説明

カッター、収納箱及びカートンブランク

【課題】ラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等のシート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状の凹凸歯を有する金属製のカッターにおいて、切れ味を大きく低下させることなく、カッター剥ぎ取り時に手指を傷付ける危険性を低減させる。
【解決手段】少なくとも凸歯3部分の片面に合成樹脂の保護層2を付設し、保護層2の付設面とは反対側の面を取付面として収納箱5に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等のシート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状の凹凸歯を有する金属製のカッター、このカッターを備えた収納箱及びカートンブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートロールを収納する収納箱に設けられるカッターとしては、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状の凹凸歯を備えた金属製のものが最も一般的である(例えば、特許文献1の背景技術参照)。この金属製のカッターの場合、収納箱の廃棄時に、紙製である箱と分別廃棄できるように、剥ぎ取ることができるように取り付けられているのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−263892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を備えた金属性のカッターは、切れ味の点では最も優れているといえる反面、手指を傷付けやすい問題がある。特に廃棄のために引き剥がす時に、図6(a)及び(b)に示すように、カッター101は屈曲されながら引っ張られることになる。このため、引き剥がし完了時に弾性反発力が作用して、図6(b)に矢印で示すように、先端が手元側へ巻き付くように跳ね返り、手指を傷付けやすい問題がある。図6において102は収納箱である。
【0005】
また、引き剥がし時以外でも、不用意に接触又は擦過した場合にも手指を傷付けやすい。このような怪我の危険性は、カッターの切れ味を低下させれば低減させることができるが、それでは使い勝手を悪くすることになる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を備えた金属性のカッターについて、切れ味を大きく低下させることなく怪我の危険性を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属板製のカッターにおいて、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されていることを特徴とするカッターを提供するものである。
【0008】
また、本発明の第二は、シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属製のカッターが、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられた収納箱において、カッターは、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されており、この保護層の付設面とは反対側の面を取付面として収納箱に取り付けられていることを特徴とする収納箱を提供するものである。
【0009】
上記本発明の第一及び第二は、それぞれ、保護層が、厚さ2〜50μmの印刷層又はラミネート層であること、
シート類が合成樹脂のラップフィルムであり、保護層が、ラップフィルムを構成する合成樹脂とは異なる合成樹脂で構成されていること
をその好ましい態様として含むものである。
【0010】
本発明の第三は、シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属製のカッターが、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられたカートンブランクにおいて、カッターは、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されており、この保護層の付設面とは反対側の面を取付面として収納箱に取り付けられていることを特徴とするカートンブランクを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
後で図2、図5に基づいて詳述するように、通常、切断時にシート類に強く押し当てられるのは凸歯の収納箱への取付面側に位置する外側コーナー部である。また、図6で説明した弾性反発力による跳ね返りにより手指に接触しやすいのはこの取付面とは反対側の内側コーナー部である。本発明においては、凸歯の外側コーナー部は露出しているのに対し、凸歯の内側コーナー部は保護層で覆われているので、シート類の切れ味は低下せずに、手指に怪我を負う危険を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る収納箱及び本発明に係るカッターの説明図で、(a)は収納箱全体の斜視図、(b)はカッターの一部切欠拡大斜視図である。
