説明

カメラ、及び、レンズ鏡筒

【課題】光学系の曇りを低減し得るカメラ、及び、レンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】
光学系(31、32)による像が形成されるカメラ本体(10)と、カメラ本体(10)の内部に備えられた電源である電池(2)と、電池(2)が電源を供給する際に発生する熱を光学系(31、32)に伝達する熱伝達手段(5a)とを含むカメラ(1)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、及び、レンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばスキー場のような気温が低い屋外でカメラを使用した後、気温の高い室内にカメラを持ってきた場合、カメラのレンズ自体が低温のままでレンズ表面に温かい空気が接触し、レンズの表面が結露して曇ってしまう。
【0003】
このような結露を防止する手段としてカメラ内部の電気回路が放出する熱をレンズに伝達してレンズを温め、結露を防止する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−20798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、光学系の曇りを低減し得るカメラ、及び、レンズ鏡筒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施例を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、光学系(31、32)による像が形成されるカメラ本体(10)と、カメラ本体(10)の内部に備えられた電源である電池(2)と、電池(2)が電源を供給する際に発生する熱を光学系(31、32)に伝達する熱伝達手段(5a、5b、5c、5d)とを含むカメラ(1)であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたカメラ(1)であって、電池(2)は燃料電池であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されたカメラ(1)であって、電池(2)は直接メタノール燃料電池であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたカメラ(1)であって、熱伝達手段(5a、5b、5c、5d)は、光学系(31)と電池(2)との間に備えられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載されたカメラ(1)であって、光学系(31、32)は、複数のレンズを含み、熱伝達手段(5a、5b、5c、5d)は、カメラ本体(10)から最も離れたレンズ(31)に熱を伝達することを特徴とするカメラ(1)。
【0010】
請求項6に記載の発明は、1から請求項5までの何れか1項に記載されたカメラ(1)であって、光学系(31、32)を備えたレンズ鏡筒(3)を含み、レンズ鏡筒(3)は、カメラ本体(10)から取外し可能であることを特徴とするカメラ(1)。
【0011】
請求項7に記載の発明は、カメラ本体(10)に取付け可能なレンズ鏡筒(3)において、カメラ本体(10)に像を形成する光学系(31、32)と、カメラ本体(10)に電源を供給する電池(2)が発生する熱を光学系(31、32)に伝達する熱伝達手段(5a、5b、5c、5d)とを含むレンズ鏡筒(3)であることを特徴とする。
【0012】
なお、符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学系の曇りを低減し得るカメラ、及び、レンズ鏡筒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。なお、本発明のカメラは、例えば、一眼レフ型のスチルカメラ、コンパクト型のスチルカメラ、ビデオカメラなどとすることができるが、以下の実施例では、一眼レフ型のカメラを例にとって説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本実施例に係るカメラの一実施例を示す断面図である。図1において、本実施例のカメラ1は、レンズ31、32による像が撮像素子(図示せず)に形成されるカメラ本体10と、カメラ本体10の外部に備えられたレンズ鏡筒3とを含む。レンズ鏡筒3は、複数のレンズ31、32を支持するレンズ筐体30と、カメラ本体10に接続するためのマウント部材300(図7参照)とを含む。
【0016】
燃料電池2は、カメラ1の電源であり、カメラ本体10の内部に備えられている。図において、燃料電池2は、カメラ本体10の上部に配置されているが、その配置は任意である。燃料電池2の電力は、例えば、焦点の検出、ストロボ発光、デジタルカメラであればCCD素子の駆動、フィルムカメラであればフィルムの巻上げなど、カメラの任意の機能に使用できる。
【0017】
チューブ5aは、燃料電池2とレンズ31との間に備えられている。燃料電池2の周辺には、カメラ本体10の壁面90で仕切られた空気室9が備えられている。チューブ5aとカメラ本体10との接続構造、及び、チューブ5aとレンズ鏡筒3との接続構造も任意である。
【0018】
