説明

カプセル化粒子

カプセル化粒子は、コア粒子を含む。コア粒子が、窒素、ホスファート、カリ、イオウ及びこれらの組合せから選択される肥料を含む。コア粒子は、除草剤、殺虫剤及び殺菌剤を含んでも良い。カプセル化粒子はまた、コア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層を含む。ポリウレタン層は、芳香族イソシアナート成分と芳香族イソシアナート成分と反応性のポリオールとの反応生成物を含む。芳香族イソシアナート成分は、メチレンジフェニルジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、及びこれらの混合物を含む。芳香族イソシアナート成分と反応性のポリオールは、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導され、トルエンジアミンを含む。芳香族イソシアナート成分とポリオールの芳香族性により、芳香族イソシアナートとポリオールとの間の完全な相溶性が得られ、これによりポリウレタン層への水の浸透及びコア粒子の溶解を防止して欠陥のないポリウレタン層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にカプセル化粒子に関する。さらに、本発明は、コア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層を含む、放出制御肥料として使用されるカプセル化粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
放出制御肥料として使用されるカプセル化粒子は、当該技術分野で公知である。詳細には、カプセル化粒子はコア粒子の周囲に配置された層を含んでいる。さらに詳細には、コア粒子の周囲に配置された層はポリウレタン層を包含する。ポリウレタン層の厚さ及び外側完全性は、コア粒子が水及び水分を含む土壌に溶解する速度を制限している。
【0003】
さらに詳細には、従来のカプセル化粒子は、(種々の)肥料粒子から選択されるコア粒子を含んでいる。従来のカプセル化粒子を用いる不利としては、ポリウレタン層の外側完全性と厚さにおいて連続性の無い点にあり、そしてこれによりコア粒子が土壌に溶解する速度が極めて速くなる。従来技術で知られているように、コア粒子が土壌に溶解する速度が極めて速いことは、薬害をもたらす。従来のカプセル化粒子を使用することによりさらなる不利として、コア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層の厚さを有効にカスタマイズすることができないこと、及びひまし油等の高価で腐敗しやすい工業用成分が必要であることが挙げられる。ひまし油は、ポリウレタン層の製造に利用され、イソシアナートと反応してポリウレタン層を形成するポリオールとして機能する。
【0004】
特に、ひまし油は、予測できない市場価格の変動及び予測できない品質管理の影響下にある。さらに、ひまし油は腐敗しやすく、長期の保存及びカプセル化粒子の大量生産における使用に適していない。さらにまた、ひまし油は、脂質構造に2重結合を含んでおり、脂質酸化を受ける傾向にある。脂質酸化は、ひまし油の2重結合が酸素と反応して過酸化物を形成した時に発生し、ひまし油の化学的性質を変化させる。最後に、ひまし油は芳香族でない。芳香族イソシアナートと反応してポリウレタン層を形成するポリオールとして機能させる場合、ひまし油は、芳香族性の欠如のため芳香族イソシアナートと完全には相溶しないので、この使用には適当でない。
【0005】
最も重要なこととして、従来のカプセル化粒子の第1の不利は、欠陥のあるポリウレタン層を形成する傾向があることである。ポリウレタン層の欠陥は、イソシアナートと、イソシアナートと反応してポリウレタン層を形成するポリオールとの間の不完全な相溶性(混和性)に原因がある。例えば、有機の非芳香族ポリオールを芳香族イソシアナートと混合すると、相溶性は完全ではない場合がある。正確に言えば、有機の非芳香族ポリオールは、芳香族イソシアナートと、その界面でのみ反応するであろう。
【0006】
続いて、芳香族イソシアナートと非芳香族ポリオールとの間の不完全な相溶性により、穴及び凹部等の欠陥を有するポリウレタン層がもたらされる。欠陥を有するポリウレタン層をコア粒子の周囲に配置すると、穴及び凹部により、水及び他の液体がポリウレタン層に浸透し、コア粒子を急速に溶解させる。この欠陥を修復するために、コア層の周囲に多重のポリウレタン層を配置しなければならず、このような方法は時間がかかり、高価なものとなる。
【0007】
多くの異なる層をコア粒子の周囲に配置することができる。Hudsonの米国特許番号第5538531(特許文献1)では、複数の、水に不溶性の耐摩耗性層が、放出制御肥料を含むコア粒子の周囲に配置される。第1の層はコア粒子の周囲に配置され、芳香族イソシアナートと芳香族イソシアナートと反応する非芳香族ポリオールとの反応生成物から誘導されるポリウレタンを含んでいる。第2の層は、有機ワックスから形成され、第1の層の周囲に配置され、そして第1の層の欠陥を被覆し、水、その他の液体が第1の層に浸透すること、及びコア粒子が急速に溶解することを防止している。この特許文献1は、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールの使用については開示していない。
【0008】
