説明

カメラの絞り制御装置およびカメラ

【課題】撮影によって得られる画像の画質を安定化できるカメラの絞り制御装置およびカメラを提供する。
【解決手段】エンコーダギヤ523と同軸に軸支されてエンコーダギヤ523と相対回転可能な回転錘551と、回転錘551と一体的に回動可能な回転錘ゴム552と、エンコーダギヤ523に対して回転錘551および回転錘ゴム552を絞り込み方向に付勢する回転錘バネ553とを設けるように構成した。そして、絞り制御レバー501が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御レバー501に振動が生じると回転錘551および回転錘ゴム552自身の慣性モーメントによってエンコーダギヤ523の回転方向とは反対の方向に回転して絞り制御レバー501の振動を緩和するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの絞り制御装置およびこの絞り制御装置を備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等に使用される絞り制御装置では、レンズに設けられた絞りを駆動するカメラ側の絞り駆動レバーの駆動量をギヤ列により増速・拡大し、ギヤの回転数としてフォトカプラ等により検出する。そしてこの検出値が所定の値となったとき、ギヤ列に対して制動をかけて当該ギヤ列とギヤ列に連動している絞り駆動レバーを停止させることで所望の絞り値を得る。この絞り制御装置では、増速されたギヤ列の慣性モーメントのため、撮影終了後の絞りの開放側復帰時、ギヤ列に連動している絞り駆動レバーが絞り駆動レバーを開放側で制限する部材と衝突して、当該当接部との間でバウンドが発生する。このバウンドが発生すると、測光に影響を与えるため、連写時のコマ速を上げられない。この問題を解決するために、絞り駆動レバーを初期位置に復帰させる過程において、復帰動作開始後、初期位置へ復帰する直前からギヤ列に制動力を付与している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−252034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献に記載の絞り制御装置では、絞り駆動レバーが初期位置に復帰するとギヤ列に制動力が付与されなくなるため、上記バウンドが収束しきらないおそれがある。したがって、連写時のコマ速を上げたときの測光精度が低下して、撮影によって得られる画像の画質が安定しなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるカメラの絞り制御装置は、レンズの絞りを駆動して所定の絞り値に制御する絞り制御部材と、絞り制御部材の移動量を拡大する増速ギヤ列と、絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御部材に生じる振動を緩和する振動緩和手段とを備え、振動緩和手段は、増速ギヤ列のいずれかのギヤに対して同軸に軸支されてギヤと相対回転可能な回転錘と、ギヤと回転錘との間に介挿されて回転錘を絞り制御部材がレンズの絞りを絞り込む方向に駆動した際のギヤの回転方向に付勢して回転錘をギヤと一体的に回転可能とする付勢バネとを有し、回転錘は、絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御部材に振動が生じると回転錘自身の慣性モーメントによってギヤの回転方向とは反対の方向に回転して振動を緩和することを特徴とする。
(2) 請求項5の発明によるカメラは、請求項1〜4に記載のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮影によって得られる画像の画質を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用した電子カメラである、一眼レフタイプのカメラボディと、カメラボディに装着する撮影レンズを示した斜視図である。
【図2】絞り機構を左側から見たときの状態を示す図である。
【図3】絞り機構を左側から見たときの状態を示す図である。
【図4】絞り制御レバーおよび増速ギヤ列についての斜視図である。
【図5】増速ギヤ列の断面図である。
【図6】エンコーダギヤ、ラチェットギヤ、および振動緩和装置の斜視図である。
【図7】エンコーダギヤ、ラチェットギヤ、および振動緩和装置の分解図である。
【図8】振動緩和装置の斜視図である。
【図9】振動緩和装置の分解図である。
