説明

カチオン電着塗料と電着塗装方法及び該電着塗装方法による塗装物品

【課題】 つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れるカチオン電着塗料を提供すること。
【解決手段】
カチオン電着塗料と電極とを有する塗料槽に、金属被塗物を浸漬し通電してなるカチオン電着塗装において、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)における第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件としたときに、電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)が0.05mA/cm未満であることを特徴とするカチオン電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れるカチオン電着塗料及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料は、塗装作業性が優れ形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車ボディなどの導電性金属製品の下塗り塗料として広く使用されている。
最近、自動車ボディの衝突安全性向上の面から自動車ボディの強度アップが図られ、袋構造部などにおいて補強部材が重なり合った構造が多く用いられるようになってきた。そのような袋構造部では電着塗装時の電気が流れにくく電流密度が低下することから電着塗膜が形成し難くなる。
また従来では、自動車ボディの耐クレタリング(ガスピンホール)向上を目的として自動車ボディの一部に電気亜鉛メッキ鋼板を使用していたが、最近では合金化溶融亜鉛メッキ鋼板が多く使用されるようになってきた。
従来からこのような袋構造の内板膜厚を確保して耐食性を得るために電着塗装条件の工夫がなされているものの、内板膜厚(例えば、10μm)を確保するために電着塗装電圧を上げると、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上を用いた外板面にクレタリング(ガスピンホール)が発生する。一方、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の外板面にクレタリング発生のないように塗装電圧を低く設定すると、内板膜厚(例えば、10μm)を確保できないという課題があった。
【0003】
自動車ボディのクレタリング性を改良する塗装方法として、カチオン電着塗装時の電流値の第1ピークと第2ピークにおいて、第2ピークに着目してクレタリング(ガスピンホール)の発生との関係について検討した文献が開示されている(非特許文献1)。しかし非特許文献1に記載されたカチオン電着塗料及び塗装方法では、高つきまわり性及び仕上り性が達成できるものでなかった。
【0004】
また、カチオン電着塗料の塗装において、電流密度の最高値(I)が通電開始から5秒の間に発現し、かつ電流密度の最高値(I)の1/2の電流密度(0.5I)以上を有する時刻が通電開始から5秒の間であることを特徴とした、隙間部における塗膜形成方法が開示されている(特許文献1)。特許文献1に記載の塗膜形成方法では、高つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性が達成できなかった。
【0005】
他に、電着塗装において、カチオン電着塗料の最低造膜温度を電着塗装設定温度の±5℃以内、塗装時電導度を1000〜1500μS/cmに調整された電着塗料を使用し、前記電着塗装設定温度で電着塗装する電着塗膜形成方法が開示されている(特許文献2)。しかし特許文献2の塗膜形成方法では、袋部(シル)膜厚少なくとも9μmを確保し、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にピンホールの発生がなく、さらに仕上り性に優れた外板(ドア)膜厚15〜17μmの被塗物を得るには不十分であった。
【0006】
他に、外板膜厚(μm)を増膜させることなく、内板膜厚(μm)が確保できる均一塗装性を有し、さらに合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性が良好なカチオン電着塗料塗膜形成方法が開示されている(特許文献3)。
しかし、特許文献3の単位膜厚当たりの分極抵抗値(a)が120〜300kΩ・cm/μm、単位電気量当たりの塗料析出量(b)が50〜150mg/C及び実効電圧(V)230V以下で形成される塗膜は、袋部(シル)膜厚少なくとも9μmを確保し、外板(ドア)膜厚15〜17μmの被塗物を得るには不十分であった。
【0007】
他に、袋構造を有する被塗物において、外板の膜厚を抑えながら内部の造膜性を向上させる「均一塗装性」に優れる電着塗膜形成方法で、塗膜の析出開始に必要な電気量が100〜400C/mであること、単位膜厚当たりの分極抵抗値が50〜300kΩ・cm/μmであることを特徴とする塗膜形成方法が開示されている(特許文献4)。特許文献4は、4枚ボックスつきまわり性試験において、10μm(内板膜厚)/14μm(外板膜厚)=71%、のつきまわり性が得られるものの、高い電圧を必要とする為に合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性や仕上り性が不十分であった。
【0008】
他に、基体樹脂としてアルキルフェノール及びポリカプロラクトンで変性したアミン付加エポキシ樹脂、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物を用い、電着塗装時における塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値(a)が125〜150kΩ・cm/μm、単位電気量当たりの塗料析出量(b)が28〜50mg/C、4枚ボックスつきまわり性試験における内板と外板の膜厚(c)が、内板膜厚が10μmで外板膜厚が10μm〜12μmである塗膜を得ることを特徴とした、電着塗膜形成方法が開示されている(特許文献5)。特許文献5は、10μm(内板膜厚)/10〜12μm(外板膜厚)=83〜100%のつきまわり性が得られるが、高い電圧を必要とする為に合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れた塗膜は得られない。
【0009】
【非特許文献1】佐藤 登、外1名、「カチオン電着塗装のクレータリング現象におよぼす表面処理鋼板の表面性状」、塗装工学(1985)、第20巻No.4、p138〜147
【特許文献1】特開2001−19878号公報
【特許文献2】特開2003−82498号公報
【特許文献3】特開2002−275690号公報
【特許文献4】特開2003−306796号公報
【特許文献5】特開2004−83824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、袋構造を有する被塗物において、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れるカチオン電着塗料及び塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)において、第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件としたときに、電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)が0.05mA/cm未満、好ましくは電流値(i)の第2番目のピーク電流値(i)が発現しないことを特徴とするカチオン電着塗料。
