説明

カテーテル及びその製造方法

【課題】血管瘤からの塞栓コイルのはみ出し若しくは塞栓用薬剤の漏れ、又は血管瘤へ挿入した医療器具の抜けを防止して血管瘤の治療を確実且つ安全に行なうことができるカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル1は、拡張流体を給排する第1のルーメン3及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメン4を備えたカテーテル本体2と、カテーテル本体の先端部に設けられて第1のルーメンに連通し、拡張流体の給排によって拡縮するバルーン6と、バルーンの外面に開口され、バルーンの内部と隔離された状態で第2のルーメンに連通する連通部23と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管瘤を治療するために用いるカテーテル及びカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の一部が膨らんで血管瘤が形成されると、血管瘤が破裂し体内で出血する虞がある。特に脳内の動脈瘤が破裂して生じる脳内出血は、一般に脳卒中と呼ばれ、死に至ることもあるため、早期に発見して治療する必要がある。
【0003】
従来から、動脈瘤の治療方法としては、塞栓用のコイル又は薬剤を動脈瘤に充填する方法が知られており(例えば特許文献1参照)、さらに近年では、バルーンカテーテルによって瘤入口を閉じてコイル又は薬剤を確実に充填する方法が実施されている。
【0004】
具体的には、この方法は、コイル又は薬剤を供給するためマイクロカテーテル等の医療器具を血管瘤に挿入した後、バルーンカテーテルによって瘤入口を封鎖するとともに医療器具を瘤入口に挟み込んで固定し、そしてコイル又は薬剤を動脈瘤に充填するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−528030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の方法では、医療器具をバルーンカテーテルによって瘤入口に挟み込んでいるため、医療器具を挟んだ隙間から、瘤内に供給した塞栓用のコイルがはみ出す、又は塞栓用の薬剤が漏れ出す虞があった。また、医療器具の挟み込みが不十分であると、医療器具が抜ける虞があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、血管瘤からのコイルのはみ出し若しくは薬剤の漏れ、又は血管瘤へ挿入した医療器具の抜けを防止して血管瘤の治療を確実且つ安全に行なうことができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のカテーテルは、拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体と、前記カテーテル本体の先端部に設けられて前記第1のルーメンに連通し、前記拡張流体の給排によって拡縮するバルーンと、前記バルーンの外面に開口され、前記バルーンの内部と連通することなく隔離された状態で前記第2のルーメンに連通する連通部と、を有する。
【0009】
上記目的を達成するための本発明のカテーテルの製造方法は、キャビティ及び前記キャビティ内に突出した突出部を有する成形型に、中空形状を有する拡張可能なバルーン用チューブを配置する準備工程と、前記バルーン用チューブ内に加圧流体を注入して拡張させ、バルーン、及び前記バルーンの外面に開口され且つ前記バルーンの内部と連通することなく隔離された連通部を成形する成形工程と、拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体の先端部へ前記バルーン及び前記連通部を取り付け、前記バルーンの内部を前記第1のルーメンに連通させるとともに、前記連通部を前記第2のルーメンに連通させる取付工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明のカテーテルによれば、瘤入口にバルーンを密着させたまま第2のルーメン及び連通部を通じて医療器具を血管瘤に挿入できるため、血管瘤からのコイルのはみ出し若しくは薬剤の漏れを防止でき、また、医療器具を瘤入口内壁とバルーン外表面との間から挿入して挟み込むのではなく、第2のルーメン及び連通部を通じて医療器具を血管瘤に挿入できるため、従来のような不十分な挟み込みに起因する医療器具の抜けが生じない。また、本発明のカテーテルによれば、動脈瘤入口付近にカテーテルと医療器具とを配置する際に、カテーテルの第2ルーメンに医療器具を収納するため、血管内径に対してカテーテルの外径だけを考慮すればよい。従って、本発明のカテーテルは、血管瘤の治療を確実且つ安全に行なうことができる。
