カテーテル
【課題】簡易かつ迅速に薬剤等の投与量の分布を変化させることができるカテーテルを提供すること。
【解決手段】内部空間4と、内部空間4と外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴5と、を有する細長い管状の外筒2と、内部空間4内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けたれた少なくとも1つの側面開放部15と基端側とを連通する流路14が形成された内部移動部材7と、内部空間4内における内部移動部材7の移動操作を行う移動操作部材8と、を備え、内部空間4内での内部移動部材7の移動によって、側面穴5と少なくとも1つの側面開放部15との重畳状態を変化させて、薬剤投与分布を変化させる。
【解決手段】内部空間4と、内部空間4と外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴5と、を有する細長い管状の外筒2と、内部空間4内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けたれた少なくとも1つの側面開放部15と基端側とを連通する流路14が形成された内部移動部材7と、内部空間4内における内部移動部材7の移動操作を行う移動操作部材8と、を備え、内部空間4内での内部移動部材7の移動によって、側面穴5と少なくとも1つの側面開放部15との重畳状態を変化させて、薬剤投与分布を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも先端部が生体に挿入されるカテーテルであって、側面に開口を有するカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、側面に開口を有するカテーテルを用いて生体組織に薬剤等を投与する場合がある。この場合、開口の位置、大きさ、個数によって、生体組織内での薬剤等の投与量の分布が影響される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−504132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬剤等の投与結果や症状の変化などに伴い、生体組織での薬剤等の投与が必要な部位が徐々に変化していく場合がある。例えば、薬剤を投与した結果、腫瘍の大きさが小さくなり、薬剤投与範囲が狭くなる場合や、一部、薬剤が浸透していない病変部がある場合、この病変部にも薬剤を投与する必要が生じるため、薬剤投与範囲が広がる場合がある。
【0005】
一方、薬剤投与の開口が小さい場合、薬剤の詰まりが発生する場合があり、この場合、薬剤が詰まった開口に隣接する開口からの薬剤等の投与量を増加させることが望ましい。
【0006】
しかしながら、カテーテル設置後に上述した薬剤等の投与量の分布を変化させたい状態が生じても、従来、カテーテルの交換や移動のための手術を必要とし、簡易かつ迅速な対応措置を施すことが困難であった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易かつ迅速に薬剤等の投与量の分布を変化させることができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、内部チャネルと、該内部チャネルと外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴と、を有する細長い管状の外筒と、前記内部チャネル内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けられた少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路が形成された内部移動部材と、前記内部チャネル内における前記内部移動部材の移動操作を行う移動操作部材と、を備え、前記内部チャネル内での前記内部移動部材の移動によって、前記側面穴と前記少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、先端側と基端側とを連通させる連通流路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、線材で連結されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、管材で連結されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の側面に設けられた溝であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の内部に設けられた管路であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、筒状をなし、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、該内部移動部材内の前記筒状の内部空間を含むことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、複数の独立した流路であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、前記移動操作部材の操作によって、前記外筒の軸線方向の移動および/または前記外筒の軸線まわりの回動が可能であることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記外筒および/または前記移動操作部材は、前記内部移動部材の移動量および/または回動量を示す指標が設けたれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、内部チャネル内での内部移動部材の移動によって、側面穴と少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させて、薬剤投与分布を変化させるようにしているので、開腹手術等を行わなくても、簡易かつ迅速に薬剤等の投与量の分布を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態1の変形例4にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態1の変形例5にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態1の変形例6にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図9】図9は、この発明の実施の形態3にかかるカテーテルのスライド部材の構成を示す模式図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態4にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図11】図11は、薬剤投与分布の変更の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるカテーテルについて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。このカテーテル1は、外筒2とスライド部材3とを有する。図1に示すように、外筒2は、内部チャネル4と、内部チャネル4と外部とを貫通する少なくとも1つの側面穴5を有する。なお、この実施の形態1では、側面穴5が複数設けられている。また、外筒2の基端部には、フランジ部6が設けられている。
【0022】
スライド部材3は、内部移動部材7を有し、内部移動部材7は、内部チャネル4内に側面が密着した状態で移動可能に配置される。この内部移動部材7の移動には、外筒2の軸線方向の前進および後退を含む移動と、外筒2の軸線周りの回動とが含まれる。内部移動部材7は、ロッドやワイヤ等の線材12によって、移動操作部材8に連結される。なお、図1では、線材12が1本であるが、複数本の線材であってもよい。
【0023】
移動操作部材8は、内部チャネル4内での内部移動部材7の移動操作に用いられる。移動操作部材8は、栓部9と操作ノブ10と薬剤注入部11とを有する。栓部9は、一部または全部が内部チャネル4内に挿入され、内部チャネル4内に側面が密着した状態で、内部移動部材7と連結されて内部チャネル4内を移動する。操作ノブ10は、操作者が内部移動部材7を移動させることを意図してスライド部材3を移動させる際に把持する部位である。薬剤注入部11は、操作ノブ10から基端方向にむかって突出した円筒形をしており、薬剤注入部11の基端面から栓部9の先端面までを貫通する薬剤通路13が設けられている。
【0024】
内部移動部材7には、側面の一部のみに設けられた少なくとも1つの側面開放部15と、基端側の開放部16とを連通させる流路14が設けられている。この流路14は、側面に設けられた溝になっている。また、内部移動部材7には、先端側と基端側を連通させる流路17も設けられている。流路17は、内部チャネル4内であって、内部移動部材7の先端側と基端側との圧力をほぼ一定に保つ機能を有する。
【0025】
ここで、外筒2の内部チャネル4にスライド部材3を挿入すると、スライド部材3は外筒2に対して、前進、後退、および軸回りの回動が可能な状態で組み合わされる。この移動範囲の中には、内部チャネル4の中で内部移動部材7の少なくとも一部が、側面穴5の設けられた領域内に位置する範囲に含まれる。
【0026】
なお、外筒2、内部移動部材7、移動操作部材8の材料としては、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどを用いることができる。また、線材12の材料としては、ステンレスなどを用いることができる。
【0027】
つぎに、このカテーテル1の動作について説明する。まず、操作者は、薬剤注入部11に薬剤ポンプ等を接続して、薬剤をカテーテル1の内部に注入する。この注入された薬剤は、薬剤通路13を通って、線材12の周囲に広がる外筒2の内部チャネル4の空間に入り、さらに、内部移動部材7の基端側の開放部16から流路14を通って側面開放部15に達し、側面開放部15に重畳する位置にある側面穴5から生体組織内に投与される。
【0028】
ここで、操作者が薬剤の投与量の分布を変化させたい場合には、スライド部材3の移動操作部材8を操作する。具体的には、操作ノブ10を把持して、移動操作部材8を前進・後退や回動を行う。この操作によって、移動操作部材8は線材12によって内部移動部材7と連結されているので、内部移動部材7も前進・後退や回動を行う。なお、上述した流路17は、先端側と基端側との圧力をほぼ同じにするため、内部空間4内における内部移動部材7の移動に要する力を軽減することができる。また、薬剤を吐出する場合、この流路17によって、内部移動部材7の移動に伴って先端側の内部空間4が負圧状態になるということが生じないため、体液がカテーテル1内に浸入するのを防止することができる。
【0029】
内部移動部材7の側面開放部15は、側面の一部のみにしか設けられておらず、また、外筒2の側面穴5も所定の位置と大きさを有するので、内部移動部材7の移動で、側面開放部15と側面穴5の重畳状態が変化する。ここで、薬剤は側面開放部15から側面穴5を通って生体組織に吐出されるので、側面開放部15と側面穴5の重畳領域が薬剤通路の断面となる。従って、重畳領域の大きさが変化することは、薬剤通路の断面積が変化することであるので、薬剤の吐出量が変化する。つまり、内部移動部材7を移動させて、側面開放部15と側面穴5の重畳状態を変化させると、これに応じて、薬剤の吐出量が変化する。
【0030】
側面開放部15と側面穴5との重畳状態の変化態様には、重畳領域の大きさを拡大させる場合や、重畳領域の大きさを小さくする場合や、重畳状態から非重畳状態に変化する場合(このとき薬剤の吐出は停止する)や、非重畳状態から重畳状態に変化する場合(このとき薬剤の吐出が開始される)などがある。
【0031】
