説明

カムシャフトとその製造方法

本発明は、1個またはそれ以上の環状のカム(46’)が挿入されて噛み合いありおよび/または噛み合いなしで固定されたシャフト(13)を備えた、カムシャフト(50)に関する。このカムシャフトを特に費用効率が良く、単純で柔軟性のある方法によって製造するために、カム(46’)は1個または2以上のストリップ状の材料を環状に曲げて自由端部同士を溶接することによって製作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て式のカムシャフトの分野に関する。本発明は請求項1に基づくカムシャフトと、請求項15に基づくこの種のカムシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み立て式カムシャフトは、鍛造成形のカムシャフトと異なり、先ず、カムが個別の部品として製造され、ついで適切なシャフト上において指定された空間的間隔で、指定された方向にカムが固定されることによって製造される。カムの製造と通常円筒状であるシャフトへの固定は、さまざまな方法で実施されている。
【0003】
WO‐A1‐03/012262には、引き抜き成形した管状輪郭を製造し、これをそれぞれのカムの幅に切断することによってカムを製造する方法が記載されている。この方法で製造されたカムは、通常は中空円筒状であるシャフトに対して軸方向に挿入され、シャフト上に固定される。この固定は、例えばレーザー溶接、中空シャフトを高内圧成形加工(IHPF)で拡大する方法、シャフトの外径がカム内径より大きい部分にカムを挿入して噛み合いありおよび噛み合いなしで接続するなど様々な方法で行われる。この噛み合いなしおよび噛み合いありの接続は、カムのベース円領域に突出部または凹部を形成する(WO‐A1‐03/012262の図6)ことによって、さらに改善できる。この種のカムの製造では、カムの輪郭が非円形であることによって、カムの凸部領域において、シャフトとカムの内側面との間に空洞ができ、この空洞がカムの機械的安定性に悪影響を与える可能性がある。したがってWO‐A1‐03/012262では、機械的な補助のために、この空洞に詰め物をすること、または両側面溶接したカバーによって空洞を閉じることが提案されている(図4)。さらに、カムとして使用する管の断面内部の管壁の厚みを適切に変化させることによって、カムとシャフト間の包囲(包囲角)を増加させることもできる(図3)。ただしこの方法では、カムの製造が煩雑で、かつ柔軟性に欠ける。カムの材料が最初から管状であるため、管の内側面を機械加工して突起などの形状を製作すること、またはシャフトへの包囲範囲の角度を変えるために各種の成形加工方法によって管壁の厚みを局所的に変化させることは、かなりの困難を伴う。さらに、経済的な理由によって、数メートルの長さの管から多数のカムを同時に加工しなければならず、製造が柔軟性を欠く結果となる。最後に、元が管状の材料を使用する場合、カムシャフトの機械的性質を最適化するために複数の層から構成される素材(硬化処理しやすい材料や溶接しやすい材料など)を製造して使用することは、かなり煩雑である。
【0004】
WO‐A1‐03/008842には、少なくとも1個のカップ状でベース部分を有する板金部品からカムを製作するカムシャフトの製造方法が記載されている。ベース部分には、管状シャフトを受容するための開口部が設けられている。シャフト上に挿入され、カムの受入用開口部に到達し、シャフトとカムの接続部品として機能するスリーブによってカムはシャフト上に固定される。このスリーブはカムとシャフトの両方に対して、噛み合いあり、噛み合いなし、または統合的な方法で接続される。このカムの製造方法は、簡単で柔軟性がある。ただしカムのシャフト上への固定は、介在するスリーブのため、比較的困難で複雑である。
【0005】
DE‐C1‐10150093には、最初に別の工程でカムリングを機能的に製造しておき、高内圧成形(IHPF)プロセスによって、中空のシャフトに対して噛み合いなしおよび噛み合いありで接続されるカムシャフト製造方法が記載されている。カムは2層構造で、2種類の異なる材料のリングを互いに噛み合いなしおよび噛み合いありで接続して構成される。内側のリングは柔軟で塑性変形可能な材料からなり、カムの凸部で厚みを増やすことができる。この方法には、上記のWO‐A1‐03/012262と同様の短所がある。
【0006】
US‐A‐4,774,852には、中実材料によって構成され、円形の貫通穴を設けた(例えば焼結した)カムを、軸方向の溝を持つ中間リングによって中空シャフトに固定するカムシャフトが記載されている。この種のカムの固定方法は、実用上まだ確立していない。鍛造したまたは焼結したカムを中空シャフト上に固定するその他の種類の固定方法には、シャフトの各部分上に成形加工操作によって(ピッチゼロのねじを転造加工するなど)、外径を拡大した部分を設けることにより、カムとシャフト間の噛み合いありおよび噛み合いなしの接続が達成されるものがある。予め製作した、少なくとも一部分でその貫通孔がより小さい直径を有するカムを、シャフトの外径拡大部分に軸方向に挿入することによってシャフトが変形する。この種の固定方法の例は、US‐A‐5,598,631、EP‐B1‐0291902、US‐A‐5,307,708、US‐B2‐6,502,538に記載されている。これらに共通する欠点は、個々のカムの製造プロセスの煩雑さである。