【0011】
また、前記バルーンの外面に形成された前記連通部の開口は、当該開口に挿通された前記医療器具の向きの変化を規制する小穴であるようにすれば、連通部から血管瘤に挿入された医療器具の向きが変化し難いため、コイル又は薬剤を安定的に血管瘤に供給できる。
【0012】
また、前記バルーンの外面に形成された前記連通部の開口は、前記カテーテル本体の軸方向に沿って長い長孔であるようにすれば、連通部から血管瘤に挿入した医療器具を所望の向きに向けて血管瘤内の狙った箇所へコイル又は薬剤を供給し易く、よって、作業性に優れる。
【0013】
また、前記連通部の開口は、前記バルーンの端部まで伸びるようにすれば、連通部から血管瘤に挿入した医療器具をより広い範囲で動かし血管瘤内の狙った箇所へコイル又は薬剤を供給し易く、よって、作業性に優れる。
【0014】
また、拡張状態の前記バルーンに前記拡張流体が更に供給されることによって、前記バルーンは前記連通部の開口を閉じるように拡張するようにすれば、開口が閉じることによって医療器具が所望の向きで保持されるため、コイル又は薬剤を血管瘤内の狙った箇所へ安定的に供給できる。
【0015】
また、前記カテーテル本体の軸方向に対し交差する方向に伸びる、前記連通部の内面に形成された溝を有するようにすれば、開口が閉じた際、医療器具は溝に嵌るため、医療器具が潰れ難く且つ安定的に保持される。
【0016】
また、上記本発明のカテーテルの製造方法によれば、血管瘤の治療を確実且つ安全に行い得るカテーテルを製造できる。
【0017】
また、動脈瘤を治療するための方法であって、
拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体と、前記カテーテル本体の先端部に設けられて前記第1のルーメンに連通し、前記拡張流体の給排によって拡縮するバルーンと、前記バルーンの外面に開口され、前記バルーンの内部と隔離された状態で前記第2のルーメンに連通する連通部と、を有するバルーンカテーテルを、動脈瘤の開口部付近に達するまで血管内に挿入するステップと、
前記バルーンを拡張させて動脈瘤開口部を封鎖するステップと、
前記バルーンカテーテルの連通部から医療器具を動脈瘤内腔に挿入し、前記医療器具を用いて動脈瘤の内腔を充填するステップと、を含む方法によれば、瘤入口にバルーンを密着させたまま第2のルーメン及び連通部を通じて医療器具を血管瘤に挿入できるため、血管瘤からのコイルのはみ出し若しくは薬剤の漏れを防止でき、また、医療器具を瘤入口内壁とバルーン外表面との間から挿入して挟み込むのではなく、第2のルーメン及び連通部を通じて医療器具を血管瘤に挿入できるため、従来のような不十分な挟み込みに起因する医療器具の抜けが生じない。また、上記方法によれば、動脈瘤入口付近にカテーテルと医療器具とを配置する際に、カテーテルの第2ルーメンに医療器具を収納するため、血管内径に対してカテーテルの外径だけを考慮すればよい。従って、上記方法によって血管瘤の治療を確実且つ安全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のカテーテルを示す側面図である。
【図2】第1実施形態のカテーテルの先端部を示す拡大縦断面図である。
【図3】第1実施形態のカテーテルの基端部を示す拡大縦断面図である。
【図4】第1実施形態のカテーテルの先端部の具体的構造を示す図である。
【図5】第1実施形態のバルーンを形成する成形型の構造を示す図である。
【図6】第1実施形態のバルーンの成形方法を示す工程図である。
【図7】第1実施形態のカテーテルの使用状態を示す説明図である。
【図8】第2実施形態のカテーテルの先端部の具体的構造を示す図である。
【図9】第2実施形態のカテーテルの要部の構造を示す平面図である。
【図10】第3実施形態のカテーテルの先端部の具体的構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
<第1実施形態>
(カテーテル)
図1において概説すると、本実施形態に係るカテーテル1は、ガイドワイヤが手元から先端まで挿通するオーバーザワイヤ(over the wire:OTW)型であり、可撓性を有する管状体であるカテーテル本体2と、カテーテル本体2の基端部に設けられたハブ10と、カテーテル本体2の先端部に設けられたバルーン6と、を有する。