【図10】リセット時の回転錘および回転錘ゴムの回転量と、エンコーダギヤの回転量との経時変化について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜10を参照して、本発明によるカメラの絞り制御装置およびカメラの一実施の形態を説明する。図1は、本発明による絞り制御装置を適用した電子カメラである、一眼レフタイプのカメラボディ1と、カメラボディ1に装着する撮影レンズ2を示した斜視図である。カメラボディ1にはレリーズボタン4と、撮像素子であるCCD5と、カメラボディ1の各部を制御する制御回路100と、絞り機構500とが設けられている。301は、撮影レンズ2からの被写体像をCCD5に導くための撮影光路であり、321は、メインミラーである。
【0009】
カメラボディ1に撮影レンズ2を装着すると、レンズ側絞りレバー3とカメラ側の絞り制御レバー501の当接部501aとが当接する。レンズ側絞りレバー3は、カメラ側の絞り制御レバー(以下、単に絞り制御レバーと呼ぶ)501により駆動されて所定の絞り値に制御される。なお、本実施の形態では、撮影レンズ2が取り付けられるカメラボディ1の正面側を前方とし、CCD5が設けられるカメラボディ1の背面側を後方とする。また、カメラボディ1の上下左右方向を各図に記載したように規定する。
【0010】
−−−絞り機構500−−−
絞り機構500は、撮影レンズ2の絞りを制御する絞り制御装置である。図2は、絞り機構500を左側から見たときの状態を示す図である。図3は、図2と同様に絞り機構500を左側から見たときの状態を示す図であるが、説明の便宜上、主要な構成部品を強調的に記載している。なお、図2以降の各図における前後方向および上下左右方向は、絞り機構400がカメラボディ1に組み込まれているものとして、カメラボディ1の前後方向および上下左右方向と一致するように規定している。
【0011】
絞り機構500は、撮影レンズ2の絞りを制御する絞り制御装置であり、絞り制御レバー501と、絞り駆動レバー502と、往動レバー503と、絞り係止レバー504と、絞り係止マグネットリセットレバー505と、絞り係止マグネット510とを備えている。また、絞り機構500は、図4,5に示すように、増速ギヤ列520を構成する第1増速ギヤ521、第2増速ギヤ522、およびエンコーダギヤ523と、ラチェットギヤ524と、フォトインタラプタ530と、振動緩和装置550とを備えている。なお、図4は、絞り制御レバー501および増速ギヤ列520についての斜視図であり、図5は、増速ギヤ列520の断面図である。
【0012】
絞り制御レバー501には、前方に延在する腕の先端に、カメラボディ1に装着した撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3と当接する当接部501aが設けられている。また、絞り制御レバー501には、上端部に扇形ギヤ部501bが設けられている。扇形ギヤ部501bは、後述する第1増速ギヤ521の小ギヤ部521aと噛合している。
【0013】
絞り駆動レバー502は、絞り制御レバー501と同じ回転中心を中心として回転可能に設けられたレバーであり、後方に延在する腕502aを有する。絞り駆動レバー502は、一端がカメラボディ1側に取り付けられているバネ531によって図2,3における図示反時計方向に付勢されている。絞り制御レバー501および絞り駆動レバー502は、バネ532を介して連結されており、絞り制御レバー501は絞り駆動レバー502に向かって(図2,3における図示時計方向へ)、絞り駆動レバー502は絞り制御レバー501に向かって(図2,3における図示反時計方向へ)それぞれ付勢されており、互いの前方に延在する腕同士が当接するように構成されている。
【0014】
往動レバー503は、出力ギヤ124の前側面に設けられたローラ124aによって前後方向に延在する回転軸を中心として回動させられるレバーであり、一方の腕503aと不図示の他方の腕を有する。なお、出力ギヤ124は、カムギヤ120に設けられたギヤの一部である。また、カムギヤ120は、減速ギヤ112〜114およびピニオンギヤ111を介して伝達されるシーケンスモータ101の駆動力によって回動される。減速ギヤ112〜114は、シーケンスモータ101からの駆動力を減速しつつカムギヤ120に伝達するための減速ギヤ列を構成するギヤである。後述するように、往動レバー503は、出力ギヤ124の回転に伴ってローラ124aの位置が移動すると一方の腕503aが下方に押されて不図示の回動中心を中心として回動し、不図示の他方の腕で絞り駆動レバー502の腕502aを押し上げる。
【0015】
