説明

カッター用治具

【課題】管部材の外周面に形成された被覆層に切り込みを一定の深さで容易に形成することができるカッター用治具を提供する。
【解決手段】管部材11を取り巻くように配置された枠部材15を、その第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dが保護層14に当接した状態で管部材11の軸線の周りに回転可能且つ管部材11の軸線方向に移動可能に管部材11に装着し、把持部32に形成された収容部35内に回転可能に収容された軸部材37の一端部37aに刃部材41を取り付け、軸部材37の回転により、刃42の向きが管部材11の周方向を向く周方向姿勢と刃42の向きが管部材11の軸線方向を向く軸線方向姿勢との間で刃部材41の姿勢を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管部材の外周面に形成された被覆層に切り込みを形成するために用いるのに好適なカッター用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば水道管のように地中に埋設される円筒状の管部材として、ポリオレフィンのように熱溶融性を有する樹脂からなる管部材が用いられている。このような管部材は、他のポリオレフィン製の管部材との融着接合が可能であるので、両管部材の接合部の気密性を容易に確保することができるが、地中の土に含まれるガソリンのような有機溶剤が管部材の内部に浸透し易いという問題があった。そこで、管部材の外周面に、内部への溶剤の浸透を防止するための浸透防止層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この浸透防止層が形成された管部材同士を例えば管継手を用いて接続する際、各管部材の互いに突き合った端部における浸透防止層にそれぞれ専用のカッターを用いて作業者が手作業で各管部材の周方向に沿って伸びる切り込みと各管部材の軸線方向に沿って伸びる切り込みとをそれぞれ形成する。次に、各管部材の端部における浸透防止層を除去することにより、各管部材の端部における外周面をそれぞれ露出させる。その後、各管部材の端部をそれぞれ管継手内に挿入し、各管部材の端部における外周面と管継手とを例えば融着させることにより、各管部材の端部をそれぞれ管継手に接合する。このとき、各管部材の端部から浸透防止層が除去されていることから、各管部材の端部が浸透防止層を介すことなく管継手に直接接合されるので、各管部材及び管継手間に気密性を確実に確保することができる。これにより、各管部材が管継手を介して互いに気密的に接続される。
【特許文献1】特開2005−127419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各管部材の端部から浸透防止層を除去する際、作業者が専用のカッターを用いて浸透防止層に切り込みを手作業で形成することから、浸透防止層へのカッターの切り込み深さは、作業者の手からカッターを介して浸透防止層に作用させる力の大きさによって変化するため、浸透防止層を一定の深さで切り込むことが困難になる。浸透防止層に形成された切り込みの深さが深過ぎると、カッターの刃が浸透防止層を貫通して管部材に大きく食い込むことにより管部材に大きな傷が付くため、管部材の強度の低下を招く。他方、浸透防止層に形成された切り込みの深さが浅過ぎると、各管部材の端部における浸透防止層を各管部材の端部以外の部分における浸透防止層から分離することが困難になるため、浸透防止層の除去作業が煩雑になる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、管部材の外周面に形成された被覆層に切り込みを一定の深さで容易に形成することができるカッター用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも一つの被覆層が外周面に該外周面を覆うように形成された円筒状の管部材の前記被覆層を前記管部材から部分的に除去すべく前記被覆層に切り込みを形成するために用いられるカッター用治具であって、前記管部材を取り巻くように配置され、内周面の少なくとも一部に前記被覆層に当接する当接部が形成され、該当接部が前記被覆部に当接した状態で前記管部材の軸線の周りに回転可能且つ前記管部材の軸線方向に移動可能に前記管部材に装着された枠部材と、該枠部材から前記管部材に向けて突出し、前記被覆層に所定の切り込み深さで切り込む刃を有する刃部材と、前記枠部材の回転及び移動により前記被覆層に前記管部材の周方向及び軸線方向に沿って伸びる切り込みを形成すべく前記刃の向きが前記管部材の周方向を向く周方向姿勢と前記刃の向きが前記管部材の軸線方向を向く軸線方向姿勢との間で前記刃部材の姿勢を変化させるための刃方向変更手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記刃方向変更手段は、前記枠部材から前記管部材に向けて伸びる軸部材であってその軸線の周りに回転可能に前記枠部材に設けられた軸部材であり、前記刃部材は、前記軸部材の前記管部材側の一端部に該一端部から前記管部材に向けて突出して設けられており、前記軸部材の回転により、前記刃部材の姿勢が前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で変化することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記軸部材の前記端面は、前記管部材への前記枠部材の装着状態で前記被覆層に当接しており、前記軸部材の前記一端部からの前記刃部材の突出量は、前記所定の切り込み深さにほぼ等しいことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記軸部材は、その軸線方向に沿って移動可能に前記枠部材に設けられており、該枠部材には、前記軸部材の前記端面を前記被覆層に当接させる付勢力を前記軸部材に付与するための付勢手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記刃部材が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び前記刃部材が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で前記軸部材の回転を規制し、且つ、前記軸部材がその軸線方向に沿って前記管部材から離反する方向へ移動することにより前記刃部材が前記枠部材の内方に突出することなく該枠部材の外方に退避する退避状態におかれたとき、該退避状態に前記軸部材を保持するための保持手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記枠部材には、該枠部材を回転させるとき及び移動させるときにそれぞれ該枠部材を操作する操作者が握るための把持部が前記枠部材からその外方に突出して設けられており、前記把持部には、前記枠部材の内方に開放し、前記軸部材がその軸線の周りに回転可能且つ前記端面が前記被覆層に当接する当接位置及び前記退避状態との間で移動可能に収容される収容部が形成されており、前記保持手段は、前記軸部材から前記収容部の内周面に向けて突出した突起部と、前記収容部の前記内周面に形成され、前記軸部材が前記刃部材の前記周方向姿勢に対応する回転位置、前記刃部材の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置及び前記退避状態におかれたときにそれぞれ前記突起部に係合する複数の係合部とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記枠部材には、その内方に前記管部材の端部を受け入れたときに該端部の端面に当接し、前記枠部材の内方への前記管部材の挿入量を規定するためのストッパ部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記枠部材は、前記刃部材が設けられた半筒状の第一の枠体と、該第一の枠体と協働して前記管部材の挿入を許す筒状体を構成する半筒状の第二の枠体とに分割されており、前記第一及び第二の両枠体は、連結手段により互いに分離可能に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、管部材を取り巻くように配置された枠部材が、その内周面の少なくとも一部に形成された当接部を被覆層に当接させた状態で管部材の軸線の周りに回転可能且つ管部材の軸線方向に移動可能に管部材に装着されることから、枠部材から管部材に向けて突出する刃部材は、枠部材の回転時及び移動時に、管部材の外周面との間隔が所定の大きさに維持された状態で枠部材と一体的に管部材の軸線の周りに回転し又は管部材の軸線方向に移動する。
