説明

カテーテル固定具およびそれを備えた薬液注入ポートセット

【課題】薬液注入ポートにカテーテルを固定するための操作が容易になるとともに、カテーテルが捻じれることのないカテーテル固定具およびそれを備えた薬液注入ポートセットを提供すること。
【解決手段】薬液注入ポート11のステム14にカテーテル12の基端部を固定するためのカテーテル固定具20を、カテーテル固定部材21と、補助具25とで構成した。そして、カテーテル固定部材21を、環状の固定部本体22と、アンチキンクチューブ23とで構成し、アンチキンクチューブ23における固定部本体22側に、細径部23cを設けた。また、補助具25を、アンチキンクチューブ23をアンチキンクチューブ23の外周側から内部に挿入できる外周側開口を備えた軸方向貫通孔を有する補助具本体26で構成して、補助具本体26の内面に細径部23cに係合する突部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入ポートとカテーテルとを固定するために用いられるカテーテル固定具およびそれを備えた薬液注入ポートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液注入ポートが接続されたカテーテルを患者の体に留置して静脈に抗がん剤や栄養剤等の薬液を一時的または長期にわたって供給することが行われている。この場合、カテーテルの先端部を体内における薬液を供給する部分まで延ばし、そのカテーテルの基端部を、カテーテル固定部材を介して薬液注入ポートの接続管に固定している。そして、薬液注入ポートを、体外から注射等により薬液を供給し易い体内の所定の位置に留置している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この埋設型カテーテル装置(薬液注入ポートセット)は、薬液注入ポートと、この薬液注入ポートに接続したカテーテルと、薬液注入ポートとカテーテルとの接続部分を覆うスリーブ(カテーテル固定部材)と、スリーブを薬液注入ポートとカテーテルとの接続部分に取り付けるためのキャップ(補助具)とを備えている。そして、薬液注入ポートの側部には、内周面に雌ねじが形成された円筒状の孔部と、孔部の内部を貫通して外部に延びる接続管とが形成されている。また、スリーブは、カテーテルを挿通させる内腔と、薬液注入ポートの雌ネジに螺合する雄ねじとを備えた円筒体で構成され、スリーブの外周面における雄ねじ以外の部分には軸方向に延びる凹部が円周に沿って複数形成されている。
【0004】
そして、キャップは、円柱体に、外周側から中心側にかけてカテーテルを出し入れすることのできるカテーテル挿通部を設けるとともに、端面側に、スリーブの凹部が形成された部分を形状を一致させて挿入できるスリーブ嵌合部を設けた形状に形成されている。したがって、スリーブにカテーテルを挿通させ、そのカテーテルの基端部を接続管に接続した状態で、薬液注入ポートの孔部の雌ねじとスリーブの雄ねじとを螺合させ、さらに、キャップのスリーブ嵌合部をスリーブの凹部に嵌合させてキャップを回転することにより、雌ねじと雄ねじとを強く螺合させることができる。これによって、薬液注入ポートの接続管とカテーテルとは強固に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8―107934号公報
【発明の概要】
【0006】
前述した埋設型カテーテル装置の薬液注入ポートは、患者の体に形成された僅か数センチの長さの切開部に突出したカテーテルの基端部に取り付けられるため、狭いスペースの中で、接続操作を行わなければならない。そして、前述した従来の埋設型カテーテル装置のように、雌ねじと雄ねじとの螺合により、薬液注入ポートとスリーブとを接続する場合には、キャップを用いてスリーブを回転させる操作が効果的である。しかしながら、狭いスペースの中では、このような操作がしづらいという問題がある。また、スリーブが回転する際に、カテーテルは静止状態の接続管と回転するスリーブとによって挟まれた状態になるため、カテーテルに捻じれが生じる。このため、カテーテルが破損しやすくなるという問題もある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、その目的は、薬液注入ポートにカテーテルを固定するための操作が容易になるとともに、カテーテルが捻じれることのないカテーテル固定具およびそれを備えた薬液注入ポートセットを提供することにある。