絞り係止レバー504は、絞り制御レバー501と連動して回動する後述するラチェットギヤ524を係止することで、絞り制御レバー501を所定の回動位置に固定するためのレバーである。絞り係止マグネットリセットレバー505は、次に述べる絞り係止マグネット510の可動鉄心を絞り係止マグネット510に再吸着させるためのレバーである。絞り係止マグネット510は、通電されることで吸着していた可動鉄心を釈放するように構成されたコンビネーションマグネットである。絞り係止マグネット510が通電されて可動鉄心が釈放されると、絞り係止レバー504がラチェットギヤ524を係止するように構成されている。
【0016】
図4に示すように、第1増速ギヤ521および第2増速ギヤ522は、それぞれ歯数の少ない小ギヤ部521a,522aと、歯数の多い大ギヤ部521b,522bとを有する。エンコーダギヤ523は、円盤523aと、ギヤ523bと、当接突起523cとを有する(図5)。円盤523aには小穴523dが複数設けられている。ラチェットギヤ524は、エンコーダギヤ523と同軸であってエンコーダギヤ523とともに回転するように配設されている。フォトインタラプタ530は、エンコーダギヤ523の回転量を検知するセンサであり、エンコーダギヤ523の円盤523aを挟み込むように配設されて、円盤523aの小穴523dの通過を検出してパルス信号を制御回路100に出力する。エンコーダギヤ523の回転量は、フォトインタラプタ530から出力されるパルス信号の計数値に比例する。
【0017】
絞り制御レバー501の上端部に設けられた扇形ギヤ部501bは、第1増速ギヤ521の小ギヤ部521aと噛合し、第1増速ギヤ521の大ギヤ部521bは、第2増速ギヤ522の小ギヤ部522aと噛合し、第2増速ギヤ522の大ギヤ部522bは、エンコーダギヤ523のギヤ523bと噛合する。すなわち、第1増速ギヤ521および第2増速ギヤ522は、絞り制御レバー501の動きを増速して、エンコーダギヤ523とともに回転するラチェットギヤ524に伝達する役割を果たしている。
【0018】
このように、絞り制御レバー501、第1増速ギヤ521、第2増速ギヤ522,およびエンコーダギヤ523により増速ギヤ列520が構成されている。絞り制御レバー501の旋回量は、この増速ギヤ列520によって拡大されて、エンコーダギヤ523の回転量としてフォトインタラプタ530から出力されるパルス信号数として上述のように制御回路100に入力される。
【0019】
以下の説明では、各部材の回転方向について、撮影レンズ2の絞りを絞り込むこととなる回転方向を絞り込み方向と呼び、撮影レンズ2の絞りを開放することとなる回転方向を開放方向と呼ぶ。なお、図4,6において各部材に付した矢印は、各部材の絞り込み方向を示している。
【0020】
図6は、エンコーダギヤ523、ラチェットギヤ524、および振動緩和装置550の斜視図であり、図7は、エンコーダギヤ523、ラチェットギヤ524、および振動緩和装置550の分解図である。図8は、振動緩和装置550の斜視図であり、図9は、振動緩和装置550の分解図である。振動緩和装置550は、後述するように、絞り制御レバー501が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御レバー501に生じる振動を緩和する装置であり、エンコーダギヤ523の端部に取り付けられている。
【0021】
振動緩和装置550は、回転錘551と、回転錘ゴム552と、回転錘バネ553とを備えている。回転錘551は、エンコーダギヤ523と同軸に軸支されてエンコーダギヤ523と相対回転可能な(すなわちエンコーダギヤ523とは独立して回転可能な)有底円筒状の部材であり、内周部に回転錘ゴム552が嵌合する嵌合部551a,551bが設けられている。嵌合部551aは、回転錘551の底部に設けられた凹部であり、嵌合部551bは、回転錘551の円筒の内周面に設けられた凹部である。
【0022】
回転錘ゴム552は、回転錘551の嵌合部551a,551bに嵌合して回転錘551と一体的に回動可能な略扇形環状のゴム製の部材であり、嵌合部551a,551bとそれぞれ嵌合する嵌合凸部552a,552bを有する。また、回転錘ゴム552は、扇形環の円周方向の端部に相当する一方の端部であって、エンコーダギヤ523の当接突起523cと当接する当接部552cを有する。なお、扇形環の円周方向の端部に相当する他方の端部522dは、エンコーダギヤ523の当接突起523cとは離間している。回転錘バネ553は、エンコーダギヤ523に対して回転錘551および回転錘ゴム552を絞り込み方向に付勢するねじりコイルバネである。回転錘バネ553の一端は、回転錘551に係止され、他端は、エンコーダギヤ523の当接突起523cに係止される。
