説明

カメラシステム

【課題】 レンズ交換可能なカメラシステムで、メカシャッターを使用しても電子シャッターを使用しても像振れを効果的に補正できるカメラシステムを提供する。
【解決手段】 撮影時に用いられシャッターの種類(フォーカルプレーンシャッター等のメカシャッターか電子シャッターか)に応じて、振動センサで検出された振れ成分に対してメカシャッターに起因する所定の振れ成分を加算するか否かを判定し、選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムの改良特に所謂防振システムの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のカメラは露出決定やピント合わせ等の撮影にとって重要な作業は全て自動化されている。
【0003】
従ってカメラ操作に未熟な人でも撮影失敗を起こす可能性は少ない。
【0004】
また、最近では、カメラの手振れによる画像のぶれを減少する防振システムも普及している為、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は少ない。
【0005】
ここで、カメラの防振システムについて簡単に説明する。
【0006】
撮影時のカメラの手振れは、周波数として通常1〜12Hzの振動である。
【0007】
シャッターのレリーズ時点において手振れに起因して発生する画像のぶれを減少させるためには、上記手振れに起因するカメラの振れ量を検出し、検出された振れ量に応じて補正レンズを変位させる。
【0008】
手ぶれによる画像のぶれを効果的に減少させるためには、
第1に、カメラの振動を正確に検出すること、第2に、振動による光軸変位を正確に補正することが必要である。
【0009】
このカメラ振れ量の検出は、角加速度、角速度等を検出する振れセンサの出力信号を積分して角変位信号を得ることによって行う。
【0010】
前記正確に検出された信号に基づき撮影光軸を偏心させる補正光学手段を駆動することにより像振れが効果的に抑制される。
【0011】
図10は、カメラシステムの交換レンズ側に像振れ補正手段(像ぶれ補正光学系と振れセンサを含む)を具備した例を示す。
【0012】
カメラ本体700に内蔵されたCPU701と交換レンズ702内に内蔵されたCPU703とは、接点ブロック704を介してシリアルバスラインで結ばれる。
【0013】
前記バスラインを通して転送されるカメラ本体700からの指令信号に従い、交換レンズ702内のアクチュエータ(絞り、フォーカスレンズ等)が駆動される。
【0014】
交換レンズ702には、交換レンズレンズ702の所定軸P,Yの周りの振れを各々検出する振れセンサ705,706が具備される。該振れセンサ705,706からの両出力が所定レベルに変換される。変換された出力に基づいて前記P軸、Y軸に対して像ぶれ像ぶれ補正光学系707を駆動させて画像振れを補正する。
【0015】
708,709は像ぶれ補正光学系707を駆動する為の回路である。カメラ本体700内には露光時に上部へ跳ね上がるミラー710、及びシャッター速度を決定するシャッター機構711が内蔵されている。
【0016】
図11は、通常の一眼レフタイプのカメラに使用されている所謂フォーカルプレーンタイプのシャッター駆動に伴う振れ波形を示す図である。
【0017】
図11(a)に示すように、まずシャッター先幕走行が開始される。この時、シャッター先幕の移動方向とは、作用反作用によりでカメラが逆方向に移動する。同図(b)で示すように、下方向の振れとなって現れる。
【0018】
シャッター先幕走行開始からt時間経過すると先幕走行は完了してシャッター幕の動きは停止する。カメラは反作用により反対方向に移動するため同図(b)で示すように上方向の振れが発生する。通常、シャッター幕の走行時間は数msecであることから、このシャッター幕の走行によって生ずる振れの周波数は数10〜数100Hzである。
【0019】
一般に、手振れ検出に使用される振れセンサの場合、その特性上100Hz近辺の周波数を正確に検知することは難しい。その為、同図(c)の実線で示すように、実際の振れ波形のピークに対してセンサ出力のピークは時間tsだけ遅れる。
【0020】
また、補正系の補正帯域も数10〜100Hz程度である。
【0021】
その結果100Hz付近のセンサ出力から振れ信号に対しては、同図(c)の点線で示すように、センサ出力のピークに対して補正系出力のピークが時間tcだけ遅れる。
【0022】
このように100Hz位の振れ信号に対しては実際の補正動作はかなり時間的に遅れる。(ts,tc)
