説明

カス取り装置

【課題】カス部用ピンをカス部の細部にまで行き渡らせることが可能で、カス部をきわめて良好に取り除くことができるカス取り装置を提供する。
【解決手段】カス取り装置は、複数の製品部が配設された被打ち抜き用シートから製品部とカス部とを分離する装置であり;上型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該カス部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用上型ピン3a,3bと;下型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該製品部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用下型ピンと;を備える。打ち抜き用上型ピンのうち、少なくともカス部の作業位置に配置されるピンは、相対的に小径の第1ピン3aと相対的に大径の第2ピン3bとを有し、少なくとも1つの第2ピンが第1ピンに隣接するよう配置されている部分33を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カス取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙草の紙箱(ケース)やお菓子・キャラメルの紙箱(ケース)等の製作においては、まず、帯刃による切り込みによって、被打ち抜き用シートに左右方向および前後方向に並んだ複数の製品部(ケースの展開部品)を形成し、当該製品部を被打ち抜き用シートから多数のピンの押圧によって打ち抜き、製品部とカス部とを分離する。このような製品部とカス部との分離に用いられるカス取り装置は、代表的には、多数のピン孔をマトリックス状に配列した上型を、被打ち抜き用シートを載せた下型に対して昇降駆動させるように構成し、被打ち抜き用シートのカス部に対応する位置のピンのみを上型に残して、それらのピンで、カス部に対して、プレス式の突き動作を行うことにより、製品部からカス部を分離除去している。
【0003】
従来のカス取り装置においては、上型のピン(カス部用ピン)および下型のピン(製品部用ピン)が、それぞれ格子状(図10参照)または千鳥状(図11参照)に配置されている。しかし、このような構成では、被打ち抜き用シートのカス部に配置されるカス部用ピンの数が少なく、および、カス部に配置されるカス部用ピンの数が不均一となる。その結果、このようなカス取り装置では、細幅帯状にカス部を打ち抜くことが困難であり、打ち抜き不良品が生じる場合が多い。
【0004】
上記のような問題を解決するために、カス部用ピンが、図12に示すように平面的に見て所定傾斜角度θで傾斜して配置されたカス取り装置が提案されている(特許文献1)。さらに、当該カス取り装置においては、カス部用ピンの径は、製品部用ピンの径よりも小径とされている。しかし、このようなカス取り装置であっても、カス部用ピンをカス部の細部にまで行き渡らせることは困難である。さらに、カス部用ピンの径を小径とすると、座屈が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3515513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カス部用ピンをカス部の細部にまで行き渡らせることが可能で、カス部をきわめて良好に取り除くことができるカス取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカス取り装置は、複数の製品部が配設された被打ち抜き用シートから製品部とカス部とを分離するカス取り装置であって;上型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該カス部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用上型ピンと;下型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該製品部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用下型ピンと;を備え、該打ち抜き用上型ピンのうち、少なくとも該カス部の作業位置に配置されるピンが、相対的に小径の第1ピンと相対的に大径の第2ピンとを有し、少なくとも1つの第2ピンが第1ピンに隣接するよう配置されている部分を有する。
