説明

カメラボディ、カメラシステム

【課題】カメラ内で画像データの補正を行うことができ、かつ、使い勝手の良いカメラシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】交換レンズは、光学データを記憶する記憶手段を備え、カメラボディは、交換レンズから光学データを取得する取得手段と、撮像手段により生成された画像データを補正する補正手段と、取得手段が取得した光学データに基づいて、撮像手段により生成された画像データを補正するための補正値を算出する算出手段と、算出手段により算出された補正値が補正手段により補正可能な範囲を超えた値である場合に、補正値を補正手段により補正可能な範囲内に収まるよう抑制する抑制手段等と、を備え、補正手段は、抑制手段により算出された補正値に基づいて、撮像手段により生成された画像データを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムに関し、特に、撮像した画像データの補正を行うことができるカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高精度のディストーション、シェーディング補正をすることができるレンズ交換式デジタルカメラを開示する。このレンズ交換式のカメラシステムにおけるカメラボディは、装着されている交換レンズのIDを取得する。このレンズ交換式のカメラシステムは、画像データを撮像した際に、撮像した画像データとレンズIDとを記憶媒体に記憶する。
【0003】
特許文献1は、さらに、交換レンズごとのディストーション、シェーディングを補正するための補正データを有している画像処理装置を開示する。この画像処理装置は、記憶媒体に格納されている画像データのディストーション、シェーディングを補正することができる。
【0004】
ここで、上記レンズ交換式デジタルカメラで撮像した画像データは、装着されている交換レンズのIDと共に記憶媒体に記憶されている。従って、上記画像処理装置は、その記憶媒体に記憶されている画像データが生成された際にカメラボディに装着されていたレンズがどのようなレンズであるかを判断することができる。その結果、この画像処理装置は、記憶媒体に記憶されている画像データに合った適切な補正をすることができる。
【0005】
このように、このレンズ交換式デジタルカメラと画像処理装置とからなるシステムによれば、レンズ交換式デジタルカメラで画像データを撮像した際に、撮像した画像データと装着されているレンズのIDという最低限の情報を記憶媒体に記憶するだけで、撮像した画像データに対して、適切な補正をすることができる。
【特許文献1】特開2000−184247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているレンズ交換式デジタルカメラによれば、画像処理装置を用いなければ撮像した画像データの補正をすることができない。従って、撮像した画像データをカメラ内で補正する際に、高速化する技術や、補正限界を超えるレンズが装着された場合に対処する技術や、画像データの補正との関係で上手にモニタを制御する技術などの、カメラ内で画像データの補正を行う場合に使い勝手を良くする技術は開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、カメラ内で画像データの補正を行うことができ、かつ、使い勝手の良いカメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカメラシステムは、交換レンズとカメラボディとからなるカメラシステムであって、交換レンズは、光学データを記憶する記憶手段を備え、カメラボディは、被写体像を撮像することにより画像データを生成する撮像手段と、交換レンズから光学データを取得する取得手段と、撮像手段により生成された画像データを補正する補正手段と、取得手段が取得した光学データに基づいて、撮像手段により生成された画像データを補正するための補正値を算出する算出手段と、算出手段により算出された補正値が補正手段により補正可能な範囲を超えた値である場合に、補正値を補正手段により補正可能な範囲内に収まるよう抑制する抑制手段と、を備え、補正手段は、抑制手段により算出された補正値に基づいて、撮像手段により生成された画像データを補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カメラ内で画像データの補正を行うことができ、かつ、使い勝手の良いカメラシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1について説明する。
〔1.実施の形態1〕
〔1−1.概要〕
本実施の形態にかかるカメラシステム1は、カメラボディ100と交換レンズ200とから構成される。カメラボディ100は、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データの歪曲収差の補正等の画像データの補正をすることができる。
【0011】
本発明は、このような歪曲収差の補正等の画像データの補正ができるカメラシステムであって、使い勝手の良いカメラシステムを提供するためになされた発明である。
【0012】
〔1−2.構成〕
〔1−2−1.カメラボディの構成〕
カメラボディ100は、CCDイメージセンサー110と液晶モニタ120とカメラコントローラー140とボディマウント150と電源160とカードスロット170とを備える。
【0013】
カメラコントローラー140は、レリーズ釦130等の操作部材からの指示に応じて、CCDイメージセンサー110等のカメラシステム1全体を制御する。カメラコントローラー140は、垂直同期信号をタイミング発生器112に送信する。また、カメラコントローラー140は、制御動作や画像処理動作の際に、DRAM141をワークメモリとして使用する。また、フラッシュメモリ142は、カメラコントローラー140の制御の際に使用するプログラムやパラメータを保存する。また、フラッシュメモリ142は、カメラボディ100に装着されている交換レンズごとの歪曲収差補正のためのゲインGやゲインTMGを保存する。歪曲収差補正のためのゲインGやゲインTMGについては後述する。フラッシュメモリ142は、ゲインGやゲインTMGを交換レンズのIDやシリアルナンバー等と対応付けて保存する。
【0014】
CCDイメージセンサー110は、交換レンズ200を介して入射される被写体像を撮像して画像データを生成する。生成された画像データは、ADコンバーター111でデジタル化される。ADコンバーター111でデジタル化された画像データは、カメラコントローラー140で様々な画像処理が施される。ここで言う様々な画像処理とは、例えば、ガンマ補正処理、ホワイトバランス補正処理、キズ補正処理、YC変換処理、電子ズーム処理、JPEG圧縮処理などの画像圧縮処理、歪曲収差補正処理、色収差補正処理等である。このように、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、歪曲収差補正機能を有している。歪曲収差補正機能の詳細については、後述する。
【0015】
CCDイメージセンサー110は、タイミング発生器112で制御されるタイミングで動作する。CCDイメージセンサー110の動作としては、静止画像の撮像動作、動画像の撮像動作、スルー画像の撮像動作等である。ここで、スルー画像とは、撮像後、メモリーカード171に記録しない画像である。スルー画像は、主に動画像であり、静止画像の撮像のための構図を決めるために液晶モニタ120に表示されるものである。
【0016】
液晶モニタ120は、カメラコントローラー140で画像処理された表示用画像データが示す画像を表示する。液晶モニタ120は、動画像も静止画像も選択的に表示可能である。
【0017】
カードスロット170は、メモリーカード171を装着可能である。カードスロット170は、カメラコントローラー140からの制御に基づいて、メモリーカード171を制御する。メモリーカード171は、カメラコントローラー140の画像処理により生成された画像データを格納可能である。例えば、メモリーカード171は、JPEG画像ファイルを格納できる。また、メモリーカード171は、内部に格納する画像データ又は画像ファイルを出力できる。メモリーカード171から出力された画像データ又は画像ファイルは、カメラコントローラー140で画像処理される。例えば、カメラコントローラー140は、メモリーカード171から取得した画像データ又は画像ファイルを伸張して表示用画像データを生成する。