【0021】
図2及び図3に示すように、カテーテル本体2は、先端及び後端が開口した管状体である外管21と、先端及び後端が開口した管状体である、外管21内に設けられた内管22と、を有する。
【0022】
外管21は、内管22の外側に同軸的に形成され、内管22の先端部より後退した位置に先端を有している。外管21の内径は内管22の外径よりも大きく形成され、外管21と内管22との間には、バルーン6に拡張流体を給排するための第1のルーメン3が形成される。
【0023】
外管21の構成材料としては、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0024】
内管22は、マイクロカテーテル、又はコイル送達デバイス等の長尺状の医療器具を挿通可能な第2のルーメン4を有する。内管22を構成する材料は、外管21と同様の材料、若しくは、例えばステンレス鋼、ステンレス延伸性合金、Ni−Ti合金等の、各種金属材料である。内管22には、内管22に挿通される医療器具を血管瘤内へと導入するための連通部23が、分岐接続されている。
【0025】
ハブ10は、第1の開口部15を有する外管ハブ11と、第2の開口部16を有する内管ハブ12とを有する。内管ハブ12は、外管ハブ11より基端側に配置されて外管ハブ11に固着されている。
【0026】
外管ハブ11は、外管21の基端部に固着されている。この固着する手段としては、接着剤による接着、熱融着、止具(図示せず)による固定等が挙げられる。第1の開口部15は、第1のルーメン3に連通しており、バルーン6を拡張するための拡張流体を第1のルーメン3に導入し、且つ第1のルーメン3より排出するためのポートとして機能する。
【0027】
内管ハブ12は、内管22の基端部に固着されている。固着する手段としては、接着剤による接着、熱融着、止具(図示せず)による固定等が挙げられる。第2の開口部16は、第2のルーメン4に連通しており、第2のルーメン4にガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤ挿入ポートとして機能する。さらに、この第2の開口部16は、第2のルーメン4及び連通部23に連通しており、医療器具を第2のルーメン4を介して連通部23へと挿通するための医療器具挿入ポートとして機能する。
【0028】
外管ハブ11及び内管ハブ12の構成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0029】
連通部23は、バルーン6の外面に開口され、バルーン6の内部と連通することなく隔離された状態で第2のルーメン4に連通している。図4に示すように、バルーン6の外面における連通部23の開口部23aは、開口部23aに挿通される医療器具の向きの変化を規制するような小穴である。
【0030】
連通部23は管形状を有しており、連通部23の内径は、例えば、内管22の内径と同等若しくはそれ以下に形成される。医療器具の導入を容易にするため、連通部23の断面は内管22との接続部からバルーン外周面に向かって開口が大きくなる形状(逆漏斗状のテーパ)であってもよい。本実施形態では、内管22と連通部23とは別個に形成され、これらは接着剤または熱融着等によって接続される。
【0031】
バルーン6は拡縮可能に形成され、拡張させていない状態では、内管22の外周に収縮または折り畳まれた状態となる。バルーン6は、円筒形状を有する円筒部分6aを有する。バルーン6は、拡張し円筒部分6aによって血管瘤の入口を封鎖する。
【0032】
バルーン6の先端部は、内管22の先端部の外周面に接着剤または熱融着等により密閉封止され、バルーン6の基端部は、外管21の先端部の外周面に同様に密閉封止されている。バルーン6の内部は、第1のルーメン3と連通しており、この第1のルーメン3を介して、生理食塩水及び造影剤等の拡張流体(液体)が流入可能となっている。バルーン6は、この拡張流体の流入により拡張し、また、流入した拡張流体を排出することにより収縮または折り畳まれた状態となる。第1のルーメン3は連通部23と連通していない。
【0033】
内管22においてバルーン6によって覆われる所定箇所には、X線不透過マーカー(不図示)が設けられる。X線不透過マーカーは、X線不透過材料の巻き線等で構成され、例えば白金、金、タングステン、イリジウムまたはそれらの合金であることが好ましく、さらに、白金、金、白金−イリジウム合金であることがより好ましい。このような材料で構成することにより、X線透視下で鮮明な造影像を得ることができるので、バルーン6の円筒部6aの位置をX線透視下で容易に確認することができる。
