カプセル型医療装置
【課題】患者にかかる負担を軽減することができるカプセル型医療装置を提供する。
【解決手段】カプセル型の筐体2と、該筐体2内に配置され、該筐体2外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部4,6と、該測定情報取得部4,6により測定情報が取得された被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部5と、該位置特定情報取得部5により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と測定情報取得部4,6により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部7とを備えるカプセル型医療装置1を提供する。
【解決手段】カプセル型の筐体2と、該筐体2内に配置され、該筐体2外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部4,6と、該測定情報取得部4,6により測定情報が取得された被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部5と、該位置特定情報取得部5により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と測定情報取得部4,6により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部7とを備えるカプセル型医療装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル型医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カプセル型の筐体を有し、患者の体内に投入されて、体腔内を撮影して画像情報を取得するカプセル型医療装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このカプセル型医療装置は、無線送信手段を備えていて、取得した画像情報を患者の体外に配置された体外装置に向けて送信するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−70728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカプセル型医療装置においては、患者が携帯式の体外装置を装着したり、設置式の体外装置の近くに留まったりして検査を行わなければならず、患者が拘束され、負担が大きいという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、患者にかかる負担を軽減することができるカプセル型医療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
カプセル型の筐体と、該筐体内に配置され、該筐体外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部と、該測定情報取得部により測定情報が取得された前記被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部と、該位置特定情報取得部により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と前記測定情報取得部により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部とを備えるカプセル型医療装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、カプセル型の筐体を患者の体腔内に投入すると、測定情報取得部の作動により筐体外の被検査部位の測定情報が取得されるとともに、位置特定情報取得の作動により被検査部位の位置を特定するための情報が取得される。そして、このようにして取得された測定情報と被検査部位の位置を特定するための情報とが対応づけられて記憶部に記憶される。
【0008】
したがって、測定情報が記憶部に記憶されるので、体外に送信して蓄積する必要がなく、体外装置の装着や設置が不要となり、患者にかかる負担を軽減できるとともに、バッテリの消耗を抑えて長時間にわたる検査を行うことができる。また、記憶された測定情報は、被検査部位の位置を特定する情報と対応づけられているので、事後的に、各測定情報がどの被検査部位に対応しているのかを容易に確認することができる。
【0009】
上記発明においては、前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位を撮影して画像情報を取得する撮像素子であってもよい。
このようにすることで、画像情報により被検査部位の状態をより詳細に検査することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値の最大値または平均値を算出することとしてもよい。
各画素の輝度値の最大値を算出することで、癌組織等の病変部分に特異的に集積する蛍光薬剤や自家蛍光物質の量を測定でき、病変部分の存在を確認することができる。また、各画素の輝度値の平均値を算出することで、ノイズを低減して検査の信頼性を向上することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値が所定の閾値を越える画素数を算出することとしてもよい。
このようにすることで、癌組織等の病変部分に特異的に集積する蛍光薬剤や自家蛍光物質がある程度存在する領域の広さを測定でき、病変部分の疑いのある領域の診断精度を向上することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位の明るさ情報を検出する光検出器であってもよい。
このようにすることで、記憶部に記憶するデータ量を低減することができ、長時間にわたる検査を容易にすることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、検査時間を計測するタイマーであってもよい。
