説明

カバー付きコネクタ

【課題】相手のコネクタハウジングに対する離脱操作が、コネクタカバーにより位置規制されている電線によって妨げられることがなく、相手のコネクタハウジングに対する離脱が容易に行えるカバー付きコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタハウジング20の後端20aに結合されてコネクタハウジング20の後端20aから導出する電線30の導出方向を規制するコネクタカバー40における電線案内壁部42には、当該電線案内壁部42に対してコネクタハウジング20上のロックアーム22から離反する方向に規定以上の曲げ荷重が作用したときに、電線案内壁部42の形状を通常の電線支持形状に対してロックアーム22から離反する方向に所定距離だけ撓み変形した電線退避形状に変形させる形状変形手段421を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手コネクタに嵌合接続されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジングの後端に嵌合装着されて前記コネクタハウジングの後端から導出する電線の導出方向を規制するコネクタカバーと、を備えるカバー付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図11及び図12は、下記特許文献1に開示されたカバー付きコネクタを示している。
このカバー付きコネクタ100は、相手コネクタに嵌合接続されるコネクタハウジング110と、該コネクタハウジング110の後端に嵌合装着されてコネクタハウジング110の後端から導出する電線の導出方向を規制するコネクタカバー120と、を備えている。
【0003】
コネクタハウジング110は、複数の端子挿入孔を有するハウジング本体111と、該ハウジング本体111の一側面である上壁面111aに突設されたロックアーム112と、該ロックアーム112の端部に形成されたロック解除用押下部113と、ハウジング本体111の後端111b側の両側壁に備えられたカバー結合手段114と、を備える。
【0004】
コネクタハウジング110は、収容する端子金具に接続された電線が、ハウジング本体111の後端111bから矢印X1で示す方向に導出する。
【0005】
ロックアーム112は、ハウジング本体111の前端側から立ち上がって後方側に延びたアーム本体112aの中間部に相手コネクタとの係合部(不図示)を形成したもので、ハウジング本体111を相手コネクタに嵌合接続させた際に相手コネクタの係合手段が前記係合部に係合することで、ハウジング本体111を相手コネクタに結合させる。
【0006】
ロック解除用押下部113は、ロックアーム112と相手コネクタの係合手段との係合を解除するときに押下操作される。該ロック解除用押下部113を押下操作することで、ロックアーム112がロック解除方向(上壁面111a側)に撓んで、ロックアーム112と相手コネクタの係合手段との係合が解除される。
【0007】
カバー結合手段114は、カバー案内リブ116と、カバー係止部117と、から構成されている。
【0008】
カバー案内リブ116は、ハウジング本体111の後端111bに対するコネクタカバー120の嵌合装着方向(図11の矢印X1方向とは、逆方向)に沿って延在するリブ状に、後端111b側の両外側面111cに形成されている。このカバー案内リブ116は、コネクタカバー120を後端111bに嵌合装着する際に、コネクタカバー120を嵌合方向に誘導する。
【0009】
カバー係止部117は、後端111bに対するコネクタカバー120の嵌合装着が完了したときにコネクタカバー120と係合して、コネクタカバー120を固定する。
【0010】
コネクタカバー120は、コネクタハウジング110の後端に嵌合装着されるハウジング固定部121と、該ハウジング固定部121の後端に一体形成された電線案内壁部122と、を備える
【0011】
ハウジング固定部121は、ハウジング本体111の後端111bから導出する電線を収容する筒状又は樋状をなしている。このハウジング固定部121は、コネクタハウジング110の後端111bの両側面に被さる両側壁部121aに、リブ係合溝124と、ハウジング係合部125と、を備えている。
【0012】
リブ係合溝124は、カバー案内リブ116が挿入されることで、コネクタハウジング110に対するコネクタカバー120の嵌合装着時におけるコネクタカバー120の移動方向を規制する。
【0013】