【0034】
(カテーテルの製造方法)
概説すると、本実施形態のカテーテル1の製造方法は、バルーン6及び連通部23を成形するための成形型に中空形状を有する拡張可能なパリソン(バルーン用チューブ)を配置する準備工程と、準備工程後、パリソンを膨らませてバルーン6及び連通部23を成形する成形工程と、成形工程後、カテーテル本体2にバルーン6及び連通部23を取り付ける取付工程と、を有する。
【0035】
図5に示すように、バルーン6を成形する成形型30は、バルーン6の円筒部分6aを成形する円筒体状の中央型31と、バルーン6を成形するキャビティ35を中央型31とともに区画すべく、中央型31の軸方向両端に配置される右側型32及び左側型33と、キャビティ35内に突出するように組み込まれて連通部23を成形する中子型34(突出部)と、を備えている。
【0036】
中央型31の周壁上部には、中子型34をキャビティ35内に突出させて配置するための中子孔31aが径方向に貫通して形成されている。右側型32及び左側型33は略円板状を呈しており、その中心部には、例えば、熱可塑性樹脂等からなる円筒体状のパリソン36(図6(a)参照)を挿通配置するための挿通孔32a、33aが軸方向に貫通して形成されている。これら挿通孔32a、33aのキャビティ35側(内側)は、中央型31の内径と一致するように、横向きのテーパ状に順次拡径して形成されている。
【0037】
本実施形態の中子型34は円柱体状を呈している。従って、上記中子孔31aの内形状は、この円柱体状の中子型34の形状に対応するように形成されており、この中子型34の形状によって、連通部23の開口部23aの開口形状は円形に形成される。
【0038】
図6(a)に示すように、準備工程では、右側型32、左側型33、及び中子型34が中央型31と組み合わされ、そして、右側型32の挿通孔32aと、左側型33の挿通孔33aとに貫通するように、可塑化したパリソン36が挿入支持されることによって、キャビティ35内にパリソン36が配置される。
【0039】
図6(b)に示すように、成形工程では、パリソン36の軸方向一方を閉じたうえで、他方から内部に圧縮空気等の加圧流体が注入され、キャビティ35内でパリソン36を膨らませることによって、バルーン6と該バルーン6の外面に開口された連通部23とが一体成形される。その際、キャビティ35内への中子型34の突出長さが連通部23の長さとなり、中子型34の外径が連通部23の内径となる。その後、図6(c)に示すように、成形型30を順次離型することにより、バルーン6及びバルーン6と一体成形された連通部23を取り出す。
【0040】
次に、取付工程において、一体成形されたバルーン6及び連通部23と、カテーテル本体2とが、接着剤や熱融着等によって接続される。このとき、連通部23に、内管22の第2のルーメン4が連通されるとともに、バルーン6内部の空間に第1のルーメン3が連通される。第2ルーメン4及び連通部23と、第1のルーメン3及びバルーン6内の空間とは、連通部分なく隔離される。
【0041】
(カテーテル1を用いた治療方法)
次に、脳内動脈に発生した動脈瘤を治療する場合を例にして、カテーテル1を用いた血管瘤の治療方法について述べる。
【0042】
図7において概説すると、本実施形態の治療方法は、バルーン6が動脈瘤Xへ達するまでカテーテル1を血管内に挿入するカテーテル挿入工程と、カテーテル挿入工程後、バルーン6を拡張させて動脈瘤Xの入口を封鎖する封鎖工程と、封鎖工程後、連通部23から医療器具を動脈瘤Xに挿入し、医療器具を用いて動脈瘤Xの内部を充填する充填工程と、を有する。
【0043】
カテーテル挿入工程において、術者は、例えばセルジンガー法によって血管内にシースを留置し、5〜50mm程度突出するようにガイドワイヤが挿通されたカテーテル本体2を、シース及びシース内に配置されたガイドカテーテルを通じ血管内へ挿入する。
【0044】
術者は、カテーテル1の先端部に設けられたマーカー(不図示)によってカテーテル1及びガイドワイヤの先端部の位置をX線透視下で確認しながら、ガイドワイヤを先行させてカテーテル1を進行させ、バルーン6を動脈瘤Xの入口へと到達させる。バルーン6が動脈瘤Xの入口へ到達したら、術者は、開口部23aが動脈瘤X内に臨むようにカテーテル1の姿勢を調整する。
