説明

カチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット及びそれを用いたインクジェット画像形成方法

【課題】画像の耐候性、柔軟性を改良するIJインク。
【解決手段】下記一般式(A)で表される化合物を含有するカチオン性の紫外線硬化型IJインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット及びそれを用いたインクジェット画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便かつ安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。
【0003】
この様なインクジェット記録方式で用いられるインクジェットインクとしては、水を主溶媒とする水性インク、不揮発性の溶媒を主溶媒とする油性インク、揮発性の溶媒を主溶媒とする非水系の溶剤インク、室温では固体のインクを加熱溶融して印字するホットメルトインク、印字後、紫外線等の活性光線により硬化する活性光線硬化性インク等、複数のインクがある。
【0004】
サイン、ディスプレイ用途においては、塩化ビニルからなる記録媒体がよく用いられるが、この場合、溶剤インクによる画像形成が一般的であり、性能改良のための技術開示が行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
一方、活性光線硬化性インクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ、速乾性、インク吸収性のない記録媒体への記録ができる点で近年注目されつつあり、紫外線硬化型インクジェットインクに関する技術が、種々開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0006】
紫外線硬化型インクジェットインクとしては、主にラジカル重合型とカチオン重合型が知られている。
【0007】
一般的には、ラジカル重合型インクジェットインクが広く実用化されている。しかしながら、ラジカル重合型インクジェットインクは、酸素による重合阻害があり、インク自身の臭気も強いという問題を抱えている。一方、カチオン重合型インクジェットインクは、ラジカル重合型インクジェットインクで見られるような酸素による硬化阻害が無く、低照度の光源を用いることができるなどの有利な点があるが、高湿環境下で感度低下が生じるという欠点がある。
【0008】
カチオン重合型インクジェットインクの上記問題に対して、新しいエポキシ化合物を用いることで、高湿環境下における感度低下を解消できる技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
上記提案された技術により、高湿環境下における感度低下は解消できる一方で、本発明者が更に検討を進めた結果、以下の事実が判明した。すなわち、カチオン重合型インクジェットインクにより形成した画像は、単に光のみ曝露された際の耐光性に関しては、色材として顔料を採用することである程度は確保できる。しかしながら、野外に印字画像が曝された場合の環境を想定、画像を光のみではなく、雨に曝された条件下での画像耐久性(耐候性)が低下することが判明した。これは、画像表面への水分供給と光照射が交互に起こる(晴天と雨天)ことにより、画像を形成する塗膜が膨潤と乾燥を繰り返すことで、光のみの照射では想定できなかった画像耐久性の劣化が生じたことを意味する。また、ラジカル重合型、カチオン重合型の何れにおいても、インクジェットプリンタで印字する場合、インクジェットヘッドによりインクを付与する際、記録媒体上を走査する方向に沿って光沢のムラが発生する、いわゆる光沢バンディングが問題となっている。特に、この現象は、双方向印字の場合に多くみられ、問題となっている。
【特許文献1】WO2004/007626号明細書
【特許文献2】特開2005−60716号公報
【特許文献3】特開平6−200204号公報
【特許文献4】特表2000−504778号公報
【特許文献5】特開2005−29632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、紫外線硬化型インクジェットインクを用いて形成した画像の耐候性、柔軟性、光沢バンディング耐性を改良する紫外線硬化型インクジェット用インクセット及びそれを用いたインクジェット画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物を含有するインクを含むカチオン性の紫外線硬化型インクジェット用インクセットにおいて、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの紫外線硬化型の各色インクと共に、少なくとも1色の紫外線硬化型の特色インクを有することを特徴とするカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を、r0は1〜3の整数を表す。Lは主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基、または単結合を表す。〕
【0015】
【化2】

【0016】
〔式中、Lは2個以上のエステル結合を有する2価の連結基、エーテル結合を有する2価の連結基、または置換基を有してもよい脂肪族基からなる2価の連結基を表す。〕
2.インクセットを構成する少なくとも1色の紫外線硬化型のインクが、エポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤を含有することを特徴とする前記1に記載のカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット。
【0017】
3.前記1または2に記載のカチオン性紫外線硬化性インクジェット用インクセットを用いるインクジェット画像形成方法であって、紫外線硬化型インクジェットインクを硬化する際の照度が、5mW/cm以上、50mW/cm以下であることを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、耐候性、柔軟性、光沢バンディング耐性に優れた紫外線硬化型インクジェットインク画像が得られる紫外線硬化型インクジェット用インクセット及びそれを用いたインクジェット画像形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、前記一般式(A)で表される化合物及び前記一般式(B)で表される化合物を含有するインクを含むカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセットにおいて、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの紫外線硬化型の各色インクと共に、少なくとも1色の紫外線硬化型の特色インクを有することを特徴とするカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセットにより、耐候性、柔軟性、光沢バンディング耐性に優れた紫外線硬化型インクジェットインク画像が得られる紫外線硬化型インクジェット用インクセットを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0021】
