説明

カメラモジュール

【課題】組立が容易で、ゴミの侵入抑制及びリフロー工程が可能なカメラモジュールを提供する。
【解決手段】内側に離間した光軸8を取り囲む内壁、内壁と対向し外気に接する外壁、及び、被写体とは反対側の光軸8に垂直な接続底面12にあり、内壁側から外壁側に連通し、溝側面がV字形をなして交わる角部を連通方向に連続的に有する溝部19を備えたレンズホルダ11と、光軸8に沿って被写体側に配置され、レンズホルダ11の内壁に気密的に固定される光学レンズ15と、光軸8に沿って接続底面12に近い側に配置され、レンズホルダ11の内壁に形成された通気路14を遮ることなく内壁に固定される光フィルタ15と、光軸8を中心に閉じた帯状をなし、溝部19の角部に通気可能な隙間31を残して配設される接着材27と、光軸8に垂直に被写体方向に面する固体撮像素子23を有し、接着材27によって気密的に固定される固体撮像装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気が可能なカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラモジュールは、固体撮像素子が組み込まれた固体撮像装置とレンズが組み込まれたレンズユニットが一体化された構成を取ることがある。カメラモジュールは、携帯電話機等に塔載されるため小型化及び高性能化が図られてきて、2つのユニットに分け難い構成もある。カメラモジュールは、リフロー工程を採用して回路基板に接続、固定されることが要求されている。
【0003】
リフロー工程に対応可能なカメラモジュールは、リフロー時に高温環境下に置かれる。カメラモジュールは、内部に気密状態に保持されている部分があると、内圧の上昇により、光学部品の位置ズレや変形が起こり、また、光学部品も含めた部材の破損が起こることがある。
【0004】
内圧の上昇に対応するために、通気口(孔)をレンズユニットに設けることが行われる。例えば、固体撮像装置(固体撮像素子ユニット)は、固体撮像素子を覆うカバー部材に外部と連通させる通気孔を有し、レンズユニットは、レンズに形成したDカット部を利用した通気路を有し、通気路にはエアフィルタを有するカメラモジュールが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
開示されたカメラモジュールは、通気孔及び通気路が形成されているので、内圧の上昇を避けることが可能である。エアフィルタによって、ゴミ(塵埃、粉塵等と呼ばれるものの内、比較的小さな固体粒子をいう)が付着することを抑制することが可能となる。しかしながら、レンズがDカット部を有し、Dカット部に接するようにエアフィルタが設けられる構成は、レンズの光軸に対して位置精度を安定的に維持することが難しい、すなわち位置合わせ工程が難しいという問題を有している。Dカット部があることによって生じるレンズの周囲の遊びが大きくなることが避けられず、また、レンズとエアフィルタが互いに干渉することがあるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4223851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、組立が容易で、ゴミの侵入抑制及びリフロー工程が可能なカメラモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のカメラモジュールは、離間した光軸を内側に取り囲む内壁、前記内壁と対向し外気に接している外壁、及び、被写体とは反対側の前記光軸に垂直な接続底面に面してあり、前記内壁側から前記外壁側に連通し、通気性を有する溝部を備えたレンズホルダと、前記光軸に沿って被写体側に配置され、前記レンズホルダの内壁に気密的に固定される光学レンズと、前記光軸に沿って前記接続底面に近い側に配置され、前記レンズホルダの内壁に形成、固定される光フィルタと、前記光軸を中心に閉じた帯状をなし、前記溝部に通気可能な隙間を残して配設される接着材と、前記光軸に垂直に被写体方向に面する固体撮像素子を有し、前記接着材によって固定される固体撮像装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組立が容易で、ゴミの侵入抑制及びリフロー工程が可能なカメラモジュールを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカメラモジュールを構成するレンズホルダを模式的に示す図で、図2(a)は底面方向から見た平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線の沿った断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るカメラモジュールの図2(b)に対応するレンズホルダ及び接着材を