【0018】
電源160は、カメラシステム1で消費するための電力を供給する。電源160は、例えば、乾電池であってもよいし、充電池であってもよい。また、電源コードにより外部から供給される電力をカメラシステム1に供給するものであってもよい。
【0019】
ボディマウント150は、交換レンズ200のレンズマウント250と機械的及び電気的に接続可能である。ボディマウント150は、レンズマウント250を介して、交換レンズ200との間で、コマンドやデータを送受信可能である。ボディマウント150は、カメラコントローラー140から受信した種々の制御信号をレンズマウント250を介してレンズコントローラー240に送信する。また、ボディマウント150は、電源160から受けた電力をレンズマウント250を介して交換レンズ200全体に供給する。
【0020】
〔1−2−2.交換レンズの構成〕
交換レンズ200は、光学系とレンズコントローラー240とレンズマウント250とを備える。交換レンズ200の光学系は、ズームレンズ210、OISレンズ220、絞り260、フォーカスレンズ230を含む。
【0021】
ズームレンズ210は、交換レンズ200の光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。ズームレンズ210は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。駆動機構211は、使用者が操作可能なズームリング等を含み、使用者による操作をズームレンズ210に伝え、ズームレンズ210を光学系の光軸方向に沿って移動させる。検出器212は、駆動機構211における駆動量を検出する。レンズコントローラー240は、この検出器212における検出結果を取得することにより、光学系におけるズーム倍率を把握することができる。
【0022】
OISレンズ220は、交換レンズ200の光学系で形成される被写体像のぶれを補正するためのレンズである。OISレンズ220は、カメラシステム1のぶれを相殺する方向に移動することにより、CCDイメージセンサー110上の被写体像のぶれを小さくする。OISレンズ220は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。アクチュエータ221は、OIS用IC223からの制御を受けて、光学系の光軸に垂直な面内でOISレンズ220を駆動する。アクチュエータ221は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置検出センサー222は、光学系の光軸に垂直な面内におけるOISレンズ220の位置を検出するセンサーである。位置検出センサー222は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。OIS用IC223は、位置検出センサー222の検出結果及びジャイロセンサーなどのぶれ検出器の検出結果に基づいて、アクチュエータ221を制御する。OIS用IC223は、レンズコントローラー240からぶれ検出器の検出結果を得る。また、OIS用IC223は、レンズコントローラー240に対して、光学的像ぶれ補正処理の状態を示す信号を送信する。
【0023】
絞り260は、光学系を通過する光の量を調整するための部材である。絞り260は、例えば、複数の絞り羽根からなり、羽根で構成する開口部を開閉することにより、光量を調整可能である。絞りモータ261は、絞り260の開口部を開閉するための駆動手段である。
【0024】
フォーカスレンズ230は、光学系でCCDイメージセンサー110上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ230は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。
【0025】
フォーカスモータ233は、レンズコントローラー240の制御に基づいて、フォーカスレンズ230が光学系の光軸に沿って進退するよう駆動する。これにより、光学系でCCDイメージセンサー110上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させることができる。フォーカスモータ233は、本実施の形態1では、ステッピングモータを用いる。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、サーボモータ、超音波モータなどによっても実現できる。
【0026】
レンズコントローラー240は、カメラコントローラー140からの制御信号に基づいて、OIS用IC223やフォーカスモータ233などの交換レンズ200全体を制御する。また、レンズコントローラー240は、検出器212、OIS用IC223などから信号を受信して、カメラコントローラー140に送信する。レンズコントローラー240は、カメラコントローラー140との送受信の際には、レンズマウント250及びボディマウント150を介して行う。
【0027】
レンズコントローラー240は、制御の際、SRAM241をワークメモリとして使用する。また、フラッシュメモリ242は、レンズコントローラー240の制御の際に使用するプログラムやパラメータを保存する。また、フラッシュメモリ242は、後述する歪曲収差補正情報を保存している。
【0028】
レンズマウント250は、カメラボディ100のボディマウント150と機械的及び電気的に接続可能である。レンズマウント250は、ボディマウント150を介して、カメラボディ100との間で、コマンドやデータを送受信可能である。レンズマウント250は、レンズコントローラー240から受信した種々の制御信号を、ボディマウント150を介して、カメラコントローラー140に送信する。例えば、レンズマウント250は、レンズコントローラー240から受信した歪曲収差補正情報を、ボディマウント150を介して、カメラコントローラー140に送信する。
【0029】
〔1−2−3.本発明との対応関係〕
交換レンズ200は、本発明の交換レンズの一例である。カメラボディ100は、本発明のカメラボディの一例である。フラッシュメモリ242は、本発明の記憶手段の一例である。CCDイメージセンサー110は、本発明の撮像手段の一例である。ボディマウント150は、本発明の取得手段の一例である。カメラコントローラー140は、本発明の補正手段の一例である。カメラコントローラー140は、本発明の算出手段の一例である。カメラコントローラー140は、本発明の抑制手段の一例である。
【0030】
〔1−3.歪曲収差補正〕
前述したように、カメラシステム1は、歪曲収差を電気的に補正する機能を有している。以下、歪曲収差補正について説明する。
【0031】
〔1−3−1.歪曲収差補正の基本概念〕
歪曲収差補正の基本概念について図2〜図5を用いて説明する。図2および図3に示すように、歪曲収差には樽型および糸巻型の2種類が存在する。樽型歪曲収差の場合、歪曲収差が生じていない像A1を基準とすると、像A1の四隅が光学中心Oに向かって内側に歪み、全体に丸みを帯びた像A2がCCDイメージセンサー110上に形成される。光学中心Oは、CCDイメージセンサー110の中心であり、光学系201の光軸とほぼ一致している。
【0032】
一方、糸巻型歪曲収差の場合、歪曲収差が生じていない像A3を基準とすると、像A3の四隅が光学中心Oから外側に向かって広がるように歪み、四隅が鋭角に尖った像A4がCCDイメージセンサー110上に形成される。
【0033】
このように、歪曲収差が生じると、CCDイメージセンサー110により取得された画像の外周部で被写体像が歪む。
【0034】
ここで、歪曲収差量をDY、歪曲収差が生じた実像高(像A2、A4における光学中心Oからの距離)をY、歪曲収差が生じていない理想像高(像A1、A3における光学中心Oからの距離)をY´、とすると、歪曲収差量DYは以下の式(1)で表わされる。
【0035】
【数1】

