説明

カメラ装置

【課題】カメラ装置のバッテリチェックのために超音波モータを擬似負荷に応用する。
【解決手段】カメラ装置のモータ制御回路は、超音波モータ100を擬似負荷にして電池200の出力電流を検出するバッテリチェック機能を備えている。レンズ鏡筒3が前進又は後退の極限位置にある状態で、超音波モータ100に駆動信号を供給し、この時電池200から出力される電流を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動可能に搭載されたレンズ鏡筒と、これに連結した超音波モータと、超音波モータを正逆双方向に駆動してレンズ鏡筒を光軸に沿って前進後退させるモータ制御回路とで構成されるカメラ装置に関する。より詳しくは、超音波モータをバッテリチェックの疑似負荷に用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年カメラ装置に組み込まれるレンズ鏡筒のアクチュエータとして超音波モータが使われ始めている。超音波モータ(ピエゾモータ)は、その振動子の重心固定の対称励振モードである定在波型モータと進行波型モータの2種類と、さらに振動子である円板又は円筒を例えば4分割し左右の振幅が逆になる非対称モードにより励振することで重心が中心の周りを回転移動し、円の外周がフラフープのように偏心する電歪公転子型モータとが知られている。こうした超音波モータ(以下ピエゾモータとも言う)は、ステータとなる圧電素子に高周波の交流電圧を印加して、約20kHz以上の超音波振動を発生させることにより、ステータに圧接されたロータを回転駆動させている。この種のピエゾモータは、構造が簡単で小型軽量化に適するとともに、低速回転時でも高いトルクが得られる上、駆動音も少なく静かであるという利点を有している。特に後者の電歪公転子型モータは、特開平10−272420号公報に示されているように、円筒状公転子の径および周方向に加えて軸方向のモードも結合させた3D公転トルク発生子として利用できるという特長を有している。又、この様な超音波モータに駆動信号を印加してその動作を制御する超音波モータ制御回路が、例えば特開平11−146258号公報に開示されている。
【0003】
図11は、上述した超音波モータの動作特性を示すグラフである。横軸は圧電振動子からなるステータに印加する駆動信号の周波数fを表わし、縦軸はステータに流れる駆動電流iを表わしている。図から明らかな様に、駆動電流iはステータの共振周波数fpで極大(imax)となる。駆動信号の周波数fがfp付近にある時、ステータに十分な駆動電流iが流れる。これに応じて、ステータに公転トルクが発生する。一般的に、電流iが大きい程公転トルクが大きくなる。駆動信号の周波数fがfpから外れ、電流iが減少すると公転トルクはほとんど発生しない。
従って、係る超音波モータを安定に回転させる為には、例えば図11に示したグラフ上の動作点D(fd,id)でステータを駆動することが好ましい。fdを制御することによりidがほぼ一定となる様に、超音波モータを駆動する。一方、ステータのf/i特性は図示する様に温度など諸々の要因によりシフトする性質がある。例えばステータの温度は環境によって変化するばかりでなく、ステータが励振されることによる自身の発熱によっても変化する。圧電共振子は一般にQ値が大きいので、動作点として使用できる周波数範囲は狭く、周波数fの変化に対する電流iの変化は大きい。電流iを制御する為には、周波数fを精密に調整する必要がある。又、温度によるf/i特性のシフト量は、動作点Dとして使用できる周波数範囲に比較して大きいので、超音波モータを起動する際、最初に印加する駆動信号の周波数の決定にも工夫が必要である。グラフから明らかな様に、f/i特性シフトがあると、ステータの共振周波数はfpからfp’に大きく変化する。これに応じ、最適な動作点はDからD'にシフトする。このシフト量は、元の動作点Dに許容される変動範囲(fdを中心とした狭い幅範囲)に比べ、大きくシフトしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−272420号公報