【図2】図1に示される収納箱に収納されたシートロールから引き出したシート類をカッターで切断する場合の説明図で、(a)はシート類を引き出した状態の収納箱の断面側面図、(b)はシート類切断時の凸歯先端付近の拡大図である。
【図3】本発明に係る収納箱の第二の例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る収納箱の第三の例を示す斜視図である。
【図5】図4に示される収納箱に収納されたシートロールから引き出したシート類をカッターで切断する場合の説明図で、(a)はシート類を引き出した状態の収納箱の断面側面図、(b)はシート類切断時の凸歯先端付近の拡大図である。
【図6】カッターの引き剥がし時の手指への巻き付き現象の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。なお、図2〜図5において、図1と同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0014】
図1において、1はカッターで、その片面全面に保護層2が形成されたものとなっている。
【0015】
カッター1は、例えばアルミニウム、鉄、これらの合金等の金属で構成されている。カッター1は、細長い帯状をなしており、その長辺に沿って鋸歯状に凸歯3を連ねた歯部4が形成されている。
【0016】
保護層2は、合成樹脂で構成されている。保護層2は、押し出しラミネート、ドライラミネート、印刷等によって設けることができる。保護層2を構成する合成樹脂としては、例えばポリエステル、ポリカーボネイト、ナイロン等を用いることができる。保護層2の厚さは、2〜10μmであることが好ましい。薄すぎると後述する歯の保護効果が薄くなり、厚すぎると凸歯3に被さって切れ味を低下させやすくなる。通常、2μm以上10μm未満の保護層2は印刷で設けられ、10μm以上50μm以下の保護層2は押し出しラミネート又はドライラミネートで設けられる。
【0017】
収納箱5は、例えばラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等のシート類6を巻き取ったシートロール7を、このシートロール7からシート類6を引き出し可能に収納するものとなっている。収納箱5は、通常、紙で構成されており、上部が開放された平面長方形の箱状の本体8と、蓋片9と、掩蓋片10とを備えている。本体8は、前面板8a、背面板8b、左右の側面板8c及び底面板8dで構成されており、背面板8bの上縁から、本体8上に被さる蓋片9が延出している。また、蓋片9の先端縁から、蓋片9を本体8上に被せた時に、本体8の前面板8aの外面に沿って宛われる掩蓋片10が延出している。
【0018】
本例におけるカッター1は、シートロール7から適宜の長さに引き出したシート類5を切断するための歯部4の先端(凸歯3の先端)を、掩蓋片10の先端縁より若干突出させた状態で、掩蓋片10の先端縁内面に沿って取り付けられている。この取り付けは、保護層2の付設面とは反対側の面を取付面として、部分的に接合することで引き剥がし可能に行われている。図中11は、カッター1の長さ方向に間隔を開けて形成された接合部である。部分的な接合は、例えば、カッター1に設けた突起によるかしめ付け、接着剤による接着等によって行うことができる。また、カッター1の取り付けは、引き剥がし可能な接合力に調整することで、カッター1の取付面に設けたシーラント層を用いた超音波融着によって全面的に接合することで行うこともできる。
【0019】
本例のように、掩蓋片10の内面にカッター1を取り付けた場合、図2(a)に示すように、シートロール7から、シート類6を収納箱5の掩蓋片10と本体8の前面板8aとの間から引き出すと共に、引き出したシート類6の上面にカッター1を押し当てて切断することになる。通常、収納箱5を、押し出したシート類6側に倒すようにして、シート類6の上面にカッター1を押し当てる。収納箱5を、押し出したシート類6側に倒した場合、シート類6に強く接触するのは、図2(b)に示すように、凸歯3の掩蓋片3への取付面側に位置する外側コーナー部Aである。凸歯3の掩蓋片3への取付面側には保護層2が付設されていないので、外側コーナー部Aは直接シート類6に接触し、シート類6の切断に作用するので、良好な切れ味を得ることができる。一方、凸歯3の掩蓋片3への取付面とは反対側の面には保護層2が設けられているので、外側コーナー部Aとは反対側の内側コーナー部Bは保護層2によってカバーされた状態となっている。図6で説明した弾性反発力による跳ね返りにより手指に接触しやすいのはこの内側コーナー部Bである。本発明のカッター1においては、内側コーナー部Bが保護層2によってカバーされていることから、カッターの引き剥がし時の弾性反発力による跳ね返りによりカッター1の歯部4(図1参照)が手指に触れても、怪我をする危険が少ない。また、この内側コーナー部B側であれば、不用意に接触又は擦過した場合にも、保護層2がクッションとなって手指を保護することができる。
【0020】