【0036】
本実施形態では、以下の式(2)により歪曲収差量DYを定義する。
【0037】
【数2】

【0038】
補正係数C3,C5,C7は、交換レンズに搭載されている光学系の仕様に応じて最適な数値が異なる。つまり、これらの補正係数C3,C5,C7は交換レンズ200特有の数値であると言える。これらの係数を用いて、歪曲収差の補正を行う。なお、この式(2)は歪曲収差を補正する際に使用される式の一例であり、他の式を用いてもよい。他の式を用いる場合、補正係数の種類は式(2)と異なる場合もある。
【0039】
歪曲収差を補正するためには、実像高Yを理想像高Y´に変換する必要がある。実像高Yを理想像高Y´に変換するために、以下の式(3)にてゲインGを定義する。
【0040】
【数3】

【0041】
式(3)のゲインGは実像高Yを理想像高Y´に変換するためのゲイン関数を示している。実像高Yの最大値を1とした場合、ゲイン形状は図4および図5のように表わすことができる。図4および図5では、縦軸がゲインG、横軸が実像高Yである。
【0042】
図4および図5に示すゲイン形状の場合、実像高Yが大きくなるにしたがって(つまり光学中心Oからの距離が大きくなるにしたがって)、ゲインGの絶対値が徐々に大きくなっている。これは、画像の外周部の歪曲収差量が中心部の歪曲収差量よりも大きいことを意味している。
【0043】
図4に示すようにゲインGが1よりも大きい場合、実像高Yが理想像高Y´に変換される際に画像が外側へ拡大される。つまり、図4に示すゲイン形状は、歪曲収差が図2に示すような樽型であることを意味している。
【0044】
一方、図5に示すようにゲインGが1よりも小さい場合、実像高Yが理想像高Y´に変換される際に画像が内側へ縮小される。つまり、図5に示すゲイン形状は、歪曲形状が図3に示すような糸巻型であることを意味している。
【0045】
このように、ゲインGを上記のように定義することで、歪曲収差を視覚的にとらえることができる。
【0046】
〔1−3−2.補正率〕
次に、歪曲収差補正をする際の補正率について図6、図7を用いて説明する。
【0047】
上記のゲインGを用いると、理論上は歪曲収差を完全に補正することが可能となる。
【0048】
しかし、歪曲収差を完全に補正しない方が好ましい場合も考えられる。例えば、樽型の歪曲収差に対して人間はそれほど敏感ではないが、糸巻型の歪曲収差に対して人間は敏感に反応する傾向にある。さらに、樽型の歪曲収差が生じた画像は若干丸みを帯びているため、温か味が感じられる。
【0049】
例えば、樽型の歪曲収差に対しては、歪曲収差補正の割合を小さくすることで、補正後の画像に樽型の歪曲収差が残り、温か味のある画像が得られる。また、糸巻型の歪曲収差に対しては、歪曲収差補正の割合を大きくすることで、補正後の画像から糸巻型の歪曲収差が完全に除去され、樽型の歪曲収差のように若干丸みを帯びた温か味のある画像が得られる。
【0050】
そこで、本実施の形態にかかるカメラシステム1には、歪曲収差補正の割合を調節する機能が設けられている。
【0051】
具体的には、ゲインGに補正率Tを乗じたゲインTGを以下の式(4)のように定義する。
【0052】
【数4】

【0053】
前述のゲインGの代わりにゲインTGを用いることで、歪曲収差補正の程度を調節することができる。例えば、G>1の場合、補正率をT<1とするとゲインTGがゲインGよりも小さくなる。つまり、樽型の歪曲収差の場合、補正率T<1とすることで、歪曲収差補正の程度がゲインGでの補正に比べて小さくなる。
【0054】
また、G<1の場合、補正率をT<1とするとゲインTGがゲインGよりも小さくなる。つまり、糸巻型の歪曲収差の場合、歪曲収差補正の程度がゲインGでの補正に比べて小さくなる。
【0055】
なお、上記の場合のゲインTGのゲイン形状は、例えば図6および図7のように表わすことができる。ここで、補正率Tは以下の式(5)で表わすことができる。
【0056】
【数5】