このため、実際の像面上の振れ波形は同図(d)で示したように、却ってその時間遅れによる補正動作のためにむしろ像振れを増加させる。
【0023】
前記問題の対策として、同図(e)に示すような1次関数的な補正データを振れセンサ出力に加算し(同図(f))、そのデータにより振れ補正を行うことが特許文献1に開示されている。
【0024】
前記対策により補正エラーが同図(g)に示す程度に減少する。従って、ほぼシャッター先幕走行に起因する振れ成分を補正できる。
【特許文献1】特開平9−43660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前記開示技術は、通常の所謂一眼レフタイプのカメラに使用されるフォーカルプレーンタイプのメカニカルなシャッターの駆動を前提としている。
【0026】
近年においては一眼レフタイプのデジタルカメラが普及している。デジタルカメラでは、撮像素子への光蓄積時間を電気的に制御することにより露光時間を制御する所謂電子シャッター機能を搭載し、フォーカルプレーンタイプのシャッターは持たない一眼レフタイプのデジタルカメラも存在する。
【0027】
また、電子シャッターとフォーカルプレーンシャッターの両方を有し、撮影モード等により2種類のシャッターを使い分けるカメラも有りうる。
【0028】
電子シャッターのみで撮影可能なデジタルカメラに対して前記フォーカルプレーンシャッターによる振れ成分を加算する技術を適用した場合、フォーカルプレーンシャッターによる振れ成分が存在しないにもかかわらず不要な補正を行うことになる。
【0029】
従って、却って撮影画像のぶれを増加させる問題が生じる。
【0030】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、異なる種類のシャッター手段を有するカメラ本体と交換レンズが組み合わされても、ぶれの少ない画像を得ることが出来るカメラ、交換レンズ、カメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明においては、撮影時に用いられシャッターの種類(フォーカルプレーンシャッター等のメカシャッターか電子シャッターか)に応じて、振動センサで検出された振れ成分に対してメカシャッターに起因する所定の振れ成分を加算するか否かを判定し、選択する。または、シャッターの種類に応じて加算するデータを決定し、選択する。
【0032】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施例等によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したような本発明によれば、カメラ側で、メカシャッターを使用しても電子シャッターを使用してもシャッターの振動成分に起因する誤補正を防止し、像振れを効果的に補正できるカメラシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態を表すブロック図である。
【0036】
100はデジタル一眼レフタイプのカメラ本体である。
【0037】
200はカメラ本体に装着される交換レンズである。
【0038】
101はカメラ本体内に位置する電気回路部である。電気回路部101中、102は測光部、103は測距部、104は撮像素子105(CCDやCMOSセンサ等)の露光時間を制限するためのフォーカルプレーンタイプのメカシャッター機構、(撮像素子105は電子シャッター機能を有する、この場合104のフォーカスプレーンシャッターが無い場合もありうる)である。106はカメラしステムの制御を行うカメラ本体内CPU、107はレンズとのシリアル通信を行うための通信手段、108はカメラの各種情報を表示する表示手段である。
【0039】
また、カメラ本体100内には2段ストロークのレリーズSW109を有する。
【0040】
第1ストロークでスイッチSW1がONし、第2ストロークでレリーズスイッチSW2がONになる。110はカメラ及び交換レンズ動作させるための電源である。
【0041】
また、交換レンズ200中、201はフォーカシングレンズ、202はズーミングレンズ、203は絞り、216は像振れ補正を行う為の補正レンズである。204はズーミングレンズ202の位置を検出するためのズーム位置検出用ブラシ、205はフォーカシングレンズ201の位置を検出するためのフォーカス位置検出用ブラシである。206はオートフォーカスとマニュアルフォーカスを切り替えるA/Mスイッチ及び振れ補正動作のON、OFFを切り替えるISスイッチである。220は補正レンズ216の位置を検出する位置検出部、217は交換レンズ200の振れを検出する振れ検出部である。