以下、本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクセットの各構成要素及びそれを用いたインクジェット画像形成方法の詳細について説明する。
【0022】
《紫外線硬化型インクジェット用インクセット》
〔一般式(A)表される化合物〕
はじめに、本発明に係る前記一般式(A)表される脂環式エポキシド化合物の詳細について説明する。
【0023】
前記一般式(A)において、R100、R101は各々置換基を表す。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。上記置換基の中でも好ましいものは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0024】
前記一般式(A)において、m0各々0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。
【0025】
前記一般式(A)において、Lは、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を表す。
【0026】
上記主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い2価の連結基の例としては、以下の列挙する基及びこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0027】
メチレン基[−CH−]、
エチリデン基[>CHCH]、
イソプロピリデン[>C(CH
1,2−エチレン基[−CHCH−]、
1,2−プロピレン基[−CH(CH)CH−]、
1,3−プロパンジイル基[−CHCHCH−]、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CHC(CHCH−]、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CHC(OCHCH−]、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CHC(CHOCHCH−]、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH)CHCH−]、
1,4−ブタンジイル基[−CHCHCHCH−]、
1,5−ペンタンジイル基[−CHCHCHCHCH−]、
オキシジエチレン基[−CHCHOCHCH−]、
チオジエチレン基[−CHCHSCHCH−]、
3−オキソチオジエチレン基[−CHCHSOCHCH−]、
3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CHCHSOCHCH−]、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH)CHOCH(CH)CH−]、
3−オキソペンタンジイル基[−CHCHCOCHCH−]、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCHOCHCO−]、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CHCHCHOCHCHCH−]、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CHCHOCHCHOCHCH−]、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH)CHOCH(CH)CHOCH(CH)CH−]、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CHCHOCHC(CHCHOCHCH−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CHCHOCHC(OCHCHOCHCH−]、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CHCHOCHC(CHOCHCHOCHCH−]、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CHCHO−COCHCHCO−OCHCH−]、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CHCHCO−OCHCHO−COCHCH−]、
1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C−]、
1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C10−]、
1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C10−]、
1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C10−]、
2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−CO−]
p−フェニレン基[−p−C−]、
m−フェニレン基[−m−C−]、
α,α′−o−キシリレン基[−o−CH−C−CH−]、
α,α′−m−キシリレン基[−m−CH−C−CH−]、
α,α′−p−キシリレン基[−p−CH−C−CH−]、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH−CO−CH−]
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH−CS−CH−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C−C(CH−p−C−]
3価以上の連結基としては、上記で列挙した2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基、及びそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0028】