【0057】
〔1−3−3.倍率補正値〕
次に、歪曲収差補正をする際の倍率補正値について図8、図9を用いて説明する。
【0058】
本実施の形態にかかるカメラシステム1は、フラッシュメモリ242に格納されている交換レンズ200特有の補正係数C3,C5,C7に関する情報を用いることで、上述した方法により、光学系の特性に応じた歪曲収差の補正を行うことができる。
【0059】
しかし、糸巻型の歪曲収差を補正する場合、G<1であるため、補正後の像が実像よりも小さくなる。このため、条件によっては補正後の像がCCDイメージセンサー110よりも小さくなる。この結果、CCDイメージセンサー110から出力された画像に情報が欠落した領域が生じ得る。このような現象を画素欠陥という。
【0060】
画素欠陥の発生を防止するために、本実施の形態にかかるカメラシステム1では、歪曲収差補正の際に画像全体の倍率を補正する倍率補正値Mを用いる。例えば、倍率補正値Mを用いて、図8に示すように0≦実像高Y≦1の範囲内でゲインGがG≧1となるようにゲインGを補正する。
【0061】
具体的には、倍率補正値Mを考慮したゲインMGを以下の式(6)のように定義する。
【0062】
【数6】

【0063】
0≦Y≦1の範囲での最小値を求め、最小値が1以上となるようなMをゲイン形状に乗じる。ゲインGを実像高Yにより微分した式(7)から、最小値を求めることができる。
【0064】
【数7】

【0065】
具体的には、式(7)が0である場合の解(例えば、a、b)を求め、Y=0、a、b、1の4点でのゲインGを比較する。この結果、ゲインGが最小である場合の実像高Yを求めることができる。この実像高Yおよび式(7)から、ゲインGの最小値を求めることができる。ゲインGの最小値がG=GMINのとき、倍率補正値をM=1/GMINとすることで、MG≧1を満たすことができる。
【0066】
このように、倍率補正値Mを設定することで、補正後の像を所定のサイズ以上になるように保つことができ、補正後の像がCCDイメージセンサー110のサイズよりも小さくなるのを防止できる。すなわち、画素欠陥の発生を防止することができる。
【0067】
以上のように、補正率Tおよび倍率補正値Mを考慮すると、最終的なゲインTMGは以下の式(8)で表わされる。
【0068】
【数8】

【0069】
式(8)および式(3)より、実像高Yを理想像高Y´に変換するための式(9)は以下のようになる。
【0070】
【数9】

【0071】
ここで、C3=0.2、C5=−0.2、C7=−0.1、T=0.9の場合の計算例について説明する。この条件下において、歪曲収差量DYおよびゲインGは式(3)および(4)より、以下の式(10)および(11)のように表わされる。
【0072】
【数10】

【0073】
【数11】

【0074】
式(10)および(11)の式は、図9(A)および(B)のグラフで表わされる。ゲインGの最小値を求めるために、式(11)を微分すると、以下の式(12)となる。
【0075】
【数12】

【0076】
ゲインGの最小値は、ゲインGの傾きが0である点、あるいは、Y=0、1の点である。Z=Yと仮定すると、以下の2次方程式が導き出される。
【0077】
【数13】

【0078】
式(13)の解は、Z=0.387426、−1.72076となる。
【0079】
ここで、画素欠陥が発生しない条件として、アスペクト比=16:9の場合、0.49<Y<1でのゲインGの最小値が解となる。このため、0.2401<Z<1、0.49<Y<1より、Z=0.387426、つまりY=0.622435となる。
【0080】
Y=0.49、0.622435、1でのゲインGの最小値は、Y=0.622435となり、GMIN=0.95835となる。
【0081】
したがって、ゲイン関数MGは以下の通りとなる。
【0082】
【数14】

