説明

カチオン性電着塗料組成物の塗装方法

【課題】
鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含有することなく、限界の防錆性および無処理鋼板上での防錆性において、優れた塗膜を形成しうるカチオン性電着塗料組成物の塗装方法を提供する。
【解決手段】
(A)エポキシ樹脂にアミンを反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂をカチオン化したカチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)、(B)ブロック化ポリイソシアネート(硬化剤樹脂)、(C)酸化亜鉛、および(D)水酸化ジルコニウムを含有するカチオン性電着塗料組成物を使用する塗装方法。この塗装方法は自動車車体およびその部品、電気器具等の電着塗装に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛化合物やクロム化合物などの有害物質を含有することなく、特に無処理鋼板に対して優れた防錆性を発揮しうるカチオン性電着塗料組成物の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、自動車車体およびその部品、電気器具等の袋部構造を有する部材に対して、エアースプレー塗装や静電スプレー塗装と比較して、つきまわり性に優れ、また環境汚染も少ないことから、プライマー塗装として広く実用化されるに至っている。そして、防錆品質を一層向上させることを目的として防錆顔料を添加することが行われている。
【0003】
代表的な防錆顔料としては、鉛化合物やクロム化合物があるが、昨今の環境規制および法規制の動向を勘案すれば、このような有害物質を含有する塗料は好ましくない。そこで、近年において無毒性ないしは低毒性の防錆顔料が開発され、これらを用いたカチオン性電着塗料組成物が実用化に至っている。
【0004】
無毒性ないしは低毒性の防錆顔料を使用した、カチオン性電着塗料組成物としては、特許文献1〜6を挙げることができる。具体的には、防錆顔料について、特許文献1、2はビスマス化合物を記載し、特許文献3は酸化タングステンを記載し、特許文献4は縮合リン酸アルミニウム化合物を記載し、特許文献5は亜リン酸化合物を記載する。しかしながら、これらの技術は、限界の防錆性、無処理鋼板上の防錆性においては、鉛化合物やクロム化合物などの有害物質を含有する防錆顔料を用いた従来のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法に比べて、十分な防錆力が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献6においては、防錆顔料としてビスマス化合物以外にジルコニウム化合物が記載されているが、ジルコニウム化合物の方がビスマス化合物よりも防錆性が優れているわけではなく、限界の防錆性、無処理鋼板上の防錆性については、上記特許文献1〜5と同程度である。従って、鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含まない電着塗料は、防錆性能が未だ不十分であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−230151号公報
【特許文献2】特開平11−106687号公報
【特許文献3】特開平6−220371号公報
【特許文献4】特開2001−329221号公報
【特許文献5】特開平9−241546号公報
【特許文献6】特開2000−290542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含まず、しかも限界の防錆性および無処理鋼板上の防錆性において、既存の無毒性ないしは低毒性の防錆顔料を用いたカチオン性電着塗料組成物の塗装方法に比べて、より優れた特性を発揮するカチオン性電着塗料組成物の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、防錆剤として酸化亜鉛と水酸化ジルコニウムを併用することで防錆性が飛躍的に向上し、これらをエポキシ樹脂から得られるカチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)とブロック化ポリイソシアネート(硬化剤)に配合することで既存の電着塗料組成物に比べて優れた限界の防錆性および無処理鋼板上の防錆性が達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)エポキシ樹脂にアミンを反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂をカチオン化したカチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)、(B)ブロック化ポリイソシアネート(硬化剤樹脂)、(C)酸化亜鉛、および(D)水酸化ジルコニウムを含有するカチオン性電着塗料組成物を使用することを特徴とする塗装方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含有せずに、限界の防錆性(特に耐塩水噴霧試験や耐温塩水浸漬試験)および無処理鋼板上の防錆性(特に耐塩水噴霧試験や耐温塩水浸漬試験)において、鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含有する防錆顔料を用いた従来のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法と同等以上の特性が達成される。従って、本発明のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法は、自動車車体およびその部品、電気器具等の電着塗装に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に使用されるカチオン性電着塗料組成物は、(A)エポキシ樹脂にアミンを反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂をカチオン化したカチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)、(B)ブロック化ポリイソシアネート(硬化剤樹脂)、(C)酸化亜鉛、および(D)水酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする。