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係るカテーテル固定具の構成上の特徴は、薬液注入ポートの接続管にカテーテルの基端部を固定するためのカテーテル固定具であって、接続管を基端部で覆ったカテーテルに対して、カテーテルを内部に通した状態でカテーテルの先端側からの基端側に移動することにより、カテーテルの基端部を接続管側に押し付けるようにしてカテーテルの外周に取り付けられ、外周面に突部または凹部からなる被係合部が形成されたカテーテル固定部材と、カテーテル固定部材を、カテーテル固定部材の外周側から覆うことができ、カテーテル固定部材を覆ったときに、被係合部に係合する係合部を備え、係合部を被係合部に係合させてカテーテル固定部材を薬液注入ポート側に押圧できる補助具とからなることにある。
【0009】
前述のように構成したカテーテル固定具は、互いに接続された薬液注入ポートの接続管とカテーテルの基端部とを固定するためのカテーテル固定部材と、接続管とカテーテルとの接続部にカテーテル固定部材を取り付ける際に用いられる補助具とで構成されている。そして、カテーテル固定部材は、カテーテルを内部に貫通させた状態で、接続管とカテーテルとの接続部側に移動することによりカテーテルを接続管に固定する部材で構成され、その外周面には、突部または凹部からなる被係合部が形成されている。また、補助具は、カテーテル固定部材を外周側から覆うことができ、カテーテル固定部材の被係合部に対して係合できる係合部を備えている。
【0010】
したがって、カテーテル固定部材の内部に通したカテーテルの基端部で薬液注入ポートの接続管を被覆し、カテーテル固定部材の外周側から補助具を近づけて補助具の係合部をカテーテル固定部材の被係合部に係合させた状態で、補助具を薬液注入ポート側に押圧することにより、カテーテル固定部材をカテーテルと接続管との接続部に移動させることができる。すなわち、本発明によると、薬液注入ポートとカテーテル固定部材とをねじ同士の螺合によって接続するといったような複雑な操作をすることなく、双方を互いに押圧するといった簡単な操作で薬液注入ポートとカテーテルとを接続することができる。
【0011】
その際の操作が、前述したように、カテーテル固定部材の外周側から補助具を近づけて補助具の係合部をカテーテル固定部材の被係合部に係合させる操作と、補助具でカテーテル固定部材を押圧する操作だけで済む。このため、補助具をカテーテルに沿って移動させる操作が不要になりスペースの狭い場所でも容易に行えるとともに、補助具を押圧する力を効果的にカテーテル固定部材に伝達することができ、確実な押圧操作ができる。また、カテーテルを捻じることがないため捻じれによりカテーテルを破損することがなくなる。
【0012】
なお、被係合部は、突部または凹部で構成し、被係合部が突部である場合には、特に形状の制限はないが、被係合部が凹部である場合には、ある程度、カテーテル固定部材の外周面に沿って延びるようにしておくことが好ましい。これによって、カテーテル固定部材の外周側から被係合部に、補助具の係合部を係合させる操作がし易くなる。また、補助具はある程度の大きさを備え、手で操作し易いもので構成する。これによって、小さく、手で操作し難いカテーテル固定部材を直接手で持って操作するよりも効果的な操作を行える。
【0013】
また、本発明に係るカテーテル固定具の他の構成上の特徴は、カテーテル固定部材を、環状の固定部本体と、固定部本体に連通した状態で連結されたチューブとで構成し、チューブにおける固定部本体の近傍に、大径部を設けるとともに、チューブにおける大径部と固定部本体との間の部分に細径部を設け、この細径部で被係合部を構成したことにある。
【0014】
この発明では、カテーテル固定部材が、接続管とカテーテルとを固定する固定部本体と、カテーテルにおける基端側部分を保護するチューブとで構成されている。固定部本体は、接続管にカテーテルを固定するものであるため、ある程度、硬い部材で構成されている。そして、本発明によると、カテーテル固定部材における補助具によって押圧される部分が、固定部本体になるため、チューブに大きな力が加わってチューブが破損するといったことは生じない。また、チューブに大径部を設けたことにより、チューブにおける接続管とカテーテルとの接続部を覆う部分に無理な力が加わらなくなり、チューブによって、カテーテルに折れ等が生じることが防止されるとともに、チューブ自身も破損し難くなる。
