説明

カメラ姿勢取得支援システム

【課題】車両の製造ライン上において、生産性を低下させることなく、車両におけるカメラの取り付け姿勢を取得させることが可能なカメラ取付支援システムを提供する。
【解決手段】ライン速度センサ106は、コンベア101の移動速度を車両200の移動速度として検出する。表示制御部108は、ライン速度センサ106によって検出された車両200の移動速度を入力し、当該車両200の移動速度に基づいて、パターン表示部102及び104に、車両200と同一速度及び同一方向で移動する市松模様のパターンを表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられたカメラの取り付け姿勢の取得を支援するカメラ姿勢取得支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性を確保すべく、車両周辺を監視するシステムが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このようなシステムでは、車両に複数のカメラを取り付け、当該カメラによって車両周辺を撮影して得られる画像を変換し、任意の視点からの画像(例えば、運転者に車両上方からの俯瞰画像)を提供する。運転者は、この俯瞰画像等を見ることで、運転席からの死角をなくし、車両周辺の障害物の存在等を確認することができる。
【0003】
上述したシステムにおいて、適切な俯瞰画像等を提供するためには、画像の歪みや複数のカメラによる撮影で得られる各画像の合成接合部の整合が必要となる。更に、このような画像整合は、カメラの取り付け姿勢(取り付け位置と傾き及び撮影方向)を表すパラメータを用いてなされるため、その取り付け姿勢の取得が必要となる。
【0004】
従来、車両に搭載されたカメラの取り付け姿勢を取得する場合には、以下のような手法が採用されていた。すなわち、既知の位置に配置された既知のパターンをカメラで撮影し、撮影画像におけるパターンの特徴点の位置を特定する。そして、その特定した特徴点の位置に基づいて、カメラの取り付け姿勢を表すパラメータが取得される。この場合、車両の製造ライン上において車両が移動すると、カメラによる撮影画像が変化するため、特徴点の位置を正確に特定することができない。このため、車両を一旦停止させる必要がある。
【特許文献1】特許第3286306号公報
【特許文献2】特許第3300334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の製造ライン上において、車両を一旦停止させることは生産性の低下をもたらす。このため、車両の生産性を低下させることなく、カメラの取り付け姿勢を取得することが要求されている。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決するものであり、車両の製造ライン上において、生産性を低下させることなく、車両におけるカメラの取り付け姿勢を取得させることが可能なカメラ取付支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、車両に取り付けられたカメラの姿勢の取得を支援するカメラ姿勢取得支援システムは、前記車両を搭載して移動する移動装置と、前記移動装置の移動方向に沿って延在し、前記カメラによって撮影されるパターンを表示するパターン表示部と、前記車両の移動と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動とが同期するように、前記パターンを変化させる表示制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、移動装置に搭載された車両の移動に同期するように、パターン表示部に表示されるパターンが変化するため、カメラを基準とした座標系において、パターンが停止した状態になる。換言すれば、車両の移動中に当該車両に搭載されたカメラがパターンを撮影した場合に、その撮影によって得られる画像におけるパターン部分を変化させないようにすることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るカメラ姿勢取得支援システムは、前記車両の移動方向と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動方向とは同一であり、前記車両の移動速度を検出する速度検出部を有し、前記表示制御部が、前記速度検出部により検出された車両の移動速度と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動速度とを一致させるようにしてもよい。
【0010】
この構成によれば、車両の移動速度及び移動方向と、パターン表示部に表示されるパターンの移動速度及び移動方向とを一致させることで、車両の移動中に当該車両に搭載されたカメラがパターンを撮影した場合に、その撮影によって得られる画像におけるパターン部分を変化させないようにすることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るカメラ姿勢取得支援システムは、前記速度検出部が、前記移動装置の移動速度を、前記車両の移動速度として検出するようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、移動装置の移動速度を検出することにより、当該移動装置に搭載されて移動する車両の移動速度を間接的に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の移動中に当該車両に搭載されたカメラがパターンを撮影した場合に、その撮影によって得られるパターン部分の画像を変化させないようにする、換言すれば、画像におけるパターンの特徴点の位置を変化させないようにすることが可能となり、生産性を低下させずに、車両におけるカメラの取り付け姿勢を取得させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る、車両製造ライン上に配置されるカメラ姿勢取得支援システムの構成を示す図である。
