説明

カフ付医療具用インジケータ

【課題】カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断できるようにした、カフ付医療具用インジケータを提供する。
【解決手段】カフ付医療具に取り付けられて、カフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータ1である。逆止弁4と、カフ付医療具に接続してカフ内に連通する接続部2と、逆止弁4と接続部2との間に設けられた筒体3とを備えてなる。筒体3には逆止弁4を通って注入された流体を接続部2側に案内する案内路8と、接続部2を介してカフ内に連通する指標室6とが形成されている。指標室6内にはカフの内圧に応じて弾性変形し、その弾性変形の度合いによってカフの内圧を示す指標体7が設けられている。指標室6には筒体3の外部に連通し、これによって指標体7の弾性変形を可能にする連通路9が設けられている。筒体3には指標体7の弾性変形の度合いを視認可能にする窓部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフ付医療具に取り付けられて、この医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、カフ付(バルーン付)医療具を用いて体内経路を閉塞する方法が、よく知られている。例えば、人工呼吸を行なう際に用いられる「気管内チューブ」は、一端が患者の口(経口)若しくは鼻(経鼻)から挿入され、多端が人工呼吸器へ接続される。この状態で「気管内チューブ」のカフを気管にて膨張させると、患者は気管以下(肺)が閉塞され、「気管内チューブ」内部を通じて連通状態である人工呼吸器により強制呼吸させられる。
【0003】
また、他の例として、「肺動脈用バルーンカテーテル」がある。これは頚動脈などの適切な血管を経由してカテーテルを血管に挿入し、その血流に乗せて肺動脈に到達させる。そこで、バルーンを膨張させカテーテル先端に設置されるセンサーにより肺に血液が入り込む、いわゆる「楔入圧」を測定するものである。
【0004】
しかし、このようなカフ(バルーン)付医療具は、どれもカフの膨張によって体内経路を閉塞するので、そのカフの過膨張によって、例えば「気管内チューブ」においては気管粘膜の圧迫による粘膜の損傷、「肺動脈用バルーンカテーテル」においては血管損傷といった問題が生じていた。
【0005】
このような問題に対し、従来では、カフにより体内経路を閉鎖する際に生じる過膨張を防止し、その作業性を簡易化するとともに、様々なカフ(バルーン)付医療器具に使用することのできるカフ(バルーン)の膨張補助用具が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、カフ(バルーン)付医療具にあっては、過膨張によって前記したような問題が生じるが、一方で、カフの内圧が低下し、予め設定された膨張度が維持できなくなると、気管が塞がれて人工呼吸器による強制呼吸が不十分になったり、カテーテルを血流に乗せて肺動脈に到達させる際の浮きとしての機能が低下するといった問題もある。カフはゴム等によって形成されることから、流体としての空気が分子レベルでわずかずつながら漏れていき、内圧が低下して膨張度が低くなってしまうからである。
【0007】
従来、このような内圧低下に関しては、例えばカフ付医療具の、カフに空気を注入するために注射器を接続する分岐部にパイロットバルーンを設けておき、このパイロットバルーンの膨張度を、外観や触感で確認することにより、検知している。
【特許文献1】特開2003−116999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように外観や触感でパイロットバルーンの膨張度を確認し、カフの内圧低下を検知するのでは、膨張度の確認に手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりすることから、迅速にしかも正確にカフの内圧低下を判断するのは非常に困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断できるようにした、カフ付医療具用インジケータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明のカフ付医療具用インジケータは、カフ付医療具に取り付けられて、該医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータであって、
前記カフ内に流体を注入する注射器等の注入手段に接続可能な逆止弁と、
前記カフ付医療具に接続して前記カフ内に連通する接続部と、
