説明

カメラの絞り制御装置およびカメラ

【課題】 信頼性の高いカメラの絞り制御装置およびカメラを提供する。
【解決手段】 絞り込み動作が開始され(ステップS109)、絞りレバー18が駆動されると、ラチェットギヤ車23が回転し、フォトカプラ27からパルス信号が出力される。演算回路130は、フォトカプラ27から出力される各パルス信号の間隔Tintを測定する(ステップS121)。そして、間隔Tintが所定値A以上であるときだけ、パルス数の合計値Psが、しきい値Pthrに達したか否かを判断する(ステップS123,S125)。ここで肯定判断されると、絞りマグネットMG2に電圧を印加して(ステップS113)、アーマチャ28を開放する。この結果、絞り停止レバー29がラチェットギヤ車23の回転を停止させることで絞りレバー18の駆動を停止させて、レンズの絞りを制御絞り値に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ絞りを駆動するカメラの絞り制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等に使用される絞り制御装置では、レンズに設けられた絞りを駆動するカメラ側の絞り駆動レバーの駆動量をギヤ列により増速・拡大し、ギヤの回転数としてフォトカプラ等により検出する。そしてこの検出値が所定の値となったとき、ギヤ列に対して制動をかけて当該ギヤ列とギヤ列に連動している絞り駆動レバーを停止させることで所望の絞り値を得ている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−76171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フォトカプラが出力するパルス信号にノイズが入ると、所望の絞り値が得られない恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるカメラの絞り制御装置は、レンズ絞りを初期値に設定する初期位置からレンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、絞り連動手段の動作に応じてパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、絞り駆動手段の動作を停止させる停止手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上であるパルス信号に基づいて、しきい値を算出するしきい値算出手段と、計数値算出手段が算出するパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、絞り駆動手段の動作を停止させるように停止手段へ信号を出力することで、絞り連動手段を制御位置で停止させるように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明によるカメラの絞り制御装置は、レンズ絞りを初期値に設定する初期位置からレンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、絞り連動手段の動作に応じてパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、絞り駆動手段の動作を停止させる停止手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さに対して所定の比率以上であるパルス信号に基づいて、しきい値を算出するしきい値算出手段と、計数値算出手段が算出するパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、絞り駆動手段の動作を停止させるように停止手段へ信号を出力することで、絞り連動手段を制御位置で停止させるように制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1に記載のカメラの絞り制御装置において、しきい値算出手段は、レンズ絞りの制御値に応じて所定時間を設定して、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上であるパルス信号に基づいて、しきい値を算出することを特徴とする。
(4) 請求項4の発明によるカメラの絞り制御装置は、レンズ絞りを初期値に設定する初期位置からレンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、絞り連動手段の駆動量に比例したパルス数となるようにパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、停止信号が入力されると、絞り駆動手段の動作を停止させるように駆動される停止手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上となるすべてのパルス信号について、停止手段へ停止信号を出力してから絞り駆動手段の動作が停止するまでの遅延時間を当該パルス信号の一周期で除したオーバーランパルス数を算出する、オーバーランパルス数算出手段と、制御位置まで絞り連動手段を駆動したときの絞り連動手段の駆動量に相当するパルス信号の計数値から、オーバーランパルス数算出手段が算出したオーバーランパルス数を減じたしきい値を算出するしきい値算出手段と、計数値算出手段が算出するパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、停止手段へ停止信号を出力する停止信号出力手段とを備えることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明によるカメラの絞り制御装置は、レンズ絞りを初期値に設定する初期位置からレンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、絞り連動手段の駆動量に比例したパルス数となるようにパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、停止信号が入力されると、絞り駆動手段の動作を停止させるように駆動される停止手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さに対して所定の比率以上となるすべてのパルス信号について、停止手段へ停止信号を出力してから絞り駆動手段の動作が停止するまでの遅延時間を当該パルス信号の一周期で除したオーバーランパルス数を算出する、オーバーランパルス数算出手段と、制御位置まで絞り連動手段を駆動したときの絞り連動手段の駆動量に相当するパルス信号の計数値から、オーバーランパルス数算出手段が算出したオーバーランパルス数を減じたしきい値を算出するしきい値算出手段と、計数値算出手段が算出するパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、停止手段へ停止信号を出力する停止信号出力手段とを備えることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明によるカメラは、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
