説明

カプセル化された活性物質を含む粒子とその製造方法

【課題】形成後に洗浄のごとき余分の工程を必要しない、長期安定性で、圧力、せん断、又は熱により、活性種を放出できる、カプセル化された活性剤の製造方法の提供。
【解決手段】12〜50個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又はパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含むアルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーである側鎖結晶性ポリマーを加熱して溶融する工程、触媒、硬化剤、促進剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される前記活性剤を加えて溶融混合物を形成する工程、その溶融混合物を回転盤上に放出・固化させて、前記結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤粒子を含む粒子を形成する工程を含み、前記粒子は、3000ミクロン以下の粒子サイズの殻層及びその殻層により取り囲まれた粒子であり、粒子形成後の最初の抽出の間で、前記粒子が前記活性剤の溶媒または可塑化剤の処理時に、1重量%以下の活性剤が抽出される、カプセル化された活性剤を含む粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化された活性物質に関し、特にカプセル化された触媒、促進剤、及び硬化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、シーラント、コーティングとして、あるいは複合体用途中において、例えばポリシロキサン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂をベースとするものにおいて有用である調剤は、多くの場合、最終的硬化を得るために触媒種、促進剤、又は硬化剤との接触を必要とする。室温あるいは室温よりやや高い温度で触媒種、促進剤、又は硬化剤と硬化性組成物とが接触すると直ちに、この硬化が開始する。それ故、硬化が必要とされるまで、この触媒種、促進剤、又は硬化剤と硬化性組成物が互いに接触しないように保つ必要がある。通常使用される一つの方策は、組成物を二つの部分に調整して、その一方に触媒種、促進剤、又は硬化剤を入れ、他方には硬化性組成物を入れることである。組成物を二つにすると二つ別々の部分の出荷を必要とし、又触媒種、促進剤、又は硬化剤と硬化性組成物とを別々に保持するため、更にその物質を混合するための混合装置のための余分の資本が必要となる。別々の出荷及び複雑な装置、例えば計量、配送装置は、システム経費をかなり増加させる。
【0003】
従って、二つの部分の出荷を必要とせず、混合及び適用のための複雑な装置を必要としない一体の硬化性組成物の開発が望まれる。米国特許第5,601,761号明細書(Hoffmanら)には、活性物質をそれと不混和性で、周囲温度より高い融点と転移点を有するコーティング物質中にカプセル化する方法が開示されている。この方法は、コーティング物質を溶融するのに十分な温度でコーティング物質中に活性物質を分散する工程、コーティング物質で散在させた活性物質の小滴を形成する工程、その小滴を冷却してコーティング物質を固化させて粒子を形成する工程、及び活性物質を粒子の表面から除去するために、コーティング物質を溶解しないが、活性物質を溶解する溶剤に粒子を接触させる工程を含む。
【0004】
有効量の活性物質が形成された粒子の表面に含まれるか、又は粒子から抽出可能である事実があることから、溶剤と粒子を接触させる必要が生ずる。この表面上の、又は抽出可能の有効量の活性物質は、一体の硬化性調剤中の安定性を失うこととなる。その結果として、その特許権者は、活性物質を含む粒子を活性物質の溶剤と接触させることにより表面の活性物質を除去した。このことにより、安定なカプセル化された活性物質を得て、又カプセル化された活性物質を含む安定な組成物を得た。これに伴う問題は、成形後にその粒子を洗浄すると、溶剤中に洗い流される活性種の損耗となり、余分な粒子の洗浄処理工程に基づく経費増大となることである。
【0005】
米国特許第5,120,349号明細書(Stewartら。Landec Polymersに譲渡)には、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、又は肥料のごとき活性種を側鎖結晶性アクリレートベースのポリマー中にカプセル化する方法が開示されている。このカプセル化された活性種は、活性種を高温の側鎖結晶性アクリレートポリマー中に溶解又は分散し、その混合物を冷却し、その混合物を結晶化することにより製造される。形成された粒子は、その後粉砕される。国際特許公開第96/27641号公報(Bitlerら)には、変性剤が活性化学部位、例えば触媒又は硬化剤、及び結晶性ポリマー部位を含み、その活性化学部位はその結晶性ポリマー部位に化学的に結合している、変性剤の製造方法が開示されている。これらは、Stewartの公報に開示されたと同様にして製造される。これらの粒子は、硬化系を変性するために添加できることが開示されている。これらの粒子は、結晶性ポリマー部位を溶融するのに十分な温度に曝されて、それにより活性化学部位硬化系に接触させるとき、硬化系を変性する。この系は良好な安定性を示すが、この系の反応性はある用途には遅すぎる。
【0006】
国際特許公開第98/11166号公報(Bitlerら)には、結晶性ポリマー成分に物理的に拘束されるが、化学的には拘束されてない活性化学成分を有する結晶性ポリマーを含有する硬化系のための変性剤が開示されている。その活性化学成分、及びその系は、国際特許公開第96/27641号公報に開示されたものと類似している。ランディック(Landec)は、側鎖結晶性アクリレートによりカプセル化されたジブチルスズジラウレートである製品を名称Intelimer(商標)の下に市販している。この活性種は、一部がその粒子の表面に位置しており、及び/又はその粒子から抽出され得る。いくつかの用途において、粒子表面に活性種が存在するか、又は粒子から活性物質が抽出され得ると、カプセル化された活性種を含むいくつかの調剤の不安定性を生ずる。硬化性調剤において、硬化性組成物の硬化が早まることによってこの不安定性が分かる。これは、組成物の粘度増加によって示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
必要とされるのは、形成後に洗浄のごとき余分の工程を必要とせず、長期にわたり一体化調剤中で安定であり、圧力、せん断、又は熱のごときある外因を適用することにより、所望の際活性種を放出できる、カプセル化された活性剤である。換言すれば、その系は、周囲温度において安定であり、即ち硬化を示す相当程度の粘度増加を起こさないで、又一旦その系がカプセル化された活性剤を放出するような条件、例えばカプセル化された活性剤の溶融温度に曝された場合には急速に硬化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、第一の態様として、硬化性組成物の硬化に用いられる、結晶性ポリマーとその結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤を含む粒子の製造方法であって、アルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーである側鎖結晶性ポリマーからなる群から選択される結晶性ポリマーであって、12〜50個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又はパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含む結晶性ポリマーを加熱して、前記結晶性ポリマーを溶融する工程、触媒、硬化剤、促進剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される前記活性剤と前記溶融された結晶性ポリマーとを、前記活性剤が揮発しない温度条件下であって、また、前記活性剤が前記溶融された結晶性ポリマーに分散又は溶解する温度条件下で接触させて、前記結晶性ポリマー中に活性剤を分散又は溶解させて溶融混合物を形成する工程、その溶融混合物を回転盤上に注いで、その溶融混合物を回転盤上に放出し、回転盤上で急速に固化させて、前記結晶性ポリマーと前記結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤粒子を含む粒子を形成する工程を含み、この粒子形成工程により、前記粒子は、3000ミクロン以下の粒子サイズを有し、又、殻層及びその殻層により取り囲まれた粒子の内部を有する粒子を形成しており、これにより、粒子形成後の最初の抽出の間で、前記粒子が周囲条件下に前記活性剤の溶媒または可塑化剤により処理されたときに、形成された粒子から1重量%以下の活性剤が抽出される、カプセル化された活性剤を含む粒子の製造方法に関する。
