説明

カチオンおよびハイブリッド硬化性UVゲル

【課題】カチオン硬化性を有し、場合によってはラジカル硬化性をさらに有する硬化性相変化組成物を提供する。
【解決手段】硬化性相変化組成物は、ゲル化剤と、カチオン硬化性成分としてのカチオン硬化性モノマーおよびカチオン性光開始剤と、を含む放射線硬化性相変化組成物である。場合によって、ラジカル硬化性成分としてのラジカル硬化性モノマーと、フリーラジカル光開始剤と、をさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概ね、硬化性相変化インクに関する。
【背景技術】
【0002】
オデル(Odell)らの米国特許公開第2007/0120910号は、着色剤、光開始剤、およびインクビヒクルを含む相変化インク組成物を開示している。そのインクビヒクルは、ラジカル硬化性モノマー化合物および次式のアミドゲル化剤化合物を含む。ただしその参考文献では、具体的な置換基をさらに限定している。
【0003】
【化1】

【0004】
インクジェット方式においては、ホットメルトインクとも呼ばれる相変化インクを使用することが知られている。一般に、相変化インクは、例えば周囲温度では固相または半固相の状態であるが、インクジェット印刷装置の高められた操作温度においては液相状態で存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0158491号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0158492号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0123606号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0120910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カチオン硬化性を有し、場合によってはラジカル硬化性をさらに有する硬化性相変化組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示されているのは、例えば、ゲル化剤と、カチオン硬化性モノマーと、カチオン性光開始剤と、場合によってはラジカル硬化性モノマーと、さらに場合によってはフリーラジカル光開始剤と、を含むインクおよび保護膜組成物等の着色したおよび無色の組成物である。カチオン硬化性成分およびラジカル硬化性成分の両方を含む組成物を、本明細書では「ハイブリッド」組成物と称する。いくつかの実施形態において、該ハイブリッド組成物は、ゲル化剤、カチオン硬化性モノマーおよび放射線露光した直後にカチオン重合の触媒作用をするためのカチオン光開始剤に加えて、ラジカル硬化性モノマーおよび放射線露光した直後にフリーラジカル硬化の触媒作用をするためのフリーラジカル光開始剤を含む。
【0008】
インク組成物については、該組成物は、該組成物の重量に対して約0.5%から約15%まで、例えば、該組成物の重量に対して約1%から約10%まで、または約3%から約8%までなどの量で存在する少なくとも1つの着色剤、例えば、顔料、染料、顔料の混合物、染料の混合物、または顔料と染料の混合物などをさらに含む。保護膜組成物については、該組成物は着色剤を実質的に含まない。「着色剤を実質的に含まない」とは、該組成物が該組成物の約0.5重量%未満の量で存在する着色剤を含むことを意味する。該組成物は、紫外線硬化性組成物等の放射線硬化性組成物である。該組成物は、また、場合によって、安定剤、界面活性剤、またはその他の添加剤も含むことができる。
【0009】
ゲル化剤としては、次式の化合物を使用することができる。
【化2】

【0010】
上記式中、Rは、
(i)例えば、アルキレン鎖中に1個から約12個までまたは1個から約4個までの炭素原子など、1個から約20個までの炭素原子を有するアルキレン基(ただし、アルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基として定義され、線状および分枝した、飽和および不飽和の、環式および非環式の、置換および非置換のアルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキレン基中に存在していてもいなくてもよい)、
(ii)例えば、アリーレン鎖中に約6個から約14個までまたは6個から約10個までの炭素原子など、約5個から約20個までの炭素原子を有するアリーレン基(ただし、アリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基として定義され、置換および非置換のアリーレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリーレン基中に存在していてもいなくてもよい)、
(iii)例えば、アリールアルキレン鎖中に約7個から約22個までまたは7個から約20個までの炭素原子など、約6個から約32個までの炭素原子を有するアリールアルキレン基(ただし、アリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、そのアリールアルキレン基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)、あるいは
(iv)例えば、アルキルアリーレン鎖中に約7個から約22個までまたは7個から約20個までの炭素原子など、約6個から約32個までの炭素原子を有するアルキルアリーレン基(ただし、アルキルアリーレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、そのアルキルアリーレン基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)であり、その置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の該置換基は、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、2つ以上の置換基が、結合して環を形成することができる。
【0011】
上記式中、RおよびR’は、他とは関係なく、
(i)例えば、アルキレン鎖中に1個から約44個までまたは1個から約36個までの炭素原子など、1個から約54個までの炭素原子を有するアルキレン基(ただし、アルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基として定義され、線状および分枝した、飽和および不飽和の、環式および非環式の、置換および非置換のアルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキレン基中に存在していてもいなくてもよい)、
(ii)例えば、アリーレン鎖中に約6個から約14個までまたは7個から約10個までの炭素原子など、約5個から約14個までの炭素原子を有するアリーレン基(ただし、アリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基として定義され、置換および非置換のアリーレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリーレン基中に存在していてもいなくてもよい)、
(iii)例えば、アリールアルキレン鎖中に約7個から約22個までまたは8個から約20個までの炭素原子など、約6個から約32個までの炭素原子を有するアリールアルキレン基(ただし、アリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、そのアリールアルキレン基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)、あるいは
(iv)例えば、アルキルアリーレン鎖中に約7個から約22個までまたは7個から約20個までの炭素原子など、約6個から約32個までの炭素原子を有するアルキルアリーレン基(ただし、アルキルアリーレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、そのアルキルアリーレン基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)であり、その置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の該置換基は、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、2つ以上の置換基が、結合して環を形成することができる。
【0012】
上記式中、RおよびR’は、それぞれ他とは関係なく、
(a)光開始性の基、例えば、次式の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化3】