【0023】
振動緩和装置550がエンコーダギヤ523の端部に取り付けられると、回転錘551および回転錘ゴム552が回転錘バネ553の付勢力によって絞り込み方向に付勢され、回転錘ゴム552の当接部552cがエンコーダギヤ523の当接突起523cと当接する。
【0024】
−−−各部の動作説明−−−
本実施の形態のカメラボディ1による撮像動作について説明する。撮影開始前には、すなわち撮影待機状態では、メインミラー321はミラーダウン位置となっている。また、シャッタチャージは完了した状態となっている。
【0025】
往動レバー503は、腕503aからローラ124aが離間しているので、不図示のバネの付勢力によって不図示の腕が絞り駆動レバー502の腕502aの下端から離間している。絞り駆動レバー502は、上述のように腕502aの下端から往動レバー503の不図示の腕が離間しているので、バネ531の付勢力によって図2,3における図示反時計方向に回動して停止している。なお、この状態では、絞り制御レバー501は、当接部501aがカメラボディ1に装着した撮影レンズ2の不図示のレンズ側絞りレバーを押し上げて、レンズ側絞りを開放状態としている。
【0026】
レリーズボタン4が押圧されると、不図示レリーズスイッチから全押し操作信号が制御回路100に出力される。制御回路100は、全押し操作信号を受信すると、シーケンスモータ101を所定の駆動量だけ駆動させる。詳細な説明は省略するが、シーケンスモータ101の回動により、メインミラー321がミラーアップされる。
【0027】
また、レリーズボタン4が押圧されると、絞り込み動作が行われる。すなわち、カムギヤ120が、減速ギヤ112〜114およびピニオンギヤ111を介して伝達されるシーケンスモータ101の駆動力によって回動される。これにより、ローラ124aが往動レバー503を押動するので、往動レバー503の不図示の腕が絞り駆動レバー502の腕502aを下方から押し上げる。絞り駆動レバー502は、腕502aが往動レバー503の腕により押し上げられることで、バネ531の付勢力に抗して図2,3における図示時計方向(すなわち絞り込み方向)に回動する。
【0028】
これにより、バネ532によって連結された絞り制御レバー501も絞り込み方向(図2,3における図示時計方向、図4における矢印の方向)に回動するので、当接部501aが下方に移動し、カメラボディ1に装着した撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3も下方に移動して、レンズ側絞りが絞り込まれる。なお、レンズ側絞りが所定の制御絞り値となるように、制御回路100は、フォトインタラプタ530から出力されるパルス信号の計数値に基づいて所定のタイミングで絞り係止マグネット510を励磁する。これにより、絞り係止レバー504が絞り制御レバー501と連動して回動するラチェットギヤ524を係止し、絞り制御レバー501を所定の回動位置に固定して、レンズ側絞りを所定の制御絞り値とする。
【0029】
このように、撮影開始時に絞り制御レバー501が絞り込み方向に回動される際、増速ギヤ列520を構成する各ギヤも絞り込み方向(図4における矢印の方向)に回動される。振動緩和装置550は、回転錘551および回転錘ゴム552が回転錘バネ553の付勢力によってエンコーダギヤ523と一体となって絞り込み方向(図4,6における矢印の方向)に回動する。そして、絞り係止レバー504がラチェットギヤ524を係止して絞り制御レバー501を所定の回動位置で停止される際、回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントが回転錘ゴム552の当接部552cをエンコーダギヤ523の当接突起523cへ当接させる方向に作用するので、エンコーダギヤ523が停止すると、振動緩和装置550も停止する。
【0030】
制御回路100は、絞り係止マグネット510を励磁した後に、不図示の先幕遮光羽根群および後幕遮光羽根群を走行させて、シャッタ秒時に相当する期間だけ、被写体光を撮像素子5に導くように各部を制御する。制御回路100は、本撮影を行うように各部を制御する。
【0031】
−−−撮影待機状態へのリセット−−−
本撮影が終了すると、制御回路100は、シーケンスモータ101を所定の駆動量だけ駆動させる。詳細な説明は省略するが、シーケンスモータ101の回動により、メインミラー321がミラーダウンされ、不図示の先幕遮光羽根群および後幕遮光羽根群が撮影開始前の位置に戻される。