このようにすることで、タイマーにより検査時間を計測することにより、画像情報に示される被検査部位、例えば、臓器の位置を事後的に同定し易くすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、前記筐体にかかる圧力を検出する圧力センサであってもよい。
このようにすることで、圧力センサによって筐体に係る圧力の変化を監視することができ、検出される圧力値に応じて被検査部位を特定することができる。例えば、筐体が受ける圧力が大きいときは、食道、小腸、大腸等の細い臓器であり、圧力が小さいときは胃のような広い臓器であると判断することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、腸内の細菌を検出する腸内細菌センサであってもよい。
このようにすることで、腸内細菌センサによって腸内細菌が検出された場合に、被検査部位が大腸に移行したことを簡易に特定することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、筐体の周囲のpH値を検出するpHセンサであってもよい。
このようにすることで、胃は他の臓器と比較してpH値が低いので、pHセンサの出力により被検査部位が胃に移行したことを簡易に特定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、患者にかかる負担を軽減することができ、かつ、事後的に、被検査部位の同定を容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るカプセル型医療装置1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るカプセル型医療装置1は、図1に示されるように、円筒状の筐体本体2aの両端を半球状の透明窓2bおよび端板2cによって密封したカプセル型の筐体2と、該筐体2内に収容され、透明窓2bを介して励起光を照射する照明部3と、筐体2外の被検査部位から透明窓2bを介して筐体2内に入ってくる蛍光を検出する光検出部(測定情報取得部)4と、カプセル型医療装置1が体腔内に投入されてからの経過時間を計測するタイマー(位置特定情報取得部)5と、光検出部4により検出された蛍光強度とタイマー5により計測された経過時間とを対応づける情報処理部(測定情報取得部)6と、該情報処理部6により対応づけられた情報を記憶する記憶するメモリ(記憶部)7と、これら各部に電力を供給するバッテリ8とを備えている。なお、バッテリ8から各部への配線は図示を省略している。
【0019】
照明部3は、例えば、広帯域の光を発生するLED3aと、該LED3aから射出された光から励起波長の光のみを透過させて透明窓2bから射出させる励起光フィルタ3bとを備えている。
光検出部4は、励起光を遮断する励起光カットフィルタ4aと、励起光を除去された蛍光の強度を検出するフォトディテクタ(光検出器)4bとを備えている。
【0020】
情報処理部6は、図2に示されるように、フォトディテクタ4bおよびタイマー5に接続され、フォトディテクタ4bから送られてくる蛍光の強度情報と、タイマー5から送られてくる経過時間とを対応づけてメモリ7に出力するようになっている。
【0021】
このように構成された本実施形態に係るカプセル型医療装置1の作用について説明する。
本実施形態に係るカプセル型医療装置1によれば、患者の体腔X内に投入された時点で、タイマー5による経過時間の計測が開始される。そして、カプセル型医療装置1が体腔X内に配置されている状態で、照明部3の作動により透明窓2bを介して励起光が被検査部位に照射され、被検査部位に存在する蛍光物質が励起されて発生した蛍光が、透明窓2bを介して筐体2内に入射する。
蛍光物質から発生する蛍光としては、カプセル型医療装置1を患者に投与する前に予め患者に散布または静脈注射または経口投与などによって導入され、被検査部位に蓄積した色素から発生する蛍光、あるいは被検査部位から発生する自家蛍光が挙げられる。
【0022】
筐体2内に入射した蛍光の強度は光検出部4によって検出される。次いで、光検出部4により検出された蛍光の強度情報と、該強度情報が検出された時点のタイマー5により計測された経過時間とが情報処理部6に入力され、情報処理部6において相互に対応づけられた形態でメモリ7に出力され記憶される。
【0023】
このように、本実施形態に係るカプセル型医療装置1によれば、患者の被検査部位の測定情報となる蛍光の強度情報が、その測定時を示す経過時間と対応づけられて記憶されるので、検査が終了しカプセル型医療装置1が回収された後に、図3に示されるように、蛍光の強度情報の時間変化を提示することが可能となる。経過時間は、カプセル型医療装置1が体腔X内に投入された時点で計測開始されるので、例えば、図3に示されるように、蛍光の強度情報が検出された時点の被検査部位の位置を概略的に示すことができる。
【0024】
その結果、例えば、図3に示す例では、経過時間的に小腸の位置と思われる位置に蛍光強度の比較的高い被検査部位が存在するので、小腸に癌組織等の病変部分が存在することを推測することができる。
また、本実施形態においては、患者の被検査部位の測定情報として蛍光の強度情報を採用しているので、そのデータ量は画像情報と比較して少なくて済み、大量にメモリ7に記憶することができる。したがって、データ取得のサンプリング時間を短く設定して、より詳細な検査を行うことができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、被検査部位の位置を特定するための情報として、カプセル型医療装置1を体腔X内に投入した時点で計測開始される経過時間をタイマー5により取得したが、これに代えて、あるいは、これに加えて、以下の情報を取得することとしてもよい。
第1に、図4および図5に示されるように、腸内細菌センサ9を用いて腸内細菌を検出した時点で、カプセル型医療装置1が大腸に移動したことを特定することとしてもよい。
【0026】