【0007】
最後に、出願人によるWO‐A1‐01/98020には、直線状の細長いプロフィルストリップから、プロフィルストリップに適切な曲げ加工を行い、自由端同士を溶接することによって組み立て式カムシャフト用のカムを作成し、このように製造したカムを中空シャフトに挿入してそれらをレーザー溶接または抵抗溶接によって一体化して中空シャフトに接続する方法が記載されている。これに関して、出願人は、WO‐A1‐02/100588において、カム自体を、各使用目的(ロッカー摺動面、溶接接合部)に対して最適化するために少なくとも2種類の異なる材料から製造することを提案している。単層または複層のプロフィルストリップに適切な曲げ加工を行って自由端同士を溶接するカムの製造方法は簡単、適切で、柔軟性があり、かつ材料と製造費用を節約でき、組み立て式カムシャフトの重量削減と製造コストの削減に大きく寄与する方法である。さらに、この方法により、異なる動作表面が互いに緊密に配置された経路を構成するカムプロフィルとカム組み立てを実現することができる。ただし、曲げて、溶接でつながれたカムを中空シャフトへ溶接することは、比較的複雑度の高い装置と高度な工程管理システムを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、プロフィルストリップから製作するカムの利点と簡単な固定方法を組み合わせたカムシャフトとその製造方法を定義することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1と請求項15のすべての特徴によって実現される。発明の核心部分は、1個または複数のプロフィルストリップから、特に曲げ加工し、その自由端を溶接するリング形状成形加工によって製造した個別のカムを、シャフトに軸方向に挿入して、共に噛み合いありおよび/または噛み合いなしでシャフトに接続された組み立て式カムシャフトを製造することからなる。このカムは、プロフィルストリップから製造する性質のために、一般的に、シャフト上で包囲角度が360度より大幅に小さいということに注意する必要がある。したがって、一般的に噛み合いありおよび/または噛み合いなしでのシャフトへの接続に使用できる外周面の面積が少ないだけでなく、カムの凸部では、カムの内側面とシャフトの間に空洞が形成されることから、この領域においてカムの機械的安定性が低下する。このため、カムに作用する力の性質と大きさによっては、カムに対する望ましくない変形や、運転中のカムの破損などを防止するために追加の手段を備えなければならない。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、シャフトは管状の形状である。これは、材料の節約に寄与するだけでなく、カムシャフトの完成品の重量と慣性モーメントを大幅に減少させる効果がある。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、カムを配置する領域において、シャフトは拡大した外径を有し、特に拡大した外径を有する領域で、外周上のビードがシャフトに組み入れられていることを特徴とする。これらの手段の結果、カムの確かな固定がより簡単に達成できる。
【0012】
外径の拡大に関連して、特に耐荷重の大きなカムに対しては、カムが回転の危険のない座部は、カムがリングの内側面上に、特に半径方向の内側に向けた突起またはリブなど、シャフトに対する噛み合い接続を実現する手段を設けることによって達成される。カムをシャフトに挿入するに従い、これらの突起またはリブは、外径を大きくした領域に食い込み、特に有効な噛み合い接続を実現する。
【0013】
カムの自由端は、抵抗溶接によって共に溶接接合するのが望ましい。抵抗溶接によって形成される溶接接合部の周辺のビードは、少なくとも外側面上においては、再加工によって除去しなければならない。カムの内側面上では、ビードを噛み合い接続の実現のために利用することができる。リングの内側の溶接シーム領域に溶接時に形成されるビードを収容する凹部を有するカムの場合には、ビードは、これにより相殺されるため、実施する必要はない。
【0014】