同様に、Geigerの米国特許番号第6663686(特許文献2)、及びWynnykの米国特許公開番号第2004/0020254(特許文献3)及び第2004/0016276(特許文献4)(全てアルバータ州カルガリーのAgrium(登録商標)Inc.が譲受人)にもまた、コア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層が開示されている。特許文献2及び特許文献3及び4には、ジフェニルメタンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート及びこれらの混合物を含む芳香族イソシアナートの使用が開示されている。さらに、特許文献2及び特許文献3及び4には、ひまし油及び水添ひまし油を含む非芳香族ポリオールの使用が開示されている。特許文献2にも特許文献3及び4にも、まだ、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールの使用について開示されていない。
【0009】
特許文献2及び特許文献3及び4に開示された放出制御肥料、これらだけが従来技術ではない。Katoの米国特許番号第3475154(特許文献5)には、被覆ペレットの周囲に配置されたポリマー層が開示されている。ポリマー層としては、ポリオール及びポリアミンの形態の活性水素と芳香族イソシアナートとの反応生成物が挙げられている。特許文献5は、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールの使用について開示していない。
【0010】
最後に、Hansenの米国特許番号第3264089(特許文献6)及びMooreの米国特許番号第4711659(特許文献7)では、コア粒子の周囲に配置された複数のポリウレタン層が開示されている。ポリウレタン層は、芳香族イソシアナートとポリオールとの反応生成物を含んでいる。特許文献6及び特許文献7の両方において、芳香族イソシアナートは、ジフェニルメタンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート及びこれらの混合物を含んでいる。特許文献6にも特許文献7では、ポリオールは、ポリエーテルジオール及びポリオールを含んでいる。さらに、特許文献7において、ポリオールは、アミン末端基との反応を包含している。特許文献6にも特許文献7にも、まだ、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールの使用について開示されていない。詳細には、特許文献7には、アミン末端基と反応したポリオールは、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールと同じではない。即ち、特許文献7には、アミン末端基を含むポリオールは、芳香族ではなく、このため芳香族イソシアナートと完全には相溶しない。反対に、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールはアルキル基で終結し、アミン基で終結しない。さらに、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールは、アルキル鎖の先頭にアミン官能価を含んでいる。このため、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールは、芳香族イソシアナートと十分に相溶し、特許文献6及び特許文献7に開示されたポリオールとは異なる。
【0011】
【特許文献1】米国特許番号第5538531
【特許文献2】米国特許番号第6663686
【特許文献3】米国特許公開番号第2004/0020254
【特許文献4】米国特許公開番号第2004/0016276
【特許文献5】米国特許番号第3475154
【特許文献6】米国特許番号第3264089
【特許文献7】米国特許番号第4711659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、カプセル化粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
カプセル化粒子は、コア粒子とポリウレタン層を含む。ポリウレタン層は、コア粒子の周囲に配置され、イソシアナート成分とポリオールの反応生成物を含む。ポリオールは、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導される。芳香族アミンを基礎とする開始剤が、下記式:
【0014】
【化1】

【0015】
[但し、R1がアルキル基、アミン基及び水素の内のいずれか1個を表し、そして
2−R6がそれぞれ独立してアミン基及び水素のいずれか1個を表し、且つR1−R6の少なくとも1個はアミン基を表す。]
を有する。
【0016】
芳香族アミンを基礎とする開始剤により、イソシアナート成分と完全に相溶(混和)するポリオールが得られる。イソシアナート成分と芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオールとが完全に相溶することから、2つの基本的な効果が得られる。第一に、完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分との類似の部分の間に一瞬に引き起こされる双極子を作り出すロンドン力(London Forces)のよるものである。一瞬に引き起こされる双極子は、イソシアナート成分とポリオールの効率的混合を可能にする。第二に、完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分の補完的な積み重ねを可能にする、ポリオールとイソシアナート成分とにおける芳香族成分の平坦な形状によっている。ポリオールとイソシアナート成分の補完的な積み重ねは、また、イソシアナート成分とポリオールの効率的混合を可能にする。
