説明

カチオン化多糖製品

本発明は芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含むカチオン化多糖製品に関する。更に、本発明は芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する一種以上の多糖及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する一種以上の多糖を含むカチオン化多糖製品に関する。また、本発明は一種以上の多糖を少なくとも一種の芳香族剤及び少なくとも一種の非芳香族剤と反応させることを含むカチオン化多糖製品の調製方法に関する。更に、本発明は第一多糖を少なくとも一種の芳香族剤と反応させ、第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族剤と反応させ、次いで得られた多糖を混合することを含むカチオン化多糖製品の調製方法に関する。更に、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、その懸濁液に(i)芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基、及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含むカチオン化多糖製品を添加し、ワイヤ上で懸濁液を生成し、脱水することを含む、紙の製造方法に関する。また、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、その懸濁液に(i)芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖を含むカチオン化多糖製品((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方はカチオン性かつ/又は両性である)を添加し、ワイヤ上で懸濁液を生成し、脱水することを含む、紙の製造方法に関する。更に、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、その懸濁液に(i)芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方はカチオン性かつ/又は両性である)を別々に添加し、ワイヤ上で懸濁液を生成し、脱水することを含む、紙の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族基を有する一つ以上の置換基及び芳香族基を有しない一つ以上の置換基を有する、カチオン化多糖製品、カチオン化多糖製品の調製方法、カチオン化多糖製品の使用及びカチオン化多糖製品が水性セルロース懸濁液への添加剤として使用される製紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙技術では、セルロース繊維、及び任意のてん料並びに添加剤を含む水性懸濁液(紙料と称される)が紙料をフォーミングワイヤに排出するヘッドボックスに供給される。水がフォーミングワイヤにより紙料から脱水され、その結果、紙の湿潤ウェブがワイヤ上に形成され、ウェブが抄紙機の乾燥部分で更に脱水され、乾燥される。脱水兼歩留り助剤が抄紙方法で広く使用され、このような助剤の例はカチオン澱粉及びカチオン性グアーガムのようなカチオン性多糖及び両性多糖である。このような多糖は単独で、又はその他のポリマー及び/又はアニオン性微粒状材料、例えば、コロイドシリカのようなアニオン性無機粒子と組み合わせて使用し得る。カチオン性多糖及び両性多糖はまた乾燥紙強度増強剤として広く使用される。
【0003】
国際特許出願WO 99/55964は製紙における添加剤及び製造された紙のための乾燥強度増強剤としての使用のための疎水性基を有するカチオン性又は両性多糖を開示している。
【0004】
米国特許第4,388,150号、同第4,755,259号、同第4,961,825号、同第5,127,994号、同第5,643,414号、同第5,447,604号、同第5,277,764号、同第5,607,552号、同第5,603,805号、及び同第5,858,174号、並びに欧州特許第500,770号は製紙における紙料添加剤としてのカチオン性多糖及び/又は両性多糖及びアニオン性無機粒子の使用を開示している。
【0005】
前記カチオン化多糖のカチオン性基は多糖と四級化剤の反応により得られる。このような薬剤を使用するカチオン化方法の例が米国特許第2,876,217号、同第3,422,087号、同第4,785,087号、同第5,827,372号並びに欧州特許第303,039号、同第400,361号、同第737,210号及び同第874,000号により知られている。
【0006】
改良された性能を有する脱水兼歩留り助剤を提供することができることは有利であろう。また、改良された脱水性能及び/又は歩留り性能を有する製紙方法を提供することができることは有利であろう。更に、改良された乾燥紙強度増強特性を有する紙を製造することができることは有利であろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を含むカチオン化多糖製品が一般に提供される。また、芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を含むカチオン化多糖製品であって、その多糖が10:1から1:10までの範囲内の第一置換基対第二置換基のモル比を有することを特徴とするカチオン化多糖製品が提供される。また、芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する一種以上の多糖及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する一種以上の多糖を含むことを特徴とするカチオン化多糖製品が提供される。更に、芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を含むカチオン化多糖製品であって、多糖が0.0005から2.0までの範囲内の芳香族置換度(DSAr)及び0.0005から2.0までの範囲内の非芳香族置換度(DSnon-Ar)を有することを特徴とするカチオン化多糖製品が提供される。また、一種以上の多糖を少なくとも一種の第一芳香族薬剤及び少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させることにより得られるカチオン化多糖製品であって、第一芳香族薬剤及び第二非芳香族薬剤が10:1から1:10までの範囲内のモル比で反応させられることを特徴とするカチオン化多糖製品が提供される。また、第一多糖を少なくとも一種の第一芳香族薬剤と反応させ、第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させ、得られた多糖を混合することにより得られるカチオン化多糖製品が提供される。
【0008】
また、本発明は一般に一種以上の多糖を少なくとも一種の芳香族薬剤及び少なくとも一種の非芳香族薬剤と反応させることを特徴とするカチオン化多糖製品の調製方法に関する。更に、本発明は一種以上の多糖を少なくとも一種の第一芳香族薬剤及び少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させることを含むカチオン化多糖製品の調製方法であって、該第一芳香族薬剤及び第二非芳香族薬剤を10:1から1:10までの範囲内のモル比で反応させることを特徴とするカチオン化多糖製品の調製方法に関する。更に、本発明は第一多糖を少なくとも一種の芳香族薬剤と反応させ、第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させ、次いで得られた多糖を混合することを特徴とするカチオン化多糖製品の調製方法に関する。
【0009】
更に、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基、及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含むカチオン化多糖製品を懸濁液に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法に関する。また、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方がカチオン性かつ/又は両性である)を含むカチオン化多糖製品を懸濁液に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法に関する。更に、本発明はセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び(ii)芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方がカチオン性かつ/又は両性である)を懸濁液に別々に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のカチオン化多糖製品は製造された紙の乾燥強度増強特性を改良することが予期せずにわかった。また、本発明のカチオン化多糖製品は製紙方法でセルロース懸濁液への添加剤として使用される場合に脱水及び/又は歩留まりを改良することがわかった。
【0011】
本発明のカチオン化多糖製品は好適には水分散性又は、好ましくは、水溶性である。該カチオン化多糖製品は同じ型又は異なる型の一種以上の多糖を含み得る。このような多糖は当業界で知られている多糖、例えば、澱粉、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくは澱粉及びガム、並びにこれらの混合物のいずれからも誘導し得る。好適な澱粉の例として、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカ、米、ワックス状トウモロコシ等、好ましくはジャガイモ及びトウモロコシが挙げられる。好適なガムの例はグアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラヤ、オクラ、アカシア、キサンタンガム等、好ましくはグアーガムである。
【0012】
前記カチオン化多糖製品はカチオン性かつ/又は両性である一種以上の多糖、即ち、一つ以上のカチオン性基を有する多糖を含む。好適なカチオン性基の例として、スルホニウム基、ホスホニウム基、三級アミノ基及び四級アンモニウム基、好ましくは四級アンモニウム基が挙げられる。このような多糖はまた一つ以上のアニオン性基を含んでもよい。好適なアニオン性基の例として、ホスフェート基、ホスホネート基、スルフェート基、スルホネート基及びカルボン酸基、好ましくはホスフェート基及びスルホネート基が挙げられる。前記多糖はまた一つ以上のノニオン性基を含んでもよい。存在する場合、アニオン性基は天然であってもよく、又は通常の様式で化学処理により導入し得る。天然ジャガイモ澱粉はかなりの量の共有結合されたホスフェートモノエステル基を含む。両性多糖では、カチオン性基が支配的な量で存在することが好ましい。
【0013】
本発明のカチオン化多糖製品は一つ以上の置換基を有する一種以上の多糖を含む。本明細書に使用される“置換基”という用語は天然多糖中に存在しないが、通常化学処理により導入された原子の基を意味する。このような置換基は本明細書に記載された薬剤から誘導されることが好ましく、置換基は多糖を薬剤と反応させることにより形成される。本明細書に使用される“第一置換基”という用語は芳香族基を有する置換基を意味し、また“第二置換基”という用語は芳香族基を有しない非芳香族置換基を意味する。これらの置換基は多糖中に存在するヘテロ原子、例えば、酸素又は窒素に結合し得る。酸素又は窒素の如きヘテロ原子はまた置換基中に存在し得る。好ましい実施態様において、第一置換基はヘテロ原子、好ましくは窒素原子を含む。別の好ましい実施態様において、第二置換基はヘテロ原子、好ましくは窒素原子を含む。第一置換基及び第二置換基のヘテロ原子は荷電でき、例えば、それが窒素である場合には、アンモニウムイオンに荷電でき、又は部分的に荷電でき、例えば、プロトン化によりカチオン性にし得るアミン基中に存在する窒素が部分的に荷電でき、又はアミド基、エステル基もしくはエーテル基中に存在するヘテロ原子は荷電されない。置換基のヘテロ原子は、例えば、原子の鎖を介して多糖に結合し得る。本発明の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は二つ以上の置換基、少なくとも一つの第一置換基及び少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含む。
【0014】
芳香族基を有する第一置換基では、芳香族基がアリール基及びアラルキル基、例えば、フェニル、フェニレン、ナフチル、フェニレン、キシレン、ベンジル及びフェニルエチル;窒素含有芳香族(アリール)基、例えば、ピリジニウム及びキノリニウムだけでなく、これらの基の誘導体(前記芳香族基に結合された一つ以上の置換基がヒドロキシル、ハライド、例えば、クロリド、ニトロ、及び1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基から選ばれる)から選ばれる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、芳香族基を有する第一置換基は下記の一般構造式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、AはNを多糖に結合する基、好適にはC原子及びH原子、及び必要によりO原子及び/又はN原子を含む原子の鎖、通常2〜18個、好適には2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基(必要により1個以上のヘテロ原子、例えば、O又はNにより中断又は置換されてもよい)、例えば、アルキレンオキシ基又はヒドロキシプロピレン基(-CH2-CH(OH)-CH2-)であり、R1及びR2は個々にH又は、好ましくは、炭化水素基、好適には1〜3個、好ましくは1個又は2個の炭素原子を有するアルキルであり、RArは少なくとも1〜18個の炭素原子、好適には1〜15個、好ましくは1〜12個の炭素原子を含む芳香族基、好ましくはアラルキル基、例えば、ベンジル基及びフェニルエチル基であり、又はR1、R2及びRArはNと一緒になって環状芳香族基(好適には5〜12個の炭素原子を有する)を形成し、かつX-はアニオン性対イオン、通常塩化物イオンのようなハロゲン化物イオンである)
を有する。芳香族基を有する第一置換基は-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)2)CH2C6H5Cl-であることが好ましい。
【0018】
芳香族基を有しない第二置換基では、置換基が脂肪族基及び脂環式基から選ばれる。好適な脂肪族基及び脂環式基の例として、メチル、エチル、プロピル、例えば、n-プロピル及びイソ-プロピル、ブチル、例えば、n-ブチル、イソ-ブチル及びt-ブチル、ペンチル、例えば、n-ペンチル、ネオ-ペンチル及びイソ-ペンチル、ヘキシル、例えば、n-ヘキシル及びシクロヘキシル、オクチル、例えば、n-オクチル、デシル、例えば、n-デシル、ドデシル、例えば、n-ドデシル、テトラデシル及びオクタデシルのような線状、分岐及び環状のアルキル基が挙げられる。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、芳香族基を有しない第二置換基は下記の一般構造式(II):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、BはNを多糖に結合する基、好適にはC原子及びH原子、及び必要によりO原子及び/又はN原子を含む原子の鎖、通常2〜18個、好適には2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基(必要により1個以上のヘテロ原子、例えば、O又はNにより中断又は置換されてもよい)、例えば、アルキレンオキシ基又はヒドロキシプロピレン基(-CH2-CH(OH)-CH2-)であり、R3及びR4は個々にH又は、好ましくは、炭化水素基、好適には1〜3個、好ましくは1個又は2個の炭素原子を有するアルキルであり、Rnon-Arは少なくとも1〜18個の炭素原子、好適には1〜15個、好ましくは1〜12個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を含む非芳香族基であり、その基は好適には先に定義されたとおりであり、又は、R3及びR4は、必要によりRnon-Arと一緒に、Nと一緒になって好適には5〜12個の炭素原子を有する、環式基を形成し、かつX-はアニオン性対イオン、通常塩化物イオンのようなハロゲン化物イオンである)を有する。芳香族基を有しない第二置換基は-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)3)Cl-であることが好ましい。
【0022】
本発明の特に好適な多糖製品は一般構造式(III):
【0023】
【化3】

【0024】
により表される芳香族基を有する少なくとも一つの置換基及び
一般構造式(IV):
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、Pは多糖の残基であり、A、B、R1、R2、R3、R4、RAr、Rnon-Ar及びXは先に定義されたとおりであり、n及びmは個々に約1から約1,200,000まで、好適には5から600,000まで、好ましくは6から300,000までの整数である)
により表される芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含む。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は、例えば、上記されたように、少なくとも一つのカチオン性第一置換基及び少なくとも一つのカチオン性第二置換基を有する多糖を含む。別の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は、例えば、上記されたような、少なくとも一つのカチオン性第一置換基を有する第一多糖、及び、例えば、上記されたような、少なくとも一つのカチオン性第二置換基を有する第二多糖を含む。第一多糖及び第二多糖は先に定義された多糖のいずれかから選ばれる。
【0028】
本発明のカチオン化多糖製品は10:1から1:10まで、通常7:1から1:7まで、好適には5:1から1:5まで、好ましくは3:1から1:3まで、最も好ましくは2:1から1:2までであってもよい第一置換基対第二置換基のモル比を有する。
【0029】
カチオン化多糖製品は広範囲にわたって変化する置換度を有し得る。カチオン置換度(DSc)は0.005から2.0まで、好適には0.01から1.0まで、好ましくは0.02から0.5までであってもよい。芳香族置換度(DSAr)は0.0005から2.0まで、通常0.001から1.0まで、好適には0.005から0.5まで、好ましくは0.01から0.5までであってもよい。非芳香族置換度(DSnon-Ar)は0.0005から2.0まで、通常0.001から1.0まで、好適には0.005から0.5まで、好ましくは0.01から0.5までであってもよく、またアニオン置換度(DSA)は0から2.0まで、好適には0から1.0まで、好ましくは0から0.5までであってもよい。通常、カチオン化多糖製品の電荷密度は乾燥多糖1g当り0.01〜6.0meq、好適には0.02〜5.0meq、好ましくは0.05〜4.0meqの範囲内である。
【0030】
カチオン化多糖製品は本発明の一種以上の多糖からなってもよく、又は実質的にそれからなってもよい。カチオン化多糖製品は液体、通常水を通常含み、それは通常水性カチオン化多糖製品である。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は粉末の形態である。粉末は多糖製品の合計重量を基準として30重量%以下、好ましくは25重量%以下、最も好ましくは20重量%以下の水相を含んでもよい。
【0032】
本発明の別の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は水性スラリーの形態である。水性スラリー中の多糖の乾燥含量は多糖製品の合計重量を基準として、10〜55重量%、好適には20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%の範囲内であってもよい。
【0033】
本発明の更に別の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は水溶液の形態である。水溶液中のカチオン化多糖製品の乾燥含量は乾燥多糖製品の合計重量を基準として、10〜50重量%、好適には15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲内であってもよい。
【0034】
本発明はまたカチオン化多糖製品の調製方法及びその方法により得られるカチオン化多糖製品に関する。変性にかけられる多糖はノニオン性、アニオン性、両性又はカチオン性であってもよく、多糖が芳香族薬剤及び/又は非芳香族薬剤(これらはノニオン性、カチオン性又はアニオン性であってもよい)と反応させられる。前記多糖は、例えば、澱粉、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくは澱粉及びガム、並びにこれらの混合物を含む当業界で知られている多糖のいずれかから選ばれる。好適な澱粉の例として、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカ、米、ワックス状トウモロコシ等、好ましくはジャガイモ及びトウモロコシが挙げられる。好適なガムの例はグアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラヤ、オクラ、アカシア、キサンタンガム等、好ましくはグアーガムである。ノニオン性薬剤及びカチオン性薬剤はハロヒドリン、エピハロヒドリン及びエピクロロヒドリンと二級又は三級アミンとの反応により得られた反応生成物であってもよい。カチオン性薬剤はまた四級薬剤を含み得る。アニオン性薬剤はホスフェート基、ホスホネート基、スルフェート基、スルホネート基又はカルボン酸基を含む芳香族薬剤又は非芳香族薬剤を含む。芳香族薬剤は一種以上の多糖と反応させられ、その後に多糖が少なくとも2種の多糖の場合に同時、逆の順序又は別々に非芳香族薬剤と反応させられる。少なくとも2種の多糖の別々の反応の場合、少なくとも一種の多糖が芳香族薬剤と反応させられ、少なくとも一種の多糖が非芳香族薬剤と反応させられ、次いで得られた多糖が混合される。カチオン化多糖製品はアルカリ性条件下で水性懸濁液、粉状混合物、水溶液又はアルコール水溶液中で薬剤との反応により得られる。本発明の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は一種以上のカチオン性薬剤、例えば、芳香族カチオン性薬剤及び/又は非芳香族カチオン性薬剤との反応により得られる。
【0035】
本発明の芳香族薬剤として、ノニオン性薬剤、カチオン性薬剤、及びアニオン性薬剤が挙げられる。好適な薬剤の例として、下記のものが挙げられる。
(i) ノニオン性芳香族薬剤、例えば、芳香族基を有する置換無水コハク酸、アラルキルハライド、例えば、ベンジルクロリド及びベンジルブロミド、エーテル、例えば、フェニルグリシジルエーテル及びベンジルグリシジルエーテル、エピクロルヒドリンと芳香族基を含む少なくとも一つの置換基を有するジアルキルアミンの反応生成物。
(ii) カチオン性芳香族薬剤、例えば、エピクロロヒドリンと先に定義された一つ以上の芳香族基を有する三級アミン(アルカリールジアルキルアミン、例えば、ジメチルベンジルアミン、アリールアミン、例えば、ピリジン及びキノリンを含む)の反応生成物。この型の好適なカチオン性薬剤として、ハロヒドロキシプロピル-N,N-ジアルキル-N-アルカリールアンモニウムハライド及びN-グリシジル-N-(アルカリール)-N,N-ジアルキル-アンモニウムクロリド、例えば、N-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-N-(アルカリール)-N,N-ジ(低級アルキル)アンモニウムクロリド(そのアルカリール基及び低級アルキル基は先に定義されたとおりである)、特にN-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-N-ベンジル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、及びN-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムクロリドが挙げられる。芳香族カチオン性薬剤は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド又は2,3-エポキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドであることが好ましい。
(iii) アニオン性芳香族薬剤として、結合された芳香族基を有する薬剤が挙げられ、このような薬剤は、例えば、ホスフェート基、ホスホネート基、スルフェート基、スルホネート基又はカルボン酸基であってもよく、それらはホスフェート基、ホスホネート基又はスルホネート基、例えば、フェニルホスホン酸及びフェニルホスホンスルホン酸であることが好ましい。
【0036】
本発明の非芳香族薬剤として、ノニオン性薬剤、カチオン性薬剤、及びアニオン性薬剤が挙げられる。好適な薬剤の例として、下記のものが挙げられる。
(i) ノニオン性非芳香族薬剤、例えば、アルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びイソ-ブチレンオキサイド、アルキレンエーテル、例えば、ブチルグリシジルエーテル、アルキルハライド、例えば、デシルブロミド及びドデシルブロミド、エピクロロヒドリンと先に定義された非芳香族炭化水素基を含む少なくとも一つの置換基を有するジアルキルアミンの反応生成物(3-ジアルキルアミノ-1,2-エポキシプロパンを含む)。
(ii) カチオン性非芳香族薬剤、例えば、エピクロロヒドリンと先に定義された非芳香族炭化水素基を有する三級アミン(トリアルキルアミンを含む)の反応生成物。この型の好適なカチオン性薬剤として、2,3-エポキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド及びハロヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド、例えば、N-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-N-(アルキル)-N,N-ジ(アルキル)-アンモニウムクロリド及びN-グリシジル-N-(アルキル)-N,N-ジ(アルキル)アンモニウムクロリド(その非芳香族炭化水素基は先に定義されたとおりであり、特にオクチル、デシル、ドデシル及びオクタデシルであり、アルキルはメチル、エチル、プロピル又はブチル、好ましくはメチル又はエチルである)が挙げられる。好ましい非芳香族炭化水素カチオン性薬剤として3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド又は2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
(iii) アニオン性非芳香族薬剤、例えば、ホスホネート基を含む薬剤、例えば、アミノクロロエタンジエチルホスホン酸、スルフェート基を含む薬剤、例えば、スルファミン酸又はSO3-錯体、例えば、SO3TMA(トリメチルアミン)、SO3ピリジン、スルホアルキル基を含む薬剤、例えば、2-クロロエタン-スルホネート及び3-クロロ-2-ヒドロキシプロパンスルホネート、カルボキシルアルキル基を含む薬剤、例えば、1-ハロカルボン酸の塩、例えば、モノクロロ酢酸ナトリウム又はクロロプロピオン酸ナトリウム、スルホカルボキシル基を含む薬剤、例えば、3-クロロ-2-スルホプロピオン酸、プロピオノラクトン又はブチロラクトンのようなラクトン、アクリロニトリル、酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等。
【0037】
好適な薬剤、カチオン性又は両性多糖及びカチオン化方法の例として、米国特許第2,876,217号、同第3,422,087号、同第4,687,519号、同第4,785,087号、同第5,129,989号、同第5,463,127号及び同第5,827,372号、国際特許出願WO 94/24169、WO 99/55964、欧州特許出願第0189935号、同第0303039号、同第0400361号、同第0737210号及び同第0874000号、並びにS.P. Patel、R.G. Patel及びV.S. Patel著Starch/Starke, 41(1989), 5号, 192-196(これらの教示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたものが挙げられる。
【0038】
本発明の方法は一種以上の多糖を(i)少なくとも一種の第一芳香族薬剤、及び(ii)少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させることを含み、第一薬剤及び第二薬剤の少なくとも一種がカチオン性薬剤を含む。本発明の好ましい実施態様において、一種以上の多糖が少なくとも一種の第一芳香族薬剤及び少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させられてカチオン化多糖製品を生成する。本発明の別の好ましい実施態様において、一種以上の第一多糖が少なくとも一種の第一芳香族薬剤と反応させられ、一種以上の第二多糖が少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させられ、次いで得られた多糖が混合されてカチオン化多糖製品を生成する。第一多糖及び第二多糖は先に定義された多糖のいずれかから選ばれる。本発明の更に好ましい実施態様において、一種以上の多糖が少なくとも一種のカチオン性第一芳香族薬剤、及び少なくとも一種のカチオン性第二非芳香族薬剤と反応させられる。前記薬剤は10:1から1:10まで、通常7:1から1:7まで、好適には5:1から1:5まで、好ましくは3:1から1:3まで、最も好ましくは2:1から1:2までの範囲内であり得る芳香族薬剤対非芳香族薬剤のモル比で反応させられる。
【0039】
また、その方法は、例えば、欧州特許第0603727号記載のエピクロロヒドリンとの反応による、多糖の架橋を含んでもよく、これは一層高い分子量を多糖に与え、これらの多糖が溶液又はスラリー中にある場合に粘度を増大させる。この粘度の増大は約5%から500%まで、好ましくは約10%から400%までの範囲であり、架橋剤により与えられる架橋効果は約2%から85%まで、好ましくは約20%から60%まで、更に好ましくは約5%から50%までの範囲内のブレークダウン粘度である。
【0040】
また、その方法は酸加水分解、過酸化物、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、オゾン又は酵素の使用による多糖の分解を含んでもよく、これは一層低い分子量を多糖に与え、それにより多糖が溶液又はスラリー中にある場合に粘度の低下を与える。この多糖粘度は、分解前の粘度の95%から0.1%まで、好ましくは80%から1%まで、更に好ましくは60%から5%までの範囲内の粘度に低下し得る。
【0041】
また、その方法は多糖の架橋及び分解の両方を含んでもよく、それにより調節された粘度を有する溶液又はスラリー中のカチオン化多糖製品を与える。