本願発明は、第二の態様として、前記第一の態様の方法により製造された、硬化性組成物の硬化に用いられる、結晶性ポリマーとその結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤を含む粒子であって、前記結晶性ポリマーは、アルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーである側鎖結晶性ポリマーからなる群から選択され、又、12〜50個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又はパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含む結晶性ポリマーであり、又、前記活性剤は、触媒、硬化剤、促進剤、及びそれらの混合物からなる群から選択され、製造された粒子は、殻層及びその殻層により取り囲まれた粒子の内部を有し、又、3000ミクロン以下の粒子サイズを有しており、ここで、前記粒子は、粒子形成後の最初の抽出の間で、前記粒子が周囲条件下に前記活性剤の溶媒または可塑化剤により処理されたときに、形成された粒子から1重量%以下の活性剤が抽出される、カプセル化された活性剤を含む粒子に関する。
一実施形態において、本発明は、結晶性又は熱可塑性ポリマー中にカプセル化された活性剤を含む粒子状のカプセル化された活性剤であり、カプセル化された活性剤の粒子サイズが3000ミクロン以下であり、粒子調整後の最初の抽出の間に周囲条件下で、活性剤が粒子から有効量程度抽出され得ないものである。好ましい実施形態において、カプセル化された粒子は、周囲温度において活性剤の放出、又は抽出を阻止する機能を有する粒子の表面又はその近くに殻層を有する。好ましくは、殻層は、実質的に活性剤を含まないか、又は活性剤が添加される調剤が悪影響を受けない程度の少量の活性剤を含む。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の粒子は、粒子の表面、又はその近くに殻層を有し、又殻層により取り囲まれた粒子の内部を有し、その外層は、粒子調整後の最初の抽出の間に周囲条件下で、活性剤が粒子から実質的に抽出され得ないように、内部の結晶構造とは異なった結晶構造を有するものである。好ましい実施形態において、活性剤をカプセル化するポリマーは、結晶性ポリマーであり、又より好ましくは、ポリマーが、置換された又は置換されてない6〜50個の炭素原子の側鎖を有するアルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのポリマー又はコポリマーを含む側鎖結晶性ポリマーである。他の実施形態において、熱可塑性又は結晶性ポリマーは、40℃〜250℃の転移点を有する。好ましくは、活性剤は、カプセル化する剤(カプセル化する方の剤:カプセル化剤)に化学的に結合していない。
【0010】
他の実施形態において、本発明は、カプセル化された活性剤の製造方法であって、a)活性剤と結晶性又は熱可塑性ポリマーとを接触させる工程(ここで、接触条件下でポリマーは溶融状態であり、活性剤は揮発しない。)、b)3000ミクロン以下の粒子を形成する工程、及びc)その粒子の表面及び表面近くの一部が急速固化する条件に、その粒子を曝露する工程、を含むカプセル化された活性剤の製造方法である。好ましい実施形態において、本発明は、カプセル化された活性剤の製造方法であって、結晶性又は熱可塑性ポリマーが溶融する条件下でそのポリマーを加熱する工程、活性剤をその溶融ポリマーに接触させて、ポリマー中に活性剤を分散又は溶解させる工程、ポリマー中に分散又は溶解された活性剤を、ポリマー中の活性剤の粒子が形成され、回転盤から放出され、固化するように回転盤上に注ぐ工程、(ここで、活性剤はこの工程条件下で揮発せず、その活性剤は、粒子形成後の最初の抽出の間に周囲条件下に形成された粒子から有効量で抽出され得ない。)
を含む、カプセル化された活性剤の製造方法である。
更に他の実施形態において、本発明は、このパラグラフにおいて記載した方法により製造した製品である。
【0011】
好ましい実施形態において、活性剤は有機金属触媒である。
【0012】
本発明のカプセル化された活性剤は、その安定剤が硬化組成物中で安定であるようにするために洗浄とか抽出を必要としない。これらのカプセル化された活性剤は、所望温度で活性剤を放出するように設計できる。本発明の活性剤は、周囲温度で優れた安定性を示し、又活性剤の放出の際、比較的速い反応性を示す。更に、活性剤が存在することにより、製造後の硬化組成物の接着性又はエラストマー特性を悪化させることにはならない。
【0013】
その活性剤は、ある環境では反応性であり、活性剤がその環境で反応することが必要とされるまで、その環境から隔離されていることが必要であるいかなる物質であってもよい。活性剤の事例として、触媒、促進剤、硬化剤、生物的活性剤、例えば医薬、除草剤、肥料、又は殺虫剤が含まれる。好ましくは、活性剤は、触媒、硬化剤、促進剤、又はそれらの混合物である。活性剤は、カプセル化剤が液体である、即ち溶融する温度で、カプセル化物質に溶解するか、又はカプセル化物質と不均一スラリーを形成するいかなる物質であってもよい。好ましくは、活性剤は、カプセル化物質に可溶性である。活性剤は、室温で、液体であっても固体であってもよいが、処理温度で液体であることが好ましい。活性剤の融点は、カプセル化物質の融点より高いか、低いか、又は等しくてもよい。
【0014】
好ましくは、活性剤は、有機金属若しくは有機触媒、硬化剤、又は促進剤であって、カプセル化工程の温度において揮発ないし分解しないものである。好ましくは、活性剤は、シラノール縮合触媒、ヒドロシリル化触媒、プレポリマー、又は熱硬化性樹脂、例えばポリウレタンプレポリマー、又はポリウレタン組成物、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂を製造するのに有用である触媒、硬化剤、又は促進剤である。
【0015】
好ましい一実施形態において、活性剤は、カプセル化条件下で揮発も分解もしない有機金属触媒である。有用である他の触媒種は、ポリウレタンプレポリマーの湿分硬化を促進する触媒である。ポリウレタン反応中で有用な触媒には、ズズカルボキシレート、有機珪素チタネート、アルキルチタネート、第三アミン、スズメルカプチド、及び鉛、コバルト、マンガン、ビスマス、又は鉄のナフテナート又はアルカノアート塩が含まれる。有用なウレタン形成触媒は、当業者に周知であり、又多くの例示が、例えば「『POLYURETHANE HANDBOOK』、第3章、3.4.1節、第90〜95頁」、及び「『POLYURETHANE CHEMISTRY AND TECHNOLOGY』、第IV章、第129〜217頁」に見出される。
【0016】
好ましいスズ化合物には、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えばスズ(II)ジアセタート、スズ(II)ジオクタノアート、スズ(II)ジエチルヘキサノアート、及びスズ(II)ジラウラート;有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジラウラート、ジブチルズルマレアート、及びジオクチルスズジアセタート;カルボン酸のスズ塩、例えばオクタン酸スズ、オレイン酸スズ、酢酸スズ、ラウリン酸スズが含まれる。
【0017】
ポリウレタンの硬化を促進するのに有用な他の触媒には、ジモルホリノジアルキルーテル、N−アルキルベンジルアミン、N−アルキルモルホリン、N−アルキル脂肪族ポリアミド、N−アルキルピペラジン、トリエチレンジアミン;アミジン、例えば2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン;第3アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチル−、N−エチル−、N−シクロヘキシル−モルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが含まれる。
【0018】