【0042】
207は交換レンズ200内の電気回路部である。電気回路部207中、208は交換レンズ内の制御を行うレンズ内CPU、209はカメラとの間でシリアル通信を行うための通信手段である。
【0043】
211はフォーカシングレンズの駆動制御を行うためのレンズ駆動制御部、212はフォーカシングレンズを駆動するためのレンズ駆動用モータである。
【0044】
213は絞りの駆動制御を行うための絞り制御部、214は絞りを駆動するための絞り駆動用モータである。
【0045】
215はフォーカシングレンズ201の移動に伴ってパルス信号を出力するパルス発生手段である。
【0046】
218は補正レンズの駆動制御を行うための補正レンズ制御部、219は補正レンズを駆動するための補正レンズ駆動部(DCモータ、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ等)である。
【0047】
次に図2を用いて、像ぶれ補正光学系(補正レンズ216、位置検出部220、補正レンズ駆動部219から成る)の説明する。
【0048】
像ぶれ補正光学系は、レンズを光軸と垂直なxy方向に平行シフトすることにより、カメラ撮影光学系に入射する光路を偏心補正するシフト光学系である。
【0049】
80、81はそれぞれ実際のx、y軸方向の駆動源となる磁気回路ユニットとしてのヨーク部、82、83はそれぞれのヨークと対になるコイルである。
【0050】
前記コイル部分に補正レンズ制御部218から電力が供給されると、ふれ補正レンズ84はx、y方向に駆動される。
【0051】
85は上記振れ補正レンズ84を固定する為の支持枠及び支持アームである。
【0052】
前記振れ補正レンズ84の移動は振れ補正レンズ84と共に移動するiRED86、87及び鏡筒部90に取り付けられたPSD92、93により、非接触に検出される。
【0053】
前記PSD92,93よって検出された信号出力がレンズ内CPU206に取り込まれる。振動ジャイロ等の振れ検出部217( )の出力と補正レンズ216の位置出力が所定の関係になる様にレンズ内CPU208では、フィードバック演算及び制御が実行される。
【0054】
前記フィードバック演算及び制御結果が補正レンズ制御部218を介して上記コイル82、83に供給されることで、像振れが補正されるように前記振れ補正レンズが駆動される。
【0055】
また、88はこのシフト系への通電を停止したときにぶれ補正レンズを略光軸中心位置に保持する為のメカロック機構である。防振機能停止中にはぶれ補正レンズが動いてしまうことを防止する。また、ロック位置は光軸中心位置にあることが光学性能上望ましい。89はチャージピン、91はこのシフト系の倒れ方向を規制す為の支持球である。
【0056】
次にカメラ内CPU106の動作を図3のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップ#101において、カメラ本体100において、撮像開始時に動作するシャッターの種別情報を通信によりレンズ内CPU206へ送信する。
【0057】
例えば、メカシャッターが動作するカメラの場合はSHUTTERフラグ=0とし、電子シャッターが動作するカメラの場合はSHUTTERフラグ=1とする。
【0058】
次にステップ#102においてスイッチSW1がONするのを待つ。スイッチSW1のONを検知するとステップ#103へ進み、測光動作を行う。
【0059】
そして、次のステップ#104において、フォーカス制御を行う。
【0060】
これは測距部103の不図示の光学センサで被写体像を検出し、演算によりデフォーカス量を求める。前記でフォーカス量に基づいて演算したフォーカスレンズ駆動命令を、交換レンズ側(レンズ内CPU206)へ送信する。
【0061】
ステップ#105においては、合焦したかどうかの判定を行う。
【0062】
合焦していなければステップ#104へ戻り、再度フォーカス制御を行う。
【0063】
上記ステップ#105にて合焦が判定されるとステップ#106へ進む。
【0064】
ここではスイッチSW2がONされたか判定を行う。
【0065】
この結果、該スイッチSW2がONされるとステップ#107へ進み、撮影を行うためミラーアップ動作を行う。
【0066】
そして、次のステップ#108において、交換レンズ側へ絞り駆動命令を送信する。続くステップ#109において、メカシャッターが動作するカメラの場合にはシャッター先幕走行動作が行われ、露光が開始される。また、電子シャッターが動作するカメラの場合は、電子シャッターの蓄積開始動作により露光が開始される。