【0042】
更に、本発明は本発明の一種以上のカチオン化多糖製品がセルロース繊維を含む水性懸濁液、又は脱水すべき紙料に添加される製紙方法に関する。本発明のカチオン化多糖製品は脱水兼歩留まり助剤として、また乾燥強度増強剤として製紙方法に使用し得る。本明細書に使用される“脱水兼歩留り助剤”という用語は、水性セルロース懸濁液に添加される場合に、一種以上の成分を添加しない場合に得られるよりも良好な脱水及び/又は歩留まりを与える前記一種以上の成分(助剤、薬剤又は添加剤)を表す。本明細書に使用される“乾燥強度増強剤”という用語は、紙料に添加される場合に、一種以上の成分を添加しない場合に得られるよりも良好な製造された紙の乾燥強度を与える前記一種以上の成分(助剤、薬剤又は添加剤)を表す。
【0043】
本発明の方法は改良された脱水及び/又は歩留りをもたらし、それにより本方法は抄紙機の速度を増大し、添加剤の用量を低下して相当する脱水及び歩留り効果を生じることを可能にし、それにより改良された抄紙方法及び経済的効果をもたらす。本発明により観察された更なる利点として、カチオン化多糖製品を使用して製造された紙の改良された乾燥強度が挙げられる。それにより、一層低い用量の乾燥強度増強剤を使用して相当する紙乾燥強度増強効果を生じることが可能である。また、紙強度ひいては紙品質を高めるために繊維材料を過剰に仕込まないで高用量のカチオン化多糖製品を使用することが可能である。何とならば、本発明のカチオン化多糖製品がまた比較的低いカチオン性で非常に有効であるからである。本発明の方法は比較的密閉された水ループを備えた工場でセルロース懸濁液の処理に利用でき、この場合、白水がほんの少量の生水の導入により反復して循環される。その方法は更に高い塩含量を有し、こうして高導電率レベルを有するセルロース懸濁液を使用する製紙方法、例えば、徹底的な白水循環及び制限された生水供給を伴う方法及び/又は高い塩含量を有する生水を使用する方法に好適に適用される。
【0044】
本発明のカチオン化多糖製品は方法及び/又は製造された紙の総合の脱水及び/又は歩留まり及び/又は乾燥強度増強性能に有益であり、それにより脱水兼歩留り助剤だけでなく、2種以上の成分を含む乾燥強度増強助剤を生成する付加的な添加剤と一緒に使用し得る。この型の好適な紙料添加剤の例として、アニオン性材料、例えば、アニオン性無機材料、例えば、微粒状材料、例えば、シリカをベースとする粒子及びスメクタイト型のクレー、並びにアニオン性有機材料、例えば、アニオン性有機ポリマー、例えば、縮合ポリマー、付加ポリマー、段階成長ポリマー、鎖成長ポリマー、アニオン性基を含む多糖、芳香族基を有する合成ポリマー、天然産芳香族ポリマー、及びこれらの変性物が挙げられる。本明細書に使用される“段階成長ポリマー”という用語は、段階成長重合により得られたポリマーを表し、また夫々段階反応ポリマー及び段階反応重合と称される。付加ポリマーは段階成長付加重合により得られたポリマー、例えば、芳香族イソシアネート及び/又は芳香族アルコールを含むモノマーから調製し得るアニオン性ポリウレタンである。縮合ポリマーは段階成長縮合重合により得られたポリマー、例えば、ホルムアルデヒドの如きアルデヒドと一種以上の芳香族化合物、及び縮合重合に有益な任意のその他のコモノマー、例えば、尿素及びメラミンとの縮合物である。鎖成長ポリマーはビニル基又はエチレン性不飽和結合を有する一種以上のモノマーの重合により調製される。
【0045】
本発明に従って使用し得るアニオン性無機材料として、アニオン性のシリカをベースとする粒子及びスメクタイト型のクレーが挙げられる。アニオン性無機粒子は粒子サイズのコロイド範囲であることが好ましい。アニオン性のシリカをベースとする粒子、即ち、SiO2又はケイ酸をベースとする粒子が、使用されることが好ましく、このような粒子は通常水性コロイド分散液、所謂ゾルの形態で供給される。好適なシリカをベースとする粒子の例として、ホモ重合又は共重合された、異なる型の重合ケイ酸が挙げられる。シリカをベースとする粒子及び/又はゾルは変性でき、その他の元素、例えば、アルミニウム、窒素及び/又はホウ素(これらは水相及び/又はシリカをベースとする粒子中に存在し得る)を含み得る。この型の好適なシリカをベースとする粒子として、コロイドのアルミニウム変性シリカ及びケイ酸アルミニウムが挙げられる。このような好適なシリカをベースとする粒子の混合物がまた使用し得る。
【0046】
アニオン性のシリカをベースとする粒子は好適には約50nm以下、好ましくは約20nm以下、更に好ましくは約1nmから約10nmまでの範囲の平均粒子サイズを有する。シリカ化学において通常のように、粒子サイズは一次粒子(これらは凝集されていてもよく、又は凝集されていなくてもよい)の平均サイズを表す。シリカをベースとする粒子の比表面積は好適には少なくとも50m2/g、好ましくは少なくとも100m2/gである。一般に、比表面積は約1700m2/gまで、好ましくは1000m2/gまでであってもよい。比表面積は既知の様式で、例えば、Sears著Analytical Chemistry 28(1956):12, 1981-1983及び米国特許第5,176,891号に記載されたようにNaOHによる滴定により測定し得る。こうして、所定の面積は粒子の平均比表面積を表す。
【0047】
シリカをベースとする粒子はゾル中に含まれることが好適である。このゾルは5〜80%、好適には5〜50%、好ましくは8〜45%、最も好ましくは10〜30%の範囲のS値を有してもよい。このS値の計算及び測定はIler&Dalton著J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957により記載されたように行ない得る。このS値は凝集物又はミクロゲル形成の程度を示し、低いS値は高い凝集の程度を示す。
【0048】
好適には、シリカをベースとする粒子は60以下、通常5〜60の範囲内、好ましくは8〜55の範囲内のモル比Si2O:Na2Oを有する。
【0049】
歩留り及び/又は脱水助剤として使用される好適なアニオン性のシリカをベースとする粒子が米国特許第4,388,150号、同第4,927,498号、同第4,954,220号、同第4,961,825号、同第4,980,025号、同第5,127,994号、同第5,176,891号、同第5,368,833号、同第5,447,604号、同第5,470,435号、同第5,543,014号、同第5,571,494号、同第5,573,674号、同第5,584,966号、同第5,603,805号、同第5,688,482号、及び同第5,707,493号に開示されており、これらの特許が参考として本明細書に含まれる。
【0050】
本発明に従って使用し得るアニオン性ポリマーは段階成長ポリマー、鎖成長ポリマー、多糖、天然産芳香族ポリマー及びこれらの変性物から選ばれる。このアニオン性ポリマーは線状、分岐又は架橋されていてもよい。このアニオン性ポリマーは水溶性又は水分散性であることが好ましい。このアニオン性ポリマーだけでなく、アニオン性ポリマーを調製するのに使用されるモノマー中に存在し得るアニオンに荷電された基の例として、アニオン電荷を有する基及び水に溶解又は分散された場合にアニオン電荷を有する酸基(本明細書の基はアニオン性基と総称される)、例えば、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホン酸、スルホネート、カルボン酸、カルボキシレート、アルコキシド及びフェノール基、即ち、ヒドロキシ置換フェニル及びヒドロキシ置換ナフチルが挙げられる。アニオン電荷を有する基は通常アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニアの塩である。
【0051】
好適なアニオン性段階成長ポリマーの例として、縮合ポリマーが挙げられ、アニオン性基を含む好適な芳香族化合物はアニオン性基を含むベンゼン及びナフタレンをベースとする化合物、例えば、フェノール化合物及びナフトール化合物、例えば、フェノール、ナフトール、レゾルシノール及びこれらの誘導体、芳香族酸及びこれらの塩、例えば、フェニル酸、フェノール酸、ナフチル酸及びナフトール酸並びにこれらの塩、通常スルホン酸及びスルホネート、例えば、ベンゼンスルホン酸及びベンゼンスルホネート、キシレンスルホン酸及びキシレンスルホネート、ナフタレンスルホン酸及びナフタレンスルホネート、フェノールスルホン酸及びフェノールスルホネートを含む。
【0052】
更なる好適なアニオン性段階成長ポリマーの例として、付加ポリマー、例えば、芳香族イソシアネート及び/又は芳香族アルコールを含むモノマー混合物から調製し得るアニオン性ポリウレタンが挙げられる。好適な芳香族イソシアネートの例として、ジイソシアネート、例えば、トルエン-2,4-及び2,6-ジイソシアネート並びにジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。好適な芳香族アルコールの例として、2価アルコール、即ち、ジオール、例えば、ビスフェノールA、フェニルジエタノールアミン、グリセロールモノテレフタレート及びトリメチロールプロパンモノテレフタレートが挙げられる。1価芳香族アルコール、例えば、フェノール及びその誘導体がまた使用されてもよい。また、モノマー混合物は非芳香族イソシアネート及び/又はアルコール、通常ジイソシアネート及びジオール、例えば、ポリウレタンの調製に有益であると知られているもののいずれかを含んでもよい。アニオン性基を含む好適なモノマーの例として、トリオール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びグリセロールと、ジカルボン酸又はその酸無水物、例えば、コハク酸及び無水コハク酸、テレフタル酸及び無水テレフタル酸のモノエステル反応生成物、例えば、グリセロールモノスクシネート、グリセロールモノテレフタレート、トリメチロールプロパンモノスクシネート、トリメチロールプロパンモノテレフタレート、N,N-ビス-(ヒドロキシエチル)-グリシン、ジ-(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、N,N-ビス-(ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸等が挙げられ、これらは必要により、また通常塩基、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア又はアミン、例えば、トリエチルアミンとの反応と組み合わされてもよく、それによりアルカリ金属対イオン、アルカリ土類金属対イオン又はアンモニウム対イオンを生成する。
【0053】
好適なアニオン性鎖成長ポリマーの例として、芳香族基を有する少なくとも一種のモノマー及びアニオン性基を有する少なくとも一種のモノマーを含むビニル又はエチレン性不飽和モノマーの混合物から得られ、通常ノニオン性モノマー、例えば、アクリレートをベースとするモノマー及びアクリルアミドをベースとするモノマーと共重合された、アニオン性ビニル付加ポリマーが挙げられる。好適なアニオン性モノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸及びパラビニルフェノール(ヒドロキシスチレン)が挙げられる。
【0054】
好適なアニオン性多糖の例として、澱粉、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくは澱粉及びガム、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な澱粉の例として、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、タピオカ、米、ワックス状トウモロコシ等、好ましくはジャガイモ及びトウモロコシが挙げられる。好適なガムの例はグアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラヤ、オクラ、アカシア、キサンタンガム等、好ましくはグアーガムである。多糖中のアニオン性基は天然であってもよく、かつ/又は化学処理により導入し得る。
【0055】
本発明の天然産芳香族アニオン性ポリマー及びこれらの変性物、即ち、変性された天然産芳香族アニオン性ポリマーとして、木材及び或る木材種の樹皮の有機抽出物中に存在する天然産ポリフェノール物質及びこれらの化学変性物、通常これらのスルホン化変性物が挙げられる。変性ポリマーは化学方法、例えば、亜硫酸パルプ化及びクラフトパルプ化により得られる。この型の好適なアニオン性ポリマーの例として、リグニンをベースとするポリマー、好ましくはスルホン化リグニン、例えば、リグノスルホネート、クラフトリグニン、スルホン化クラフトリグニン、及びタンニン抽出物が挙げられる。
【0056】
前記アニオン性ポリマーの平均分子量は、とりわけ、使用されるポリマーの型に依存して広い制限内で変化でき、通常それは少なくとも約500、好適には約2,000以上、好ましくは約5,000以上である。上限は重要ではない。それは約200,000,000、通常150,000,000、好適には100,000,000、好ましくは10,000,000であってもよい。
【0057】
前記アニオン性ポリマーは、とりわけ、使用されるポリマーの型に依存して広範囲にわたって変化するアニオン置換度(DSA)を有し得る。DSAは通常0.01から2.0まで、好適には0.02から1.8まで、好ましくは0.025から1.5までであり、芳香族置換度(DSAr)は0.001から1.0まで、通常0.01から0.8まで、好適には0.02から0.7まで、好ましくは0.025から0.5までであってもよい。アニオン性ポリマーがカチオン性基を含む場合、カチオン置換度(DSC)は、例えば、0から0.2まで、好適には0から0.1まで、好ましくは0から0.05までであってもよく、そのアニオン性ポリマーは総合のアニオン電荷を有する。通常アニオン性ポリマーのアニオン電荷密度は乾燥ポリマー1g当り0.1〜6.0meqv、好適には0.5〜5.0meqv、好ましくは1.0〜4.0meqvの範囲内である。
【0058】
本発明に従って使用し得る好適なアニオン性芳香族ポリマーの例として、米国特許第4,070,236号及び同第5,755,930号、並びに国際特許出願公開番号WO 95/21295、WO 95/21296、WO 99/67310、及びWO 00/49227(これらの特許が参考として本明細書に含まれる)に記載されたものが挙げられる。
【0059】
本発明のカチオン化多糖製品はまたその他の添加剤、例えば、その他の多糖、アルミニウム化合物、カチオン性、ノニオン性、及び両性の合成ポリマー、例えば、低分子量カチオン性有機ポリマー、アニオン性ビニル付加ポリマー及びこれらの組み合わせ(国際特許出願公開番号WO 99/55964、WO 99/55965、及びWO 02/12626(これらの特許が参考として本明細書に含まれる)に開示された化合物を含む)と一緒に使用し得る。