【0015】
また、カッター用治具が、刃の向きが管部材の周方向を向く周方向姿勢と刃の向きが管部材の軸線方向を向く軸線方向姿勢との間で刃部材の姿勢を変化させるための刃方向変更手段を備えることから、刃方向変更手段によって刃部材の姿勢を前記周方向姿勢におくことにより刃の向きを枠部材の回転方向に容易に向かせることができ、また、刃方向変更手段によって刃部材の姿勢を前記軸線方向姿勢におくことにより刃の向きを枠部材の移動方向に容易に向かせることができる。
【0016】
従って、刃部材が枠部材の回転時に管部材の外周面との間隔が所定の大きさに維持された状態で管部材の軸線の周りに回転することから、被覆層に管部材の周方向に沿った切り込みを形成する際、刃部材を前記周方向姿勢においた状態で枠部材を管部材の軸線の周りに回転させることにより、刃部材の刃は被覆層への切り込み深さが管部材の周方向に変化することなく所定の切り込み深さに維持された状態で被覆層に切り込むので、作業者から枠部材に与える力の大きさに拘らず管部材の周方向に一様な深さを有する切り込みを被覆層に管部材の周方向に沿って形成することができる。
【0017】
また、刃部材が枠部材の移動時に管部材の外周面との間隔が所定の大きさに維持された状態で管部材の軸線方向に移動することから、被覆層に管部材の軸線方向に沿った切り込みを形成する際、刃部材を前記軸線方向姿勢においた状態で枠部材を管部材の軸線方向に移動させることにより、刃部材の刃は被覆層への切り込み深さが管部材の軸線方向に変化することなく所定の切り込み深さに維持された状態で被覆層に切り込むので、作業者から枠部材に与える力の大きさに拘らず管部材の軸線方向に一様な深さを有する切り込みを被覆層に管部材の軸線方向に沿って形成することができる。
【0018】
従って、被覆層に形成された切り込みの深さが深過ぎることによる管部材への大きな損傷の発生が防止されるので、管部材に損傷を与えることによる従来のような管部材の強度の低下を確実に防止することができる。また、被覆層に形成された切り込みの深さが浅過ぎることによって管部材からの浸透防止層の除去作業が従来のように煩雑になることを、確実に防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、刃方向変更手段は、枠部材から管部材に向けて伸びる軸部材であってその軸線の周りに回転可能に枠部材に設けられた軸部材であり、刃部材は、軸部材の管部材側の一端部に該一端部から管部材に向けて突出して設けられていることから、軸部材を回転させることにより、刃部材の姿勢を前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で容易に変化させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、軸部材の端面は、管部材への枠部材の装着状態で被覆層に当接しており、軸部材の一端部からの刃部材の突出量は、前記所定の切り込み深さにほぼ等しいことから、例えば枠部材が回転しているときに枠部材又は管部材に刃部材と管部材とを互いに近づかせる方向に前記所定の深さを超える大きさの移動量で移動させる力が作用したとき、被覆層が軸部材の端面に当接することにより、刃部材が前記所定の深さを超えて被覆層に突き刺さることが防止される。すなわち、軸部材は、刃部材の刃が所定の切り込み深さを超えて被覆層を切り込むことを防止する役割を担う。従って、刃部材の刃が所定の切り込み深さを超えて被覆層に切り込むことによって刃部材が管部材に損傷を与えることを、確実に防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、軸部材は、その軸線方向に沿って移動可能に枠部材に設けられていることから、刃部材の姿勢を変化させるべく軸部材を回転させるとき、軸部材をその軸線方向に沿って管部材から離反する方向へ移動させることにより、刃部材の刃を被覆層から離反させることができる。これにより、刃部材の刃が被覆層に切り込んだ状態で軸部材を回転させることによって刃部材から被覆層に作用する抉り力により刃部材及び被覆層に破損が生じることを、確実に防止することができる。また、枠部材に、軸部材の端面を被覆層に当接させる付勢力を軸部材に付与するための付勢手段が設けられていることから、例えば枠部材が回転しているときに枠部材又は管部材に刃部材と管部材とを互いに離反させる方向に移動させる力が作用したときでも、軸部材の端面が被覆層に当接するように軸部材を付勢手段の付勢力により枠部材又は管部材の移動に追従して移動させることができる。これにより、枠部材及び管部材が刃部材及び管部材を互いに離反させる方向にたとえ移動したとしても、被覆層への刃部材の切り込み深さは浅くなることなく所定の切り込み深さに維持される。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、保持手段は、刃部材が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び刃部材が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で軸部材の回転を規制することから、枠部材の回転中及び移動中に軸部材が回転することによって刃の向きが変化することが防止されるので、刃の進行方向が所定の進行方向からずれることを確実に防止することができる。
【0023】
また、保持手段は、軸部材がその軸線方向に沿って管部材から離反する方向へ移動することにより刃部材が枠部材の内方に突出することなく該枠部材の外方に退避する退避状態におかれたとき、該退避状態に軸部材を保持することから、本発明に係るカッター用治具を使用していないときに軸部材を前記退避状態に保持することにより、枠部材の内方に突出した刃部材で誤って怪我をすることを確実に防止することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、枠部材には、該枠部材を回転させるとき及び移動させるときにそれぞれ該枠部材を操作する操作者が握るための把持部が枠部材からその外方に突出して設けられていることから、枠部材を直接掴むことにより回転及び移動させる場合に比べて、操作者から枠部材に作用するモーメント力をより大きくすることができる。これにより、枠部材の回転時及び移動時に操作者からの力を枠部材により容易に伝えることができるので、枠部材をより容易に回転及び移動させることができる。従って、被覆層の除去のための作業効率をより向上させることができる。
【0025】
また、把持部には、枠部材の内方に開放し、軸部材がその軸線の周りに回転可能且つ端面が被覆層に当接する当接位置及び前記退避状態との間で移動可能に収容される収容部が形成されていることから、軸部材を収容するための収容部を把持部とは別に設ける場合に比べて、部品点数を削減することができるので、製造コストの削減を図ることができる。
【0026】