腸内細菌センサ9としては、例えば、大気圧より高い所定の圧力に設定される圧力室10と、その開口部10aを密閉するように配置され、腸内細菌の分泌する酵素によって破れるアゾポリマ膜11と、圧力室10内の圧力を検出する圧力センサ12とを備えている。アゾポリマ膜11の破断により、図6に示されるように圧力室10内の圧力が低下するので、その圧力低下を圧力センサ12で検出することにより、被検査部位が大腸に移行したことを検出することができる。カプセル型医療装置1が胃から大腸に到達するまでに要する時間には個人差があるため、この方法によれば大腸への到達を直接検出することができる点で、より正確に被検査部位の位置を特定することができる。
【0027】
また、第2に、図7および図8に示されるように、圧力センサ12を用いて測定した圧力変動により蛍光の輝度情報に対応する被検査部位の位置を特定することにしてもよい。例えば、図7に示されるように、圧力室10の開口部10aを弾性膜13によって閉塞しおき、弾性膜13の弾性変形を圧力室10内の圧力変動として検出することにすればよい。
【0028】
図9に示されるように、体腔X壁面から受ける圧力が大きいときは、食道、小腸、大腸等の細い臓器であり、圧力が小さいときは胃のような広い臓器であると判断することができる。また、小腸と大腸との間の回盲弁を通過した直後には検出される圧力が一時的に低下するので、これによっても被検査部位の位置を特定することができる。
【0029】
圧力センサ12を用いる場合には、圧力値と被検査部位とを一意的に対応づけることができないので、図5および図8に示されるように、タイマー5による経過時間を併用するか、取得した圧力値を時系列に並べて保存しておく必要がある。
【0030】
また、第3に、図10に示されるように、pHセンサ14を用いて測定したpH値の変動により蛍光の輝度情報に対応する被検査部位の位置を特定することとしてもよい。例えば、図11に示されるように、胃は他の臓器と比較してpH値が低いので、pHセンサ14の出力により胃に移行したことが判断できる。
pHセンサ14を用いる場合にも、pH値と被検査部位とを一意的に対応づけることができないので、図10のようにタイマー5による経過時間を併用するか、取得したpH値を時系列に並べて保存しておく必要がある。
【0031】
また、上記タイマー5、圧力センサ12、腸内細菌センサ9およびpHセンサ14の2以上を組み合わせて使用することにしてもよい。
例えば、図12に示されるように、タイマー5(図1参照。)と、圧力センサ12と、腸内細菌センサ9とを組み合わせる場合、圧力室10の開口部10aを閉塞する弾性膜13に設けられた開口部13aをアゾポリマ膜11により閉塞することにすればよい。
【0032】
このようにすることで、大腸以外の被検査部位では、アゾポリマ膜11が破れないように維持されるので、図13に示されるように、被検査部位に応じて弾性膜13が弾性変形して圧力室10内の圧力が変動し、圧力センサ12により検出される圧力が変動する。一方、カプセル型医療装置1が大腸に移動すると、アゾポリマ膜11が腸内細菌の分泌する酵素によって破れるので、圧力室10内の圧力値が低下する。したがって、圧力変動により被検査部位の位置をより精度よく特定することが可能となる。
【0033】
また、例えば、タイマー5と、腸内細菌センサ9と、pHセンサ14とを組み合わせることにしてもよい。
このようにすることで、胃の位置をpHセンサ14によるpH値により特定し、大腸の位置を腸内細菌センサ9により特定し、それらの前後の食道や小腸の位置を経過時間によってより精度よく特定することができる。
特に測定情報として蛍光強度を用いている場合は、情報量が少ないため、メモリを節約することができるというメリットがあるものの、画像情報が無いため被検査部位を特定することができない。したがって、測定情報として蛍光強度を用いている場合は、被検査部位特定手段を用いることで、非検査部位の特定とメモリの節約を両立させることができ、その効果は特に大きなものとなる。
【0034】
また、本実施形態においては、被検査部位の測定情報として蛍光の強度情報を例示したが、フォトディテクタ4bをCCDに代えて、2次元画像情報を取得することにしてもよい。なお、2次元画像情報をそのまま記憶したのではデータ量が多大となるため、情報処理部6が、2次元画像情報から輝度情報と面積情報とを抽出し、抽出された輝度情報および面積情報を経過時間と対応づけることとしてもよい。
【0035】
抽出する輝度情報としては、例えば、各画素の蛍光強度の最大値または平均値を採用すればよい。また、面積情報としては、蛍光強度が所定の閾値以上である領域の面積(すなわち、そのような蛍光強度を有する画素の画素数)を採用すればよい。
このようにすることで、図14に示されるように、ノイズにより比較的狭い領域で大きな蛍光強度を有する被検査部位(図14における符号B)が撮影されるのを防止し、病変が疑われる被検査部位(図14における符号A)の位置をより確実に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るカプセル型医療装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図3】図1のカプセル型医療装置により取得された蛍光強度と経過時間との関係を示すグラフである。
【図4】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第1の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図5】図4のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図6】図4の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図7】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第2の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図8】図7のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図9】図7の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図10】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第3の変形例の内部の構造を示すブロック図である。