この実施の形態1では、外筒2の側面先端部の様々な位置に複数の側面穴5があり、内部移動部材7の側面にも複数の側面開放部15がある。このため、内部移動部材7の移動により、複数の側面穴5と複数の側面開放部15との重畳状態を様々に変化させることができ、これによって薬剤の吐出状態を様々に変化させることができる。
【0032】
なお、外筒2と移動操作部材8との少なくとも一方には、内部移動部材7の移動量を示す指標が設けられている。たとえば、外筒2には、軸周りの回動方向の移動量を示す指標MCが設けられ、移動操作部材8には、軸方向の移動量を示す指標MAと軸周りの移動量を示す指標MBとが設けられている。操作者は、これらの指標MA,MB,MCを用いることによって、遠隔で、外筒2と移動操作部材8との相対移動、すなわち外筒2と内部移動部材7との相対移動関係を把握することができる。
【0033】
(実施の形態1の変形例1)
つぎに、実施の形態1の変形例1について説明する。この変形例1では、図2に示すように、内部移動部材7の側面開放部15を広くした側面開放部25を設けている。側面開放部25は、側面開放部15に比して、側面における内部チャネル4内面との接触領域を広くしているので、内部移動部材7の前進・後進の移動による薬剤の吐出状態を大きく変化させることができる。
【0034】
(実施の形態1の変形例2)
つぎに、実施の形態1の変形例2について説明する。この変形例2では、図3に示すように、内部移動部材7の側面開放部15を広くした2つの側面開放部35a,35bを設け、各側面開放部35a,35bは、軸方向に関して重複しない異なる位置に設けられ、かつ軸周りに対しても重複しない異なる位置に設けられている。このため、内部移動部材7の回動によって薬剤の吐出状態を大きく変化させることができる。
【0035】
(実施の形態1の変形例3)
つぎに、実施の形態1の変形例3について説明する。この変形例3では、図4に示すように、内部移動部材7に設けた溝構造の流路14、流路17に替えて、管路構造の流路44、流路40としている。この管路構造の流路44によっても、側面開放部15に対応する側面開放部45と、基端側の開放部16に対応する開放部46との間を連通させることができる。また、流路40によっても、基端側と先端側とを連通させることができる。
【0036】
(実施の形態1の変形例4)
つぎに、実施の形態1の変形例4について説明する。この変形例4では、図5に示すように、内部移動部材7に設けた直線上の流路14に替えて、側面にスパイラル状に形成された溝構造の流路50としている。このスパイラル状の流路50は、実施の形態1における複数の流路14と流路17との機能を1つの流路によって実現することができる。もちろん、流路50は、複数設けても良いし、先端側に連通しない流路14をさらに設けてもよい。さらに、管路50は、スパイラル状でなくてもよく、軸方向と軸周り方向との双方の位置が順次変化する流路であればよい。
【0037】
(実施の形態1の変形例5)
つぎに、実施の形態1の変形例5について説明する。この変形例5では、図6に示すように、内部移動部材7を筒状にし、この筒の内部空間を流路60としている。そして、この筒には、側面開放部65が設けられるとともに、基端側端面には、線材12を支持する支持部61と、この支持部61の他の端面領域に開放部16に対応する開放部66を形成している。一方、先端側端面は、開放状態となっており、流路17に対応する機能を実現する開放部62が形成される。この流路60は、複数の流路を共通流路にし、流路14、流路17の機能を実現している。
【0038】
(実施の形態1の変形例6)
つぎに、実施の形態1の変形例6について説明する。この変形例6では、図7に示すように、変形例5の側面開放部65に替えて、流路60基端側から先端側に向けて順次広がる側面開放部75を形成している。この場合、流路60の先端側の開放部72は、円弧状となる。
【0039】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、内部移動部材7と移動操作部材8との間を線材12で連結していたが、この実施の形態2では、図8に示すように、線材12に替えて、管材112を用いている。線材12を用いた場合は、内部空間4と線材12との間に流路を形成していたが、この実施の形態2では、管の外径がほぼ内部空間4の内径と同じで摺動可能に形成された管材112内の内部通路114を流路としている。このような管材112を用いることによって、内部移動部材7に対応する先端側の内部移動部材47と基端側の移動操作部材8との間の力の伝達がさらに確実になるとともに、移動操作部材8を常に内部空間4内に挿入する必要がないので、内部移動部材4の軸方向の移動範囲を大幅に広げることができる。なお、管材114の外径は、その途中で内部空間4の内径比して小さくしてもよい。
【0040】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、線材12,あるいは管材112が、内部移動部材7と移動操作部材8との間の共通の流路を形成するようにしていたが、この実施の形態3では、内部移動部材7の流路をそれぞれ独立して、移動操作部材8側に連結するようにしている。
【0041】
すなわち、図9に示すように、この実施の形態3では、内部移動部材7の基端側を移動操作部材8の基端側まで延長したスライド部材203を有する。このスライド部材203は、先端側が内部移動部材7に対応し、基端側が移動操作部材8に対応する。ただし、移動操作部材8に対応する部分では、各流路が基端側でそれぞれ独立した複数の開放部146a〜146c,140aを形成している。たとえば、図4の流路44に対応する流路144a〜144cは、それぞれ独立して図4の側面開放部45に対応する側面開放部145a〜145cから図4の開放部46に対応する開放部146a〜146cまで形成され、図4の流路40に対応する流路140は、先端側から基端側の開放部140aまで延びて形成されている。
【0042】
このような独立した流路をスライド部材203が形成することによって、各流路の機能をそれぞれ独立させることができ、たとえば、薬剤の吐出と体液の吸引とを独立して同時に行うことができる。