前記逆止弁と前記接続部との間に設けられた筒体と、を備えてなり、
前記筒体には、前記注入手段により逆止弁を通って注入された流体を前記接続部側に案内する案内路と、前記接続部を介して前記カフ内に連通する指標室とが互いに独立して形成され、
前記指標室内には、前記カフの内圧に応じて弾性変形可能に構成され、その弾性変形の度合いによって前記カフの内圧を示す指標体が設けられ、
前記指標室には、前記指標体の前記接続部と反対の側にて該筒体の外部に連通し、これによって前記指標体の弾性変形を可能にする連通路が設けられ、
前記筒体には、少なくとも前記指標体の弾性変形の度合いを視認可能にする窓部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このカフ付医療具用インジケータによれば、逆止弁に注射器等の注入手段を接続し、空気等の流体を注入することにより、該流体が案内路、接続路を通ってカフ内に入る。したがって、該カフを所定の膨張度に膨張させることができる。そして、この状態で注入手段を逆止弁から外しても、逆止弁が作用することで、カフ内の空気(流体)は案内路を通って外に漏れることはない。
また、このようにカフを膨張させた状態で保持すると、このカフ内に連通する指標室内の指標体は、カフの内圧に対応して弾性変形する。したがって、筒体の窓部から前記指標体の弾性変形の度合いを視認することにより、カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断することが可能になる。
【0011】
また、前記カフ付医療具用インジケータにおいては、前記筒体が透明樹脂で形成され、該筒体には、前記指標体の弾性変形の度合いを示す目盛りが設けられているのが好ましい。
このようにすれば、筒体が透明でありしたがって全体が前記の窓部として機能することから、容易にかつ迅速に指標体を確認することができる。また、この筒体に目盛りが設けられているので、指標体の弾性変形の度合いをより容易に判断することができ、したがってカフの内圧低下をより正確に判断することができる。
【0012】
また、前記カフ付医療具用インジケータにおいては、前記指標体が、エラストマー又は軟質ゴムからなる可撓性の有蓋筒状体からなり、筒状体の開口部側が前記連通路に連通して前記指標室内に固定され、蓋部側が前記接続部側に配置されて弾性変形可能に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、指標体の蓋部側が弾性変形して開口部側に凹むことにより、カフの内圧を示すようになる。したがって、筒部の側面のどこから見ても弾性変形の度合い(凹み方)が分かるため、前記したように特に筒体を透明樹脂で形成した場合に、視認性に優れたものとなる。また、窓部を一部に形成した場合にも、指標体の取付位置が窓部の位置に規制されないため、組立性に優れたものとなる。
【0013】
なお、このカフ付医療具用インジケータにおいては、前記指標体が、その蓋部側の肉厚が筒状体の開口部側の肉厚より薄く形成されているのが好ましい。
このようにすれば、肉厚の薄い蓋部側はより弾性変形がし易くなってカフの内圧変化により容易に追従するようになり、また、肉厚の厚い開口部側は指標室内により安定した状態に固定されるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカフ付医療具用インジケータにあっては、カフを膨張させた状態で保持すると、このカフ内に連通する指標室内の指標体が、カフの内圧に対応して弾性変形するように構成されていることから、筒体の窓部から前記指標体の弾性変形の度合いを視認することにより、カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断することができる。したがって、従来のように内圧低下を検知するのに手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった不都合がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明のカフ付医療具用インジケータの説明に先立ち、このインジケータが取り付けられるカフ付医療具について説明する。図1(a)は本発明のインジケータ1を取り付けてなるカフ付医療具を示す図であり、図1(b)は従来のカフ付医療具を示す図である。
【0016】
図1(a)、(b)中において符号50はカフ付医療具としての一般的な気管内チューブであり、このカフ付医療具(気管内チューブ)50は、人口呼吸器と接続可能なコネクタ60と、カフを膨張させるための注入部70と、患者の気管に挿入されるチューブ80と、気管を閉塞するためのカフ(バルーン)90とから構成されている。