本発明において有用な活性剤には、反応性珪素基の反応を促進するシラノール縮合触媒が含まれる。シラノール縮合触媒の事例としては、チタン酸エステル、例えばテトラブチルチタナート、テトラプロピルチタナート、など;有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウラート、ジブチルスズマレアート、ジブチルスズジアセタート、スズオクチラート、スズナフテナート、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズオキシドとフタル酸エステル又はアルカンジオンとの反応性生物、ジアルキルスズビス(アセチルアセトナート)(通常、ジアルキルスズアセチルアセトナートとも称される。);有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリスアセチルアセタート、アルミニウムトリスエチルアセタート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセタート、など;ビスマス塩と有機カルボン酸との反応性生物、例えばビスマストリス(2−エチルヘキソアート)、ビスマストリス(ネオデカノアート)、など;
【0019】
キレート化合物、例えばジルコンテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、など;有機鉛化合物、オクチル酸鉛;有機バナジウム;アミン化合物、例えばブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,1−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、など、又はそのカルボン酸塩、など;過剰のポリアミドと多塩基酸とから得た低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応性生物;などがある。
【0020】
これらのシラノール触媒は、個別でも、又二つ以上組み合わせても使用することができる。これらのシラノール縮合触媒の内で、有機金属化合物、又は有機金属化合物とアミン化合物との組み合わせが硬化性の観点から好ましい。好ましいシラノール縮合触媒は、有機金属化合物である。より好ましいものは、有機スズ化合物、例えばジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズマレアート、ジブチルスズジアセタート、スズオクチラート、スズナフテナート、ジブチルスズオキシドとフタルサンエステルとの反応性生物、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)である。
【0021】
他の実施形態において、活性剤は、エポキシ樹脂組成物の硬化促進剤である。そのような促進剤は、尿素又はイミダゾールである。好ましい尿素には、3−フェニル−1.1−ジメチル尿素;3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素;1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)ビス(3,3’−ジメチル尿素);3−イソメチルジメチル尿素;3,5,5−トリメチルシクロヘキシルジメチル尿素;又は4,4’−メチレンビス(フェニルジメチル尿素)が含まれる。最も好ましい尿素は、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(PDMU)である。
【0022】
好ましいイミダゾールには、アルキル−又はアリールイミダゾール、例えば2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチルイミダゾール;1−シアノエチル誘導体、例えば1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、及び1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、及び1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール;及びカルボン酸塩、例えば1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール−トリメリタートが含まれる。本発明における活性剤として有用であるエポキシ樹脂組成物のその他の硬化用触媒には米国特許第5,344,856号の該当部分に開示されているものが含まれる。
【0023】
他の実施形態において、活性剤は、ヒドロシリル化触媒である。そのようなヒドロシリル化触媒は、米国特許第5,567,833号明細書、第17欄、第26行〜第54行;米国特許第5,409,995号明細書;米国特許第3,971,751号明細書;及び米国特許第5,223,597号明細書に開示されている。最も好ましいヒドロシリル化触媒はクロロ白金酸(ヘキサクロロ白金(IV)酸)である。
【0024】
更に他の実施形態において、活性剤は、ポリマー硬化反応において触媒、硬化剤、又は促進剤として機能するアミン又はイミダゾールである。有用なアミンには、本明細書に開示されているような第一アミン、第二アミン、及び第三アミンが含まれる。
【0025】
他の実施形態において、活性剤は、遊離ラジカル触媒又は開始剤である。遊離ラジカル触媒及び開始剤は、この技術分野で周知であり、その例示は、米国特許第4,618,653号明細書、及び米国特許第5,063,269号明細書、第6欄第37〜54行に開示されている。
【0026】
好ましくは、活性剤は、有機金属化合物、より好ましくは、活性剤は、有機スズ化合物である。更に好ましくは、有用な有機スズ化合物は、ジアルキルスズオキシド、例えばジブチルスズオキシド、ジアルキルスズビス(アセチルアセトナート)、又はフタル酸エステル又はペンタンジオン中のジブチルスズオキシド反応生成物である。
【0027】
活性剤が有機ベースの活性剤である実施形態において、その有機活性剤が揮発しない温度で、カプセル化剤中に有機活性剤がカプセル化されるように、有機活性剤とカプセル化剤が確実に選択されるようにするよう留意しなければならない。活性剤が溶解するカプセル化剤を使用すると、活性剤の揮発を減少し、又所望の粒子の形成を高める。本明細書において、「揮発しない」は、カプセル化された活性剤粒子の形成される条件下で、前記の形成された粒子が、粒子形成後の最初の抽出の間に、周囲条件において活性剤の実質的抽出を示さないことをいう。好ましくは、活性剤は、粒子形成条件下で低分圧を有する。活性剤は、極性を有するカプセル化剤、例えばポリエステル、ポリアミド、及び側鎖結晶性ポリマー中への高い溶解性を示す。
【0028】
カプセル化剤は、40℃〜250℃の転移点を有する熱可塑性又は結晶性ポリマーである。本明細書で使用する「転移点」は、熱可塑性又は結晶性ポリマーが活性剤の放出をもたらせる変化を生ずる点をいう。一つの転移点は、熱可塑性又は結晶性ポリマーが溶融し、活性剤を放出する点である。他の転移点は、熱可塑性又は結晶性ポリマーが十分に変化して、活性剤が粒子から出てあたりに広がらせる点である。熱可塑性又は結晶性ポリマー部分は、活性剤の放出が直ちに起こるように比較的狭い範囲に渡って転移点を横切る、例えば溶融することが好ましい。好ましくは、熱可塑性又は結晶性ポリマーは、40℃以上の、より好ましくは50℃以上、最も好ましくは60℃以上の温度の転移点を有する。好ましくは、そのような熱可塑性又は結晶性ポリマーは、250℃以下、より好ましくは200℃以下、最も好ましくは110℃以下の転移点を有する。好ましくは、カプセル化剤は、結晶性ポリマーである。
【0029】
好ましくは、熱可塑性ポリマーには、スチレン系、スチレン−アクリロニトリル系、低分子量塩素化ポリエチレン系、可溶性セルロース系、アクリル系、例えばメチルメタクリレート、又はシクロ脂肪族アクリレートベースのものが含まれる。
【0030】
好ましくは、結晶性ポリマーはポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、フェノキシ熱可塑性樹脂、ポリ乳酸、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、又は側鎖結晶性ポリマーである。より好ましくは、結晶性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、フェノキシ熱可塑性樹脂、ポリ乳酸、又は側鎖結晶性ポリマーである。更に好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、又は側鎖結晶性ポリマーであり、特に側鎖アクリレートポリマーが最も好ましい。
【0031】