好ましい実施形態においては、上記カス部の作業位置に配置されるピンは、1本の第1ピンが6本の第2ピンで包囲されている部分を有する。
好ましい実施形態においては、上記カス部の作業位置に配置されるピンは、1本の第1ピンが1本の第1ピンと5本の第2ピンとで包囲されている部分を有する。
好ましい実施形態においては、上記カス部の作業位置に配置されるピンは、1本の第1ピンが2本の第1ピンと4本の第2ピンとで包囲されている部分を有する。
好ましい実施形態においては、上記カス部の作業位置に配置されるピンは、1本の第1ピンが3本の第1ピンと3本の第2ピンとで包囲されている部分を有する。
好ましい実施形態においては、上記第1ピンの直径Dと上記第2ピンの直径Dとの比D/Dは、0.50〜0.90である。
好ましい実施形態においては、上記作業位置に配置された状態において、上記第2ピンの先端部は上記第1ピンの先端部よりも突出している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカス取り装置によれば、打ち抜き用上型ピンのうち、少なくとも該カス部の作業位置に配置されるピンについて、相対的に小径の第1ピンと相対的に大径の第2ピンとを組み合わせて用い、かつ、1本の第1ピンに少なくとも1つの第2ピンが隣接する部分を形成するようにして配置することにより、カス部用ピンをカス部の細部にまで行き渡らせることができる。同時に、相対的に小径の第1ピンの座屈を良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に用いられ得るカス取り装置の基本的構成を説明するための概略正面図である。
【図2】図1のカス取り装置において打ち抜き用上型ピンおよび打ち抜き用下型ピンを作業位置および退避位置に区別した状態を説明するための概略正面図である。
【図3】図1および図2のカス取り装置に被打ち抜き用シートを載置した状態を説明するための概略正面図である。
【図4】被打ち抜き用シートの一例を示す概略図である。
【図5】上型のピンボードにおけるピン孔の配置状態を説明する概略平面図である。
【図6】上型ピンの係止状態を説明する上型の断面図であり、図5のピンボードのVI−VI線から見た断面図である。
【図7】下型ピンの係止状態、および、打ち抜き加工が終了した後に製品部を搬出する方法を説明する下型の断面図である。
【図8A】本発明の1つの実施形態における上型ピンの第1ピンと第2ピンの配置状態を説明する概略平面図である。
【図8B】本発明の別の実施形態における上型ピンの第1ピンと第2ピンの配置状態を説明する概略平面図である。
【図8C】本発明のさらに別の実施形態における上型ピンの第1ピンと第2ピンの配置状態を説明する概略平面図である。
【図8D】本発明のさらに別の実施形態における上型ピンの第1ピンと第2ピンの配置状態を説明する概略平面図である。
【図9】本発明のカス取り装置において採用され得るエアクッション機構の基本的構成を説明する概略断面図である。
【図10】従来のカス取り装置におけるカス部用ピンの配置の一例を説明する概略図である。
【図11】従来のカス取り装置におけるカス部用ピンの配置の別の一例を説明する概略図である。
【図12】従来の別のカス取り装置のカス部用ピンの配置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
【0011】
最初に、カス取り装置および当該カス取り装置を用いたカス取り方法の全体の基本的な構成の一例を説明する。図1は、本発明に用いられ得るカス取り装置の基本的構成を説明するための概略正面図である。図2は、図1のカス取り装置において打ち抜き用上型ピンおよび打ち抜き用下型ピン(以下、それぞれを単に上型ピンおよび下型ピンとも称する)を作業位置および退避位置に区別した状態を説明するための概略正面図である。図3は、図1および図2のカス取り装置に被打ち抜き用シートを載置した状態を説明するための概略正面図である。なお、説明を簡略化するために、カス取り装置の基本的構成の説明においては、上型ピンをすべて同一径で図示しているが、本発明においては、後述するように、上型ピンは、少なくともカス部の作業位置に配置されるピンが、相対的に小径の第1ピンと相対的に大径の第2ピンとを有する。
【0012】