【0012】
さらにはカチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に塗膜を析出することを特徴とするカチオン電着塗料を用いることによって達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、一定の特性を有するカチオン電着塗料、及び該カチオン電着塗料を用いた電着塗装方法によって、従来にない、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れる塗装物品を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカチオン電着塗料は、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性及び仕上り性に優れた塗装物品を容易に得ることができる。例えば、自動車車体を塗装した場合、袋部(シル)膜厚少なくとも9μmを確保し、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にピンホールの発生がなく、さらに仕上り性に優れた外板(ドア)膜厚15〜17μmの被塗物を得ることができる。
【0015】
上記のような効果を得るに至った理由としては、1.外板部の塗膜を早く形成させて内板部にまで電流をつきまわらせて電着塗装性の向上を図る。2.電着塗装時の水素ガスの発生を抑え、かつ強靭な析出塗膜によって合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上のピンホール発生を抑制する。3.析出した塗膜は融着能に優れ、焼き付け時の熱フロー性によって仕上り性に優れた塗膜を得る等の技術的な工夫によって、本発明の効果を達成できたものと考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、カチオン電着塗料と電極とを有する塗料槽に、金属被塗物を浸漬し通電してなるカチオン電着塗装において、通電時間(t)に対する電流値(i)における第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件としたときに、電流値(i)の第2番目のピーク電流値(i)を制御したカチオン電着塗料、に関する。
さらには、カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に塗膜を析出する、等を調整したカチオン電着塗料に関する。
【0017】
上記特性を得るためのカチオン電着塗料について、以下詳細に述べる。
【0018】
カチオン電着塗料のピーク電流値(i)について:
カチオン電着塗料を浴として電着塗装を行い、カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)をプロットしたグラフ(図1参照)において、第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cm範囲に入り、かつ電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(注1)が0.05mA/cm未満、好ましくは電流値(i)の第2番目のピーク電流値が発現しないカチオン電着塗料を用いることが、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性及び仕上り性に優れる塗装物品を得ることができる。
【0019】
ここで好ましくは、第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜8.0mA/cm範囲に入り、かつ電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(注1)が0.05mA/cm未満、好ましくは電流値(i)の第2番目のピーク電流値(i)が発現しないカチオン電着塗料を用いること。
【0020】
さらに好ましくは、第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜10.0mA/cm範囲に入り、かつ電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(注1)が0.05mA/cm未満、好ましくは電流値(i)の第2番目のピーク電流値(i)が発現しないカチオン電着塗料を用いることが、つきまわり性と合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性の面からよい。
【0021】
なお従来のカチオン電着塗料は、「点線のグラフ」のように、電流密度のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmの範囲に入る通電条件(注2)で電着塗装すると、図1中の2のような第2のピーク電流値(i)が発現する。
【0022】
ここで、本発明のカチオン電着塗料は、図1の「実線のグラフ」のように、電流密度のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmの範囲に入る通電条件(注2)で電着塗装しても、第2番目のピーク電流値(図1中2参照)の幅(Δi)(注1中4参照)を0.05mA/cm未満に抑制することができた。
【0023】
本発明のカチオン電着塗料を用いた塗膜形成は、カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)において、電着塗装時における第1番目のピーク電流値(i)の発現時点において緻密でかつ丈夫な析出膜を形成することによって、形成した析出膜を破壊してしまうこととなる第2番目のピーク電流値(i)の発現を抑制できる。これらの特徴を備えたカチオン電着塗料が自動車車体における袋部へ電流を早期に配分することができ、「つきまわり性」の向上につながると考えられる。
【0024】
また「第2番目のピーク電流値の幅(Δi)を抑制する」ことによって析出した塗膜を破壊することなく、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性及び仕上り性の向上にも寄与する。上記、「第2番目のピーク電流値(i)の発生を抑制する」為には、電着塗料組成上の工夫が必要であるので、本願明細書中の後記「カチオン電着塗料」の記載で述べる。
【0025】
(注1)第2番目のピーク電流値(i)の幅(Δi):第2番目のピーク電流値(i)(図1の2)と電流値(i)(図1中3)の差を示し、図1中4で表される。ここで、図1の電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)をプロットした「点線のグラフ」は、従来からの電着塗料を浴として電着塗装を行った場合である。
【0026】
(注2)通電条件:通電条件は、カチオン電着塗料を3リットル槽に入れて浴