【0017】
イソシアナート成分と、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオールとの完全な相溶性により、多数の利点がもたらされる。完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分をコア粒子に施す(塗布する)ための様々な技術の使用を可能にする。その技術としては、パン・コーティング(pan coating)、流動床・コーティング、共押出、噴霧及び回転盤(spinning disk)カプセル化を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。商用施工(塗布)において、これらの技術のそれぞれの実施者に、本発明の利点がもたらされる。
【0018】
例えば、ポリオール及びイソシアナート成分をコア粒子に噴霧することにより、均一で、完全な、欠陥のないポリウレタン層がコア粒子の周囲に配置される。噴霧はまた、より薄く、高価でないポリウレタン層がコア粒子の周囲に配置することができる。さらにまた、ポリオールは貯蔵安定性(shelfstable)を有し、これによりより有利な貯蔵、続く使用法を可能にしている。
【0019】
コア粒子の周囲に配置される、均一で、完全で欠陥のないポリウレタン層は、土壌中で、コア粒子のゆっくりとして制御された溶解を可能にし、またポリウレタン層の欠陥を覆うためにポリウレタン層の周囲に第二の層を配置するような負担がない。コア粒子の周囲に配置されるポリウレタン層に欠陥がないので、水及び他の液体がポリウレタン層に浸透することは不可能であり、またコア粒子を急速に溶解させることもできないので、薬害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に従うカプセル化粒子は、コア粒子を含んでいる。コア粒子は、窒素、ホスファート、カリ(カリウム、炭酸カリウム、カリウム塩の総称)、イオウ及びこれらの組合せから選択される肥料を含んでいることが好ましい。特に好ましい肥料は、窒素を基礎とする、アルバータ州カルガリーのAgrium(登録商標)Inc.製の商品名:ESN(登録商標)放出制御窒素(ESNR Controlled Release Nitrogen)である。例えば、窒素を基礎とする肥料としては、無水アンモニア、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸尿素アンモニウム、硝酸カルシウムアンモニウム、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ホスファートを基礎とする肥料としては、リン酸、リン酸モノアンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸硫酸アンモニウム及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。カリを基礎とする肥料としては、カリ(カリウム、炭酸カリウム、カリウム塩の総称)、硝酸アンモニウム、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。イオウを基礎とする肥料としては、硫酸アンモニウム及び硫酸、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
コア粒子の代替形態、即ち肥料でないコア粒子も使用することができると理解すべきである。このようなコア粒子の代替形態の例としては、除草剤、殺虫剤及び殺菌剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
カプセル化粒子は、さらにポリウレタン層を含んでいる。ポリウレタン層はコア粒子の周囲に配置される。専門用語「周囲に配置される(disposed about)」は、ポリウレタン層によりコア粒子を部分的及び完全に覆っていることにおける両方(部分的及び完全に)の意味を包含するものである。ポリウレタン層は、イソシアナート成分と、イソシアナート成分と反応性を有するポリオールとの反応生成物を含む。イソシアナート成分は芳香族イソシアナート成分を含んでいる。イソシアナート成分は、メチレンジフェニルジイソシアナートのモノマー及びポリマー、トルエンジイソシアナートのモノマー及びポリマー、及びこれらの混合物であることが好ましい。イソシアナート成分は、BASF・コーポレーション(ミシガン州、ワイアンドット)製の商品名:Lupranate(登録商標)M20Sとして市販されているものが特に好ましい。
【0023】
Lupranate(登録商標)M20S等のメチレンジフェニルジイソシアナートのポリマーは、高い架橋密度及び適度な粘度を示す。或いは、Lupranate(登録商標)M Isocyanate等のメチレンジフェニルジイソシアナートのモノマーは、低い粘度及び高いNCO含有量、そして低い名目(nominal)官能価を示す(名目とは、一般に理論上又は計算上を意味する)。同様に、Lupranate(登録商標)TDI等のトルエンジイソシアナートは、低い粘度及び高いNCO含有量、そして低い名目官能価を示す。当該熟練技術者は、経済性、適用性に基づいて、適当なイソシアナート成分を選択することができるはずである。