【0067】
その後はステップ#110へ進み、設定されたシャッター秒時Tvが経過するまで待機し、シャッター秒時Tvが経過するとステップ#111へ進む。
【0068】
メカシャッターが動作するカメラの場合にはシャッター後幕走行動作を行い露光を終了する。
【0069】
また、電子シャッターが動作するカメラの場合は、電子シャッターの蓄積終了動作により露光を終了する。
【0070】
そして、次のステップ#112で、交換レンズ側へ絞り開放命令が送信される。最後にステップ#113において、ミラーダウン動作が行われ、ステップ#101へ戻る。
【0071】
また、上記の動作中に、カメラ内CPU106は、スイッチSW1,SW2の状態等を交換レンズ側へ送信する。また、装着された交換レンズの判別を行うためのレンズIDの取得等が、該交換レンズからの通信により行われる。
【0072】
次に、レンズ内CPU208の動作を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
交換レンズをカメラ本体に装着すると、カメラ内CPU106からレンズ内CPU208へシリアル通信スタートする。レンズ内CPU208はステップ#201から動作を開始する。
【0074】
まず、ステップ#201において、各種初期設定が行われる。
【0075】
変数やフラグの初期化、各種ポートの設定、各種割り込み制御設定、不揮発性メモリからのデータ読み出し等である。
【0076】
なお、このステップはレンズマイコンがリセットされたときのみ実行され、以後は実行されない。
【0077】
そして、次のステップ#202においてISスイッチ,A/Mスイッチの状態検出、ズーム・フォーカスの位置検出が行われる。
【0078】
続くステップ#203においてはカメラ内CPU106からのフォーカス駆動命令に基づいて、フォーカス駆動制御が行われる。
【0079】
さらに、ステップ#204においてはカメラ内CPU106からの絞り駆動命令に基づいて絞り駆動制御が行われる。
【0080】
そして、次のステップ#205において、カメラ内CPU106から全駆動停止(レンズ内のアクチュエータの全駆動を停止する)命令を受信したかどうかの判定が行われる。
【0081】
全駆動停止命令が受信されていればステップ#206へ進み、受信していなければステップ#202へ戻る。
【0082】
なお、カメラ本体側で一定時間何も操作がなされない場合に、カメラ内CPU106からこの全駆動停止命令が送信される。
【0083】
全駆動停止命令が送信されると、ステップ#206において、全駆動停止制御が行われる。
【0084】
全てのアクチュエータ駆動が停止され、レンズ内CPU208はスリープ(停止)状態となり、レンズ電気系への給電も停止される。
【0085】
その後、カメラ本体側で何かスイッチ等の操作が行われると、カメラ内CPU106はレンズ内CPU208にカメラ側の操作が行われたことを示す信号が送られる。
【0086】
CPU208は前記スリープ状態を解除し、再びステップ#202から動作を始める。
【0087】
これらの動作の間に、カメラ内CPU106からの通信によるシリアル通信割り込み要求があれば、それらの割込み処理が行われる。
【0088】
CPU208は、送られてきた通信データのデコードを行い、デコード結果に応じたレンズ制御を行う。
【0089】
そして、通信データのデコード結果によって、スイッチSW1のON,SW2のON、シャッター秒時、カメラの機種、シャッター情報等が判別される。
【0090】
また、像振れ補正演算も一定周期毎に発生する割り込み処理によって行われる。
【0091】
第一の方向(ピッチ方向)の制御と第二の方向(ヨー方向)の制御が交互に行われる。
【0092】
この動作を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0093】
像振れ補正割り込みが発生すると、レンズ内CPU208は図5のステップ#301から動作を開始する。
【0094】
まず、ステップ#301において、制御方向がピッチ方向かヨー方向かの判定を行う。ピッチ方向であればステップ#302へ進み、各種フラグや係数、計算結果等をピッチデータとして読み書きできるようにデータアドレスを設定される。
【0095】
一方、ヨー方向であればステップ#303へ進み、各種フラグや係数、計算結果等をヨーデータとして読み書きできるようにデータアドレスが設定される。
【0096】