結晶性ポリマーは、単一ポリマー、若しくはポリマー混合物から誘導されることができ、又そのポリマーは、ホモポリマー、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、及び熱可塑性エラストマーを含む、2つ以上のコモノマーのコポリマーであってもよい。好ましくは、結晶性ポリマーの少なくとも一部は、側鎖結晶性(Side Chain Crystallizable:SCC)ポリマーから誘導される。SCCポリマーは、例えば一つ以上のアクリル系、メタクリル系、オレフィン系、エポキシ系、ビニル系、エステル−含有、アミド−含有、又はエーテル含有モノマーから誘導される。好ましいSCCポリマー部分は、以下に詳述する。
【0032】
しかしながら、本発明は、所望の性質を有する他の結晶性ポリマーを含む。そのような他のポリマーには、例えば結晶性が、ポリマー骨格に基づかない、又は主としてポリマー骨格に基づくポリマー、例えば2〜12の炭素原子、好ましくは2〜8の炭素原子を含むα−オレフィンポリマー、例えば式CH2=CHR(式中、Rは、水素、メチル、プロピル、ブチル、ペンチル、4−メチルペンチル、ヘキシル、又はヘプチルである。)を有するモノマーのポリマー、並びに他のポリマー、例えばポリエステル、ポリアミド、及びポリアルキレンオキシド、例えばポリテトラヒドロフランが含まれる。DSC融解熱が少なくとも10J/g、特に少なくとも20J/gであるような結晶性が好ましい。又、ポリマー部分の立体性は、活性部位の有効性を決定するのに重要である。
【0033】
本発明において使用できるSCCポリマー部分は、下記に挙げるごとき公知のSCCポリマーから誘導される部分を含む。例えば、置換された、又は置換されないアクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、α−オレフィン、p−アルキルスチレン、アルキルビニルエーテル、アルキルエチレンオキシド、アルキルホスファゼン、及びアミノ酸のごときモノマーの一つ以上から誘導されるポリマー;ポリイソシアネート;ポリウレタン;ポリシラン;ポリシロキサン;及びポリエーテル;これらの全てのポリマーは、長鎖結晶基を含む。
【0034】
適切なSCCポリマーは、例えば「J.Poly.Sci.60,19(1962)」、「J.Poly.Sci.(Polymer Chemistry)7,3053(1969)、9,1835,3349,3351,3367,10,1657,3347,18,2197,19,1871」、「J.Poly.Sci.(Polymer Physics Ed.)18.2197(1980)」、「J.Poly.Sci.Macromol.Rev.8,117(1974)」、「Macromolecules,12、94(1979)、13,12,15,18,2141,19,611、JACS75,3326「(1953)、76;6280」、「Polymer J.17,991(1985);及び「Poly.Sci.USSR21,241(1979)に開示されている。
【0035】
本発明において使用されるのに好ましいSCCポリマー部分は、下記の一般式の繰り返し単位を含む部分として広く定義される。
【化1】

(式中、Yは、ポリマーの主鎖部分を形成する有機基、Cyは、結晶性部分を含む。)
【0036】
結晶性部分は、ポリマー主鎖に直接、又は二価の有機あるいは無機の基、例えばエステル、カルボニル、アミド、炭化水素(例えば、フェニレン)、アミノ、若しくはエーテル結合を介して、又はイオン性塩の架橋(例えば、カルボキシアルキルアンモニウム、スルホニウム、又はホスホニウムイオン対)を介して結合することができる。Cy基は、脂肪族又は芳香族であり、例えば少なくとも10個の炭素を有するアルキル、少なくとも6個の炭素のフルオロアルキル、又はアルキルが6〜24個の炭素を含むp−アルキルスチレンである。このSCC部分は、前記一般式の異なった2つ以上の繰り返し単位を含むことができる。そのSCCは、又他の繰り返し単位を含むことができるが、他の繰り返し単位の量は、結晶性基の全重量が少なくともブロックの残りの重量と少なくとも同じ、例えば二倍であるようにすることが好ましい。
【0037】
好ましいSCC部分は、その部分の主鎖の炭素原子数の少なくとも5倍含み、特に側鎖は、12〜50、とりわけ14〜22個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又は線状のパーフッ素化、又は実質的にパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含む。そのような側鎖を含むポリマーは、1つ以上の対応する線状脂肪族アクリレート若しくはメタクリレート、又はアクリルアミド又はメタクリルアミドのごとき同等のモノマーを重合することにより調整することができる。
【0038】
多くのそのようなポリマーは、個別のモノマーとして、又は特定のモノマー、C12A、C14A、C16A、C18A、C22Aの混合物、又はC18A、C20A及びC22Aの混合物、C26A〜C40A、フッ素化C8A(米国ヘキストから入手可能のAE800)、並びにフッ素化C8A、C10A及びC12A(米国ヘキストから入手可能のAE12)の混合物、として入手可能である。
【0039】
又、このポリマーは、適宜一つ以上のコモノマー、好ましくは他のアルキル、ヒドロキシアルキル、及びアルコキシアルキルアクリレート;メタクリレート(例えば、グリシジルメタクリレート);アクリルアミド及びメタクリルアミド;アクリル酸及びメタクリル酸;アクリルアミド;メタクリルアミド;マレイン酸無水物;及びアミド基含有コモノマーから誘導される単位を含もことができる。
【0040】
そのような他のコモノマーは、一般には全重量で50%未満、特に35%未満、特に25%未満、例えば0〜15%存在する。これらは、ポリマーの転移点、又は他の物理的性質を変えるために添加される。そのようなポリメチレン側鎖を有するポリマーの転移点は、結晶性側鎖中の炭素原子の数により影響を受ける。例えば、C14A、C16A、C18A、C20A、C22A、C30A、C40A、及びC50Aのホモポリマーは、それぞれ典型的に、20、36、49、60、71、76、96、及び102℃の融点を有するが、一方対応するn−アルキルメタクリレートのホモポリマーは、典型には、10、26、39、50、62、68、91、及び95℃の融点を有している。そのようなモノマーのコポリマーは、一般に中間の融点を有する。他のモノマー、例えばアクリル酸、又はブチルアクリレートとのコポリマーは、典型的にはいくらか低い融点を有している。
【0041】
本発明において使用するためのSCC部分を提供できる他のポリマーは、n−アルキルα−オレフィンのアタクチック、及びアイソタクチックポリマー(例えば、それぞれ30℃、及び60℃のTm’sを有する、C16オレフィンのアタクチック及びアイソタクチックポリマー);n−アルキルグリシジルエーテルのポリマー(例えば、C18アルキルグリシジルエーテルのポリマー);n−アルキルビニルエーテルのポリマー(例えば、Tm55℃を有するC18アルキルビニルエーテルのポリマー;Tm60℃を有するn−アルキル−α−エポキシド);
【0042】
n−アルキルオキシカルボニルアミド−エチレンメタクリレートのポリマー(例えば、それぞれ56℃、及び75℃、及び79℃のTm’sを有する、C18IEMA、C22IEMA及びC30IEMAのポリマー);n−フルオロアルキルアクリレート(例えば、それぞれ74℃、及び88℃のTm’sを有する、C8ヘキサデカフルオロアルキルアクリレートのポリマー、及びC8-12アルキルフルオロアクリレート混合物);n−アルキルオキサゾリンのポリマー(例えば155℃のTmを有するC16アルキルオキサゾリンのポリマー);
【0043】
ヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートと、アルキルイソシアネ―トとの反応により得られたポリマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレートとC18又はC22アルキルイソシアネートとの反応により得られたポリマーであり、それぞれ78℃及び85℃のTm’sを有する。);及び二官能性イソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、及び一級脂肪族アルコールの反応により得られたポリマー(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、及びC10又はC22アルコールの反応により得られたポリマーであり、それぞれ103℃及び106℃のTm’sを有する。)を含む。
【0044】