本発明のカムシャフトの更に別の実施形態は、、ストリップの厚みが一定の場合のカムの輪郭によって予め定まる包囲角より大きな包囲角、特に360度で、カムがシャフトを包囲するように、その厚みが長さに亘って変化するプロフィルストリップからカムが製造されることを特徴とする。この場合、プロフィルストリップには、中心平面から対称に2つのショルダー部を設ける、あるいは中心部に厚みを増した部分を形成することができる。このように包囲角を増加させることは、カムとシャフトの間の噛み合いありおよび/または噛み合いなしでの接続をさらに改善する。
【0015】
本発明のカムシャフトの他の好ましい実施形態は、厚みが均一なプロフィルストリップを使用してカムを製造し、カムのリングの内側面上の包囲角(UW)を成形加工プロセスを用いて増やし、特に360度にすることで特徴づけられる。これは、特に、凸部領域におけるリングの内側面上に1個の刻み目部を備えたカムによって実現される。
【0016】
最終的に、カムをそれぞれの条件にできるだけ良好に適応させるために、カムが異なる2種類の材料の層を上下に重ねたプロフィルストリップから製造されると有利である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態の1つは、カムの座部としてマーキングされた一部分において、シャフトが最初にその外径に関して拡大されること、および関連するカムがついでシャフト上の当該部分に挿入されることによって特徴づけられる。特に、外径を拡大するために、本明細書では、シャフト上に外周のビードが転造加工操作によって製作される。
【0018】
カムの固定に関しては、追加の成形加工工程、特に刻み目部の刻印によって、プロフィルストリップをカムに変形する際に、カムの凸部領域において材料が軸方向の外側に移動され、そこで隆起され、完成後のカムがシャフトに対して360度の包囲角を持つようにすることが、特に有利である。この追加の成形加工工程は、カムの凸部を成形加工方法によって形状形成した後に実施することが望ましい。
【0019】
その他の実施形態は、従属クレームから派生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明について、図面に関連付けて、実施形態を参照して以下に詳細に説明する。
【0021】
例えば公開公報US‐A‐4,947,547などの先行技術で知られる組み立て式カムシャフトの製造方法の種々の工程を図1〜図5に再現する。はじめに、図1に示した形式のカム10は、粉末冶金(焼結)によって製造される。ただし、鋳造または鍛造も可能である。環状のカム10は円形の開口部11を有し、これを通して、図2のシャフト13に配置できる。カム10の制御機能は、片側に設けた凸部49によって実現され、この凸部の外側の走行面が、例えばロッカーなどの制御要素で下げられているときには、当該制御要素が引き上げられることになる。リングの内側、すなわち開口部11の境界面には、外周上に分散して複数の軸方向に伸びる突起またはリブ12が配置され、これらは、カム10とシャフト13の間の噛み合い接続に非常に重要な役割を果たす。カム10は中実材料から製作され、従って外側の走行面と円形開口部11の間に空洞は存在しない。カム10がシャフト13の上に座ると、それはシャフトを完全に包囲するので、包囲角は360度になる。したがって開口部11の境界面の全体が、シャフト13に対する噛み合いなしおよび/または噛み合いありの接続に利用される。
【0022】
重量削減と材料節約の目的から、図2に示すシャフト13は、軸51に沿って延びる中空シャフトの形状にすることが望ましい。ただし、中実のシャフトも考え得る。カム10をシャフト上に噛み合いありおよび噛み合いなしで固定するために、カムの次の位置を定められているシャフト13の部分上で、成形加工プロセスにより、シャフト13の外径を先ず局所的に拡大する。この目的のため、シャフト13上にはピッチ寸法ゼロのねじを転造加工するのが望ましく、このピッチゼロのねじは、外周上の複数の平行なビード14(図3)で特徴づけられる。極小のピッチのネジも考え得る。その他の局所的な外径の拡大方法は、US‐A‐5,598,631に記載されている。拡大した外径は、カム10内の開口部11の内径にほぼ等しい。突起12の高さは、対向する突起間の距離が、シャフトの変化していない部分の外径より幾分大きくなるように選ばれる。
【0023】
次に、上記のように準備されたシャフト13に対してカム10を軸方向に挿入する。局所的に外径が拡大した部分にカム10が到達する場合、突起12がピッチゼロのねじのビード14に食い込み、シャフト13とカム10の噛み合いのある接続が確立する。記載した方法で1個のカム10がシャフト13上に固定されると、次のカム(図5の10’)に対して別のシャフト部分にビード15(図4)が装備され、従って外径が拡大される。その後、次のカム10’をこの部分に挿入して図5のように固定する。このプロセスを順次繰り返し、シャフト13上に必要な数のカムを必要な方向に向けて固定する。この方法によって組み立てられたカムシャフト16は、定められた用途に供するために再加工(直線化、平滑化など)される。
【0024】
