴とする請求項2記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項4】
水および請求項3記載の非チョコレート風味の水溶性組成物を含む飲料。
【請求項5】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項4記載の飲料。
【請求項6】
pHが約2から約4までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項7】
pHが約2から約3までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項8】
pHが約2.6から約3までであることを特徴とする請求項5記載の飲料。
【請求項9】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項10】
前記媒体がマルトデキストリンであることを特徴とする請求項9記載の非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項11】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、所定の分散性試験を満たすことを特徴とする水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項12】
前記甘味料がスクラロース、アセスルファムKまたはそれらの組合せであることを特徴とする請求項11記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項13】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項12記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項14】
前記食用酸が40w/wパーセント以下の量であることを特徴とする請求項13記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項15】
さらにマルトデキストリンを含むことを特徴とする請求項14記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項16】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、該組成物が、以下の粒径分布:(i)841マイクロメートルより大きい粒子が5パーセント以下;(ii)74マイクロメートル以下の粒子が4パーセント以下;(iii)421マイクロメートルと841マイクロメートルの間の範囲にある粒子が20パーセントと40パーセントの間である;を有する粒子を含む水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項17】
前記組成物が、841マイクロメートルより大きい粒子が1パーセント以下しか含まないことを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項18】
前記食用酸が25パーセント以下の量であり、251マイクロメートルと420マイクロメートルの間の範囲にある粒子の量が20パーセント以下であることを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項19】
前記食用酸が少なくとも30パーセントの量であり、251マイクロメートルと420マイクロメートルの間の範囲にある粒子の量が40パーセント以下であることを特徴とする請求項16記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項20】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項18記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項21】
前記酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項19記載の水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項22】
甘味料、食用酸、カカオ抽出物および媒体を含む非チョコレート風味の水溶性組成物であって、前記甘味料がスクラロース、アセスルファムKまたはそれらの組合せであり、前記カカオ抽出物の粒径が約75マイクロメートル以下であることを特徴とする非チョコレート風味の水溶性組成物。
【請求項23】
カカオ抽出物、少なくとも18w/wパーセントの量の食用酸および甘味料を含む水溶性乾燥粉末組成物であって、前記食用酸のカカオ抽出物に対する比が0.8以上であることを特徴とする水溶性乾燥粉末組成物。
【請求項24】
(i)カカオ抽出物、(ii)食用酸、(iii)非栄養甘味料および(iv)媒体から実質的になる凝集混合物を含む水分散性飲料ミックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−521008(P2013−521008A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557134(P2012−557134)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027278
【国際公開番号】WO2011/109764
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027278
【国際公開番号】WO2011/109764
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]