【0024】
芳香族イソシアナート成分の粘度は、25℃において1〜3000センチポイズ、さらに20〜700センチポイズ、とりわけ50〜300センチポイズであることが好ましい。芳香族イソシアナート成分の名目官能価は、1〜5、さらに1.5〜4、とりわけ2.0〜2.7であることが好ましい。芳香族イソシアナート成分のNCO含有量が、20〜50%、さらに25〜40%、とりわけ30〜33%であることが好ましい。
【0025】
上述の芳香族イソシアナート成分の粘度、名目官能価、及びNCO含有量が、それぞれ芳香族に特定の性質を与えているので好ましい。例えば、芳香族イソシアナート成分の最も好ましい粘度は、25℃において50〜300センチポイズであり、これにより芳香族イソシアナートをコア粒子に噴霧することができる。芳香族イソシアナートの最も好ましい名目官能価は、2.0〜2.7であり、これにより芳香族イソシアナートとポリオールとの反応の効率化及びコスト効率化を可能にする。最後に、芳香族イソシアナート成分の最も好ましいNCO含有量は、30〜33%である。このNCO含有量は、欠陥のないポリウレタン層の形成に有効な、芳香族イソシアナートの高い分子架橋密度を与える。またこのNCO含有量は、芳香族イソシアナートに単位質量当たりにより多くの化学結合を付与するので、コスト効率を改善する。
【0026】
芳香族イソシアナート成分に加えて、ポリウレタン層はまた、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオールの反応生成物である。ポリオールはアルキレンオキシド置換基を含んでいる。適当なアルキレンオキシド置換基の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、これらの混合物、アルキレンオキシド−テトラヒドロフラン混合物、エピハロヒドリン、及びアリールアルキレンスチレンを挙げることができる。最も好ましいポリオールは、BASF・コーポレーション(ミシガン州、ワイアンドット)製の商品名:Pluracol(登録商標)Polyol 824として市販されている。
【0027】
ポリオールの粘度は、25℃において、4000〜20000、さらに5000〜17000センチポイズ、とりわけ10000〜15000センチポイズであることが好ましい。効率を最大にするために、ポリオールは、貯蔵し、60〜80℃の温度に加熱することができる。ポリオールはまた、1〜7、さらに2〜6、とりわけ3〜4の名目官能価を有することが好ましい。ポリオールはまた、300〜600、さらに350〜500、とりわけ380〜450のOH価を有することが好ましい。さらに、ポリオールは、ジプロピレングリコール開始剤から誘導されていても良い。換言すれば、ポリオールはジプロピレングリコールで共開始されても良い。
【0028】
上述のポリオールの粘度、名目官能価、及びOH価が、それぞれポリオールに特定の性質を与えているので好ましい。例えば、ポリオールの最も好ましい粘度は、25℃において10000〜15000センチポイズであり、これによりポリオールをコア粒子に噴霧することができる。ポリオールの最も好ましい名目官能価は、3〜4であり、これによりポリオールと芳香族イソシアナートとの反応の効率化を可能にし及びポリオールのコストを低減する。最後に、ポリオールの最も好ましいOH価は、380〜450であり、これによりポリウレタン層の架橋密度を最大にする。
【0029】
上記のように、ポリオールは、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導される。芳香族アミンを基礎とする開始剤は、下記式:
【0030】
【化2】

【0031】
[但し、R1がアルキル基、アミン基及び水素の内のいずれか1個を表し、そして
2−R6がそれぞれ独立してアミン基及び水素のいずれか1個を表し、且つR1−R6の少なくとも1個はアミン基を表す。]
を有する。このため、R1はアルキル基、アミン基のいずれかの基を表すか、又は水素を表すことができ、或いはこれらの組合せを含む化合物であると、理解されるべきである。R2−R6は同一である必要はなく、それぞれアミン基又は水素を含むと理解されるべきである。また、技術用語「アミン基」は、明細書を通じて、R−NH又はNH2を表すと理解されるべきである。
【0032】
芳香族アミンを基礎とする開始剤はトルエンジアミンを含むが、これらに限定されない。トルエンジアミンの好ましい例として、下記の構造:
【0033】
【化3】

を挙げることができ、すなわち、トルエンジアミンとして、2,3−トルエンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,4−トルエンジアミン、3.5−トルエンジアミン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0034】
イソシアナート成分と芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールとの反応生成物は、反応生成物に着色するための顔料を含むことができる。顔料は、ポリウレタン層の完成度(完全性)を目視で評価することを可能にし、様々な市場の優位性をもたらす。
【0035】