【0083】
最終的に、T=0.9を考慮して、式(14)および式(4)より、以下のゲイン関数TMGを導き出すことができる。
【0084】
【数15】

【0085】
この式(15)は、図9(C)のように表わすことができる。図9(C)ではゲインTMGが0≦Y≦1の範囲において1以上となっているため、糸巻型の歪曲収差を補正する場合にでも、画像が拡大されるように補正される。これにより、画素欠陥が生じるのを防止することができる。
【0086】
このような計算を行うことにより、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正するための、ゲインGや、ゲインTMGを計算することができる。カメラコントローラー140は、このように算出したゲインGやゲインTMGを用いて、CCDイメージセンサー110によって撮像された画像データの歪曲収差を補正する。
【0087】
〔1−3−4.歪曲収差補正情報〕
次に、歪曲収差補正情報について図10を用いて説明する。以上に説明した歪曲収差補正では、補正係数C3,C5,C7は1つの歪曲収差の特性にのみ対応している。
【0088】
しかし、交換レンズ式のデジタルカメラでは、光学系の仕様が交換レンズの種類ごとに異なるため、装着される交換レンズの光学系に合った補正係数を選択する必要がある。
【0089】
また、同じ光学系であっても、焦点距離やフォーカスレンズの位置に応じて、歪曲収差の特性が変化するため、焦点距離およびフォーカスレンズの位置に合わせて補正係数エラー! リンクが正しくありません。を選択する必要がある。
【0090】
そこで、交換レンズ200のフラッシュメモリ242には補正係数テーブルE(第1補正情報の一例)が格納されている。具体的には図10に示すように、レンズコントローラー240の補正係数テーブルEは、ズーム情報ZENC、フォーカス情報FENC、複数の補正係数C3,C5,C7、および複数の補正率Tを有している。補正係数テーブルE、ズーム情報ZENC、フォーカス情報FENCおよび補正係数C3,C5,C7および補正率Tは、歪曲収差を補正するための情報の一例である。
【0091】
補正係数テーブルEでは、ズーム情報ZENCおよびフォーカス情報FENCに対応する補正係数C3,C5,C7および補正率Tが配列されている。ズーム情報ZENCのデータ数は、例えばNz+1である。フォーカス情報FENCのデータ数は、例えばNf+1である。
【0092】
ズーム情報およびフォーカス情報に応じて、この補正係数テーブルEから補正係数C3,C5,C7および補正率Tを選択することができる。選択された補正係数C3,C5,C7および補正率Tを用いて前述の歪曲収差補正を行うことで、そのときの交換レンズ200の状態に適した歪曲収差補正を行うことが可能となる。
【0093】
レンズコントローラー240は、フラッシュメモリ242に格納されている補正係数テーブルEをカメラコントローラー140に送信する。カメラコントローラー140は、受信した補正係数テーブルEを用いて、歪曲収差を補正するためのゲインGを算出する。カメラコントローラー140は、算出したゲインGを用いることにより、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データの歪曲収差を補正する。以下、本実施の形態にかかるカメラシステム1における各種動作について説明する。
【0094】
〔1−4.動作〕
〔1−4−1.初期化動作(1回目の装着)〕
本実施の形態にかかるカメラシステム1における初期化動作について図11を用いて説明する。なお、この初期化動作は、カメラボディ100に交換レンズ200を初めて装着した際に行う初期化動作であるとする。
【0095】
図11は、初期化動作における、カメラボディ100と交換レンズ200との間での情報のやり取りを説明するための図である。使用者は、不図示の電源釦を操作することにより、カメラシステム1の電源をONにすることができる(S10)。電源がONにされると、カメラシステム1の初期化動作が開始される。
【0096】
初期化動作が開始されると、まず、カメラボディ100は、交換レンズ200に対して、交換レンズ200のID等の情報を要求する要求信号を通知する(S11)。ID等の情報を要求する要求信号を取得すると、交換レンズ200は、ID、シリアルナンバー、バージョン情報等の情報をカメラボディ100に対して通知する(S12)。
【0097】
ID等の情報を取得すると、カメラコントローラー140は、取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGをフラッシュメモリ142に保存しているか否かを判断する。ここでは、交換レンズ200を初めて装着したこととしているため、カメラコントローラー140は、取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGがフラッシュメモリ142に保存していないと判断する(S13)。
【0098】
取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGをフラッシュメモリ142に保存していないと判断すると、カメラボディ100は、交換レンズ200に対して、補正係数テーブル等の光学データの送信を要求する要求信号を通知する(S14)。要求信号を取得すると、交換レンズ200は、補正係数テーブル等の光学データをカメラボディ100に対して送信する(S15)。
【0099】
補正係数テーブル等の光学データを取得すると、カメラコントローラー140は、取得した補正係数テーブルに基づいて、上述した方法により、ゲインGやゲインTMGなどの歪曲収差を補正するための補正値を算出する(S16)。
【0100】
補正値を算出すると、カメラコントローラー140は、この算出した補正値がカメラボディ100の歪曲収差の補正の限界を超える補正値であるか否かを判断する。歪曲収差の補正の限界を超えると判断すると、カメラコントローラー140は、算出している補正値に補正率を掛け合わせることにより(算出している補正値を抑制することにより)、補正値を歪曲収差の補正の限界の範囲内に収める(S16)。具体的には、図12に示すような方法により、補正値をカメラコントローラー140による歪曲収差の補正の限界の範囲内に収める。本実施の形態にかかるカメラシステム1において、カメラコントローラー140は、歪曲収差の補正を10%まで行うことができる。この場合において、カメラコントローラー140により算出したゲインG(補正値)が1.2であったとする。この場合には、図12に示す曲線Aの示すゲインGでCCDイメージセンサー110で撮像した画像データを補正すると、歪曲収差を理論的には完璧に補正することができる。しかしながら、本実施の形態におけるカメラシステム1においては、画像データの歪曲収差補正が10%までしかできないため、中心位置からのそれぞれの距離におけるゲインGに対して補正率として10/12を掛け合わせることにより、曲線Bにより表せる補正値を得ることができる。曲線Bにより表せるゲインGは、中心からの全ての距離において、10%以内の補正しか行わないため、カメラコントローラー140による歪曲収差の補正の限界の範囲内のゲイン(補正値)ということとなる。これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、歪曲収差補正を完璧に行うことができない交換レンズに対しても、最大限の歪曲収差補正を行うことができる。なお、本実施の形態にかかるカメラシステム1が歪曲収差の補正を行うことができる10%という率は仕様で決定している。従って、必ずしも10%という必要はなく、仕様として15%と規定されていれば15%でもよいし、仕様として20%と規定されていれば20%であってもよい。
【0101】
一方、算出した補正値がカメラコントローラー140による歪曲収差補正の限界の範囲内であると判断した場合は、カメラコントローラー140は、算出したゲインG(補正値)を交換レンズ200のIDと対応付けて、フラッシュメモリ142に記憶する(S18)。また、算出したゲインG(補正値)がカメラコントローラー140による歪曲収差補正の限界の範囲を超えている場合であっても、補正率を掛け合わせ歪曲収差補正の限界の範囲内に収めたゲインG(補正値)を交換レンズ200のIDと対応付けて、フラッシュメモリ142に記憶する(S18)。