【0013】
次式の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基、
【化4】

【0014】
次式の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化5】

【0015】
次式のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基、または同種のもの、
【化6】

【0016】
あるいは
(b)基であって、
(i)例えば、アルキル鎖中に約3個から約60個までまたは約4個から約30個までの炭素原子など、約2個から約100個までの炭素原子を有するアルキル基(線状および分枝した、飽和および不飽和の、環式および非環式の、置換および非置換のアルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキル基中に存在していてもいなくてもよい)、
(ii)例えば、アリール鎖上に約5個から約60個までまたは約6個から約30個までの炭素原子など、約5個から約100個までの炭素原子を有するフェニルなどのアリール基(置換および非置換のアリール基を含み、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリール基中に存在していてもいなくてもよい)、
(iii)例えば、アリールアルキル鎖上に約6個から約60個までまたは約7個から約30個までの炭素原子など、約6個から約100個までの炭素原子を有するベンジルなどのアリールアルキル基(置換および非置換のアリールアルキル基を含み、そのアリールアルキル基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)、あるいは
(iv)例えば、アルキルアリール鎖中に約6個から約60個までまたは約7個から約30個までの炭素原子など、約6個から約100個までの炭素原子を有するトリルなどのアリールアルキル基(置換および非置換のアルキルアリール基を含み、そのアルキルアリール基のアルキル部分は、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン、ホウ素等のヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよい)、その置換アルキル、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の該置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得て、2つ以上の置換基が、結合して環を形成することができる。
【0017】
また、XおよびX’は、それぞれ他とは関係なく、酸素原子または式−NR−の基であり、ただしRは、
(i)水素原子、
(ii)例えば、アルキル鎖中に1個から約60個までまたは1個から約30個までの炭素原子など、1個から約100個までの炭素原子を有する線状および分枝した、飽和および不飽和の、環式および非環式の、置換および非置換のアルキル基を含めた、ヘテロ原子がそのアルキル基中に存在していてもいなくてもよいアルキル基、
(iii)例えば、アリール鎖上に約5個から約60個までまたは約6個から約30個までの炭素原子など、約5個から約100個までの炭素原子を有する置換および非置換のアリール基を含めた、ヘテロ原子がそのアリール基中に存在していてもいなくてもよいアリール基、
(iv)例えば、アリールアルキル基中に約6個から約60個までまたは約7個から約30個までの炭素原子など、約6個から約100個までの炭素原子を有する置換および非置換のアリールアルキル基を含めたそのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、ヘテロ原子がそのアリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよいアリールアルキル基、あるいは
(v)例えば、アルキルアリール鎖中に約6個から約60個までまたは約7個から約30個までの炭素原子など、約6個から約100個までの炭素原子を有する置換および非置換のアルキルアリール基を含めたそのアルキルアリール基のアルキル部分が、線状または分枝状、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもいなくてもよいアリールアルキル基であり、その置換アルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の該置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、それらの混合物などであり得、2つ以上の置換基が、結合して環を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの具体的な適当な置換基およびゲル化剤について以下で述べる。
【0019】
一つの具体的な実施形態において、RとR’は、互いに同じものであり、別の具体的な実施形態において、RとR’は、それぞれ異なるものである。一つの具体的な実施形態において、RとR’は、互いに同じものであり、別の具体的な実施形態において、RとR’は、それぞれ異なるものである。
【0020】
一つの具体的な実施形態において、RとR’は、それぞれ、式−C3456+a−の基であって、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基であり、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、例えば、次式の異性体を含む。
【化7】