図1で説明したカッター1の保護層2は、カッター1の片面全面に形成されているが、保護層2は、少なくとも凸歯3部分の片面に設けられていれば足る。片面全面に保護層2が設けられたカッター1は、金属板の片面に合成樹脂を押し出しラミネート、ドライラミネート又は印刷で付設して保護層1を形成した後、歯部4を有する所定形状に打ち抜き加工することで製造することができる。保護層2が部分的に設けられたカッター1は、金属板にライン状に保護層1を形成した後、このライン状の保護層1に対応する位置が歯部4の形成箇所となるように打ち抜くことで製造することができる。
【0021】
図1に示される収納箱5は、直線状の掩蓋片10の先端縁の内面に沿って直線状のカッター1が取り付けられたものとなっている。しかし、本発明に係る収納箱5は、図3に示されるように、山形に屈曲した掩蓋片10の先端縁の内面に沿って、同様に山形に屈曲したカッター1が取り付けられたものとすることもできる。
【0022】
更に、図4に示されるように、本体8の前面板8aの上縁内面に沿ってカッター1を取り付けたものとすることもできる。図4に示される収納箱5の場合、図5(a)に示すように、シートロール7から、シート類6を収納箱5の掩蓋片10と本体8の前面板8aとの間から引き出すと共に、引き出したシート類6の下面にカッター1を押し当てて切断することになる。通常、引き出したシート類6を斜め下方に引いて、シート類6の下面にカッター1を押し当てる。この場合、シート類6に強く接触するのは、図5(b)に示すように、凸歯3の前面板8aへの取付面側に位置する外側コーナー部Aである。また、内側コーナー部Bは保護層2によってカバーされている。従って、図2での説明と同様に、良好な切れ味と、手指の保護を得ることができる。
【0023】
特に限定されるものではないが、図1、図3に示す収納箱5はラップフィルムに適しており、図4の収納箱5はアルミホイル又はクッキングペーパーに適している。また、シート類6がラップフィルムの場合、保護層2を構成する合成樹脂がラップフィルムを構成する合成樹脂と同種の樹脂であると付着しやすく、取り扱い性が悪くなる恐れがある。このため、シート類6がラップフィルムの場合、保護層2を、ラップフィルムを構成する合成樹脂と異なる合成樹脂で構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 カッター
2 保護層
3 凸歯
4 歯部
5 収納箱
6 シート類
7 シートロール
8 本体
8a 前面板
8b 背面板
8c 側面板
8d 底面板
9 蓋片
10 掩蓋片
11 接合部
A 外側コーナー部
B 内側コーナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属板製のカッターにおいて、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されていることを特徴とするカッター。
【請求項2】
保護層が、厚さ2〜50μmの印刷層又はラミネート層であることを特徴とする請求項1に記載のカッター。
【請求項3】
シート類が合成樹脂のラップフィルムであり、保護層が、ラップフィルムを構成する合成樹脂とは異なる合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカッター。
【請求項4】
シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属製のカッターが、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられた収納箱において、カッターは、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されており、この保護層の付設面とは反対側の面を取付面として収納箱に取り付けられていることを特徴とする収納箱。
【請求項5】
保護層が、厚さ2〜50μmの印刷層又はラミネート層であることを特徴とする請求項4に記載の収納箱。
【請求項6】
シート類が合成樹脂のラップフィルムであり、保護層が、ラップフィルムを構成する合成樹脂とは異なる合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の収納箱。
【請求項7】
シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための鋸歯状に凸歯を連ねた歯部を有する金属製のカッターが、廃棄時に剥ぎ取り可能に取り付けられたカートンブランクにおいて、カッターは、少なくとも凸歯部分の片面に合成樹脂の保護層が付設されており、この保護層の付設面とは反対側の面を取付面として収納箱に取り付けられていることを特徴とするカートンブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−76207(P2012−76207A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226215(P2010−226215)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】