は置換基を有していても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0029】
としては、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、各々主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0030】
以下に、一般式(A)表される脂環式エポキシドの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
本発明に係る一般式(A)表される脂環式エポキシド化合物においては、分子量を分子内のエポキシ基の総数で除した数値が、160以上、300以下であることが好ましい。
【0038】
〔一般式(B)で表される化合物〕
次に、一般式(B)で表される脂環式エポシキ化合物について説明する。
【0039】
前記一般式(B)において、Lは2個以上のエステル結合を有する2価の連結基、エーテル結合を有する2価の連結基、または置換基を有してもよい脂肪族基からなる2価の連結基を表す。置換基を有してもよい脂肪族基からなる2価の連結基としては、例えば、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基等)が挙げられる。本発明においては、エステル基及びエーテル基を併せて2個以上持つ化合物が好ましい。
【0040】
以下に、一般式(B)表される脂環式エポキシドの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化9】

【0042】
これら化合物は以下の文献を参照して合成することができる。
【0043】
丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年 Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds,Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985
吉村、接着、29巻12号、32、1985
吉村、接着、30巻5号、42、1986
吉村、接着、30巻7号、42、1986
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクセットを構成する紫外線硬化型のインク(以下、単に硬化型インクあるいはインクともいう)には、更にオキセタン環を有する化合物を用いることが好ましい。用いることのできるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号に記載されているような、公知のオキセタン化合物をいずれも使用することができる。オキセタン化合物の添加量としては、インク全質量に対し5〜80質量%の範囲が好ましい。5質量%未満では硬化性が低下し、80質量%以上では塗膜の柔軟性が失われる。
【0044】
〔エポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤〕
次に、本発明に係るエポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤について説明する。
【0045】
シランカップリング剤は、一般にガラス、金属等の無機成分と結合する反応部位と有機成分と反応する部位の両者を有している化合物であり、エポキシ系、ビニル系、アミン系、アクリル系シランカップリング剤等多々知られている。その中でも特に、エポキシ系またはグリシジル系シランカップリング剤を含有する硬化物は、硬化収縮が小さく、ガラス、金属等の基板との密着性が優れている。
【0046】
本発明に適用可能なエポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤の一例としては、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
本発明に係るインクに、エポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤を添加することによって、耐候性が更に向上する。その機構は明らかではないが、エポキシ基またはグリシジル基を含有するシランカップリング剤が光照射により架橋しながら、記録媒体への接着性を高めるために、光や水に曝されても画像が劣化しないためと推定している。
【0048】
エポキシ基またはグリシジル基含有のシランカプリング剤の添加量としては、インク全質量に対し3〜30質量%の範囲が好ましい。3質量%未満では効果を発現できず、30質量%より大きい場合は、硬化性を低下させるため好ましくない。
【0049】
〔色材〕
本発明に係る紫外線硬化型インクジェット用インクが含有する色材としては、染料あるいは顔料を制限なく用いることができるが、インク成分に対し良好な分散安定性を有し、かつ耐候性に優れた顔料を用いることが好ましい。
【0050】
本発明において使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。
【0051】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0052】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
【0053】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0054】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214等が挙げられる。また、シアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0055】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0056】
本発明においては、上記イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインクに加え、少なくとも1色の特色インクを用いることを特徴としている。
【0057】
本発明でいう特色インクとは、基本色(イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック)の1色と、基本色の他の1色との間の色相を有するインクであり、例えば、レッド、オレンジ、バイオレット、グリーン、ブルー等のインクを意味する。イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色インクと共に特色インクを用いることにより、吐出するインク量を低減することができる。