【0021】
一つの具体的な実施形態において、Rは、エチレン(-CHCH-)基である。
【0022】
一つの具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化8】

【0023】
別の具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化9】

【0024】
さらに別の具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化10】

【0025】
またさらに別の具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化11】

【0026】
別の具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化12】


上記式中、mは、[O-(CH]の繰り返し単位の数を表す整数であり、1つの具体的な実施形態においては2であり、別の具体的な実施形態においては5である。
【0027】
さらに別の具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式のものである。
【化13】

【0028】
一つの具体的な実施形態において、RおよびR’の少なくとも1つは、次式である。
【化14】

【0029】
実施形態において、該ゲル化剤は、次式のものである。
【化15】


上記式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基であり、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、例えば、次式の異性体を含む。
【0030】
【化16】

【0031】
この式のゲル化剤のさらなる具体例としては、次式
【化17】


であって、上記式中、−C3456+a−が、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、ここで、mは、整数であり、例えば、mが2である実施形態を含み、次式の異性体を含むもの、
【化18】

【0032】
次式
【化19】


であって、上記式中、−C3456+a−が、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、ここで、nは、整数であり、例えば、nが2であり、nが5である実施形態を含み、例えば、次式の異性体を含むもの、
【化20】

【0033】
次式
【化21】


であって、上記式中、−C3456+a−が、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、ここで、pは、整数であり、例えば、pが2であり、pが3である実施形態を含み、例えば、次式の異性体を含むもの、
【化22】

【0034】
次式
【化23】


であって、上記式中、−C3456+a−が、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、ここで、qは、整数であり、例えば、qが2であり、qが3である実施形態を含み、例えば、次式の異性体を含むもの、
【化24】

【0035】
次式
【化25】


であって、上記式中、−C3456+a−が、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、ここで、rは、整数であり、例えば、rが2であり、rが3である実施形態を含み、例えば、次式の異性体を含むものなど、
【化26】


ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
実施形態において、該ゲル化剤は、
【化27】



【化28】


、および
【化29】


の3つのすべての混合物を含む混合物であり、上記式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数である。望ましくは、3つのすべての化合物がゲル化剤として一緒に使用されるとき、該化合物は、最初に掲げたもの:2番目に掲げたもの:3番目に掲げたものについて約1:2:1のモル比で存在する。
【0037】
上の一般式の適当なゲル化剤化合物のさらなる具体的な例としては、次式
【化30】


であって、上記式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、次式の異性体を含むもの、
【化31】

【0038】
次式
【化32】


であって、上記式中、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数であり、次式の異性体を含むもの、
【化33】


ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
実施形態において、本明細書に開示されているいくつかの化合物は、例えば、少なくとも約10センチポアズ、さらなる実施形態においては少なくとも約10センチポアズ、なおさらなる実施形態においては少なくとも約10センチポアズの粘度の変化を、例えば、1つの実施形態では約30℃、別の実施形態では約10℃、さらに別の実施形態では約5℃の温度範囲を通して受け、これらの範囲内で変化を受けない化合物もここでは含まれる。
【0040】
実施形態において、該ゲル化剤は、例えば、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含んでなる複合体ゲル化剤である。適当な複合体ゲル化剤は、同一出願人による米国特許出願第2007/0120921号に記載されている。
【0041】
該複合体ゲル化剤のエポキシ樹脂成分は、任意の適当なエポキシ基含有材料であることができる。実施形態において、該エポキシ基含有成分としては、ジグリシジルエーテルのポリフェノール系エポキシ樹脂またはポリオール系エポキシ樹脂のいずれか、あるいはそれらの混合物が挙げられる。すなわち、実施形態において、該エポキシ樹脂は、分子の末端に位置する2つのエポキシ官能基を有する。実施形態における該ポリフェノール系エポキシ樹脂は、2つを超えないグリシジルエーテル末端基を有するビスフェノールA−co−エピクロロヒドリン樹脂である。該ポリオール系エポキシ樹脂は、2つを超えないグリシジルエーテル末端基を有するジプロピレングリコール−co−エピクロロヒドリン樹脂であり得る。適当なエポキシ樹脂は、約200から約800までの範囲、例えば、約300〜約700などの質量平均分子量を有する。エポキシ樹脂の市販の供給源は、例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Corp.)によるビスフェノールA型エポキシ樹脂、例えばDER383など、またはダウ・ケミカル社によるジプロピレングリコール型樹脂、例えばDER736などである。天然源(natural sources)を起源とするエポキシ系材料のその他の発生源、例えば植物または動物が起源のエポキシ化トリグリセリド脂肪酸エステル、例えば、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ナタネ油など、またはそれらの混合物を使用してもよい。植物油に由来するエポキシ化合物、例えば、ペンシルバニア州フィラデルフィアのアルケマ社(Arkema Inc.)によるVIKOFLEX製造品目なども使用することができる。該エポキシ樹脂成分は、したがって、不飽和カルボン酸またはその他の不飽和反応物との化学反応によって、アクリレートまたは(メタ)アクリレート((meth)acrylate)、ビニルエーテル、アリルエーテルなどを有する官能化がなされる。例えば、該樹脂の末端エポキシ基は、この化学反応において開環され、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリレートエステルに転化される。
【0042】
エポキシ−ポリアミド複合体ゲル化剤のポリアミド成分として、任意の適当なポリアミド材料を使用することができる。実施形態において、該ポリアミドは、重合脂肪酸、例えば、天然源(例えば、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油などで、それらの混合物を含む)から得られたものまたはオレイン酸、リノール酸等のようなC−18不飽和酸原料を二量体化して調製される一般に知られている炭化水素「ダイマー酸」などと、ポリアミン(例えば、エチレンジアミン等のアルキレンジアミン、DYTEK(登録商標)シリーズのジアミン、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミンなどのジアミンなど)とから生じるポリアミド樹脂、あるいはポリエステル−ポリアミドおよびポリエーテル−ポリアミド等のポリアミドのコポリマーも含むものである。1つ以上のポリアミド樹脂を該ゲル化剤の形成において使用することができる。市販のポリアミド樹脂の供給源としては、例えば、コグニス社(Cognis Corporation)(以前のヘンケル社(Henkel Corp.))から入手できるVERSAMIDシリーズのポリアミド、特に、VERSAMID335、VERSAMID338、VERSAMID795およびVERSAMID963が挙げられ、そのすべてが低い分子量および低いアミン価を有する。アリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical Company)によるSYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂およびポリエーテル−ポリアミド樹脂を含むその変形を採用してもよい。アリゾナ・ケミカル社から得られるSYLVAGEL(登録商標)樹脂の組成は、次に示す一般式を有するポリアルキレンオキシジアミンポリアミドとして説明されている。
【0043】
【化34】