カス取り装置100は、上型1に上下動および固定可能に保持された上型ピン3と、下型2に上下動および固定可能に保持された下型ピン4と、を備える。上型1および下型2は、ガイドロッド5および6に案内されて、駆動装置(図示せず)によって昇降駆動される。カス取り装置100は、上型1および下型2の昇降による上型ピン3および下型ピン4の押圧により、図4に示すような被打ち抜き用シート11の製品部12とカス部13とを分離する。さらに、カス取り装置100は、第1テンプレート7および第2テンプレート8を備える。図6に示すように、第1テンプレート7は、製品部12に対応したテンプレート本体71とカス部13に対応した空孔部72とを有する。第2テンプレート8は、カス部に対応したテンプレート本体と製品部に対応した空孔部とを有する。第1テンプレート7および第2テンプレート8は、それぞれ、ガイドロッド9および10に案内されて、駆動装置(図示せず)によって、上型1および下型2に対して相対的に昇降駆動される。
【0013】
このような構成により、図1、図2および図6に示すように、第1テンプレート7を上昇させることにより、上型ピン3のうち、被打ち抜き用シート11の製品部12に対応するテンプレート本体71(図6参照)に当接する製品部対応ピン31を、シート11の打ち抜き線Eと干渉する干渉ピン151と共に、上方退避位置18に移動させ、製品部12と干渉しないカス部用ピン17のみを、上型1の作業位置28に残すことができる。すなわち、このカス部用ピン17は、図4に示した打ち抜き線(境界線)Eと干渉せず、カス部13とのみ対応する。干渉ピン151は、この打ち抜き線Eに干渉するピンである。
【0014】
一方、第2テンプレート8を図1から図2および図7のように上昇させることにより、下型ピン4のうち、シート11のカス部13に対応するカス部対応ピン41を、シート11の打ち抜き線Eと干渉する干渉ピン152と共に、下方退避位置19に残したままで、打ち抜き線Eと干渉しない製品部用ピン16のみを、(上方突出状として)下型2の作業位置29に移動させる。図1および図2に示すような構成であれば、打ち抜き線Eに干渉する干渉ピン151を上方退避位置18に選択的に退避させることにより、被打ち抜き用シート11の製品部12と干渉しないカス部用ピン17のみを上型1の作業位置28に残すことができ、かつ、打ち抜き線Eに干渉する干渉ピン152を下方退避位置19に選択的に退避させることにより、被打ち抜き用シート11のカス部13と干渉しない製品部用ピン16のみを下型2の作業位置29に残すことができる。その結果、カス部13を製品部12から分離して打ち抜くことができるので、製品部12に疵を付けることなく、かつ、少ない作業工程で、能率よく、カス部13を打ち抜き、分離除去することができる。なお、第2テンプレート8のテンプレート本体81は、好ましくは、第1テンプレート7のテンプレート本体71よりも、一まわり小型に作成される。言い換えると、第2テンプレート8のテンプレート本体81は、打ち抜き線Eに干渉するピンを避ける必要があるので、第1テンプレート7のテンプレート本体71よりも、小さな形状(面積)となる。
【0015】
このように、シート11の製品部12とカス部13の双方に干渉する(すなわち、打ち抜き線Eに干渉する)干渉ピン15(151、152)を、それぞれ、上型1の上方退避位置18と下型2の下方退避位置19とに分離した状態に退避させた状態下で、図3に示すように、複数枚のシート11を、製品部用ピン16の上に積層状態に載置して、上型1を下降等によって上型1と下型2とを相対的に接近させれば、製品部12(打ち抜き線E)と干渉しないカス部用ピン17、および、カス部13(打ち抜き線E)と干渉しない製品部用ピン16との共働によって、シート11のカス部13を製品部12から分離除去することができ、キズのない製品部12を、少ない作業工程で、能率よく得ることができる。なお、図示していないが、シート11の端部が垂れ下がらないように受け止めるための端受部材を設けてもよい。端受部材は、例えば、シート11がカス部用ピン17から衝撃を受けると、その下部が外方に転回して、シート11の端部から外れるような構成とされる。
【0016】
全体について、より詳しく説明すると、上型1は、例えば、図5および図5のVI−VI線から見た断面図である図6に示すように、多数のピン孔Hが形成された2枚のピンボードB、Bを、互いに相対的にスライド可能となるように重ね合わせてなる。ピン孔Hは、大小異なる内径のものが交互に配列されている。ピン孔の平均径は、内径が大小のいずれについても、下型ピンに対して相対的に小径の上型ピンが嵌合するよう設定されている。すなわち、ピン孔の平均径は、内径が大小のいずれについても、下型2のピンボードに対して相対的に小さく設定されている。さらに、各ピン孔Hの間隔は、下型2のピンボードの各ピン孔の間隔に対して相対的に細かく設定されている。このように、各ピン孔Hに嵌合する上型ピン3の平均径を、下型ピンに対して相対的に小径として設定することにより、製品部12(およびカス部13) の微小な隙間や小孔等々の複雑な形状に柔軟に対応することができ、打ち抜き精度が顕著に向上する。