すでに概要の項で述べた通り、WO‐A1‐01/98020には、曲げ加工と溶接によって、プロフィルストリップから組み立て式カムシャフト用のカムを製造する方法が記載されている。このための基本的な工程を、図6〜図9に模式的に再現する。カムの製造の出発点は、図6に示す種類のほぼ長方形に近い断面を持つプロフィルストリップ17である。プロフィルストリップ17は、例えば表面硬化処理が可能な鋼など、単一の材料から構成することができる。ただし、特性を最適化する目的で、複数の層にすることもできる(図15Bを参照)。プロフィルストリップが単一の材料から構成する場合は、丸鋼線(ワイヤー)から成形加工方法、特に圧延法で製作すると、特に費用効率が高くなる。これは、鋼線が一般的に安価に提供されているからである。
【0025】
最初の成形加工工程では、図7に示すように、主に成形型18と成形ツール19から構成される第一の成形加工装置20において、直線状のプロフィルストリップ17が曲げ加工で形成される。これにより、後にカムの凸部となる領域が形成される。このV字形の中間製品を、図8に示すように、主に台座部21とマンドレルまたは曲げ加工コア25および2個の成形ツール22,23から構成される第二の成形加工装置24において、第二の成形加工、すなわち曲げ加工プロセスに付される。ここでは、V字形中間製品のアーム部分を成形ツール22,23によって、マンドレル25の周囲で、自由端が端面同士で対向するように曲げられ、閉じたリングが形成される。次に、この閉じたリングを突き合わせ接合部で溶接する。この目的のため、このリングを、例えば図9に示すような溶接装置26に挿入し、圧力によって一方が他方に動かされる2つの電極または圧縮ダイス27,28によって抵抗溶接して接合する。この抵抗溶接では、溶接シーム29の周囲にビード31が形成されるが、このビードには溶接の再加工が必要である。
【0026】
このような方法で製造された図10のカム30が、シャフト13上に軸方向に挿入されて噛み合いなしおよび/または噛み合いありで前記シャフト13に接続された場合、カム30(図11)の凸部49の下側に空洞33が形成される。このとき、包囲角UW(図10)は、360度を大幅に下回る。従って、カム30のリングの内面の一部のみがシャフト13に対する噛み合いなしまたは噛み合いありの接合に関与する。面積の減少にもかかわらず、噛み合いなしおよび噛み合いありの接続を改善し、カム30とシャフト13の間の接続を良好かつ強固にするため、リングの内側面上で、例えば外周面に亘って分布して配置された突起(図1の突起12に対応)またはリブ32(図12)のような手段を追加する。こうした手段は、プロフィルストリップからカムを製作する際に、適切な方法によってリングの内側面上に成形加工方法によって製作できる。ただし、これによって空洞の領域におけるカム30の変形性は影響されない。
【0027】
シャフトと挿入カムの間の噛み合いなしおよび/または噛み合いありの接続は、プロフィルストリップを、厚みを変化させた適切な形状のものとすることにより、包囲角UWを増やすか、または完全に360度にすることによりさらに改善の可能性がある。そのような形状形成の例を2つ、図13および図14に示す。図13は、中央部に中心線に対称な肉厚部35を有するプロフィルストリップ34(図13A)と、これより曲げ加工および溶接加工によって製作されたカム36(図13B)で、このカムには、凸部49とシャフトの間に内部空洞はなく、完全な360度の包囲角を有する。したがってこのカム36は、図1に示す従来のカム10とほぼ同等の機械的および強度的特性を有する。シャフトへの噛み合いありおよび噛み合いなしの接続もまた、図1のカム10に匹敵する。リング内側面の突起12もまた、同様に機能する。
【0028】
図14は、中央部に中心線に対称に配置された2つのショルダー部37,38を有するプロフィルストリップ34’(図14A)と、これより製作されたカム36’(図14B)で、このカムの空洞は図10のカム30と比較して減少し、その包囲角は増加している。このカム36’でも、当然のことながら、噛み合いなしおよび噛み合いありの接続を改善する手段をリング内側面に設けることができる。さらに、プロフィルストリップ34’の両端に凹部39、40(図14の破線部)を設けることにより、完成後のカム36’において、溶接シーム29の領域に凹部(41)が追加される。この凹部41により、抵抗溶接の際にリングの内側に形成されるビード(図9の31)のための空間が製作される。これによって、リングの内側面上の溶接シームの(煩雑な)再加工は、不要になる。
【0029】