【0043】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。この実施の形態4では、外筒2の側面に薬剤注入部11に対応する薬剤注入部311を設けている。すなわち、実施の形態1では、線材12と外筒2の内部空間4との間に流路が形成されていたが、この流路に対して移動操作部材8を介さずに、外筒2の側面から直接連結するようにしている。
【0044】
この実施の形態4では、移動操作部材8による操作と薬剤注入部とが分離されるため、移動操作部材8に対する操作性を向上させることができるとともに、移動しない外筒2に薬剤注入部311が連結されるため、外部の薬剤注入管と薬剤注入部311の連結を安定させることができる。
【0045】
(薬剤投与分布を変更する一例)
ここで、具体的な薬剤投与分布を変更する一例について説明する。なお、ここでは、外筒2と図6に示した内部移動部材67とを例に説明する。図11(a)は、外筒2に設けられる側面穴5の軸方向位置を示し、図11(b)は、外筒2の周方向展開図であり、図11(c)〜図11(e)は、軸方向の位置を変化させた内部移動部材67の周方向展開図である。
【0046】
図11(a)に示す軸方向の外筒2の位置#1、#2、#3、#4、#5に、それぞれ同一径の側面穴5を、図11(b)に示すように、外筒の径方向に対して2個、2個、4個、2個、2個設ける。一方、内部移動部材67には、外筒の各側面穴5の配置位置と同じであるが、各位置#1〜#5の軸方向位置がずれた側面開放部65が形成されている。すなわち、内部移動部材67には、位置#3を起点として、位置#2,#4の各2つの側面穴5と同じ周方向角度と同一内径とを有し、それぞれ先端側に距離d1シフトした各2つの側面開放部65が形成される。さらに、内部移動部材67には、軸方向の位置#3を起点として、位置#1,#5の各2つの側面穴5と同じ周方向角度と同一内径とを有し、先端側に距離d2シフトした各2つの側面開放部65が形成される。
【0047】
ここで、図11(c)に示すように、外筒2の位置#3の4つの側面穴5と、内部移動部材67の位置#3に対応する4つの側面開放部65とが一致している場合、他の側面穴5と側面開放部65との位置は一致していないので、外筒2の位置#3の4つの側面穴5からのみ薬剤が投与される。
【0048】
つぎに、内部移動部材67を、図11(d)に示すように、基端側に距離d1シフトさせると、外筒2の位置#2,#4の側面穴5のみから薬剤の投与が可能になる。さらに、内部移動部材67を、図11(e)に示すように、基端側に距離d2シフトさせると、外筒2の位置#1,#5の側面穴5のみから薬剤の投与が可能になる。
【0049】
すなわち、図11に示した一例では、内部移動部材67を外筒2の軸方向に3段階にシフトさせることによって、外筒2の側面穴5を介した薬剤投与の分布が位置#3を中心に軸方向の両方向にシフトする。しかも、この場合の薬剤投与量は、吐出圧が同一である場合、薬剤投与が可能な側面穴5の数は常に4つとなるので、シフトに関わらず、一定となる。
【0050】
なお、上述した実施の形態1〜4において、外筒2に対する内部移動部材67の移動をロックできるように、フランジ部材6と操作ノブ10との間にロック機構を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 カテーテル
2 外筒
3,203 スライド部材
4 内部チャネル
5 側面穴
6 フランジ部
7,67 内部移動部材
8 移動操作部材
9 栓部
10 操作ノブ
11,311 薬剤注入部
12 線材
13 薬剤通路
14,17,40,44,50,60,140,144a〜144c 流路
15,25,35a,35b,45,65,75,145a〜145c 側面開放部
16,46,62,66,72,140a,146a〜146c 開放部
61 支持部
12 管材
114 内部通路
MA,MB,MC 指標
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも先端部が生体に挿入されるカテーテルであって、側面に開口を有するカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、側面に開口を有するカテーテルを用いて生体組織に薬剤等を投与する場合がある。この場合、開口の位置、大きさ、個数によって、生体組織内での薬剤等の投与量の分布が影響される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−504132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬剤等の投与結果や症状の変化などに伴い、生体組織での薬剤等の投与が必要な部位が徐々に変化していく場合がある。例えば、薬剤を投与した結果、腫瘍の大きさが小さくなり、薬剤投与範囲が狭くなる場合や、一部、薬剤が浸透していない病変部がある場合、この病変部にも薬剤を投与する必要が生じるため、薬剤投与範囲が広がる場合がある。
【0005】
一方、薬剤投与の開口が小さい場合、薬剤の詰まりが発生する場合があり、この場合、薬剤が詰まった開口に隣接する開口からの薬剤等の投与量を増加させることが望ましい。
【0006】