コネクタ60は、全体が円筒状のもので、人工呼吸器に接続するための第1接続筒61と、後述するチューブ本体81に気密に嵌合させられている第2接続筒62と、から構成されている。
【0017】
注入部70は、図1(b)に示すように従来のものでは、チューブ80に接続された接続チューブ71と、パイロットバルーン72と、逆止弁73とから構成されている。パイロットバルーン72は、両側に開口部を有する風船状のもので、前述したようにその膨張状態を外観や触感で確認することにより、これに連通するカフ90の内圧を確認するためのものである。逆止弁73は、前記パイロットバルーン72と反対の側からのみ空気(流体)の流入を可能にし、パイロットバルーン72側からは空気が抜け出ないように構成されたもので、注射器に接続されて空気を流入するための流入口となるものである。
このような構成の注入部70では、特にカフ90の内圧をパイロットバルーン72の外観やその触感で調べる(確認する)ため、前述したように外観からの膨張度の確認に手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった問題があった。
【0018】
そこで、本発明では、図1(a)に示したように、接続チューブ71にインジケータ1を接続している。このインジケータ1は、接続チューブ71に接続するカフ側接続部2と、円筒状のインジケータ本体3と、逆止弁(図示せず)を有してなる注射器側接続部5とを備えて構成されたものである。このような構成からなるインジケータ1は、そのインジケータ本体3内の指標体(図示せず)を視認することにより、カフ90の内圧を容易に確認できるようになっている。なお、このインジケータ1の詳細については後述する。
【0019】
チューブ80は、チューブ本体81と、チューブ本体81内をその全長に亘って貫通する第1孔82と、チューブ本体81内の一部を貫通する第2孔83と、チューブ本体81の先端側(患者側)で第2孔83と外部とを連通させる第1開口84と、チューブ本体81の他端側で第2孔83と外部とを連通させる第2開口85とから構成されている。なお、この第2開口85には、前記接続チューブ71がチューブ本体81に対して気密に接着固定されている。
【0020】
カフ90は、前記第一開口84を覆って設けられた風船状のもので、その両端部がチューブ本体81の外面に気密に接着され固定されたことにより、その内部が前記第一開口84を介してのみ外部に通じたものとなっている。すなわち、カフ90は、第1開口84を介して第2孔83、接続チューブ71に連通したものとなっているのである。
【0021】
次に、前記インジケータ1の詳細について説明する。このインジケータ1は、本発明のカフ付医療具用インジケータの一実施形態となるもので、図2に示すように、前記接続チューブ71に接続するカフ側接続部2と、円筒状のインジケータ本体3と、逆止弁4を有してなる注射器側接続部5とを備えて構成されたものである。
【0022】
カフ側接続部2は、図2、図3に示すように接続チューブ71を内挿し(あるいは外挿し)てこれに接続する円筒部2aと、インジケータ本体3に接続するための大径円筒状の接続筒2bとからなる樹脂製のものである。
インジケータ本体3は、ポリプロピレン(PP)等の透明樹脂からなり、したがってその内部が視認可能に形成されて、全体が本発明における窓部として機能するもので、図2、図4(a)、(b)に示すように、前記カフ側接続部2の接続筒2bに内挿して接続する第1接続端3aと、厚肉に形成された筒本体3bと、この筒本体3bより薄肉に形成されて、前記注射器側接続部5に接続する第2接続端3cとを備えて構成されたものである。
【0023】
インジケータ本体3の筒本体3bには、その内部孔内の、前記第2接続端3cとの境界部に隔壁3dが形成されており、これによって筒本体3bの内部孔内と第2接続端3cの内部孔との間が遮断されている。そして、このように第2接続端3cの内部孔側と遮断された筒本体3bの内部孔内は、本発明における指標室6となっている。この指標室6内には、図2、図3に示すように、シリコーン樹脂等のエラストマー又は軟質ゴムからなる指標体7が収容されている。
【0024】
この指標体7は、円筒状の筒状体7aと、その一方の開口を閉塞する半球面状の蓋部7bとからなるゴムサック状の有蓋筒状体であって、蓋部7b側が前記注射器側接続部5側に配置され、筒状体7aの開口部側が前記隔壁3d側に向けられて配設されたものである。また、この指標体7は、蓋部7b側の肉厚が筒状体7aの開口部側の肉厚より薄く形成され、筒状体7aの開口部側に行くにしたがって徐々に肉厚が厚くなるように形成されたもので、これによって肉厚が薄い蓋部7b側が特に弾性変形可能で可撓性のものとなっている。
【0025】