(1) 請求項1および請求項4の発明によれば、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上であるときにしきい値を算出し、パルス信号出力手段から出力されるパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、絞り駆動手段の動作を停止させる信号を出力するように構成した。これにより、パルス信号出力手段が出力するパルス信号にノイズが入ることで、パルス信号の一周期の長さが所定時間未満となったときには、しきい値が算出されない。これにより、ノイズの影響を排除してしきい値を算出できるので、レンズ絞りを制御値に設定できる。したがって、安定した絞り制御が実現でき、絞り制御装置の信頼性を向上できる。
(2) 請求項2および請求項5の発明によれば、パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さに対して所定の比率以上であるときにしきい値を算出し、パルス信号出力手段から出力されるパルス信号の計数値がしきい値に達したときに、絞り駆動手段の動作を停止させる信号を出力するように構成した。これにより、パルス信号出力手段が出力するパルス信号にノイズが入ることで、パルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さと比較して所定の比率より短いときには、しきい値が算出されない。これによりノイズの影響を排除してしきい値を算出できるので、レンズ絞りを制御値に設定できる。したがって、安定した絞り制御が実現でき、絞り制御装置の信頼性を向上できる。
(3) 請求項6の発明によるカメラでは、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置を備えるように構成した。これにより、パルス信号出力手段が出力するパルス信号にノイズが入っても、ノイズの影響を排除してしきい値を算出して、レンズ絞りを制御値に設定できる。したがって、安定した露光が実現でき、カメラの信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜7を参照して、本発明によるカメラの絞り制御装置の第1の実施の形態を説明する。図1は、本発明によるカメラの絞り制御装置を搭載した一眼レフカメラボディとカメラボディに装着する撮影レンズを示した斜視図である。カメラボディに撮影レンズ101を装着すると、レンズ側絞りレバー46とカメラ側の絞りレバー18とが当接する。後述するように、レンズ側絞りレバー46は、カメラ側の絞りレバー18により駆動されて所定の絞り値に制御される。演算回路130は、シャッタ先幕とシャッタ後幕との走行状態をそれぞれ制御することによって、所定の露光時間を与える他、後述するように絞り制御装置の各部を制御する。
【0008】
図2は、カメラボディ内部の絞り制御装置の斜視図である。絞りレバー18は、軸X1に対して回動可能に支持され、その一端がレンズ側絞りレバー46に当接している。絞りレバー18に植設されたピン18aは、バネ17により押されて絞りレバー18に左旋力が与えられ、軸X1を中心に回動可能に支持された後述する絞り連動レバー15の腕15fに係止される。
【0009】
絞りレバー18の他端に設けられた扇形ギヤ18bは、増速ギヤ22の小ギヤ部22aと噛合している。増速ギヤ22の大ギヤ部22bはラチェットギヤ車23の小ギヤ部23cと噛合している。すなわち、扇形ギヤ18b、増速ギヤ22、およびラチェットギヤ車23により増速ギヤ列が構成されている。ラチェットギヤ車23のラチェットギヤ車23dには小穴23bが複数設けられ、このラチェットギヤ車23dを挟み込むようにフォトカプラ27が設けられている。
【0010】
絞り停止レバー29は、軸X2に回動可能に支持されて、一端にはラチェットギヤ車23dに係合するように係合部29cが設けられ、他端側には絞りマグネットMG2に吸着されるアーマチャ28が設けられている。この絞り停止レバー29は、バネ30により左旋力が与えられている。絞り停止レバー29の他端の当接部29bには、後述する絞りマグネット第2リセットレバー49が下降して当接する。
【0011】
絞り連動レバー15には、バネ19により右旋力が与えられている。軸X3に回動可能に支持されたスタートレバー31の切り欠き部31bにピン15bが係合して、絞り連動レバー15の右旋回が停止する。スタートレバー31には、バネ32により左旋力が与えられている。上述のようにスタートレバー31の一端には切り欠き部31bが設けられ、他端には当接部31cが設けられている。
【0012】
レリーズレバー33は、軸X4に回動可能に支持されて、バネ35により左旋力が与えられている。レリーズレバー33の一端側にはスタートレバー31の当接部31cに当接可能な当接部33bが設けられ、さらにその先端である端部33cは、後述するレリーズマグネットリセットレバー36に当接可能である。レリーズレバー33の他端側にはレリーズマグネットMG1に吸着されるアーマチャ34が設けられている。
【0013】
モータMにより駆動されるギヤ44には軸44bが設けられている。この軸44bの一端にはカム45が、他端には円板42が設けられ、カム45と円板42はギヤ44とともに一体的に回動する。ギヤ44にはピン44aが植設されており、ギヤ44が回転してピン44aがスイッチSW2の一方の接点片に当接するとスイッチSW2の接点が離間されて、スイッチSW2をOFFにする。このスイッチSW2は、モータMに連動するギヤ44が所定の位相にあるか否かを検出する検出手段となる。
【0014】
すなわち、ギヤ44が左回転方向に駆動されると、ピン44aは、スイッチSW2の一方の接点片をさらに押圧した後、一方の接点片との係合が解かれるので、スイッチSW2は接点が接触してONとなる。引き続きモータMが作動してギヤ44が1回転されると、ピン44aは再びスイッチSW2の一方の接点片に当接してスイッチSW2の接点を離間させる。このときスイッチSW2が再びOFFとなり、これを演算回路130で検出してモータMの作動を停止させている。つまりモータMは、ギヤ44の1回転ごとにギヤ44が所定の位相で停止するように制御される。
【0015】