【0060】
本発明に従って使用し得る低分子量(以下LMW)カチオン性有機ポリマーとして、アニオン性くずキャッチャー(ATC)と普通称されるものが挙げられる。LMWカチオン性有機ポリマーは天然源又は合成源から誘導でき、それはLMW合成ポリマーであることが好ましい。この型の好適な有機ポリマーとして、LMW高度に荷電されたカチオン性有機ポリマー、例えば、ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びアクリレート、メタクリレートをベースとするホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。本発明のカチオン化多糖製品の分子量に関して、LMWカチオン性有機ポリマーの分子量は低いことが好ましい。それは好適には少なくとも2,000、好ましくは少なくとも10,000である。分子量の上限は通常約700,000、好適には約500,000、好ましくは約200,000である。
【0061】
本発明に従って使用し得るアルミニウム化合物として、ミョウバン、アルミン酸塩、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム及びポリアルミニウム化合物、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、塩化物イオン及び硫酸イオンの両方を含むポリアルミニウム化合物、ポリケイ酸硫酸アルミニウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリアルミニウム化合物はまた塩化物イオン以外の陰イオン、例えば、硫酸、リン酸、有機酸、例えば、クエン酸及びシュウ酸からの陰イオンを含んでもよい。
【0062】
本発明のカチオン化多糖製品は芳香族置換基及び非芳香族置換基の両方を有する単一多糖、又は異なる多糖(その一つは少なくとも一つの第一置換基を有し、またその一つは少なくとも一つの第二置換基を有する)を含む組成物として懸濁液に添加し得る。また、少なくとも一つの第一置換基を有する多糖及び少なくとも一つの第二置換基を有する多糖が懸濁液に別々に添加される。
【0063】
本発明のカチオン化多糖製品及びアニオン性材料はセルロース繊維を含む水性懸濁液、又は紙料に別々に添加されることが好ましい。カチオン化多糖製品及びアニオン性材料は異なる位置で紙料に添加されることが好ましい。カチオン化多糖製品及びアニオン性材料はあらゆる順序で添加し得る。通常カチオン化多糖製品はアニオン性材料を添加する前に紙料に添加されるが、添加の逆の順序がまた使用されてもよい。前記カチオン化多糖製品は、とりわけ、紙料の型、塩含量、塩の型、てん料含量、てん料の型、添加の位置等に応じて広い制限内で変化し得る量で脱水すべき紙料に添加し得る。一般に、前記カチオン化多糖製品はそれらを添加しない場合に得られるよりも良好な脱水及び/又は歩留まりを与える量で添加される。カチオン化多糖製品は通常乾燥紙料物質を基準として、少なくとも0.05重量%、しばしば少なくとも0.1重量%の量で添加され、一方、その上限は通常5重量%、好適には3重量%である。アニオン性材料は通常乾燥紙料物質を基準として、少なくとも0.001重量%、しばしば少なくとも0.005重量%の量で添加され、一方、その上限は通常3重量%、好適には1.5重量%である。
【0064】
本発明の方法は全ての製紙方法及びセルロース懸濁液に適用でき、それは高導電率を有する紙からの紙の製造に特に有益である。このような場合、ワイヤ上で脱水される紙料の導電率は一般に少なくとも0.5mS/cm、通常少なくとも1.0mS/cm、好適には少なくとも1.5mS/cm、好ましくは少なくとも2.0mS/cmである。導電率は通常の装置、例えば、クリスチャン・バーナーにより供給されるWTW LF 539装置により測定し得る。上記値は抄紙機のヘッドボックスに供給され、もしくはその中に存在するセルロース懸濁液の導電率を測定することにより、又は懸濁液を脱水することにより得られた白水の導電率を測定することにより測定されることが好適である。高導電率レベルは紙料を生成するのに使用される材料、紙料に導入された種々の添加剤、その方法に供給された生水等に由来し得る塩(電解質)の高含量を意味する。更に、塩の含量は白水が徹底的に循環される方法(これらはその方法中に循環する水中の塩のかなりの蓄積をもたらし得る)で通常高い。
【0065】
更に、本発明は白水が徹底的にリサイクルされ、又は循環され、即ち、高度の白水密閉でもって循環され、例えば、0〜30トンの生水が製造される乾燥紙1トン当り使用され、通常20トン以下、好適には15トン以下、好ましくは10トン以下、特に5トン以下の生水が紙1トン当り使用される製紙方法を含む。その方法中に得られた白水の循環は白水をセルロース繊維及び/又は任意のてん料と混合して脱水すべき懸濁液を生成することを含むことが好適である。それは懸濁液が脱水のためのフォーミングワイヤに入る前に、白水をセルロース繊維、及び任意のてん料を含む懸濁液と混合することを含むことが好ましい。白水は本発明の脱水兼歩留り助剤を導入する前、その間、同時又はその後に懸濁液と混合し得る。生水はあらゆる段階でその方法に導入し得る。例えば、それは懸濁液を生成するためにセルロース繊維と混合でき、それは懸濁液を白水と混合する前、同時又はその後に脱水すべき希薄な懸濁液を生成するようにセルロース繊維を含む濃厚な懸濁液と混合されてそれを希釈し得る。
【0066】
製紙に通常である更なる添加剤、例えば、その他の歩留り及び/脱水助剤及びその他の乾燥強度増強剤、湿潤強度増強剤、蛍光増白剤、染料、ロジンをベースとするサイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤のようなサイジング剤、例えば、アルキルケテン二量体及びアルケニルケテン二量体、アルキルケテン多量体及びアルケニルケテン多量体、並びに無水コハク酸等が勿論本発明のカチオン化多糖製品と組み合わせて使用し得る。セルロース懸濁液、又は紙料はまた通常の型の無機てん料、例えば、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク並びに天然及び合成の炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウムを含み得る。
【0067】
本発明の方法は紙の製造に使用される。本明細書に使用される“紙”という用語は勿論紙及びその製品だけでなく、その他のセルロース繊維を含むシート又はウェブのような製品、例えば、ボード及び板紙、並びにこれらの製品を含む。その方法は異なる型のセルロース含有繊維の懸濁液からの紙の製造に使用でき、この懸濁液は乾燥物質を基準として、好適には少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%のこのような繊維を含むべきである。この懸濁液は広葉樹及び針葉樹の両方からの、ケミカルパルプ、例えば、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ及び有機溶剤パルプ、メカニカルパルプ、例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプ、リファイナパルプ及び砕木パルプからの繊維をベースとすることができ、また必要により脱インキパルプからの、リサイクル繊維、及びこれらの混合物をベースとし得る。
【0068】
また、本発明は製紙方法における多糖製品の使用に関する。本発明の好ましい実施態様において、カチオン化多糖製品は乾燥強度増強剤として機能し得る。本発明の別の好ましい実施態様において、多糖製品は脱水及び/歩留まり助剤として機能し得る。第三の好ましい実施態様において、多糖製品は乾燥強度増強剤並びに脱水及び/歩留まり助剤の両方として機能し得る。
【0069】
本発明が下記の実施例で更に説明されるが、これらは本発明を限定することを目的とするものではない。部数及び%は、特にことわらない限り、夫々重量部及び重量%に関する。
【実施例1】
【0070】
天然ジャガイモ澱粉をEP-A 0189935及びWO 99/55964に記載された一般操作に従って一種以上の四級化剤と反応させることにより、試験に使用したカチオン性多糖製品を調製した。試験に使用したカチオン性澱粉(以下、本発明のC1、C2、C3及びC4並びに比較目的に意図されるATC1、Ref.1、Ref.2、Ref.3、Ref.4、Ref.5、Ref.6及びRef.7と総称される)は、以下のとおりであった。
C1: DSAr 0.025への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びDSnon-Ar0.025への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉(DSCは0.05であった)
C2: DSAr 0.032への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びDSnon-Ar0.008への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉(DSCは0.04であった)
C3: DSC 0.05への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られた澱粉1部と混合されたDSC0.05への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られた澱粉1部を含むカチオン性澱粉
C4: DSAr 0.065への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られ、そしてまたDSnon-Ar0.01へ2,3-エポキシ-2-メチル-プロパンで変性されたカチオン性澱粉(DSCは0.065であった)
C5: DSAr 0.07への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びDSnon-Ar0.59への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモアミロペクチン澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉(DSCは0.66であった)
C6: DSAr 0.14への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びDSnon-Ar0.54への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモアミロペクチン澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉(DSCは0.68であった)
ATC1: 約50,000の分子量を有するカチオン性ポリアミン
Ref.1: DSC 0.08への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref.2: DSC 0.18への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref.3: DSC 0.09への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref.4: DSC 0.05への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref5: DSC 0.05への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref6: DSC 0.04への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref7: DSnon-Ar 0.065への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモ澱粉の四級化により得られ、そしてまたDSnon-Ar0.01、DStot(non-Ar) 0.075に2,3-エポキシ-2-メチルプロパンで変性されたカチオン性澱粉(DSCは0.065であった)
Ref8: DSC 0.65への2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモアミロペクチン澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
Ref9: DSC 0.65への3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリドによる天然ジャガイモアミロペクチン澱粉の四級化により得られたカチオン性澱粉
C1、C2、C3、C4、C5、ATC1、Ref.1、Ref.2、Ref.3、Ref.4、Ref.5及びRef.6を全ての試験で希薄な水溶液として全て使用した。
【0071】
試験に使用したアニオン性成分はアニオン性シリカゾル(A1)及びアニオン性重縮合物(A2)であった。試験に使用したアニオン性成分は以下のとおりであった。
A1: 25%のS値を有し、5%の程度までアルミニウムで表面変性される900m2/gの比表面積を有するシリカ粒子を含む、米国特許第5,368,833号に記載された型のシリカゾル
A2: 約20,000の分子量の、ホルムアルデヒドとナフタレンスルホネートのアニオン性重縮合物
A1及びA2をゾル又は希薄な水溶液として使用した。
【実施例2】
【0072】
乾燥強度性能をファイバーテクAB(スウェーデン)により供給される動的シートフォーマー(フォーメット・ダイナミック)、及びロレンチェン&ウェットル(スウェーデン)により供給される破裂強度テスターで評価した。
【0073】
試験に使用した完成紙料は100重量%のリサイクル廃棄工場完成紙料をベースとした。完成紙料コンシステンシーは0.5%であり、導電率を塩化カルシウムの添加により2.7mS/cmに調節し、更に塩化ナトリウムにより4.0mS/cmに調節した。
【0074】
完成紙料を高せん断撹拌機で700rpmの速度で撹拌し、0.5分後に澱粉を添加し、続いて混合チェスト中で5分間撹拌した。
【0075】
完成紙料を混合チェストからトラバーシングノズルを通ってワイヤの上の水フィルムへの回転ドラムにポンプ輸送し、紙料を脱水してシートを形成し、シートをプレスし、乾燥させることにより、紙シートを動的シートフォーマー中で形成した。シートを破裂強度テスター中で評価した。破裂強度指数増大値を計算し、比較した。
【0076】
表1は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、種々の澱粉用量で得られたシートの破裂強度指数増大を示す。
【0077】
【表1】