更に、保持手段が、軸部材が刃部材の前記周方向姿勢に対応する回転位置、刃部材の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置及び前記退避状態におかれたときにそれぞれ突起部に係合する複数の係合部とを備えることから、軸部材が前記各回転位置及び前記退避状態におかれたときに該各位置に対応する各係合部に突起部を係合することにより、軸部材を前記各位置に容易に保持することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、枠部材には、その内方に管部材の端部を受け入れたときに該端部の端面に当接し、枠部材の内方への管部材の挿入量を規定するためのストッパ部材が設けられていることから、管部材の端部の端面をストッパ部材に当接させることにより、被覆層への切り込み位置が規定される。これにより、管部材の端部における被覆層を除去する際、管部材の端面をストッパ部材に当接させた状態で枠部材を回転させることにより、刃をその進行方向が管部材の軸線方向に移動することなくストッパ部材により規定された切り込み位置で管部材の周方向に進行させることができる。従って、枠部材を回転させたときに、刃部材の刃が管部材の軸線方向に移動しないように操作者が刃の進行状況を視認しながら枠部材を回転させる必要はないので、このようなストッパ部材が設けられていない場合に比べて、管部材からの被覆層の除去のための作業効率を確実に向上させることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、枠部材は、刃部材が設けられた半筒状の第一の枠体と、該第一の枠体と協働して管部材の挿入を許す筒状体を構成する半筒状の第二の枠体とに分割されており、第一及び第二の両枠体は連結手段により互いに分離可能に連結されていることから、管部材の長手方向の中間部分に例えば分岐管を接続する際に前記中間部分における被覆層を除去する必要がある場合、第一及び第二の各枠体をそれぞれ分離した状態で管部材の前記中間部分をその両側方から挟みこむように配置し、両枠体を互いに連結手段により連結することにより、枠部材を管部材の前記中間部分に容易に装着することができる。これにより、筒状の枠体を管部材の前記中間部分に装着するために、枠体内に管部材の端部を受け入れ、更に、枠体を前記中間部分に移動させる場合に比べて、管部材への枠体の装着作業をより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0030】
図1は、地中で上水を案内するための管路を構成する管部材11の外周面11aに形成された被覆層12を除去するときに用いられるカッター用治具10に本発明を適用した例を示す。
【0031】
本発明に係る管部材11は、図1に示す例では、円筒状をなしており、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンのように、加熱されることにより容易に溶融可能な樹脂で形成されている。
【0032】
管部材11の外周面11aに形成された被覆層12は、図示の例では、地中の土に含まれるガソリン等の有機溶剤が管部材11内に浸透することを防止するための浸透防止層13と、地中に埋設された管部材11及び浸透防止層13を地中の例えば石から保護するための保護層14とで構成されている。
【0033】
浸透防止層13は、ポリオレフィンよりも溶剤の浸透性が低い材料からなり、図示の例では、従来よく知られたナイロンからなる。また、浸透防止層13は、管部材11の外周面11aの全面に亘って形成されている。
【0034】
保護層14は、図示の例では、前記したポリオレフィンからなる。保護層14に用いられるポリオレフィンには、例えば廃棄されたポリオレフィン管を溶融することにより生成された溶融樹脂を再利用することができる。また、保護層14は、浸透防止層13上で管部材11の外周面11aの全面に亘って形成されている。
【0035】
管部材11への浸透防止層13及び保護層14の形成は、例えば従来よく知られた押出成形により行うことができる。
【0036】
このような管部材11同士を例えばポリオレフィン製の図示しない管継手を用いて互いに接続する際、前記管継手内に挿入される各管部材11の端部11bと前記管継手とを互いに例えば融着することにより接合したときにそれらの接着性を高めるために、各管部材11の端部11bにおける浸透防止層13及び保護層14をそれぞれ除去する必要がある。各管部材11の端部11bにおける浸透防止層13及び保護層14をそれぞれ除去するために、本発明に係るカッター用治具10が用いられる。
【0037】
本発明に係るカッター用治具10は、管部材11を取り巻くように配置される枠部材15を備える。枠部材15は、図示の例では、板部材を折り曲げることにより形成され管部材11の挿通を許す筒状をなしており、ほぼ六角形をなした横断面を有する。また、枠部材15は、その六角形の互いに向かい合う三組の辺のうち二組の辺にそれぞれ長辺部16A,16B,16C,16Dを有し、残りの一組の辺に、それぞれ各長辺部16A乃至16Dの長さ寸法よりも短い長さ寸法を有する短辺部17A,17Bを有する。
【0038】
長辺部16B及び長辺部16Dは、それぞれ枠部材15内への管部材11の挿入状態で保護層14に当接する。
【0039】
図示の例では、一方の短辺部17Aと該短辺部に隣接した二つの長辺部16A,16Cのうち一方の長辺部16Aとの間が切断されている。更に、他方の短辺部17Bは、図示の例では、その枠部材15の周方向に沿った幅方向の中央部分で切断されており、これにより、前記他方の短辺部17Bは一対の連結部分18a,18bに分離されている。
【0040】
すなわち、枠部材15は、図示の例では、互いに隣接した一対の長辺部16A,16Bと該各長辺部のうち一方の長辺部16Bに連なる一方の連結部分18aとを有する半筒状の第一の枠部19と、一対の長辺部16C,16D、該各長辺部のうち一方の長辺部16Dに連なる他方の連結部分18b及び前記一方の短辺部17Aを有する半筒状の第二の枠部20とに分割されている。
【0041】
各連結部分18a,18b間には、枠部材15の軸線に沿って配置された枢軸21を有する従来よく知られたヒンジ機構22が設けられている。これにより、第一及び第二の両枠部19,20は、図1に二点鎖線で示されているように、それぞれ第一の枠部19の前記一方の短辺部17Aと第二の枠部20の他方の長辺部16Aとの間が開放する方向及びそれらの間が閉鎖される方向に枢軸21の周りに枢動可能に連結されている。
【0042】
第一の枠部19の前記他方の長辺部16Aと第二の枠部20の前記一方の短辺部17Aとの間には、第一及び第二の各枠部19,20を互いに連結する連結手段が設けられている。連結手段は、図示の例では、一対の従来よく知られたパッチン錠23で構成されている。各パッチン錠23は、図1及び図2に示すように、それぞれ前記一方の短辺部17Aの枠部材15の軸線方向で見た両端部17Aa(図2参照。)にそれぞれ設けられた一対のレバー部24と、前記他方の長辺部16Aの前記一方の短辺部17A側の縁部16Aaに各レバー部24に対応して設けられた一対のフック部25とを備える。各レバー部24が有する環状の係合部24aを対応するフック部25に係合させることにより、第一の枠部19の前記他方の長辺部16Aと第二の枠部20の前記一方の短辺部17Aとの間が閉鎖された状態に保持される。
【0043】
第一の枠部19の前記他方の長辺部16A及び第二の枠部20の他方の長辺部16Cには、それぞれ浸透防止層13及び保護層14への後述する刃部材41による切り込み状況を確認するための確認孔27がそれぞれ形成されている。各確認孔27は、図示の例では、それぞれ各長辺部16A,16Cの枠部材15の軸線方向で見た中央部に形成されており、それぞれ円形をなしている。
【0044】
第二の枠部20の前記他方の長辺部16Cには、枠部材15内への管部材11の挿入位置を規定するためのストッパ部材28が設けられている。ストッパ部材28は、前記他方の長辺部16Cに固定される固定部29と、枠部材15内に挿入された管部材11の端部11bの端面11cに当接する当接部30とを有する。
【0045】
固定部29は、図2に示すように、前記他方の長辺部16Cの外周面16Ca上で枠部材15の軸線方向に伸び且つ一端部29aが前記他方の長辺部16Cの枠部材15の軸線方向で互いに対向する一対の縁部16Cbのうち一方の縁部16Cbからその外方に突出するように配置されており、ねじ部材31により前記他方の長辺部16Cに固定されている。ストッパ部材28は、固定部29がねじ部材31により前記他方の長辺部16Cに固定されることにより、ねじ部材31を介して第二の枠部20に取り外し可能に取り付けられている。
【0046】
当接部30は、固定部29の一端部29aから枠部材15の内方に突出するように伸びる。固定部29の一端部29aの突出量は、管部材11内への枠部材15内の挿入時に管部材11の端部11bの端面11cが当接部30に当接したとき、該当接部と前記した刃部材41との間隔が管部材11の端部11bから除去すべき浸透防止層13及び保護層14の管部材11の端面11cからの管部材11の軸線に沿った長さ寸法に等しくなるように設定されている。