ハウジング係合部125は、コネクタカバー120がコネクタハウジング110に対して正規の嵌合完了位置に到達したときに、カバー係止部117と係合することでコネクタカバー120をハウジング本体111の後端111bに固定する突起である。
【0014】
ハウジング固定部121には、図11に示すように、端子押し込み突片126が、装備されている。
【0015】
端子押し込み突片126は、コネクタカバー120のハウジング本体111への嵌合に伴ってハウジング本体111の端子挿入孔に挿入されて、前記端子挿入孔内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む。
【0016】
電線案内壁部122は、当該ハウジング固定部121の後端からハウジング本体111における電線の導出方向と直交する方向(図11では、矢印Y1方向)に延出して設けられている。この電線案内壁部122は、ハウジング本体111から導出する電線をハウジング本体111からの導出方向と直交する方向に方向変換して導出させる。
【0017】
特許文献1における電線案内壁部122は、電線の導出方向(矢印Y1方向)と直交する方向には変形し難い剛構造に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000−348810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、コネクタハウジング110が接続する相手コネクタ側の環境によっては、コネクタハウジング110から導出する電線を、図11とは逆に、コネクタハウジング110の後端から垂直上方(図11では、矢印Y2方向)に導出させることが要求される場合がある。
【0020】
従来では、そのような場合には、ハウジング固定部121の後端から延出する電線案内壁部122が図11に示した例とは逆に上方に延出するように改造したコネクタカバーを用意して、対応する。
【0021】
ところが、コネクタハウジング110から導出する電線を図11とは逆にコネクタハウジング110の後端から垂直上方に導出させた場合、導出する電線は、ロックアーム112の後方を横断することになり、特許文献1におけるコネクタカバーでは、電線の導出方向を規制している電線案内壁部122が剛構造のため、ロック解除用押下部113を操作する際に、ロック解除用押下部113の後方を横断している電線が操作の邪魔になり、相手のコネクタハウジングに対するカバー付きコネクタ100の離脱操作が困難になるという問題が生じた。
【0022】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、相手のコネクタハウジングに対する離脱操作が、コネクタカバーにより位置規制されている電線によって妨げられることがなく、相手のコネクタハウジングに対する離脱が容易に行えるカバー付きコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)相手コネクタに嵌合接続されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジングの後端に結合されて前記コネクタハウジングの後端から導出する電線の導出方向を規制するコネクタカバーと、を備え、
前記コネクタハウジングは、複数の端子挿入孔を有するハウジング本体と、該ハウジング本体の一側面に突設されて相手コネクタの係合手段と係合することで前記ハウジング本体を相手コネクタに結合させるロックアームと、該ロックアームの端部に形成されて該ロックアームと相手コネクタの係合手段との係合を解除するときに操作されるロック解除用押下部と、を備え、
前記コネクタカバーは、前記コネクタハウジングの後端に結合されるハウジング固定部と、当該ハウジング固定部の後端から前記ハウジング本体における電線の導出方向と直交する方向に延出して設けられて、前記ハウジング本体から導出する電線を前記ハウジング本体からの導出方向と直交する方向に方向変換して導出させる電線案内壁部と、を備えるカバー付きコネクタであって、
前記コネクタカバーにおける電線案内壁部には、当該電線案内壁部に対して前記ロックアームから離反する方向に規定以上の曲げ荷重が作用したときに、前記電線案内壁部の形状を通常の電線支持形状に対して前記ロックアームから離反する方向に所定距離だけ撓み変形した電線退避形状に変形させる形状変形手段を備えたことを特徴とするカバー付きコネクタ。
【0024】
(2)前記形状変形手段は、前記電線案内壁部を横断する断面V字状の切り欠き溝で、前記電線案内壁部が所定の電線退避形状まで撓み変形したときに、前記切り欠き溝の側面同士が当接してそれ以上の撓み変形が規制されるように、前記切り欠き溝の各側面の傾斜角度を設定したことを特徴とする上記(1)に記載のカバー付きコネクタ。