【0017】
上型1の各ピン孔Hに嵌合する上型ピン3は、その上部と下部に、それぞれ、各ピン孔Hに係止させるための切欠溝21および22が形成されている。さらに、上型ピン3の下部には、上昇限度を設定するための停止リング(図示せず)を設けてもよい。2枚のピンボードB、Bをスライドさせることにより、上部の切欠溝21または下部の切欠溝22を、それぞれ段違いになったピン孔Hに一度に係止させ、各上型ピン3を、上方退避位置18または作業位置28(図2または図3参照)に確実に保持することができる。なお、上側に配置されるピンボードBのピン孔Hには、大きいピン孔Hと小さいピン孔Hに上型ピン3の切欠溝21および22を一度に隙間なく係止させることができるように、外方(スライド方向)に突出する逃げ孔部Sが設けられている(図5参照)。
【0018】
初期状態においては、上型ピン3は、図1に示すように、上部の切欠溝21が、両ピンボードB、Bのピン孔H、Hに係止されて吊り下げられた状態となっており、その上型ピン3の各下端が、水平に揃うように、上型ピン3の上部に対応する位置決め部材(図示省略)が設けられている。さらに、上述したように、図6に示すように、第1テンプレート7を上昇させると、製品部対応ピン31が干渉ピン151と共に上方退避位置18に移動し、下部の切欠溝22が、両ピンボードB、Bのピン孔H、Hに係止される。
【0019】
一方、下型2は、上型1と同様の構成が採用されている(図示せず)。多数のピン孔が形成された2枚のピンボードを、互いに相対的にスライド可能となるように重ね合わせてなる。ピン孔は、大小異なる内径のものが交互に配列されている。下型2に形成されるピン孔は、その一部または全体が、上型1に形成されるピン孔Hの一部または全体と、平面視にて非対応位置に配設されている。下型2においては、ピン孔の平均径は、内径が大小のいずれについても、上型ピンに対して相対的に大径の下型ピンが嵌合するよう設定されている。すなわち、ピン孔の平均径は、内径が大小のいずれについても、上型1のピンボードに対して相対的に大きく設定されている。さらに、各ピン孔の間隔は、上型1のピンボードの各ピン孔の間隔に対して相対的に粗く設定されている。このように、各ピン孔の間隔を比較的に粗く設定することにより、ピンボードの剛性と強度の向上を図るのが容易となる。さらに、下型ピン4の平均径を、上型ピンに対して相対的に大径として設定することにより、製品部12を広い表面積で支持することができるので、製品部12への疵付きを防止することができる。なお、上側に配置されるピンボードのピン孔には、上型1のピンボードBと同様に、外方(スライド方向)に突出する逃げ孔部が設けられている
【0020】
下型2の各ピン孔に嵌合する下型ピン4は、上型ピンと同様に、その上部と下部に、それぞれ、各ピン孔に係止させるための切欠溝21および22が形成されている。2枚のピンボードをスライドさせることにより、上部の切欠溝21または下部の切欠溝22を、それぞれ段違いになったピン孔に一度に係止させ、各下型ピン3を、下方退避位置19または作業位置29(図2または図3参照)に確実に保持することができる。下型がこのような構成であり、さらに、上型が上述したような構成であれば、上型および下型のそれぞれの2枚のピンボードをスライドさせることにより、上型ピン3および下型ピン4を、一度に係止させることができる。したがって、上型ピン3を作業位置28および上方退避位置18に迅速および確実に保持することができ、かつ、下型ピン4を作業位置29および下方退避位置19に迅速および確実に保持することができる。その結果、打ち抜き作業の能率を向上させることができる。
【0021】
初期状態においては、下型ピン4は、図1に示すように、下部の切欠溝22が、両ピンボードのピン孔に係止されて保持された状態となっており、その下型ピン4の各上端が、水平に揃うように、下型ピン4の下部に対応する位置決め部材(図示省略)が設けられている。さらに、上述したように、図7に示すように、第2テンプレート8を上昇させると、カス部対応ピン41が干渉ピン152と共に下方退避位置19に移動し、上部の切欠溝21が、両ピンボードのピン孔に係止される。
【0022】
上述したとおり、図4は、打ち抜き加工の対象となるシート(被打ち抜き用シート)11の一例を示す。被打ち抜き用シート11は、例えばトムソン刃を用いた抜き型により切断加工が施されており、製品部12とカス部13との境界(実線で示す)に、打ち抜き線Eがすでに形成されている。なお、図4において、破線14は折り曲げ箇所を示す。