芳香族アミンを基礎とする開始剤は、イソシアナート成分と完全に相溶するポリオールをもたらす。イソシアナート成分と、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオールとの完全な相溶性により、2つの基本的な効果が得られる。第一に、完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分との類似の部分の間に一瞬に引き起こされる双極子を作り出すロンドン力(London Forces)によるものである。一瞬に引き起こされる双極子は、イソシアナート成分とポリオールの効率的な混合を可能にする。第二に、完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分の補完的な積み重ねを可能にする、ポリオールとイソシアナート成分との芳香族成分の平坦な形状によっている。ポリオールとイソシアナート成分の補完的な積み重ねはまた、イソシアナート成分とポリオールの効率的な混合を可能にする。
【0036】
イソシアナート成分と芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオールとの完全な相溶性により、多数の利点がもたらされる。完全な相溶性は、ポリオールとイソシアナート成分をコア粒子に施す(塗布する)ための様々な技術の使用を可能にする。その技術としては、パン・コーティング、流動床・コーティング、共押出、噴霧及び回転盤(spinning disk)カプセル化を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。商用施工(塗布)において、これらの技術のそれぞれの実施者に、本発明の利点がもたらされる。
【0037】
例えば、ポリオール及びイソシアナート成分をコア粒子に噴霧することにより、均一で、完全な、欠陥のないポリウレタン層がコア粒子の周囲に配置される。噴霧はまた、より薄く、高価とならないポリウレタン層をコア粒子の周囲に配置させる。さらにまた、ポリオールは貯蔵安定性(shelfstable)を有し、これにより、より有利な貯蔵、続く使用法を可能にしている。
【0038】
以下の実施例により、本発明の性格を記述するが、本発明を限定するものではない。特に断らない限り、全ての部は質量部である。
【実施例】
【0039】
本発明のカプセル化粒子は、ビーカーで作製した。詳細には、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導された4gのポリオールを90℃に加熱し、100gの市販の尿素球体を含むビーカーに滴下し、ポリオール−尿素混合物を形成した。ポリオール−尿素混合物を、泡混合翼(foam mix blade)を用いて静かに撹拌し、尿素球体の周囲に芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールを確実に分布させた。予め90℃に加熱された5gの芳香族イソシアナートを、ポリオール−尿素混合物に添加し、手動で撹拌して、市販の尿素球体と、芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールと芳香族イソシアナートの反応混合物とを完全に接触させた完全に接触させることにより、ポリウレタン層を市販の尿素球体の周囲に配置させた。次いで、市販の尿素球体を、泡混合翼で撹拌して、凝集を最小化して、市販の尿素球体の自由流動集団を形成した。
【0040】
考えられる放出制御肥料を表すために使用された市販の尿素球体の周囲に配置されたポリウレタン層の3つの実施例を、以下の表1に示す。実施例1は、芳香族イソシアナート及び芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールを含む本発明を表し、比較例1及び2は従来技術に開示されたコア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層を作製する試みを記述している。比較例1は、芳香族イソシアナートとひまし油を含む非芳香族ポリオールとを使用している。同様に、比較例2は、芳香族イソシアナートとグリセリンを含む非芳香族ポリオールとを使用している。
【0041】
【表1】

【0042】
上記ポリウレタン層の実施例及び2つの比較例について、相溶性の測定、溶解時間の測定及び硬化時間の測定を行い、その結果を下記の表2に示す。実施例1は、芳香族イソシアナート及び芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールを含む本発明を表す。比較例1及び2は従来技術に開示されたコア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層を作製する試みを記述している。比較例1は、芳香族イソシアナートと、非芳香族で、芳香族イソシアナートと相溶しないひまし油とを使用している。このため、コア粒子の周囲に配置されたポリウレタン層は、欠陥を有し、水及び他の液体のポリウレタン層への浸透を許し、コア粒子を急速に溶解させる。さらに、ひまし油と芳香族イソシアナートとの非相溶性のため、ポリウレタン層の硬化時間が顕著に増大している。同様に、比較例2は、芳香族イソシアナートと、芳香族イソシアナートと完全には相溶しない非芳香族ポリオールとを使用しており、また、欠陥を有するポリウレタン層がもたらされる。加えて、芳香族イソシアナートと非芳香族ポリオールとの部分的相溶性は、ポリウレタン層の硬化時間を増大させている。最後に、尿素は、ポリウレタン層を含まないコア粒子の溶解時間を明らかにしている。
【0043】
【表2】

【0044】