【0025】
上記(1)の構成によれば、ハウジング本体から導出する電線をハウジング本体からの導出方向と直交する方向に方向変換して導出させるコネクタカバーの電線案内壁部には、形状変形手段が備えられている。そのため、電線案内壁部に対してコネクタハウジングのロックアームから離反する方向に規定以上の曲げ荷重を作用させることによって、電線案内壁部の形状を通常の電線支持形状に対してロックアームから離反する方向に所定距離だけ撓み変形した電線退避形状に変形させることができる。
【0026】
従って、コネクタハウジングのロックアームの後方側を電線が横断するようにコネクタカバーが電線の導出方向を規制している場合でも、コネクタカバーの電線案内壁部を電線退避形状に変形させることで、電線案内壁部により位置規制されている電線をロックアームから離反させて、電線とロックアームとの間にロック解除用押下部の操作に必要充分な作業用スペースを確保して、相手のコネクタハウジングに対する離脱操作を容易にすることができる。
【0027】
即ち、上記(1)の構成によれば、相手のコネクタハウジングに対する離脱操作が、コネクタカバーにより位置規制されている電線によって妨げられることがなく、相手のコネクタハウジングに対する離脱が容易に行える。
【0028】
また、電線案内壁部に装備した形状変形手段は、落下等で衝撃が作用したときに、変形により衝撃を緩和する緩衝手段として機能するため、落下によるコネクタカバーの破損を抑止することも可能になる。
【0029】
上記(2)の構成によれば、形状変形手段が断面V字状の切り欠き溝となっていて、更に、電線案内壁部が所定の電線退避形状まで撓み変形したときには、切り欠き溝の側面同士が当接してそれ以上の撓み変形が規制される。従って、電線案内壁部の変形により電線が過度に屈曲されることを防止して、過度の屈曲による電線の損傷を防止することもができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によるカバー付きコネクタによれば、ハウジング本体からの電線の導出方向を規制するコネクタカバーの電線案内壁部は、形状変形手段が備えられていて、コネクタハウジングのロックアームから離反する方向に規定以上の曲げ荷重を作用させることによって、電線案内壁部の形状を通常の電線支持形状に対してロックアームから離反する方向に所定距離だけ撓み変形した電線退避形状に変形させることができる。
【0031】
従って、コネクタハウジングのロックアームの後方側を電線が横断するようにコネクタカバーが電線の導出方向を規制している場合でも、コネクタカバーの電線案内壁部を電線退避形状に変形させることで、電線案内壁部により位置規制されている電線をロックアームから離反させて、電線とロックアームとの間の作業用スペースを拡張して、相手のコネクタハウジングに対する離脱操作を容易にすることができる。
【0032】
即ち、本発明によるカバー付きコネクタによれば、相手のコネクタハウジングに対する離脱操作が、コネクタカバーにより位置規制されている電線によって妨げられることがなく、相手のコネクタハウジングに対する離脱が容易に行える。
【0033】
また、電線案内壁部に装備した形状変形手段は、落下等で衝撃が作用したときに、変形により衝撃を緩和する緩衝手段として機能するため、落下によるコネクタカバーの破損を抑止することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るカバー付きコネクタの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1のコネクタカバーの側面図である。
【図3】図2に示したコネクタカバーの形状変形手段の動作説明図である。
【図4】図1のカバー付きコネクタの組立完了状態の斜視図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】図6のC部の拡大図である。
【図8】一実施形態の組立完了状態のカバー付きコネクタにおいて、コネクタハウジングから導出する電線と通常の電線支持形状にある電線案内壁部との位置関係を示す縦断面図である。
【図9】図8のカバー付きコネクタにおいて、通常の電線支持形状の電線案内壁部に電線が固定された状態を示す側面図である。
【図10】一実施形態の組立完了状態のカバー付きコネクタにおいて、電線案内壁部を電線退避形状に変形させた状態の側面図である。
【図11】従来のコネクタカバー120を備えたカバー付きコネクタの組立前の状態の側面図である。