【0058】
本発明に係る特色インクで用いられる顔料としては、従来公知のものを使用することができるが、レッド、オレンジ、バイオレット、グリーン、ブルーに適する顔料としては、例えば
C.I.Pigment Red209、224、177、194、
C.I.Pigment Orange43、
C.I.Vat Violet3、
C.I.Pigment Violet19、23、37、
C.I.Pigment Green7、36、
C.I.Pigment Blue15:6、
等が用いられる。
【0059】
本発明に係るインクにおけるこれら顔料の含有量は、インク全質量の2〜10質量%とすることが好ましい。また、画像粒状感を低減するため、淡色インクを用いることがあるが、その際は、淡色インクの顔料濃度は、濃色インクに対して顔料の含有量を1/5〜1/2とすることが好ましい。
【0060】
本発明に係る顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。分散手段としては、従来公知の分散機、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0061】
本発明に係るインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、50nm以上、150nm以下がより好ましい。平均粒径を10nm以上とすることにより顔料粒子同士の凝集が生じにくくなり、平均粒径を200nm以下とすることによって、長期間にわたり保存した際に顔料が沈降する現象を抑制しやすくなるため、平均粒径を前記の範囲とすることで保存安定性が良好なインクを得られやすくなる。
【0062】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0063】
顔料分散剤としては、界面活性剤、高分子分散剤等が用いられるが、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0064】
具体的には、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti−Terra−U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製)、デモール(花王社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王社製)、ソルスパーズ(アビシア社製)、ニッコール(日光ケミカル社製)等が挙げられる。
【0065】
本発明に係るインクにおける分散剤の含有量は、顔料に対して10〜200質量%であることが好ましい。10質量%以上とすることで顔料分散の安定性が高められ、200質量%以下とすることでインクジェットヘッドからのインク吐出性が安定しやすくなる。
【0066】
〔光重合開始剤〕
本発明においては、硬化反応をより効率的に行うために、光重合開始剤を添加して硬化させる。光重合開始剤としては、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型の2種に大別できる。
【0067】
分子内結合開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンの如きアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0068】
一方、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系;ミヒラ−ケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。光重合開始剤を使用する場合の配合量は、インク組成物の0.01〜10.00質量%の範囲が好ましい。
【0069】
なお、本発明に係る紫外線硬化型のインクにおいては、公知の光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0070】
また、本発明に係る紫外線硬化型のインクには、特開平8−248561号、同9−34106号をはじめてとし、既に公知となっている紫外線の照射で発生した酸により新たに酸を発生する酸増殖剤を含有することが好ましい。酸増殖剤を用いることで、さらなる吐出安定性向上を可能とする。
【0071】
〔酸化防止剤〕
本発明に係るインクには、酸化防止剤を添加することができる。その機能としては、光、熱、酸素に曝されると塗膜が劣化し、画像保存性が低下することを抑制することにある。
【0072】
これら酸化防止剤の添加量としては、インク全体の0.05〜5質量%であることが好ましい。添加量が0.05質量%より少ないと効果が得られず、添加量が5質量%を越えると活性光線硬化型組成物の硬化性が低下するためである。
【0073】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスフォナイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0074】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、3,9′−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−4,6−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2′−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0075】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、テトラキス(3−ラウリルチオプロピオニルオキシメチル)メタン等が挙げられる。
【0076】
ホスファイト系酸化防止剤及びホスフォナイト系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト・ジステアリルペンタエリスリトール・ジホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、4,4′−イソプロピリデンビス(フェニルジアルキルホスファイト)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスフォナイト等が挙げられる。
【0077】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N′−4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。