として、浴温30℃にして、攪拌子(円筒型、長さ4.5cm、直径1cm)を用いてスターラーにて400rpmの回転を与えて攪拌する。次いで、りん酸亜鉛めっき処理(日本パーカライジング社製)を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛目付け量45g/m)を試験板(70mm(横)×150mm(縦)×0.8mm(厚))として、試験板が陰極となるように、極比(陽極/陰極=1/2)、極間距離15cmで電着塗装した。
印加電圧としては、150V〜350Vの間で20V刻み(150V、170V、190V・・・350V:各電圧到達には30秒間かけて昇圧し(所謂、30秒スロースタート)、定電圧にて2分30秒間通電し、電流密度の第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜10.0mA/cmの範囲に入ったときの、第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(注1参照)を観察した。
【0027】
カチオン電着塗料の電流密度(mA/cm)について:
また、カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に塗膜析出(注3)することを特徴とする。
【0028】
なお、上記の電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に塗膜を析出する場合においては、カチオン電着塗料のピーク電流値(i)における「第2番目のピーク電流値の幅(Δi)」を制御したカチオン電着塗料であることが、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れる塗装物品を得るためには好ましい。
【0029】
(注3)塗膜析出:カチオン電着塗料を、電流密度0.2mA/cmの定電流が得られるCCP500−1(高砂製作所株式会社製、商品名、定電流電着装置)を用いて電着塗装した時の電圧値を求め、「各電圧/電流=分極抵抗値」によって求めた分極抵抗値の上昇が認められることによって、「塗膜析出」が行われているとみなす。
【0030】
連続被膜形成最低温度(MFT)について:
カチオン電着塗料は、上記に述べた、(1)カチオン電着塗料を浴として、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)をプロットしたグラフにおいて、ピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件で、かつ電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(注1)が0.05mA/cm未満、好ましくは電流値(i)の第2番目のピーク電流値(i)が発現しないカチオン電着塗料を用いること。(2)カチオン電着塗料を浴として、電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に「塗膜析出」すること。(3)さらにカチオン電着塗料の連続被膜形成最低温度(注4)が20〜35℃、好ましくは22〜28℃、さらに好ましくは23〜27℃の範囲であることが、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れるカチオン電着塗料を得る為には有効である。
【0031】
上記範囲であると、電着塗装時に析出した塗膜を破壊(例えば、亜鉛メッキ鋼板を電着塗装する場合に生じる異種電極間のスパークによる塗膜破壊)することなく緻密でかつ丈夫な析出膜を早期に形成できる。このことから、外板面の形成に過剰に電流が使われることなく、自動車車体における袋部へ電流を配分して「つきまわり性」の向上につながると考えられる。
【0032】
(注4)連続被膜形成最低温度:連続被膜形成最低温度は、電着塗料を用いて
一定の印加電圧で電着塗装を実施する場合、浴温と膜厚の関係は、図3のように示される。図3によれば、電着塗装を行う時の浴温が、低温から高くなるに従って被塗物上に形成される電着塗膜の膜厚が低下し、一定の浴温以上になれば、逆に膜厚が増大する。このような浴温と膜厚の関係において、膜厚が最小になるときの浴温(カーブの極小値(図3中4)に対応する浴温)を連続被膜形成最低温度(MFT)という。連続被膜形成最低温度を求める場合は、各浴温に対して、一定の印加電圧で電着塗装して、膜厚が最小になるときの浴温(カーブの極小値を求める。
【0033】
[カチオン電着塗料について]
前記に述べたカチオン電着塗料が、つきまわり性、かつ合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性が良好とされる適性範囲内とするためには、通常のカチオン電着塗料とは異なった塗料設計が必要である。
【0034】
本発明に用いるカチオン電着塗料は、樹脂成分として、基体樹脂(a)及び硬化剤(b)を含有する。特に、基体樹脂としてカチオン性樹脂及び硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を含んでなるカチオン電着塗料が好適である。
【0035】
カチオン電着塗料において、基体樹脂(a)として使用されるカチオン性樹脂は、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などのカチオン化可能な基を有する樹脂であり、樹脂種としては、電着塗料の基体樹脂として通常使用されているもの、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が好適である。
【0036】
上記のアミン付加エポキシ樹脂としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等を挙げることができる。
【0037】
上記のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、一般に少なくとも200、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の[数平均分子量]及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0038】
ここで、「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとしてTSK 「GEL4000HXL」、「G3000HXL」、「G2500HXL」、「G2000HXL」(以上、東ソー株式会社製)の4本を用い、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用い、40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた値である。
【0039】
該エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0040】
該エポキシ樹脂は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと部分的に反応させたものであってもよく、さらにまた、ε−カプロラクトンなどのラクトン類、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
【0041】
上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
【0042】