【0047】
また、枠部材15には、該枠部材を後述するように管部材11の軸線の周りに回転させたり管部材11の軸線方向に移動させたりするときに図示しない操作者が握るための把持部32が設けられている。
【0048】
把持部32は、図示の例では、円柱状をなしており、前記一方の短辺部17Aの外周面17Ab上に該外周面から枠部材15の外方に伸びるように配置されている。前記一方の短辺部17Aの長辺部16A側に位置する縁部17Acには、該縁部から把持部32の伸長方向に該把持部に沿って伸びる伸長部33が形成されており、把持部32は、伸長部33にボルト部材34を介して取り外し可能に取り付けられている。
【0049】
把持部32内には、該把持部の軸線に沿って伸び且つ前記一方の短辺部17A側に位置する端面32aで開放する収容部35が形成されている。
【0050】
収容部35は、前記一方の短辺部17Aに両レバー部24間で形成された挿通孔36を経て枠部材15内に開放する。収容部35内には、該収容部の伸長方向に沿って伸びる棒状の軸部材37がその軸線の周りに回転可能且つその軸線方向に移動可能に収容されている。
【0051】
軸部材37は、収容部35内からその外方に突出することなく該収容部内に収容される長さ寸法を有する。軸部材37の枠部材15側に位置する一端部37aは、軸部材37が収容部35の外方へ向けて移動したとき、前記一方の短辺部17Aの挿通孔36を経て前記一方の短辺部17Aを貫通し、枠部材15内に突出する。軸部材37の一端部37aには、図3に示すように、該一端部の端面37bに開放する段部38が形成されている。段部38の軸部材37の軸線に沿った底面38aは平坦面である。軸部材37の一端部37aの端面37bは、図示の例では、枠部材15の内方に向けて突出する凸形状をなしており、図1及び図2に示すように、枠部材15内に挿入された管部材11の保護層14に当接可能である。
【0052】
把持部32には、軸部材37の端面37bを保護層14に当接させる付勢力を軸部材37に付与するための付勢手段が設けられている。付勢手段は、図示の例では、圧縮コイルスプリング40で構成されている。
【0053】
圧縮コイルスプリング40は、図1に示すように、収容部35内に配置されており、その一端40aは収容部35の奥端面35aに係止されており、他端40bは軸部材37の他端部37cに係止されている。圧縮コイルスプリング40は、軸部材37が管部材11から離反する方向すなわち収容部35の内方に向けて移動したとき、軸部材37から収容部35の奥端面35aに向けて受ける押圧力により収容部35の伸長方向に圧縮変形する。これにより、軸部材37には、管部材11に向けての弾性反力が圧縮コイルスプリング40から付与される。
【0054】
枠部材15内に挿入された管部材11は、圧縮コイルスプリング40から軸部材37を介して受ける押圧力により、第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dにそれぞれ押し付けられる。従って、管部材11は、枠部材15内に挿入した状態で、軸部材37、第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dにより支持される。
【0055】
更に、本発明に係るカッター用治具10は、浸透防止層13及び保護層14に切り込みを形成するための前記した刃部材41を備える。
【0056】
刃部材41は、従来よく知られたナイフで構成されており、図3に示すように、その先端部41aに浸透防止層13及び保護層14に切り込まれる刃42を有する。刃部材41は、図示の例では、先端部41aが軸部材37の端面37bから軸部材37の軸線方向外方に突出するように、軸部材37の一端部37aに形成された段部38の底面38a上に配置されており、該底面にねじ部材43を介して取り外し可能に取り付けられている。これにより、刃部材41に例えば破損が生じた場合、ねじ部材43による締結を解除することにより刃部材41を新たな刃部材41に容易に交換することができる。
【0057】
刃部材41の先端部41aの突出量は、浸透防止層13及び保護層14に形成する切り込みの深さに応じて設定されており、図示の例では、浸透防止層13及び保護層14のそれぞれの厚さ寸法を足し合わせた大きさにほぼ等しい。これにより、軸部材37の端面37bが保護層14に当接した状態では、図4に示すように、刃部材41の刃42は、浸透防止層13及び保護層14をほぼ貫通するように該各層に食い込む。
【0058】
刃部材41は、軸部材37がその軸線の周りに回転することにより該軸部材と一体的に回転し、刃部材41の回転姿勢は、刃42の向きが管部材11の周方向を向く周方向姿勢(図5(a)に示す姿勢である。)と刃42の向きが管部材11の軸線方向を向く軸線方向姿勢(図1、図2及び図5(b)に示す姿勢である。)との間で変化する。すなわち、軸部材37は、刃部材41の姿勢が前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で変化させるための刃方向変更手段を構成する。
【0059】
また、本発明に係るカッター用治具10には、刃部材41が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び刃部材41が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で軸部材37の回転を規制し、且つ、収容部35内への軸部材37の収容により刃部材41が枠部材15の内方に突出することなく該枠部材の外方に退避する退避状態(図5(c)に示す状態である。)におかれたとき、軸部材37を前記退避状態に保持するための保持手段が設けられている。
【0060】
保持手段は、図5及び図6に示す例では、軸部材37に形成された突起部45と、把持部32に形成され、刃部材41の前記周方向姿勢に対応する回転位置、刃部材41の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置及び前記退避状態で突起部45に係合する複数の係合部46,47,48とを備える。
【0061】
突起部45は、軸部材37から収容部35の内周面35bに向けて伸びる円柱状をなしており、先端部45aが収容部35の周壁35cを貫通して把持部32の外方に突出するように軸部材37に形成されている。
【0062】
各係合部46,47,48のうち第一の係合部46は、溝状をなしており、軸部材37の端面37bが保護層14に当接する状態において軸部材37が前記周方向姿勢に対応する回転位置におかれたときの収容部35の周壁35cへの突起部45の貫通位置から軸部材37が前記退避状態におかれたときの突起部45の貫通位置に向けて把持部32の軸線に沿って伸び且つ収容部35内に開放するように、収容部35の周壁35cに形成されている。第一の係合部46の幅寸法は、突起部45の直径にほぼ等しい。これにより、軸部材37は、刃部材41の前記周方向姿勢に対応する回転位置におかれた状態では、突起部45が第一の係合部46に案内されることにより軸部材37の軸線に沿った移動が許容され、更に、突起部45が第一の係合部46の両側面46aに当接することにより軸部材37の軸線周りの回転が規制される。
【0063】
第二の係合部47は、第一の係合部46と同様に溝状をなしており、軸部材37の端面37bが保護層14に当接する状態において軸部材37が前記軸線方向姿勢に対応する回転位置におかれたときの収容部35の周壁35cへの突起部45の貫通位置から軸部材37が前記退避状態におかれたときの突起部45の貫通位置に向けて把持部32の軸線に沿って伸び且つ収容部35に開放するように、収容部35の周壁35cに形成されている。第二の係合部47の幅寸法は、突起部45の直径にほぼ等しい。これにより、軸部材37は、刃部材41の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置におかれた状態では、突起部45が第二の係合部47に案内されることにより軸部材37の軸線に沿った移動が許容され、更に、突起部45が第二の係合部47の両側面47aに当接することにより軸部材37の軸線周りの回転が規制される。