【図11】図10の位置特定情報取得部により取得されたpH値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図12】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第4の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図13】図12の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図14】図1のカプセル型医療装置の第5の変形例により取得された輝度情報および面積情報の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 カプセル型医療装置
2 筐体
4 光検出部(測定情報取得部)
4b フォトディテクタ(光検出器)
5 タイマー(位置特定情報取得部)
6 情報処理部(測定情報取得部)
7 メモリ(記憶部)
9 腸内細菌センサ(位置特定情報取得部)
14 pHセンサ(位置特定情報取得部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル型医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カプセル型の筐体を有し、患者の体内に投入されて、体腔内を撮影して画像情報を取得するカプセル型医療装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このカプセル型医療装置は、無線送信手段を備えていて、取得した画像情報を患者の体外に配置された体外装置に向けて送信するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−70728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカプセル型医療装置においては、患者が携帯式の体外装置を装着したり、設置式の体外装置の近くに留まったりして検査を行わなければならず、患者が拘束され、負担が大きいという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、患者にかかる負担を軽減することができるカプセル型医療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
カプセル型の筐体と、該筐体内に配置され、該筐体外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部と、該測定情報取得部により測定情報が取得された前記被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部と、該位置特定情報取得部により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と前記測定情報取得部により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部とを備えるカプセル型医療装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、カプセル型の筐体を患者の体腔内に投入すると、測定情報取得部の作動により筐体外の被検査部位の測定情報が取得されるとともに、位置特定情報取得の作動により被検査部位の位置を特定するための情報が取得される。そして、このようにして取得された測定情報と被検査部位の位置を特定するための情報とが対応づけられて記憶部に記憶される。
【0008】
したがって、測定情報が記憶部に記憶されるので、体外に送信して蓄積する必要がなく、体外装置の装着や設置が不要となり、患者にかかる負担を軽減できるとともに、バッテリの消耗を抑えて長時間にわたる検査を行うことができる。また、記憶された測定情報は、被検査部位の位置を特定する情報と対応づけられているので、事後的に、各測定情報がどの被検査部位に対応しているのかを容易に確認することができる。
【0009】
上記発明においては、前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位を撮影して画像情報を取得する撮像素子であってもよい。
このようにすることで、画像情報により被検査部位の状態をより詳細に検査することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値の最大値または平均値を算出することとしてもよい。
各画素の輝度値の最大値を算出することで、癌組織等の病変部分に特異的に集積する蛍光薬剤や自家蛍光物質の量を測定でき、病変部分の存在を確認することができる。また、各画素の輝度値の平均値を算出することで、ノイズを低減して検査の信頼性を向上することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値が所定の閾値を越える画素数を算出することとしてもよい。
このようにすることで、癌組織等の病変部分に特異的に集積する蛍光薬剤や自家蛍光物質がある程度存在する領域の広さを測定でき、病変部分の疑いのある領域の診断精度を向上することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位の明るさ情報を検出する光検出器であってもよい。
このようにすることで、記憶部に記憶するデータ量を低減することができ、長時間にわたる検査を容易にすることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、検査時間を計測するタイマーであってもよい。
このようにすることで、タイマーにより検査時間を計測することにより、画像情報に示される被検査部位、例えば、臓器の位置を事後的に同定し易くすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、前記筐体にかかる圧力を検出する圧力センサであってもよい。