【0032】
シーケンスモータ101が所定の駆動量だけ駆動されると、カムギヤ120が撮影開始前の回動位相(初期位置)に回動されて停止して、ローラ124aが腕503aから離間する。これにより、往動レバー503の不図示の腕が絞り駆動レバー502の腕502aの下端から離間する。そのため、絞り駆動レバー502は、絞り制御レバー501とともにバネ531の付勢力によって図2,3における図示反時計方向(すなわち開放方向)に回動する。したがって、絞り制御レバー501は、当接部501aがカメラボディ1に装着した撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3を押し上げて、レンズ側絞りを開放状態に復帰させる。
【0033】
なお、撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3が押し上げられて、レンズ側絞りが開放状態に復帰すると、レンズ側絞りレバー3は、レンズ側絞りを開放位置で制限する部材によって急速に停止させられる。そのため、絞り制御レバー501も急速に停止させられる。この、絞り制御レバー501の急速な停止による衝撃で、絞り制御レバー501にはバウンド、すなわち絞り込み方向への回動と開放方向への回動を交互に繰り返す振動が発生する。本実施の形態では、絞り制御レバー501の振動を振動緩和装置550で抑制(緩和)する。振動緩和装置550による振動抑制の詳細については後に詳述する。
【0034】
詳細な説明は省略するが、初期位置へ戻る際のカムギヤ120の回動に伴って絞り係止マグネットリセットレバー505の腕が押し上げられて絞り係止マグネットリセットレバー505が図2,3における図示時計方向に回動される。詳細な説明は省略するが、これにより、絞り係止マグネット510の可動鉄心が絞り係止マグネット510に再吸着される。以上の動作により、絞り開放動作が完了する。すなわちリセット動作が完了する。
【0035】
−−−振動緩和装置550による振動抑制について−−−
上述したように、リセット時に絞り制御レバー501が開放方向に回動される際、増速ギヤ列520を構成する各ギヤも開放方向(図4における矢印の方向とは反対の方向)に回動される。エンコーダギヤ523の開放方向(図4,6における矢印の方向とは反対の方向)への回動開始の際、回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントが回転錘ゴム552の当接部552cをエンコーダギヤ523の当接突起523cへ当接させる方向に作用するので、エンコーダギヤ523の開放方向への回動開始とともに、振動緩和装置550も開放方向への回動を開始する。
【0036】
撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3が押し上げられて、レンズ側絞りが開放状態に復帰すると、レンズ側絞りレバー3は、レンズ側絞りを開放位置で制限する部材によって急速に停止させられる。そのため、絞り制御レバー501も急速に停止させられる。この、絞り制御レバー501の急速な停止による衝撃で、絞り制御レバー501にはバウンド、すなわち絞り込み方向への回動と開放方向への回動を交互に繰り返す振動が発生する。絞り制御レバー501の振動によって絞り制御レバー501に追従するレンズ側絞りレバー3も振動するため、レンズ側絞りが開放位置付近で振動してしまう。このレンズ側絞りの開放位置付近での振動が測光に影響を与えるため、絞り制御レバー501の振動を早期に収束させる必要がある。
【0037】
そこで、本実施の形態では、絞り制御レバー501が次のようにして絞り制御レバー501の振動を早期に収束させる。図10は、リセット時の回転錘551および回転錘ゴム552の回転量と、エンコーダギヤ523の回転量との経時変化について示すグラフである。上述したように、開放方向に回動している絞り制御レバー501が急速に停止させられると、絞り制御レバー501が絞り込み方向に反転し始める。そのため、増速ギヤ列520を構成する各ギヤも急速に停止させられ、絞り込み方向に反転し始める。エンコーダギヤ523も急速に停止させられ、図10におけるA点を境に、絞り込み方向に反転し始めるが、振動緩和装置550は、回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントにより、図10におけるB点を過ぎても回転錘バネ553の付勢力に抗して開放方向への回動を続ける。このとき、回転錘ゴム552の当接部552cとエンコーダギヤ523の当接突起523cとが離間する。