ポリオールAは、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドを含む芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されたポリオールであり、390のヒドロキシル価、4の名目官能価、25℃における10500センチポイズの粘度を有する。ポリオールAは、BASF・コーポレーション(ミシガン州、ワイアンドット)製の商品名:Pluracol(登録商標)Polyol 824として市販されている。
【0045】
ポリオールBは、ひまし油であり、162のヒドロキシル価及び3の名目官能価を有する。
【0046】
ポリオールCは、グリセリン開始プロピレンオキシドのポリオールであり、399のヒドロキシル価、3の名目官能価、25℃における360センチポイズの粘度を有する。ポリオールCは、BASF・コーポレーション(ミシガン州、ワイアンドット)製の商品名:Pluracol(登録商標)Polyol GP430として市販されている。
【0047】
イソシアナートは、メチレンジフェニルジイソシアネートのポリマーで、約2.7の官能価、31.5のNCO含有量及び25℃における200センチポイズの粘度を有する。イソシアナートは、BASF・コーポレーション(ミシガン州、ワイアンドット)製の商品名:Lupranate(登録商標)M20Sとして市販されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.コア粒子;
B.該コア粒子の周囲に配置され、且つ下記の成分(i)及び(ii):
(i)イソシアナート成分、及び
(ii)芳香族アミンを基礎とする開始剤から誘導されるポリオール
の反応生成物を含むポリウレタン層;
を含むことを特徴とするカプセル化粒子。
【請求項2】
芳香族アミンを基礎とする開始剤が、下記式:
【化1】

[但し、R1がアルキル基、アミン基及び水素の内のいずれか1個を表し、そして
2−R6がそれぞれ独立してアミン基及び水素のいずれか1個を表し、且つR1−R6の少なくとも1個はアミン基を表す。]
を有する請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項3】
芳香族アミンを基礎とする開始剤が、トルエンジアミンを含む請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項4】
イソシアナート成分が、芳香族イソシアナート成分を含む請求項3に記載のカプセル化粒子。
【請求項5】
イソシアナート成分が、芳香族イソシアナート成分を含む請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項6】
イソシアナート成分が、メチレンジフェニルジイソシアナートを含む請求項5に記載のカプセル化粒子。
【請求項7】
イソシアナート成分が、トルエンジイソシアナートを含む請求項5に記載のカプセル化粒子。
【請求項8】
イソシアナート成分の粘度が、25℃において20〜700センチポイズである請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項9】
イソシアナート成分の名目官能価が、1.5〜4である請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項10】
イソシアナート成分のNCO含有量が、25〜40%である請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項11】
ポリオールの粘度が、25℃において5000〜17000センチポイズである請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項12】
ポリオールの名目官能価が、2〜6である請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項13】
ポリオールのOH価が、350〜500である請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項14】
ポリオールが、芳香族アミンを基礎とする開始剤とジプロピレングリコール開始剤とから誘導される請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項15】
ポリウレタン層が、ポリウレタン層を着色するための顔料を含む請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項16】
コア粒子が、窒素、ホスファート、カリ、イオウ及びこれらの組合せから選択される肥料を含む請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項17】
イソシアナート成分が、メチレンジフェニルジイソシアナートを含み、ポリオールがトルエンジアミンから誘導される請求項1に記載のカプセル化粒子。
【請求項18】
トルエンジアミンが下記式:
【化2】

で表される請求項17に記載のカプセル化粒子。

【公表番号】特表2008−500254(P2008−500254A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513736(P2007−513736)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005066
【国際公開番号】WO2005/118509
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】