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るカメラモジュールを構成するレンズホルダを模式的に示す図で、図4(a)は底面方向から見た平面図、図4(b)は図4(a)のC−C線の沿った断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るカメラモジュールの図4(b)に対応するレンズホルダ及び接着材を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るカメラモジュールを構成するレンズホルダを模式的に示す図で、図6(a)は底面方向から見た平面図、図6(b)は図6(a)の1点鎖線部を示す斜視図、及び図6(c)はエアフィルタを模式的に示す斜視図。
【図7】本発明の第3の実施形態の変形例に係るカメラモジュールを構成するエアフィルタを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図では、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るカメラモジュールについて、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、カメラモジュール1は、光軸8に沿って配設された光学レンズ15及び光フィルタ16を固定するレンズホルダ11、及び通気可能な隙間31を角部に有する溝部19が配設されたレンズホルダ11の接続底面12に接着材27を介して接着された固体撮像装置6を備えている。光学レンズ15、光フィルタ16、及びレンズホルダ11はレンズユニット5とまとめることも可能である。
【0014】
図1及び図2に示すように、レンズホルダ11は、内側に離間した光軸8を取り囲んで内壁を有している。レンズホルダ11の内壁は、光軸8に垂直な断面がほぼ円形をなし、光軸8に沿った方向の断面が階段状をなしている。レンズホルダ11の外壁は、内壁と対向し、光軸8に垂直な断面がほぼ矩形をなし、外気に接している。接続底面12は、内壁と外壁とを接続している。接続底面12に対向し、レンズホルダ11の被写体側の面が上面13である。レンズホルダ11は、光フィルタ16が内壁に固定されても、通気可能とする溝状の通気路14を光フィルタ16の周囲に有している。通気路14は、内壁の段差部に沿って、ほぼL字形をなしている。
【0015】
光学レンズ15は、例えば、2枚で構成され、光軸8に沿って被写体側に面し、レンズホルダ11の内壁に気密的(空気を通さない状態をいう)に固定されている。光学レンズ15は、結像に関わる光軸8に近い部分がほぼ円形をなしている。2枚の内の内側に配置される光学レンズ15は、例えば、周囲に切欠または内壁に対する隙間等が形成され、通気可能である。光学レンズ15は、リフロー工程では変形のない耐熱性樹脂等で形成されている。
【0016】
光フィルタ16は、光軸8に沿って光学レンズ15の内側(光学レンズ15に対して被写体とは反対側)にあり、通気路14を除いて、レンズホルダ11の内壁にある段差部に接着材17によって密着されている。光フィルタ16は、例えば、円板形状で、赤外線を遮断する機能(IRカットフィルタ)を有している。光フィルタ16は、リフロー工程では変形のない耐熱性樹脂等で形成されている。光学レンズ15、光フィルタ16、及びレンズホルダ11の内壁によって囲まれる空間33は、通気路14によって、固体撮像装置6の側と通気可能である。
【0017】
図2に示すように、レンズホルダ11の接続底面12は、光軸8に対して垂直な平面部18及び溝部19で構成されている。溝部19は、空間33の外側にある。溝部19は、レンズホルダ11の内壁から外壁に向かって、放射状に設けられている。溝部19の延長線は、例えば、内壁の中心の光軸8を通る。溝部19は、平面部18の間の最短距離をなす開口幅及び平面部18に対する深さがほぼ一定である。溝部19は、断面がほぼV字形をなし、開口幅が数10μm、例えば、約60μm、深さが開口幅と同程度をなしている。従って、溝部19の2つの溝側面のなす底の角度は50〜55度程度である。溝部19は、接続底面12の全面に配置されているが、接続底面12の一部、例えば、通気路14が存在する側に近い部分にのみ設けられてもよい。
【0018】
図1に示すように、固体撮像装置6は、CMOS型の固体撮像素子23が、照射面を被写体に向けて、矩形のインターポーザである基板21の上に固定されている。固体撮像素子23は、基板21とほぼ同様な大きさ及び形状を有している。固体撮像素子23は、CCD型イメージセンサ等であってもよいし、また、照射面を従来製品とは反対側にした裏面照射型CMOSイメージセンサであってもよい。固体撮像素子23は、図示を省略するが、例えば、貫通電極を介して、基板21の上の端子に接続され、更に、基板21の貫通電極を介して、基板21の裏面で半田ボール25に接続されている。
【0019】