本発明において使用される好ましいSCCポリマーは、アルキル基が炭素原子12〜50個を有するn−アルキル基であるアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、アルキルオキサゾリン、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、α−オレフィン、アルキル1,2−エポキシド、及びアルキルグリシジルエーテル、及びサーモアルキル基(thermo alkyl group)が炭素原子6〜50個を有するn−フルオロアルキル基である前記のものに相当するモノマーからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから誘導される単位30〜100%、好ましくは40〜100%;アルキル基が炭素原子4〜12個を有するn−アルキル基であるアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N−アルキルアクリルアミド、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステルからなる群から選択される少なくとも一つのモノマーから誘導される単位0〜20%;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルアセテート、及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一つの極性モノマーから誘導される単位0〜15%を含む。
【0045】
そのようなSCC部分は、又マトリックスとの相溶性を変えたり、変性剤を含む反応生成物の弾性率を向上させたりするために他のモノマーから誘導される単位を含むことができる。そのようなモノマーには、スチレン、ビニルアセテート、モノアクリル官能基含有ポリスチレンが含まれる。好ましくは、使用される側鎖結晶性ポリマーは、活性水素原子を有する基のごとき官能基を有意な量含まない。というのは活性水素原子が有意な量存在するとポリマー粘度を上昇させることから、カプセル化された活性剤粒子を製造するために使用される方法に悪影響を強く与え得るからである。
【0046】
SCCポリマー部分の数平均分子量は、好ましくは200,000以下であり、より好ましくは100,000以下であり、特に50,000以下、より特に1,000〜20,000である。SCCポリマー部分の分子量は、Tmに実質的な変化を与えないで結合される部分の反応性を最適化するために(例えば、反応条件、及び連鎖移動剤を添加するを選択することによって)、調整することができる。
【0047】
カプセル化された活性剤は、下記の手順により製造できる。
a)カプセル化物質を溶融するのに十分で、又活性剤を揮発させない程度の温度で、カプセル化物質中に活性剤を分散又は溶解させること;b)カプセル化物質により散在された活性剤の小滴を形成すること;及びc)小滴を冷却してカプセル化された物質を固化すること。場合により、その方法は、更にd)カプセル化物質の表面から活性剤を除去するように、活性剤を溶解するが、カプセル化物質は溶解しない溶剤に前記小滴を接触させることを含むことができる。この最後の工程を避けることが好ましい。この方法は、米国特許第5,601,761号明細書に記載されている。より好ましくは、カプセル化された活性剤は、液体状態、即ち溶融されるまで加熱される。その後、活性剤は、カプセル化剤中に分散される。好ましくは、活性剤は、カプセル化剤が溶融される条件で揮発しない。
【0048】
その混合物は、粒子、好ましくは3000ミクロン以下の粒子に形成される。液体組成物又は分散液を取り、それを所望のサイズの粒子又は小滴に形成するためのいかなる手段を採用することができ、例えばあらゆる手段により、又は液体組成物を回転盤上に滴下することにより、微粒子化する手段を採用することができる。その後、その粒子は、粒子表面が急速に固化する条件に曝される。「急速固化」は、粒子形成後の最初の抽出で、周囲条件下で、形成された粒子中の活性剤が実質的に抽出されないことを意味する。
【0049】
更に、急速固化の証は、カプセル化剤が粒子の内部とは異なる結晶構造を有する粒子の殻を形成することである。一般に、急速固化は、秒単位で、好ましくは10秒以内、より好ましくは5秒以内で粒子が表面で固化することを意味する。粒子を急速冷却に曝すことにより、粒子の所望の構造と性質が得られることになるものと考えられる。粒子を表面で急速に固化させる全ての手段を利用することができる。周囲温度の空気又は不活性ガスゾーン又は冷却されたゾーンにその粒子を通過させることも、粒子の表面を急速固化させる一つの方法である。溶融調剤の粒子を冷却ゾーン、例えば空気ゾーンに分散させる全ての方法を採用することができる。
【0050】
本発明を実施するに当たって、工程の温度は、カプセル化剤が溶融状態又は液体の形態であり、又使用される製造技術、例えば回転盤に適した粘度を有するように選択される。更に温度及び他の製造条件は、活性剤が揮発しないように選択されるべきである。一般に本明細書において使用される「非揮発性」、又は「低揮発性」は、活性剤が低分圧を有することを意味する。当業者は、適切な条件、成分、及び受容可能な揮発濃度を容易に決定できる。一般に、活性剤をカプセル化物質と接触させる好ましい温度は、40℃以上であり、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは120℃以上で、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、及び最も好ましくは180℃以下である。
【0051】
好ましい粒子の製造方法は、回転盤法である。回転盤法にいおいて、製造される混合物は、回転盤の使用に適した粘度を有することが好ましい。好ましくは、その物質の粘度は、500mPa.s(500センチポイズ)以下、より好ましくは100mPa・s(100センチポイズ)以下、及び最も好ましくは50mPa・s(50センチポイズ)以下である。高粘度ポリマーを処理する上で所望の粘度を得るために、溶剤又は可塑剤を前記混合物に添加することが必要となり得る。溶剤があると、余分な経費、安全性及び環境への配慮事項が生ずるので、このようにすることは望ましくない。
【0052】
好ましくは、活性剤は、活性剤又はその混合物が揮発しない温度で溶融状態にあるカプセル化剤と混合する。これらの条件下では、製造される粒子は、周囲温度で有効量の活性剤の抽出を示さない。これにより非常に安定なカプセル化された活性剤、及びそのような活性剤から製造された非常に安定な接着剤を得ることができる。好ましくは、前記円盤上に注加される溶融混合物の温度は、75℃以上、より好ましくは100℃以上、最も好ましくは120℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、最も好ましくは180℃以下である。好ましくは、円盤は、500rpm以上、より好ましくは1,000rpm以上、又最も好ましくは5,000rpm以上で回転する。盤の回転速度の上限は、実用性である。
【0053】
好ましい一実施形態において、カプセル化された活性剤は、好ましくはその中に活性剤を分散させた結晶性ポリマー、又はポリマー混合物の殻を有する。この殻層の結晶構造は、粒子内部のカプセル化剤の結晶構造とは異なる。好ましくは、粒子表面及びその近くの殻中には有効量の活性剤は存在しない。表面及び表面近くの殻層は、活性剤の溶剤による活性剤の抽出を防止すると考えられる。この層の存在は、粒子が活性剤の溶剤に接触したとき、活性剤が有効量抽出されないことにより示される。溶剤を使用する際の活性剤の抽出への粒子の抵抗性は、カプセル化された活性剤が周辺温度において調剤中で安定であること、有効量の活性剤が硬化性組成物と接触しないで、周辺温度で硬化を開始しないことの表れである。好ましい一実施形態において、本発明のカプセル化された活性剤は、好ましくは粒子の内部におけるポリマーの結晶構造とある程度異なる結晶構造を有する結晶性ポリマーの殻を有すると考えられる。
【0054】
好ましくは、活性剤は、カプセル化剤中の活性剤粒子から有効量程度は抽出されない。「実質的に抽出できない」という表現によって、接着剤中で粒子を安定にさせるために溶剤によって粒子を洗浄する必要がないことを意味する。好ましくは、「実質的に抽出できない」は、粒子が活性剤に対する溶剤、又は可塑剤と接触した場合、カプセル化された活性剤中の活性剤の含有量に基づいて活性剤10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更により好ましくは1重量%以下、更により好ましくは0.5%重量以下、最も好ましくは0.1%重量%以下が抽出されるものを意味する。
【0055】
