説明

カプセル型内視鏡

【課題】液体と気体との境界面越しにある被検体内部位を撮像する際に光源像の映り込みを防止して、被検体部位を適正に観察することができるカプセル型内視鏡を提供する。
【解決手段】照明部42が、LED421からの照明光を拡散させる拡散板422をLED421からの照明光の出射方向に有することで、LED421からの照明光は拡散板422で拡散されて撮像視野を照明することとなり、液体と気体との境界面越しにある被検体内部位を撮像する際に光源像が境界面でそのまま反射されて撮像部41に映り込んでしまうことを防止でき、被検体部位を適正に観察できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に存在する流体中にあり、屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面越しにある被検体内画像を取得するカプセル型内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡の分野では、撮像機能と無線通信機能とが装備されたカプセル型内視鏡が登場している。このカプセル型内視鏡は、観察(検査)のために被検体(人体)である被検者の口から飲み込まれた後、被検者の生体から自然排出されるまでの観察期間、例えば食道、胃、小腸などの臓器の内部(体腔内)をその蠕動運動に伴って移動し、撮像機能を用いて順次撮像する構成を有する。
【0003】
ここで、カプセル型内視鏡の比重を周りの液体と同じ、あるいは水と同じ約1として、カプセル型内視鏡を液体とともに飲み込んで液体に浮揚させることでカプセル型内視鏡を体腔内で大腸まで速く進めるようにした大腸観察に適した技術が特許文献1に開示されている。また、カプセル型内視鏡が体腔壁面にくっつくと近いところしか観察できないのに対して、特許文献1によれば、カプセル型内視鏡を液体に浮揚させて観察することで観察視野を確保し、漏れなく観察できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、カプセル型内視鏡を単に液体表面に浮揚させているだけであり、例えば胃のような空間の広い臓器内の観察を行う場合には、発泡剤等を併用しないと、胃の伸展・拡張が不十分で萎んでしまうことにより、カプセル型内視鏡の観察に必要な空間を十分に確保できず、良好なる観察画像が得られない場合がある。これに対して、比重が所定の液体よりも大きくて該液体中を浮遊する構成とし、液体中から液体上方の気中にある被検体内画像を撮像することで、発泡剤等を用いることなく液体によって伸展した胃などの臓器内を観察できるようにしたカプセル型内視鏡が提案されている。
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/95351号パンフレット(特表2004−529718号公報)
【特許文献2】特開2003−260025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撮像手段と照明手段とを有するカプセル型内視鏡を用いて被検体内画像を取得して観察する際に、カプセル型内視鏡が水中にあり被写体が気中にある場合を考えると、撮像手段の撮像視野を照明するための光源は、撮像手段の撮像光学系と同一方向を向いているため、照明光が水面を境界面として反射してしまう。このため、気中の被写体を撮像する際に、照明光が光源像として明るく映り込んでしまい、観察の邪魔となってしまう。特に、照明光が水面で反射するときに最も明るい中心部分が輝点となって強く反射してしまい、撮像部位の撮影に支障を来たす。また、逆に、カプセル型内視鏡が落下中等において、気中から液中を観察する場合においても、液面を境界面として反射してしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体中から気体中の被検体内部位を撮像する際、或いは、逆の場合のように、屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面越しにある被検体画像を撮像する際に光源像の映り込みを防止して、被検体部位を適正に観察することができるカプセル型内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るカプセル型内視鏡は、被検体内に存在する流体中にあるカプセル型筐体と、該カプセル型筐体内に配設されて、屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面越しにある被検体内画像を取得する撮像手段と、前記カプセル型筐体内に配設されて照明光を出射する光源と、該光源からの照明光の出射方向に配設されて該光源からの照明光を拡散させる拡散手段とを有して前記撮像手段の撮像視野を照明する照明手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るカプセル型内視鏡は、上記発明において、