上記式中、Rは、少なくとも17個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、ポリアルキレンオキシドを含み、Rは、C−6炭素環基であり、nは、少なくとも1の整数である。
【0044】
該ゲル化剤は、また、例えば、同一出願人による米国特許出願第2007/0120924号に開示されているように、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分とポリアミド成分とを含むことができる。その硬化性ポリアミド−エポキシアクリレートは、少なくとも1つの官能基をその中に含めているおかげで硬化性である。一例として、該ポリアミド−エポキシアクリレートは、二官能性である。その官能基(複数可)、例えばアクリレート基(複数可)などは、フリーラジカル開始を介して放射線硬化が可能であり、該ゲル化剤の硬化したインクビヒクルへの化学結合を可能にする。市販されているポリアミド−エポキシアクリレートは、コグニス社からのPHOTOMER(登録商標)RM370である。その硬化性のポリアミド−エポキシアクリレートは、また、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含んでなる硬化性複合体ゲル化剤について上で説明した構造の範囲内から選択することもできる。
【0045】
着色したおよび無色の組成物は、任意の適当な量、例えば該組成物の質量に対して約1%から約50%までなど、のゲル化剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、該ゲル化剤は、該組成物の質量に対して約10%から約40%まで、例えば該組成物の質量に対して約15%から約35%までまたは約20%から約30%までの量で存在させることができる。いくつかの実施形態において、該ゲル化剤は、該組成物の質量に対して約2%から約20%まで、例えば該組成物の質量に対して約3%から約10%までまたは約5%から約10%まで、同様に、該組成物の質量に対して約11%から約19%までまたは約15%から約19%までの量で存在させることができる。他の実施形態において、該ゲル化剤は、該組成物の質量に対して約20%から約50%まで、例えば該組成物の質量に対して約25%から約45%までまたは約35%から約45%までの量で存在させることができる。その値は、上記の範囲の外でもあり得る。
【0046】
実施形態において、着色したおよび無色の組成物は、カチオン性部分が、例えば、エポキシド、ビニルエーテルまたはオキセタン基である少なくとも1つのカチオン重合性部分を含むモノマーである少なくとも1つのカチオン硬化性モノマーを含む。用語の「硬化性モノマー」は、該組成物中で同様に使用することができる硬化性オリゴマーを含むことも意図している。カチオン硬化性モノマーとしては、カチオン硬化性ワックスモノマーが挙げられる。
【0047】
実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の残りのものの存在中で硬化することによって最適なレオロジーを提供するように選択することができる。これに関して、該カチオン硬化性モノマーは、例えば、エポキシド、ビニルエーテルまたはオキセタンであることができる。いくつかの実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、エポキシドおよびビニルエーテルから選択される。該カチオン硬化性モノマーは、望ましいレオロジーおよび画像特性を得るために、一官能、二官能および/または多官能であるように選択することができる。
【0048】
適当なモノマーのうちで、以下のものを具体的に特定することができる:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロキサンカルボキシレート、ヘキサン二酸、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]エステル、ビス[4−(エテニルオキシ)ブチル]アジペート、1,3−ベンゼンジカルボン酸、ビス[4−(エテニルオキシ)ブチル]エステル、4−(ビニルオキシ)ブチルステアレート、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシメチルベンゾエート、ビニルオクタデシルエーテル、ビニルイソオクチルエーテル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリス[4−(エテニルオキシ)ブチル]エステル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、および1,2−エポキシヘキサデカン。
【0049】
実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約65%から約96%までであり得る。他の実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約20%から約48%までであり得て、該組成物は、さらに、少なくとも1つのラジカル重合性モノマーを該組成物の質量に対して約20%から約48%までの量で含む。該組成物がカチオン硬化性およびラジカル硬化性モノマーの両方を含むいくつかの実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約20%から約34%まで、例えば該組成物の質量に対して約20%から約27%までまたは約28%から約34%までなど、であり得る。その他の実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約24%から約31%までであり得る。該組成物がカチオン硬化性およびラジカル硬化性モノマーの両方を含むいくつかの実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約35%から約48%まで、例えば該組成物の質量に対して約35%から約41%までまたは約42%から約48%までなど、であり得る。その他の実施形態において、該カチオン硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約38%から約45%までであり得る。該組成物がカチオン硬化性およびラジカル硬化性モノマーの両方を含むいくつかの実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約20%から約34%まで、例えば該組成物の質量に対して約20%から約27%までまたは約28%から約34%までなど、であり得る。その他の実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約24%から約31%までであり得る。該組成物がカチオン硬化性およびラジカル硬化性モノマーの両方を含むいくつかの実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約35%から約48%まで、例えば該組成物の質量に対して約35%から約41%までまたは約42%から約48%までなど、であり得る。その他の実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約38%から約45%までであり得る。