【0012】
(A)基剤樹脂は、エポキシ樹脂にアミンを反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂をカチオン化したカチオン性アミン変性エポキシ樹脂である。アミン変性を行う前のエポキシ樹脂については、好ましくは平均して1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、そのエポキシ当量は400〜3000、特に500〜1500が好ましい。エポキシ樹脂を構成する主成分は、2価フェノールのグリシジルエーテルである。2価フェノールとしては、レゾルシン、ハイドロキノン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニール等を挙げることができるが、特に好ましくは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、いわゆるビスフェノールAである。
【0013】
(A)基剤樹脂には、必要に応じて、ポリオール、ポリアルキルポリオール、ポリアルキルフェノール等のグリシジルエーテルを可撓性変性剤として加えることもできる。その導入方法としては、これら可撓性グリシジルエーテルを過剰の2価フェノールと反応させて初期縮合物を得た後、2価フェノールのグリシジルエーテルとの反応により、目標とする分子量まで鎖長延長する方法が、反応効率のよいものとして例示されるが、これに限定されるものではない。上記の2価フェノール、あるいは2価フェノールのグリシジルエーテルに使用される2価フェノールとしては、レゾルシン、ハイドロキノン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニール等を例示することができるが、特に好ましくは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、いわゆるビスフェノールAである。
【0014】
また、エポキシ骨格中に存在する水酸基に対し、例えばポリオールで半ブロック化したイソシアネートを付加することによっても可撓性の付与、加えて分子量の調整が可能である。
【0015】
ポリオール、ポリアルキルポリオール、ポリアルキルフェノール等のジグリシジルエーテルと2価フェノールのジグリシジルエーテルと2価フェノールとの反応は、溶剤なしの溶融体中で行うことができるが、少量の溶剤を添加した系で行うことも可能である。溶剤としては、エポキシ基と反応しない溶剤であれば特に限定されない。反応温度は、70〜180℃が適当である。
【0016】
エポキシ樹脂と反応させるアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等あるいはこれらの混合物を挙げることができる。エポキシ樹脂とアミンの反応は、1級アミノ基をあらかじめケトンと反応させてブロック化した後、残りの活性水素とエポキシ基を反応させてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂とアミンを反応させるアミノ化は、溶剤中または溶剤なしの溶融体中で行うことができ、反応温度は40〜150℃が適当である。
【0018】
アミン変性エポキシ樹脂をカチオン化する方法としては、アミノ基をプロトン酸で中和することにより行うことができる。好ましいプロトン酸としては、ギ酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸等あるいはこれらの混合物を挙げることができる。酸の中和度としては、それぞれ15〜85%が好ましい。
【0019】
(B)硬化剤樹脂は、ポリイソシアネートとブロック剤とが反応したブロック化ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、芳香族あるいは脂肪族(脂環式を含む)のポリイソシアネートであり、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3あるいは1,4−ビス−(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビス−(イソシアネートメチル)−ノルボルナン、3あるいは4−イソシアネートメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、m−あるいはp−キシリレンジイソシアネート、m−あるいはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、さらには上記イソシアネートのビュレット変性体あるいはイソシアヌレート変性体を挙げることができる。
【0020】
さらには、上記イソシアネートのイソシアネート基の一部をポリオールで連結したものを挙げることができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール等の低分子ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリラクトンジオール等のオリゴマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールで連結したポリイソシアネートあるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0021】
ブロック剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール化合物、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のセロソルブ系化合物、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のカルビトール系化合物、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、ε−カプロラクタム等のラクタム化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系化合物、アセト酢酸エチルエステル、マロン酸ジエチルエステル等の活性メチレン基含有化合物を挙げることができる。