【特許文献2】特開平11−146258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のモータや前述したカメラ装置は、擬似負荷として固定抵抗を使用すると、固定抵抗をスイッチングする回路なども必要となり、回路が複雑になる。そこで、本発明はカメラ装置において超音波モータのf/i特性を利用して、カメラ装置のバッテリチェックの為に超音波モータを疑似負荷に応用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した本発明の目的を達成する為に以下の手段を講じた。すなわち、本発明は、移動可能に搭載されたレンズ鏡筒と、該レンズ鏡筒に連結した超音波モータと、該超音波モータに駆動信号を印加して正逆双方向に駆動し該レンズ鏡筒を光軸に沿って前進後退させるモータ制御回路と、該超音波モータや該モータ制御回路に給電する電池とを備えたカメラ装置において、前記モータ制御回路は、該超音波モータを疑似負荷にして該電池の出力電流を検出するバッテリチェック機能を備えており、該レンズ鏡筒が前進又は後退の極限位置にある状態で、該超音波モータに駆動信号を供給し、この時該電池から出力される電流を検出することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、圧電共振子を用いた超音波モータをカメラ装置の疑似負荷として使用している。一般に、疑似負荷としては固定抵抗を使用しているが、その為には固定抵抗をスイッチングする回路なども必要となり、回路が複雑となる。そこで本発明では、超音波モータをレンズ鏡筒のアクチュエータに利用している点に着目し、超音波モータを逆回転しストッパに度当りさせた状態で通電し、疑似負荷として利用している。超音波モータは駆動信号の周波数によって電流を可変制御することが可能であり、スイッチング回路など他の回路を使用せずに疑似負荷として必要な電流を設定することができる。例えば、カメラ装置は一般に電池で給電を受ける為、バッテリチェックが必要となる。その為には、シャッタなどの駆動電圧を考慮した疑似負荷を用い電流を流した上でバッテリチェックを行なうことになる。その際、超音波モータを疑似負荷に使用すれば、所望の周波数を選択することによりバッテリチェックに必要な電流を流すことが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明した様に、本発明によれば、超音波モータをバッテリチェックの為の疑似負荷に用いることができ、従来疑似負荷として必要であった固定抵抗やこれをスイッチング制御する回路などが不要となり、カメラ装置の全体的なコストを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るカメラ装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示したカメラ装置の機械的な構成を示す断面図である。
【図3】図1に示したカメラ装置に含まれる超音波モータ制御回路の具体的な構成例を示すブロック図である。
【図4】超音波モータの模式的な斜視図である。
【図5】超音波モータの横断面図である。
【図6】超音波モータの動作説明図である。
【図7】図3に示した超音波モータ制御回路に含まれるDDSの具体的な構成例を示すブロック図である。
【図8】図3に示した超音波モータ制御回路に含まれるプリドライバの動作説明に供する波形図である。
【図9】図3に示した超音波モータ制御回路に含まれるパワードライバ及び電流モニタの具体的な構成例を示す回路図である。
【図10】本発明にかかるカメラ装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図11】超音波モータの動作特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明に係るカメラ装置の実施形態を示す模式図である。図示する様に、本カメラ装置は、レンズ鏡筒3と、超音波モータ100と、モータ制御回路とから構成されている。レンズ鏡筒3はカメラの前面に移動可能に搭載されており、被写体の撮影に用いられる。レンズ鏡筒3はズーミングもしくは自動焦点合わせの為、光軸方向に前進後退移動される。超音波モータ100はレンズ鏡筒3に連結している。モータ制御回路は、超音波モータ100を正逆双方向に駆動してレンズ鏡筒3を光軸に沿って前進後退させる。
【0011】
ここでモータ制御回路は、駆動部110−140と検出部150/160と制御部170とで構成されている。駆動部110−140は、所定の周波数fの駆動信号を出力して超音波モータ100を駆動する。検出部150/160は、駆動中の超音波モータ100に流れる駆動電流iを検出して電流値データを出力する。制御部170は、該電流値データに基づいて周波数データを出力し駆動信号の周波数fを制御する。係る構成において、制御部170は、起動に先立って駆動部110−140を制御して、超音波モータ100を介しレンズ鏡筒3を後退方向限界位置に保持した状態で、周波数fを掃引しながら逆方向の駆動信号を超音波モータ100に印加する。更に制御部170は、掃引中検出部150/160から出力される電流値データのピーク値に応じて初期周波数データを設定し、これを駆動部110−140に出力して超音波モータ100に起動をかける。