【0015】
また、本発明に係るカテーテル固定具のさらに他の構成上の特徴は、補助具を、チューブをチューブの外周側から内部に挿入できる外周側開口を備えた軸方向貫通孔を有する被覆体で構成して、被覆体の内面に細径部で構成された被係合部に係合する突部を形成し、突部で係合部を構成したことにある。これによると、補助具のカテーテル固定部材への組み付けがさらに容易になる。
【0016】
また、本発明に係るカテーテル固定具のさらに他の構成上の特徴は、カテーテル固定部材を、環状の固定部を備えた部材で構成し、固定部の外周面に円周に沿って延びる溝部を設け、この溝部で被係合部を構成したことにある。これによると、被係合部と係合部を、それぞれ硬質の部材からなる固定部と補助具とに設けることになるため、被係合部と係合部とを確実に係合させることができる。
【0017】
また、本発明に係るカテーテル固定具のさらに他の構成上の特徴は、補助具を、固定部を固定部の外周側から内部に挿入できる外周側開口を備えた軸方向貫通孔を有する被覆体で構成して、被覆体の内面に溝部で構成された被係合部に係合する突部を形成し、突部で係合部を構成したことにある。これによると、溝部に対して突部をスライドさせることにより、被係合部と係合部との係合を行えるため、カテーテル固定部材に補助具を組み付ける操作が容易になる。
【0018】
また、本発明に係るカテーテル固定具のさらに他の構成上の特徴は、補助具の外周面に鍔状の押圧部を設けたことにある。これによると、補助具の押圧操作がし易くなるとともに、補助具の本体部分を必要最小限の大きさにすることができる。また、この場合、押圧部は、補助具の外周面に形成されるため、外周側開口の部分には、押圧部は位置しなくなる。これによると、補助具によるカテーテル固定部材の押圧操作がさらにし易くなる。例えば、補助具の外周側開口から内部にカテーテル固定部材を挿入するときに、外周側開口を下方に向けた状態で補助具を上方からカテーテル固定部材に近づけていくとすると、押圧部は補助具の下部側には設けられていない状態になる。このため、押圧部の下部が体の切開部に当たって補助具の操作がし難くなるといったことは生じなくなる。
【0019】
本発明に係る薬液注入ポートセットの構成上の特徴は、前述したいずれかのカテーテル固定具と、薬液注入ポートと、カテーテルとからなることにある。これによると、薬液注入ポートにカテーテルを接続するための操作が容易であるとともに、カテーテルが捻じれることがないため破損し難い薬液注入ポートセットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薬液注入ポートセットを示した側面図である。
【図2】薬液注入ポートを示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】カテーテル固定部材を示しており、(a)は側面図、(b)は(a)の3−3断面図である。
【図4】補助具を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図5】カテーテル固定具を組み付けた状態を示した底面図である。
【図6】カテーテル固定部材を介して薬液注入ポートとカテーテルとを接続した状態を示した側面図である。
【図7】患者の体に薬液注入ポートとカテーテルとを留置した状態を示した説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るカテーテル固定具を組み付けた状態を示した底面図である。
【図9】第2実施形態に係るカテーテル固定具が備えるカテーテル固定部材を示しており、(a)は側面図、(b)は(a)の9−9断面図である。
【図10】第2実施形態に係るカテーテル固定具が備える補助具を示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るカテーテル固定具および薬液注入ポートセットを図面を用いて詳しく説明する。図1は、同実施形態に係るカテーテル固定具20を備えた薬液注入ポートセット10を示している。この薬液注入ポートセット10は、患者A(図7参照)の静脈(B2等)内に、抗がん剤や栄養剤等の薬液を供給するために使用される薬液注入ポート11とカテーテル12およびそれらを接続するためのものである。カテーテル固定具20は、カテーテル固定部材21と補助具25とで構成されており、補助具25を用いて、薬液注入ポート11とカテーテル12との接続部にカテーテル固定部材21が取り付けられる。薬液注入ポート11は、患者Aの体内における静脈の近傍の皮下に留置され、カテーテル12は、例えば、静脈内に留置される。