このようにすることで、圧力センサによって筐体に係る圧力の変化を監視することができ、検出される圧力値に応じて被検査部位を特定することができる。例えば、筐体が受ける圧力が大きいときは、食道、小腸、大腸等の細い臓器であり、圧力が小さいときは胃のような広い臓器であると判断することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、腸内の細菌を検出する腸内細菌センサであってもよい。
このようにすることで、腸内細菌センサによって腸内細菌が検出された場合に、被検査部位が大腸に移行したことを簡易に特定することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記位置特定情報取得部が、筐体の周囲のpH値を検出するpHセンサであってもよい。
このようにすることで、胃は他の臓器と比較してpH値が低いので、pHセンサの出力により被検査部位が胃に移行したことを簡易に特定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、患者にかかる負担を軽減することができ、かつ、事後的に、被検査部位の同定を容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るカプセル型医療装置1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るカプセル型医療装置1は、図1に示されるように、円筒状の筐体本体2aの両端を半球状の透明窓2bおよび端板2cによって密封したカプセル型の筐体2と、該筐体2内に収容され、透明窓2bを介して励起光を照射する照明部3と、筐体2外の被検査部位から透明窓2bを介して筐体2内に入ってくる蛍光を検出する光検出部(測定情報取得部)4と、カプセル型医療装置1が体腔内に投入されてからの経過時間を計測するタイマー(位置特定情報取得部)5と、光検出部4により検出された蛍光強度とタイマー5により計測された経過時間とを対応づける情報処理部(測定情報取得部)6と、該情報処理部6により対応づけられた情報を記憶する記憶するメモリ(記憶部)7と、これら各部に電力を供給するバッテリ8とを備えている。なお、バッテリ8から各部への配線は図示を省略している。
【0019】
照明部3は、例えば、広帯域の光を発生するLED3aと、該LED3aから射出された光から励起波長の光のみを透過させて透明窓2bから射出させる励起光フィルタ3bとを備えている。
光検出部4は、励起光を遮断する励起光カットフィルタ4aと、励起光を除去された蛍光の強度を検出するフォトディテクタ(光検出器)4bとを備えている。
【0020】
情報処理部6は、図2に示されるように、フォトディテクタ4bおよびタイマー5に接続され、フォトディテクタ4bから送られてくる蛍光の強度情報と、タイマー5から送られてくる経過時間とを対応づけてメモリ7に出力するようになっている。
【0021】
このように構成された本実施形態に係るカプセル型医療装置1の作用について説明する。
本実施形態に係るカプセル型医療装置1によれば、患者の体腔X内に投入された時点で、タイマー5による経過時間の計測が開始される。そして、カプセル型医療装置1が体腔X内に配置されている状態で、照明部3の作動により透明窓2bを介して励起光が被検査部位に照射され、被検査部位に存在する蛍光物質が励起されて発生した蛍光が、透明窓2bを介して筐体2内に入射する。
蛍光物質から発生する蛍光としては、カプセル型医療装置1を患者に投与する前に予め患者に散布または静脈注射または経口投与などによって導入され、被検査部位に蓄積した色素から発生する蛍光、あるいは被検査部位から発生する自家蛍光が挙げられる。
【0022】
筐体2内に入射した蛍光の強度は光検出部4によって検出される。次いで、光検出部4により検出された蛍光の強度情報と、該強度情報が検出された時点のタイマー5により計測された経過時間とが情報処理部6に入力され、情報処理部6において相互に対応づけられた形態でメモリ7に出力され記憶される。
【0023】
このように、本実施形態に係るカプセル型医療装置1によれば、患者の被検査部位の測定情報となる蛍光の強度情報が、その測定時を示す経過時間と対応づけられて記憶されるので、検査が終了しカプセル型医療装置1が回収された後に、図3に示されるように、蛍光の強度情報の時間変化を提示することが可能となる。経過時間は、カプセル型医療装置1が体腔X内に投入された時点で計測開始されるので、例えば、図3に示されるように、蛍光の強度情報が検出された時点の被検査部位の位置を概略的に示すことができる。
【0024】
その結果、例えば、図3に示す例では、経過時間的に小腸の位置と思われる位置に蛍光強度の比較的高い被検査部位が存在するので、小腸に癌組織等の病変部分が存在することを推測することができる。
また、本実施形態においては、患者の被検査部位の測定情報として蛍光の強度情報を採用しているので、そのデータ量は画像情報と比較して少なくて済み、大量にメモリ7に記憶することができる。したがって、データ取得のサンプリング時間を短く設定して、より詳細な検査を行うことができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、被検査部位の位置を特定するための情報として、カプセル型医療装置1を体腔X内に投入した時点で計測開始される経過時間をタイマー5により取得したが、これに代えて、あるいは、これに加えて、以下の情報を取得することとしてもよい。
第1に、図4および図5に示されるように、腸内細菌センサ9を用いて腸内細菌を検出した時点で、カプセル型医療装置1が大腸に移動したことを特定することとしてもよい。
【0026】
腸内細菌センサ9としては、例えば、大気圧より高い所定の圧力に設定される圧力室10と、その開口部10aを密閉するように配置され、腸内細菌の分泌する酵素によって破れるアゾポリマ膜11と、圧力室10内の圧力を検出する圧力センサ12とを備えている。アゾポリマ膜11の破断により、図6に示されるように圧力室10内の圧力が低下するので、その圧力低下を圧力センサ12で検出することにより、被検査部位が大腸に移行したことを検出することができる。カプセル型医療装置1が胃から大腸に到達するまでに要する時間には個人差があるため、この方法によれば大腸への到達を直接検出することができる点で、より正確に被検査部位の位置を特定することができる。