カム45は、カム45が回転するにつれてその半径が大きくなるように設計された、すなわち、図2においてr1<r2<r3であるカム面を有し、絞り連動レバー15に設けられたローラ15dを介してカムフォロアとしての絞り連動レバー15を駆動する。カム45にはピン45aが植設されており、後述するリセットレバー38に当接してこれを回動させる。円板42にはピン42aが植設されており、後述する絞りマグネット第1リセットレバー48に当接してこれを左回転方向に回動させる。
【0016】
リセットレバー38は、軸X5に回動可能に支持されて、リセットレバー38の一端38bに係止しているバネ40により左旋力が与えられている。このリセットレバー38の一端38bは、軸X5に回動可能に支持されたレリーズマグネットリセットレバー36の上部に当接するよう略直角に折り曲げられている。リセットレバー38の下端38cは、回転したカム45のピン45aが当接するようになっている。リセットレバー38の下端38cにカム45のピン45aが当接すると、リセットレバー38はバネ40の左旋力に抗して右旋回する。
【0017】
レリーズマグネットリセットレバー36は、上述のように軸X5に回動可能に支持されて、バネ37により付与される右旋力によって、リセットレバー38の略直角に折り曲げられた一端38bへ係止されている。レリーズマグネットリセットレバー36が右旋すると、レリーズマグネットリセットレバー36の先端36bは、レリーズレバー33の端部33cと当接して、レリーズレバー33を右旋させる。これにより、レリーズレバー33に設けられたアーマチャ34がレリーズマグネットMG1に吸着される。
【0018】
絞りマグネット第1リセットレバー48および絞りマグネット第2リセットレバー49は、軸X6に回動可能に支持されている。絞りマグネット第1リセットレバー48は、一端側に植設されたピン48aに係止しているバネ53により右旋力が与えられ、固定ピン54に当接している。絞りマグネット第2リセットレバー49は、絞りマグネット第1リセットレバー48の中央付近に植設されたピン48bに係止しているバネ50により左旋力が与えられ、ピン49aが絞りマグネット第1リセットレバー48の他端側に当接している。
【0019】
後述するように、円板42が回転してピン42aが絞りマグネット第1リセットレバー48を左回転方向に押し上げると、絞りマグネット第1リセットレバー48とともに左旋される絞りマグネット第2リセットレバー49の先端49bが絞り停止レバー29の当接部29bに当接して絞り停止レバー29を右旋させる。これにより、絞り停止レバー29に設けられたアーマチャ28が絞りマグネットMG2に吸着される。図2に示すように、絞り制御装置の各部の回転軸は、レリーズレバー35を除き、すべて同一方向DRに配向されている。
【0020】
−−−動作説明−−−
上記構成のカメラの絞り制御装置の動作について、図2を参照して以下に説明する。図2は、撮影動作開始前の絞り制御装置の状態(待機状態)を示している。すなわち、撮影開始前の状態では、ピン15bがスタートレバー31の切り欠き部31bによって係止されることで、絞り連動レバー15はバネ19による右旋力に抗して停止している。絞り連動レバー15に従動する絞りレバー18は、レンズ側絞りレバー46をバネ47に抗して持ち上げている。このとき、レンズの絞りは開放状態である。
【0021】
絞り停止レバー29は、アーマチャ28が絞りマグネットMG2により吸着されているので、バネ30に抗して係合部29cとラチェットギヤ車23dとの係合が解除された姿勢である。レリーズレバー33は、アーマチャ34がレリーズマグネットMG1により吸着されているので、バネ35に抗して当接部33bとスタートレバー31の当接部31cとが離間した状態である。
【0022】
撮影動作開始前、モータMは停止している。モータMで駆動されるギヤ44に植設されたピン44aは、スイッチSW2の一方の接点片に当接してスイッチSW2の接点を離間させている。すなわち、撮影開始前の状態では、スイッチSW2はOFFである。カム45は、ローラ15dを押し上げて絞り連動レバー15を左旋させた後、ローラ15dから離間し、絞り連動レバー15の動作を制限しない位置で停止している。このとき、カム45に植設されているピン45aは、リセットレバー38の下端38cに当接する直前の位置で停止している。円板42は、絞りマグネット第1リセットレバー48からピン42aが離間した位置で停止している。
【0023】
カメラボディの不図示のシャッターボタンが押圧されてレリーズ信号が入力されると、アーマチャ34の開放に必要な所定時間だけレリーズマグネットMG1に電圧が印加され、アーマチャ34を開放する。この結果、バネ35による左旋力によりレリーズレバー33が左旋し、レリーズレバー33の当接部33bでスタートレバー31の当接部31cを押し下げる。スタートレバー31の当接部31cが押し下げられて、スタートレバー31が右旋され、切り欠き部31bと絞り連動レバー15のピン15bとの係止が解除されると、絞り連動レバー15は、バネ19の右旋力により右旋を開始する。これにより、絞り連動レバー15の腕15fが絞りレバー18のピン18aを軸X1に対して右旋させるので、絞りレバー18は右旋されて、絞り込み動作が開始される。すなわち、絞りレバー18の右旋により、レンズ側絞りレバー46がバネ47により動作して、レンズの絞りを開放状態から絞り込む。
【0024】
絞りレバー18の右旋により、小ギヤ部22aで扇形ギヤ18bに噛合する増速ギヤ22が左回転し、小ギヤ部23cで増速ギヤ22の大ギヤ部22bに噛合するラチェットギヤ車23が増速ギヤ22により増速されて右回転する。ラチェットギヤ車23の回転数は、ラチェットギヤ車23に設けられた小穴23bがフォトカプラ27を通過することで発生するパルス信号を演算回路130によって計測して検出する。これにより、絞りレバー18の駆動量、すなわちレンズの絞り値は、フォトカプラ27で発生するパルス数で計測できる。
【0025】
演算回路130によって計測されたフォトカプラ27で発生するパルス数が、後述する所定の計数値になると、演算回路130からアーマチャ28の開放に必要な所定時間だけ絞りマグネットMG2に電圧が印加され、アーマチャ28を開放する。この結果、バネ30による左旋力により絞り停止レバー29が左旋し、係合部29cがラチェットギヤ車23dに係合してラチェットギヤ車23の回転を停止させる。
【0026】
上述の絞り制御装置の動作とは別に、カメラボディに内蔵された不図示のミラーが撮影光路から待避するミラーアップの動作が実行される。次いで、周知の装置により不図示のシャッタが作動して撮影動作が行われ、引き続き各部のリセット動作が行われる。以下、リセット動作について説明する。
【0027】