【0045】
次に、封鎖工程において、術者は、シリンジ等を用い、外管ハブ11の第1の開口部15から第1のルーメン3を通じてバルーン6の内部に液体を送り込み、バルーン6を拡張させる。拡張したバルーン6は、円筒部分6aで動脈瘤Xの入口を封鎖する。この状態で、術者は、内管ハブ12の第2の開口部16よりガイドワイヤを抜き取ることもできるが、通常はバルーンカテーテル用のガイドワイヤはバルーンカテーテルの第二のルーメン4内に留置したままにしておく。留置しておいたガイドワイヤは後述のマイクロカテーテルを送達する際にマイクロカテーテルのルーメンに沿わせてマイクロカテーテルを前進させるために使用することができる。そうする場合、ガイドワイヤをやや後退させて連通部23に先端を挿入しておけば、マイクロカテーテルの連通部23への送達に使用することができる。また、バルーンカテーテルを抜き去る際にもこのガイドワイヤを使用することができる。
【0046】
その後、充填工程において、術者は、第2の開口部16より、両端が開口した管体であるマイクロカテーテル40をガイドワイヤを用いて挿入し、第2のルーメン4及び連通部23を通じてマイクロカテーテル40の先端を動脈瘤X内へと導入する。このとき、前述のバルーンカテーテル用のガイドワイヤを使用して、マイクロカテーテルを前進させ連通部に案内してもよいし、バルーンカテーテル用のガイドワイヤとは異なるマイクロカテーテル用のガイドワイヤを別途用いてもよい。導入後、術者は、ガイドワイヤを抜去してマイクロカテーテル40を通じ動脈瘤X内にコイルを供給し動脈瘤Xを充填する。
【0047】
動脈瘤Xの充填後、術者は、マイクロカテーテル40を第2の開口部16より抜き取る。その後、術者は、液体を第1の開口部15より吸引して排出し、バルーン6を収縮又は折り畳まれた状態とした後、血管よりカテーテル本体2を抜去し、手技を終了する。
【0048】
本実施形態の作用効果を述べる。
【0049】
カテーテル1によれば、瘤入口にバルーン6を密着させたまま第2のルーメン4及び連通部23を通じてマイクロカテーテル40を動脈瘤Xに挿入してコイルを供給できるため、動脈瘤Xからのコイルのはみ出しを防止でき、また、マイクロカテーテル40を瘤入口とバルーン6との間から挿入して挟み込むのではなく、第2のルーメン4及び連通部23を通じてマイクロカテーテル40を動脈瘤Xに挿入できるため、従来のような不十分な挟み込みに起因するマイクロカテーテル40の抜けが生じない。また、カテーテル1によれば血管内にバルーンカテーテルとマイクロカテーテルとを独立して併置させる必要がなく、内径が小さい血管内においても動脈瘤の治療を行うことができる。従って、カテーテル1は、動脈瘤Xの治療を確実且つ安全に行なうことができる。
【0050】
また、連通部23の開口部23aは、開口部23aに挿通されるマイクロカテーテル40の向きの変化を規制する小穴であり、その結果、マイクロカテーテル40の向きが変化し難いため、コイルを安定的に動脈瘤Xに供給できる。
【0051】
また、本実施形態のカテーテル1の製造方法によれば、動脈瘤の治療を確実且つ安全に行い得るカテーテル1を製造できる。
【0052】
<第2実施形態>
図8において概説すると、第2実施形態は、第1実施形態と略同様であるが、連通部53が第1実施形態と異なる。他の点については、第2実施形態は第1実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。また、第1実施形態と同一の機能を有する構成部材については、同一の符号を付す。
【0053】
図8に示すように、第2実施形態の連通部53の開口部53aの開口形状は、カテーテル本体2の軸方向に沿って長い長孔に形成されている。さらに、連通部53の内面には、カテーテル本体2の軸方向に対し交差する方向に伸びる溝54が形成されている。本実施形態では、長孔形状の連通部53のバルーン内腔に面した内周面から連通部53の内腔へ向けて突き出た断面が円弧状のカテーテル本体の軸と略垂直な方向に配列された溝54が複数形成されている。溝と溝との間の幅は内管22からバルーン外周面に向けてしだいに大きくなるよう形成されていてもよい。このため、開口部53aにおける長手方向側面の開口形状は、複数の円弧が連なった略波形状を呈している。
【0054】
また、図9に示すように、第2実施形態のバルーン6は、拡張状態のバルーン6に液体が更に供給されることによって開口部53aを閉じるように拡張する点で、第1実施形態と異なる。バルーン6を構成する材料を適切に選択することによって、このような段階的な拡張が可能となる。バルーン6の構成材料は、例えばナイロンを含む。