しかしながら、カテーテル設置後に上述した薬剤等の投与量の分布を変化させたい状態が生じても、従来、カテーテルの交換や移動のための手術を必要とし、簡易かつ迅速な対応措置を施すことが困難であった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易かつ迅速に薬剤等の投与量の分布を変化させることができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、内部チャネルと、該内部チャネルと外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴と、を有する細長い管状の外筒と、前記内部チャネル内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けられた少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路が形成された内部移動部材と、前記内部チャネル内における前記内部移動部材の移動操作を行う移動操作部材と、を備え、前記内部チャネル内での前記内部移動部材の移動によって、前記側面穴と前記少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、先端側と基端側とを連通させる連通流路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、線材で連結されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、管材で連結されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の側面に設けられた溝であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の内部に設けられた管路であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、筒状をなし、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、該内部移動部材内の前記筒状の内部空間を含むことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、複数の独立した流路であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内部移動部材は、前記移動操作部材の操作によって、前記外筒の軸線方向の移動および/または前記外筒の軸線まわりの回動が可能であることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記外筒および/または前記移動操作部材は、前記内部移動部材の移動量および/または回動量を示す指標が設けたれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、内部チャネル内での内部移動部材の移動によって、側面穴と少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させて、薬剤投与分布を変化させるようにしているので、開腹手術等を行わなくても、簡易かつ迅速に薬剤等の投与量の分布を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態1の変形例4にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態1の変形例5にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態1の変形例6にかかるカテーテルの内部移動部材の構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図9】図9は、この発明の実施の形態3にかかるカテーテルのスライド部材の構成を示す模式図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態4にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。
【図11】図11は、薬剤投与分布の変更の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるカテーテルについて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す模式図である。このカテーテル1は、外筒2とスライド部材3とを有する。図1に示すように、外筒2は、内部チャネル4と、内部チャネル4と外部とを貫通する少なくとも1つの側面穴5を有する。なお、この実施の形態1では、側面穴5が複数設けられている。また、外筒2の基端部には、フランジ部6が設けられている。
【0022】
スライド部材3は、内部移動部材7を有し、内部移動部材7は、内部チャネル4内に側面が密着した状態で移動可能に配置される。この内部移動部材7の移動には、外筒2の軸線方向の前進および後退を含む移動と、外筒2の軸線周りの回動とが含まれる。内部移動部材7は、ロッドやワイヤ等の線材12によって、移動操作部材8に連結される。なお、図1では、線材12が1本であるが、複数本の線材であってもよい。
【0023】
移動操作部材8は、内部チャネル4内での内部移動部材7の移動操作に用いられる。移動操作部材8は、栓部9と操作ノブ10と薬剤注入部11とを有する。栓部9は、一部または全部が内部チャネル4内に挿入され、内部チャネル4内に側面が密着した状態で、内部移動部材7と連結されて内部チャネル4内を移動する。操作ノブ10は、操作者が内部移動部材7を移動させることを意図してスライド部材3を移動させる際に把持する部位である。薬剤注入部11は、操作ノブ10から基端方向にむかって突出した円筒形をしており、薬剤注入部11の基端面から栓部9の先端面までを貫通する薬剤通路13が設けられている。
【0024】
内部移動部材7には、側面の一部のみに設けられた少なくとも1つの側面開放部15と、基端側の開放部16とを連通させる流路14が設けられている。この流路14は、側面に設けられた溝になっている。また、内部移動部材7には、先端側と基端側を連通させる流路17も設けられている。流路17は、内部チャネル4内であって、内部移動部材7の先端側と基端側との圧力をほぼ一定に保つ機能を有する。
【0025】
ここで、外筒2の内部チャネル4にスライド部材3を挿入すると、スライド部材3は外筒2に対して、前進、後退、および軸回りの回動が可能な状態で組み合わされる。この移動範囲の中には、内部チャネル4の中で内部移動部材7の少なくとも一部が、側面穴5の設けられた領域内に位置する範囲に含まれる。
【0026】