リセット動作では、モータMが作動してギヤ44が左回転方向に駆動される。上述したように、ギヤ44は1回転すると再び停止する。このギヤ44が1回転する間に、以下に述べる各部のリセット動作が行われる。まず、レリーズマグネットMG1のリセットについて説明する。ギヤ44とともにカム45が左回転方向に回転すると、ピン45aがリセットレバー38の下端38cに当接してリセットレバー38を右旋させ、バネ37を介してレリーズマグネットリセットレバー36も一体的に右旋させる。レバー先端36bは、レリーズマグネットリセットレバー36の右旋により、レリーズレバー33の端部33cに当接してこれを押し上げ、アーマチャ34がレリーズマグネットMG1に吸着されるまでレリーズレバー33を右旋させる。
【0028】
リセットレバー38が右旋した際にバネ37によってレリーズマグネットリセットレバー36の先端36bがレリーズレバー33の端部33cを押し上げる力は、バネ35によってレリーズレバー33の端部33cを押し下げる力よりも大きい。アーマチャ34がレリーズマグネットMG1に吸着された後もリセットレバー38は右旋するが、このときにはバネ37が撓むことで、リセットレバー38の右旋量(オーバーチャージ分)を吸収する。以上の動作により、レリーズマグネットMG1のリセットが完了する。
【0029】
次に、絞りマグネットMG2のリセットについて説明する。図3に示すように、絞り停止レバー29がラチェットギヤ車23の回転を停止させた状態から、図4に示すように、円板42が回転してピン42aが絞りマグネット第1リセットレバー48を左回転方向に押し上げると、図4に示すように、バネ50による付勢力によって絞りマグネット第2リセットレバー49が絞りマグネット第1リセットレバー48とともに左旋される。絞りマグネット第2リセットレバー49が左旋されると絞りマグネット第2リセットレバー49の先端49bは、ラチェットギヤ車23dと係合している絞り停止レバー29の当接部29bに当接し、これを押し下げてアーマチャ28が絞りマグネットMG2に吸着されるまで絞り停止レバー29を右旋させる。
【0030】
絞りマグネット第1リセットレバー48が左旋した際にバネ50によって絞りマグネット第2リセットレバー49を介して絞り停止レバー29の当接部29bを押し下げる力は、バネ30によって絞り停止レバー29の当接部29bを押し上げる力よりも大きい。アーマチャ28が絞りマグネットMG2に吸着された後も絞りマグネット第1リセットレバー48は右旋するが、このときにはバネ50が撓むことで絞りマグネット第1リセットレバー48の左旋量(オーバーチャージ分)を吸収する(図4)。以上の動作により、絞りマグネットMG2がリセットされる。
【0031】
次に、絞りのリセット動作である絞り開放動作について説明する。カム45の左回転によりローラ15dに最も近いカム45のカム面は、カムの径が徐々に大きくなる、すなわちr1→r2→r3と変化していくので、ついにはローラ15dに当接し、ローラ15dを介して絞り連動レバー15を左旋させる。なお、カム45の形状は、上述の各マグネットMG1,2のリセット動作終了の後にカム45がローラに接するよう設計されている。
【0032】
カム45によって、絞り連動レバー15は、ピン15bがスタートレバー31の切り欠き部31bと係合するまで左旋される。絞り連動レバー15の左旋により、バネ17は絞りレバー18のピン18aを押圧して、絞りレバー18を左旋させる。この絞りレバー18の左旋により、レンズ側絞りレバー46は押し上げられて、レンズの絞りが開放される。また、絞りレバー18の左旋により、扇形ギヤ18bが増速ギヤを右回転させ、ラチェットギヤ車23を左回転させる。以上の動作により、絞り開放動作が完了する。すなわちリセット動作が完了する。
【0033】
−−−絞り値の制御について−−−
図5は、撮影動作開始から、演算回路130から絞りマグネットMG2に電圧が印加されまでの間の、絞りマグネットMG2へ印加される電圧、および、フォトカプラ27から出力されるパルス信号を示すタイミングチャートである。絞りマグネットMG2に電圧が印加され始めてからフォトカプラ27のパルス信号が出力されなくなるまで、すなわち、絞りマグネットMG2に電圧が印加され始めてから絞り停止レバー29によってラチェットギヤ車23が停止するまで、所定の時間(遅延時間)Tdが必要である。
【0034】
また、遅延時間Tdの間のラチェットギヤ車23の回転量、すなわち、遅延時間Tdの間に絞りレバー18が駆動される駆動量は、目標とする絞り値や、モータMおよび絞りマグネットMG2に印加される電圧などによって異なる。そこで、本実施の形態の絞り制御装置では、レンズの絞り値を正確に制御するため、絞りマグネットMG2へ電圧を印加するタイミングを次のように決定している。演算回路130は、フォトカプラ27から出力される各パルス信号について、パルス信号の一周期の長さである間隔Tintを測定する。図5では、間隔Tintについて、パルス信号の波形で電圧が下がったところを起点として、次のパルス信号の波形で電圧が立ち上がった後再び電圧が下がったところを終点として計測しているが、パルス信号の波形で電圧が立ち上がったところを起点として、次のパルス信号の波形で電圧が立ち上がったところを終点として計測してもよい。
【0035】
遅延時間Tdは、あらかじめ演算回路130に記憶された一定値である。遅延時間Tdを間隔Tintで除すと、間隔Tintが不変の場合に遅延時間Tdの間に発生するパルス数(オーバーランパルス数)が算出できる。
オーバーランパルス数 = Td/Tint ・・・(1)
【0036】
目標とするレンズの絞り値(制御絞り値)に相当するフォトカプラ27からのパルス数(目標パルス数)Pcからオーバーランパルス数を減じた値をしきい値Pthrとする。撮影動作開始後のパルス数の合計値Psが、しきい値Pthrに達したときに、演算回路130から絞りマグネットMG2に電圧を印加すれば、レンズの絞り値が制御絞り値となるようにラチェットギヤ車23が停止される(図5)。そこで、演算回路130は、撮影動作開始後のパルス数の合計値Psが次に示す(2)式を満たすか否かを判断し、(2)式を満たすと判断すると、絞りマグネットMG2に電圧を印加する。
Ps ≧Pthr = Pc − (オーバーランパルス数) = Pc − Td/Tint ・・・(2)
【0037】
ラチェットギヤ車23の回転数は、撮影動作開始から、すなわち、回転開始から時間が経過するにつれて加速するため、上述した間隔Tintの測定は、パルス信号が出力されるたびに演算回路130で毎回実行される。また、オーバーランパルス数の算出、および、(2)式を満たすか否かを判断は、後述するように、測定された間隔Tintが所定の条件を満たしたときには、パルス信号が出力されるたびに演算回路130で毎回実行される。このように演算回路130から絞りマグネットMG2へ電圧を印加するタイミングを決定することで、レンズの絞り値を制御絞り値に設定できる。
【0038】