いくつかの実施形態において、抽出された活性剤の量は、本明細書の実施例36に示されたごとき活性剤の測定のために使用される分析技術の探査限界以下である。放出された活性剤は、急速に反応又は硬化を活性化でき、あるいは開始できる。好ましくは、前記粒子は、粒子サイズ3000ミクロン以下、より好ましくは300ミクロン以下、更により好ましくは150ミクロン以下、及び最も好ましくは70ミクロン以下である粒子サイズを有する。好ましくは、前記粒子は、10ミクロン以上、より好ましくは30ミクロン以上、及び更により好ましくは50ミクロン以上である粒子サイズを有する。
【0056】
狭い粒度分布は、意図する用途において本発明の粒子の性能を向上させると考えられる。好ましくは、粒子は狭い粒度分布を示す。本明細書において「狭い粒度分布」は、粒子の粒子サイズの中央値より5倍より大きなサイズ、より好ましくは中央値の2倍より大きなサイズを有する粒子を有効量含まないことを意味する。ここで使用されるごとき粒子サイズは、実施例36に開示されたごときレーザー散乱粒子サイズ解析法により計測することができる。好ましい実施形態において、粒子は、低アスペクト比を有し、及び更に好ましくは球形である。
【0057】
カプセル化剤粒子中の活性剤の濃度は、活性剤とカプセル化物質の合計重量に基づいて、好ましくは1重量%以上、より好ましくは20重量%以上、及び最も好ましくは25重量%以上である。その粒子中の活性剤の濃度は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更により好ましくは50重量%以下、及び最も好ましくは45重量%以下である。
【0058】
本発明のカプセル化された活性剤は、急速活性化時間を示す。「急速活性化時間」は、ゲル化開始により示されるごとき、硬化反応が開始するに要する時間を意味する。この時間は、前記組成物をカプセル化された活性剤に活性剤を放出させる手段、例えば熱源に曝した時から顕著なゲル化が起こる時までにより計測される。カプセル化された活性剤は、カプセル化されてない活性剤の活性化時間に近い活性化時間を示す。このように、活性剤のカプセル化により、硬化性組成物の活性を有意なほど遅速化させない。好ましい実施形態において、カプセル化された活性剤を含む調剤は、活性化条件に曝した後、10分以下、より好ましくは5分以下、又最も好ましくは5分以下で硬化し始める。
【0059】
本発明のカプセル化された活性剤は、活性物質の規制された放出が必要とされるいかなる環境においても使用することができる。カプセル化された活性剤は、反応性成分及び他の補助剤の調剤に混入できる。反応を活性化させるために、その調剤は、活性剤を放出する条件に曝される。そのような条件とは、カプセル化物質が溶融するか、又は活性剤がカプセル化剤を透過できるに必要な温度に曝すことである。その他に、その条件とは、せん断を与え、又は超音波に曝して、カプセル化物質に活性物質を放出させることである。本発明のカプセル化された活性剤は、接着剤及びコーティング剤において使用することができる。
【0060】
本発明のカプセル化された活性剤は、硬化調剤において優れた安定性を示す。カプセル化された活性剤を含有する調剤は、好ましくは周囲条件(23℃、及び50%相対湿度)に曝されて3日を超す期間、より好ましくは5日以上の期間、安定性を示す。「安定性」は、その組成物が完全に硬化されないことを意味し、又好ましくはその組成物が粘度増加によって証明されるごとき有意な架橋を受けないことを意味する。
【0061】
下記の実施例は、説明することのみを目的として包含されるものであって、特許請求の範囲を限定するものではない。他に明記しない場合、パーセンテージは重量で示される。
【0062】
(実施例1)
22ポリアクリレートホモポリマー(Landec Corporation Menlo Park Californiaから入手可能)(800g)を加熱して溶融し(融点>70℃)、Neostann(商標)U−220ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)(200g)を添加した。そのスズ触媒は、溶融ポリマー中に溶解可能であって、又その溶液を130℃に加熱した。ポリアクリレート中のスズ触媒の溶液を、132g/分の速度で、125℃に加熱され、かつ15,000rpmの速度で回転する回転盤表面上にポンプにより注下した。溶融溶液は、粒子を形成して、7〜8分間にわたって収集室内の周囲空気中に放出された。粒子は、床に載置されて、牛肉包装紙上に集められた。最終製品は、光学顕微鏡下で観察して20〜80ミクロンの範囲の粒子サイズを有する黄色粉状固体であった。
【0063】
(実施例2)
実施例1に記載したのと同じ方法により、C22アクリレートモノマー、及び1%アクリル酸(Landec Polymers Menlo Park Californiaから入手可能)ロットNo.10011(800g)のコポリマーを加熱して溶融し(融点>70℃)、Neostann(商標)U−220ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)(200g)を添加した。再び、そのスズ触媒は、溶融ポリマー中に溶解可能であって、又その溶液を155℃に加熱した。ポリアクリレート中のスズ触媒の溶液を、132g/分の速度で、159℃に加熱された回転盤表面上にポンプにより注下した。溶融溶液は、粒子を形成して、7分間にわたって収集室内の周囲空気中に放出された。粒子は、床に載置されて、牛肉包装紙上に集められた。最終製品は、光学顕微鏡下で観察して20〜80ミクロンの範囲の粒子サイズを有するベージュの粉状固体であった。
【0064】
カプセル化されたスズ触媒は、モデルシリコーン室温架橋性調剤として調整し、安定性及び反応性が評価した。
調剤1
5.0g Kaneka S−303H メトキシシリル末端ポリプロピレンオキシ ドべースのポリエーテル
2.0g Palatinol 711P 混合線状アルキルフタレート可塑剤
0.175g 実施例1に記載されとおりに製造されたカプセル化されたNeostan n U−220 スズ触媒
【0065】
比較調剤1
5.0g Kaneka S−303H メトキシシリル末端ポリプロピレンオキシ ドべースのポリエーテル
2.0g Palatinol 711P 混合線状アルキルフタレート可塑剤
0.035g Neostann U−220 スズ触媒(カプセル化されてない)
【0066】
室温条件で、調剤1は、ゲル化しないで16〜17日の貯蔵安定性を有した。しかしながら、比較調剤1は、数時間以内にゲル化する。17日間貯蔵し、調剤1を100℃に設定したホットプレート上で2.5分間加熱すると、硬化が開始して、数時間(一晩)以内にゲル化が起こる。
【0067】
(実施例3〜35)
いくつかのカプセル化された活性剤を種種のカプセル化剤及び触媒物質から製造した。カプセル化剤の触媒物質を下記に列挙する。表1中に、作製されたカプセル化された活性物質、配合量、粒子サイズ、及び工程温度のリストを示す。この粒子の製造方法は、実施例1に記載されたとおりである。
【0068】
カプセル化物質
A.分子量8,000のポリ(エチレングリコール)
B.分子量5,000メトキシポリ(エチレングリコール)95重量%、及び
分子量100,000のポリ(エチレンオキシド)5重量%の混合物
C.分子量5,000メトキシポリ(エチレングリコール)98重量%、及びMona mide S2重量%の混合物
D.分子量8,000ポリ(エチレングリコール)95重量%、及びポリ(エチレンオ キシド)5重量%の混合物
E.Polywax ポリエチレンワックス
Landec Polymers Fから入手可能のC22側鎖結晶性ポリアクリレートホモポリマー。1%のカルボキシル含有アクリレート基を含有するC22側鎖結晶性ポリアクリレート。
触媒
A.Neostann(商標)U−220ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)
B.ジブチルスズビス(2−エチルヘキサノアート)
C.ジブチルスズオキシド
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例36、並びに比較例A及びB)
本発明のカプセル化された触媒を、国際特許公開第98/11168号公報の開示内容に基づいて製造したカプセル化された触媒と比較するために、3つの調剤を作製した。モデル調剤1は、テストのための基礎として使用した。試料を樹脂と可塑剤が均一になるまで手で混合し、カプセルを十分分散させた。カプセル化剤は、重量平均分子量12,000、及び数平均分子量7,000を有するC22側鎖ポリアクリレートポリマーである。その触媒は、ニットーデンコー製のNeostann U−220(商標)として販売されているジブチルスズアセチルアセトナートである。粒子は、カプセル化剤80重量%、及び触媒20重量%を含んでいた。カプセル化されたスズ粒子の理論的スズ含量は、5.5重量%であった。実施例36では、実施例1に記載されたとおりの方法によりカプセル化された触媒を製造した。比較例Aでは、国際特許公開第98/11166号公報(実施例1及び4参照)に記載されたとおりの方法によりカプセル化された触媒を製造した。比較例Bでは、スプレードライ工程により、カプセル化された触媒を製造した。