なお、外筒2、内部移動部材7、移動操作部材8の材料としては、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどを用いることができる。また、線材12の材料としては、ステンレスなどを用いることができる。
【0027】
つぎに、このカテーテル1の動作について説明する。まず、操作者は、薬剤注入部11に薬剤ポンプ等を接続して、薬剤をカテーテル1の内部に注入する。この注入された薬剤は、薬剤通路13を通って、線材12の周囲に広がる外筒2の内部チャネル4の空間に入り、さらに、内部移動部材7の基端側の開放部16から流路14を通って側面開放部15に達し、側面開放部15に重畳する位置にある側面穴5から生体組織内に投与される。
【0028】
ここで、操作者が薬剤の投与量の分布を変化させたい場合には、スライド部材3の移動操作部材8を操作する。具体的には、操作ノブ10を把持して、移動操作部材8を前進・後退や回動を行う。この操作によって、移動操作部材8は線材12によって内部移動部材7と連結されているので、内部移動部材7も前進・後退や回動を行う。なお、上述した流路17は、先端側と基端側との圧力をほぼ同じにするため、内部空間4内における内部移動部材7の移動に要する力を軽減することができる。また、薬剤を吐出する場合、この流路17によって、内部移動部材7の移動に伴って先端側の内部空間4が負圧状態になるということが生じないため、体液がカテーテル1内に浸入するのを防止することができる。
【0029】
内部移動部材7の側面開放部15は、側面の一部のみにしか設けられておらず、また、外筒2の側面穴5も所定の位置と大きさを有するので、内部移動部材7の移動で、側面開放部15と側面穴5の重畳状態が変化する。ここで、薬剤は側面開放部15から側面穴5を通って生体組織に吐出されるので、側面開放部15と側面穴5の重畳領域が薬剤通路の断面となる。従って、重畳領域の大きさが変化することは、薬剤通路の断面積が変化することであるので、薬剤の吐出量が変化する。つまり、内部移動部材7を移動させて、側面開放部15と側面穴5の重畳状態を変化させると、これに応じて、薬剤の吐出量が変化する。
【0030】
側面開放部15と側面穴5との重畳状態の変化態様には、重畳領域の大きさを拡大させる場合や、重畳領域の大きさを小さくする場合や、重畳状態から非重畳状態に変化する場合(このとき薬剤の吐出は停止する)や、非重畳状態から重畳状態に変化する場合(このとき薬剤の吐出が開始される)などがある。
【0031】
この実施の形態1では、外筒2の側面先端部の様々な位置に複数の側面穴5があり、内部移動部材7の側面にも複数の側面開放部15がある。このため、内部移動部材7の移動により、複数の側面穴5と複数の側面開放部15との重畳状態を様々に変化させることができ、これによって薬剤の吐出状態を様々に変化させることができる。
【0032】
なお、外筒2と移動操作部材8との少なくとも一方には、内部移動部材7の移動量を示す指標が設けられている。たとえば、外筒2には、軸周りの回動方向の移動量を示す指標MCが設けられ、移動操作部材8には、軸方向の移動量を示す指標MAと軸周りの移動量を示す指標MBとが設けられている。操作者は、これらの指標MA,MB,MCを用いることによって、遠隔で、外筒2と移動操作部材8との相対移動、すなわち外筒2と内部移動部材7との相対移動関係を把握することができる。
【0033】
(実施の形態1の変形例1)
つぎに、実施の形態1の変形例1について説明する。この変形例1では、図2に示すように、内部移動部材7の側面開放部15を広くした側面開放部25を設けている。側面開放部25は、側面開放部15に比して、側面における内部チャネル4内面との接触領域を広くしているので、内部移動部材7の前進・後進の移動による薬剤の吐出状態を大きく変化させることができる。
【0034】
(実施の形態1の変形例2)
つぎに、実施の形態1の変形例2について説明する。この変形例2では、図3に示すように、内部移動部材7の側面開放部15を広くした2つの側面開放部35a,35bを設け、各側面開放部35a,35bは、軸方向に関して重複しない異なる位置に設けられ、かつ軸周りに対しても重複しない異なる位置に設けられている。このため、内部移動部材7の回動によって薬剤の吐出状態を大きく変化させることができる。
【0035】
(実施の形態1の変形例3)
つぎに、実施の形態1の変形例3について説明する。この変形例3では、図4に示すように、内部移動部材7に設けた溝構造の流路14、流路17に替えて、管路構造の流路44、流路40としている。この管路構造の流路44によっても、側面開放部15に対応する側面開放部45と、基端側の開放部16に対応する開放部46との間を連通させることができる。また、流路40によっても、基端側と先端側とを連通させることができる。
【0036】
(実施の形態1の変形例4)
つぎに、実施の形態1の変形例4について説明する。この変形例4では、図5に示すように、内部移動部材7に設けた直線上の流路14に替えて、側面にスパイラル状に形成された溝構造の流路50としている。このスパイラル状の流路50は、実施の形態1における複数の流路14と流路17との機能を1つの流路によって実現することができる。もちろん、流路50は、複数設けても良いし、先端側に連通しない流路14をさらに設けてもよい。さらに、管路50は、スパイラル状でなくてもよく、軸方向と軸周り方向との双方の位置が順次変化する流路であればよい。
【0037】
(実施の形態1の変形例5)
つぎに、実施の形態1の変形例5について説明する。この変形例5では、図6に示すように、内部移動部材7を筒状にし、この筒の内部空間を流路60としている。そして、この筒には、側面開放部65が設けられるとともに、基端側端面には、線材12を支持する支持部61と、この支持部61の他の端面領域に開放部16に対応する開放部66を形成している。一方、先端側端面は、開放状態となっており、流路17に対応する機能を実現する開放部62が形成される。この流路60は、複数の流路を共通流路にし、流路14、流路17の機能を実現している。
【0038】
(実施の形態1の変形例6)