【実施例3】
【0078】
実施例2記載の装置を使用して、乾燥強度性能を評価した。試験に使用した完成紙料は100重量%のリサイクル廃棄工場紙料をベースとした。濃厚紙料コンシステンシーは3.6%であり、濃厚紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により3.0mS/cmに調節した。白水コンシステンシーは0.1%であり、白水の導電率を塩化カルシウムの添加により4.0mS/cmに調節した。
【0079】
濃厚紙料を高せん断撹拌機で700rpmの速度で撹拌し、0.5分後に澱粉を添加した。6.5分後に、濃厚紙料を混合チェスト中で2分間にわたって白水と混合し、完成紙料を生じた。
【0080】
完成紙料を混合チェストからトラバーシングノズルを通ってワイヤの上の水フィルムへの回転ドラムにポンプ輸送し、紙料を脱水してシートを形成し、シートをプレスし、乾燥させることにより、紙シートを動的シートフォーマー中で形成した。シートを破裂強度テスター中で評価した。破裂強度指数値を計算し、比較した。
【0081】
表2は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、種々の澱粉用量で得られたシートの破裂強度指数を示す。
【0082】
【表2】

【実施例4】
【0083】
脱水性能をアクリビ(スウェーデン)から入手し得る動的脱水アナライザー(DDA)により評価し、これは栓を除去し、真空を紙料が存在する側と反対のワイヤのその側に適用する場合に固定容積の紙料をワイヤにより脱水する時間を測定する。
【0084】
紙料を脱水することにより得られた、濾液、白水の濁度を測定することにより、歩留り性能を比濁計により評価した。濁度をNTU(比濁分析濁度単位)で測定した。
【0085】
試験に使用した完成紙料は56重量%の過酸化物漂白TMP/SGWパルプ(80/20)、200°CSFに精製された14重量%の漂白カバ/マツ硫酸パルプ(60/40)及び30重量%のチャイナクレーをベースとした。紙料に、コロイド画分、SC工場からの漂白水を添加した。紙料コンシステンシーは0.12%であった。紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により1.0mS/cmに調節した。
【0086】
紙料を試験中にじゃま板付きジャー中で1500rpmの速度で撹拌し、薬品添加を以下のように行なった。i)カチオン性澱粉を紙料に添加し、続いて30秒間撹拌し、ii)アニオン性成分を紙料に添加し、続いて15秒間撹拌し、iii)脱水時間を自動的に記録しながら紙料を脱水する。
【0087】
表3は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉、及び乾燥紙料系をベースとし、SiO2として計算された、シリカをベースとする粒子A1の種々の用量における脱水効果を示す。
【0088】
【表3】