【0071】
各試料ついて、触媒のスズ含量、反応性、安定性、及び抽出性をテストした。下記の手順が用いられた。
【0072】
元素スズの分析は、中性子活性化法により実施した。試料と標準体を中性子界で照射して、対象の元素の放射性同位元素を創る。これらの放射性同位元素は、ガンマ線放射により活性化された元素の性質を失う。スズの場合、2つの同位元素が、160KeVと332KeVのエネルギーを有する2つのガンマ線を放射する。これら2つの同位元素の半減期は、それぞれ40.1及び9.6分である。ある崩壊期に従って、各試料及び標準体からのガンマ線放射スペクトルを高純度ゲルマニウム検知器により計測する。放射性同位元素の崩壊の補正後に、対象(即ち、160KeV及び332KeV)のガンマ線のピーク領域を既知濃度の標準体のピーク領域と対比する。その後、ピーク領域の比を利用して、試料中の対象元素の濃度を計算する。
【0073】
各試料の既知の量を2−ドラムのポリエチレンバイアル中に充填し、高純度グラファイト中に分散させ、その後、密封する。既知の量を2−ドラムのバイアルに装填し、標準体を高純度の水で適切な容積に希釈し、その後、製造した標準体の入ったバイアルを密封する。その後、試料及び標準体に原子炉の「Lazy Susan」装置中で、10キロワットのパワーレベルで10分間放射線照射する。10分間の崩壊に続いて、コンピューターベースのマルチチャンネル分析器を利用する2つの高純度ゲルマニウム検知器を用いて、400秒間それぞれのガンマ線放射スペクトルを取得する。Canberraソフトウェアー及び標準体比較技術を利用することにより、濃度を計算する。それに続く核反応を利用して、触媒試料中のスズの定量分析を行った。:
122Sn(n,*123mSn;T1/2=40.1分;**エネルギー;160KeV;124Sn(n,**132mSn;T1/2=9.6分;*エネルギー:332KeV
【0074】
粒子サイズは、ホリバLA910レーザー散乱粒子サイズ分析器を使用して決定した。試料は、0.1%Aerosol OT 100を用いてIsopar G中にカプセルを分散することにより製造した。
【0075】
又、試料の粒子サイズは、光オブスキュレーションに基づく粒子サイズ分析器を用いて分析した。その装置は、ClimetCl−1000シグナルプロセッサー、及びRLV2−100EH、又はRLV5−250EHセンサーのいずれかを有する。ほぼ0.15グラムの物質を採り、25mlバイアル中に入れる。;イソプロパノール中の1%TritonX−100を3〜5ml乾燥粒子に加えて、粒子を湿らせた。その後、この分散液は、約30秒間超音波処理をして、全ての凝集を破壊した。その後、水約20mlを、分散液を更に希釈するために添加した。この分散液を、大きい粒子を取り除くために250ミクロン(60メッシュ)シーブを通した。このシーブを通過した希釈分散液約0.1mlを水約225mlに加えた。この最終的な分散液は、光オブスキュレーションに基づく粒子サイズ分析器(センサー付ClimetCl−100)に供給された。ポリスチレン球体の単分散試料を解析することにより、測定精度を評価した。
【0076】
反応性を研究するために、ほぼ2〜2.5gの調剤試料を1.4gのアルミニウム秤量皿に注ぐ。その皿を100℃に加熱したホットプレート上に2.5分間置くことにより、カプセルの活性化を完了する。その後、試料は、周囲条件で研究室の作業台上に保存し、ゲル化を監視する。活性化後にゲルを形成する時間を記録する。
【0077】
安定性を研究するためにほぼ2〜2.5gの調剤試料を1.4gのアルミニウム秤量皿に注ぐ。試料を29.4℃(85°F)に設定したオーブン中に置いた。ゲルを形成する時間を記録する。
【0078】
抽出研究を実施するための処方は、カプセル10重量部、及びヘプタン90重量部である。カプセルとヘプタンをエーレンマイヤーフラスコ中に添加した。カプセルの分散液を、磁気攪拌棒を具備するキャップしたフラスコ中で室温において30分間混合した。No.1ワットマン濾紙のディスクを有するブフナー漏斗で試料をろ過し、乾燥し、スズを分析した。
【0079】
表2に、各試料に対する元素スズの分析結果を示す。
【表2】

【0080】
表3に、上記のとおりの光オブスキュレーションベースの粒子サイズ分析法により決定したカプセルの粒子サイズをまとめる。
【表3】

【0081】
比較例A(エアミルされたもの)、及び比較例B(スプレードライされたもの)は、250mm篩上に保持される相当量の粒子を有した。特に、比較例Bは、非常に大きな粒子が存在した。回転盤法により製造された実施例36は、他の2つの比較例のものに比べてより狭い粒子サイズ分布を有した。総合的に、回転盤の試料は、250ミクロンを超える粒子サイズのフラクションが非常に少なかった。
【0082】
使用された比較例のカプセル化された触媒の粒子サイズも、0.1%Aerosol OT 100を用いてIsopar G中に粉体を分散することにより、ホリバLA910レーザー散乱粒子サイズ分析器を使用して決定した。その結果を表4まとめる。
【0083】
【表4】

【0084】
表5は、カプセル化された触媒の反応性及び安定性に関する性能比較を示す。
【0085】
【表5】

【0086】
結果の比較により、回転盤法により形成した実施例36の触媒は、エアミル法(比較例A)又はスプレードライング(比較例B)により製造したそれぞれの試料に比べて、明らかにより優れた安定性、及び反応性を有していることを示す。
【0087】
表6に抽出研究の結果を示す。
【表6】

【0088】
ヘプタンは、NeostannU−220スズ触媒の良溶剤である。しかしながら、周囲温度においてIntelimer8065側鎖結晶性アクリレートポリマーの貧溶剤である。従って、ヘプタンでカプセルを洗浄すると、カプセル表面上に残るスズ触媒を除去するか、又はカプセル内部からスズを抽出することが考えられる。これに基づくと、これらのテスト結果と調剤の安定性との間には、相関関係があると考えられる。最高の安定性(21日超)は、損失スズが最も低い濃度でもある実施例36(回転盤)の試料において得られる。これらの結果は、実施例36(回転盤)によるカプセルの製造方法が、比較例A又はB(エアミル又はスプレードライ法)による製造方法に比べて優れていることを示している。
【0089】
実施例36(回転盤)の試料が、250ミクロンより大きな粒子のフラクションがより少なくて、その粒子サイズ分布がより狭くなった。この一連の実験において、反応性は、実施例36(回転盤)の試料がより大きく、硬化がホットプレート上で行われた。比較例A(エアミルされた)試料は、実施例36(回転盤)の試料に近づく反応性を有した。比較例B(スプレードライされた)試料は、より低い反応性を有した。回転盤により製造された実施例36の試料の安定性は、比較例A(エアミルされた)試料及び比較例B(スプレードライされた)試料のいずれよりも優れていた。比較例B(スプレードライされた)試料は、比較例A(エアミルされた)試料より優れた安定性を有した。安定性と反応性の組み合わせは、実施例36(回転盤)の試料が最高であり、反応性及び安定性の双方の研究において、比較例A(エアミルされた)試料、又は比較例B(スプレードライされた)試料のいずれの実績をも凌駕した。2つの比較例の実績は、それを作るために使用された2つの製造技術が、安定性と反応性との間の性能に関してトレードオフの関係を生ずることを示す。この相違は、粒子サイズに相関する。即ち、比較例B(スプレードライされた)によって製造された、より大きな粒子は、比較例A(エアミルされた)によって製造された粒子に比べて、より低い反応性とより高い安定性を有する。安定性と抽出性スズ触媒との間には相関がある。実施例36(回転盤)において得られた非常に低濃度の抽出性スズは、より大きな安定性と相関する。
【0090】
(実施例37、実施例38、及び比較例C〜J)