前記拡散手段は、前記光源からの照明光を透過する透過部材からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るカプセル型内視鏡は、上記発明において、前記光源は、中心部から周辺部に向かって光強度が減少する光強度分布特性の照明光を出射し、前記拡散手段は、中心部から周辺部に向かって透過率が高くなる透過率分布特性を有して前記光源からの照明光の出射方向の中心に中心合わせして配設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るカプセル型内視鏡は、上記発明において、前記拡散手段は、前記光源からの照明光を反射する反射部材からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るカプセル型内視鏡は、上記発明において、前記反射部材は、中心部から周辺部に向かって反射率が高くなる反射率分布特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカプセル型内視鏡によれば、照明手段が、光源からの照明光を拡散させる拡散手段を光源からの照明光の出射方向に有するので、光源からの照明光は拡散手段で拡散されて撮像視野を照明することとなり、屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面越しにある被検体内画像を撮像する際に光源像が境界面でそのまま反射されて撮像手段に映り込んでしまうことを防止することができ、被検体部位を適正に観察することができるという効果を奏する。特に、中心部から周辺部に向かって光強度か減少する光強度分布特性の照明光を出射する通常の光源に対して、中心部から周辺部に向かって透過率が高くなる逆の透過率分布特性を有する透過部材からなる拡散手段を光源からの照明光の出射方向の中心に中心合わせして配設することで、光源の形が像として形成されることなく一様に撮像視野を照明することができ、被検体部位を適正に観察することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係るカプセル型内視鏡の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施が可能である。
【0015】
図1は、本発明に係るカプセル型内視鏡の好適な実施の形態を示す概略構成図であり、図2は、その撮像側先端付近を拡大して示す概略構成図である。本実施の形態のカプセル型内視鏡1は、被検体2の体腔内に導入可能なカプセル型筐体3と、このカプセル型筐体3内に配設されて前端方向の撮像が可能な撮像光学系4と、カプセル型内視鏡3内に配設された基板や回路構成部品や送信アンテナなどの回路系部5と、電池(バッテリ)6とを備える。
【0016】
カプセル型筐体3は、被検体2の口腔から体内に飲み込み可能な大きさのものであり,略半球状で透明性或いは透光性を有する先端カバー3aと、可視光が不透過な有色材質からなる有底筒形状の胴部カバー3bとを弾性的に嵌合させることで、内部を液密に封止する外装ケースを形成している。
【0017】
ここで、本実施の形態のカプセル型内視鏡1は、被検体2内において液体7と液体7の上方に存在する気体8との屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面7a越しにある被検体内画像を取得するものであるが、その一例として、被検体2内に導入された液体7中に浮遊して該液体7中から液体上方の気体8中にある被写体9、例えば胃の内壁を被検体内画像として取得するものであり、カプセル型筐体3は、その内蔵物を含めた比重が液体7に比べて大きくて液体7中に沈んだ状態で浮遊するように設定されている。液体7は、被検体2の口腔から飲用可能であって、カプセル型内視鏡1の撮像光学系4の波長に対して透明な液体であり、本実施の形態では、一例として比重が1に近い飲用水が用いられている。
【0018】
電池6は、カプセル型内視鏡1の内蔵物中では重量物であるが、カプセル型筐体3内の後端部側に配設されている。これにより、本実施の形態のカプセル型内視鏡1は、前端側が相対的に軽くなるように前後方向の重量バランスを変えることで重心位置が中心よりも後端側に偏心しており、図1に示すように、撮像側となる先端カバー3aが常に上向き立ち状態(鉛直状態)で液体7中に沈みながら浮遊することとなる。なお、このような重量バランスや比重調整は、錘等の別部材による重量物を利用するようにしてもよい。
【0019】
また、撮像光学系4は、撮像部41と照明部42とからなる。撮像部41は、照明部42の照明光による被写体9からの反射光を受光して被写体9の画像を被検体内画像として撮像するCCDやC−MOSイメージャなどの撮像素子411と、この撮像素子411に被写体9の光像を結像させる結像レンズ412とをカプセル型筐体3の軸心上に備え、液体7中から境界面7a越しの気体8中にある被写体9の画像を被検体内画像として取得する。
【0020】