続くステップ#304において振れ検出部217からの出力がA/D変換され、その結果はRAMに予め定義されたAD_DATAに格納される。
【0097】
続くステップ#305において像振れ補正開始の指示が為されたか否かが判定される。
【0098】
カメラ内CPU106より送信されてきた通信のデコード結果がISスイッチとSW1が共にONの時、像振れ補正開始とするよう判定される。
【0099】
像振れ補正スタート指示ならばステップ#306へ進み、スタート指示でなければステップ#316へ進む。
【0100】
ここでは像振れ補正スタートの指示が為されており、ステップ#306へ進むものとする。
【0101】
ステップ#306では低周波成分をカットするために振れ信号に対してハイパスフィルタ(HPF)演算が行われる。
【0102】
続くステップ#307では前記HPF演算された信号に対し更に積分演算が行われる。その結果、像振れの角変位信号(BURE_DATA)が得られる。
【0103】
続くステップ#308においては、露光開始のタイミングかどうかの判定が行われる。そうでなければステップ#313へ進み、また、露光開始のタイミングであった場合はステップ#309へ進む。
【0104】
露光開始のタイミングとはメカシャッターが動作するカメラの場合には先幕走行開始のタイミングである。
【0105】
電子シャッターが動作するカメラの場合には、撮像素子への蓄積開始のタイミングである。
【0106】
続くステップ#309においてはカメラ内CPU106から送信されてきたシャッター情報(SHUTTERフラグ)の判定が行われる。
【0107】
その結果、SHUTTERフラグ=0であればメカシャッターが動作するカメラであることが判別されるのでステップ#310へ進む。そして、シャッター先幕走行による振れ成分を補正する演算が行われる。
【0108】
一方でSHUTTERフラグ=1であれば電子シャッターが動作するカメラであることが判別されたのでステップ#311へ進む。
【0109】
シャッター先幕走行による振れを補正する場合には、続くステップ#310において、レンズ内CPU208内の不図示のROMに予め記憶されている任意波形データ(固有の補正データ、SH_DATA(n))が読み込まれる。
【0110】
この任意波形データ(SH_DATA(n))は、判別されたカメラ本体の種類に対応したシャッターレリーズ時の振動による波形データであり、メカシャッターの動作するカメラの先幕走行時の衝撃による振れ信号である。
【0111】
また、この任意波形データ(SH_DATA(n))はシャッター先幕駆動のタイミング(n=0)から時間と共に変化するデータである。
【0112】
一方で、ステップ#311へ進んだ場合は、電子シャッターが動作するカメラでメカシャッターは動作しないので前述のSH_DATA(n)を0とする。
【0113】
そして、次のステップ#312において、上記ステップ#307にて得られた角変位データ(BURE_DATA)に上記ステップ#310またはステップ#311の任意波形データ(SH_DATA(n))を加算(BURE_DATA+SH_DATA(n)→BURE_DATA)し、角変位データを更新する。
【0114】
なお、シャッター走行方向が逆になった場合は、上記任意波形データ(SH_DATA(n))を減算することで対応可能である。
【0115】
一方で、ステップ#309の判定で電子シャッターが動作するカメラであった場合には任意波形データ(SH_DATA(n))をSH_DATA(n)=0とする。
【0116】
これによりシャッター先幕走行による振れを補正するための演算を行わないことと等価となる。
【0117】
続くステップ#313で補正レンズ216の位置を検知する位置検出部220(PSD92、93)からの出力を取り込み、A/D変換する(変換後=PSD_DATA)。
【0118】
続くステップ#314でフィードバック演算{(BURE_DATA)−(PSD_DATA)}を行う。
【0119】
ステップ#315では安定な制御系にするために位相補償演算を行う。
【0120】
そして、ステップ#316においてステップ#314で得られた演算結果が不図示の出力ポートに出力される。
【0121】
出力ポートから出力された信号は補正レンズ井制御部218に入力され、補正レンズ駆動用モータ219により補正レンズが駆動され像振れ補正が行なわれる。以上により一連の像振れ補正割り込み処理を終了する。
【0122】
上記ステップ#305において像振れ補正スタートの指示が行われていない場合は、前述したようにステップ#317へ進む。
【0123】
ハイパスフィルタ(HPF)演算、積分演算の初期化が行なわれ一連の像振れ補正割り込み処理が終了される。