【0055】
第2実施形態では、連通部53の形状が第1の実施形態と異なるので、上記成形型30の中子型34の形状を連通部53に対応させて形成する必要がある。また、中子型34の形状を連通部53の形状に対応させて形成するとともに、中央型31の中子孔31aを中子型34の形状に対応させて形成すれば、カテーテル51の製造方法は第1実施形態と同様の工程で実施することができる。また、第2実施形態の成形型30において、中央型31を円筒体状に形成し、右側型32及び左側型33を円板状に形成しているが、これに限定されず、中央型31、右側型32及び左側型33を上下または左右に半割形状に形成し、半割形状の型を上下または左右から型合わせするように構成してもよい。また、第2実施形態のカテーテル51を用いた治療方法も第1実施形態と略同様である。
【0056】
以上のように、第2実施形態では、連通部53の開口部53aの開口形状がカテーテル本体2の軸方向に沿って長い長孔であるため、連通部53から動脈瘤Xに挿入したマイクロカテーテル40を所望の向きに向けて動脈瘤X内の狙った箇所へコイルを供給し易く、よって、作業性に優れる。
【0057】
また、開口部53aが閉じることによってマイクロカテーテル40が所望の向きで保持されるため、コイルを動脈瘤X内の狙った箇所へ安定的に供給できる。
【0058】
また、開口部53aが閉じた際、マイクロカテーテル40が溝54に嵌るため、マイクロカテーテル40が潰れ難く且つ安定的に保持される。
【0059】
また、第2実施形態のカテーテル51は、第1実施形態のカテーテル1と同様の構成を有しているため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
<第3実施形態>
図10において概説すると、第3実施形態は、第1実施形態と略同様であるが、連通部73が第1実施形態と異なる。他の点については、第3実施形態は第1実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。また、第1実施形態と同一の機能を有する構成部材については、同一の符号を付す。
【0061】
図10に示すように、第3実施形態の連通部73の開口部73aの開口形状は、カテーテル本体2の軸方向に沿って長い長孔(長腔)に形成されており、且つ、開口部73aは、バルーン6の端部まで伸びる。すなわち、第3実施形態のバルーン6の上半部は、連通部73によって、径方向左右に分断形成されており、バルーン6の径方向の断面形状はC形状に形成されている。
【0062】
また、連通部73の内面には、第2実施形態と同様に、カテーテル本体2の軸方向に対し交差する方向に伸びる溝74、より具体的には、長孔形状の連通部73のバルーン内腔に面した内周面から連通部53の内腔へ向けて突き出た断面が円弧状のカテーテル本体の軸と略垂直な方向に配列された溝74が、複数形成されている。溝と溝との間の幅は内管22からバルーン外周面に向けてしだいに大きくなるように形成されていてもよい。このため、第2実施形態と同様、連通部73の開口部73aにおける長手方向側面の開口形状は、複数の円弧が連なった略波形状を呈している。
【0063】
また、第3実施形態においても、第2実施形態と同様、拡張状態のバルーン6に液体が更に供給されることによってバルーン6が開口部73aを閉じるように拡張する。
【0064】
第3実施形態では、連通部73の形状が第1実施形態と異なるので、上記成形型30の中子型34の形状を連通部73の形状に対応させて形成する必要がある。また、中子型34の形状を連通部73の形状に対応させて形成するとともに、中央型31、右側型32及び左側型33の形状を改良すれば、カテーテル71の製造方法は第1実施形態と同様の工程で実施することができる。また、第3実施形態のカテーテル71を用いた治療方法も第1実施形態と略同様である。
【0065】
以上のように、第3実施形態では、開口部73aの開口形状がカテーテル本体2の軸方向に沿って長い長孔であり、且つバルーン6の端部まで伸びるため、マイクロカテーテル40をより広い範囲で動かし動脈瘤X内の狙った箇所へコイルを供給し易く、よって、作業性に優れる。
【0066】
また、開口部73aが閉じることによってマイクロカテーテル40が所望の向きで保持されるため、コイルを動脈瘤X内の狙った箇所へ安定的に供給できる。
【0067】