【0022】
薬液注入ポート11は、図2に示したように、ポート本体13と、本発明に係る接続管としてのステム14とで構成されている。ポート本体13は、平面(図2(a))が略楕円形で側面(図2(b))が略台形に形成され、上面中央に凹部が形成された基板13aの表面に厚板状のセプタム13bを取付けて構成されており、基板13aとセプタム13bとで囲まれる部分に空間部が形成されている。セプタム13bは、シリコーンゴムで構成されており、針を刺し込むことができるとともに、針を抜くと針で刺した穴が塞がる性質を備えている。
【0023】
このため、ポート本体13のセプタム13bに薬液が充填された注射器の針を刺し、注射器からポート本体13内に薬液を注入すると、その薬液は、ポート本体13内の空間部に充填される。また、基板13aは、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン等で構成することができる。ステム14は、ポート本体13の内部に連通する液体流路(図示せず)が内部に形成された筒状体で構成されており、外周面の先端に拡径部14aが形成されている。
【0024】
ステム14の基端側部分の外径は、カテーテル12の内径と同じか僅かに大きく設定され、ステム14の先端の拡径部14aの外径は、カテーテル12の内径よりも大きく設定されている。例えば、カテーテル12の内径を1.5mmとすると、ステム14の基端側部分の外径は1.6mm程度で、拡径部14aの最大外径は2.4mm程度に設定される。このため、カテーテル12の基端開口(薬液注入ポート11側に位置する端部を基端部、静脈の内部側に挿入される端部を先端部とする。)から内部に向ってステム14を挿し込むと、拡径部14aの部分でカテーテル12が外周側に伸びることにより、ステム14にカテーテル12を接続することができる。
【0025】
カテーテル固定部材21は、図3に示したように、軸方向の長さが短い環状の固定部本体22と、固定部本体22に連結された本発明に係るチューブとしてのアンチキンクチューブ23とで構成されている。固定部本体22は、軸方向の長さが短い円筒状の被押圧部22aと、内径が被押圧部22aと同じで外径が被押圧部22aよりも小さく、軸方向の長さが被押圧部22aよりも長い円筒状の接続部22bとを連通させた一体からなる部材で構成されている。そして、固定部本体22の内部に形成された固定用穴部22cの内周面における被押圧部22aの接続部22b側部分に、中心軸側に向かって僅かに突出する係合突部24が円周に沿って形成されている。
【0026】
また、接続部22bの外周面には、先端から基端側にいくほど徐々に大径になるテーパ面と、テーパ面の基端部よりも小径の同径面からなるストレート面とが形成されており、テーパ面とストレート面との境界には段部24aが形成されている。固定用穴部22cの内部には、カテーテル12が外周面を覆った状態のステム14を押し込むことができ、そのとき、ステム14の拡径部14aが係合突部24を超えて係合突部24に係合し、固定部本体22は、ポート本体13に接近したところに位置するようになる。
【0027】
また、アンチキンクチューブ23は、内部にカテーテル12の基端側部分を貫通させることのできる保護チューブで構成されている。このアンチキンクチューブ23は、基端側部分で接続部22bを覆った状態で固定部本体22に固定されている。このとき、接続部22bの基端側のストレート面を覆うアンチキンクチューブ23の基端部は段部24aを締め付けることにより固定される。これによって、アンチキンクチューブ23は、接続部22bから外れることを防止される。また、アンチキンクチューブ23における接続部22bのテーパ面を覆う部分には、接続部22bのテーパ面に沿って膨れた膨出部23aが形成される。また、アンチキンクチューブ23における膨出部23aと固定部本体22との間の部分の外径は、アンチキンクチューブ23の先端側部分23bの外径と等しくなっており、この細径部23cで本発明に係る被係合部が構成される。
【0028】