【0064】
収容部35の周壁35cには、図1及び図6に示すように、第一及び第二の各係合部46,47を互いに連通させるべく該各係合部を互いに連結する連結溝49が形成されている。連結溝49は、図示の例では、軸部材37の前記退避状態での突起部45の貫通位置に対応する端部46b,47b間を把持部32の周方向に伸び且つ収容部35内に開放するように形成されており、前記端部46b,47bで第一及び第二の各係合部46,47を互いに連結している。また、連結溝49の幅寸法は突起部45の直径にほぼ等しい。これにより、軸部材37をその前記退避状態で刃部材41の前記周方向姿勢に対応する回転位置と刃部材41の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置との間で回転させたとき、連結溝49により突起部45の移動が案内される。これにより、前記退避状態で軸部材37の前記各回転位置間の回転が許され、従って、刃部材41の姿勢を前記退避状態で前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で切り替えることができる。
【0065】
連結溝49の第二の係合部47の前記端部47bに対応する一方の端部49aには、図示の例では、該一端部から把持部32の周方向に伸び且つ幅寸法が突起部45の直径にほぼ等しい伸長溝部50が形成されている。第三の係合部48は、図示の例では、伸長溝部50の先端部に形成されている。
【0066】
第三の係合部48は、伸長溝部50の先端部から枠部材15に向けて凹み且つ収容部35内に開放するように該収容部の周壁35cに形成されており、突起部45を受け入れ可能な凹状をなしている。前記退避状態で突起部45が連結溝49内から伸長溝部50内に移動するように軸部材37を回転させ、伸長溝部50内を通して突起部45を第三の係合部48内に係合させることにより、枠部材15へ向けての軸部材37の移動が阻止される。これにより、軸部材37が前記退避状態に保持される。
【0067】
管部材11の端部11bにおける浸透防止層13及び保護層14を本発明に係るカッター用治具10を用いて除去する際、先ず、突起部45を第三の係合部48に係合させることにより軸部材37を図5(c)に示す前記退避状態におく。続いて、パッチン錠23により第一の枠部19の前記他方の長辺部16Aと第二の枠部20の前記一方の短辺部17Aとの間を閉鎖することにより筒状に形成された枠部材15内に管部材11の端部11bを挿入し、該端部の端面11cをストッパ部材28の当接部30に当接させる。
【0068】
次に、突起部45を伸長溝部50及び連結溝49内を移動させることにより軸部材37を刃部材41の姿勢が前記周方向姿勢におかれる図5(a)に示す回転位置に向けて回転させ、突起部45を第一の係合部46内に挿入する。このとき、軸部材37から圧縮コイルスプリング40への圧縮力が開放されるので、圧縮コイルスプリング40から軸部材37に作用する付勢力により、突起部45は第一の係合部46内を枠部材15に向けて案内されると同時に軸部材37が管部材11に向けて移動する。この軸部材37の移動によって該軸部材の端面37cが保護層14に当接することにより、前記したように、管部材11が枠部材15内で軸部材37、第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dにより支持され、刃部材41の刃42が管部材11の周方向を向いた状態で保護層14及び浸透防止層13に食い込む。
【0069】
続いて、この状態で把持部32を握り、該把持部を管部材11の周方向に移動させることにより、ストッパ部材28の当接部30が管部材11の端面11cに当接した状態で枠部材15を管部材11の軸線の周りに回転させる。このとき、刃部材41はその刃42が管部材11の周方向を向いていることから、刃42の向きが枠部材15の回転方向に一致するので、刃42は枠部材15の回転により保護層14および浸透防止層13を管部材11の周方向に切り始める。ストッパ部材28の固定部29の一端部29aの突出量は、前記したように、当接部30と刃部材41との間隔が管部材11の端部11bから除去すべき浸透防止層13及び保護層14の管部材11の端面11cからの管部材11の軸線に沿った長さ寸法に等しくなるように設定されていることから、保護層14及び浸透防止層13の切断すべき位置をほぼ正確に刃42により切断することができる。また、軸部材37の端面37bが保護層14に当接した状態では、前記したように、刃部材41の刃42は、浸透防止層13及び保護層14をほぼ貫通するように該各層に食い込むことから、枠部材15が回転したとき、管部材11の外周面11aが刃42により大きく傷付けられることはない。また、枠部材15を回転させたとき、軸部材37の端面37b、第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dはそれぞれ保護層14上を摺動する。このとき、前記したように、軸部材37の端面37bは枠部材15の内方に向けて突出する凸形状をなしており、前記一方の長辺部16B及び前記一方の長辺部16Dはそれぞれ板状をなしていることから、軸部材37の端面37b、前記一方の長辺部16B及び前記一方の長辺部16Dはそれぞれ保護層14に点接触又は線接触するので、それらが保護層14の面接触する場合に比べて該保護層との間に生じる摩擦力が低減される。枠部材15の回転中に、各長辺部16A,16Cに形成された各確認孔27を通して枠部材15内を見ることにより、刃42が保護層14及び浸透防止層13をそれぞれ適正に切断しているか否かを判断することができる。このとき、例えば保護層14の表面に切り込み位置を示す線を予め記しておくことにより、各確認孔27から枠部材15内を見たときに、前記切断すべき位置が適正に切断されているか否かをより容易に判断することができる。把持部32の操作によって枠部材15を一回転以上させることにより、保護層14及び浸透防止層13に管部材11の周方向に伸びる切り込みを形成する。
【0070】
次に、突起部45を圧縮コイルスプリング40のばね力に抗して第一の係合部46内を管部材11から離反する方向へ移動させることにより軸部材37を前記退避状態におき、更に、軸部材37の回転位置が刃部材41の前記周方向姿勢に対応する回転位置(図5(b)に示す回転位置である。)になるように突起部45を連結溝49内で移動させ、突起部45を第二の係合部47内に挿入する。このとき、前記したと同様に、軸部材37から圧縮コイルスプリング40への圧縮力が開放されるので、圧縮コイルスプリング40からの付勢力による管部材11へ向けての軸部材37の移動により、刃部材41の刃42が管部材11の軸線方向を向いた状態で保護層14及び浸透防止層13に食い込む。
【0071】
続いて、この状態で把持部32を握り、該把持部を管部材11の軸線方向に移動させることにより枠部材15を管部材11の軸線方向に移動させる。このとき、刃部材41はその刃42が管部材11の軸線方向を向いていることから、刃42の向きが枠部材15の移動方向に一致するので、刃42は枠部材15の移動により保護層14および浸透防止層13を管部材11の軸線方向に切り始める。枠部材15の移動中に、前記したと同様に、各確認孔27を通して枠部材15内を見ることにより刃42が保護層14及び浸透防止層13をそれぞれ適正に切断しているか否かを判断することができる。把持部32の操作によって管部材11が枠部材11から抜け出すまで枠部材15を移動させることにより、保護層14及び浸透防止層13に、管部材11の軸線方向に伸び且つ管部材11の軸線方向外方に開放する切り込みが形成される。
【0072】
その後、保護層14及び浸透防止層13に形成された各切り込みから浸透防止層13と管部材11との間(保護層14のみを除去する場合には、保護層14と浸透防止層13との間である。)に作業者の指及び専用の工具等を挿入し、保護層14及び浸透防止層13を管部材11から剥離する。これにより、各管部材11の端部11bにおける外周面11aがそれぞれ露出し、管部材11からの保護層14及び浸透防止層13の除去作業が終了する。