特に有利な組み立て式カムシャフトの製造方法は、厚さが一定の平らなプロフィルストリップから、曲げ加工後、溶接加工して包囲角が360度のカムを製作することである。包囲の完全角度は、カムとシャフトの間の空洞を満たし、包囲角を360度に増すために、カムの凸部の下の領域からカム材料を軸方向に外側に強制的に移動させる、追加の、介在された成形加工プロセスを導入することによって実現する。この方法の個々の工程を、図15〜図23に再現する。プロセスは図15に示す厚さが一定の平らなプロフィルストリップ17および17’から始まる。このプロフィルストリップは単一材料(図15Aのプロフィルストリップ17)または複数の層を持つ材料(図15Bの、層17aおよび17bを持つプロフィルストリップ17’)で作ることができる。層17aおよび17bは、例えばWO‐A1‐02/100588に似た方法で選択できる。
【0030】
第一の成形加工工程では、第一の成形加工装置20において、第一の成形ツール19(ダイ)および成形型により、プロフィルストリップ17または17’を曲げ、後にカムの凸部49になる部分を成形する。この成形加工工程は、図7に示した操作に類似している。この方法で曲げたプロフィルストリップ17,17’を、第二の成形加工装置42内の同じ成形型18の中で、第二の成形ツール43(刻印ダイ)が打刻動作によって、曲げられたプロフィルストリップ17,17’の内側にプレスされる第二の追加の成形加工工程(図17、図19)に付す。図18の斜視図に示すように、第二の成形ツール43は、その最上部に上方に突出した頭部44を有し、これはその下に横たわる円弧形状の2つのショルダー部47,48に水平に接続されている。ショルダー部47,48の曲率半径は、シャフトを包囲するカム内の開口部の半径に等しいように選択される。
【0031】
図19に示すように、第二の成形ツール43の頭部44によって、後のカムの凸部49領域内に、刻み目部45(図20〜図22、図24)が製作される。刻み目部45の結果、図22に示す完成後のカム46’の領域Xに沿って、図24に示したカムの断面から判るように、体積V3のカム材料が外側に移動され、そこで隆起され、体積V1およびV2の壁面を形成する。半径の内側方向において、これらの壁面は、第二の成形ツール43のショルダー部47,48によって決定される。このようにして、カムの両側面において、図11に示した空洞33が閉じられる。この隆起した壁面により、カムが凸部領域49で機械構造的に安定化される。また同時に、カムの縁領域において、完全な360度の包囲角に達し、シャフトとカムの間の噛み合いなしおよび噛み合いありの接続に有利な改善をもたらす。
【0032】
第二の成形加工工程において成形され、刻み目部45を設けたプロフィルストリップは、第三の成形加工装置24の内部で図20に示す第三の成形加工工程において曲げられて閉鎖したリングになり、その自由端はそれらの端面で相対する。この成形加工工程は、図8に示すものと類似しているが、曲げが円形断面を持つマンドレル25’の周囲で行われる点が異なっている。最後に、このようにして閉じられたカムリングは、図9に類似した図21に示すように、抵抗溶接によって溶接される。この得られたカム46は、シャフトに挿入できる円形の開口部によって、特徴づけられる。もちろん、この形式のカムにおいて、例えば突起12のような噛み合い接続を改善する手段をリングの内側に再び組み入れることもできる。その場合、図22に示すようなカム46’が得られ、図23に示すように、シャフト13に挿入してカムシャフト50を形成し、噛み合いありおよび/または噛み合いなしの接続によって固定することができる。
【0033】
本発明を、以上説明したように単一で長尺のプロフィルストリップを曲げ加工の後に溶接することによってカムを形成する実施形態を参照して説明してきた。カムはまた、当然のことながら、自由端で相互に溶接された複数のより短いプロフィルストリップから成形または組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】先行技術による焼結または鍛造されたカムの斜視図である。
【図2】図1に示したタイプのカムを配設するために外径が拡大された1つの領域を有する先行技術による管形状のシャフトの斜視図である。
【図3】ビードを転造加工することによって外径を拡大した図2のシャフト領域の側面図である。
【図4】図1による第一のカムを挿入している図2のシャフトを示す図である。
【図5】図1の第二のカムを挿入し、先行技術により挿入カムとカムシャフトを形成している図3のシャフトを示す図である。
【図6】曲げと型押し加工法によって製作される、それ自体知られている溶接カムの製造の出発点を形成するプロフィルストリップの側面図である。
【図7】最初の成形加工操作において、カムの輪郭形状がプロフィルストリップに組み込まれる最初の成形加工装置である。
【図8】型押し加工した図7のプロフィルストリップの自由端が閉じたリングに曲げる第二の成形加工装置である。
【図9】図8の曲げられたリングの接続されていない両端を抵抗溶接によって溶接する溶接加工装置である。
【図10】図6〜図9によって製造されたカムによるシャフト表面への包囲角度である。
【図11】完全な包囲に必要な追加領域である。