補助具25は、図4に示したように、円筒体を軸方向に沿って切断して断面形状が略半円の円弧状になった形状の補助具本体26と、半円鍔状の押圧部27とで構成されている。補助具本体26で本発明に係る被覆体が構成される。補助具本体26の内部には、図5に示したように、アンチキンクチューブ23を外周側開口28a側から内部に入れて収容できる形状の軸方向貫通孔28が形成されており、その軸方向貫通孔28の基端部には、内部側に突出する突部28bが円周に沿って形成されている。突部28bは、本発明に係る係合部を構成するもので、その内周面は、アンチキンクチューブ23の細径部23cの円周方向の略半周分を多少の余裕を持って内部に収容できる大きさに設定されている。
【0029】
このため、補助具25を外周側開口28a側からカテーテル固定部材21の外周面側に近づけていくと、突部28bを細径部23cに位置させた状態で、軸方向貫通孔28の内部に、アンチキンクチューブ23の略半周部分を収容することができる。このとき、押圧部27の端面の中央部分は、固定部本体22の先端面に接触するか、または、固定部本体22の先端面との間に僅かに隙間が生じた状態まで接近する。押圧部27は、補助具本体26の基端外周に設けられており、中央に穴部が形成された厚板状の円板を、外周側開口28aに対応する部分で直線状に切断して半円形の鍔状にした形状に形成されている。また、補助具25の外周面における補助具本体26と押圧部27との境界には、補助具本体26から押圧部27に向かって徐々に外径が大きくなった凹状の曲面26aが形成されている。
【0030】
このため、まず、カテーテル固定部材21の内部を貫通させたカテーテル12の基端部分でステム14を覆い、カテーテル固定部材21の上部側部分(図1の状態での上部)に補助具25を被せる。その状態で、押圧部27を薬液注入ポート11側に押圧することにより、カテーテル固定部材21を薬液注入ポート11側に移動させて、カテーテル12をステム14に固定することができる。この場合、押圧部27で固定部本体22の被押圧部22aを押圧することにより、固定部本体22の係合突部24は、ステム14の拡径部14aに対応する部分を乗り越える。
【0031】
これによって、カテーテル12は、図6に示したように、良好な状態でカテーテル固定部材21によってステム14に固定される。なお、固定部本体22およびステム14は、それぞれチタンやチタン合金等の金属やポリプロピレン等のプラスチックで構成することができる。また、カテーテル12やアンチキンクチューブ23は、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂からなる管状体で構成することができる。なお、カテーテル12は軟質の材料で構成し、アンチキンクチューブ23は、カテーテル12と同じまたはカテーテル12よりも硬質の材料で構成する。
【0032】
この構成において、カテーテル固定部材21を介して接続された薬液注入ポート11とカテーテル12とを用いて患者Aの静脈内に、薬液を供給する場合には、まず、先端が静脈内に挿入されたカテーテル12の基端側部分をカテーテル固定部材21の内部に貫通させる。ついで、カテーテル12の基端部に薬液注入ポート11のステム14を接続する。そして、カテーテル固定部材21を、カテーテル12を介してステム14に係合させる。この場合の操作は、まず、カテーテル12の外周に取り付けたカテーテル固定部材21を、薬液注入ポート11側に移動させて、固定部本体22をステム14に接近させる。
【0033】
その状態で、補助具25を外周側開口28aからカテーテル固定部材21の外周面に近づけて、軸方向貫通孔28内にカテーテル固定部材21のアンチキンクチューブ23を入れる。そして、補助具25の押圧部27を薬液注入ポート11側に押圧することによって、カテーテル固定部材21の固定部本体22をステム14の拡径部14aを越えた位置に押し込む。これによって、カテーテル12は、ステム14に固定され、ポート本体13内の空間部が、ステム14の液体流路を介して、カテーテル12内の液体流路に連通する。カテーテル12とステム14との接続操作が終了すると、補助具25を、カテーテル固定部材21から取り外す。
【0034】
この場合、カテーテル12は、例えば、図7に示したようにして、患者Aの胸部Cから静脈内に挿入される。すなわち、胸部Cにおける静脈、例えば、鎖骨下静脈B1の近傍部分を切開して、その近傍に位置する鎖骨下静脈B1からカテーテル12を挿入し、その先端側部分を上大静脈B2に到達させる。また、カテーテル12の基端部に接続された薬液注入ポート11は、胸部皮下に埋めておく。この場合、アンチキンクチューブ23によって、カテーテル12が屈曲することを防止されるとともに、カテーテル12が固定部本体22の開口縁部に押圧されることもない。