レンズホルダ11の接続底面12と固体撮像素子23の照射面側とが、接着材27によって固定されている。接着材27は、接続底面12のほぼ全面(内壁側及び外壁側にはみ出さない程度)に分布し、内壁側で光フィルタ16の周囲外側に沿ってほぼ円形、外壁側でほぼ矩形をなし、閉じた帯状に配設されている。接着材27は、固体撮像素子23のほぼ平面をなす照射面側と密着している。一方、図3に示すように、接着材27は、接続底面12の平面部18とは密着し、接続底面12に形成された溝部19とは、平面部18側の溝側面で接着し、溝側面の底部で隙間31を残すように分布している。
【0020】
接着材27は、紫外線硬化性且つ熱硬化性を有している。接着材27は、固体撮像素子23の照射面側と接続底面12との間に、120μm以下、例えば、80μm程度の間隔を有して固化される。なお、約80μmの間隔は、レンズホルダ11等の部品寸法及び光学レンズ15の焦点距離により規定されるので、設計変更により変動することがあり得る。接着材27は、室温で、水平に置いた固体撮像素子23の照射面側の周囲上に幅数100μm、例えば、約500μm、の帯を形成した時、高さ120μmより高い位置に頂部がある程度の粘性を有している。
【0021】
固体撮像装置6とレンズホルダ11との接着、固定は、次のように行われる。水平に置かれて、接着材27が帯状に塗布された固体撮像素子23に対して、上方からレンズホルダ11を下方に移動する。このとき、位置合わせ治具を使用することは可能である。レンズ15が固体撮像素子23の照射面に対して所望の距離になった位置に止めて、紫外線を照射して固体撮像装置6とレンズホルダ11とを仮止めする。その後、加熱して接着材27を本固定する。仮止めされた接着材27は、本固定までの間に動くことはほとんどない。なお、レンズホルダ11と固体撮像素子23との上下関係を逆にして、組み立てることは可能である。また、接着材27は、接続底面12に塗布されることは可能であり、接続底面12と固体撮像素子23の両方に塗布されることも可能である。
【0022】
この接着、固定の工程では、接着材27に大気圧を大きく超える圧力がかかることはない。従って、溝部19側面の底部に隙間31が形成されないことはほとんどなく、しかも、ほぼ一定の隙間間隔とすることが可能である。つまり、溝部19が伸びた方向に垂直な断面(以下、溝断面という)において最大の隙間間隔は、例えば、10〜15μmとすることが可能である。溝部19の大きさが多少ばらついてもほぼ一定の隙間31を形成可能である。
【0023】
発明者の考察によれば、溝部19の溝側面が二等辺三角形の2つの等辺に近い形状をなし、その底にできる角度が約90度になると、溝断面の隙間31の最大部が10〜15μmより小さくなる傾向にある。この角度が90度を超えてより大きくなると、溝断面の隙間31がほとんどつぶれる場合も出現する。角度が80度〜30度程度では、より良い再現性で隙間31が形成可能である。隙間31の微細化、再現性向上は、接着材27の粘性、塗布量、及び押圧力、レンズホルダ11の材質及び材料均一性、溝部19の形状及び形状均一性、並びに紫外線照射のタイミング等をパラメータとして実現可能である。
【0024】
カメラモジュール1は、接着された固体撮像装置6とレンズホルダ11との間、つまり固体撮像素子23と光フィルタ16との間に空間34が形成される。空間34は、溝部19の隙間31によって、外部と接続される。
【0025】
固定された固体撮像装置6と固体撮像装置6側のレンズホルダ11は、固体撮像素子23及び接着材27等の保護のために、側板29によって覆われている。側板29は、固体撮像装置6及びレンズホルダ11を密封することはない。
【0026】
上述したように、レンズホルダ11は、被写体とは反対側の接続底面12に内壁側から外壁側に連通するV字形の溝側面がなす底の角度がほぼ90度以下となる溝部19を有している。レンズホルダ11の接続底面12と固体撮像素子23との間は、接着材27で接着される。図2に示すように、空間33は、例えば、点線B−Bで示される通気経路が確保される。空間33は、光学レンズ15の2枚のレンズの間にある空間と通じている。空間34は、点線B−Bで示される通気経路の途中の溝部19の隙間31だけで通気経路が確保される。従って、カメラモジュール1は、リフロー工程により回路基板に接続される場合においても、空間33、34にある空気の急激な膨張が起こることはなく、カメラモジュール1の破壊、変形、位置ずれ等の不具合を起こすことが抑制される。
【0027】
溝部19の隙間31は、溝断面の隙間31の最大部が15μm程度とすることが可能である。従って、隙間31は、カメラモジュール1の空間33、34に、実質的な大きさが数μm〜10μmを超えるようなゴミの侵入を阻止可能である。つまり、溝部19の隙間31をエアフィルタとして機能させることが可能となる。
【0028】