【0102】
その後、カメラコントローラー140は、フラッシュメモリ142に記憶したゲインGを用いて、CCDイメージセンサー110により撮像された画像データの歪曲収差の補正処理を行う。歪曲収差の補正処理が完了し、歪曲収差補正後の画像データが生成されると、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像の表示を開始する(S19)。なお、液晶モニタ120は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差の補正が完了する前は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データが示す画像を表示しない。
【0103】
このように、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、カメラコントローラー140は、交換レンズ200から取得した光学データに基づいて算出した歪曲収差補正用のゲインGが歪曲収差補正の限界を超える値である場合には、算出したゲインGに補正率を掛け合わせることにより(ゲインGを抑制することにより)、ゲインGを歪曲収差補正の限界の範囲内に収める。これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、装着している交換レンズの光学特性による歪曲収差がカメラコントローラー140による歪曲収差補正の限界を超えているような場合であっても、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データに対して、比較的適した歪曲収差の補正をすることができる。
【0104】
また、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、液晶モニタ120は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差の補正が完了する前は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データが示す画像を表示しない。これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、歪曲収差補正が完了していない比較的見栄えの良くない画像を使用者に見せないでおくことができる。
【0105】
〔1−4−2.初期化動作(同一交換レンズの2回目以降の装着)〕
本実施の形態にかかるカメラシステム1における初期化動作について図13を用いて説明する。なお、この初期化動作は、同一交換レンズを装着して2回目以降に行う初期化動作である。
【0106】
図13は、初期化動作における、カメラボディ100と交換レンズ200との間での情報のやり取りを説明するための図である。使用者は、不図示の電源釦を操作することにより、カメラシステム1の電源をONにすることができる(S20)。電源がONにされると、カメラシステム1の初期化動作が開始される。
【0107】
初期化動作が開始されると、まず、カメラボディ100は、交換レンズ200に対して、交換レンズ200のID等の情報を要求する要求信号を通知する(S21)。ID等の情報を要求する要求信号を取得すると、交換レンズ200は、ID、シリアルナンバー、バージョン情報等の情報をカメラボディ100に対して通知する(S22)。
【0108】
ID等の情報を取得すると、カメラコントローラー140は、取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGがフラッシュメモリ142に保存されているか否かを判断する。ここでは、交換レンズ200を装着して2回目以降の初期化動作であるため、カメラコントローラー140は、取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGがフラッシュメモリ142に保存されていると判断する(S23)。
【0109】
取得したIDに対応したゲインGやゲインTMGがフラッシュメモリ142に保存されていると判断すると、カメラコントローラー140は、フラッシュメモリ142に記憶されているゲインGやゲインTMGに基づいて、CCDイメージセンサー110により撮像された画像データの歪曲収差を補正する(S24)。
【0110】
CCDイメージセンサー110により撮像された画像データの歪曲収差の補正が完了すると、液晶モニタ120は、歪曲収差の補正が完了した後の画像データが示す画像を表示する(S25)。
【0111】
このように、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、フラッシュメモリ142は、カメラコントローラー140により算出された歪曲収差の補正用のゲインGやゲインTMGを装着されている交換レンズのIDと対応付けて記憶する。また、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、カメラコントローラー140は、装着されている交換レンズに対応する歪曲収差の補正用のゲインGやゲインTMGが既にフラッシュメモリ142に保存されているような場合には、再度ゲインGやゲインTMGを算出することはない。このような場合には、カメラコントローラー140は、既にフラッシュメモリ142に保存されているゲインGやゲインTMGを用いて、CCDイメージセンサー110により撮像された画像データの歪曲収差を補正する。これにより、カメラコントローラー140は、初期化動作の度に交換レンズ200の光学データに基づいて、歪曲収差補正用のゲインGやゲインTMGを算出する必要がない。その結果、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、同一の交換レンズを装着した状態で2回目以降の初期化動作を比較的短時間で終了することができる。また、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、同一の交換レンズを装着した状態で2回目以降、比較的早い段階で歪曲収差補正後の画像データが示す画像を液晶モニタ120に表示することができる。
【0112】
なお、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、フラッシュメモリ142は、歪曲収差補正用の補正値と交換レンズのIDとを対応付けて記憶している。しかし、必ずしもこのような構成である必要はなく、フラッシュメモリ142は、歪曲収差用の補正値と交換レンズのシリアルナンバーとを対応付けて記憶してもよい。これにより、同じIDを有する交換レンズ間に存在する微妙な光学特性についても1本ずつ個別に適切な補正を行うことができる。
【0113】
また、フラッシュメモリ142は、歪曲収差補正用の補正値と交換レンズのバージョン情報とを対応付けて記憶してもよい。これにより、インターネットを介して光学特性情報をバージョンアップするような交換レンズを装着する際の歪曲収差の補正にも対応することができる。つまり、最後に歪曲収差の補正値を算出した後にその交換レンズのバージョンがアップすることにより光学特性データが変更となった場合には、カメラコントローラー140は、再度、歪曲収差補正用の補正値を算出し、その補正値を用いて歪曲収差の補正を行うことにより、より適切な歪曲収差の補正を行うことができる。
【0114】
〔1−4−3.交換レンズを外す際の歪曲収差補正動作〕
本実施の形態にかかるカメラシステム1において、電源がONにされている状態で、交換レンズ200をカメラボディ100から外す際の歪曲収差補正の動作について図14、図15を用いて説明する。
【0115】
図14は、交換レンズ200をカメラボディ100から外す際の歪曲収差補正の動作を説明するためのフローチャートである。図15は、交換レンズ200をカメラボディ100から外す際の歪曲収差補正の動作を説明するための説明図である。
【0116】