【0022】
ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、溶剤中あるいは溶融体中で実施することができる。反応に使用する溶剤としては、ポリイソシアネートと反応しない溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサン、イソホロン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素を挙げることができる。反応温度については特に限定はないが、好ましくは30〜150℃である。
【0023】
(C)酸化亜鉛は、市販品を使用することができ、例えばJIS K−1410で規定される酸化亜鉛1種、酸化亜鉛2種、酸化亜鉛3種を挙げることができる。
【0024】
(D)水酸化ジルコニウムとしては、第一稀元素化学工業(株)製R水酸化ジルコニウム、NN水酸化ジルコニウムを挙げることができる。水酸化ジルコニウムは、水に不溶であり、塗料中においても溶解したり、イオン化したりするものではない。(D)水酸化ジルコニウムは、水と混合するとイオン化する硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル等とは異なる。
【0025】
本発明に使用されるカチオン性電着塗料組成物は、酸化亜鉛と水酸化ジルコニウムを併用するため、限界の防錆性(特に耐塩水噴霧試験や耐温塩水浸漬試験)および無処理鋼板上の防錆性(特に耐塩水噴霧試験や耐温塩水浸漬試験)において、鉛化合物やクロム化合物等の有害物質を含有する防錆顔料を用いた従来のカチオン性電着塗料組成物と同等以上の特性が達成される。酸化亜鉛あるいは水酸化ジルコニウムを単独で使用した場合は、本発明の効果は達成されない。
【0026】
本発明に使用されるカチオン性電着塗料組成物に用いる酸化亜鉛および水酸化ジルコニウムの含有量は、特に限定されないが、好ましくは塗料組成物中の全樹脂固形分100重量部に対してそれぞれが0.1〜15重量部であり、より好ましくはそれぞれが0.1〜10重量部である。また、塗料組成物中の(A)カチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)と(B)ブロック化ポリイソシアネート(硬化剤樹脂)の含有割合は、固形分重量比で90〜40/10〜60であり、好ましくは85〜40/15〜60、より好ましくは80〜55/20〜45である。
【0027】
本発明に使用されるカチオン性電着塗料組成物には、上記の(A),(B),(C)および(D)成分以外に、さらに必要に応じて通常の塗料添加物、例えばチタンホワイト、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料、カオリン、タルク、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、シリカ等の体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、ビスマス化合物等の防錆顔料、消泡剤、ハジキ防止剤等の添加剤、水性溶剤あるいは硬化触媒等を含有することができる。またその他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂等を含有することができる。
【0028】
本発明に使用されるカチオン性電着塗料組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば(A)基剤樹脂と(B)硬化剤樹脂を反応容器に仕込み、撹拌を行って十分に混合した後、酸を加えてアミン変性エポキシ樹脂のアミノ基をカチオン化し、これに水を加えてエマルションを作製し、一方、(A)基剤樹脂に酸と水を加えて水溶性ビヒクルを作製し、これに(C)酸化亜鉛および(D)水酸化ジルコニウム、また必要に応じて着色顔料や添加剤を加えた後、サンドミル等の分散機にて必要な粒度まで分散を行って顔料ペーストを作製し、このようにしてそれぞれ得られたエマルションと顔料ペーストを混合することによって調製することができる。
【0029】
上記のようにして得られるカチオン性電着塗料組成物は、通常、水に分散した状態で既知のカチオン電着塗装によって所望の基剤表面に塗装することができる。具体的には塗料の固形分濃度は、好ましくは約5〜40重量%、さらに好ましくは15〜25重量%であり、pHは5〜8に調整し、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜450Vの条件で、被塗物を陰極として塗装することができる。塗装された被塗物を水洗した後、焼付け炉中で100〜200℃で10〜30分焼き付けることによって硬化塗膜を得ることができる。本発明のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法から得られる塗膜の膜厚は特に制限されないが、硬化塗膜において5〜60μm、好ましくは10〜40μmが適当である。
【実施例】
【0030】
本発明のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法の優れた効果を以下の実施例により示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(基剤樹脂A1の製造)
表1に示す原料を用い、下記に示す方法により基剤樹脂A1を製造した。撹拌機、温度計、冷却管を備えた3リットル4ツ口フラスコに、原料(1)、(2)、(3)を仕込み、攪拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で6時間保持した後、原料(4)を徐々に投入し、80℃まで冷却した。次いで原料(5)を投入し、100℃まで昇温した。100℃で2時間保持した後、80℃まで冷却して取り出した。得られた基剤樹脂A1は、固形分70%であった。
【0032】
【表1】

【0033】
(基剤樹脂A2の製造)