【図12】図11に示したカバー付きコネクタの組立後の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るカバー付きコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1〜図10は本発明に係るカバー付きコネクタの一実施形態を示したもので、図1は一実施形態のカバー付きコネクタの分解斜視図、図2は図1のコネクタカバーの側面図、図3は図2に示したコネクタカバーの形状変形手段の動作説明図、図4は図1のカバー付きコネクタの組立状態の斜視図、図5は図4のA矢視図、図6は図5のB−B断面図で、図7は図6のC部の拡大図、図8は一実施形態のカバー付きコネクタにおいてコネクタハウジングから導出する電線と通常の電線支持形状にある電線案内壁部との位置関係を示す縦断面図、図9は一実施形態のカバー付きコネクタにおいて、通常の電線支持形状の電線案内壁部に電線が固定された状態を示す側面図、図10は一実施形態のカバー付きコネクタにおいて、電線が固定された電線案内壁部が電線退避形状に変形した状態の側面図である。
【0037】
この一実施形態のカバー付きコネクタ1は、相手コネクタに嵌合接続されるコネクタハウジング20と、該コネクタハウジング20の後端に結合されてコネクタハウジング20の後端20aから導出する電線30(図8参照)の導出方向を規制するコネクタカバー40と、を備える。
【0038】
コネクタハウジング20は、複数の端子挿入孔211を有するハウジング本体21と、該ハウジング本体21の一側面であるハウジング上面21aに突設されたロックアーム22と、該ロックアーム22の端部に形成されたロック解除用押下部23と、を備える。前述のコネクタハウジング20の後端20aは、ハウジング本体21の後端でもある。
【0039】
ハウジング本体21における複数の端子挿入孔211は、後端20aから前端に向かって、貫通形成されている。端子挿入孔211には、図8に示すように、電線30の端部に圧着接続された端子金具31が、挿入装着される。端子挿入孔211内には、図8に示すように、ランス25が設けられている。ランス25は、規定の嵌合完了位置まで挿入された端子金具31を係止して、端子金具31を抜け止めする。
【0040】
ハウジング本体21の後端20a寄りの両外側面には、図1に示すように、カバー案内リブ26と、カバー係止部27と、が備えられている。
【0041】
カバー案内リブ26は、後端20aに対するコネクタカバー40の嵌合装着方向(図1の矢印X2方向)に沿って延在するリブ状に、後端20aの側面に形成されている。このカバー案内リブ26は、コネクタカバー40をハウジング本体21の後端20aに嵌合装着する際に、コネクタカバー40を嵌合方向に誘導する。
【0042】
カバー係止部27は、後端20aに対するコネクタカバー40の嵌合装着が完了したときにコネクタカバー40と係合して、コネクタカバー40を固定する。
【0043】
ロックアーム22は、後述の図8にも示すように、ハウジング本体21におけるハウジング上面21aの前端寄りの位置から立ち上がってハウジング本体21の後端20a側に延出した片持ち梁状の可撓アーム22aの中間部に、係合用の凹み22bを設けた構成である。
【0044】
このロックアーム22は、ハウジング本体21を相手コネクタに嵌合装着した際に、凹み22bに相手コネクタの係合手段が係合することで、ハウジング本体21を相手コネクタに結合させる。
【0045】
ロック解除用押下部23は、ハウジング本体21の後端20a寄りに位置するロックアーム22の端部に形成された押下部である。このロック解除用押下部23は、ロックアーム22と相手コネクタの係合手段との係合を解除するときに、図1の矢印Y2方向に、押下操作される。ロック解除用押下部23を図1の矢印Y2方向に押下すると、ロックアーム22が下方(ハウジング上面21a側)に撓んで、相手コネクタの係合手段とロックアーム22の凹み22bとの係合を解除することができる。
【0046】
コネクタカバー40は、図2〜図4に示すように、ハウジング固定部41と、このハウジング固定部41の後端に一体形成された電線案内壁部42と、を備えている。
【0047】
ハウジング固定部41は、コネクタハウジング20の後端20aに嵌合装着することにより、後端20aに結合される部位である。このハウジング固定部41は、ハウジング本体21の後端20aの両側面及び下面の3壁面の上に嵌合する略コ字状断面の構造をなしている。本実施形態のハウジング固定部41は、図1及び図2に示すように、その前端側に、端子押し込み突片411と、リブ係合溝412と、ハウジング係合部413と、を備えている。