【実施例5】
【0089】
微細分保持率を、例えば、ペーパー・マテリアルズ社(米国)から入手し得るブリット動的脱水ジャー、BDDJ中で測定し、これはワイヤ上の固定容積の紙料について微細分の最初の通過保持を測定する。
【0090】
試験に使用した完成紙料は56重量%の過酸化物漂白TMP/SGWパルプ(80/20)、200°CSFに精製された14重量%の漂白カバ/マツ硫酸パルプ(60/40)及び30重量%のチャイナクレーをベースとした。紙料に、コロイド画分、SC工場からの漂白水を添加した。紙料コンシステンシーは0.5%であった。紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により3.0mS/cmに調節した。
【0091】
紙料を試験中にじゃま板付きジャー中で1000rpmの速度で撹拌し、薬品添加を以下のように行なった。i)多糖を紙料に添加し、続いて30秒間撹拌し、ii)アニオン性無機粒子を紙料に添加し、続いて15秒間撹拌し、iii)紙料を30秒間脱水し、容積を記録し、その容積の乾燥含量を測定する。
【0092】
表4は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉、及び乾燥紙料系をベースとし、SiO2として計算された、シリカをベースとする粒子の種々の用量における微細分保持効果を示す。
【0093】
【表4】

【実施例6】
【0094】
脱水及び歩留り性能を実施例4と同様の様式で評価した。試験に使用した完成紙料は200°CSFに精製された70重量%の漂白カバ/マツ硫酸パルプ(60/40)及び30重量%の炭酸カルシウムをベースとした。紙料に、コロイド画分、SC工場からの漂白水を添加した。紙料コンシステンシーは0.28%であった。紙料の導電率を硫酸ナトリウムの添加により0.45mS/cmに調節し、更に塩化カルシウムにより2.2mS/cmに調節した。
【0095】
表5は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉の一定用量、及び乾燥紙料系をベースとした、アニオン性成分A2の種々の用量における脱水効果を示す。
【0096】
【表5】