表2に示す原料を用い、下記に示す方法により基剤樹脂A2を製造した。撹拌機、温度計、冷却管を備えた5リットル4ツ口フラスコに、原料(1)、(2)、(3)、(4)を仕込み、攪拌、加熱を行って150℃まで昇温した。150℃で6時間保持した後、原料(5)を徐々に投入し、80℃まで冷却した。次いで原料(6)を投入し、100℃まで昇温した。100℃で2時間保持した後、80℃まで冷却して取り出した。得られた基剤樹脂A2は、固形分70%であった。
【0034】
【表2】

【0035】
(硬化剤樹脂Bの製造)
表3に示す原料を用い、下記に示す方法により硬化剤樹脂Bを製造した。撹拌機、温度計、冷却管を備えた5リットル4ツ口フラスコに、原料(1)、(2)を仕込み、攪拌、加熱を行って100℃まで昇温した。その後フラスコ内温度を100℃に保ちながら、予め原料(3)に溶解した原料(4)の溶液を1時間かけて仕込み、100℃で2時間反応させた。次いで同温度を保持して原料(5)を1時間かけて滴下し、滴下後さらに100℃で2時間保持した後、80℃まで冷却して取り出した。得られた硬化剤樹脂Bは、固形分75%であった。
【0036】
【表3】

【0037】
[エマルションE1の調製]
基剤樹脂A1 857重量部、硬化剤樹脂B 400重量部、プロピレングリコールモノフェニルエーテル50重量部を、攪拌機、温度計、冷却器および減圧装置を備えた反応容器に仕込んだ。十分に混合した後、反応容器に50%乳酸35.6重量部を加えて40〜70℃で30分間攪拌し、次いで脱イオン水701重量部を添加した。続いて約70℃で300〜600mmHg(ゲージ圧)の圧力下で所定量の脱溶剤を行いながら同時にエマルション化を行った。その後脱イオン水1296重量部を加え、固形分30%のエマルションE1を得た。
【0038】
[エマルションE2の調製]
基剤樹脂A2 857重量部、硬化剤樹脂B 400重量部、プロピレングリコールモノフェニルエーテル50重量部を、攪拌機、温度計、冷却器および減圧装置を備えた反応容器に仕込んだ。十分に混合した後、反応容器に50%乳酸35.6重量部を加えて40〜70℃で30分間攪拌し、次いで脱イオン水701重量部を添加した。続いて約70℃で300〜600mmHg(ゲージ圧)の圧力下で所定量の脱溶剤を行いながら同時にエマルション化を行った。その後脱イオン水1296重量部を加え、固形分30%のエマルションE2を得た。
【0039】
[顔料ペーストの調製]
表4および表5に示す配合で各原料を容器に仕込み、ディゾルバーで十分攪拌した後、横型サンドミルで粒ゲージ粒度10μm以下になるまで分散し、顔料ペーストP1〜P10を得た。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
実施例1〜8、比較例1〜5
表6および表7に示す組成で、エマルション1948重量部に、顔料ペースト431重量部、脱イオン水1621重量部、必要により表6および表7に記載の重量部の酸化亜鉛、水酸化ジルコニウムを添加し、実施例1〜8および比較例1〜5のカチオン性電着塗料を得た。
【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
[試験板の作製方法]
上記のカチオン性電着塗料を用いて、カーボン電極を陽極とし、脱脂した冷延鋼板((株)パルテック社製、0.8×70×150mm、化成処理無し)を陰極とし、電着塗料温度30℃、塗装電圧200〜300Vで、かつ焼付け後の膜厚が15μmとなる条件で電着塗装を行い、170℃で20分間焼付けを行って各試験板を得た。
【0046】
この電着塗料された試験板に関して下記の(1)〜(4)の評価を行なった。
(1) 塗面平滑性
試験板の塗面のRa(中心線平均粗さ)を表面粗度計((株)ミツトヨ社製)で測定し、評価した。Raが0.15μm以下であれば◎、0.15〜0.20μmであれば○、0.20〜0.25μmであれば△、0.25μm以上であれば×とした。
(2) 耐溶剤性
試験板の塗膜に対してエタノール/アセトンの混合液(重量比1/1)で溶剤拭きを行い、塗膜外観に変化がなければ○とした。
(3) 耐塩水噴霧性
JIS−Z−2731に準じて行った。電着塗装面に素地に達する傷をカッターナイフで入れ、480時間後の錆幅を評価した。錆幅が小さい方が性能が良好である。
(4) 塩水浸漬試験
50℃、5%の食塩水に塗装試験板を480時間浸漬した後、水洗、風乾して、試験面全体にセロハン粘着テープを気泡を含まないように貼った後、テープを引き剥がして、試験面全体に対する塗膜剥離面積の割合(%)を測定した。剥離面積が小さい方が性能が良好である。
【0047】
[評価結果]
実施例1〜8および比較例1〜5の塗膜性能評価結果を表8および表9に示す。
【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

【0050】
表8、9の結果からわかるように、酸化亜鉛および水酸化ジルコニウムを併用した実施例1〜8では、耐塩水噴霧試験および耐温塩水浸漬試験において、比較例1〜5より防錆性能が優れる結果となっている。
【0051】
本発明のカチオン性電着塗料組成物の塗装方法は、限界の防錆性および無処理鋼板上の防錆性において、鉛化合物やクロム化合物等の防錆顔料を含有する従来のカチオン性電着塗料組成物を用いた塗装方法と同等以上の特性が達成されるため、自動車車体およびその部品、電気器具等の電着塗装に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂にアミンを反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂をカチオン化したカチオン性アミン変性エポキシ樹脂(基剤樹脂)、(B)ブロック化ポリイソシアネート(硬化剤樹脂)、(C)酸化亜鉛、および(D)水酸化ジルコニウムを含有するカチオン性電着塗料組成物を使用することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2011−202048(P2011−202048A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71236(P2010−71236)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(397068528)デュポン神東・オートモティブ・システムズ株式会社 (15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】