【0124】
以上述べたごとく、カメラ本体側では撮像開始時に使用するシャッター手段の情報を交換レンズ側に送信するよう構成した。
【0125】
交換レンズ側ではカメラ本体側より受信したシャッター手段の情報に応じて、シャッター先幕走行による振れを補正する演算を行う際の固有の補正データを変更するようにした(図5の#309〜#311)。
【0126】
具体的には電子シャッターが動作するカメラの場合には固有の補正データを0とした。
【0127】
よって、電子シャッターが動作するカメラの場合には、実質的にシャッター先幕走行による振れを補正する演算を行わなくなる。
【0128】
従って、誤った補正による像ぶれの悪化が防止される。
【0129】
(実施の第2の形態)
本発明の実施の第2の形態では、メカシャッターと電子シャッターの双方を有する。撮影モードによりシャッター機構を使い分ける。
【0130】
カメラ本体と交換レンズの組み合わせで、交換レンズ側のシャッター先幕走行に起因する振れを補正するための補正データを切り替える場合を説明する。
【0131】
図6は本実施の第2の形態のブロック図である。
【0132】
第1の実施の形態と異なる点は、カメラ本体のシャッター機構として、フォーカルプレーンタイプのメカシャッター機構104、及び撮像素子105による電子シャッターの両方を有していることである。
【0133】
さらに、撮影モードを切り替える撮影モード切替えスイッチ111を有していることである。
【0134】
ここで、撮影モード1ではメカシャッターを使用し、撮影モード2では電子シャッターを使用する。
【0135】
撮影モード1はシャッター先幕と後幕の駆動により通常の静止画撮影を行うモードとする。
【0136】
撮影モード2は不図示の液晶モニターに撮像画像をリアルタイムに表示可能であり、表示状態から静止画撮影を行う際に電子シャッターにより撮影を行うモードであるとする。
【0137】
また、レンズ内CPU208のメイン動作及び像振れ補正割り込み動作は図4及び図5のフローチャートと同様であるため、その説明は省略する。
【0138】
上記実施の第1の形態と異なるカメラ内CPU106のメイン動作について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0139】
なお、図7において本発明の実施の第2の形態における特徴的な動作となるステップ#401〜#413のみ説明を行う。
【0140】
その他の動作は図3と同様のため、同一のステップ番号を付し、その部分の説明は省略する。
【0141】
ステップ#401において、撮影モードの判定が行われる。
【0142】
前述したような撮影モード1であればステップ#402へ進み、シャッター情報としてSHUTTERフラグ=0(メカシャッター)が交換レンズ側へ送信される。
【0143】
一方で、前述したような撮影モード2であればステップ#403へ進み、シャッター情報としてSHUTTERフラグ=1(電子シャッター)が交換レンズ側へ送信される。
【0144】
さらに、ステップ#404において、再度撮影モードの判定を行う。
【0145】
撮影モード1であれば、続くステップ#405でシャッター先幕走行が行われる。(記録開始)
その後はステップ#406へ進み、設定されたシャッター秒時Tvが経過するまで待機する。その後、シャッター秒時Tvが経過するとステップ#407へ進み、シャッター後幕走行が行なわれる(記録終了)。
【0146】
一方で撮影モード2であれば、続くステップ#408でシャッター先幕走行が行われる。但し、記録は開始されないで撮像画像が不図示の液晶モニター等に表示されるのみとする。
【0147】
続くステップ#409において、再度SW2がONか判定を行う。
【0148】
再度SW2がONされていなければ待機する。再度SW2がONされると続くステップ#410で電子シャッター蓄積開始とし、記録を開始する。
【0149】
続くステップ#411で設定されたシャッター秒時Tvが経過するまで待機する。
【0150】
シャッター秒時Tvが経過するとステップ#412へ進み電子シャッター蓄積終了として記録が終了する。
【0151】
さらに、ステップ#413でシャッター後幕走行が行なわれる。
【0152】
以上のように、カメラ本体側では撮影モードに応じた撮像開始時に使用されるシャッター手段の情報を交換レンズ側に送信する。
【0153】
また、交換レンズ側では第1の実施の形態と同様にカメラ本体側より送信された撮像開始時に使用するシャッター手段の情報に応じて、演算を行う際のシャッターの振動に起因する固有の補正データを変更される(図5の#309〜#311)。