しかし、図6に示すように、フォトカプラ27が出力するパルス信号にノイズNが入ると、間隔Tintが実際の間隔より短い間隔として計測されることがある。すると、(1)式で算出されるオーバーランパルス数が増大し、(2)式の右辺であるしきい値Pthrが小さくなる。この結果、パルス数の合計値Psが小さい値であっても(2)式の条件を満たしてしまうため、絞りマグネットMG2に電圧が印加されてしまい、レンズの絞り値が目標とする絞り値より開放側に設定されてしまう。特に、間隔Tintが実際の間隔よりかなり短い間隔として計測されると、(1)式で算出されるオーバーランパルス数が極端に増大するため、絞り込み動作の開始後間もないときであっても、すぐに(2)式の条件を満たしてしまう。そのため、適正露光量となる絞り値に対してレンズの絞り値が開放絞り値に近い値に設定されてしまう恐れがある。
【0039】
そこで、本実施の形態の絞り制御装置では、測定された間隔Tintが所定値A未満の場合には、当該間隔Tintを用いて上述の(2)式を満たすか否かの判断を行わず、絞りマグネットMG2にも電圧を印加しない。すなわち、上述の(2)式を満たすか否かの判断は、測定された間隔Tintが所定値A以上である場合にのみ行われる。したがって、本実施の形態の絞り制御装置では、測定された間隔Tintが所定値A以上であるパルス信号に基づいてしきい値Pthrを算出し、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達した場合に、絞りマグネットMG2に電圧を印加する。なお、上述の所定値Aは、あらかじめ演算回路130に記憶された一定値である。図2における絞りレバー18の右旋量が多くなるほど、すなわち、レンズの絞りが絞り込まれるほど間隔Tintも短くなるので、所定値Aは、レンズの絞りが最も絞り込まれたときの間隔Tintよりも短い時間でなければならない。したがって所定値Aは、レンズの絞りが最も絞り込まれたときの間隔Tintに相当する時間の、たとえば略1/2とすることが望ましい。
【0040】
−−−フローチャートの説明−−−
図7は、上述の動作をソフトウェアとして実現するためのフローチャートを示している。不図示の電源スイッチがONとなると、図7に示す処理を行うプログラムが起動されて演算回路130で実行される。ステップS101において、不図示の測光装置から入力される検出信号によって被写体輝度を算出し(測光を行い)、ステップS103へ進む。ステップS103において、公知の露出演算処理により制御シャッタ速度や制御絞り値を算出するとともに、制御絞り値から目標パルス数Pcを算出してステップS105へ進む。
【0041】
ステップS105において、不図示のレリーズスイッチが操作されたか否かを判断する。ステップS105が否定判断されるとステップS101へ戻る。ステップS105が肯定判定されるとステップS107へ進み、タイマーによる計時を開始してステップS109へ進む。ステップS109において、レリーズマグネットMG1に電圧を印加してステップS121へ進む。
【0042】
ステップS121において、フォトカプラ27で発生するパルス信号の間隔Tintを測定して読み込み、ステップS123へ進む。ステップS123において、ステップS121で読み込んだ間隔Tintが所定値A以上であるか否かを判断する。ステップS123が否定判断されるとステップS127へ進み、次のパルス信号の間隔Tintを読み込んでステップS123へ戻る。ステップS123が肯定判断されるとステップS125へ進み、パルス数の合計値Psを読み込んで、上述した(2)式を満たすか否かを判断する。
【0043】
ステップS125が否定判断されるとステップS127へ進む。ステップS125が肯定判断されるとステップS113へ進み、絞りマグネットMG2に電圧を印加してステップS115へ進む。ステップS115において、ステップS107で計時を開始したタイマーがタイムアップするまで待機する。ステップS115が肯定判断されるとステップS117へ進み、公知のシャッタ制御、すなわち、シャッタ先幕およびシャッタ後幕の走行制御によって露出動作を行うことで被写体像を撮像してステップS119へ進む。ステップS119において、モータMに通電することで、上述したリセット動作を実施してリターンする。
【0044】
このように構成されたカメラの絞り制御装置では、測光を行い(ステップS101)、制御シャッタ速度や制御絞り値を算出するとともに目標パルス数Pcを算出する(ステップS103)。レリーズスイッチが操作されると(ステップS105肯定判断)、タイマーによる計時を開始する(ステップS107)とともに、アーマチャ34の開放に必要な所定時間だけレリーズマグネットMG1に電圧を印加して(ステップS109)、絞り込み動作を開始する。
【0045】
絞り込み動作の開始によって、ラチェットギヤ車23が回転すると、フォトカプラ27からパルス信号が出力されるが、演算回路130は、フォトカプラ27から出力される各パルス信号について、パルス信号の間隔Tintを測定して読み込む(ステップS121)。そして、読み込んだ間隔Tintと所定値Aとを比較して、間隔Tintが所定値A以上であるときだけ、上述した(2)式の条件を満たすか否かを判断する(ステップS125)。上述した(2)式を満たすと判断されると、絞りマグネットMG2に電圧を印加して(ステップS113)、アーマチャ28を開放する。この結果、絞り停止レバー29がラチェットギヤ車23の回転を停止させることで絞りレバー18の駆動を停止させて、レンズの絞りを制御絞り値に制御する。
【0046】
タイマーがタイムアップすると(ステップS115肯定判断)、被写体像の撮像(ステップS117)および各部のリセット動作(ステップS119)を行って、一連の撮像動作を終了する。
【0047】
上述したカメラの絞り制御装置の第1の実施の形態では、次の作用効果を奏する。
(1) 測定された間隔Tintが所定値A以上であるパルス信号に基づいてしきい値Pthrを算出し、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達した場合に、絞りマグネットMG2に電圧を印加するように構成した。これにより、フォトカプラ27が出力するパルス信号にノイズが入っても、目標パルス数Pcでラチェットギヤ車23が停止されるように制御できるので、安定した絞り制御が実現でき、絞り制御装置の信頼性を向上できる。
【0048】
(2) フォトカプラ27から出力される各パルス信号について、パルス信号の一周期の長さである間隔Tintを測定するように構成した。これにより、絞りマグネットMG2へ電圧を印加するタイミングの算出からノイズが入った可能性のあるパルス信号を除くことができるため、絞りマグネットMG2へ電圧を印加するタイミングを正確に算出できる。これにより、絞り制御装置の絞り制御精度を向上できる。
【0049】
(3) パルス信号の一周期の長さである間隔Tintを測定するようにしたことで、従来から設けられている機構に対する機械的な付加をする必要がない。これにより、ソフトウェア上の改良によって、絞り制御装置の信頼性を向上できるので、低コストである。また、駆動部分が増えないのでバッテリー寿命に悪影響を及ぼさない。