【0012】
この様に、本発明では起動前に予め掃引を行なってf/i特性を測定し、これに基づいて起動周波数を決定している。これにより、常に安定に超音波モータ100の起動を行なうことができる。f/i特性の測定を行なう際、超音波モータ100を予め逆回転させてレンズ鏡筒3を後退方向極限位置に保持しておく。更に周波数の掃引中も逆方向の駆動電流を超音波モータ100に印加し、レンズ鏡筒3自体は移動できない様にしておく。この状態でf/i特性を測定し、起動周波数を決定している。従って、実際に起動をかけた段階では、レンズ鏡筒3は後退方向極限位置にあり、これを基準として前進方向の位置制御を行なうことが可能である。即ち、起動をかけた後レンズ鏡筒3の後退方向極限位置を起点とし、駆動時間又は駆動パルス数を制御することで、レンズ鏡筒3の前進方向における停止位置を正確に制御することが可能である。なお、好ましくは、本カメラ装置はヘリコイドギヤを介して超音波モータ100をレンズ鏡筒3に連結する連結手段を含んでいる。この連結手段は、超音波モータ100の回転運動をレンズ鏡筒3の直線運動に変換する。
【0013】
図2は、図1に示したカメラ装置の機械的な構成を示す模式的な縦断面図である。図示する様に、カメラ装置は、基本的に、ステータ1及びロータ2からなる超音波モータと、レンズ鏡筒3とで構成されている。これらの部品は、台座6を用いて組み立てられている。ステータ1は外部から駆動電圧の印加を受けて振動し、回転駆動力を発生する。ロータ2はステータ1に発生した回転駆動力を自己の回転運動に変換する。この為、ロータ2は板バネ8によりステータ1に圧接されている。板バネ8は基台7とロータ2との間に装着されている。基台7はネジで台座6の底部に固定されている。一方、レンズ鏡筒3はカメラ用のレンズ33,34を搭載し、且つレンズの光軸Z方向に直線変位可能な様に台座6に取り付けられている。具体的には、レンズ鏡筒3にはストッパ32が形成されており、台座6に植設されたガイドシャフト4に係合している。レンズ鏡筒3はストッパ32により回転を規制されているとともに、ガイドシャフト4に沿って光軸Z方向に直線変位する。尚、ガイドシャフト4に係合したストッパ32には、レンズ鏡筒3のガタ寄せ用のバネ41が装着されている。
【0014】
ここで、ロータ2は環形状を有し、その内周面にはヘリコイドギア21が形成されている。又、レンズ鏡筒3の外周面にもヘリコイドギア31が形成されている。ロータ2側のヘリコイドギア21とレンズ鏡筒3側のヘリコイドギア31は互いに係合している。ロータ2が回転すると、上述したヘリコイドギアの係合からなる連結手段によりレンズ鏡筒3も回転しようとするが、ストッパ32で回転変位を規制されている為、ガイドシャフト4に沿って光軸Z方向に直線変位することになる。この様なレンズ鏡筒3の光軸Z方向に沿った直線変位は、カメラのズーミングや焦点合わせなどに用いられる。
【0015】
台座6の頂部にはストッパ61が形成されている。レンズ鏡筒3は光軸Zに沿って後退していくと、レンズ鏡筒3のストッパ32の先端が、台座6側のストッパ61と度当りした極限位置で停止する。前述した様に、ステータ1とロータ2とからなる超音波モータに起動をかける時、まずレンズ鏡筒3を上述した後退方向極限位置にまで移動させる。この状態で、超音波モータに逆回転方向の駆動信号を印加しながら、周波数の掃引を行ない、f/i特性を測定する。超音波モータに逆回転の駆動信号を印加している為、レンズ鏡筒3は光軸Zに沿って後退方向に移動しようとするが、ストッパ61に度当りしてそのまま保持された状態となる。
【0016】