図15(1)に示す状態Aの場合には、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正する(S100)。また、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示する(S100)。ここで、状態Aとは、カメラボディ100と交換レンズ200とが接続されていることを電気的に認識する接続確認用端子がONの状態で、かつ、カメラボディ100と交換レンズ200とが接続されていることを機構的に認識するロックピンがOFFの状態である。つまり、状態Aとは、カメラボディ100と交換レンズ200とが電気的にも機構的にも完全に接続されている状態である。
【0117】
歪曲収差補正を行い、液晶モニタ120に歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示させている状態で、カメラコントローラー140は、ロックピンがONされるかを監視する(S110)。ロックピンがONされたと判断すると、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正する(S120)。また、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示する(S120)。つまり、図15(2)に示す状態Bの場合においても、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正し、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示する。ここで、状態Bとは、ロックピンはONされているが、未だカメラボディ100と交換レンズ200とが電気的にも機構的にも接続されている状態である。
【0118】
カメラシステム1が状態Bになると、カメラコントローラー140は、接続確認用端子が接続されているか否かを判断する(S130)。接続確認用端子が電気的に接続されていないと判断すると、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正する(S140)。また、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示する(S140)。つまり、図15(3)に示す状態Cの場合においても、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差を補正し、液晶モニタ120は、歪曲収差補正後の画像データが示す画像を表示する。ここで、状態Cとは、ロックピンがONされており、接続確認用端子が電気的に接続されていない状態である。
【0119】
カメラシステム1が状態Cになると、カメラコントローラー140は、ロックピンがOFFされているか否かを判断する(S150)。ロックピンがOFFされていると判断すると、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差の補正を停止する(S160)。また、液晶モニタ120は、CCDイメージセンサー110により撮像された歪曲収差が補正されていない画像データを表示する(S160)。つまり、図15(4)に示す状態Dの場合において、カメラコントローラー140は、CCDイメージセンサー110で撮像された画像データの歪曲収差の補正を停止し、液晶モニタ120は、歪曲収差補正されていない画像データが示す画像を表示する。ここで、状態Dとは、ロックピンがOFFされており、かつ、接続確認用端子が電気的にOFFされている状態である。つまり、状態Dにおいて、カメラボディ100と交換レンズ200とは、電気的にも機構的にも完全に非接続の状態となっている。
【0120】
ここで、状態Dにおいて、カメラコントローラー140が歪曲収差の補正を停止する理由について以下に説明する。カメラボディ100と交換レンズ200とが電気的にも機構的にも完全に非接続である状態Dにおいては、CCDイメージセンサー110で撮像される画像データが示す画像はぼやけており、何が撮像されているのか視認できない場合が多い。従って、このようなぼやけた画像データの歪曲収差を補正したとしても、補正後の画像データが示す画像もぼやけたものとなり、あまり歪曲収差を補正する意味がない。そこで、本実施の形態にかかるカメラシステム1においては、状態Dにおいては、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データの歪曲収差の補正を停止することとしている。なお、状態A、状態B、状態Cにおいては、多少画像がぼやけることがあるが、何を撮像しているかは十分に視認することができる。
【0121】
このように、本実施の形態にかかるカメラシステム1において、カメラコントローラー140は、カメラボディ100と交換レンズ200とが電気的にも機構的にも完全に非接続となっている以外の場合には、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データの歪曲収差を補正し、補正後の画像データが示す画像を液晶モニタ120に表示する。これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、CCDイメージセンサー110が使用者によって視認可能な画像を撮像している可能性が高い場合においては、常に歪曲収差補正を行うこととなる。
【0122】
〔1−5.本実施の形態のまとめ〕
本実施の形態にかかるカメラシステム1は、交換レンズ200とカメラボディ100とからなるカメラシステム1であって、交換レンズ200は、光学データを記憶するフラッシュメモリ242を備え、カメラボディ100は、被写体像を撮像することにより画像データを生成するCCDイメージセンサー110と、交換レンズ200から光学データを取得するボディマウント150と、ボディマウント150により取得された光学データに基づいて、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正するための補正値を算出するカメラコントローラー140と、カメラコントローラー140により算出された補正値を記憶するフラッシュメモリ142と、を備える。
【0123】
これにより、カメラコントローラー140は、初期化動作の度に交換レンズ200の光学データに基づいて、歪曲収差補正用のゲインGやゲインTMGを算出する必要がない。その結果、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、同一の交換レンズを装着した状態で2回目以降の初期化動作を比較的短時間で終了することができる。
【0124】
また、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、交換レンズ200とカメラボディ100とからなるカメラシステム1であって、交換レンズ200は、光学データを記憶するフラッシュメモリ242を備え、カメラボディ100は、被写体像を撮像することにより画像データを生成するCCDイメージセンサー110と、交換レンズ200から光学データを取得するボディマウント150と、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正するカメラコントローラー140と、ボディマウント150が取得した光学データに基づいて、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正するための補正値を算出するカメラコントローラー140と、カメラコントローラー140により算出された補正値がカメラコントローラー140により補正可能な範囲を超えた値である場合に、補正値をカメラコントローラー140により補正可能な範囲内に収まるよう抑制するカメラコントローラー140と、を備え、カメラコントローラー140は、カメラコントローラー140により算出された補正値に基づいて、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正する。
【0125】
これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、装着している交換レンズの光学特性による歪曲収差がカメラコントローラー140による歪曲収差補正の限界を超えているような場合であっても、CCDイメージセンサー110で撮像した画像データに対して、比較的適した歪曲収差の補正をすることができる。
【0126】
また、本実施の形態にかかるカメラシステム1のうちのカメラボディ100は、交換レンズ200を着脱可能なカメラボディ100であって、被写体像を撮像することにより画像データを生成するCCDイメージセンサー110と、交換レンズ200から光学データを取得するボディマウント150と、ボディマウント150により取得された光学データに基づいて、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正するカメラコントローラー140と、画像データが示す画像を表示する液晶モニタ120と、を備え、液晶モニタ120は、カメラコントローラー140によってCCDイメージセンサー110により生成された画像データの補正が完了した後に、補正後の画像データが示す画像を表示する。
【0127】
これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、歪曲収差補正が完了していない比較的見栄えの良くない画像を使用者に見せないでおくことができる。
【0128】
また、本実施の形態にかかるカメラシステム1のうちのカメラボディ100は、交換レンズ200を着脱可能なカメラボディ100であって、被写体像を撮像することにより画像データを生成するCCDイメージセンサー110と、交換レンズ200から光学データを取得するボディマウント150と、ボディマウント150により取得された光学データに基づいて、CCDイメージセンサー110により生成された画像データを補正するカメラコントローラー140と、交換レンズ200の着脱を検知するカメラコントローラー140と、を備え、カメラコントローラー140は、カメラコントローラー140が交換レンズ200の着脱を検知することにより、画像データの補正を停止する。
【0129】
これにより、本実施の形態にかかるカメラシステム1は、CCDイメージセンサー110が使用者によって視認可能な画像を撮像している可能性が高い場合においては、常に歪曲収差補正を行うこととなる。
〔2.他の実施の形態〕
以上により、本発明の実施の形態として、実施の形態1を説明した。しかし、本発明は、これらには限定されない。そこで、本発明の他の実施の形態を本欄にまとめて説明する。
【0130】
なお、実施の形態1にかかるカメラシステム1においては、歪曲収差の補正を行ったが、必ずしもこれには限られない。本発明は、例えば、色収差の補正や周辺光量の補正を行う際にも適用することができる。これにより、色収差の補正や周辺光量の補正なども効率的に補正することができる。
【0131】
また、本発明の実施の形態1では、可動ミラーを備えないカメラボディを例示したが、本発明はこれには限定されない。例えば、カメラボディ内に可動ミラーを備えてもよいし、被写体像を分けるためのプリズムを備えてもよい。また、カメラボディ内ではなく、アダプター内に可動ミラーを備える構成でもよい。
【0132】
また、本発明の実施の形態1では、撮像素子として、CCDイメージセンサー110を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、CMOSイメージセンサーで構成してもよく、NMOSイメージセンサーで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】実施の形態1にかかるカメラシステムのブロック図
【図2】歪曲収差を示す図(樽型)
【図3】歪曲収差を示す図(糸巻型)
【図4】ゲインGを示す図(樽型)
【図5】ゲインGを示す図(糸巻型)
【図6】ゲインTGを示す図(樽型)
【図7】ゲインTGを示す図(糸巻型)
【図8】ゲインMGを示す図
【図9】(A)歪曲収差量DYの一例を示すグラフ、(B)ゲインGの一例を示すグラフ、(C)ゲインTMGの一例を示すグラフ
【図10】補正係数テーブルの一例を示す図
【図11】初期化動作(1回目)を説明するための説明図
【図12】ゲインGが限界値を超えている場合のクリップ処理を説明するための模式図
【図13】初期化動作(2回目以降)を説明するための説明図
【図14】交換レンズを外す際の歪曲収差補正処理を説明するためのフローチャート
【図15】交換レンズを外す際の歪曲収差補正処理を説明するための模式図
【符号の説明】
【0135】
100 カメラボディ
110 CCDイメージセンサー
111 ADコンバーター
112 タイミング発生器
120 液晶モニタ
130 レリーズ釦
140 カメラコントローラー
141 DRAM
142 フラッシュメモリ
150 ボディマウント
160 電源
170 カードスロット
171 メモリーカード
200 交換レンズ
210 ズームレンズ
211 駆動機構
212 検出器
220 OISレンズ
221 アクチュエータ
222 位置検出センサー
223 OIS用IC
230 フォーカスレンズ
233 フォーカスモータ
240 レンズコントローラー
241 SRAM
242 フラッシュメモリ
243 カウンタ
250 レンズマウント
260 絞り
261 絞りモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換レンズとカメラボディとからなるカメラシステムであって、
前記交換レンズは、
光学データを記憶する記憶手段を備え、
前記カメラボディは、
被写体像を撮像することにより画像データを生成する撮像手段と、
前記交換レンズから前記光学データを取得する取得手段と、
前記撮像手段により生成された画像データを補正する補正手段と、
前記取得手段が取得した光学データに基づいて、前記撮像手段により生成された画像データを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された補正値が前記補正手段により補正可能な範囲を超えた値である場合に、前記補正値を前記補正手段により補正可能な範囲内に収まるよう抑制する抑制手段と、を備え、
前記補正手段は、
前記抑制手段により算出された補正値に基づいて、前記撮像手段により生成された画像データを補正する、
カメラシステム。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記取得手段により取得された光学データに基づいて、前記撮像手段により生成された画像データの歪曲収差を補正するための補正値を算出する、
請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記算出手段は、
前記取得手段により取得された光学データに基づいて、前記撮像手段により生成された画像データの色収差を補正するための補正値を算出する、
請求項1又は2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
交換レンズを着脱可能なカメラボディであって、
被写体像を撮像することにより画像データを生成する撮像手段と、
前記交換レンズから光学データを取得する取得手段と、
前記撮像手段により生成された画像データを補正する補正手段と、
前記取得手段が取得した光学データに基づいて、前記撮像手段により生成された画像データを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された補正値が前記補正手段により補正可能な範囲を超えた値である場合に、前記補正値を前記補正手段により補正可能な範囲内に収まるよう抑制する抑制手段と、を備え、
前記補正手段は、
前記抑制手段により算出された補正値に基づいて、前記撮像手段により生成された画像データを補正する、
カメラボディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−109668(P2010−109668A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279422(P2008−279422)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】