上記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基を有する化合物、例えば、モノメチルアミン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどにケトン化合物を反応させてなるケチミン化物を挙げることができる。
【0043】
上記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
【0044】
特に、基体樹脂(a)として、エポキシ当量が180〜3,000、好ましくは250〜2,000のエポキシ樹脂に、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させて得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂を用いることが、本発明に用いるカチオン電着塗料(A)の塗料特性を得るには好ましく、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れた塗装物品を得ることができる。
【0045】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の製造のための出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、前記のカチオン性樹脂について述べたものと同様のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0046】
キシレンホルムアルデヒド樹脂は、エポキシ樹脂の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えば、キシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
【0047】
上記のホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物などを例示することができる。
【0048】
さらに、上記のフェノール類には、2もしくは3個の反応サイトを持つ1もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾールが好適である。
【0049】
以上に述べたキシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が好適である。
【0050】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、約80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
【0051】
上記の条件下に、キシレンとホルムアルデヒド及びさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0052】
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000mPa・s(25℃)、好ましくは25〜30,000、さらに好ましくは30〜15,000mPa・s(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0053】
アミノ基含有化合物はエポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、前記カチオン性樹脂の製造の際に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0054】
前記エポキシ樹脂に対する上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を同時に反応させるのが好適である。
【0055】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0056】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、適宜変えることができるが、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の3成分の合計固形分質量を基準にして以下の範囲内が適当である。すなわち、エポキシ樹脂は、一般に50〜90質量%、好ましくは50〜85質量%;キシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に5〜45質量%、好ましくは6〜43質量%;アミノ基含有化合物は、一般に5〜25質量%、好ましくは6〜20質量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0057】
上記のカチオン性樹脂は、カチオン化可能な基としてアミノ基を有する場合には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機カルボン酸;塩酸、硫酸などの無機酸などの酸によって中和することにより水溶化ないしは水分散化することができる。
【0058】
以上に述べた基体樹脂(a)と併用される硬化剤(b)としては、ポリイソシアネート化合物とブロック剤とのほぼ化学量論的に等量での付加反応生成物であるブロック化ポリイソシアネート化合物が塗膜の硬化性や防食性などの面から好ましい。
【0059】
ここで使用されるポリイソシアネート化合物としては、従来から知られているものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
一方、ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0061】
そのような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
【0062】
基体樹脂(a)及び硬化剤(b)は、一般に、両者の合計固形分を基準にして、基体樹脂(a)は50〜95質量%、特に65〜85質量%の範囲内、そして硬化剤(b)は5〜50質量%、特に15〜35質量%の範囲内で使用することができる。
【0063】
カチオン電着塗料には他に、硬化触媒、界面活性剤、表面調整剤及び有機溶剤などを適宜配合することができ、このうち、硬化触媒は、基体樹脂と硬化剤との架橋反応を促進するために有効である。
【0064】
本発明のカチオン電着塗料において、つきまわり性、かつ合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性が良好とされる適性範囲内とするためには、基体樹脂(a)及び硬化剤(b)の固形分合計に対して、下記式(1)で示される芳香族カルボン酸のアルキル錫エステル化合物の少なくとも1種を0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、さらに0.5〜3質量%含有することが好ましい。
【0065】
【化1】

【0066】
式(1)
(式中、Rは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す)
式(1)で表される芳香族カルボン酸のアルキル錫エステル化合物としては、具体的には、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートが好ましい。
【0067】