カメラモジュール1は、レンズホルダ11の接続底面12に溝部19が設けられているが、溝部19が設けられてない構成のカメラモジュールと同様に組み立てることができる。つまり、溝部19が設けられることによって、カメラモジュール1の組み立て工程を、特別なものとする必要がない。例えば、特許文献1に開示されているレンズがDカット部を有し、Dカット部に接するようにエアフィルタが設けられる構成のカメラモジュールに比較して、カメラモジュール1の組み立ては、工数が少なく、組立精度を上げることが可能となる。
【0029】
また、カメラモジュール1は、接続底面12が平面部18及びその延長面のみである場合に比較して、溝部19があることによって、レンズホルダ11と固体撮像装置6との接着がより強固となる。溝部19の溝側面と接着材27との接触が図られ、接触面積の増加が図られるからである。
【0030】
ただし、レンズホルダ11を形成するための金型(図示略)は、溝部19に対応する凸部を形成しておく必要がある。しかしながら、カメラモジュール1にとって、この新しい金型の導入のコストは、リフロー可能、ゴミの侵入の抑制が可能、そして接着強度がより強くなる等の効果と比較すると、決して大きいものとはならない。
【0031】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るカメラモジュールについて、図4及び図5を参照しながら説明する。第1の実施形態とは、接続底面の溝部の断面形状が異なる。なお、第1の実施形態と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0032】
図4及び図5に示すように、カメラモジュール2は、レンズホルダ41の接続底面42が、伸びた方向に垂直な断面において溝側面と溝底面(図4(a)の陰影部)がほぼ直角なU字形をなし、通気可能な隙間45を直角な角部に有する溝部49が配設されている。レンズホルダ41は、接続底面42を除いて、レンズホルダ11と同様である。カメラモジュール2は、その他の構成において、第1の実施形態のカメラモジュール1と同様であり、図1に示す断面図と同様な形態を有する。
【0033】
レンズホルダ41の接続底面42は、光軸8に対して垂直な平面部48及び溝部49で構成されている。溝部49は、空間33の外側にある。溝部49は、レンズホルダ41の内壁から外壁に向かって、放射状に設けられている。溝部49は、平面部48に対して開口幅及び深さがほぼ一定である。溝部49は、溝側面が平面部48に対してほぼ垂直、溝底面が平面部48に対してほぼ水平で、断面がU字形をなし、開口幅が数10μm、例えば、約60μm、深さが開口幅と同程度をなしている。溝部49は、接続底面42の全面に設けられているが、接続底面42の一部、例えば、通気路14が存在する側に近い部分にのみ設けられてもよい。
【0034】
レンズホルダ41の接続底面42と固体撮像素子23の照射面側とが、接着材27によって固定されている。接着材27は、接続底面42のほぼ全面に分布し、内壁側で光フィルタ16の周囲外側に沿ってほぼ円形、外壁側でほぼ矩形をなし、閉じた帯状に配設されている。接着材27は、固体撮像素子23のほぼ平面をなす照射面側と密着している。一方、図5に示すように、接着材27は、接続底面42の平面部48とは密着し、接続底面42に形成された溝部49とは、平面部48側の溝側面及び溝底面の一部で接着し、溝側面と溝底面の接する角部で隙間45を残すように分布している。
【0035】
接着材27は、第1の実施形態のカメラモジュール1に比較して、溝部49の底部が溝部19より大きくなった分だけ多くの量を必要とする。その他は、カメラモジュール1と同様な工程でカメラモジュール2を組み立てることが可能である。
【0036】
この接着、固定の工程において、溝部49の底の角部に隙間45が形成されないことはほとんどなく、しかも、ほぼ一定の隙間間隔とすることが可能である。つまり溝断面において最大の隙間間隔は、例えば、10〜15μm程度とすることが可能である。溝部49の開口幅が多少ばらついてもほぼ一定の隙間45を形成可能である。隙間45に関して、開口幅のばらつきに対する隙間間隔のばらつきは、第1の実施形態の隙間31よりも小さい傾向にある。
【0037】
カメラモジュール2は、第1の実施形態のカメラモジュール1が有する効果を同様に有している。その他に、隙間間隔のばらつきが比較的小さいので、エアフィルタとして効果がより安定する。
【0038】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るカメラモジュールについて、図6を参照しながら説明する。第1の実施形態とは、接続底面に面して通気溝及び通気溝を遮る位置に通気性のエアフィルタを配している点が異なる。なお、第1及び第2の実施形態と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0039】