【0050】
−−−第2の実施の形態−−−
図8〜10を参照して、本発明によるカメラの絞り制御装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。第2の実施の形態の絞り制御装置の機器構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0051】
第2の実施の形態の絞り制御装置では、測定されたパルス信号P(n)の間隔Tint(n)と、その直前に出力されたパルス信号P(n−1)の間隔Tint(n−1)との比率R(n) = Tint(n) / Tint(n−1)を算出し、この比率R(n)が所定の比率B未満の場合には、当該間隔Tint(n)を用いて上述の(2)式を満たすか否かの判断を行わず、絞りマグネットMG2にも電圧を印加しない。すなわち、上述の(2)式を満たすか否かの判断は、比率R(n)が所定の比率B以上である場合にのみ行われる。
【0052】
図8に示すようにパルス信号にノイズが入らなければ、比率R(n)は、ある値Ra以上となる。ただし、ラチェットギヤ車23の回転数は、回転開始から時間が経過するにつれて加速するため、間隔Tintは次第に短くなる。したがって、比率R(n) = Tint(n) / Tint(n−1)は、0<R(n)≦1となる。そこで、上述した比率Bを値Raよりもやや小さい値に設定すれば、パルス信号にノイズが入らない限り、比率R(n)は比率Bよりも大きくなる。本実施の形態の絞り制御装置では、比率Bを、たとえば0.5とする。なお、比率Bは、あらかじめ演算回路130に記憶されている。
【0053】
図9に示すように、パルス信号P(x)にノイズが入ると、見かけ上、ノイズが入る直前のパルス信号P(x)aと、ノイズが入った直後のパルス信号P(x)bとの2つのパルス信号が発生したように認識される。演算回路130では、ノイズが入る直前のパルス信号P(x)aが、パルス信号P(x)であると判断し、ノイズが入った直後のパルス信号P(x)bを、次の新たなパルス信号P(x+1)であると判断してしまう。
【0054】
ノイズが入ることで見かけ上の間隔Tintが短くなったパルス信号を用いて、オーバーランパルス数の算出、および(2)式の条件を満たすか否かの判断を行うと、上述のように、レンズの絞り値が目標とする絞り値より開放側に設定されてしまう。そこで、P(x)a、すなわち見かけ上のパルス信号P(x)について、比率R(x) = Tint(x) / Tint(x−1)を算出して、R(x)<Bであれば、間隔Tint(x)を用いて上述の(2)式を満たすか否かの判断を行わない。R(x)≧Bであっても、P(x)b、すなわち見かけ上のパルス信号P(x+1)について、比率R(x+1) = Tint(x+1) / Tint(x)を算出して、R(x+1)<Bであれば、間隔Tint(x+1)を用いて上述の(2)式を満たすか否かの判断を行わない。
【0055】
したがって、本実施の形態の絞り制御装置では、測定された間隔Tint(n)が、その直前に出力されたパルス信号の間隔Tint(n−1)に対して所定の比率B以上であるパルス信号に基づいてしきい値Pthrを算出し、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達した場合に、絞りマグネットMG2に電圧を印加する。
【0056】
−−−フローチャートの説明−−−
図10は、上述の動作をソフトウェアとして実現するためのフローチャートを示している。不図示の電源スイッチがONとなると、図10に示す処理を行うプログラムが起動されて演算回路130で実行される。ステップS101からステップS109までは、第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0057】
ステップS109が実行されるとステップS201へ進む。ステップS201において、n=1としてステップS203へ進む。ステップS203において、間隔Tint(n)=Tint(1)、すなわちフォトカプラ27からの最初のパルス信号の間隔を読み込んでステップS205へ進む。ステップS205において、nに1を加算してステップS207へ進む。ステップS207において、間隔Tint(n)を読み込んでステップS209へ進む。ステップS209において、すでに読み込んでいる間隔Tintから比率R(n) = Tint(n) / Tint(n−1)を求め、この比率R(n)が比率B以上であるか否かを判断する。
【0058】
ステップS209が否定判断されるとステップS205へ戻る。ステップS209が肯定判断されると、ステップS211へ進む。ステップS211において、パルス数の合計値Psを読み込んで、上述した(2)式を満たすか否かを判断する。ステップS211が否定判断されるとステップS205へ戻る。ステップS211が肯定判断されるとステップS113へ進む。ステップS113以降の動作については、第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0059】
このように構成されたカメラの絞り制御装置では、測光を行い(ステップS101)、制御シャッタ速度や制御絞り値を算出するとともに目標パルス数Pcを算出する(ステップS103)。レリーズスイッチが操作されると(ステップS105肯定判断)、タイマーによる計時を開始する(ステップS107)とともに、アーマチャ34の開放に必要な所定時間だけレリーズマグネットMG1に電圧を印加して(ステップS109)、絞り込み動作を開始する。
【0060】
絞り込み動作の開始によって、ラチェットギヤ車23が回転すると、フォトカプラ27からパルス信号が出力されるが、演算回路130は、フォトカプラ27から出力される各パルス信号について、パルス信号の間隔Tintを測定して読み込む(ステップS201〜S207)。そして、読み込んだ間隔Tintから算出される比率R(n)が比率B以上であるときだけ、上述した(2)式の条件を満たすか否かを判断する(ステップS209,S211)。上述した(2)式を満たすと判断されると、絞りマグネットMG2に電圧を印加して(ステップS113)、アーマチャ28を開放する。この結果、絞り停止レバー29がラチェットギヤ車23の回転を停止させることで絞りレバー18の駆動を停止させて、レンズの絞りを制御絞り値に制御する。
【0061】
タイマーがタイムアップすると(ステップS115肯定判断)、被写体像の撮像(ステップS117)および各部のリセット動作(ステップS119)を行って、一連の撮像動作を終了する。
【0062】
上述した第2の実施の形態のカメラの絞り制御装置では、第1の実施の形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