このような構成を有する本実施例のカメラ1では、カメラを使用するために電源を入れると、燃料電池2が発電する際に熱が発生し、燃料電池2の周辺の空気室9の空気が温められる。温められた空気は、チューブ5aを介してレンズ31に伝達されレンズ31を温める。これにより、レンズ31の結露が低減し、レンズの曇りが防止されることとなる。
【0019】
本実施例のカメラ1は、電源として燃料電池2を用いるので、電力供給時に化学変化が起こり、カメラ内部の一般的な電気回路素子や乾電池等で発生する熱量と比較して大きな熱量が発生する。このため、大きな熱量を用いて、レンズ31を効率的に温めることができる。
【0020】
例えば、望遠レンズ鏡筒等のようにレンズ31とカメラ本体10との間隔が大きいレンズ鏡筒3においては、カメラ本体10から最も離れたレンズ31に結露が生じ易いので、結露を低減させるためには、カメラ本体10から最も離れたレンズ31を温めることが好ましい。しかし、本実施例は、レンズ31を温める構成に限定されるものではなく、レンズ31以外のレンズ32等を温める構成を採用してもよい。
【0021】
また、本実施例は、レンズ31を温めるための電気回路素子を必要としないから、その分だけ、低消費電力化できる。また、部品点数の増大を回避し、カメラの小型化、軽量化、及び低コスト化を図ることができる。
【0022】
なお、図示の実施例では、像側(カメラ本体10が配置された側)からレンズ31を温めているが、物体側(カメラ本体10が配置された側とは反対側)からレンズ31を温めてもよい。
【実施例2】
【0023】
図2は本実施例に係るカメラ1の別の一実施例を示す断面図である。本実施例において、カメラ本体10の内部には、ファン6が備えられている。ファン6は、例えば、燃料電池2で駆動される。
【0024】
このような構成を有する本実施例のカメラは、燃料電池2で温められた空気室9の空気がファン6により効率的にレンズ31に伝達され、レンズ31が効率的に温められ、レンズ31の結露がより確実に防止される。
【実施例3】
【0025】
図3は本実施例に係るカメラ1の更に別の一実施例を示す断面図である。本実施例において、チューブ5aの内部には、例えば、シリカゲルなどの吸湿剤7と空気中のゴミを除去するフィルター8が設けられている。
【0026】
本実施例では、吸湿剤7により、チューブ5aを介してレンズ31に伝達される空気の湿度が低下するから、レンズ31の結露がより確実に防止される。また、フィルター8によりゴミが除去されるので、レンズ31にゴミが付着してレンズ31の光学性能が劣化する事態を回避できる。
【実施例4】
【0027】
図4は本実施例に係るカメラ1の更に別の一実施例を示す断面図である。本実施例において、剛性部材で構成された管5bは、レンズ筐体30の内側に備えられている。管5bは、例えば、ステンレス、アルムニウム等の金属材料で構成することができる。また、管5bは、レンズ筐体30と同一の材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0028】
図示のカメラ1は、マウント部材300(図7参照)を用いてカメラ本体10とレンズ鏡筒3とを接続する際に、管5bとファン6とが接続されるから、カメラ本体10とレンズ鏡筒3とを接続するだけで、燃料電池2で温められた空気室9の空気をレンズ31に伝達する流路が完成し、カメラ使用前の作業が容易になる。
【0029】
図示のカメラ1は、レンズ筐体30と管5bとが一体の構造であるから、例えば、ズームレンズなどのようにレンズ筐体30が伸縮した場合でも、管5bの長さが自動的に伸縮することとなる。
【0030】
なお、図示の実施例では、管5bとファン6とを接続する構成を図示したが、ファン6を省略して管5bと空気室9とを直接に接続してもよい。
【実施例5】
【0031】
図5は本実施例に係るカメラ1の更に別の一実施例を示す断面図である。本実施例において、レンズ筐体30は、内側が二重構造になっており二重構造の隙間が管5cとなっている。
【0032】
本実施例では、管5cに供給された温められた空気室9の空気がレンズ筐体30全体を温め、レンズ31も温められる。また、レンズ筐体30が二重構造になっており、管5cに供給された温められた空気がレンズ31に直接的に触れることがないので、レンズ31にゴミが付着することも防ぐ事ができる。
【実施例6】
【0033】
図6は本実施例に係るカメラ1の更に別の一実施例を示す断面図である。本実施例において、例えば、金属平板からなる熱伝導板5dは、レンズ筐体30の内側に備えられた第1の部分51と、カメラ本体10に備えられた第2の部分52とを含む。第1の部分51の少なくとも一部は、レンズ31に接触させるか、その近傍に備えることが好ましい。第2の部分52の少なくとも一部は、燃料電池2に接触させるか、その近傍に備えることが好ましい。
【0034】
本実施例では、燃料電池2の熱で温められた熱伝導板5dがレンズ筐体30全体を温め、レンズ31も温められる。
本実施例では、マウント部材300(図7参照)を用いてカメラ本体10とレンズ鏡筒3とを接続する際に、第1の部分51と第2の部分52とが接続され、燃料電池2の熱を伝達する熱伝導路となるから、カメラ使用前の作業が容易になる。
【0035】
また、熱伝導板5dは、伸縮できる構造であることが好ましい。例えば、ズームレンズなどのようにレンズ筐体30が伸縮した場合に、レンズ筐体30の伸縮に追従できるからである。