つぎに、実施の形態1の変形例6について説明する。この変形例6では、図7に示すように、変形例5の側面開放部65に替えて、流路60基端側から先端側に向けて順次広がる側面開放部75を形成している。この場合、流路60の先端側の開放部72は、円弧状となる。
【0039】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、内部移動部材7と移動操作部材8との間を線材12で連結していたが、この実施の形態2では、図8に示すように、線材12に替えて、管材112を用いている。線材12を用いた場合は、内部空間4と線材12との間に流路を形成していたが、この実施の形態2では、管の外径がほぼ内部空間4の内径と同じで摺動可能に形成された管材112内の内部通路114を流路としている。このような管材112を用いることによって、内部移動部材7に対応する先端側の内部移動部材47と基端側の移動操作部材8との間の力の伝達がさらに確実になるとともに、移動操作部材8を常に内部空間4内に挿入する必要がないので、内部移動部材4の軸方向の移動範囲を大幅に広げることができる。なお、管材114の外径は、その途中で内部空間4の内径比して小さくしてもよい。
【0040】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、線材12,あるいは管材112が、内部移動部材7と移動操作部材8との間の共通の流路を形成するようにしていたが、この実施の形態3では、内部移動部材7の流路をそれぞれ独立して、移動操作部材8側に連結するようにしている。
【0041】
すなわち、図9に示すように、この実施の形態3では、内部移動部材7の基端側を移動操作部材8の基端側まで延長したスライド部材203を有する。このスライド部材203は、先端側が内部移動部材7に対応し、基端側が移動操作部材8に対応する。ただし、移動操作部材8に対応する部分では、各流路が基端側でそれぞれ独立した複数の開放部146a〜146c,140aを形成している。たとえば、図4の流路44に対応する流路144a〜144cは、それぞれ独立して図4の側面開放部45に対応する側面開放部145a〜145cから図4の開放部46に対応する開放部146a〜146cまで形成され、図4の流路40に対応する流路140は、先端側から基端側の開放部140aまで延びて形成されている。
【0042】
このような独立した流路をスライド部材203が形成することによって、各流路の機能をそれぞれ独立させることができ、たとえば、薬剤の吐出と体液の吸引とを独立して同時に行うことができる。
【0043】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。この実施の形態4では、外筒2の側面に薬剤注入部11に対応する薬剤注入部311を設けている。すなわち、実施の形態1では、線材12と外筒2の内部空間4との間に流路が形成されていたが、この流路に対して移動操作部材8を介さずに、外筒2の側面から直接連結するようにしている。
【0044】
この実施の形態4では、移動操作部材8による操作と薬剤注入部とが分離されるため、移動操作部材8に対する操作性を向上させることができるとともに、移動しない外筒2に薬剤注入部311が連結されるため、外部の薬剤注入管と薬剤注入部311の連結を安定させることができる。
【0045】
(薬剤投与分布を変更する一例)
ここで、具体的な薬剤投与分布を変更する一例について説明する。なお、ここでは、外筒2と図6に示した内部移動部材67とを例に説明する。図11(a)は、外筒2に設けられる側面穴5の軸方向位置を示し、図11(b)は、外筒2の周方向展開図であり、図11(c)〜図11(e)は、軸方向の位置を変化させた内部移動部材67の周方向展開図である。
【0046】
図11(a)に示す軸方向の外筒2の位置#1、#2、#3、#4、#5に、それぞれ同一径の側面穴5を、図11(b)に示すように、外筒の径方向に対して2個、2個、4個、2個、2個設ける。一方、内部移動部材67には、外筒の各側面穴5の配置位置と同じであるが、各位置#1〜#5の軸方向位置がずれた側面開放部65が形成されている。すなわち、内部移動部材67には、位置#3を起点として、位置#2,#4の各2つの側面穴5と同じ周方向角度と同一内径とを有し、それぞれ先端側に距離d1シフトした各2つの側面開放部65が形成される。さらに、内部移動部材67には、軸方向の位置#3を起点として、位置#1,#5の各2つの側面穴5と同じ周方向角度と同一内径とを有し、先端側に距離d2シフトした各2つの側面開放部65が形成される。
【0047】
ここで、図11(c)に示すように、外筒2の位置#3の4つの側面穴5と、内部移動部材67の位置#3に対応する4つの側面開放部65とが一致している場合、他の側面穴5と側面開放部65との位置は一致していないので、外筒2の位置#3の4つの側面穴5からのみ薬剤が投与される。
【0048】
つぎに、内部移動部材67を、図11(d)に示すように、基端側に距離d1シフトさせると、外筒2の位置#2,#4の側面穴5のみから薬剤の投与が可能になる。さらに、内部移動部材67を、図11(e)に示すように、基端側に距離d2シフトさせると、外筒2の位置#1,#5の側面穴5のみから薬剤の投与が可能になる。
【0049】
すなわち、図11に示した一例では、内部移動部材67を外筒2の軸方向に3段階にシフトさせることによって、外筒2の側面穴5を介した薬剤投与の分布が位置#3を中心に軸方向の両方向にシフトする。しかも、この場合の薬剤投与量は、吐出圧が同一である場合、薬剤投与が可能な側面穴5の数は常に4つとなるので、シフトに関わらず、一定となる。
【0050】
なお、上述した実施の形態1〜4において、外筒2に対する内部移動部材67の移動をロックできるように、フランジ部材6と操作ノブ10との間にロック機構を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 カテーテル
2 外筒
3,203 スライド部材
4 内部チャネル
5 側面穴
6 フランジ部
7,67 内部移動部材
8 移動操作部材
9 栓部