カチオン電着塗料は、基体樹脂(a)、硬化剤(b)に加え、適宜に、芳香族カルボン酸のアルキル錫エステル化合物、界面活性剤、表面調整剤及び有機溶剤等を十分に混合して調合樹脂とした後、通常水性媒体中において、水溶性有機カルボン酸で中和して、調合樹脂を水溶化ないし水分散化することによって得られた水分散体を使用できる。
なお調合樹脂の中和のための有機カルボン酸としては、特に、酢酸、ギ酸又はこれらの混合物が好適であり、これらの酸の使用により、形成される塗料組成物の均一塗装性、防錆性、仕上り性、塗料の安定性が向上する。上記有機カルボン酸の使用量は、中和価としては樹脂固形分合計1g当りのmgKOH換算で6〜15、好ましくは8〜13の範囲がよい。
【0068】
また、適宜に水分散性の向上を目的として添加する界面活性剤としては、例えばHLBが3〜18、好ましくは5〜15の範囲内にあるアセチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、多価アルコール系などのノニオン系界面活性剤があげられる。カチオン電着塗料の製造は、基体樹脂(a)及び硬化剤(b)などを分散したエマルションと、あらかじめ製造しておいた顔料分散ペーストを混合して製造することが好ましい。
【0069】
前記エマルションと混合する顔料分散ペーストは、上記した着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などをあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料類、さらに必要に応じてビスマス化合物を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミルなどの分散混合機中で分散処理して顔料分散ペーストを調製することにより行なうことができる。
【0070】
顔料分散用樹脂としては既知のものが使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有する基体樹脂や界面活性剤などが使用でき、さらに、3級アミン型、4級アンモニウム塩型、3級スルホニウム塩型などの樹脂が分散用樹脂として使用できる。顔料分散剤の使用量は、顔料100重量部あたり、1〜150重量部、特に10〜100重量部の範囲内が好適である。
【0071】
顔料は、特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム等の防錆顔料などが挙げられる。
その他に、腐食抑制や防錆を目的としてビスマス化合物を含有することができ、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、2種以上の有機酸と上記の如きビスマス化合物とを反応させることによって製造され且つ該有機酸の少なくとも1種が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である有機酸ビスマスが挙げられる。
【0072】
さらに芳香族カルボン酸のアルキル錫エステル化合物以外の有機錫化合物として、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等を添加することができる。これらの顔料類の配合量は、基体樹脂及び硬化剤との合計固形分100質量部あたり1〜100質量部、特に10〜50質量部の範囲内が好ましい。
【0073】
なお本発明に使用するカチオン電着塗料に使用する有機溶剤は、例えば、アルコール系、例えば、メチルアルコール(水溶解度:自由混合)、エチルアルコール(水溶解度:自由混合)、n−ブチルアルコール(水溶解度:7.7質量%)、イソプロピルアルコール(水溶解度:自由混合)、2−エチルヘキサノール(水溶解度:0.07)、ベンジルアルコール(水溶解度:3.8質量%)、エチレングリコール(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコール(水溶解度:自由混合);エーテル系、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(水溶解度:自由混合)、エチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(水溶解度:0.99質量%)、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(水溶解度:0.09質量%)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(水溶解度:不溶)、3−メチル−3−メトキシブタノール(水溶解度:自由混合)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合);ケトン系、例えば、アセトン(水溶解度:自由混合)、メチルイソブチルケトン(水溶解度:2.0質量%)、シクロヘキサノン(水溶解度:5.0質量%)、イソホロン(水溶解度:1.2質量%)、アセチルアセトン(水溶解度:12.5質量%);エステル系、例えば、エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート(水溶解度:22.9質量%)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(水溶解度:0.9質量%)やこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
なお、カチオン電着塗料の浴中に含まれる有機溶剤の種類と有機溶剤の含有量を調整することによって、1.カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)において、第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件としたときに、電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)(図1中4)を0.05mA/cm未満とする。
2.カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電流密度0.2mA/cmの定電流密度の電着塗装時において、被塗物上に塗膜を析出する。3.連続被膜形成最低温度(MFT)を一定範囲内とする、ことを特徴とするカチオン電着塗料が得られることを見出した。
【0075】
有機溶剤(c)の種類と有機溶剤量に関しては、カチオン電着塗料浴の質量を基準にして、溶解性パラメーター8〜10で水溶解度が95質量%以上である有機溶剤(c)の含有量が0.01〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%、かつカチオン電着塗料浴の有機溶剤総合計量が0.01〜2.0質量%、好ましくは0.05〜1.0質量%であることがよい。
【0076】
このような有機溶剤(c)として、好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが、本発明の塗料特性を得る為にもよい。
カチオン電着塗料の製造は、顔料分散ペースト、エマルション、添加剤、中和剤、脱イオン水を加えて、固形分濃度が約5〜25質量%、pHが5〜8の範囲内になるように調整する。
【0077】