【0048】
端子押し込み突片411は、ハウジング固定部41のコネクタハウジング20への嵌合に伴って、ハウジング本体21の端子挿入孔211に挿入されて、端子挿入孔211内の中途挿入状態の端子金具31を正規の挿入完了位置に押し込む。
【0049】
上記のリブ係合溝412とハウジング係合部413は、コネクタハウジング20の後端20aの両側面に被さるハウジング固定部41の両側壁部415に、形成されている。
【0050】
リブ係合溝412は、図4に示すように、カバー案内リブ26が挿入されることで、コネクタハウジング20に対するハウジング固定部41の嵌合装着時におけるハウジング固定部41の移動方向を嵌合方向に規制する。
【0051】
ハウジング係合部413は、図6及び図7に示すように、ハウジング固定部41がコネクタハウジング20に対して正規の嵌合完了位置に到達したときに、カバー係止部27と係合することで、ハウジング固定部41をコネクタハウジング20の後端20aに固定する突起である。
【0052】
電線案内壁部42は、図2に示すように、前述のハウジング固定部41の後端からハウジング本体21における電線30の導出方向(図2における矢印X3方向)と直交する方向(図2における矢印Y3方向)に延出して設けられて、前記ハウジング本体21から導出する電線30をハウジング本体21からの導出方向と直交する垂直上方向に方向変換して導出させる。
【0053】
本実施形態における電線案内壁部42は、当該電線案内壁部42の先端側に対してロックアーム22から離反する方向に図2に矢印Fで示すように規定以上の曲げ荷重Fが作用したときに、電線案内壁部42の形状を図2に示した通常の電線支持形状K1に対して図3に示した電線退避形状K2に変形させる形状変形手段421を備えている。
【0054】
前述の電線退避形状K2は、図3に示すように、電線案内壁部42の先端側がロックアーム22から離反する方向に所定距離Lだけ撓み変形した形状である。
【0055】
本実施形態における形状変形手段421は、電線案内壁部42を横断する断面V字状の切り欠き溝である。更に、この形状変形手段421は、図3に示すように電線案内壁部42が所定の電線退避形状K2まで撓み変形したときに、切り欠き溝の一対の側面421a,421b同士が当接してそれ以上の撓み変形が規制されるように、切り欠き溝の各側面421a,421bの傾斜角度を設定している。
【0056】
本実施形態のカバー付きコネクタ1は、例えば、図8に示すようにハウジング本体21の後端にコネクタカバー40を結合させた組立状態で、相手コネクタに嵌合接続される。相手コネクタに嵌合接続されたカバー付きコネクタ1において、電線案内壁部42から導出される電線30は、図9に示すように、結束用のテープ50等で電線案内壁部42に締結されて、電線案内壁部42に固定される。この時、電線案内壁部42は、電線30の導出方向を垂直上方に規制する通常の電線支持形状K1になっている。
【0057】
相手コネクタからカバー付きコネクタ1を離脱させる際には、図2に示したように電線案内壁部42の先端側にロックアーム22から遠のく方向の曲げ荷重Fを作用させて、図10に示すように、電線案内壁部42が後傾状態となる電線退避形状K2に変形させる。
【0058】
図10に示すように、電線案内壁部42を電線退避形状K2に変形させることで、電線30とロック解除用押下部23との間には、ロック解除用押下部23の操作に必要充分な大きさの作業用スペースPが確保される。
【0059】
以上に説明した一実施形態のカバー付きコネクタ1の構成によれば、ハウジング本体21から導出する電線30をハウジング本体21からの導出方向と直交する方向に方向変換して導出させるコネクタカバー40の電線案内壁部42には、形状変形手段421が備えられている。そのため、電線案内壁部42に対してコネクタハウジング20のロックアーム22から離反する方向に規定以上の曲げ荷重Fを作用させることによって、電線案内壁部42の形状を通常の電線支持形状K1に対してロックアーム22から離反する方向に所定距離Lだけ撓み変形した電線退避形状K2に変形させることができる。
【0060】
従って、図9に示したようにコネクタハウジング20のロックアーム22の後方側を電線30が横断するようにコネクタカバー40が電線30の導出方向を規制している場合でも、図10に示したようにコネクタカバー40の電線案内壁部42を電線退避形状K2に変形させることで、電線案内壁部42により位置規制されている電線30をロックアーム22から離反させて、電線30とロックアーム22との間にロック解除用押下部23の操作に必要充分な作業用スペースPを確保して、相手のコネクタハウジング20に対する離脱操作を容易にすることができる。