調合2による調剤を、実施例36、比較例A、及び比較例Bに記載された3つのカプセル化された触媒と共に調整し、又ニットーから入手可能のカプセル化されてないジブチルスズビスアセチルアセトナートNeostan(商標)U220と共に調整した。調合2は、KanekaS−303Hメトキシシリル末端ポリプロピレンオキシドベースのポリエーテル100重量部、混合されたアルキルフタレート可塑剤、Platinol(商標)711P可塑剤40重量部、及びカプセル化された触媒3.416重量部、又はカプセル化されてない触媒0.5重量部を含む。加えて、同じ4つの触媒系を、調合3でテストした。調合3は、KanekaS−303Hメトキシシリル末端ポリプロピレンオキシドベースのポリエーテル99重量部、水1重量部、及びカプセル化された触媒3重量部、又はカプセル化されてない触媒0.6重慮部を含む。調剤は、下記の手順によりテストした。試料の調剤7グラムを100℃に設定したホットプレート上で2.5分間加熱し、調剤がゲル化するまでの時間を記録した。試料のタックフリー時間を確認し、記録した。調剤が硬化するまでの時間を確認し、記録した。各調剤7グラムを29.4℃(85°F)に曝して、ゲルが形成するまでの時間を記録する。その結果を表7にまとめる。
【0091】
【表7】

【0092】
又、表6中に記載した調剤を下記のテストに供した。調剤が50,000mPa・s(50,000センチポイズ)に達する時間を、スピンドルNo.4付フルックフィールド粘度計モデルLVTを用いて25℃で計測した。短時間の間は、試料を連続的に計測し、長時間の間は、試料をスポットでテストした。アルミニウム皿中の10グラムの試料を25℃でゲル化時間をテストした。ゲル化時間は、試料がへらで触っても、へらが乾燥したままであるまでの時間により決定した。タックフリー時間は、試料がもはや表面タック(粘着)を有しないで、乾燥した表面の感触を有するまでの時間であった。硬化時間は、25℃で、ショアーAジュロメーターにより計測して、最大熱硬化性の90%に達する時間により決定した。この結果を表8にまとめる。
【0093】
【表8】

本願発明に関連する発明の実施形態について以下に列挙する。
[実施形態1]結晶性又は熱可塑性ポリマー中に分散された活性剤を含むカプセル化された活性剤であって、そのカプセル化された活性剤の粒子サイズが3000ミクロン以下であり、その活性剤が粒子形成後の最初の抽出の間に周囲条件下にその粒子から実質的に抽出されない、カプセル化された活性剤。
[実施形態2]粒子中の活性剤重量に基づいて10重量%以下の活性剤が粒子形成後の最初の抽出の間に周囲条件下にその粒子から抽出される、実施形態1に記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態3]粒子が粒子の表面又はその表面近くに殻層を有する、実施形態1又は2に記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態4]殻層が有効量の活性剤を含まない、実施形態1〜3のいずれかに記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態5]粒子が粒子の表面又は、その表面近くに殻層を有し、又その殻層によって囲まれた粒子の内部を有し、その殻層は、内部の結晶構造とは異なる結晶構造を有する、実施形態1〜4のいずれかに記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態6]結晶性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリ乳酸、フェノキシ熱可塑性樹脂、ポリアミド、又は側鎖結晶性ポリマーである、実施形態1〜5のいずれかに記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態7]結晶性ポリマーがアルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのポリマー又はコポリマーを含む側鎖結晶性ポリマーであり、そのポリマーは置換された又は置換されない6〜50個の炭素原子の側鎖を有する、実施形態1〜6のいずれかに記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態8]ポリマー又はコポリマーがC22側鎖アルキルアクリレートを含む、実施形態1〜7のいずれかに記載のカプセル化された活性剤。
[実施形態9]実施形態1〜8のいずれかに記載のカプセル化された活性剤の製造方法であって、
a)活性剤と結晶性又は熱可塑性ポリマーとを接触させる工程(ここで、接触条件下でポリマーは溶融状態であり、活性剤は揮発しない。)、
b)3000ミクロン以下の粒子を形成する工程、及び
c)その粒子の表面及び表面近くの一部が、形成される粒子が粒子の表面及び表面近くで異なった結晶構造を有するように急速固化する条件に、その粒子を曝露する工程、
を含む、カプセル化された活性剤の製造方法。
[実施形態10]実施形態1〜8のいずれかに記載のカプセル化された活性剤の製造方法であって、
結晶性又は熱可塑性ポリマーが溶融する条件下でそのポリマーを加熱する工程、
活性剤をその溶融ポリマーに接触させて、ポリマー中に活性剤を分散又は溶解させる工程、
ポリマー中に分散又は溶解された活性剤を、ポリマー中の活性剤の粒子が形成され、回転盤から放出され、固化するように回転盤上に注ぐ工程、(ここで、活性剤はこの工程条件下で揮発しない。)
を含む、カプセル化された活性剤の製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物の硬化に用いられる、結晶性ポリマーとその結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤を含む粒子の製造方法であって、アルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーである側鎖結晶性ポリマーからなる群から選択される結晶性ポリマーであって、12〜50個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又はパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含む結晶性ポリマーを加熱して、前記結晶性ポリマーを溶融する工程、触媒、硬化剤、促進剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される前記活性剤と前記溶融された結晶性ポリマーとを、前記活性剤が揮発しない温度条件下であって、また、前記活性剤が前記溶融された結晶性ポリマーに分散又は溶解する温度条件下で接触させて、前記結晶性ポリマー中に活性剤を分散又は溶解させて溶融混合物を形成する工程、その溶融混合物を回転盤上に注いで、その溶融混合物を回転盤上に放出し、回転盤上で急速に固化させて、前記結晶性ポリマーと前記結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤粒子を含む粒子を形成する工程を含み、この粒子形成工程により、前記粒子は、3000ミクロン以下の粒子サイズを有し、又、殻層及びその殻層により取り囲まれた粒子の内部を有する粒子を形成しており、これにより、粒子形成後の最初の抽出の間で、前記粒子が周囲条件下に前記活性剤の溶媒または可塑化剤により処理されたときに、形成された粒子から1重量%以下の活性剤が抽出される、カプセル化された活性剤を含む粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1の方法により製造された、硬化性組成物の硬化に用いられる、結晶性ポリマーとその結晶性ポリマー中にカプセル化された活性剤を含む粒子であって、前記結晶性ポリマーは、アルキルアクリレート又はアルキルメタアクリレートのホモポリマー又はコポリマーである側鎖結晶性ポリマーからなる群から選択され、又、12〜50個の炭素原子を含む線状ポリメチレン部分、又はパーフッ素化された6〜50個の炭素原子を含むポリメチレン部分を含む側鎖を含む結晶性ポリマーであり、又、前記活性剤は、触媒、硬化剤、促進剤、及びそれらの混合物からなる群から選択され、製造された粒子は、殻層及びその殻層により取り囲まれた粒子の内部を有し、又、3000ミクロン以下の粒子サイズを有しており、ここで、前記粒子は、粒子形成後の最初の抽出の間で、前記粒子が周囲条件下に前記活性剤の溶媒または可塑化剤により処理されたときに、形成された粒子から1重量%以下の活性剤が抽出される、カプセル化された活性剤を含む粒子。

【公開番号】特開2011−72999(P2011−72999A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262560(P2010−262560)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2000−545641(P2000−545641)の分割
【原出願日】平成11年4月27日(1999.4.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】