【0154】
よって、撮影モードに応じてメカシャッターと電子シャッターを使い分けるタイプのカメラにおいても、電子シャッターモード時にシャッター先幕走行による振れを補正する演算を行わなくなるため、誤った補正を行うことがなくなる。従って、像ぶれの悪化を防止できる。
【0155】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、メカシャッターと電子シャッターの双方を有し、撮影モードによりシャッター機構を使い分けるカメラ本体と交換レンズの組み合わせの場合を説明する。
【0156】
シャッター先幕走行による振れを交換レンズ側で補正演算するための固有の補正データをカメラROM内に有している例を説明する。
【0157】
この場合、カメラ本体からのシャッター情報の送信は行われない。
【0158】
代わりに、シャッター先幕走行による振れを補正する演算を行う際の固有の補正データを撮影モードに応じて交換レンズへ送信する。
【0159】
本実施の第3の形態のブロック図は図6と同じである。
【0160】
また、撮影モードの例についても本実施の第2の形態と同様である。
【0161】
また、レンズ内CPU208のメイン動作は図4のフローチャートと同様であるためその説明は省略する。
【0162】
上記実施の第1の形態及び第2の形態と異なるカメラ内CPU106のメイン動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0163】
なお、図8において本発明の実施の第3の形態における特徴的な動作となるステップ#501〜#503のみ説明を行う。その他の動作は図7と同様のため、同一のステップ番号を付し、その部分の説明は省略する。
【0164】
ステップ#501において、撮影モードの判定を行う。
【0165】
撮影モード1(メカシャッター使用)であればステップ#502へ進む。交換レンズ側でのシャッター先幕走行による振れを補正する演算で使用する不図示のROM内に記憶されている固有の補正データを交換レンズ側へ送信する。
【0166】
一方で、撮影モード2(電子シャッター使用)であればステップ#503へ進み、前述した固有の補正データを0として交換レンズ側へ送信する。
【0167】
次に上記実施の第1の形態及び第2の形態と異なるレンズ内CPU208の像振れ補正割り込み動作について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0168】
本発明の実施の第3の形態における動作では、図5のフローチャートからステップ#310〜#312を削除したフローチャートと同様になるので詳細な説明は省略する。
【0169】
なお、ステップ#312において固有の補正データSH_DATA(n)はカメラ本体より送信されてきた固有の補正データを使用する。
【0170】
従って、撮影モードに応じて固有の補正データが変更され、電子シャッター使用時には実質的にシャッター先幕走行による振れを補正する演算を行わなくなる。
【0171】
以上のように、カメラ本体側では撮影モードに応じて交換レンズ側でのシャッター先幕走行による振れを補正する演算で使用する固有の補正データを変更して交換レンズ側に送信するようにした。
【0172】
よって、同一のカメラで撮影モードに応じてメカシャッターと電子シャッターを使い分けるカメラと交換レンズの組み合わせにおいて、交換レンズ側での動作を従来より変更することなく、撮影モードに応じて実質的にシャッター先幕走行による振れを補正する演算を行わなくさせることができる。
【0173】
従って、誤った補正を行うことがなくなる。従って誤った補正による手ぶれの悪化を防止することができる。
【0174】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0175】
また、本実施例ではメカシャッターの先幕を有する実施例を説明したが、電子シャッターを用いた場合は、先幕を廃止して、先幕に相当する動作を電子シャッターで行っても良い。また、メカシャッターなしで電子シャッターのみで実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る一眼レフカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の像ぶれ補正光学系(補正レンズ216、位置検出部220、補正レンズ駆動部219から成る)の構成を示す斜視図である。
【図3】図1のカメラ内CPUのメイン動作を示すフローチャートである。