【0023】
第1テンプレート7および第2テンプレート8はそれぞれ、例えば、被打ち抜き用シート11の製品部12に対応するテンプレート本体71および81を、蝶番等で開閉自在に(または相互に着脱自在に)接続された一対のピンボード間に挾持させるように構成されている(図示せず)。当該ピンボードのそれぞれには、上型1または下型2のピンボードのピン孔と同一の配列パターンのピン孔が形成され、両ピンボードを閉じて、その間に、テンプレート本体71、81を挟んだ状態として、ガイドロッド9、10に取付けた支持枠35、36(図1参照)に保持させて使用する。第1テンプレート7および第2テンプレート8はそれぞれ、例えば、剛性を有する紙またはプラスチックで構成される。第1テンプレート7および第2テンプレート8はそれぞれ、製品部の形状が入力可能で、かつ、当該形状に基づいて切断機の動作が制御される自動切断装置を用いて形成され得る。なお、第1テンプレート7および第2テンプレート8の接続、連結、固着および構造は、蝶番に限定されず、設計変更自由であり、例えば、嵌合凹凸部または嵌合ガイドピン部等にて着脱自在に重ね合わせる構造とすることもできる。
【0024】
図7は、上述のように下型ピンの係止状態を説明するのみならず、打ち抜き加工が終了した後に製品部12を搬出する方法を説明する。カス部13と分離された製品部12は、その上昇限度位置(すなわち、下型2の作業位置29)にある製品部用ピン16の上に載置されている。製品部12は、任意の適切な搬出装置(図示せず)の熊手状に形成された搬出アーム27によって持ち上げられ、外部に搬出される。搬出アーム27は、例えば、油圧または空圧の駆動源と電動駆動源との組み合わせ等により、水平方向の伸縮動作と共に、上下方向の昇降動作が可能なように構成されていればよい。具体的には、搬出装置は、搬出アーム27を矢印F方向に差し込み、矢印G方向に上昇させ、最後に矢印Fと反対方向へと移動させることにより、製品部12を搬出する。なお、下型ピン4の下部には、下型2の下側のピンボードBの下面に当接する停止リング(図示せず)を設けて、その上昇限度を規制できるような構成としてもよい。
【0025】
本発明のカス取り装置においては、図8Aに示すように、上型ピン3のうち、少なくとも作業位置28に配置されるピンが、相対的に小径の第1ピン3aと相対的に大径の第2ピン3bとを有する。さらに、作業位置28に配置される上型ピン3は、少なくとも1つの第2ピン3bが、第1ピン3aに隣接するよう配置されている部分(以下、包囲部分と称する)33を有する。当該包囲部分33は、作業位置に配置される上型ピン3の1箇所に形成されていてもよく、作業位置に配置される上型ピン3の複数個所に形成されていてもよく、作業位置に配置される上型ピン3の全体にわたって形成されていてもよく、作業位置に配置される上型ピン3が当該部分を有するようにして上型ピン3全体の複数個所に形成されていてもよく(図8A)、上型ピン3の全体にわたって形成されてもよい。このように、作業位置28に配置される上型ピンの少なくとも一部に相対的に小径の第1ピン3aと相対的に大径の第2ピン3bとを組み合わせて用いることにより、カス部の細部にまでカス部用ピン17を行き渡らせることができる。さらに、包囲部分33を設けることにより、相対的に小径の第1ピンの座屈を良好に防止することができる。その結果、打ち抜き作業の効率および精度を顕著に向上させることができ、カス部をきわめて良好に取り除くことができる。
【0026】
包囲部分33における1つの実施形態によれば、図8Aに示すように、1本の第1ピン3aが、6本の第2ピン3bで包囲されている。別の実施形態においては、図8Bに示すように、1本の第1ピン3aが、1本の第1ピン3aと5本の第2ピン3bとで包囲されている。さらに別の実施形態においては、図8Cに示すように、1本の第1ピン3aが、2本の第1ピン3aと4本の第2ピン3bとで包囲されている。さらに別の実施形態においては、図8Dに示すように、1本の第1ピン3aが、3本の第1ピン3aと3本の第2ピン3bとで包囲されている。
【0027】
第1ピン3aの直径Dと第2ピン3bの直径Dとの比D/Dは、好ましくは0.50〜0.90である。第1ピンと第2ピンとの直径の比がこのような範囲であれば、第1ピンのカス部打ち抜き機能を維持しつつ、第1ピンの座屈を良好に防止することができる。
【0028】