【0015】
図1に示すカメラ姿勢取得支援システム100は、車両200に取り付けられたカメラ202、204、206、208及び210のうち、左側面部に取り付けられたカメラ202及び右側面部に取り付けられたカメラ204の姿勢を取得するものである。カメラ202等は、広角もしくは魚眼レンズ(図示せず)を内蔵し、広い画角を有しており、これらカメラ202等の撮影により得られる画像を変換することによって、例えば、運転者に車両上方からの俯瞰画像を提供することが可能となる。カメラ姿勢取得支援システム100は、車両上方からの俯瞰画像における画像の歪みや、カメラ202等の撮影によって得られる各画像の合成部の整合を適切に行うために必要となる、カメラ202等の取り付け姿勢(取り付け位置と撮影方向)を表すパラメータの取得を支援するものである。
【0016】
図1に示すカメラ姿勢取得支援システム100は、移動装置としてのコンベア101と、パターン表示部102及び104と、速度検出部としてのライン速度センサ106と、表示制御部108とにより構成される。
【0017】
コンベア101は、車両製造ラインにおいて、車両200を搭載して延在方向(図1に示す矢印の方向)に移動する。車両200は、これに伴って移動する。コンベア101の移動方向に向かって左側の床部には、当該コンベア101の移動方向に沿って延在するパターン表示部102が設けられている。また、コンベア101の移動方向に向かって右側の床部には、当該コンベア101の移動方向に沿って延在するパターン表示部104が設けられている。パターン表示部102は、カメラ202によって撮影される市松模様のパターンを表示する。同様に、パターン表示部104は、カメラ204によって撮影される市松模様のパターンを表示する。
【0018】
ライン速度センサ106は、コンベア101の移動速度を検出する。コンベア101は、車両200を搭載して移動しているため、コンベア101の移動速度は、車両200の移動速度を示すことになる。表示制御部108は、ライン速度センサ106によって検出されたコンベア101の移動速度、換言すれば、車両200の移動速度に基づいて、パターン表示部102及び104において、これらに表示される市松模様のパターンを移動させる。
【0019】
図2は、カメラ姿勢取得支援システム100の動作を示すフローチャートである。コンベア101は、車両200を搭載して移動する(S101)。表示制御部108は、パターン表示部102及び104において表示される市松模様のパターンを生成する(S102)。生成された市松模様のパターンは、パターン表示部102及び104へ出力される。パターン表示部102及び104は、入力した市松模様のパターンを表示する(S103)。
【0020】
次に、ライン速度センサ106は、車両200の移動速度を検出する(S104)。具体的には、コンベア101には、移動方向において所定の距離間隔でマークが配置されており、ライン速度センサ106は、このマークを検出する。更に、ライン速度センサ106は、予め保持しているマークの配置間隔を、当該マークを検出した時間間隔で除算することによって、コンベア101の移動速度、換言すれば、当該コンベア101に搭載された車両の移動速度200を検出する。検出された車両200の移動速度は、表示制御部108へ出力される。
【0021】
表示制御部108は、ライン速度センサ106からの車両200の移動速度を入力すると、パターン表示部102及び104によって表示されたパターンを、車両200と同一速度及び同一方向で移動させる(S105)。具体的には、上述したように、パターン表示部102及び104がコンベア101の移動方向に沿って延在しているため、パターン表示部102及び104の長手方向がパターンの移動方向となる。表示制御部108は、パターン表示部102及び104の長手方向がパターンの移動方向となることに対応して、内蔵するメモリ(図示せず)に、パターン表示部102及び104の長手方向における画素の配置間隔の情報を保持しておく。
【0022】
そして、表示制御部108は、車両200の移動速度と、画素の配置間隔の情報とに基づいて、パターン表示部102及び104において、1つの画素に対応する画像を表示する画素を、当該1つの画素に対応する画像が車両200と同一速度でパターン表示部102及び104の長手方向に移動するように切り替える制御を行う。パターン表示部102及び104には、この移動後のパターンが表示される(S103)。その後も同様にして、車両200の移動速度の検出(S104)と、車両200と同一速度及び同一方向でパターンを移動させる処理(S105)と、移動後のパターンの表示(S103)とが繰り返される。
【0023】
図3は、車両200に取り付けられたカメラ202と、パターン表示部102におけるパターンの時間遷移を示す図であり、図3(a)は時刻tの状態、図3(b)は時刻t+1の状態を示す。図3(a)に示すように、時刻tの状態では、カメラ202の正面には、パターン表示部102における市松模様のパターンのうち、移動方向前方が白の四角形、移動方向後方が黒の四角形となる境界部分Aが存在する。
【0024】