なお本発明のカチオン電着塗料を用いた電着塗装条件は、特に制限されるものではないが、一般的には、スロースタート電着塗装にて10〜90秒、好ましくは30〜60秒の時間で一定電圧まで昇電圧し、通電時間は30秒〜10分間、浴温は15〜35℃、好ましくは20〜30℃、電圧は100〜450V、好ましくは200〜350Vの範囲である。なお、極比(陰極/陽極)=1/2〜1/8、極間距離0.1〜1mの撹拌状態で電着塗装することが望ましい。
【0078】
カチオン電着塗料による電着塗膜の膜厚は目的とする性能に応じて適宜選定すればよいが、本発明の電着塗装方法を用いることによって、自動車車体を塗装した場合、袋部(シル)膜厚少なくとも9〜10μmを確保し、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上にピンホールの発生がなく、さらに仕上り性に優れた外板(ドア)膜厚15〜17μmの被塗物を得ることができる。
電着塗装後、余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、ウルトラフィルトレーションろ液(UFろ液)、RO透過水、工業用水、純水などで、塗装物表面に余分に付着したカチオン電着塗料が残らないよう十分に水洗する。
【0079】
カチオン電着塗料の被塗物としては、自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属であれば特に制限はなく、鋼板として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの鋼板や冷延鋼板などの基材を必要に応じてアルカリ脱脂などの表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理などの表面処理を行ったものが挙げられる。
【0080】
次に、電着塗膜の焼付け乾燥手段としては特にこだわらず、電気炉、ガス炉などの直接または間接の熱風乾燥方法、赤外線や遠赤外線による加熱方法、高周波による誘導加熱方法、液媒浸漬加熱方法などの乾燥設備を用いて、塗物表面の温度で110℃〜200℃、好ましくは140〜180℃、時間としては10分間〜180分間、好ましくは20分間〜50分間加熱して塗膜を硬化させることができる。
【実施例】
【0081】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0082】
製造例1 基体樹脂No.1の製造例
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
別に、jER828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190 分子量350)1000部にビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
その中にノニルフェノール120部を加え、130℃でエポキシ当量1000になるまで反応させた。次いで変性剤1を200部、ジエタノールアミンを95部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部加え、120℃で4時間反応させた後、メチルイソブチルケトン470部を加え、アミン価40mgKOH/g、数平均分子量2,000、樹脂固形分80%のノニルフェノールを付加したポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.1を得た。
【0083】
製造例2 基体樹脂No.2の製造例
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに50%ホルマリン480部、フェノール110部、98%工業用硫酸202部及びメタキシレン424部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050mPa・s(25℃)のフェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂 480部を得た。
別のフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂 、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、キシレンホルムアルデヒド樹脂を300部、ジエタノールアミンを137部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を95部加え120℃で4時間反応させた後、メチルイソブチルケトンを403部加え、アミン価57mgKOH/g、数平均分子量2,000、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.2を得た。
【0084】
製造例3 基体樹脂No.3の製造例
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られた数平均分子量370、エポキシ当量185のエポキシ樹脂518部を仕込み、ビスフェノールA 205部及びε−カプロラクトン213部及びテトラブトキシチタン0.05部、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.05部を加え、170℃に昇温し、この温度で2時間反応させついでトリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド0.05部仕込み、さらに2時間反応し、エポキシ当量936となるまで反応させた。
次いで、メチルイソブチルケトン257.4部、ジエチルアミン25.6部ジエタノールアミン68.3部を加え80℃で2時間反応し、アミン価54.5mgKOH/g、数平均分子量2,000、樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.3を得た。
【0085】
製造例4 基体樹脂No.4の製造例
容量2リットルの4つ口フラスコにメチルイソブチルケトン15部を仕込み、窒素置換後、110℃に保った。この中に、以下に示す混合物を3時間かけて滴下した。
スチレン 8部
n−ブチルアクリレート 8部
イソブチルメタクリレート 30部
2−エチルヘキシルメタクリレート 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
ジメチルアミノエチルメタクリレート 9部
滴下終了後から1時間経過後、この中に2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)8部をメチルイソブチルケトン10部に溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに1時間110℃に保持し、水酸基価100mgKOH/g、アミン価30mgKOH/g、重量平均分子量16,000、固形分80%のアミノ基含有アクリル樹脂である基体樹脂No.4を得た。
【0086】
製造例5 硬化剤No.1の製造例
反応容器中に、コスモネートM−200(注5) 270部及びメチルイソ
ブチルケトン25部を加え70℃に昇温した。この中に2,2−ジメチロール
ブタン酸15部を徐々に添加し、ついでメチルイソブチルケトン70部を滴下して加え、70℃で1時間反応させた後、60℃に冷却し、プロピレングリコール152部を添加した。この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、固形分が80%の硬化剤No.1を得た。