【0073】
カッター用治具10の使用後は、突起部45を第三の係合部48に係合させることにより軸部材37を前記退避状態におく。これにより、カッター用治具10の非使用時に枠部材15内に突出した刃部材41の刃42により怪我することが防止される。
【0074】
本実施例によれば、前記したように、管部材11を取り巻くように配置された枠部材15が、その第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dを保護層14に当接させた状態で管部材11の軸線の周りに回転可能且つ管部材11の軸線方向に移動可能に管部材11に装着されることから、刃部材41は、枠部材11の回転時及び移動時に、管部材11の外周面11aとの間隔が所定の大きさに維持された状態で枠部材15と一体的に管部材11の軸線の周りに回転し又は管部材11の軸線方向に移動する。
【0075】
また、軸部材37の回転により刃部材41の姿勢が前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で変化することから、刃部材41の姿勢を前記周方向姿勢におくことにより刃42の向きを枠部材15の回転方向に容易に向かせることができ、また、刃部材41の姿勢を前記軸線方向姿勢におくことにより刃42の向きを枠部材15の移動方向に容易に向かせることができる。
【0076】
従って、刃部材41が枠部材15の回転時に管部材11の外周面11aとの間隔が所定の大きさに維持された状態で管部材11の軸線の周りに回転することから、浸透防止層13及び保護層14に管部材11の周方向に沿った切り込みを形成する際、刃部材41を前記周方向姿勢においた状態で枠部材15を管部材11の軸線の周りに回転させることにより、刃部材41の刃42は浸透防止層13及び保護層14への切り込み深さが管部材11の周方向に変化することなく所定の切り込み深さに維持された状態で各層13,14に切り込むので、作業者から把持部32を介して枠部材15に与える力の大きさに拘らず管部材11の周方向に一様な深さを有する切り込みを各層13,14に管部材11の周方向に沿って形成することができる。
【0077】
また、浸透防止層13及び保護層14に管部材11の軸線方向に沿った切り込みを形成する際も、上記したと同様に、作業者から把持部32を介して枠部材15に与える力の大きさに拘らず管部材11の軸線方向に一様な深さを有する切り込みを各層13,14に管部材11の軸線方向に沿って形成することができる。
【0078】
従って、浸透防止層13及び保護層14に形成された切り込みの深さが深過ぎることによる管部材11への大きな損傷の発生が防止されるので、管部材11に損傷を与えることによる従来のような管部材11の強度の低下を確実に防止することができる。また、各層13,14に形成された切り込みの深さが浅過ぎることによって管部材11からの各層13,14の除去作業が従来のように煩雑になることを、確実に防止することができる。
【0079】
また、前記したように、軸部材37の端面37bは、管部材11への枠部材15の装着状態で保護層14に当接しており、軸部材37の端面37bからの刃部材42の突出量は、切り込むべき所定の深さにほぼ等しいことから、例えば枠部材15が回転しているときに枠部材15又は管部材11に刃部材41と管部材11とを互いに近づかせる方向に前記所定の深さを超える大きさの移動量で移動させる力が作用したとき、保護層14が軸部材37の端面37bに当接することにより、刃部材41が前記所定の深さを超えて保護層14及び浸透防止層13に突き刺さることが防止される。すなわち、軸部材37は、刃部材41の刃42が所定の切り込み深さを超えて保護層14及び浸透防止層13を切り込むことを防止する役割を担う。従って、刃部材41の刃42が所定の切り込み深さを超えて各層13,14に切り込むことによって刃部材41が管部材11に損傷を与えることを、確実に防止することができる。
【0080】
更に、前記したように、軸部材37の端面37b、第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の前記一方の長辺部16Dはそれぞれ保護層14に点接触又は線接触することから、それらが保護層14の面接触する場合に比べて該保護層との間に生じる摩擦力が低減されるので、軸部材37の端面37b、前記一方の長辺部16B及び前記一方の長辺部16Dと保護層14との間に大きな摩擦力が生じることによって枠部材15の回転及び移動が妨げられること、及び、前記大きな摩擦力によって軸部材37、前記一方の長辺部16B、前記一方の長辺部16D及び保護層14にそれぞれ破損が生じることを、確実に防止することができる。
【0081】
また、前記したように、軸部材37は、その軸線方向に沿って移動可能に収容部35内に収容されていることから、刃部材41の姿勢を変化させるべく軸部材37を回転させるとき、軸部材37をその軸線方向に沿って管部材11から離反する方向へ移動させることにより、刃部材41の刃42を保護層14及び浸透防止層13から離反させることができる。これにより、刃部材41の刃42が各層13,14に切り込んだ状態で軸部材37を回転させることによって刃部材41から各層13,14に作用する抉り力により刃部材41及び各層13,14に破損が生じることを、確実に防止することができる。
【0082】
また、圧縮コイルスプリング40から軸部材37には端面37bを保護層14に当接させる付勢力が付与されていることから、例えば枠部材15が回転しているときに枠部材15又は管部材11に刃部材41と管部材11とを互いに離反させる方向に移動させる力が作用したときでも、軸部材37の端面37bが保護層14に当接するように軸部材37を圧縮コイルスプリング40の付勢力により枠部材15又は管部材11の移動に追従して移動させることができる。これにより、枠部材15及び管部材11が刃部材41及び管部材11を互いに離反させる方向にたとえ移動したとしても、保護層14への刃部材41の切り込み深さは浅くなることなく所定の切り込み深さに維持される。
【0083】
更に、前記したように、刃部材41が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び刃部材41が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で軸部材37の回転が保持手段により規制されていることから、枠部材15の回転中及び移動中に軸部材37が回転することによって刃42の向きが変化することが防止されるので、刃42の進行方向が所定の進行方向からずれることを確実に防止することができる。
【0084】
また、保持手段は、刃部材41が枠部材15の内方に突出することなく該枠部材の外方に退避する退避状態に軸部材37がおかれたとき、前記退避状態に軸部材37を保持することから、本発明に係るカッター用治具10を使用していないときに軸部材37を前記退避状態に保持することにより、枠部材15の内方に突出した刃部材41で誤って怪我をすることを確実に防止することができる。
【0085】
また、前記したように、枠部材15には、該枠部材を回転させるとき及び移動させるときにそれぞれ該枠部材を操作する操作者が握るための把持部32が枠部材15からその外方に突出して設けられていることから、枠部材15を直接掴むことにより回転及び移動させる場合に比べて、操作者から枠部材15に作用するモーメント力をより大きくすることができる。これにより、枠部材15の回転時及び移動時に操作者からの力を枠部材15により容易に伝えることができるので、枠部材15をより容易に回転及び移動させることができる。従って、浸透防止層13及び保護層14の除去のための作業効率をより向上させることができる。
【0086】
更に、前記したように、把持部32には、軸部材37が収容される収容部35が形成されていることから、軸部材37を収容するための収容部を把持部32とは別に設ける場合に比べて、部品点数を削減することができるので、製造コストの削減を図ることができる。
【0087】
また、前記したように、枠部材15には、その内方に管部材11の端部11bを受け入れたときに該端部の端面11cに当接し、枠部材15の内方への管部材11の挿入量を規定するためのストッパ部材28が設けられていることから、管部材11の端面11cをストッパ部材28に当接させることにより、浸透防止層13及び保護層14への切り込み位置が規定される。