そして、車両200の移動、換言すれば、カメラ202の移動に伴って、当該カメラ202と同一の移動速度及び移動方向でパターン表示部102における市松模様のパターンが移動すると、図3(b)に示すように、時刻t+1の状態でも、時刻tの状態と同様に、カメラ202の正面には、パターン表示部102における市松模様のパターンのうち、移動方向前方が白の四角形、移動方向後方が黒の四角形となる境界部分Aが存在する。なお、車両200に取り付けられたカメラ204と、パターン表示部104におけるパターンの時間遷移も同様である。
【0025】
従って、カメラ202を基準とした座標系において、パターン表示部102における市松模様のパターンは停止した状態になり、同様に、カメラ204を基準とした座標系において、パターン表示部104における市松模様のパターンは停止した状態になる。このため、例えば、図4に示すようにカメラ202及び204の撮影によって得られる画像におけるパターン部分300は、車両200が移動しても変化しない。換言すれば、車両200の移動と、パターン表示部102及び104に表示される市松模様のパターンの移動とが同期する。
【0026】
このように、車両200が移動した状態であっても、カメラ202及び204の撮影によって得られる画像におけるパターン部分が変化しないことにより、当該パターン部分の特徴点(例えば、市松模様を構成する各四角形の頂点)の位置も変化しない。従って、撮影画像からパターン部分の特徴点の位置を正確に特定することが可能であり、当該特徴点の位置に基づいて、カメラ202及び204の取り付け姿勢を表すパラメータを取得することが可能となる。以上、カメラ姿勢取得支援システム100によれば、従来のように、車両200の製造ライン上において、カメラ202及び204の取り付け姿勢を表すパラメータを取得するために、車両200を停止させる必要がなく、生産性の低下を防止することが可能である。
【0027】
なお、上述した実施形態では、ライン速度センサ106が、車両200の移動速度を検出したが、ライン速度センサ106がコンベア101に移動方向において所定の距離間隔で配置されたマークを検出する毎に、検出信号を表示制御部108へ出力し、表示制御部108が、予め保持しているマークの配置間隔を、検出信号を入力した時間間隔で除算することによって、コンベア101の移動速度(車両200の移動速度)を検出するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、コンベア101の移動速度を、車両200の移動速度として検出したが、直接に車両200の移動速度を検出してもよい。
【0028】
また、コンベア101の移動速度(車両200の移動速度)及び移動方向が予め定められている場合には、ライン速度センサ106を設ける必要はない。この場合には、表示制御部108は、その予め定められている車両200の移動速度及び移動方向に基づいて、車両200の移動と同期するように、パターン表示部102及び104に表示されるパターンを変化させる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上、説明したように、本発明に係るカメラ取付支援システムは、車両の製造ライン上において、生産性を低下させることなく、車両におけるカメラの取り付け姿勢を取得させることが可能であり、カメラ取付支援システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るカメラ姿勢取得支援システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカメラ姿勢取得支援システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】車両に取り付けられたカメラと、パターン表示部におけるパターンの時間遷移を示す図(図3(a)は時刻tの状態、図3(b)は時刻t+1の状態)である。
【図4】カメラによる撮影画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
100 カメラ姿勢取得支援システム
101 コンベア
102、104 パターン表示部
106 ライン速度センサ
108 表示制御部
200 車両
202、204、206、208、210 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられたカメラの姿勢の取得を支援するカメラ姿勢取得支援システムであって、
前記車両を搭載して移動する移動装置と、
前記移動装置の移動方向に沿って延在し、前記カメラによって撮影されるパターンを表示するパターン表示部と、
前記車両の移動と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動とが同期するように、前記パターンを変化させる表示制御部とを有することを特徴とするカメラ姿勢取得支援システム。
【請求項2】
前記車両の移動方向と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動方向とは同一であり、
前記車両の移動速度を検出する速度検出部を有し、
前記表示制御部は、前記速度検出部により検出された車両の移動速度と、前記パターン表示部に表示されるパターンの移動速度とを一致させることを特徴とする請求項1に記載のカメラ姿勢取得支援システム。
【請求項3】
前記速度検出部は、前記移動装置の移動速度を、前記車両の移動速度として検出することを特徴とする請求項2に記載のカメラ姿勢取得支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−284989(P2008−284989A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131584(P2007−131584)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】