(1) フォトカプラ27が出力するパルス信号P(n)の間隔Tint(n)が、その直前に出力されたパルス信号P(n−1)の間隔Tint(n−1)に対して所定の比率B以上であるときにしきい値Pthrを算出し、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達したときに、演算回路130から絞りマグネットMG2に電圧を印加するように構成した。これにより、フォトカプラ27が出力するパルス信号にノイズが入ることで、パルス信号の間隔が、その直前に出力されたパルス信号の間隔と比較して所定の比率Bより短いときには、しきい値Pthrが算出されない。これによりノイズの影響を排除してしきい値Pthrを算出できるので、レンズ絞りを制御絞り値(制御値)に設定できる。したがって、安定した絞り制御が実現でき、絞り制御装置の信頼性を向上できる。
【0063】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、パルス信号の間隔Tintが所定値Aより大きいか否かの判断(図7ステップS123)、および、測定された間隔Tintが、その直前に出力されたパルス信号の間隔Tintに対して所定の比率B以上であるか否かの判断(図10ステップS209)は、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達したか否かの判断(図7ステップS125、図10ステップS211)の前に行われているが、本発明はこれに限定されない。図7,10に示したフローチャートのステップS113に相当する絞りマグネットMG2への電圧印加の前に、パルス信号の間隔Tintが所定値Aより大きいか否かの判断(図7ステップS123)、および、測定された間隔Tintが、その直前に出力されたパルス信号の間隔Tintに対して所定の比率B以上であるか否かの判断(図10ステップS209)を行うこととしてもよい。このように、間隔Tintが所定の条件を満たすか否かの判断が絞りマグネットMG2への電圧印加の前に行なわれて、間隔Tintが所定の条件を満たすときだけ絞りマグネットMG2への電圧印加が許可されるようにするのであれば、パルス数の合計値Psがしきい値Pthrに達したか否かの判断との実施順序の先後は問わない。
【0064】
(2) 上述の説明では、所定値Aは、あらかじめ演算回路130に記憶された一定値であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、目標パルス数Pcに応じて所定値Aの値を変更するようにしてもよい。この場合、目標パルス数Pcが増加するにつれて所定値Aの値を徐々に小さくするようにしてもよく、目標パルス数Pcがある値Pc1を境に大きいか否かによって、異なる所定値Aを適用するようにしてもよい。このように、目標パルス数Pcに応じて所定値Aの値を変更することで、パルス信号の間隔Tintが所定値Aより大きいか否かの判断の妥当性が高まり、絞り制御の精度を向上できる。
【0065】
(3) 上述の説明では、所定値Aは、あらかじめ演算回路130に記憶された一定値であるが、本発明はこれに限定されない。レンズの絞りの開放状態(初期位置)から制御絞り値となる制御位置までの、レンズ絞りおよび絞りレバー18の移動量が同じであっても、すなわち、目標パルス数Pcが同じであっても、撮影レンズ101の種類によってレンズ絞りを駆動する力量や慣性力が異なるため、ラチェットギヤ車23の加速状態も異なる。例えば、焦点距離の長い撮影レンズと焦点距離の短い撮影レンズとを比較すると、焦点距離の長い撮影レンズの方がレンズ絞りを駆動する力量や慣性力が大きい。
【0066】
また、レンズ絞りの絞り込み動作において、絞り連動レバー15をモータMで直接駆動する構造を有する絞り制御装置では、バッテリーの電圧によって絞り連動レバー15の加速状態が変わるため、ラチェットギヤ車23の加速状態も変化する。そこで、撮像動作が開始されてラチェットギヤ車23が回転し始めた頃の複数パルス信号の間隔の変化から、レンズ絞りを駆動する力量や慣性力の大小を判断して、所定値Aの値を適宜設定するようにしてもよい。上述の変形例(2)の場合と同様に、パルス信号の間隔Tintが所定値Aより大きいか否かの判断の妥当性が高まり、絞り制御の精度を向上できる。
【0067】
(4) 上述の説明では、ノイズの影響を受けたパルス信号をパルス数の合計値Psの算出から除く処理をしていないので、パルス数の合計値Psには、ノイズの影響を受けたパルス信号も計数されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、パルス信号の間隔Tintが所定値Aより大きいか否かの判断(図7ステップS123)、または、測定された間隔Tintが、その直前に出力されたパルス信号の間隔Tintに対して所定の比率B以上であるか否かの判断(図10ステップS209)で、否定判断されたときには、当該間隔Tintの測定対象となったパルス信号をパルス数の合計値Psに加算しないようにしてもよい。
【0068】
(5) 上述の説明で用いられるカメラボディは、フィルムを使用する銀塩カメラであってもよく、撮像素子を用いて撮像するデジタルカメラであってもよい。
(6) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0069】
以上の実施の形態およびその変形例において、たとえば、パルス信号出力手段はフォトカプラ27に、停止手段は絞り停止レバー29にそれぞれ対応している。絞り連動手段は、絞りレバー18と増速ギヤ22とおよびラチェットギヤ車23とによって実現される。計数値算出手段、しきい値算出手段、制御手段、オーバーランパルス数算出手段、停止信号出力手段は、演算回路130に対応している。さらに、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における機器構成に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明によるカメラの絞り制御装置を搭載した一眼レフカメラボディとカメラボディに装着する撮影レンズを示した斜視図である。
【図2】図1に示したカメラボディ内部の絞り制御装置の斜視図である。
【図3】ラチェットギヤ車23を係止した絞り停止レバー29をリセットするための機構を示す図であり、撮影動作が開始されて、所定の絞り値で、絞り停止レバー29がラチェットギヤ車23の回転を停止させた状態を示す図である。
【図4】図3に示す状態から撮影動作が進行して、リセット動作開始され、絞りマグネットMG2をリセットした状態を示す図である。
【図5】撮影動作開始から、演算回路130から絞りマグネットMG2に電圧が印加されまでの間の、絞りマグネットMG2へ印加される電圧、および、フォトカプラ27から出力されるパルス信号を示すタイミングチャートである。