【0050】
着色したおよび無色の組成物、例えば、インクおよび保護膜組成物などは、それぞれ、ある波長の放射線を吸収し、その結果反応の触媒作用をする少なくとも1つのカチオン性光開始剤を含む。これに関しては、任意の適当なカチオン性光開始剤を制限なく使用することができる。カチオン重合のために使用することができる光開始剤は多数が存在する。最も普通に使用されるカチオン性光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩およびジアリールヨードニウム塩であり、その多くが市販されている。その他のよく似たタイプの光開始剤としては、アリールジアゾニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、トリアリールスルホキソニウム塩、アリールオキシジアリールスルホキソニウム塩(aryloxydiarylsulphonoxonium salts)、およびジアルキルフェナシルスルホキソニウム塩が挙げられる。その塩は、BF、PF、AsF、SbF、CFSOなどのイオンと共に形成される。置換は、該開始剤の非極性媒体中での溶解性を増すために、多くの場合アリール基に導入される。言及することができる光開始剤のその他の具体例としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−ジ(2−ヒドロキシエチルフェニル)スルホニオ−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ−フェニル]スルフィドビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−(4−(2−メチルプロピル)フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−ブルモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、およびR−gen(登録商標)BF−1172(台湾のキテック・ケミカル社(Chitec Chemical Co., Ltd.)から入手)が挙げられる。
【0051】
該カチオン性光開始剤は、該組成物の質量に対して約20%以下の量で使用することができる。いくつかの実施形態において、該カチオン性光開始剤は、該組成物の質量に対して約0.5%から約10%までである。該カチオン性光開始剤は、噴射後有効性を失うことおよび/または高められた噴射温度で反応が早過ぎることのないように、少なくとも該組成物の噴射温度までは安定していなければならない。
【0052】
該組成物をカチオン硬化させるための放射線は、例えば、キセノンランプ、レーザー光、マイクロ波励起Vバルブ、DバルブまたはHバルブなどからのライトパイプを介して伝送されたフィルター処理した光などを使用する技術が挙げられるがこれらに限定はされないさまざまな技術のどれかによって提供することができる。該硬化光は、望ましいかまたは必要な場合はフィルターにかけることができる。
【0053】
画像受容基材に転写した後のインクの硬化は、実質的に完全ないし完全であり得て、すなわち、カチオン硬化性モノマーの少なくとも75%が硬化している(反応および/または架橋している)。これにより、該組成物は十分に硬化され、それによって従来の修正されていないワックス系インクをはるかに上回るスクラッチ耐性が可能となる。
【0054】
着色したおよび無色の組成物、例えば、インクおよび保護膜組成物などは、それぞれ、場合によって、少なくとも1つのラジカル硬化性モノマーを含む。該組成物のそのラジカル硬化性モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(サートマー社(Sartomer)製のSR−9003など)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、それらの混合物などが挙げられる。
【0055】
ここで、用語の「硬化性モノマー」は、該組成物中で同様に使用することができる硬化性オリゴマーを含むことも意図している。該組成物中で使用することができる適当なラジカル硬化性オリゴマーの例は、例えば、約50cPsから約10,000cPsまで、例えば、約75cPsから約7,500cPsまで、または約100cPsから約5,000cPsまでなどの低粘度を有する。そのようなオリゴマーの例としては、ペンシルバニア州エクセターのサートマー社(Sartomer Company, Inc.,)から入手できる、CN549、CN131、CN131B、CN2285、CN3100、CN3105、CN132、CN133、CN132、Cytec Industries Inc、Smyrna、GAから入手できる、Ebecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212、オハイオ州シンシナティのコグニス社(Cognis Corporation)から入手できる、PHOTOMER 3660、PHOTOMER 5006F、PHOTOMER 5429、PHOTOMER 5429F、ニュージャージー州フローハムパークのビーエーエスエフ社(BASF Corporation)から入手できる、LAROMER PO 33F、LAROMER PO 43F、LAROMER PO 94F、LAROMER UO 35D、LAROMER PA 9039V、LAROMER PO 9026V、LAROMER 8996、LAROMER 8765、LAROMER 8986、などを挙げることができる。
【0056】
実施形態において、ラジカル硬化性モノマーとしては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(サートマー社製のSR−9003など)およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製のSR−399LVなど)の両方を含むことができる。そのペンタアクリレートを含めるのは、ジアクリレートと比較して、より多い官能性を、したがって、より大きい反応性を与える利点がある。しかしながら、そのペンタアクリレートの量は、多過ぎると、塗布温度での該組成物の粘度に悪影響を及ぼす可能性があるためにその組成物中で制限する必要がある。ペンタアクリレートは、したがって、該組成物の10質量%以下、例えば該組成物の0.5〜5質量%等となるように調合する。