図6に示すように、カメラモジュール3は、通気溝53がレンズホルダ51の接続底面52に面して、レンズホルダ51の内壁と外壁とをほぼ直線的に貫通するように設けられている。通気溝53のレンズホルダ51内壁側の開口は、光フィルタ16の側面と対向する位置にある。
【0040】
通気溝53は、第2の実施形態の溝部49の開口幅及び深さを大きくした形状を有する。通気溝53は、通気方向に垂直な断面において、相対向する溝側面と溝底面がほぼ直角をなすU字形である。通気溝53は、途中にあるエアフィルタ配置溝55を除いて、接続底面52からレンズホルダ51の内側の底面までの深さがほぼ一定であり、接続底面52に面した開口幅もほぼ一定である。通気溝53は、開口幅及び深さが数100μm、例えば、300μm程度である。そのため、通気溝53は、第2の実施形態の接続底面42上の溝部49の数に比較して、ずっと少ない数、例えば1つで通気量を確保可能である。なお、通気溝53は、断面が、第1の実施形態の溝部19と同様にV字形を有することは可能である。
【0041】
エアフィルタ配置溝55は、通気溝53の通気方向に垂直に通気を遮る位置にあり、エアフィルタ57が収納できる形状を有する。エアフィルタ配置溝55は、通気溝53の開口幅に対して、両側に、例えば、100〜200μm程度ずつ張り出しており、深さ方向に、例えば、約100μm張り出している。エアフィルタ配置溝55は、通気方向に、例えば、300μm程度の長さを有する。つまり、エアフィルタ配置溝55は、500×400×300μm〜700×400×300μm程度の直方体がくり抜かれた形状である。
【0042】
エアフィルタ57は、エアフィルタ配置溝55に対して遊びが少ない寸法を有している。エアフィルタ57は、通過する最大粒径(例えば、1μm〜10μm程度の内の適する大きさ)及び通気量等に基づいて選択される。エアフィルタ57は、リフロー温度に耐性を有する、例えば、天然繊維、化学繊維、ガラス繊維、セラミクス繊維等の細い繊維で構成される加工品、通気性のある樹脂または接着材、及び通気性のあるセラミクス等からなり、自己発塵が抑制されたものである。
【0043】
エアフィルタ57は、エアフィルタ配置溝55の中に収納される。収納されたエアフィルタ57は、接続底面52とほとんど同一平面をなす。エアフィルタ57が収納されたレンズホルダ51は、第1及び第2の実施形態と同じ固体撮像装置6に接着材27を介して接着、固定される。接着材27の量は、第1及び第2の実施形態とほとんど同じである。エアフィルタ57の接続底面52側は接着材27により固着される。
【0044】
上述したように、カメラモジュール3は、通気溝53がレンズホルダ51の接続底面52に面して、レンズホルダ51の内壁と外壁とをほぼ直線的に貫通し、通気を塞ぐ位置にエアフィルタ57が設けられている。ゴミの侵入を阻止するエアフィルタ57は、リフロー工程の温度に耐性を有している。
【0045】
図6(a)に示すように、空間33は、点線D−Dで示される通気経路が確保される。点線D−Dで示される通気経路は、通気溝53を通るのに対して、第1の実施形態における点線B−Bは溝部19の隙間31を通る違いがあるものの、その他の通気経路はほとんど同じである。従って、点線D−Dで示される通気経路によって、カメラモジュール3は、カメラモジュール1と同様なリフロー工程で組み立てが可能である。
【0046】
例えば、特許文献1に開示されているレンズがDカット部を有し、Dカット部に接するようにエアフィルタが設けられる構成のカメラモジュールに比較して、エアフィルタ57は、結像とはほとんど関係ない位置に置かれるので、位置合わせに要する時間が抑制可能となる。また、エアフィルタ57によって、通気溝53で遮断されるゴミの粒径は、より良く管理され得る。
【0047】
本発明の第3の実施形態の変形例に係るカメラモジュールについて、図7を参照しながら説明する。第3の実施形態とは、エアフィルタがツバを有する点が異なる。なお、第1乃至第3の実施形態と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0048】
図7に示すように、エアフィルタ58は、第3の実施形態のカメラモジュール3のエアフィルタ配置溝55の中に収納する部分がエアフィルタ57と同じ大きさ及び機能を有し、レンズホルダ51の接続底面52側にツバ59が固定されている。ツバ59は、エアフィルタ58がエアフィルタ配置溝55の中に収納されて、接続底面52に接触する。ツバ59は、リフロー工程に耐性を有する樹脂、セラミクス等からなる薄い板であり、ツバ59の大きさにより、レンズホルダ51の通気溝53を内壁側から外壁側まで覆うことが可能である。ツバ59の厚さは、接続底面52と固体撮像装置6との適する間隔より小さい。ツバ59は、接続底面52に接着、固定されてもよい。
【0049】