【0027】
また、第2に、図7および図8に示されるように、圧力センサ12を用いて測定した圧力変動により蛍光の輝度情報に対応する被検査部位の位置を特定することにしてもよい。例えば、図7に示されるように、圧力室10の開口部10aを弾性膜13によって閉塞しおき、弾性膜13の弾性変形を圧力室10内の圧力変動として検出することにすればよい。
【0028】
図9に示されるように、体腔X壁面から受ける圧力が大きいときは、食道、小腸、大腸等の細い臓器であり、圧力が小さいときは胃のような広い臓器であると判断することができる。また、小腸と大腸との間の回盲弁を通過した直後には検出される圧力が一時的に低下するので、これによっても被検査部位の位置を特定することができる。
【0029】
圧力センサ12を用いる場合には、圧力値と被検査部位とを一意的に対応づけることができないので、図5および図8に示されるように、タイマー5による経過時間を併用するか、取得した圧力値を時系列に並べて保存しておく必要がある。
【0030】
また、第3に、図10に示されるように、pHセンサ14を用いて測定したpH値の変動により蛍光の輝度情報に対応する被検査部位の位置を特定することとしてもよい。例えば、図11に示されるように、胃は他の臓器と比較してpH値が低いので、pHセンサ14の出力により胃に移行したことが判断できる。
pHセンサ14を用いる場合にも、pH値と被検査部位とを一意的に対応づけることができないので、図10のようにタイマー5による経過時間を併用するか、取得したpH値を時系列に並べて保存しておく必要がある。
【0031】
また、上記タイマー5、圧力センサ12、腸内細菌センサ9およびpHセンサ14の2以上を組み合わせて使用することにしてもよい。
例えば、図12に示されるように、タイマー5(図1参照。)と、圧力センサ12と、腸内細菌センサ9とを組み合わせる場合、圧力室10の開口部10aを閉塞する弾性膜13に設けられた開口部13aをアゾポリマ膜11により閉塞することにすればよい。
【0032】
このようにすることで、大腸以外の被検査部位では、アゾポリマ膜11が破れないように維持されるので、図13に示されるように、被検査部位に応じて弾性膜13が弾性変形して圧力室10内の圧力が変動し、圧力センサ12により検出される圧力が変動する。一方、カプセル型医療装置1が大腸に移動すると、アゾポリマ膜11が腸内細菌の分泌する酵素によって破れるので、圧力室10内の圧力値が低下する。したがって、圧力変動により被検査部位の位置をより精度よく特定することが可能となる。
【0033】
また、例えば、タイマー5と、腸内細菌センサ9と、pHセンサ14とを組み合わせることにしてもよい。
このようにすることで、胃の位置をpHセンサ14によるpH値により特定し、大腸の位置を腸内細菌センサ9により特定し、それらの前後の食道や小腸の位置を経過時間によってより精度よく特定することができる。
特に測定情報として蛍光強度を用いている場合は、情報量が少ないため、メモリを節約することができるというメリットがあるものの、画像情報が無いため被検査部位を特定することができない。したがって、測定情報として蛍光強度を用いている場合は、被検査部位特定手段を用いることで、非検査部位の特定とメモリの節約を両立させることができ、その効果は特に大きなものとなる。
【0034】
また、本実施形態においては、被検査部位の測定情報として蛍光の強度情報を例示したが、フォトディテクタ4bをCCDに代えて、2次元画像情報を取得することにしてもよい。なお、2次元画像情報をそのまま記憶したのではデータ量が多大となるため、情報処理部6が、2次元画像情報から輝度情報と面積情報とを抽出し、抽出された輝度情報および面積情報を経過時間と対応づけることとしてもよい。
【0035】
抽出する輝度情報としては、例えば、各画素の蛍光強度の最大値または平均値を採用すればよい。また、面積情報としては、蛍光強度が所定の閾値以上である領域の面積(すなわち、そのような蛍光強度を有する画素の画素数)を採用すればよい。
このようにすることで、図14に示されるように、ノイズにより比較的狭い領域で大きな蛍光強度を有する被検査部位(図14における符号B)が撮影されるのを防止し、病変が疑われる被検査部位(図14における符号A)の位置をより確実に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るカプセル型医療装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図3】図1のカプセル型医療装置により取得された蛍光強度と経過時間との関係を示すグラフである。
【図4】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第1の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図5】図4のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図6】図4の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図7】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第2の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図8】図7のカプセル型医療装置内部の構造を示すブロック図である。
【図9】図7の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図10】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第3の変形例の内部の構造を示すブロック図である。
【図11】図10の位置特定情報取得部により取得されたpH値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図12】図1のカプセル型医療装置の位置特定情報取得部の第4の変形例を示す部分的な縦断面図である。