【0038】
このとき、回転錘バネ553を介して回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントがエンコーダギヤ523に伝達される。そのため、エンコーダギヤ523(すなわち絞り制御レバー501)は、回転錘バネ553の付勢力によって絞り込み方向の回転が抑制(減速)され、図10のC点を境に再び開放方向へ回転し始める。
【0039】
一方、振動緩和装置550に対しては、回転錘バネ553を介して絞り駆動系の慣性モーメント、すなわち、エンコーダギヤ523から撮影レンズ2のレンズ側絞りに至るギヤ、レバー等の慣性力、慣性モーメントが伝達される。そのため(すなわち回転錘バネ553の付勢力により)、振動緩和装置550の開放方向への回転が抑制(減速)され、図10のD点を境に再び絞り込み方向へ回転し始める。
【0040】
エンコーダギヤ523(絞り制御レバー501)が図10のC点を境に再び開放方向へ回転し始めた後、レンズ側絞りレバー3は、レンズ側絞りを開放位置で制限する部材によって急速に停止させられる。そのため、絞り制御レバー501(エンコーダギヤ523)も急速に停止させられ、図10におけるE点を境に、絞り込み方向に反転し始める。すなわち、絞り制御レバー501(エンコーダギヤ523)の単振動が発生する。
【0041】
回転錘551および回転錘ゴム552は、図10のD点を境に再び絞り込み方向へ回転し始めた後、回転錘ゴム552の当接部552cとエンコーダギヤ523の当接突起523cとが再び当接することによって、急速に停止させられる。そのため、回転錘551および回転錘ゴム552は、図10におけるF点を境に、開放方向に反転し始める。すなわち、回転錘551および回転錘ゴム552の単振動が発生する。
【0042】
しかし、エンコーダギヤ523の振動周期と、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期とを一致させ、エンコーダギヤ523と回転錘551および回転錘ゴムとが互いに逆回転するようにすれば、互いの振動が打ち消され、絞り制御レバー501の振動が抑制される。そこで、本実施の形態では、次のようにして、エンコーダギヤ523の振動周期と、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期(回転変動周期)とを一致させている。
【0043】
エンコーダギヤ523の振動周期Fgは、次の(1)式で表される。
Fg=1/2π×(Kg/Ig)1/2 ・・・(1)
ここで、Kgは、レンズ側絞りレバー3がレンズ側絞りを開放位置で制限する部材によって急速に停止させられて反発する際のバネ定数に相当する係数である。また、Igは、エンコーダギヤ523から撮影レンズ2のレンズ側絞りに至るギヤ、レバー等の慣性力、慣性モーメントの総和である。なお、実際には、Fgは、実測によって求められる。
【0044】
回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期Fwは、次の(2)式で表される。
Fw=1/2π×(Kw/Iw)1/2 ・・・(2)
ここで、Kwは、回転錘バネ553のバネ定数である。Iwは、回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントである。
【0045】
したがって、本実施の形態では、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期Fwが実測によって求められたエンコーダギヤ523の振動周期Fgに一致するように、回転錘バネ553のバネ定数Kwと、回転錘551および回転錘ゴム552の慣性モーメントIwを設定する。このように、エンコーダギヤ523の振動周期と、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期とを一致させれば、本実施の形態構成では、上述したようにエンコーダギヤ523と回転錘551および回転錘ゴムとが互いに逆回転するので、互いの振動が打ち消され、絞り制御レバー501の振動が抑制される。
【0046】
本実施の形態の絞り機構500およびカメラボディ1では、次の作用効果を奏する。