10 操作ノブ
11,311 薬剤注入部
12 線材
13 薬剤通路
14,17,40,44,50,60,140,144a〜144c 流路
15,25,35a,35b,45,65,75,145a〜145c 側面開放部
16,46,62,66,72,140a,146a〜146c 開放部
61 支持部
12 管材
114 内部通路
MA,MB,MC 指標
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャネルと、該内部チャネルと外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴と、を有する細長い管状の外筒と、
前記内部チャネル内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けられた少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路が形成された内部移動部材と、
前記内部チャネル内における前記内部移動部材の移動操作を行う移動操作部材と、
を備え、
前記内部チャネル内での前記内部移動部材の移動によって、前記側面穴と前記少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記内部移動部材は、先端側と基端側とを連通させる連通流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、線材で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、管材で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の側面に設けられた溝であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の内部に設けられた管路であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記内部移動部材は、筒状をなし、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、該内部移動部材内の前記筒状の内部空間を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、複数の独立した流路であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記内部移動部材は、前記移動操作部材の操作によって、前記外筒の軸線方向の移動および/または前記外筒の軸線まわりの回動が可能であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記外筒および/または前記移動操作部材は、前記内部移動部材の移動量および/または回動量を示す指標が設けたれていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項1】
内部チャネルと、該内部チャネルと外部との間を貫通する少なくとも1つの側面穴と、を有する細長い管状の外筒と、
前記内部チャネル内面に側面が密着した状態で移動可能に配置され、前記側面の一部に設けられた少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路が形成された内部移動部材と、
前記内部チャネル内における前記内部移動部材の移動操作を行う移動操作部材と、
を備え、
前記内部チャネル内での前記内部移動部材の移動によって、前記側面穴と前記少なくとも1つの側面開放部との重畳状態を変化させることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記内部移動部材は、先端側と基端側とを連通させる連通流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、線材で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記移動操作部材と前記内部移動部材との間は、管材で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の側面に設けられた溝であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、前記内部移動部材の内部に設けられた管路であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記内部移動部材は、筒状をなし、前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、該内部移動部材内の前記筒状の内部空間を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記少なくとも1つの側面開放部と基端側とを連通する流路は、複数の独立した流路であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記内部移動部材は、前記移動操作部材の操作によって、前記外筒の軸線方向の移動および/または前記外筒の軸線まわりの回動が可能であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記外筒および/または前記移動操作部材は、前記内部移動部材の移動量および/または回動量を示す指標が設けたれていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−252922(P2010−252922A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104482(P2009−104482)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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