【図13】図12の位置特定情報取得部により取得された圧力値と経過時間との関係を示すグラフである。
【図14】図1のカプセル型医療装置の第5の変形例により取得された輝度情報および面積情報の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 カプセル型医療装置
2 筐体
4 光検出部(測定情報取得部)
4b フォトディテクタ(光検出器)
5 タイマー(位置特定情報取得部)
6 情報処理部(測定情報取得部)
7 メモリ(記憶部)
9 腸内細菌センサ(位置特定情報取得部)
14 pHセンサ(位置特定情報取得部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル型の筐体と、
該筐体内に配置され、筐体外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部と、
該測定情報取得部により測定情報が取得された前記被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部と、
該位置特定情報取得部により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と前記測定情報取得部により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部とを備えるカプセル型医療装置。
【請求項2】
前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位を撮影して画像情報を取得する撮像素子を備える請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項3】
前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値の最大値または平均値を算出する請求項2に記載のカプセル型医療装置。
【請求項4】
前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値が所定の閾値を越える画素数を算出する請求項2または請求項3に記載のカプセル型医療装置。
【請求項5】
前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位の明るさ情報を検出する光検出器を備える請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項6】
前記位置特定情報取得部が、検査時間を計測するタイマーである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項7】
前記位置特定情報取得部が、前記筐体にかかる圧力を検出する圧力センサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項8】
前記位置特定情報取得部が、腸内の細菌を検出する腸内細菌センサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項9】
前記位置特定情報取得部が、筐体の周囲のpH値を検出するpHセンサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項1】
カプセル型の筐体と、
該筐体内に配置され、筐体外に配置された被検査部位の測定情報を取得する測定情報取得部と、
該測定情報取得部により測定情報が取得された前記被検査部位の位置を特定するための情報を取得する位置特定情報取得部と、
該位置特定情報取得部により取得された被検査部位の位置を特定するための情報と前記測定情報取得部により取得された測定情報とを対応づけて記憶する記憶部とを備えるカプセル型医療装置。
【請求項2】
前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位を撮影して画像情報を取得する撮像素子を備える請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項3】
前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値の最大値または平均値を算出する請求項2に記載のカプセル型医療装置。
【請求項4】
前記測定情報取得部が、前記被測定部位の測定情報として、前記撮像素子により取得された各画素の輝度値が所定の閾値を越える画素数を算出する請求項2または請求項3に記載のカプセル型医療装置。
【請求項5】
前記測定情報取得部が、筐体外の被検査部位の明るさ情報を検出する光検出器を備える請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項6】
前記位置特定情報取得部が、検査時間を計測するタイマーである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項7】
前記位置特定情報取得部が、前記筐体にかかる圧力を検出する圧力センサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項8】
前記位置特定情報取得部が、腸内の細菌を検出する腸内細菌センサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【請求項9】
前記位置特定情報取得部が、筐体の周囲のpH値を検出するpHセンサである請求項1に記載のカプセル型医療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−226066(P2009−226066A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76338(P2008−76338)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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