【0078】
他に酸化防止剤としては、例えば、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号の各公報に記載の酸化防止剤、特開昭61−154989号公報に記載のヒドラジド類、特開昭61−146591号公報に記載のヒンダードアミン系酸化防止剤、特開昭61−177279号公報に記載の含窒素複素環メルカプト系化合物、特開平1−115677号公報および同1−36479号公報に記載のチオエーテル系酸化防止剤、特開平1−36480号公報に記載の特定構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤、特開平7−195824号公報および同8−150773号公報に記載のアスコルビン酸類、特開平7−149037号公報に記載の硫酸亜鉛、特開平7−314882号公報に記載のチオシアン酸塩類など、特開平7−314883号公報に記載のチオ尿素誘導体など、特開平7−276790号公報および同8−108617号公報に記載の糖類、特開平8−118791号公報に記載のリン酸系酸化防止剤が、特開平8−300807号公報に記載の亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などが、また、特開平9−267544号公報に記載のヒドロキシルアミン誘導体等を酸化防止剤として挙げることができる。更に、特開2000−263928号公報等に記載のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物なども用いることができる。
【0079】
〔界面活性剤〕
本発明に係るインクは、記録媒体へのインク着弾後の濡れ性を制御するたために、ノニオン性界面活性剤を配合することができる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、第2級アルコールエトキシレート、第1級アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、オレイルアルコールエトキシレート、ラウリルアルコールエトキシレート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールオレート、ソルビタンステアリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体が共重合されたアクリル樹脂等を例示することができる。さらには、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール、またはグリコールエーテル類等が例示される。該ノニオン性界面活性剤は、単独であっても2種類以上の混合物であってもよい。
【0080】
該ノニオン性界面活性剤は、インク中に10〜10,000ppm配合されることが望ましい。さらに好ましくは、該ノニオン性界面活性剤は、20〜1,000ppm配合することが推奨される。配合量が10ppm未満の場合には、十分な本発明の効果が得られないことがある。また、配合量が10,000ppmを超えて配合される場合には、印字部の耐候性がやや悪化する傾向にある。
【0081】
本発明においては、ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤であることが更に好ましい。これは、フッ素原子、パーフルオロアルキル基のもつ電気特性と分子特性に関連しているものと考えられる。
【0082】
本発明で使用される分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、具体的には例えば、「サーフロン(SURFLON)S−141」、「サーフロンS−145」、「サーフロンS−381」、「サーフロンS−383」、「サーフロンS−393」、「サーフロンSC−101」、「サーフロンSC−105」、「サーフロンKH−40」、「サーフロンSA−100」(以上、セイミケミカル(株)の製品)、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−173」、「メガファックF−177」、「メガファックF−178A」、「メガファックF−178K」、「メガファックF−179」、「メガファックF−183」、「メガファックF−184」、「メガファックF−815」、「メガファックF−470」、「メガファックF−471」(以上、大日本インキ化学工業(株)の製品)等を例示することができる。(参考文献;「13700の化学商品」、p1239−p1242、化学工業日報社(2000))。該パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤は、単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0083】
《インクジェット画像形成方法》
次いで、本発明のインクジェット画像形成方法について説明する。
【0084】
本発明のインクジェット画像形成方法では、本発明のカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセットを構成するイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクを、インクジェット記録方式により記録材料上に吐出し、次いで紫外線等の紫外線を照射してインクを硬化させる。
【0085】
インクの吐出条件としては、ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。紫外線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きい。粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらできるだけ一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅は設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0086】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜25plであることが好ましい。高精細画像を形成するために液滴量がこの範囲であることが必要である。
【0087】
次に照射方法であるが、基本的な照射方法は、特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらのいずれの照射方法も用いることが可能である。
【0088】
〔記録媒体〕