ここで、前記筒本体3bの内部孔内、すなわち指標室6内には、その隔壁3d側に段状の係止部3eが形成されており、前記指標体7は、その筒状体7aの開口部側が係止部3eに係止したことにより、ここに気密に保持固体されている。すなわち、筒状体7aの開口部側は、必要に応じて接着剤で接着されることなどにより、筒本体3bの内部孔(指標室6)内に気密に保持され、また係止部3eに気密に係止したものとなっている。
【0026】
筒本体3bの側壁には、図2、図4(a)に示すように筒本体3bの軸方向に沿って貫通する案内路8が形成されている。この案内路8は、図4(b)に示すように筒本体3bの円周方向において3つが等間隔で平行に形成されたもので、図2に示すように隔壁3dで遮断された第2接続端3c側と、前記第1接続端3a側とを連通させるものである。
【0027】
また、筒本体3bの側壁には、図2、図4(a)に示すように前記指標室6内の、前記隔壁3dと前記係止部3eとの間から筒本体3bの外面にまで貫通することにより、指標体7の内部と筒本体3bの外部とを連通する連通路9が形成されている。このような構成によって指標体7は、その蓋部7b側が後述するカフ90の内圧によって押圧された際、弾性変形して例えば図2中二点鎖線で示すように隔壁3d側に凹むようになっている。すなわち、指標体7の内部が閉空間となっていることなく、連通路9によって外部に連通していることから、蓋部7b側はこのように弾性変形して隔壁3d側に凹むことができるようになっている。
【0028】
また、筒本体3bには、図2、図4(a)に示すようにその外面または内面に、前記指標体7の弾性変形の度合いを示す目盛り10が設けられている。この目盛り10は、本例では、カフ90の内圧が設定圧となる場合、つまり最適値となっている場合を示す線と、過膨張となることなく許容される範囲での最大値となる線、及び膨張度が低下し過ぎることのない許容される範囲での最小値となる線の、3本の線からなっている。このような構成により、図2中二点鎖線で示すように指標体7の蓋部7の先端位置、すなわち弾性変形によって凹んだ状態にある蓋部7側の最先端位置と、前記の各線との位置とを目で合わせることにより、カフ90の内圧(膨張度)がどうなっているかを視認することができる。つまり、指標体7の弾性変形の度合いを目盛り10で確認することにより、カフ90の内圧(膨張度)を確認することができるようになっているのである。
【0029】
なお、目盛り10は筒本体3bの全周に亘って形成されており、これにより、透明な筒本体3bに対してどの角度から見ても、指標体7の先端位置と目盛り10との位置関係が視認できるようになっている。
【0030】
注射器側接続部5は、図2、図3に示すように全体が略円筒状のもので、前記インジケータ本体3の第2接続端3cに内挿してここに接続する大径部5aと、前記第2接続端3cの端縁に係止する鍔部5bと、小径部5cとからなり、内部に逆止弁4を有して構成されたものである。大径部5aは、図2に示すようにその端縁がインジケータ本体3の筒本体3bに当接することなく、隙間をあけて配置されるように、前記鍔部5bの位置によって規制されており、これによって注射器側接続部5の内部孔は、筒本体3bの側壁の端縁に開口する前記案内路8に連通したものとなっている。
【0031】
小径部5cは、前記大径部5aと反対の側の開口に、注射器等の注入手段(図示せず)が接続されるようになっており、本実施形態では、その内部孔の開口側が、開口から大径部5a側に行くに連れて漸次縮径するよう、テーパ状に形成されている。
また、この小径部5cの内部孔内には、その大径部5a側に、該内部孔の内径を狭める狭窄部5dが形成されており、この狭窄部5dに、前記逆止弁4が設けられている。
【0032】
逆止弁4は、弁本体11、コイルバネ12と、固定軸13とから構成されたものである。弁本体11は、頭部11aと円筒状の軸部11bとからなるもので、頭部11aが、前記狭窄部5dの前記大径部5a側に配置され、軸部11bが、狭窄部5dを通って前記小径部5cの開口側に延びて配置されたものである。
頭部11aの内面(狭窄部5dに対向する面)は、軸部11b側に行くに連れて漸次縮径するテーパ状になっており、この内面に対向する狭窄部5dの面も、該内面のテーパ形状に対応する逆テーパ形状となっている。このような構成によって弁本体11の頭部11aは、狭窄部5dに当接した際、これに気密に密着するようになっている。
【0033】
コイルバネ12は、狭窄部5dを通り抜けた部分の軸部11bに外装して設けられたものである。