【0035】
したがって、カテーテル12の液体流路は、適正な状態で連通した状態を維持する。そして、患者Aの静脈内に薬液を供給する際には、まず、薬液が充填された注射器の針を皮膚面から刺してセプタム13bを貫通させ針の先端をポート本体13の内部に位置させる。そして、注射器からポート本体13内に薬液を注入する。これによって、薬液は、ポート本体13の内部からカテーテル12の内部を通過して上大静脈B2内に入っていく。
【0036】
このように、本実施形態に係る薬液注入ポートセット10のカテーテル固定具20は、カテーテル固定部材21と、補助具25とで構成されている。そして、カテーテル固定部材21の内部に通したカテーテル12を薬液注入ポート11のステム14に接続し、アンチキンクチューブ23の外周側に補助具25を上方から被せた状態で、補助具25を薬液注入ポート11側に押圧するだけの簡単な操作で薬液注入ポート11とカテーテル12とを接続することができる。このように、補助具25をカテーテル12に沿って移動させる操作が不要になるため、スペースの狭い場所でも操作を容易に行える。
【0037】
また、補助具25に押圧部27を設けたため、押圧部27を押圧する力を効果的にカテーテル固定部材21に伝達することができるようになり、確実な押圧操作ができる。さらに、押圧部27が下縁部が直線状になった鍔状に形成されているため、押圧操作がし易くなる。すなわち、押圧部27が指を当てやすい面積を備えているとともに、押圧部27の下縁部が体の切開部に当たって補助具25の操作がし難くなるといったことが生じない。また、カテーテル固定部材21に、アンチキンクチューブ23を設けたため、カテーテル12に折れが生じることが防止される。さらに、従来技術のように、カテーテル12を捻じることがないため捻じれによりカテーテル12を破損することがなくなる。
【0038】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るカテーテル固定具30を示している。このカテーテル固定具30は、カテーテル固定部材31と補助具35とで構成されており、カテーテル固定部材31は、図9に示したように、軸方向の長さが短い環状の固定部本体32と、固定部本体32に連結されたアンチキンクチューブ33とで構成されている。そして、固定部本体32の外周面における幅方向の中央には、円周に沿って、本発明に係る被係合部としての溝部32aが形成されている。
【0039】
補助具35は、図10に示したように、前述した補助具25よりも軸方向の長さが短く直径が大きな補助具本体36と、半円鍔状の押圧部37とで構成されている。補助具本体36の内部には、固定部本体32を外周側開口38a側から入れて内部に収容できる形状の軸方向貫通孔38が形成されており、その基端部には、内部側に突出する突部38bが軸方向貫通孔38の周面に円周に沿って形成されている。突部38bは、固定部本体32の溝部32aに係合できる形状および大きさに設定されている。また、補助具35の外周面における補助具本体36と押圧部37との境界には、補助具本体36から押圧部37に向かって徐々に外径が大きくなった凹状の曲面36aが形成されている。このカテーテル固定具30のそれ以外の部分の構成については、前述したカテーテル固定具20と同一である。
【0040】
本実施形態において、補助具35をカテーテル固定部材31に組み付ける場合には、補助具35の突部38bをカテーテル固定部材31の固定部本体32の溝部32aに係合させる。本実施形態によると、それぞれ硬質の部材からなる固定部本体32の溝部32aと補助具35の突部38bとを係合させるため、補助具35をカテーテル固定部材31に確実に組み付けることができる。この実施形態におけるそれ以外の作用効果は、前述した第1実施形態の作用効果と同様である。
【0041】
また、本発明に係るカテーテル固定具およびそれを備えた薬液注入ポートセットは、前述した各実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、補助具25,35の補助具本体26,36を軸方向に所定の長さを備えたもので構成しているが、例えば、押圧部27,37の内周側部分だけで補助具を構成してもよい。また、カテーテル固定部材21,31を固定部本体22,32だけで構成することもできる。この場合、カテーテル固定部材は、本発明に係る固定部だけで構成される。また、固定部本体の外周に被係合部を構成する突部を設け、補助具の内周面に係合部を構成する溝部を設けてもよい。