ツバ59付きのエアフィルタ58は、組み立て時の取り扱いが簡単で、接着材27が通気溝53側に入り込むことが抑制される。つまり、ツバ59があることにより、例えば、真空ピンセット等でツバ59部を吸着して、移動、装着が可能となり、また、接着材27が通気溝53を狭めることを抑制可能となる。ツバ59が透明であると、目視等での取り扱いが一層容易となる。本変形例のカメラモジュールは、その他に、第3の実施形態のカメラモジュール3が有する効果を同様に有する。
【0050】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々、変形して実施することができる。
【0051】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 離間した光軸を内側に取り囲む内壁、前記内壁と対向し外気に接している外壁、及び、被写体とは反対側の前記光軸に垂直な接続底面に面してあり、前記内壁側から前記外壁側に連通し、通気性を有する溝部を備えたレンズホルダと、前記光軸に沿って被写体側に配置され、前記レンズホルダの内壁に気密的に固定される光学レンズと、前記光軸に沿って前記接続底面に近い側に配置され、前記レンズホルダの内壁に形成、固定される光フィルタと、前記光軸を中心に閉じた帯状をなし、前記溝部に通気可能な隙間を残して配設される接着材と、前記光軸に垂直に被写体方向に面する固体撮像素子を有し、前記接着材によって固定される固体撮像装置とを備えているカメラモジュール。
【0052】
(付記2) 前記溝部は、溝側面及び溝底面の内のいずれか2面がなす90度またはそれ以下の角部を連通方向に連続的に有し、前記角部に通気可能な隙間を有する付記1に記載のカメラモジュール。
【0053】
(付記3) 前記溝部は、連通方向に対して垂直に連通を塞ぐように、通気性を有しゴミの侵入を阻止するエアフィルタが配設される付記1に記載のカメラモジュール。
【0054】
(付記4) 前記エアフィルタは、リフロー温度に耐性を有する、天然繊維、化学繊維、ガラス繊維、セラミクス繊維等の細い繊維で構成される加工品、通気性のある樹脂または接着材、及び通気性のあるセラミクスである付記3に記載のカメラモジュール。
【0055】
(付記5) 前記エアフィルタは、前記接続底面に接して前記溝部の少なくとも一部を覆う板に固定されている付記3に記載のカメラモジュール。
【符号の説明】
【0056】
1、2、3 カメラモジュール
5 レンズユニット
6 固体撮像装置
8 光軸
11、41、51 レンズホルダ
12、42、52 接続底面
13 上面
14 通気路
15 光学レンズ
16 光フィルタ
17、27 接着材
18、48 平面部
19、49 溝部
21 基板
23 固体撮像素子
25 半田ボール
27 接着材
29 側板
31、45 隙間
33、34 空間
53 通気溝
55 エアフィルタ配置溝
57、58 エアフィルタ
59 ツバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間した光軸を内側に取り囲む内壁、前記内壁と対向し外気に接している外壁、及び、被写体とは反対側の前記光軸に垂直な接続底面に面してあり、前記内壁側から前記外壁側に連通し、通気性を有する溝部を備えたレンズホルダと、
前記光軸に沿って被写体側に配置され、前記レンズホルダの内壁に気密的に固定される光学レンズと、
前記光軸に沿って前記接続底面に近い側に配置され、前記レンズホルダの内壁に形成、固定される光フィルタと、
前記光軸を中心に閉じた帯状をなし、前記溝部に通気可能な隙間を残して配設される接着材と、
前記光軸に垂直に被写体方向に面する固体撮像素子を有し、前記接着材によって固定される固体撮像装置と、
を備えていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記溝部は、溝側面をなす2面がV字形、または、相対向する溝側面のそれぞれと溝底面とが垂直に交わるU字形をなすことを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記溝部は、前記光軸を中心にして、ほぼ放射状に複数個配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記溝部は、連通方向に対して垂直に連通を塞ぐように、通気性を有しゴミの侵入を阻止するエアフィルタが配設されることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記接着材は、紫外線硬化性及び熱硬化性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147006(P2011−147006A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7127(P2010−7127)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】