【0057】
該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物中に、例えば、該組成物の質量に対して約20%から約48%までの量で含めることができる。いくつかの実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約20%から約34%まで、例えば、該組成物の質量に対して約20%から約27%までまたは約28%から約34%までであり得る。他の実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約24%から約31%までであり得る。いくつかの実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約35%から約48%まで、例えば、該組成物の質量に対して約35%から約41%までまたは約42%から約48%までであり得る。他の実施形態において、該ラジカル硬化性モノマーは、該組成物の質量に対して約38%から約45%までであり得る。
【0058】
該着色したおよび無色の組成物、例えば、インクおよび保護膜組成物などは、それぞれ、さらに場合によって、ある波長の放射線を吸収し、その結果反応の触媒作用をする少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む。そのような組成物で使用するのに適するフリーラジカル光開始剤の例は、アクリレート基および/またはアミド基を含み、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、および、チバ社(Ciba)からイルガキュア(IRGACURE)およびダロキュア(DAROCUR)の商品の呼称で販売されているアシルホスフィン光開始剤が挙げられる。適当なフリーラジカル光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPOとして入手可能)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPO−Lとして入手可能)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(Ciba IRGACURE 819として入手可能)およびその他のアシルホスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホルリニル)−1−プロパノン(Ciba IRGACURE 907として入手可能)および1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 2959として入手可能)、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 127として入手可能)、チタノセン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
アミン相乗剤、すなわち、水素原子をフリーラジカル光開始剤に供与し、それによって重合を開始するラジカル種を形成する共開始剤(アミン相乗剤は、また該配合物中に溶解している酸素を消費することができ、酸素はフリーラジカル重合を阻害するのでその消費は重合の速度を高める)、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノ−ベンゾエートなども含めることもできる。
【0060】
実施形態において、該光開始剤パッケージは、少なくとも1つのα−ヒドロキシケトン光開始剤および少なくとも1つのホスフィノイル型の光開始剤(複数可)を含むことができる。α−ヒドロキシケトン光開始剤の一例はIRGACURE 127であり、一方ホスフィノイルタイプの光開始剤の一例は、IRGACURE 819であり、両方ともニューヨーク州タリータウンのチバ−ガイギー社(Ciba-Geigy Corp.,)から入手できる。α−ヒドロキシケトン光開始剤対ホスフィノイルタイプの光開始剤の比率は、例えば、約90:10から約10:90まで、例えば、約80:20から約20:80まで、または約70:30から約30:70までなどであり得る。
【0061】
該組成物中に含まれるフリーラジカル光開始剤の合計量は、例えば、該組成物の質量に対して、約0から約10%まで、例えば、約0.5から約5%までであり得る。実施形態において、該組成物は、例えば、電子線をフリーラジカル硬化のための硬化エネルギー源として使用する場合にはフリーラジカル光開始剤を含まなくてもよい。
【0062】
該組成物をフリーラジカル硬化させるための放射線は、例えば、キセノンランプ、レーザー光、マイクロ波励起Vバルブ、DバルブまたはHバルブなどからのライトパイプを介して伝送されたフィルター処理した光などを使用する技術が挙げられるがこれらに限定はされないさまざまな技術のどれかによって提供することができる。該硬化光は、望ましいかまたは必要な場合はフィルターにかけることができる。
【0063】
該組成物は、少なくとも1つの硬化性ワックスも含むことができる。ワックスは、室温で、具体的には25℃で固体である。そのワックスの包含は、したがって、該組成物の、それが塗布温度から冷えるときの粘度の上昇を促進することができる。したがって、該ワックスも、該ゲル化剤が、該組成物が基材を通ってにじむのを回避させることに関与することができる。
【0064】
該硬化性ワックスは、その他の成分と混和でき、ポリマーを形成する硬化性モノマーと重合する任意のワックス成分であり得る。該用語ワックスは、例えば、通常ワックスと称される、さまざまな、天然の、変性させた天然の、および合成材料のいずれをも含む。
【0065】
硬化性ワックスの適当な例としては、硬化性の基を含むかまたは硬化性の基により官能化されているそのようなワックスが挙げられる。その硬化性の基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどを挙げることができる。これらのワックスは、カルボン酸またはヒドロキシル等の転換できる官能基を備えているワックスの反応によって合成することができる。本明細書に記載の該硬化性ワックスは、開示されているモノマー(複数可)と共に硬化することができる。
【0066】
硬化性の基により官能化することができるヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、構造CH−(CH−CHOHを有し、鎖長nの混合物が存在し、その平均鎖長が約16〜約50の範囲内であり、類似の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンであることができる炭素鎖の混合物が挙げられるが、それらに限定はされない。2,2−ジアルキル−1-エタノールとして特徴づけられるガーベットアルコールも適切な化合物である。典型的なガーベットアルコールとしては、約16〜約36個の炭素を含有するものが挙げられる。これらのアルコールは、紫外線硬化性部分を備えているカルボン酸と反応させて反応性エステルを形成することができる。