固定軸13は、頭部13aと軸部13bとからなるもので、軸部13bが前記弁本体11の軸部11bの内部孔に圧入されて連結されたことにより、その頭部13aと前記狭窄部5dとの間に前記コイルバネ12を圧縮させた状態に保持したものである。このような構成によって逆止弁4は、固定軸13の頭部13a側が加圧されない通常時においては、コイルバネ12の付勢力によって弁本体11の頭部11aが狭窄部5d側に引っ張られ、該頭部11aの内面と狭窄部5dとが気密に密着して閉じた状態となる。一方、注射器等により、コイルバネ12の付勢力より大きな力で頭部13a側を加圧(押圧)すると、弁本体11の頭部11aが狭窄部5dから離間し、開いた状態となる。
【0034】
また、この固定軸13の頭部13bには、溝13cが形成されている。この溝部13cは、後述するように頭部13cに注射器の注入口が当接した際、この注入口を頭部13に塞ぐことなく、少なくともこの溝部13を介して注入口の内部を小径部5cの内部孔に連通させるためのものである。
【0035】
次に、このような構成のインジケータ1を備えたカフ付き医療具(気管内チューブ)50の使用方法を説明する。
図5に示すように、まず、カフ付き医療具50を、通常の使用方法通りに患者に対して用いる。すなわち、患者の口100からチューブ80の先端側を挿入し、カフ90を気管101にまで到達させる。
【0036】
次に、インジケータ1の注射器側接続部5に注射器(図示せず)を接続する。すなわち、注射器の先端側を前記小径部5c内に入れ、その先端部で逆止弁4の固定軸13の頭部13aを押圧する。すると、コイルバネ12の付勢力に抗して頭部13aが押し込まれ、これにより弁本体11の頭部11aが狭窄部5dから離間し、小径部5c側と大径部5a側とが狭窄部5dを介して連通し、逆止弁4が開いた状態となる。
【0037】
このような状態のもとで注射器を操作し、予め設定した所定量の空気を注入する。すると、注入された空気は、狭窄部5dを通過して大径部5aの内部孔を通り、さらにこの大径部5aと前記インジケータ本体3の筒本体3bとの間の隙間を通って3つの案内路8に流入する。そして、この案内路8を通過した空気は、第1接続端3aの内部孔を通ってカフ側接続部2の内部孔内に至り、さらにこのカフ側接続部2に接続した前記接続チューブ71内、チューブ80の第2孔83内を通って第1開口84からカフ90内に流入する。このようにして空気が注入されることにより、カフ90はその内圧に対応した膨張度に膨張する。
【0038】
このようにして空気を注入したら、注射器を前記注射器側接続部5から取り外す。すると、逆止弁4の固定軸13は押圧力が解除されたことによってコイルバネ12に付勢され、注射器側接続部5の小径部5c側の開口側に移動する。これにより、弁本体11も狭窄部5d側に引っ張られ、該頭部11aの内面と狭窄部5dとが気密に密着することにより、逆止弁4は閉じる。
【0039】
このようにして逆止弁4が閉じると、カフ90は、その接続チューブ71側がインジケータ1によって気密に塞がれることにより、閉空間となる。したがって、カフ90の内圧が指標室6内の指標体7にかかるようになる。指標体7は、その内側(筒状体7aの内部孔側)が連通路9を介して外部、すなわち大気中に通じているため、カフ90の内圧と大気圧との圧力差によってその蓋部7b側が前記隔壁3d側に弾性変形し、凹むようになる。よって、この凹んだ度合い、つまり指標体7の蓋部7b側の先端位置がどこにあるかを目盛り10によって視認することにより、カフ90の内圧、すなわちカフ90の膨張度を確認することができる。
【0040】
このようにしてカフ90の内圧(膨張度)を確認した際、その内圧が許容される範囲での最小値を下回っているような場合には、再度注射器を接続して空気を注入することにより、カフ90を所定の内圧で膨張させることができる。なお、このように注射器で空気を注入する際にも、指標体7の凹みの度合いを見ながら行うことにより、過不足なくカフ90を膨張させることができる。
その後、カフ付医療具(気管内チューブ)50のコネクタ60に接続された人工呼吸器(図示せず)により、人工呼吸を行わせる。
【0041】
以上述べたようにこのインジケータ1にあっては、カフ90内に連通する指標室6内の指標体7が、カフ90の内圧に対応して弾性変形するように構成されていることから、透明なインジケータ本体3の筒本体3bを透して前記指標体7の弾性変形の度合い、すなわちその凹みの度合いを視認することにより、カフ90の内圧低下を迅速にしかも正確に判断することができる。したがって、従来のように内圧低下を検知するのに手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった不都合がなくなり、不測の事故を招くといったことも確実に防止される。
【0042】