照明部42は、撮像部41の撮像視野Eを照明するためのものであり、図2に示すように、例えば被写体9の撮像部位を先端カバー3a部分を介して照明するための照明光を出射する複数個の光源、例えば4個のLED421と、各LED421からの照明光の出射方向に配設されてLED421からの照明光を拡散させる拡散手段としての透過部材による拡散板422とからなる。図3は、透過部材からなる拡散板422による照明光の拡散機能を示す説明図であり、拡散性をよくするためには例えば粒状物質からなる拡散剤を添加すればよい。4個のLED421は、撮像部41の光軸中心に対して+字状となるように撮像部41周りに配設され、拡散板422もLED421毎に設けられ、撮像視野Eの全域を網羅するように配置されている。
【0021】
図4は、本実施の形態の光源としてのLED421の液体7表面(水面)での光強度分布特性と拡散板422の透過率分布特性とを示す特性図である。本実施の形態では、中心部から周辺部に向かって光強度が減少する液体7表面(水面)でのLED421の光強度特性に対して、逆特性となるように中心部から周辺部に向かって透過率が高くなる透過率分布特性を持たせた拡散板422が用いられている。このような拡散板422は、LED421からの照明光の出射方向の中心に中心合わせして配設されている。
【0022】
ここで、図4に示すような透過率分布特性を有する拡散板422の構成例を図5−1〜図5−3に例示する。例えば、図5−1に示すように、拡散剤423の添加量を周辺部から中心部に向けて順に少なくするようにした拡散板422Aを用いることができる。また、図5−2に示すように、添加する拡散剤424の粒子の大きさが周辺部から中心部に向けて順に小さくなるようにした拡散板422Bを用いることができる。或いは、図5−3に示すように、周辺部から中心部に向けて順に厚みが厚くなるようにした拡散板422Cを用いることができる。拡散板422Cの場合、単結晶ではないので、図示の如き形状であってもレンズ機能を持つことはない。
【0023】
このような構成において、本実施の形態では、例えば所定量の液体7を被検体2内の胃などの観察対象部位に導入して伸展させるとともに、カプセル型内視鏡1を被検体2内に導入し、図1に示すように観察対象部位を伸展させる液体7中に沈む状態で浮遊させながら、境界面7a越しに、気体8中にある被写体9となる胃の内壁などを撮像部41によって撮像することで観察する。この撮像部41の撮像視野Eは、照明部42からの照明光によって照明される。
【0024】
ここで、照明部42において拡散板422がないとした場合、図4中に示すような中心部から周辺部に向かって光強度が減少する光強度分布特性のLED421によって直接的に撮像視野Eを照明することとなるが、この場合、照明光が液体7の液面を境界面7aとして反射し、気体8中の被写体9を撮像する際に、照明光が光源像として明るく映り込んでしまい、観察の邪魔となってしまう。特に、照明光が境界面7aで反射するときに最も明るい中心部分が輝点となって強く反射してしまい、撮像部位の撮影に支障を来たす。
【0025】
しかるに、本実施の形態では、LED421からの照明光の出射方向にLED421からの照明光を拡散させる拡散板422を有するので、LED421からの照明光は拡散板422で拡散されて撮像視野Eを照明することとなり、液体7中から気体8中の被検体内部位を境界面7a越しに被写体9として撮像する際に光源像が境界面7aでそのまま反射されて撮像部41に映り込んでしまうことを防止することができ、被検体部位を適正に観察することができる。特に、本実施の形態のように、中心部から周辺部に向かって光強度か減少する光強度分布特性の照明光を出射する通常のLED421に対して、中心部から周辺部に向かって透過率が高くなる逆の透過率分布特性を有する透過部材からなる拡散板422をLED421からの照明光の出射方向の中心に中心合わせして配設しているので、光強度分布特性に対応するLED421の形が像として形成されることなく一様に撮像視野Eを照明することができ、被検体部位を適正に観察できることとなる。
【0026】
なお、特許文献2によれば、光源の配光特性をよくするための手段として光源の前方に拡散板を配置させる構成が示されているが、液体中での使用を考慮し境界面での照明光の反射を軽減するということに関しては何ら言及されてないものである。
【0027】
また、本実施の形態では、LED421からの照明光を透過する透過部材からなる拡散板422を用いたが、照明光を反射する反射部材からなる拡散板を用いるようにしてもよい。図6は、反射部材からなる拡散板425を用いた変形例を示す概略構成図である。この場合、光源としてのLED421の照明光の出射方向は図2等の場合とは逆向き(下向き)とされ、所定の曲率で凹面形状に形成された反射部材からなる拡散板425がLED421からの照明光の出射方向に配設され、該拡散板425で照明光を上方に拡散反射させることで撮像部41の撮像視野Eを照明するように構成されている。ここで、拡散板425は、その反射内面が、図6中に拡大して示すように、粗面425aとして形成されることにより、LED421からの照明光を拡散させながら反射させるように構成されている。この際、反射部材からなる拡散板425は、中心部から周辺部に向かって反射率が高くなる反射率分布特性を持たせることが望ましい。