【0067】
硬化性の基により官能化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、構造CH−(CH−COOHを有し、鎖長nの混合物が存在し、その平均鎖長が約16〜約50であり、類似の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンであることができる炭素鎖の混合物が挙げられる。2,2−ジアルキルエタノール酸として特徴づけられるガーベット酸も適切な化合物である。典型的なガーベット酸としては、約16〜約36個の炭素を含有するものが挙げられる。これらのカルボン酸は、紫外線硬化性部分を備えているアルコールと反応させて反応性エステルを形成することができる。
【0068】
該硬化性ワックスは、該組成物中に、例えば、該組成物の質量に対して、約0.1%から約30%まで、例えば、該組成物の質量に対して、約0.5%から約20%まで、または、約0.5%から約15%までの量で含ませることができる。
【0069】
該着色したおよび無色の組成物は、場合によって抗酸化作用のある安定剤も含むことができる。
【0070】
該着色したおよび無色の組成物は、通常の添加剤、例えば、消泡剤、界面活性剤、スリップ剤およびレベリング剤等をさらに場合によって含むことができる。
【0071】
該着色したおよび無色の組成物は、硬化と同時に黄変することがなく、L値またはk,c,m,yにおける測定可能な差が殆んど見られないことが望ましい。「実質的に黄変しない」とは、該組成物が、硬化と同時に変化する色または色相の量が、約15%未満、例えば、約10%未満または約5%未満、例えば約0%であることを指す。
【0072】
相変化インク等の着色した組成物は、少なくとも1つの着色剤を含む。染料、顔料、それらの混合物などを含めた任意の望ましいまたは効果的な着色剤を、その着色剤が該インク担体(ink carrier)に溶解または分散可能であることを条件として使用することができる。任意の染料または顔料を、それが該インク担体に分散または溶解可能であることおよびその他のインク成分と相溶性があることを条件として選択することができる。相変化担体組成物を通常の相変化インク着色剤材料と組み合わせて使用することができる。
【0073】
顔料もまた該相変化インクに対する適切な着色剤である。
【0074】
実施形態において、本明細書に記載の該組成物は、該組成物成分を、約75℃から約120℃まで、例えば約80℃から約110℃までまたは約75℃から約100℃まで等の温度で、均一になるまで、例えば、約0.1時間から約3時間、例えば約2時間にわたって混合することによって調製することができる。一旦該混合物が均一になったら、そのとき任意の光開始剤を添加することができる。別法では、該組成物のすべての成分を直接混ぜ合わせ一緒に混合することができる。
【0075】
インク組成物中の該アミドゲル化剤およびカチオン硬化性モノマー(およびハイブリッドインク組成物においては該ラジカル硬化性モノマー)は、インク組成物を硬化前に基材に固定する急速な熱的に促進される相変化を引き起こすことに関与し、その基材(例えば普通紙)に見られるショースルーの量を効果的に制限する。これらの成分は、また、コート紙、ホイル、およびプラスチックを含めた大きな基材の自由度をインク組成物に与える。着色剤が存在しない場合、これらの同じ相変化系は、デジタル的に塗布される保護膜が印刷された画像によって被覆されていない基材の領域中に浸み込むことを防ぐために使用することができる。
【0076】
カチオン硬化は、少なくともラジカル硬化単独よりも、ラジカル硬化を超える利点を示し、例えば、着色したまたは無色の組成物に、増加した熱安定性、酸素に対する低い感度、低収縮ならびにダークキュアおよび/またはシャドーキュアのいずれをも提供する。ダークキュアとは、照射を中断した後も重合を継続する現象を指す。それは、カチオン硬化が光酸(photoacid)によって開始され、それ故、ラジカルのように停止反応を受けることがないという事実によって可能となる。シャドーキュアとは、活発な硬化の中心が照射を中断した後も移動し、その過程において、放射線に露光されなかった領域における重合の進行が続く現象を指す。ダークキュアリングおよびシャドーキュアリングは両方とも、ダークキュアリングおよび/またはシャドーキュアリングを示さない系を超える重合度の増加に対する可能性を提供する。特に、ダークキュアリングおよびシャドーキュアリングは両方とも、光子が粒子によって反射され、散乱されおよび/または吸収されてそれらが該組成物全体に浸透することを阻止する顔料着色した系における重合度の増加に対する可能性を提供する。ハイブリッド硬化性インクは、カチオン重合経路のダークおよび/またはシャドー硬化特性と組み合わされたラジカル硬化のスピードを提供する。
【0077】
本開示を次の実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0078】
3つの紫外線(UV)硬化性無色組成物(配合物1(カチオン性)、配合物2(カチオン性)、および配合物3(ハイブリッド))を、すべて表1に示されている各成分を90℃で混合することによって調製した。
【0079】
【表1】

【0080】
配合物1、2および3は、室温ですべてゲルであり、アミドゲル化剤が上記モノマーと一体になってゲルを形成できることを示した。少量の配合物1、2および3を、スパチュラによりスライドガラスに塗布し、UV Fusion Lighthammer 6の装置の32fpm(1分当りフィート数)からの紫外光に露光したとき、全部が硬化する(ポリマーを形成する)ことが観察された。配合物1、2および3は、相変化インクを形成するための着色剤に対するインク担体として多分適切であり、すべてが、さらなる成分の添加を含むかまたは含まない保護膜組成物として適切であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤と、
カチオン硬化性モノマーと、
カチオン性光開始剤と、
場合によって、
ラジカル硬化性モノマーと、フリーラジカル光開始剤と、
を含むことを特徴とする放射線硬化性相変化組成物。

【公開番号】特開2010−222583(P2010−222583A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66778(P2010−66778)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】