本発明のインクジェット画像形成方法で用いることのできる記録媒体としては、具体的には、表面に樹脂をコートした紙、金属類、ガラス類や、一般的に軟包装材料等に用いられる各種のインク非吸収性のプラスチックフィルムが代表例である。軟包装材料の材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。また、これらの共重合体やブレンド物、更には架橋したものを用いることもできる。中でも延伸したポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロンが、透明性、寸法安定性、剛性、環境負荷、コストの面で好ましい。フィルムの厚みは2〜100μm、更に好ましくは6〜80μm、更に好ましくは10〜70μmである。
【0089】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作成効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体を使用するのが有利である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0091】
《架橋性高分子化合物の調製》
グリシジルメタクリレートを56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒドを48g、ピリジンを2g及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩を1g、それぞれ反応容器に入れ、80度の湯浴中で8時間攪拌した。
【0092】
次に、重合度300、ケン化率98%のポリ酢酸ビニルケン化物の45gをイオン交換水の225gに分散した後、この溶液にリン酸を4.5gと上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをポリビニルアルコールに対して変性率が3モル%になる様に加え、90℃で6時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂の30gを加え1時間攪拌した。イオン交換樹脂を濾過した後、純水により希釈し、架橋性高分子化合物の15質量%水溶液を得た。架橋性高分子化合物は、親水性主鎖であるポリ酢酸ビニルのケン化物に複数の側鎖を有しており、活性エネルギー線を照射することにより側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物である。
【0093】
《水系紫外線硬化型のインクセットの調製》
〔インクセット101の調製〕
下記の方法に従って、ブラックインク1、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1を調製し、これをインクセット101とした。
【0094】
(ブラックインク1の調製)
下記の組成物を順次混合し、ビーズミルを用いて分散した後、#3000の金属メッシュフィルターでろ過して、ブラックインク1を調製した。
【0095】
架橋性高分子化合物 固形分として3部
ジエチレングリコール 8部
2−ピロリジノン 10部
1,2−ヘキサンジオール 6部
増感剤:トリエタノールアミン 1部
界面活性剤:オルフィンE1010(日信化学工業社製) 1部
重合開始剤:イルガキュア2959(チバ・ジャパン社製) 1部
顔料:Cab−O−Jet300(キャボット社製 ブラック自己分散顔料)
固形分として3部
防黴剤:Proxel GXL(アビシア社製) 0.2部
以上の各組成物にイオン交換水を加え、100部に仕上げた。
【0096】
(イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1の調製)
上記ブラックインク1の調製において、顔料:Cab−O−Jet300に代えて、それぞれCab−O−Jet270(キャボット社製 イエロー自己分散顔料)、Cab−O−Jet260(キャボット社製 マゼンタ自己分散顔料)、Cab−O−Jet250(キャボット社製 シアン自己分散顔料)に変更した以外は同様にして、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1を調製した。
【0097】
〔インクセット102〜110の調製〕
(顔料分散液の調製)
〈顔料分散液1の調製:ブラック顔料分散液〉
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤) 9部
OXT−221(東亞合成社製) 71部
室温まで冷却した後、これに下記顔料1の20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記に示す時間(10時間)で分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して、ブラック顔料分散液である顔料分散液1を調製した。
【0098】
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 10時間
〈顔料分散液2の調製:シアン顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料2を用い、分散時間を9時間に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液である顔料分散液2を調製した。
【0099】
顔料2:Pigment Blue 15:4(大日精化社製、ブルーNo.32)
9時間
〈顔料分散液3の調製:イエロー顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料3を用い、分散時間を8時間に変更した以外は同様にして、イエロー顔料分散液である顔料分散液3を調製した。
【0100】
顔料3:Pigment Yellow 150(LANXESS社製、E4GN−GT CH20015) 8時間
〈顔料分散液4の調製:マゼンタ顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料4を用いた以外は同様にして、マゼンタ顔料分散液である顔料分散液4を調製した。
【0101】
顔料4:Pigment Red 122(大日精化社製、CFR−321)
10時間
〈顔料分散液5の調製:バイオレット顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料5を用い、分散時間を11時間に変更した以外は同様にして、特色のバイオレット顔料分散液である顔料分散液5を調製した。
【0102】
顔料5:Pigment Violet 19(チバ・ジャパン社製 Cinquasia Red B RT−790−D) 11時間