また、開口部73aが閉じた際、マイクロカテーテル40が溝74に嵌るため、マイクロカテーテル40が潰れ難く且つ安定的に保持される。
【0068】
また、第3実施形態のカテーテル71は、第1実施形態のカテーテル1と同様の構成を有しているため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、本発明は脳内動脈の動脈瘤への適用に限定されず、広く血管瘤の治療用途に適用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、マイクロカテーテル40を通じてコイルが血管瘤内に充填されたが、本発明はこれに限定されず、マイクロカテーテルを通じて薬剤が血管瘤内に充填されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1、51、61、71 カテーテル、
2 カテーテル本体、
3 第1のルーメン、
4 第2のルーメン、
6 バルーン、
23、53、73 連通部、
23a、53a、73a 開口部、
30 成形型、
34 中子型(突出部)、
35 キャビティ、
36 パリソン(バルーン用チューブ)、
40 マイクロカテーテル(医療器具)、
54、74 溝、
X 動脈瘤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の先端部に設けられて前記第1のルーメンに連通し、前記拡張流体の給排によって拡縮するバルーンと、
前記バルーンの外面に開口され、前記バルーンの内部と隔離された状態で前記第2のルーメンに連通する連通部と、を有する、カテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの外面に形成された前記連通部の開口は、当該開口に挿通された前記医療器具の向きの変化を規制する小穴である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンの外面に形成された前記連通部の開口は、前記カテーテル本体の軸方向に沿って長い長孔である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記連通部の開口は、前記バルーンの端部まで伸びる、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
拡張状態の前記バルーンに前記拡張流体が更に供給されることによって、前記バルーンは前記連通部の開口を閉じるように拡張する、請求項3又は請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル本体の軸方向に対し交差する方向に伸びる、前記連通部の内面に形成された溝を有する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
動脈瘤を治療するための方法であって、
拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体と、前記カテーテル本体の先端部に設けられて前記第1のルーメンに連通し、前記拡張流体の給排によって拡縮するバルーンと、前記バルーンの外面に開口され、前記バルーンの内部と隔離された状態で前記第2のルーメンに連通する連通部と、を有するバルーンカテーテルを、動脈瘤の開口部付近に達するまで血管内に挿入するステップと、
前記バルーンを拡張させて動脈瘤開口部を封鎖するステップと、
前記バルーンカテーテルの連通部から医療器具を動脈瘤内腔に挿入し、前記医療器具を用いて動脈瘤の内腔を充填するステップと、を含む方法。
【請求項8】
キャビティ及び前記キャビティ内に突出した突出部を有する成形型に、中空形状を有する拡張可能なバルーン用チューブを配置する準備工程と、
前記バルーン用チューブ内に加圧流体を注入して拡張させ、バルーン、及び前記バルーンの外面に開口され且つ前記バルーンの内部と隔離された連通部を成形する成形工程と、
拡張流体を給排する第1のルーメン及び長尺状の医療器具を挿通する第2のルーメンを備えたカテーテル本体の先端部へ前記バルーン及び前記連通部を取り付け、前記バルーンの内部を前記第1のルーメンに連通させるとともに、前記連通部を前記第2のルーメンに連通させる取付工程と、を有する、カテーテルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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