【0088】
これにより、管部材11の端部11bにおける各層13,14を除去する際、管部材11の端面11cをストッパ部材28に当接させた状態で枠部材15を回転させることにより、刃42をその進行方向が管部材11の軸線方向に移動することなくストッパ部材28により規定された切り込み位置で管部材11の周方向に進行させることができる。
【0089】
従って、枠部材15を回転させたときに、刃部材41の刃42が管部材11の軸線方向に移動しないように操作者が刃42の進行状況を視認しながら枠部材15を回転させる必要はないので、このようなストッパ部材28が設けられていない場合に比べて、管部材11からの各層13,14の除去のための作業効率を確実に向上させることができる。
【0090】
更に、前記したように、把持部32が、前記一方の短辺部17Aに形成された伸長部33にボルト部材34を介して取り外し可能に取り付けられており、刃部材41が取り付けられた軸部材37は、把持部32の収容部35内に収容されていることから、把持部32を伸長部33から取り外すことにより、軸部材37及び刃部材41を把持部32と一体的に枠部材15から取り外すことができる。これにより、把持部32が取り付けられた枠部材15に適合する管部材11の外径とは異なる外径を有する別の管部材11に形成された被覆層を除去する際、把持部32、軸部材37及び刃部材41をそれぞれ枠部材15から取り外し、前記別の管部材11に適合する枠部材15に把持部32、軸部材37及び刃部材41をそれぞれ取り付けることにより、カッター用治具10を管部材11の外径に容易に対応させることができる。
【0091】
本実施例では、管部材11同士を前記管継手を用いて接続する際に本発明に係るカッター用治具10を用いた例を示したが、これに代えて、管部材11の長手方向の中間部分に管部材11から分岐する図示しない分岐管を接続する際に本発明に係るカッター用治具10を用いることができる。この場合、管部材11の前記中間部分における浸透防止層13及び保護層14を例えば管部材11の軸線方向に伸びる矩形状に切り取る必要がある。
【0092】
管部材11の前記中間部分における浸透防止層13及び保護層14をそれぞれ除去する際、先ず、軸部材37を前記退避状態においた状態で各パッチン錠23のフック部25への各レバー部24の係合部24aの係合を解除することにより第一の枠部19の前記他方の長辺部16Aと第二の枠部20の前記一方の短辺部17Aとの間を開放し、管部材11の前記中間部分を枠部材15内に第一の枠部19と第二の枠部20との間を経て挿入し、管部材11の前記中間部分を両枠体19,20間に挟み込む。このとき、図1及び図2に示したカッター用治具10を単に用いると、ストッパ部材28の当接部30の先端が保護層14に干渉することにより両枠体19,20間への管部材11の挟み込みが妨げられるが、ストッパ部材28は、前記したように、ねじ部材31を介して第二の枠部20に取り外し可能に取り付けられていることから、ストッパ部材28を枠部材15から取り外すことにより、ストッパ部材28に妨げられることなく両枠体19,20間に管部材11を挟み込むことができる。また、第一及び第二の両枠体19,20が連結手段である各パッチン錠23により互いに分離可能に連結されていることから、筒状の枠部材15を管部材11の前記中間部分に容易に装着することができるので、筒状の枠部材15を管部材11の前記中間部分に装着するために、枠部材15内に管部材11の端部11bを受け入れ、更に、枠部材15を前記中間部分に移動させる場合に比べて、管部材11への枠部材15の装着作業をより容易に行うことができる。
【0093】
次に、管部材11の前記中間部分を両枠体19,20間に挟み込んだ状態でパッチン錠23により第一の枠部19の前記他方の長辺部16Aと第二の枠部20の前記一方の短辺部17Aとの間を閉鎖し、突起部45の操作により刃部材41の刃42を管部材11の周方向を向いた状態で保護層14及び浸透防止層13に食い込ませる。続いて、把持部32の操作によって枠部材15を回転させることにより管部材11の前記中間部分における浸透防止層13及び保護層14に管部材11の周方向に沿った切り込みを形成する。その後、枠部材15を管部材11の軸線方向に移動させ、前記切り込みに管部材11の軸線方向に所定の間隔をおいた位置で前記切り込みに対向する切り込みを各層13,14に形成する。
【0094】
次に、突起部45の操作により刃部材41の姿勢を前記軸線方向姿勢に切り替え、把持部32の操作により枠部材15を管部材11の軸線方向に移動させることにより、前記各切り込みの互いに対向する端部間に管部材11の軸線に沿った切り込みを各層13,14に形成する。更に、枠部材15を管部材11の周方向に移動させ、前記切り込みに管部材11の周方向に所定の間隔をおいた位置で前記切り込みに対向する切り込みを各層13,14に形成する。これにより、管部材11の前記中間部分における浸透防止層13及び保護層14に各切り込みで囲まれた矩形状領域が形成される。
【0095】
その後、前記矩形状領域を管部材11から剥離することにより、管部材11の前記中間部分における外周面11aを露出させることができる。
【0096】
また、本実施例では、枠部材15が筒状をなした例を示したが、これに代えて、管部材11の軸線周りに回転可能且つ管部材11の軸線方向に移動可能に管部材11に装着可能であれば、筒状以外の形状をなした枠部材15を本発明に適用することができる。
【0097】
更に、本実施例では、刃42の向きが管部材11の周方向を向く周方向姿勢と刃42の向きが管部材11の軸線方向を向く軸線方向姿勢との間で刃部材41の姿勢を変化させるための刃方向変更手段が軸部材37で構成された例を示したが、これに代えて、前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で刃部材41の姿勢を変化させることができれば、軸部材37以外の手段を本発明に用いることができる。この場合、枠部材15内に挿入された管部材11を第一の枠部19の前記一方の長辺部16B及び第二の枠部20の一方の長辺部16Dと協働して支持する支持部材を枠部材15に設けることができる。
【0098】
また、本実施例では、枠部材15がほぼ六角形の横断面を有する例を示したが、これに代えて、六角形以外の形状の横断面を有する枠部材を本発明に適用することができる。
【0099】
更に、本実施例では、第一の枠部19の前記他方の長辺部16A及び第二の枠部20の他方の長辺部16Cに形成された確認孔27がそれぞれ円形をなした例を示したが、これに代えて、例えば図7(a)に示すように、枠部材15の周方向に沿って伸びる矩形状をなした確認孔27、又は、例えば図7(b)に示すように、管部材11の周方向で角部27aが互いに対向する菱形をなした確認孔27を、本発明に適用することができる。
【0100】
確認孔27が枠部材15の周方向に沿って伸びる矩形状をなす場合、枠部材15を回転させたとき、確認孔27を例えば保護層14の表面に記された切り込み位置を示す線Lに容易に一致させることができるので、線Lに沿った切り込みを保護層14及び浸透防止層13により正確に形成することができる。
【0101】
他方、確認孔27が管部材11の周方向で角部27aが互いに対向する菱形をなす場合、枠部材15を回転させたとき、確認孔27の各角部27aと前記した線Lとを互いに一致させることにより、線Lに沿った切り込みを保護層14及び浸透防止層13により正確に形成することができる。
【0102】
また、本実施例では、軸部材37の端面37bを保護層14に当接させる付勢力を軸部材37に付与するための付勢手段が圧縮コイルスプリング40で構成された例を示したが、これに代えて、前記付勢力を軸部材37に付与することができれば、圧縮コイルスプリング40以外の部材で付勢手段を構成することができる。
【0103】
更に、本実施例では、第一及び第二の各枠部19,20を互いに連結する連結手段がパッチン錠23で構成された例を示したが、これに代えて、第一及び第二の各枠部19,20を互いに分離可能に連結することができれば、パッチン錠23以外の部材で前記連結手段を構成することができる。