【図12】図6〜図9によって製造された、シャフト上でカムが回転する危険がないようにする固定のための軸のリブを有するカムである。
【図13】特殊形状のプロフィルストリップ(図13A)と、それを使って図6〜図9によって形成した、追加領域を含むカム(図13B)である。
【図14】特殊形状のプロフィルストリップ(図14A)と、それを使って図6〜図9の工程によって形成した、追加領域が減少したカム(図13B)である。
【図15】型押し、曲げ、溶接加工によるカムの製造のための、単一の材料からなる2つのプロフィルストリップ(図15A)、ならびに二層の材料から作られたプロフィルストリップ(図15B)である。
【図16】第一の成形加工装置内における図7と同様の成形加工操作である。
【図17】〜
【図19】カムの凸部の内側の領域において材料を軸方向に押し出すことによって両側に追加領域を作成する特殊な成形加工ツール(
【図18】)を用いて、予め型押しをしたプロフィルストリップの革新的な成形加工である。
【図20】予め型押しおよび成形したプロフィルストリップの、前述の図8に相当する曲げ加工操作である。
【図21】リングに曲げたプロフィルストリップの、前述の図9に相当する溶接加工操作である。
【図22】図15〜図21によって製作し、空洞部が埋められたカムの図1に相当する図である。
【図23】図22のカムの図2におけるシャフトへの挿入を示す図である。
【図24】図17〜図19による成形加工における体積の比率を示した断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10,10’ カム(焼結、鍛造)
11 開口部
12 突起
13 シャフト(特に、管状のもの)
14,15 ビード
16 カムシャフト
17,17’ プロフィルストリップ
17a,17b 層
18 成形型
19 成形ツール
20 成形加工装置
21 台座部
22,23 成形ツール
24 成形加工装置
25 マンドレル
26 溶接装置(抵抗溶接)
27,28 電極(圧力ダイ)
29 溶接シーム
30,30’ カム(曲げ、溶接)
31 ビード
32 リブ
33 空洞
34,34’ プロフィルストリップ
35 肉厚部
36,36’ カム(曲げ、溶接)
37,38 ショルダー
39,40,41 凹部
42 成形加工装置
43 成形ツール
44 頭部
45 刻み目部
46,46’ カム(曲げ、溶接)
47,48 ショルダー
49 凸部
50 カムシャフト
51 軸
D 厚さ
UW 包囲角
V1,…V3 体積


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(13)に1個または2以上の環状のカム(30,30’;36,36’;46,46’)を挿入して噛み合いありおよび/または噛み合いなしの接続によって固定されたカムシャフト(50)であって、当該カム(30,30’;36,36’;46,46’)が、1個または2以上のプロフィルストリップ(17,17’;34,34’)から、成形加工、特に曲げ加工で環状に成形され、自由端同士を溶接接合して製作されることを特徴とするカムシャフト。
【請求項2】
シャフト(13)が管状形状であることを特徴とする請求項1に記載のカムシャフト。
【請求項3】
カム(30,30’;36,36’;46,46’)が配置される部分において、シャフト(13)が拡大した外径を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカムシャフト。
【請求項4】
拡大した外径を有する部分において、外周ビード(14,15)がシャフトに組み入れられていることを特徴とする請求項3に記載のカムシャフト。
【請求項5】
カム(30’,46’)がリングの内側面上に、シャフト(13)に対して噛み合い接続を形成する手段(12,32)を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のカムシャフト。
【請求項6】
噛み合い接続を形成するための手段が、半径の内側方向に突き出た突起(12)またはリブ(32)を備えることを特徴とする請求項5に記載のカムシャフト。
【請求項7】
カム(30,30’;36,36’;46,46’)の自由端同士が抵抗溶接によって溶接されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のカムシャフト。
【請求項8】
カムがリングの内側面上の溶接シーム(29)の領域において、凹部(41)を有し、該凹部が溶接中に形成されるビード(31)を収容することを特徴とする請求項7に記載のカムシャフト。
【請求項9】
カム(36,36’)が、ストリップの厚みが一定の場合のカムの輪郭によって予め定まる包囲角よりも大きい包囲角(UW)、特に360度でカム(36,36’)がシャフト(13)を包囲するように、ストリップの長さに亘って厚みが変化するプロフィルストリップ(34,34’)から製造されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のカムシャフト。