(注5)コスモネートM−200 :商品名、三井化学社製、クルードMDI。
【0087】
製造例6 硬化剤No.2の製造例
反応容器中に、イソホロンジイソシアネート222部及びメチルイソブチル
ケトン80部を加え、50℃に昇温した。この中にメチルエチルケトキシム1
74部をゆっくり加えた後、60℃に昇温した。この温度を保ちながら、経時
でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの
吸収がなくなったことを確認し、固形分80%の硬化剤No.2を得た。
【0088】
エマルションの製造:
製造例7 エマルションNo.1の製造例
製造例1で得られた基体樹脂No.1を87.5部(固形分70部)、製造例5で得られた硬化剤No.1 を33.3部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水156.2部を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下してエマルションを得た。
次いで、得られたエマルションを35℃、減圧下(50mmHg以下)にて、有機溶剤の抜き取り(いわゆる、脱ソルベント)を行って、エマルション中のメチルイソブチルケトンの含有量を1質量%以下とした。
次に、該エマルション中にエチレングリコールモノブチルエーテル4部を加え、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0089】
製造例8〜19 エマルションNo.2〜No.13の製造例
表1の配合内容とする以外は、製造例7と同様にして、エマルションNo.2〜No.13を得た。
【0090】
【表1】

【0091】
製造例20 顔料分散用樹脂の製造例
jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールA 390部、ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量約1200)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び酢酸90部を加え、120℃で4時間反応させた後、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、アンモニウム塩価44mgKOH/g、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。
【0092】
製造例21 顔料分散ペーストの製造例
製造例20で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部、脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
【0093】
カチオン電着塗料の製造:
製造例22
カチオン電着用のエマルションNo.1を294部(固形分100部)、55%の顔料分散ペーストを52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水297.6部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を製造した。
【0094】
製造例23〜34
表2で示されるような配合内容にて、カチオン電着塗料No.2〜No.13を製造した。
【0095】
【表2】

【0096】
実施例及び比較例
実施例1
カチオン電着塗料No.1(3リットル)を槽に入れて浴温を30℃に調整し、リン酸亜鉛処理を施した冷延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)を陰極として浸漬し、極間距離15cm、極比(陽極/陰極)=1/2にて、 電流値測定(注6)を行った。
さらに、下記の試験方法に従って、定電流電着塗装(注7)、連続被膜形成最低温度(注8)を測定した。
【0097】
(注6)電流値測定:電流値測定は、電着塗装時に1秒毎に電流値を測定して電流値(mA/cm)を求め、通電時間に対する電流値(mA/cm)をグラフ化し、第1番目のピーク値(i)と第2番目のピーク値(i)を求めた。なお通電条件は、前記(注2)の内容に従って行った。
A:電流値(i)の第1番目のピーク値(i)が4.0〜6.0mA/cmの範囲に発現し、かつ電流値(i)の第2番目のピーク値が発現しない
B:電流値(i)の第1番目のピーク値(i)が4.0〜6.0mA/cmの範囲に発現し、かつ電流値(i)の第2番目のピーク値の幅(Δi)(図1中4参照)が0.05mA/cm未満である
C:電流値(i)の第1番目のピーク値(i)が4.0〜6.0mA/cmの範囲に発現し、かつ電流値(i)の第2番目のピーク値の幅(Δi)(図1中4参照)が0.05mA/cm以上である。
【0098】
(注7)定電流電着塗装:CCP500−1(高砂製作所株式会社製、商品名、定電流電着装置)を用いて定電流密度にて電着塗装(浴温30℃、極間距離15cm、極比(陽極/陰極=1/2)し、分極抵抗値をグラフ化(図3参照)して分極抵抗値の上昇を観察した。
A:電流密度0.2mA/cmにて分極抵抗値の上昇がみられ被塗物上
に塗膜の析出が認められる。
B:電流密度0.2mA/cmにて分極抵抗値の上昇がみられず、電流
密度0.25mA/cmにて分極抵抗値の上昇がみられ被塗物上に塗膜の析出が認められる。
C:電流密度0.25mA/cmにて、通電開始から15分経過しても分極抵抗の上昇がなく、被塗物上に塗膜の析出がない。
【0099】
(注8)連続被膜形成最低温度:
各カチオン電着塗料を用い、(注4)に記載した内容に従って連続被膜形成最低温度(MFT)を求めた。
【0100】
(注9)浴中の有機溶剤量:各カチオン電着塗料をマイクロシリンジで10μlを採取し、GC−15A(島津製作所製、商品名、ガスクロマトグラフィー)に注入して、下記の条件で測定した。
条件:カラムWAX−10(スペルコ社製)、 カラム温度は5℃/min昇温にて、200℃まで、 キャリアガスは、Heにて測定した。
【0101】
実施例2〜8
表3の内容とする以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8の結果を得た。 さらに、これらの実施例によって得られた塗膜の試験結果を表3に併せて示す。
【0102】
【表3】

【0103】
(注10)有機溶剤A:エチレングリコールモノブチルエーテル、SP値8.87、水溶解度は100質量%。
【0104】
(注11)有機溶剤B:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、SP値9.78、水溶解度は100質量%。
【0105】
比較例1
製造例19で得たカチオン電着塗料No.1に、電着塗料の質量に対して、有機溶剤Aを1.6%加えて電着塗料No.1Bを作製した。
上記カチオン電着塗料を浴温30℃として、リン酸亜鉛処理を施した冷延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)を陰極として浸漬し、極間距離15cm、極比(陽極/陰極)=1/2にて電流値測定(注6)を行った。さらに、下記の試験方法に従って、定電流電着塗装(注7)、連続被膜形成最低温度(注8)を測定した。
【0106】
比較例2