(1) エンコーダギヤ523と同軸に軸支されてエンコーダギヤ523と相対回転可能な回転錘551と、回転錘551と一体的に回動可能な回転錘ゴム552と、エンコーダギヤ523に対して回転錘551および回転錘ゴム552を絞り込み方向に付勢する回転錘バネ553とを設けるように構成した。そして、絞り制御レバー501が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御レバー501に振動が生じると回転錘551および回転錘ゴム552自身の慣性モーメントによってエンコーダギヤ523の回転方向とは反対の方向に回転して絞り制御レバー501の振動を緩和するように構成した。これにより、絞り制御レバー501の振動発生の段階から絞り制御レバー501の振動が収束するまでの間、振動緩和装置550が絞り制御レバー501の振動を緩和するように作動するので、絞り制御レバー501の振動(すなわち撮影レンズ2のレンズ側絞りの振動)を迅速に収束できる。したがって、撮影終了後の次の撮影のための測光を早期に開始できるので、連続撮影時における連写速度(コマ速)を上げても測光精度が低下せず、撮影によって得られる画像の画質が安定化する。
【0047】
(2) エンコーダギヤ523の振動周期と、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期とを一致させるように構成した。これにより、絞り制御レバー501の振動(撮影レンズ2のレンズ側絞りの振動)を効果的に収束できるので、撮影によって得られる画像の画質を向上できる。
【0048】
(3) 本実施の形態では、振動緩和装置550がエンコーダギヤ523の端部に取り付けられている。すなわち、増速ギヤ列520を構成する各ギヤの中で、最も高速で回転するギヤに振動緩和装置550が取り付けられている。そのため、振動緩和装置550(すなわち回転錘551および回転錘ゴム552)の慣性モーメントが小さくても、絞り制御レバー501の振動を効果的に抑制できる。また、撮影レンズ2のレンズ側絞りに係るギヤ、レバー等の慣性力、慣性モーメントがエンコーダギヤ523の振動周期Fgに与える影響を低減できるので、カメラボディ1に取り付けられる撮影レンズ2の種類が変わっても、絞り制御レバー501の振動(すなわち撮影レンズ2のレンズ側絞りの振動)を効果的に抑制できる。
【0049】
(4) 回転錘バネ553によって付勢された回転錘551および回転錘ゴム552が、回転錘ゴム552の当接部552cでエンコーダギヤ523の当接突起523cと当接するように構成した。これにより、絞り制御レバー501の振動緩和の際に当接部552cと当接突起523cとが離間と当接とを繰り返すので、当接部552cと当接突起523cとが当接した際の衝撃を回転錘ゴム552で吸収できるので、騒音の発生を抑制できる。また、エンコーダギヤ523および回転錘551がともに金属性であった場合には、金属同士の当接(衝突)を防止できるので、衝突部分の摩耗を回避でき、耐久性を向上できる。また、摩耗による金属粉の発生を防止できるので、CCD5の表面などへの金属粉付着による画質低下を抑制できる。
【0050】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、増速ギヤ列520を構成する各ギヤの中で、最も高速で回転するギヤであるエンコーダギヤ523に振動緩和装置550が取り付けられているが、本発明はこれに限定されない。エンコーダギヤ523に振動緩和装置550が取り付けられている場合と比べて振動緩和装置550による振動抑制効果が低下するが、たとえば、第1増速ギヤ521、または第2増速ギヤ522に振動緩和装置550が取り付けられていてもよい。この場合、撮影レンズ2のレンズ側絞りに係るギヤ、レバー等とは少なくとも1つの増速ギヤを介して振動緩和装置550が取り付けられるので、絞り制御レバー501に振動緩和装置550が取り付けられた場合と比べて、絞り制御レバー501の振動を効果的に抑制できる。
【0051】
(2) 上述の説明では、回転錘551の材料については特に言及していないが、制震に必要な慣性モーメントを確保できれば、回転錘551が金属製であってもよく、樹脂製であってもよく、ゴム製であってもよい。
【0052】
(3) 上述の説明では、回転錘ゴム552の材料がゴムあるが、本発明はこれに限定されない。回転錘ゴム552の材料がゴムではなく、弾性を有する他の材料、たとえば弾性的に変形可能な樹脂やゲル状の材料であってもよい。また、回転錘ゴム552の形状は、上述した略扇形環状の形状に限らない。少なくとも、回転錘バネ553の付勢力で回転錘551がエンコーダギヤ523と直接当接しないように、エンコーダギヤ523と回転錘551との間に介挿される形状であればよい。なお、回転錘551の材料が弾性を有する材料(たとえば、樹脂やゴムなど)であれば、回転錘ゴム552が設けられていなくてもよい。