〈顔料分散液6の調製:グリーン顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料6を用い、分散時間を8時間に変更した以外は同様にして、特色のグリーン顔料分散液である顔料分散液6を調製した。
【0103】
顔料6:Pigment Green 36(大日本インキ社製 Fastgen Green 2YP) 8時間
〈顔料分散液7の調製:レッド顔料分散液〉
上記顔料分散液1の調製において、顔料1に代えて、下記顔料7を用い、分散時間を11時間に変更した以外は同様にして、特色のレッド顔料分散液である顔料分散液7を調製した。
【0104】
顔料7:Pigment Red 209(クラリアント社製 Hostaperm Red EG Transparent) 11時間
(インクセットの調製)
表1に記載の上記調製した各顔料分散液を用い、表1に記載の各添加剤を含む各色インクから構成されるインクセット102〜110を調製した。なお、各色インクは、表1に記載の各添加剤を加えた後、ADVATEC社製のテフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。
【0105】
なお、インクセット102、105には単官能エポキシ化合物としてデナコールEX−146(ナガセケムテックス社製)を、インクセット110にはエポキシ基含有シランカップリング剤として、KBM−403(信越化学社製)を添加した。
【0106】
表1に、インクセット102〜110の各添加剤の種類及び添加量を示す。
【0107】
【表1】

【0108】
なお、表1に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0109】
〈インク番号〉
K1:顔料分散液1(ブラック顔料分散液)を用いて調製
C1:顔料分散液2(シアン顔料分散液)を用いて調製
Y1:顔料分散液3(イエロー顔料分散液)を用いて調製
M1:顔料分散液4(マゼンタ顔料分散液)を用いて調製
V1:顔料分散液5(バイオレット顔料分散液)を用いて調製、特色インク
G1:顔料分散液6(グリーン顔料分散液)を用いて調製、特色インク
R1:顔料分散液7(レッド顔料分散液)を用いて調製、特色インク
〈紫外線硬化性化合物〉
OXT221:単官能オキセタン化合物、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、東亞合成社製
EX146:デナコールEX146、グリシジル基を有する単官能エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製
〈シランカップリング剤〉
KBM−403:エポキシ基含有シランカップリング剤、信越化学社製
〈光重合開始剤〉
CPI−100P:トリアリルスルホニウム塩のプロピレンカーボネート50%溶液、サンアプロ社製
【0110】
【化10】

【0111】
《インクセットの評価》
上記調製した各セットインクについて、下記の方法に従って印画サンプルの作成及び評価を行った。
【0112】
〔インクジェット画像の形成〕
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に、上記調製したインクセットを装填し、幅600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、画像記録を連続して行った。画像データとしては「高精細カラーデジタル標準画像データ『N5・自転車』(財団法人 日本規格協会 1995年12月発行)」を用いた。また、耐候性及び柔軟性を評価するために、幅600mm、長さ100mmのインク単色のベタ画像を印字した。このベタ画像は評価するインクの色数の分だけ印字した(各色ともインク吐出量:100%、例えば、4色のインクセットの場合は、4種のベタ画像)。また、記録媒体としては、塩化ビニル製シート(3M社製 IJ−180)を用いた。
【0113】
インク供給系はインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpi(dpiとは1インチ即ち2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより瞬時(着弾後1秒未満)に硬化した。画像記録後、トータルインク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。
【0114】
なお、インクジェット画像の形成は、25℃、50%RHの環境下で行った。
【0115】
以上の様にして、インクセット101〜110を用いて、画像試料101〜110を作成した。
【0116】
〔形成画像の評価〕
(耐候性の評価)
スガ試験機社製の低温キセノンフェードメータ XL75を用いて、8時間にわたり60℃、55%RH条件でキセノンランプ(50W/m)を照射した後、光を照射しながら、庫内で雨を5分間降らせ、次いで、ランプ消灯し、50℃、95%RHの環境で4時間放置した。このトータル処理を1サイクルとして、これを168サイクル(2030時間)継続して処理した画像について、未処理ベタ画像に対する濃度変動率を求め、下記の基準に従って耐候性を評価した。なお、濃度変動率はインクセット中の各色の濃度変動率を平均化した値を採用した。
【0117】
◎:画像濃度低下率が5%以下
○:画像濃度低下率が6%以上〜15%以下
△:画像濃度低下率が16%以上〜25%以下
×:画像濃度低下率が26%以上
(柔軟性の評価)
上記インクジェット画像形成方法により作成した画像のうち、単色ベタ印刷部分を10cm四方に切り取り、印字面を表側にして、4つ折りにした。この時、4つ折りした正方形の中心は2回の折り曲げ力が働くことになる。この中心部分における亀裂発生の有無を目視観察し、下記の基準に従って柔軟性の評価を行った。
【0118】
○:亀裂の発生がまったく認められない
△:2回目の折り曲げで、亀裂の発生が認められる
×:1回目の折り曲げで、亀裂が発生する
尚、上記評価結果は、インク色数分の評価結果のうち、もっとも結果が劣る色のデータを採用した。
【0119】
(光沢バンディング耐性の評価)
光沢バンディングとは、主走査方向に沿って光沢のむらが発生する現象である。
【0120】
上記インクジェット画像形成方法により作成した画像のうち、『N5・自転車』の画像及び単色ベタ画像を目視観察し、以下の基準に従って光沢バンディング耐性を評価した。
【0121】
○:光沢のムラの発生が認められない
△:若干の光沢ムラが視認でき、プリントサンプルとして不適なレベル
×:光沢のムラがはっきりと視認できる
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