製造例20で得たカチオン電着塗料No.2に、電着塗料の質量に対して、有機溶剤Aを1.8%加えて電着塗料No.2Bを作製した。電着塗装は、比較例1と同様に行った。
【0107】
比較例3〜7
表4の内容とする以外は、比較例1と同様にして、比較例2〜7の結果を得た。さらに、これらの比較例によって得られた塗膜の試験結果を表4に併せて示す。
【0108】
【表4】

【0109】
(注12)つきまわり性:図4のような4枚ボックス法つきまわり性試験の治具を用い、塗装浴温30℃、外板膜厚(A面)15μmとなる電圧にて電着塗装を3分間行った。つきまわり性の評価としては、外板(A面)膜厚、内板(G面)膜厚及び「内板(G面)/外板(A面)=つきまわり性(%)」を測定して評価した。
【0110】
(注13)合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性:パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を電着塗料浴(30℃)の陰極として浸漬し、(注12)のつきまわり性を評価した場合と同様の電圧にて3分間電着塗装し、得られた塗膜を170℃で20分間焼付け硬化を行った後のテストピースについて、10×10cm中のピンホールの数を数える。
◎は、ピンホールの発生なし、
○は、小さいピンホール(ガスヘコ)が1個発生が認められるが、中塗り塗膜にて隠蔽できる程度で問題なし。
△は、ピンホールが2〜5個発生、
×は、ピンホールが10個以上発生を示す。
【0111】
(注14)防食性:パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延鋼板を各カチオン電着塗料に浸漬して電着塗装を行った。
次いで、熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付けて乾燥膜厚20μmの試験板を得た。試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの傷、フクレ幅及び一般部の塗面状態(ブリスター)によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅がカット部より2.0mm以下(片側)
○は、錆、フクレの最大幅がカット部より2.0を超え、かつ3.0mm以下(片側)
△は、錆、フクレの最大幅がカット部より3.0mmを超え、かつ3.5mm以下(片側)
×は、錆、フクレの最大幅がカット部より3.5mmを超える。
【0112】
(注15)仕上り性:パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延鋼板を、各カチオン電着塗料に浸漬し、電着塗装を行って得た塗膜を熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付けて、外板部の電着塗膜の表面粗度を、サーフテスト301(株式会社 ミツトヨ社製、商品名、表面粗さ測定機)でRa値を測定した。
○は、Ra値が、0.25未満
△は、Ra値が、0.25以上で、かつ0.35未満
×は、Ra値が、0.35を越える
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)をプロットしたグラフである。
【図2】カチオン電着塗料を浴としてカチオン電着塗装するに際して、定電流電着塗装を行った時の分極抵抗値の上昇を示すグラフである。
【図3】連続被膜形成最低温度を示すグラフである。
【図4】つきまわり性試験に用いる「4枚ボックスつきまわり性試験用治具」のモデル図である。
【符号の説明】
【0114】
1.第1番目のピーク電流値(i)を示す。
2.第2番目のピーク電流値(i)を示す。
3.第2番目のピーク電流値(i)が発現する直前の最小電流値(i)を示す。
4.第2番目のピーク電流値の幅(Δi)を示す。
5.電流密度0.2mA/cmでの分極抵抗値の上昇を示すグラフである。
6.連続被膜形成最低温度を示す。
7.4枚ボックス法のつきまわり性試験用治具における外板(A面)を示す。
8.4枚ボックス法のつきまわり性試験用治具における内板(G面)を示す。
9.電着塗料浴を示す。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、つきまわり性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性及び仕上り性に優れた塗装物品を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン電着塗料と電極とを有する塗料槽に、金属被塗物を浸漬し通電してなるカチオン電着塗装において、電着塗装時における通電時間(t)に対する電流値(i)における第1番目のピーク電流値(i)が4.0〜6.0mA/cmとなる通電条件としたときに、電流値(i)の第2番目のピーク電流値の幅(Δi)が0.05mA/cm未満であることを特徴とするカチオン電着塗料。
【請求項2】
カチオン電着塗料と電極とを有する塗料槽に、金属被塗物を浸漬し、電流密度0.2mA/cmの定電流密度のカチオン電着塗装において、被塗物上に塗膜を析出することを特徴とする請求項1に記載のカチオン電着塗料。
【請求項3】
カチオン電着塗料と電極とを有する塗料槽に、金属被塗物を浸漬し通電してなるカチオン電着塗装において、カチオン電着塗料の連続被膜形成最低温度(MFT)が20〜35℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料。
【請求項4】
カチオン電着塗料浴の質量を基準にして、溶解性パラメーター8〜10で水溶解度が95質量%以上である有機溶剤(c)の含有量が0.01〜1.0質量%で、かつカチオン電着塗料浴における有機溶剤の総合計量が0.01〜2.0質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
【請求項5】
カチオン電着塗料の基体樹脂(a)及び硬化剤(b)の固形分合計に対して、下記式(1)
【化1】


式(1)
(式中、Rは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、Rは水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す)で示される芳香族カルボン酸のアルキル錫エステル化合物の少なくとも1種を0.01〜10質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
【請求項6】
エポキシ当量が180〜2,500のエポキシ樹脂に、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂を基体樹脂(a)として含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料を用いた電着塗装方法。
【請求項8】
請求項1〜6に記載のカチオン電着塗料を電着塗装して得られた塗装物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−50689(P2008−50689A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182795(P2007−182795)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】