【図4】図1のレンズ内CPUのメイン動作を示すフローチャートである。
【図5】図1のカメラ内CPUの像振れ補正割り込み動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の第2の形態に係る一眼レフカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】図6のカメラ内CPUのメイン動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の第3の形態のカメラ内CPUのメイン動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の第3の形態のレンズ内CPUの像振れ補正割り込み動作を示すフローチャートである。
【図10】従来のカメラシステムの交換レンズ側に防振システムを具備した例を示す概略構成図である。
【図11】通常の一眼レフタイプのカメラに使用されているフォーカルプレーンタイプのシャッター駆動に伴う振れ波形等の様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0177】
100 カメラ本体
101 カメラ本体内電気回路部
102 測光部
103 測距部
104 メカシャッター
105 撮像素子(電子シャッター)
106 カメラ本体内CPU
107 通信手段
108 表示手段
109 レリーズスイッチ
110 カメラ内電源
200 交換レンズ
201 フォーカシングレンズ
202 ズーミングレンズ
203 絞り
204 ズーム位置検出用ブラシ
205 フォーカス位置検出用ブラシ
206 A/Mスイッチ、ISスイッチ
207 交換レンズ内電気回路部
208 レンズ内CPU
209 通信手段
211 レンズ駆動制御部
212 レンズ駆動用モータ
213 絞り制御部
214 絞り駆動用モータ
215 パルス発生手段
216 補正レンズ
217 振れ検出部
218 補正レンズ制御部
219 補正レンズ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッター手段を有するカメラ本体と、
該カメラ本体に着脱自在で、且つ前記カメラ本体との間で情報通信可能な交換レンズと、を有するカメラシステムにおいて、
撮像開始を指示する撮像スイッチと、
前記カメラシステムの手ぶれを検出する手ぶれ検出手段と、
前記手ぶれによる像ぶれを補正する為の補正手段と、
前記シャッター手段の動作に関係する補正データを記憶する記憶手段と、
前記撮像スイッチの操作に応じて前記手ぶれ検出手段と前記記憶手段に記憶されたふれ成分とに基いてふれ量を演算する演算手段と、を有し、
前記演算手段は、前記シャッター手段の種類に応じて前記演算に用いる補正データを変更することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
前記シャッター手段は、フォーカルプレーンシャッターまたは電子シャッターであることを特徴とする請求項1のカメラシステム。
【請求項3】
前記シャッター手段は、フォーカルプレーンシャッター及び電子シャッターであり、選択して使用可能であることを特徴とする請求項1記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記シャッター手段は、フォーカルプレーンシャッター及び電子シャッターであり、撮像時は電子シャッターで先膜動作を実施し、フォーカルプレーンシャッターの後膜のみ使用することを特徴とする請求項1記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記記憶手段は前記交換レンズ内のROMであり、カメラ本体から送信されたシャッター手段に関する情報に基いて前記補正データが選択されることを特徴とする請求項1〜3のカメラシステム。
【請求項6】
前記記憶手段は前記カメラ本体内のROMであり、前記カメラ本体より交換レンズに前記記憶手段に記憶された情報が送信されることを特徴とする請求項1〜3のカメラシステム。
【請求項7】
前記電子シャッターを用いた場合は、前記補正データは用いない、または0であることを特徴とする請求項1〜5のカメラシステム。
【請求項8】
請求項1〜6のカメラ本体。
【請求項9】
前記請求項1〜6の交換レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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