【請求項10】
プロフィルストリップ(34’)が、中央面に対称に配置された2つのショルダー部(37,38)を有することを特徴とする請求項9に記載のカムシャフト。
【請求項11】
プロフィルストリップ(34)が中央部に肉厚部(35)を有することを特徴とする請求項9に記載のカムシャフト。
【請求項12】
カム(46、46’)が一定の厚さのプロフィルストリップ(17、17’)から製造されること、およびカムのリングの内側面上で、包囲角(UW)が成形加工プロセスによって拡大され、特に360度にされることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のカムシャフト。
【請求項13】
カム(46、46’)が凸部(49)領域内のリング内側面上に刻み目部(45)を有することを特徴とする請求項12に記載のカムシャフト。
【請求項14】
カム(30,30’;36,36’;46,46’)が、上下に重ねた異なる材料の二層(17a,17b)を有するプロフィルストリップ(17’)から製造されることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載のカムシャフト。
【請求項15】
カム(30,30’;36,36’;46,46’)が、1個または2以上のプロフィルストリップ(17,17’;34,34’)を曲げた後に自由端同士を溶接して製造され、ついでシャフト(13)の予め決められた場所および予め決められた配置で固定される請求項1に記載のカムシャフトの製造方法であって、カム(30,30’;36,36’;46,46’)がシャフト(13)に挿入されることにより、シャフト(13)に噛み合いありおよび/または噛み合いなしで接続されることを特徴とするカムシャフトの製造方法。
【請求項16】
シャフト(13)がカムの座部としてマーキングされた部分で、最初に外径が拡大されること、および関連するカムがついでシャフト(13)のこの部分に挿入されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
外径の拡大のために、シャフト(13)の外周ビード(14,15)を転造加工操作によって作ることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カム(36,36’)の製造において、ストリップの厚さが一定である場合のカムの輪郭によって予め定められる包囲角よりも大きな包囲角、特に360度でカム(36,36’)がシャフト(13)を包囲するように、厚みの変化するプロフィルストリップ(34,34’)を利用することを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
カム(30,46’)のリングの内側面上に、成形加工プロセスによって、シャフト(13)への噛み合い接続を作るための手段(12,32)を作り、この手段が、特に半径の内側方向に突き出す突起(12)またはリブ(32)を備えることを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
プロフィルストリップ(17,17’)をカム(46,46’)に変形する際の追加の成形加工工程であって、特に刻み目部(45)の打刻によって、カム(46,46’)の凸部(49)領域で材料が軸方向に移動され、そこで隆起され、完成したカム(46,46’)がシャフト(13)を360度の包囲角で包囲することを特徴とする請求項15〜請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
カム(46,46’)の凸部が成形加工方法によって形成された後に、当該追加の成形加工工程が実施されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プロフィルストリップ(17,17’;34,34’)が丸鋼線から、成形加工方法、特に圧延方法によって作られることを特徴とする請求項15〜請求項21のいずれか一項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−524047(P2007−524047A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551705(P2006−551705)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000050
【国際公開番号】WO2005/075143
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(502370889)
【Fターム(参考)】