また、インジケータ本体3が透明樹脂で形成されており、その全体が内部を透かして見ることのできる窓部として機能するので、指標体7の凹みの度合いを容易にかつ迅速に確認することができる。さらに、この筒本体3bに目盛り10が設けられているので、指標体7の弾性変形の度合いをより容易に判断することができ、したがってカフ90の内圧低下をより正確に判断することができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、指標体の形状や構造についても、弾性変形が可能であってその変形の度合いが外から容易に視認できるものであれば、前記実施形態のもの以外にも採用可能である。具体的には、図6に示すように、有蓋円筒状に形成された構造において、その蓋部7bが、全体として略半球面状であり、かつ、その中心部が内側、すなわち筒状体7aの内部孔側に凹んだ形状となっていてもよい。このようにすれば、この凹んだ部分(凹み部7c)がカフ90の内圧と大気圧との圧力差を確実に受けて容易に弾性変形し易くなり(凹み易くなり)、これによってカフ90の内圧をより正確に示すようになる。
【0044】
また、逆止弁4の構造や、この逆止弁4側とカフ90側とを連通させる案内路8の構造等についても、前記実施形態の構造に限定されることなく種々の形態が採用可能である。
さらに、本発明が用いられるカフ付医療具としても、前記の気管内チューブ以外にも、例えば肺動脈用バルーンカテーテルなど、種々のものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】カフ付医療具の概略構成を示す図であり、(a)は本発明のインジケータを取り付けてなるカフ付医療具を示す図、(b)は従来のカフ付医療具を示す図である。
【図2】本発明のカフ付医療具用インジケータの一実施形態の、概略構成を示す側断面図である。
【図3】図2に示したカフ付医療具用インジケータの分解斜視図である。
【図4】(a)はインジケータ本体の側断面図、(b)はインジケータ本体の側面図である。
【図5】カフ付医療具の使用方法を説明するための図である。
【図6】指標体の変形例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…インジケータ(カフ付医療具インジケータ)、2…カフ側接続部(接続部)、3…インジケータ本体(筒体)、4…逆止弁、5…注射器側接続部、6…指標室、7…指標体、7a…筒状体、7b…蓋部、7c…凹み部、8…案内路、9…連通路、10…目盛り、50…カフ付医療具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフ付医療具に取り付けられて、該医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータであって、
前記カフ内に流体を注入する注射器等の注入手段に接続可能な逆止弁と、
前記カフ付医療具に接続して前記カフ内に連通する接続部と、
前記逆止弁と前記接続部との間に設けられた筒体と、を備えてなり、
前記筒体には、前記注入手段により逆止弁を通って注入された流体を前記接続部側に案内する案内路と、前記接続部を介して前記カフ内に連通する指標室とが互いに独立して形成され、
前記指標室内には、前記カフの内圧に応じて弾性変形可能に構成され、その弾性変形の度合いによって前記カフの内圧を示す指標体が設けられ、
前記指標室には、前記指標体の前記接続部と反対の側にて該筒体の外部に連通し、これによって前記指標体の弾性変形を可能にする連通路が設けられ、
前記筒体には、少なくとも前記指標体の弾性変形の度合いを視認可能にする窓部が形成されていることを特徴とするカフ付医療具用インジケータ。
【請求項2】
前記筒体は透明樹脂で形成され、該筒体には、前記指標体の弾性変形の度合いを示す目盛りが設けられていることを特徴とする請求項1記載のカフ付医療具用インジケータ。
【請求項3】
前記指標体は、エラストマー又は軟質ゴムからなる可撓性の有蓋筒状体からなり、筒状体の開口部側が前記連通路に連通して前記指標室内に固定され、蓋部側が前記接続部側に配置されて弾性変形可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカフ付医療具用インジケータ。
【請求項4】
前記指標体は、その蓋部側の肉厚が筒状体の開口部側の肉厚より薄く形成されていることを特徴とする請求項3記載のカフ付医療具用インジケータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−23035(P2008−23035A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198197(P2006−198197)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(391007024)株式会社アドバネクス (45)
【Fターム(参考)】