【0061】
即ち、以上に説明した一実施形態のカバー付きコネクタ1の構成によれば、相手のコネクタハウジング20に対する離脱操作が、コネクタカバー40により位置規制されている電線30によって妨げられることがなく、相手のコネクタハウジング20に対する離脱が容易に行える。
【0062】
また、電線案内壁部42に装備した形状変形手段421は、落下等で衝撃が作用したときに、変形により衝撃を緩和する緩衝手段として機能するため、落下によるコネクタカバー40の破損を抑止することも可能になる。
【0063】
更に、以上に説明した一実施形態のカバー付きコネクタ1の構成によれば、形状変形手段421が図2に示したように断面V字状の切り欠き溝となっていて、更に、電線案内壁部42が所定の電線退避形状K2まで撓み変形したときには、図3に示すように切り欠き溝の側面421a,421b同士が当接してそれ以上の撓み変形が規制される。従って、電線案内壁部42の変形により電線30が過度に屈曲されることを防止して、過度の屈曲による電線30の損傷を防止することもできる。
【0064】
なお、本発明のカバー付きコネクタは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0065】
例えば、コネクタカバーの電線案内壁部を、通常の電線支持形状K1から電線退避形状K2に変形させる形状変形手段421の具体的な構造は、上記実施形態に示した断面V字状の切り欠き溝に限らない。電線案内壁部が電線退避形状K2に変形したときに、電線案内壁部のそれ以上の撓みを規制することが可能な適宜形状に設計変更可能である。
【0066】
また、形状変形手段421は、撓みを規制する機能を備えない単なる薄肉部分で構成するだけでもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 カバー付きコネクタ
20 コネクタハウジング
20a 後端
21 ハウジング本体
22 ロックアーム
23 ロック解除用押下部
30 電線
31 端子金具
40 コネクタカバー
41 ハウジング固定部
42 電線案内壁部
421 形状変形手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタに嵌合接続されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジングの後端に結合されて前記コネクタハウジングの後端から導出する電線の導出方向を規制するコネクタカバーと、を備え、
前記コネクタハウジングは、複数の端子挿入孔を有するハウジング本体と、該ハウジング本体の一側面に突設されて相手コネクタの係合手段と係合することで前記ハウジング本体を相手コネクタに結合させるロックアームと、該ロックアームの端部に形成されて該ロックアームと相手コネクタの係合手段との係合を解除するときに操作されるロック解除用押下部と、を備え、
前記コネクタカバーは、前記コネクタハウジングの後端に結合されるハウジング固定部と、当該ハウジング固定部の後端から前記ハウジング本体における電線の導出方向と直交する方向に延出して設けられて、前記ハウジング本体から導出する電線を前記ハウジング本体からの導出方向と直交する方向に方向変換して導出させる電線案内壁部と、を備えるカバー付きコネクタであって、
前記コネクタカバーにおける電線案内壁部には、当該電線案内壁部に対して前記ロックアームから離反する方向に規定以上の曲げ荷重が作用したときに、前記電線案内壁部の形状を通常の電線支持形状に対して前記ロックアームから離反する方向に所定距離だけ撓み変形した電線退避形状に変形させる形状変形手段を備えたことを特徴とするカバー付きコネクタ。
【請求項2】
前記形状変形手段は、前記電線案内壁部を横断する断面V字状の切り欠き溝で、前記電線案内壁部が所定の電線退避形状まで撓み変形したときに、前記切り欠き溝の側面同士が当接してそれ以上の撓み変形が規制されるように、前記切り欠き溝の各側面の傾斜角度を設定したことを特徴とする請求項1に記載のカバー付きコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−110023(P2013−110023A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255339(P2011−255339)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】