【0028】
このように所定曲率を持たせた反射面が粗面425aとして形成された拡散板425を用いることによっても、LED421からの照明光を拡散させてほぼ同じ強度とされた強度分布の光として撮像視野Eを均一に照明することができ、境界面7aでの反射による悪影響を受けることなく、境界面7a越しの気体8中の被写体9を観察することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、液体7として、飲用水を用いるようにしたが、場合によってはオリーブ油等の食用油を用いるようにしてもよい。或いは、互いに混じりあわない飲用水と食用油との組合せの如き2液を用い、2液の界面に浮遊する比重のカプセル型内視鏡を用いるようにしてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、カプセル型筐体3が液体7中に浮遊して境界面7a越しに気体8中にある被検体内画像を撮像する場合を例にとり、説明したが、カプセル型筐体3が液体7中に浮遊している場合に限らず、逆に、カプセル型内視鏡1が体腔内の落下中等において、気体8中から境界面7a越しに液体7中にある被検体内画像を撮像観察する場合においても、境界面7aでの反射による悪影響を受けることなく観察することができる。
【0031】
さらには、本実施の形態では、カプセル型内視鏡1が体腔内をその蠕動運動に伴って移動し最終的には排出されるタイプの例で説明したが、例えば、紐付きのカプセル型内視鏡とし、胃内に導入された液体よりも上方の気体中に紐で留置されて上方から境界面越しに液体中の被検体内画像を観察するようなタイプのカプセル型内視鏡の場合であっても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るカプセル型内視鏡の好適な実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の撮像側先端付近を拡大して示す概略構成図である。
【図3】透過部材からなる拡散板による照明光の拡散機能を示す説明図である。
【図4】本実施の形態の光源としてのLEDの液面での光強度分布特性と拡散板の透過率分布特性とを示す特性図である。
【図5−1】所定の透過率分布特性を有する拡散板の構成の一例を示す説明図である。
【図5−2】所定の透過率分布特性を有する拡散板の構成の他例を示す説明図である。
【図5−3】所定の透過率分布特性を有する拡散板の構成のさらなる他例を示す説明図である。
【図6】反射部材からなる拡散板を用いた変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 カプセル型内視鏡
2 被検体
3 カプセル型筐体
7 液体
7a 境界面
8 気体
9 被写体
41 撮像部
42 照明部
421 LED
422,425 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に存在する流体中にあるカプセル型筐体と、
該カプセル型筐体内に配設されて、屈折率の異なる2つの透光性の流体の境界面越しにある被検体内画像を取得する撮像手段と、
前記カプセル型筐体内に配設されて照明光を出射する光源と、該光源からの照明光の出射方向に配設されて該光源からの照明光を拡散させる拡散手段とを有して前記撮像手段の撮像視野を照明する照明手段と、
を備えることを特徴とするカプセル型内視鏡。
【請求項2】
前記拡散手段は、前記光源からの照明光を透過する透過部材からなることを特徴とする請求項1に記載のカプセル型内視鏡。
【請求項3】
前記光源は、中心部から周辺部に向かって光強度が減少する光強度分布特性の照明光を出射し、
前記拡散手段は、中心部から周辺部に向かって透過率が高くなる透過率分布特性を有して前記光源からの照明光の出射方向の中心に中心合わせして配設されていることを特徴とする請求項2に記載のカプセル型内視鏡。
【請求項4】
前記拡散手段は、前記光源からの照明光を反射する反射部材からなることを特徴とする請求項1に記載のカプセル型内視鏡。
【請求項5】
前記反射部材は、中心部から周辺部に向かって反射率が高くなる反射率分布特性を有することを特徴とする請求項4に記載のカプセル型内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−36287(P2008−36287A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217205(P2006−217205)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】