【図6】フォトカプラ27から出力されるパルス信号にノイズNが入ったときのタイミングチャートである。
【図7】第1の実施の形態の絞り制御装置における演算回路130で実行されるプログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態の絞り制御装置におけるタイミングチャートである。
【図9】第2の実施の形態の絞り制御装置における、フォトカプラ27から出力されるパルス信号にノイズNが入ったときのタイミングチャートである。
【図10】第2の実施の形態の絞り制御装置における演算回路130で実行されるプログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
15 絞り連動レバー 18 絞りレバー
22 増速ギヤ 23 ラチェットギヤ
27 フォトカプラ 28,34 アーマチャ
29 絞り停止レバー 101 撮影レンズ
130 演算回路 M モータ
MG2 絞りマグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ絞りを初期値に設定する初期位置から前記レンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、
前記絞り連動手段の動作に応じてパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
前記絞り駆動手段の動作を停止させる停止手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上であるパルス信号に基づいて、しきい値を算出するしきい値算出手段と、
前記計数値算出手段が算出する前記パルス信号の計数値が前記しきい値に達したときに、前記絞り駆動手段の動作を停止させるように前記停止手段へ信号を出力することで、前記絞り連動手段を制御位置で停止させるように制御する制御手段とを備えることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項2】
レンズ絞りを初期値に設定する初期位置から前記レンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、
前記絞り連動手段の動作に応じてパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
前記絞り駆動手段の動作を停止させる停止手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さに対して所定の比率以上であるパルス信号に基づいて、しきい値を算出するしきい値算出手段と、
前記計数値算出手段が算出する前記パルス信号の計数値が前記しきい値に達したときに、前記絞り駆動手段の動作を停止させるように前記停止手段へ信号を出力することで、前記絞り連動手段を制御位置で停止させるように制御する制御手段とを備えることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラの絞り制御装置において、
前記しきい値算出手段は、前記レンズ絞りの制御値に応じて前記所定時間を設定して、前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが前記所定時間以上であるパルス信号に基づいて、前記しきい値を算出することを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項4】
レンズ絞りを初期値に設定する初期位置から前記レンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、
前記絞り連動手段の駆動量に比例したパルス数となるようにパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
停止信号が入力されると、前記絞り駆動手段の動作を停止させるように駆動される停止手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが所定時間以上となるすべてのパルス信号について、前記停止手段へ前記停止信号を出力してから前記絞り駆動手段の動作が停止するまでの遅延時間を当該パルス信号の一周期で除したオーバーランパルス数を算出する、オーバーランパルス数算出手段と、
前記制御位置まで前記絞り連動手段を駆動したときの前記絞り連動手段の駆動量に相当する前記パルス信号の計数値から、前記オーバーランパルス数算出手段が算出した前記オーバーランパルス数を減じたしきい値を算出するしきい値算出手段と、
前記計数値算出手段が算出する前記パルス信号の計数値が前記しきい値に達したときに、前記停止手段へ前記停止信号を出力する停止信号出力手段とを備えることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項5】
レンズ絞りを初期値に設定する初期位置から前記レンズ絞りを制御値に設定する制御位置へ変化させる絞り連動手段と、
前記絞り連動手段の駆動量に比例したパルス数となるようにパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
停止信号が入力されると、前記絞り駆動手段の動作を停止させるように駆動される停止手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の計数値を算出する計数値算出手段と、
前記パルス信号出力手段が出力するパルス信号の一周期の長さが、その直前に出力されたパルス信号の一周期の長さに対して所定の比率以上となるすべてのパルス信号について、前記停止手段へ前記停止信号を出力してから前記絞り駆動手段の動作が停止するまでの遅延時間を当該パルス信号の一周期で除したオーバーランパルス数を算出する、オーバーランパルス数算出手段と、
前記制御位置まで前記絞り連動手段を駆動したときの前記絞り連動手段の駆動量に相当する前記パルス信号の計数値から、前記オーバーランパルス数算出手段が算出した前記オーバーランパルス数を減じたしきい値を算出するしきい値算出手段と、
前記計数値算出手段が算出する前記パルス信号の計数値が前記しきい値に達したときに、前記停止手段へ前記停止信号を出力する停止信号出力手段とを備えることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−98678(P2006−98678A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284035(P2004−284035)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】