【0053】
(4) 上述の説明では、エンコーダギヤ523の振動周期と、回転錘551および回転錘ゴム552の振動周期とを一致させているが、これら2つの周期が厳密に一致している必要はなく、絞り制御レバー501の振動抑制効果が生じる範囲でこれら2つの周期がずれていてもよい。
(5) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、レンズの絞りを駆動して所定の絞り値に制御する絞り制御部材と、絞り制御部材の移動量を拡大する増速ギヤ列と、絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御部材に生じる振動を緩和する振動緩和手段とを備え、振動緩和手段は、増速ギヤ列のいずれかのギヤに対して同軸に軸支されてギヤと相対回転可能な回転錘と、ギヤと回転錘との間に介挿されて回転錘を絞り制御部材がレンズの絞りを絞り込む方向に駆動した際のギヤの回転方向に付勢して回転錘をギヤと一体的に回転可能とする付勢バネとを有し、回転錘は、絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に絞り制御部材に振動が生じると回転錘自身の慣性モーメントによってギヤの回転方向とは反対の方向に回転して振動を緩和することを特徴とする各種構造のカメラの絞り制御装置、および、この絞り制御装置を備える各種構造のカメラを含むものである。
【符号の説明】
【0055】
1 カメラボディ 2 撮影レンズ
3 レンズ側絞りレバー 500 絞り機構
501 カメラ側の絞り制御レバー(絞り制御レバー)
520 増速ギヤ列 523 エンコーダギヤ
550 振動緩和装置 551 回転錘
552 回転錘ゴム 553 回転錘バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの絞りを駆動して所定の絞り値に制御する絞り制御部材と、
前記絞り制御部材の移動量を拡大する増速ギヤ列と、
前記絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に前記絞り制御部材に生じる振動を緩和する振動緩和手段とを備え、
前記振動緩和手段は、前記増速ギヤ列のいずれかのギヤに対して同軸に軸支されて前記ギヤと相対回転可能な回転錘と、前記ギヤと前記回転錘との間に介挿されて前記回転錘を前記絞り制御部材が前記レンズの絞りを絞り込む方向に駆動した際の前記ギヤの回転方向に付勢して前記回転錘を前記ギヤと一体的に回転可能とする付勢バネとを有し、
前記回転錘は、前記絞り制御部材が撮影開始前の位置に復帰して停止する際に前記絞り制御部材に振動が生じると前記回転錘自身の慣性モーメントによって前記ギヤの回転方向とは反対の方向に回転して前記振動を緩和することを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラの絞り制御装置において、
前記回転錘は、前記絞り制御部材に前記振動が生じると、前記付勢バネの付勢力に抗した前記ギヤに対する第1の方向への回転と、前記付勢バネの付勢力による前記ギヤに対する第2の方向への回転とを交互に繰り返し、
前記第1の方向への回転と前記第2の方向への回転とを交互に繰り返す際の前記回転錘の回転変動周期は、前記振動の周期と略等しいことを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカメラの絞り制御装置において、
前記ギヤは、前記増速ギヤ列の中で最も高速回転するギヤであることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置において、
前記ギヤは、前記回転錘と当接して前記付勢バネの付勢力によって前記回転錘が前記ギヤに対して回転することを防止する当接部を有し、
前記回転錘は、少なくとも前記ギヤの前記当接部と当接する部位が弾性を有する材料で構成されることを特徴とするカメラの絞り制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のいずれか一項に記載のカメラの絞り制御装置を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47791(P2012−47791A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187035(P2010−187035)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】