表2に記載の結果より明らかなように、試料101による画像は柔軟性には優れるが、光沢バンディングの発生がみられ、耐候性が大きく劣る。これは上記のように、耐候性評価が光と水の両方への曝露となり、光架橋性ポリビニルアルコールを用いているので、塗膜が水溶性を呈し、画像が水付与によって記録媒体から剥離してしまうことに起因すると考えられる。これに対して、試料102〜105は画像の光沢バンディングが解消されず、耐候性、柔軟性についても性能向上が得られない。試料105は特色を用いていることで、画像形成に用いるインク総量を減らすことができるが、全体のインク付与量性能改良には貢献できていない。
【0124】
これに対して、化合物A−11、B−10を併用した試料106は耐候性、柔軟性にいくらかの改良効果が見られるものの、光沢バンディング改良には至っていない。これに対して、特色を導入することで、試料107、108は光沢バンディングの改良効果は得られるものの、耐候性、柔軟性との両立ができない。一方、試料109は化合物A及びBを併用し、インクに特色を導入することで、これらの項目を全て満足する性能が得られることが分かった。
【0125】
また、この効果は、試料110において、エポキシ基含有シランカップリング剤を導入することで、耐候性、光沢バンディングを更に改良できることが分かった。この改良に至った原因は明確ではないが、このシランカップリング剤はエポキシ基を含有するため、光エネルギー照射によって、他のモノマーと架橋し重合物を生成するが、本来のカップリング剤の機能を発現し、記録媒体への接着性向上に寄与することで、光や熱の暴露によっても色材を含有する膜が脱離しにくくなっていることがその背景にあると考えられる。但し、この化合物は重合に寄与できる官能基はひとつしかもっておらず、強固な硬化膜を形成する機能は有していない。このため、光照射による硬化膜形成の速度をわずかに低下させ、インクドットの記録媒体着弾から硬化までの時間が長くなることで、適切にドットが広がり、画像平滑性が向上したことに起因するのではないかと推定している。
【0126】
光沢バンディングは、紫外線硬化型のインクを用いたプリントには特有の現象である。その原因は明確ではないが、主走査方向に沿って光沢ムラが発生していることから、光照射後の膜の硬化度、平滑性の違いが画像表面の反射率に影響し、光沢の差となって現れている現象と推定される。
【0127】
試料101は、ポリビニルアルコールを主鎖とする、水系の紫外線硬化性樹脂を用いているため膜の柔軟性が高く、光沢バンディングも抑制されているが、水系インクであるために、硬化にはポリビニルアルコール部分の架橋と、水分の蒸発が必要になる。このため、硬化速度が非水系紫外線硬化型インクに比べ遅いと推定できる。すなわち、記録媒体へのインク着弾後から硬化までの時間がやや長く、この間にドットが濡れ広がり、隣接するドット間の凹凸が抑制され、硬化膜の平滑性が高まることにより光沢のばらつきが抑制されるではないかと推定している。ただし、試料101については柔軟性、光沢バンディングの改良効果は十分ではない。
【0128】
これに対して、インクセット102−104は主成分であるオキセタンOXT221が57%と高く、硬化度及び、硬化速度は高いと推定される。このため、記録媒体へのインク着弾後、異色間、同色間ドット同士、主走査印字幅同士のドットの融合が進む前に、硬化が終了し、画像内での硬化膜厚さにばらつきが生じているのではないかと考えられる。
【0129】
一方、インクセット105を用いた試料105は、特色を用いることによって記録媒体に付与されるインク総量は少なくなり、硬化後の高低差がやや少なくなるが膜の硬化度は高く、デナコールEX−146では改良効果がみられない。
【0130】
これに対し、試料106では、インクセットに化合物A及びBを併用することで、柔軟性、耐候性に改良傾向がみられるが、光沢バンディング改良が不十分である。これは、特色インクを使用しておらず、インク付与量が多いことに関係していると考えられる。
【0131】
一方、試料107は、本発明に係る化合物B−8を特色インクと共に併用することで、インク付与量を減少させることができ、膜の硬化度が制御され、光沢バンディングが若干改良されたと推定できる。但し、柔軟性は改良できていない。
【0132】
また、試料108では特色に化合物A−21を併用することで、膜の硬化度が制御され、柔軟性が向上しながら、光沢バンディングも改良傾向にある。ここまでの知見を踏まえ、特色インク、化合物A、化合物Bを併用したインクセット109、これを用いて作成した試料109では、耐候性、柔軟性、光沢バンディングを改良することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物を含有するインクを含むカチオン性の紫外線硬化型インクジェット用インクセットにおいて、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの紫外線硬化型の各色インクと共に、少なくとも1色の紫外線硬化型の特色インクを有することを特徴とするカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット。
【化1】

〔式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を、r0は1〜3の整数を表す。Lは主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基、または単結合を表す。〕
【化2】

〔式中、Lは2個以上のエステル結合を有する2価の連結基、エーテル結合を有する2価の連結基、または置換基を有してもよい脂肪族基からなる2価の連結基を表す。〕
【請求項2】
インクセットを構成する少なくとも1色の紫外線硬化型のインクが、エポキシ基またはグリシジル基を有するシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のカチオン性紫外線硬化型インクジェット用インクセット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカチオン性紫外線硬化性インクジェット用インクセットを用いるインクジェット画像形成方法であって、紫外線硬化型インクジェットインクを硬化する際の照度が、5mW/cm以上、50mW/cm以下であることを特徴とするインクジェット画像形成方法。

【公開番号】特開2010−83944(P2010−83944A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252763(P2008−252763)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】