第2ピン3bの先端部は、上型ピン(実質的には、包囲部分33)が作業位置28に配置された状態において、第1ピン3aの先端部と面一であってもよく、第1ピン3aの先端部よりも下方に突出していてもよい。好ましくは、第2ピン3bの先端部は、上型ピン(実質的には、包囲部分33)が作業位置28に配置された状態において、第1ピン3aの先端部よりも下方に突出している。このような構成を採用することにより、第1ピンのカス部打ち抜き機能を維持しつつ、第1ピンの座屈をさらに良好に防止することができる。第2ピンの先端部の突出量(突出長さ)は、被打ち抜き用シートの材質、第1ピンと第2ピンとの直径の比、包囲部分の数および形成位置、ならびに第1ピンが包囲される形態等に応じて適切に設定することができる。第1ピンの先端部の突出量は、好ましくは0.05mm〜0.5mmである。
【0029】
形成される包囲部分の数および形成位置(配置位置)、第1ピンの包囲形態、第1ピンと第2ピンとの直径の比、ならびに、第2ピンの先端部の突出量は、被打ち抜き用シートの製品部およびカス部の形状に応じて、上述した実施形態を適切に組み合わせることができる。例えば、形成される包囲部分の数および形成位置(配置位置)、ならびに、第1ピンの包囲形態は、CADによる模擬配置により、製品部およびカス部の形状に応じて最適化することができる。したがって、CADによるピン干渉検知において干渉ピンとして排除される上型ピンの数を減らすことができ、より精密に製品形状に対応したテンプレートを作製することができる。その結果、打ち抜き作業の精度を格段に向上させることができる。さらに、第1ピンと第2ピンとの直径の比、ならびに、第2ピンの先端部の突出量は、上記最適化された包囲部分の形態等に応じて、第1ピンおよび第2ピンの材質等を考慮して決定することができる。その結果、第1ピンの座屈をきわめて良好に防止することができる。
【0030】
1つの実施形態においては、下型2は、図9に示すようなエアクッション機構90により支持および昇降され得る。エアクッション機構90は、適切な構成によりカス取り装置に組み込まれ、下型2を支持および昇降する。エアクッション機構としては、任意の適切な構成を採用することができる。一例として、図9に示す構成を説明する。エアクッション機構90は、上下方向に延びる有底筒状のボディ91と、エア室92を区画形成するピストン93と、当該ピストン23を床側に固定する固定プレート94とを備え、ボディ91のピストン93に対する上下動に応じてエア室92に封入されたエアが空気バネとして作用する。本実施形態においては、この空気バネの作用により、下型2を支持および昇降する。エア室92のエア圧は、エア圧回路110により調整され得る。エア圧回路110は、エア室92からエアを排出させるための第1バルブ111と、エア室92および加圧エア保持手段としてのエアレザバータンク113を断続切換え可能に接続する第2バルブ112とを備える。なお、符号114は、エアレザバータンク113から空気圧源(図示せず)へのエアの流れを阻止するための逆止弁である。
【0031】
第1バルブ111は、ピストン93に形成された連通路93aおよび管路115によりエア室92と接続される一方で、排気ポート(図示せず)に接続されている。第1バルブ111は、コイルばねの付勢力によりエア室92と排気ポートとを遮断する遮断位置(図の左側の位置)に位置づけられる一方、作動信号が入力されるとソレノイドの電磁力により切り替わって、エア室92と排気ポートとを連通する排気位置(図の右側の位置)に位置づけられるよう構成されている。
【0032】
第2バルブ112は、エア室92とエアレザバータンク113との間に設けられている。第2バルブ112は、コイルばねの付勢力によりエア室92とエアレザバータンク113とを遮断する遮断位置(図の下側の位置)に位置づけられる一方、作動信号が入力されるとソレノイドの電磁力により切り替わって、エア室92とエアレザバータンク113とを連通する排気位置(図の上側の位置)に位置づけられるよう構成されている。
【0033】