【実施例7】
【0097】
脱水及び歩留り性能を実施例4と同様の様式で評価した。試験に使用した完成紙料は100重量%の未漂白針葉樹クラフトパルプをベースとした。紙料コンシステンシーは0.43%であった。紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により5.4mS/cmに調節した。
【0098】
表6は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉、及び乾燥紙料系をベースとし、SiO2として計算された、シリカをベースとする粒子の種々の用量における脱水効果を示す。
【0099】
【表6】

【実施例8】
【0100】
脱水及び歩留り性能を実施例4と同様の様式で評価した。試験に使用した完成紙料は56重量%の過酸化物漂白TMP/SGWパルプ(80/20)、200°CSFに精製された14重量%の漂白カバ/マツ硫酸パルプ(60/40)及び30重量%のチャイナクレーをベースとした。紙料に、コロイド画分、SC工場からの漂白水を添加した。紙料コンシステンシーは0.12%であった。紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により3.5mS/cmに調節した。
【0101】
表7は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉、及び乾燥紙料系をベースとし、SiO2として計算された、シリカをベースとする粒子の種々の用量における脱水効果を示す。
【0102】
【表7】

【実施例9】
【0103】
脱水性能を実施例4と同様の様式で評価した。試験に使用した完成紙料は56重量%の過酸化物漂白TMP/SGWパルプ(80/20)、200°CSFに精製された14重量%の漂白カバ/マツ硫酸パルプ(60/40)及び30重量%のチャイナクレーをベースとした。紙料に、コロイド画分、SC工場からの漂白水を添加した。紙料コンシステンシーは0.16%であった。紙料の導電率を塩化カルシウムの添加により5.0mS/cmに調節した。
【0104】
紙料を脱水することにより得られた、濾液、白水の濁度を測定することにより、保持性能をハッチ2100Pにより評価した。濁度をNTU(比濁分析濁度単位)で測定した。
【0105】
表8は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉の種々の用量における脱水効果を示す。
【0106】
【表8】