【実施例7】
【0036】
図7は本実施例に係るレンズ鏡筒の一実施例を示す断面図である。本実施例において、レンズ鏡筒3は、カメラ本体(図5参照)から取外し可能な望遠レンズ鏡筒である。レンズ鏡筒3は、レンズ31、32と、カメラ本体10に接続するためのマウント部材300と、燃料電池(図5参照)により生じた熱をレンズ31に伝達する管5cとを含む。
【0037】
図示のレンズ鏡筒3は、マウント部材300を用いてカメラ本体と接続され、これにより、燃料電池とレンズ31とが管5cを介して接続される。このため、上述した実施例1〜6に示したカメラにより得られる優れた作用効果を享受することができる。
(変形例)
本実施例は、以下の変形も可能である。
(1)本実施例では、熱をレンズ31に伝達する際に、上述した可撓性のあるチューブ5a、剛性部材で構成された管5b、5c、金属平板からなる熱伝導板5dを用いたけれども、これに代えて、例えば、金属製、合金製の線材などを用いてもよい。
(2)本実施例では、発電時に熱を発生させる手段として、発熱量が大きい燃料電池2を用いたけれども、これに代えて、燃料電池以外の電池を用いてもよい。電池として、例えば、直接メタノール燃料電池(DMFC)を用いることにより、小型化を図ることもできる。
(3)本実施例では、レンズ31、32を用いて説明したけれども、燃料電池2から熱が伝達される光学系は、レンズに限定されるものではなく、フィルタ、偏向版、保護膜などであってもよい。また、光学系は、単数のレンズであってもよいし、複数のレンズなどから構成されるレンズ群またはレンズ群の一部であってもよい。更に、光学系は、撮影光学系であってもよいし、ファインダなどの観察光学系等であってもよい。
(4)レンズ鏡筒3は、カメラ本体10から取外しできるものであってもよいし、取外しできないものであってもよい。また、レンズ鏡筒3に含まれるレンズ群の数、及び、レンズ群に含まれるレンズの数は任意である。
(5)燃料電池2から生じる熱とともに、電気回路要素、撮像素子等から生じる熱をレンズ31に供給する構成も好ましい。より大きな熱量をレンズ31に与えることにより、より確実に結露を防止し得るからである。
【0038】
なお、本第1実施例〜第7実施例及び変形例は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施例によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1のカメラを示す断面図である。
【図2】実施例2のカメラを示す断面図である。
【図3】実施例3のカメラを示す断面図である。
【図4】実施例4のカメラを示す断面図である。
【図5】実施例5のカメラを示す断面図である。
【図6】実施例6のカメラを示す断面図である。
【図7】実施例7のレンズ鏡筒を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 カメラ
10 カメラ本体
2 燃料電池
5a チューブ
3 レンズ鏡筒
31、32 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像が形成されるカメラ本体と、
前記カメラ本体の内部に備えられた電源である電池と、
前記電池が電源を供給する際に発生する熱を前記光学系に伝達する熱伝達手段とを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載されたカメラであって、
前記電池は燃料電池であることを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項2に記載されたカメラであって、前記電池は直接メタノール燃料電池であることを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたカメラであって、前記熱伝達手段は、前記光学系と前記電池との間に備えられていることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載されたカメラであって、
前記光学系は、複数のレンズを含み、
前記熱伝達手段は、前記カメラ本体から最も離れた前記レンズに熱を伝達することを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載されたカメラであって、前記光学系を備えたレンズ鏡筒を含み、
前記レンズ鏡筒は、前記カメラ本体から取外し可能であることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
カメラ本体に取付け可能なレンズ鏡筒において、
前記カメラ本体に像を形成する光学系と、
前記カメラ本体に電源を供給する電池が発生する熱を前記光学系に伝達する熱伝達手段とを含むことを特徴とする
レンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−212696(P2007−212696A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31825(P2006−31825)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】