エア圧回路110は、被打ち抜き用シート11の載置時には、第1バルブ111が遮断位置に位置づけられ、かつ、第2バルブ112が連通位置に位置づけられている。これにより、エア室92とエアレザバータンク113とが互いに連通されて、エアクッション機構90の空気バネとしての動作が安定する。一方、図3に示すような被打ち抜き用シート11を下型2に載置した状態から上型1を降下させて、カス部用ピン17でカス部12に突き動作(打ち抜き動作)を行う際には、エア圧回路110を制御することによりエア室92のエア圧を変化させて、下型2を所定の速度で所定距離降下させることができる。これにより、突き動作(打ち抜き動作)時のカス部用ピン17の圧力を調整することができるので、カス部を良好に除去することができ、かつ、カス部用ピン17の座屈を良好に防止することができる。さらに、カス取り装置の設置床面に対する圧力を大幅に低減することができるので、カス取り装置の設置場所の選択肢を大幅に拡大することができる(例えば、建屋の2階以上にカス取り装置を設置することができる)。エアクッション機構による下型2の降下速度および降下距離は、エア圧回路110(実質的には、第1バルブ111および第2バルブ112の位置の切り替え)を制御してエア室92のエア圧ならびにその変化量および変化速度を調整することにより制御され得る。
【0034】
なお、カス取り装置全体の構成は、上述した形態以外にも設計変更自由であり、任意の適切な構成を採用することができる。例えば、上型1と第1テンプレート7とは、互いを接近させるために両者が昇降してもよく、いずれか一方が昇降してもよい。下型2および第2テンプレート8についても、互いを接近させるために両者が昇降してもよく、いずれか一方が昇降してもよい。さらに、上型ピン3および第1テンプレート7と下型ピン4および第2テンプレート8とを、上下逆に配設してもよい。すなわち、上型ピン3および第1テンプレート7の構成をカス取り装置の下側に設け、下型ピン4および第2テンプレート8の構成をカス取り装置の上側に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のカス取り装置は、煙草の紙箱(ケース)やお菓子・キャラメルの紙箱(ケース)のような紙器パッケージの打ち抜きに好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0036】
1 上型
2 下型
3 打ち抜き用上型ピン(上型ピン)
3a 第1ピン
3b 第2ピン
4 打ち抜き用下型ピン(下型ピン)
7 第1テンプレート
8 第2テンプレート
11 被打ち抜き用シート
12 製品部
13 カス部
16 製品部用ピン
17 カス部用ピン
18 上方退避位置
19 下方退避位置
28 上型の作業位置
29 下型の作業位置
100 カス取り装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品部が配設された被打ち抜き用シートから製品部とカス部とを分離するカス取り装置であって、
上型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該カス部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用上型ピンと、
下型に上下動および固定可能に取り付けられ、テンプレートにより退避位置と該製品部に対応した作業位置とに区別される多数の打ち抜き用下型ピンと、を備え、
該打ち抜き用上型ピンのうち、少なくとも該カス部の作業位置に配置されるピンが、相対的に小径の第1ピンと相対的に大径の第2ピンとを有し、少なくとも1つの第2ピンが第1ピンに隣接するよう配置されている部分を有する、
カス取り装置。
【請求項2】
前記カス部の作業位置に配置されるピンが、1本の第1ピンが6本の第2ピンで包囲されている部分を有する、請求項1に記載のカス取り装置。
【請求項3】
前記カス部の作業位置に配置されるピンが、1本の第1ピンが1本の第1ピンと5本の第2ピンとで包囲されている部分を有する、請求項1または2に記載のカス取り装置。
【請求項4】
前記カス部の作業位置に配置されるピンが、1本の第1ピンが2本の第1ピンと4本の第2ピンとで包囲されている部分を有する、請求項1から3のいずれかに記載のカス取り装置。
【請求項5】
前記カス部の作業位置に配置されるピンが、1本の第1ピンが3本の第1ピンと3本の第2ピンとで包囲されている部分を有する、請求項1から4のいずれかに記載のカス取り装置。
【請求項6】
前記作業位置に配置された状態において、前記第2ピンの先端部が前記第1ピンの先端部よりも突出している、請求項1から5のいずれかに記載のカス取り装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−10167(P2013−10167A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145252(P2011−145252)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(592086190)株式会社レザック (14)
【Fターム(参考)】