【0107】
表9は乾燥紙料系について乾燥澱粉として計算された、カチオン化澱粉の種々の用量における保持効果を示す。
【0108】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する多糖を含むカチオン化多糖製品であって、前記第一置換基及び第二置換基が10:1から1:10までの範囲内のモル比で存在することを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項2】
芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する一種以上の多糖及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する一種以上の多糖を含むことを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項3】
0.0005から2.0までの範囲内の芳香族置換度(DSAr)及び0.0005から2.0までの範囲内の非芳香族置換度(DSnon-Ar)を有する多糖を含むことを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項4】
一種以上の多糖を
(i) 少なくとも一種の第一芳香族薬剤、及び
(ii) 少なくとも一種の第二非芳香族薬剤
と反応させることにより得られるカチオン化多糖製品であって、
前記第一芳香族薬剤及び第二非芳香族薬剤が10:1から1:10までの範囲内のモル比で反応させられることを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項5】
(i) 第一多糖を少なくとも一種の第一芳香族剤と反応させ、そして
(ii) 第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させ、
次いで(i)及び(ii)に従って得られた多糖を混合することにより得られるカチオン化多糖製品。
【請求項6】
一種以上の多糖を
(i) 少なくとも一種の第一芳香族薬剤、及び
(ii) 少なくとも一種の第二非芳香族薬剤
と反応させることを含むカチオン化多糖製品の調製方法であって、
前記第一芳香族薬剤及び第二非芳香族薬剤を10:1から1:10までの範囲内のモル比で反応させることを特徴とするカチオン化多糖製品の調製方法。
【請求項7】
(i) 第一多糖を少なくとも一種の第一芳香族剤と反応させ、そして
(ii) 第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させ、
次いで得られた多糖を混合することを特徴とするカチオン化多糖製品の調製方法。
【請求項8】
セルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、
(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基、及び
(ii) 芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基
を有する多糖を含むカチオン化多糖製品を懸濁液に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項9】
セルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、
(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び
(ii) 芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖を含むカチオン化多糖製品((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方がカチオン性かつ/又は両性である)を懸濁液に添加し、懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項10】
セルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、
(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び
(ii) 芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖((i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方がカチオン性かつ/又は両性である)を懸濁液に別々に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項11】
前記第一置換基又は薬剤及び第二置換基又は薬剤が7:1から1:7までの範囲内のモル比で存在する、請求項1から5のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6又は7記載の方法、又は請求項8から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記カチオン化多糖製品が0.05meq/gから4.0meq/gまでの範囲内の陽イオン電荷密度を有する、請求項1から5及び11のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7及び11のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記多糖が下記の一般構造式(I):
【化1】

(式中、AはNを多糖に結合する基であり、R1及びR2は個々にH又は1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、RArは1〜12個の炭素原子を含む芳香族基であり、又はR1、R2及びRArはNと一緒になって芳香族基を形成し、かつX-は対イオンである)
を有する芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から5、11及び12のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7、11及び12のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記多糖が-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)2)CH2C6H5Cl-である芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から5及び10から13のいずれかに記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7、10から13のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記多糖がベンジル基を含む芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から5及び10から14のいずれかに記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7、10から14のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記多糖が一般構造式(II):
【化2】

(式中、BはNを多糖に結合する基であり、R3及びR4は個々にH又は1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rnon-Arは1〜4個の炭素原子を含む非芳香族基であり、かつX-は対イオンである)
を有する芳香族基を有しない第二置換基を有する、請求項1から5、11及び12のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7、11及び12のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記多糖が-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)3)Cl-である芳香族基を有しない第二置換基を有する、請求項1から5、11、12及び16のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7、11、12及び16のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から12及び16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記多糖がカチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、又はこれらの混合物を含む、請求項1から5及び11から17のいずれか1項記載のカチオン化多糖製品、請求項6、7及び11から17のいずれか1項記載の方法、又は請求項8から17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一種のアニオン性材料を前記懸濁液に添加することを更に含む、請求項8から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記アニオン性材料がシリカをベースとする粒子又はスメクタイト型のクレーを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記アニオン性材料が5%から50%までの範囲のS値を有するゾル中に存在する少なくとも100m2/gの比表面積を有するシリカをベースとする粒子を含む、請求項19又は20記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する一種以上の多糖及び芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する一種以上の多糖を含むことを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項2】
一種以上の多糖を
(i) 少なくとも一種の第一のカチオン性またはアニオン性芳香族薬剤、及び
(ii) 少なくとも一種の第二非芳香族薬剤
と反応させることにより得られるカチオン化多糖製品であって、
前記第一芳香族薬剤及び第二非芳香族薬剤が10:1から1:10までの範囲内のモル比で反応させられることを特徴とするカチオン化多糖製品。
【請求項3】
(i) 第一多糖を少なくとも一種の第一芳香族剤と反応させ、そして
(ii) 第二多糖を少なくとも一種の第二非芳香族薬剤と反応させ、
次いで(i)及び(ii)に従って得られた多糖を混合することにより得られるカチオン化多糖製品。
【請求項4】
0.0005から2.0までの範囲内の芳香族置換度(DSAr)及び0.0005から2.0までの範囲内の非芳香族置換度(DSnon-Ar)を有する多糖を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品。
【請求項5】
セルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、請求項1から4のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品を懸濁液に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項6】
セルロース繊維、及び必要によりてん料を含む水性懸濁液からの紙の製造方法であって、
(i) 芳香族基を有する少なくとも一つの第一置換基を有する少なくとも一種の多糖、及び
(ii) 芳香族基を有しない少なくとも一つの第二置換基を有する少なくとも一種の多糖であって、前記(i)及び(ii)に記載の多糖の一方又は両方がカチオン性かつ/又は両性である多糖を、懸濁液に別々に添加し、該懸濁液をワイヤ上で生成し、脱水することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項7】
前記第一置換基又は薬剤及び第二置換基又は薬剤が7:1から1:7までの範囲内のモル比で存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン化多糖製品が0.05meq/gから4.0meq/gまでの範囲内の陽イオン電荷密度を有する、請求項1からのいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品又は請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記多糖が下記の一般構造式(I):
【化1】

(式中、AはNを多糖に結合する基であり、R1及びR2は個々にH又は1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、RArは1〜12個の炭素原子を含む芳香族基であり、又はR1、R2及びRArはNと一緒になって芳香族基を形成し、かつX-は対イオンである)
を有する芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から4、7または8のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記多糖が-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)2)CH2C6H5Cl-である芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から4及び7から9のいずれかに記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記多糖がベンジル基を含む芳香族基を有する第一置換基を有する、請求項1から4及び7から10のいずれかに記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記多糖が一般構造式(II):
【化2】

(式中、BはNを多糖に結合する基であり、R3及びR4は個々にH又は1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rnon-Arは1〜4個の炭素原子を含む非芳香族基であり、かつX-は対イオンである)
を有する芳香族基を有しない第二置換基を有する、請求項1から4及び7から12のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記多糖が-CH2-CH(OH)-CH2-N+((CH3)3)Cl-である芳香族基を有しない第二置換基を有する、請求項1から4及び7から12のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖がカチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、又はこれらの混合物を含む、請求項1から4及び7から13のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品、又は請求項5から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一種のアニオン性材料を前記懸濁液に添加することを更に含む、請求項5から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アニオン性材料がシリカをベースとする粒子又はスメクタイト型のクレーを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アニオン性材料が5%から50%までの範囲のS値を有するゾル中に存在する少なくとも100m2/gの比表面積を有するシリカをベースとする粒子を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記アニオン性材料がアニオン性有機段階成長ポリマーを含む、請求項15又は17に記載の方法
【請求項19】
前記アニオン性材料がナフタレンスルホネートであるアニオン性有機段階成長ポリマーを含む、請求項15又は18に記載の方法
【請求項20】
前記方法が更に白水を循環し、任意に生水を導入して脱水されるべきセルロース繊維、及び必要によりてん料を含む懸濁液を形成し、製造される乾燥紙1トン当り30トン以下の量の生水が導入される、請求項5から19のいずれか1項に記載の方法
【請求項21】
前記方法がカチオン性ポリアクリルアミドを前記懸濁液に添加することを含む、請求項5から19のいずれか1項に記載の方法
【請求項22】
製紙において脱水及び/又は歩留まり助剤及び/又は乾燥強度増強剤としての請求項1から4のいずれか1項に記載のカチオン化多糖製品の使用

【公表番号】特表2006−501348(P2006−501348A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541377(P2004−541377)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001523
【国際公開番号】WO2004/031478
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】