【0104】
また、本実施例では、刃部材41が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び刃部材41が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で軸部材37の回転を規制し、且つ、軸部材37が前記退避状態におかれたときに軸部材37を前記退避状態に保持するための保持手段が、軸部材37に形成された突起部45と、把持部32に形成された複数の係合部46,47,48とで構成された例を示したが、これに代えて、軸部材37を前記各回転位置及び前記退避状態に保持することができれば、突起部45及び各係合部46,47,48以外の手段で保持手段を構成することができる。
【0105】
更に、本実施例では、管部材11から浸透防止層13及び保護層14をそれぞれ除去するために本発明に係るカッター用治具10を用いた例を示したが、これに代えて、例えば保護層14のみを除去するために本発明に係るカッター用治具10を用いることができる。この場合、軸部材37の端面37bからの刃部材41の突出量が保護層14の厚さ寸法にほぼ等しくなるように刃部材41を軸部材37に取り付けることにより、浸透防止層13に大きな損傷を与えることなく保護層14のみに切り込みを形成することができる。
【0106】
また、本実施例では、浸透防止層13及び保護層14がそれぞれ外周面11aに形成された管部材11から各層13,14をそれぞれ除去するために本発明に係るカッター用治具10を用いた例を示したが、これに代えて、又は、これに加えて、浸透防止層13及び保護層14以外の被覆層が外周面に形成された管部材から各被覆層をそれぞれ除去するために本発明を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係るカッター用治具を概略的に示す正面図である。
【図2】本発明に係るカッター用治具を概略的に示す側面図である。
【図3】本発明に係るカッター用治具の要部を拡大して概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明に係る刃部材の刃が浸透防止層及び保護層に食い込んだ状態を概略的に示す縦断面図である。
【図5】(a)は本発明に係る刃部材の姿勢が周方向姿勢におかれた状態を概略的に示す縦断面図であり、(b)は本発明に係る刃部材の姿勢が軸方向姿勢におかれた状態を概略的に示す縦断面図であり、(c)は本発明に係る軸部材が退避状態を概略的に示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る把持部を概略的に示す斜視図である。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ本発明に係る確認孔の他の実施例を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0108】
10 カッター用治具
11 管部材
11a 外周面(管部材の外周面)
13,14 被覆層(浸透防止層及び保護層)
15 枠部材
16B,16D 当接部(長辺部)
19 第一の枠体
20 第二の枠体
23 連結手段(パッチン錠)
28 ストッパ部材
32 把持部
35 収容部
37 刃方向変更手段(軸部材)
37b 端面(軸部材の端面)
40 付勢手段(圧縮コイルスプリング)
41 刃部材
42 刃
45 突起部
46,47,48 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの被覆層が外周面に該外周面を覆うように形成された円筒状の管部材の前記被覆層を前記管部材から部分的に除去すべく前記被覆層に切り込みを形成するために用いられるカッター用治具であって、前記管部材を取り巻くように配置され、内周面の少なくとも一部に前記被覆層に当接する当接部が形成され、該当接部が前記被覆部に当接した状態で前記管部材の軸線の周りに回転可能且つ前記管部材の軸線方向に移動可能に前記管部材に装着される枠部材と、該枠部材から前記管部材に向けて突出し、前記被覆層に所定の切り込み深さで切り込む刃を有する刃部材と、前記枠部材の回転及び移動により前記被覆層に前記管部材の周方向及び軸線方向に沿って伸びる切り込みを形成すべく前記刃の向きが前記管部材の周方向を向く周方向姿勢と前記刃の向きが前記管部材の軸線方向を向く軸線方向姿勢との間で前記刃部材の姿勢を変化させるための刃方向変更手段とを備えることを特徴とするカッター用治具。
【請求項2】
前記刃方向変更手段は、前記枠部材から前記管部材に向けて伸びる軸部材であってその軸線の周りに回転可能に前記枠部材に設けられた軸部材であり、前記刃部材は、前記軸部材の前記管部材側の一端部に該一端部から前記管部材に向けて突出して設けられており、前記軸部材の回転により、前記刃部材の姿勢が前記周方向姿勢と前記軸線方向姿勢との間で変化することを特徴とする請求項1に記載のカッター用治具。
【請求項3】
前記軸部材の前記端面は、前記管部材への前記枠部材の装着状態で前記被覆層に当接しており、前記軸部材の前記一端部からの前記刃部材の突出量は、前記所定の切り込み深さにほぼ等しいことを特徴とする請求項2に記載のカッター用治具。
【請求項4】
前記軸部材は、その軸線方向に沿って移動可能に前記枠部材に設けられており、該枠部材には、前記軸部材の前記端面を前記被覆層に当接させる付勢力を前記軸部材に付与するための付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のカッター用治具。
【請求項5】
前記刃部材が前記周方向姿勢におかれる回転位置及び前記刃部材が前記軸線方向姿勢におかれる回転位置で前記軸部材の回転を規制し、且つ、前記軸部材がその軸線方向に沿って前記管部材から離反する方向へ移動することにより前記刃部材が前記枠部材の内方に突出することなく該枠部材の外方に退避する退避状態におかれたとき、該退避状態に前記軸部材を保持するための保持手段が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のカッター用治具。
【請求項6】
前記枠部材には、該枠部材を回転させるとき及び移動させるときにそれぞれ該枠部材を操作する操作者が握るための把持部が前記枠部材からその外方に突出して設けられており、前記把持部には、前記枠部材の内方に開放し、前記軸部材がその軸線の周りに回転可能且つ前記端面が前記被覆層に当接する当接位置及び前記退避状態との間で移動可能に収容される収容部が形成されており、前記保持手段は、前記軸部材から前記収容部の内周面に向けて突出した突起部と、前記収容部の前記内周面に形成され、前記軸部材が前記刃部材の前記周方向姿勢に対応する回転位置、前記刃部材の前記軸線方向姿勢に対応する回転位置及び前記退避状態におかれたときにそれぞれ前記突起部に係合する複数の係合部とを備えることを特徴とする請求項5に記載のカッター用治具。
【請求項7】
前記枠部材には、その内方に前記管部材の端部を受け入れたときに該端部の端面に当接し、前記枠部材の内方への前記管部材の挿入量を規定するためのストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカッター用治具。
【請求項8】
前記枠部材は、前記刃部材が設けられた半筒状の第一の枠体と、該第一の枠体と協働して前記管部材の挿入を許す筒状体を構成する半筒状の第二の枠体とに分割されており、前記第一及び第二の両枠体は、連結手段により互いに分離可能に連結されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカッター用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−119323(P2008−119323A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308249(P2006−308249)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000146135)株式会社松阪鉄工所 (17)
【Fターム(参考)】