【0042】
さらに、溝部32aを固定部本体32の周囲全体でなく、固定部本体32の両側に設けた一対の平行する溝部で構成し、突部38bを、一対の溝部に対してスライドすることにより係合可能な平行する一対の突部で構成してもよい。さらに、前述した実施形態では、薬液注入ポート11が接続されたカテーテル12を静脈に留置するようにしているが、この薬液注入ポート11が接続されたカテーテル12は、所定の方法を用いて動脈に留置することもできる。また、本発明に係るカテーテル固定具および薬液注入ポートセットの各部分の構成や各部材の材料等についても、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
10…薬液注入ポートセット、11…薬液注入ポート、12…カテーテル、14…ステム、20,30…カテーテル固定具、21,31…カテーテル固定部材、22,32…固定部本体、23,33…アンチキンクチューブ、23a…大径収容部、23c…細径部、25,35…補助具、27,37…押圧部、28,38…軸方向貫通孔、28a,38a…外周側開口、28b,38b…突部、32a…溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入ポートの接続管にカテーテルの基端部を固定するためのカテーテル固定具であって、
前記接続管を前記基端部で覆った前記カテーテルに対して、前記カテーテルを内部に通した状態で前記カテーテルの先端側からの基端側に移動することにより、前記カテーテルの基端部を前記接続管側に押し付けるようにして前記カテーテルの外周に取り付けられ、外周面に突部または凹部からなる被係合部が形成されたカテーテル固定部材と、
前記カテーテル固定部材を、前記カテーテル固定部材の外周側から覆うことができ、前記カテーテル固定部材を覆ったときに、前記被係合部に係合する係合部を備え、前記係合部を前記被係合部に係合させて前記カテーテル固定部材を前記薬液注入ポート側に押圧できる補助具と
からなることを特徴とするカテーテル固定具。
【請求項2】
前記カテーテル固定部材を、環状の固定部本体と、前記固定部本体に連通した状態で連結されたチューブとで構成し、前記チューブにおける前記固定部本体の近傍に、大径部を設けるとともに、前記チューブにおける前記大径部と前記固定部本体との間の部分に細径部を設け、この細径部で前記被係合部を構成した請求項1に記載のカテーテル固定具。
【請求項3】
前記補助具を、前記チューブを前記チューブの外周側から内部に挿入できる外周側開口を備えた軸方向貫通孔を有する被覆体で構成して、前記被覆体の内面に前記細径部で構成された被係合部に係合する突部を形成し、前記突部で前記係合部を構成した請求項2に記載のカテーテル固定具。
【請求項4】
前記カテーテル固定部材を、環状の固定部を備えた部材で構成し、前記固定部の外周面に円周に沿って延びる溝部を設け、この溝部で前記被係合部を構成した請求項1に記載のカテーテル固定具。
【請求項5】
前記補助具を、前記固定部を前記固定部の外周側から内部に挿入できる外周側開口を備えた軸方向貫通孔を有する被覆体で構成して、前記被覆体の内面に前記溝部で構成された被係合部に係合する突部を形成し、前記突部で前記係合部を構成した請求項4に記載のカテーテル固定具。
【請求項6】
前記補助具の外周面に鍔状の押圧部を設けた請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載のカテーテル固定具。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載されたカテーテル固定具と、前記薬液注入ポートと、前記カテーテルとからなる薬液注入ポートセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−233758(P2010−233758A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83921(P2009−83921)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】