図3は、図1に示したカメラ装置に組み込まれる超音波モータ制御回路の具体的な構成例を示す模式的な回路図である。図示する様に、本超音波モータ制御回路は、超音波モータ100に駆動信号を印加してその動作を制御するものであり、ダイレクトデジタルシンセサイザーDDS110、発振器120、プリドライバ130、パワードライバ140、電流モニタ150、アナログ/デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)160及びCPU170とで構成されている。DDS110はクロック信号fcに応じて動作し、数値で与えられる制御データdfに従って変化する周波数の基本波形fd0を出力する。尚、DDSの基本的な構成は、例えば特開2000−151284号公報に開示されている。発振器120は、上述したDDS110にクロック信号fcを供給する。プリドライバ130は、DDS110から出力された基本波形fd0を処理して、複相の駆動信号fdを生成する。パワードライバ140はプリドライバ130から出力された駆動信号fdに応じて駆動電流idを超音波モータ100に流し、これを駆動する。電流モニタ150は、超音波モータ100に流れた駆動電流idを逐次検出し、その結果を検出電圧Vidとして出力する。A/Dコンバータ160は、検出された駆動電流の量を表わすVidを、デジタルの電流値データdiに変換する。CPU170は、A/Dコンバータ160から出力されたデジタルの電流値データdiに基づいて制御データdfを求め、逐次DDS110に入力する。
【0017】
CPU170は所定のプログラムに基づいてフィードバック制御を行ない、電流値データdiに応じて周波数制御データdfをDDS110側に出力する。例えば、CPU170は係るフィードバック制御により、超音波モータ100に流れる駆動電流が一定の電流値Vidとなる様に制御データdfを調整することができる。超音波モータ100に流れる駆動電流idを一定にすることで、超音波モータ100の出力トルク並びに回転数が一定となり、超音波モータ100の定常動作における安定化が可能になる。
【0018】
CPU170は上述した定常動作の制御に加え、本発明に従って起動時の制御も行なう。即ち、CPU170は超音波モータ100の起動時、DDS110に与える制御データdfの数値を演算して、超音波モータ100に印加される駆動信号fdの周波数を起動時から最適な動作点に入る様にする。これにより、超音波モータ100を起動不能に陥らない様にしている。具体的には、CPU170は周波数を高速掃引しながら駆動信号を超音波モータ100に印加する一方、掃引中電流モニタ150から出力される電流値データのピーク値に応じて初期周波数データを設定し、これをプリドライバ130に出力して超音波モータ100に起動をかける。
【0019】
図4は、図3に示した超音波モータ(ピエゾモータ)100の具体的な構成例を示す模式的な斜視図である。図示する様に、ピエゾモータ100は前述した特開平10-272420号公報に示されている3D公転トルク共振子よりなる電歪公転子型モータであって、円筒型のステータ1と、その後端に圧接された環状のロータ2とで構成されている。円筒型ステータ1の外周面には、電極11,12,13,14が形成されている。図示しないが、円筒の内周面にも電極が形成されている。円筒の外周面に形成された電極は四分割されており、それぞれ位相の異なる交流駆動電流I(A),I(B),I(AX),I(BX)が供給される。A相電流とB相電流は位相が互いに90度異なっている。又、A相電流とAX相電流は位相が180度異なっている。換言すると、A相とAX相は互いに反対極性である。同様に、B相とBX相も反対極性となっている。
【0020】
図5は、図4に示したステータの模式的な横断面図である。図示する様に、セラミックなどの圧電素子からなる円筒型ステータ1の内周面には、全面的に基準電位を与える電極10が形成されている。円筒の外周面には四分割された駆動用の電極11〜14が形成されている。これら四分割された電極11〜14には、互いに位相が90度ずつシフトした四相の交流駆動電流I(A),I(B),I(AX),I(BX)が供給される。
【0021】
図6を参照して、図4及び図5に示したピエゾモータの動作を説明する。尚、本発明は図4〜図6に示すピエゾモータ(超音波モータ)に限られるものではなく、他の様々な構成の超音波モータにも適用可能であることは言うまでもない。ピエゾモータでは動力源となる超音波振動が一定の共振周波数であるから、電流はほぼ一定値となる。共振器はQが高く、振動振幅の立ち上がりは1サイクル以内と考えられ、非慣性機構と見なすことができる。負荷の慣性が影響する範囲でしか電流は変化しない。係る特徴を有するピエゾモータは様々な構成が開発されているが、特に電歪公転型が有力である。電歪公転型は、従来の様に振動をトルクに変えるのではなく、周面全面に亘って一様な公転トルクを直接励振することができる共振子を使っている。従来の超音波振動子は定在波型と進行波型の二種類あるが、共に重心固定の対称モードでしか励振できない。これに反して、円筒を左右の伸縮が逆になるモードで励振すると、重心が中心を離れて振動する。この非対称励振を行なうと、従来の対称励振では観測できなかった円筒の共振モードが得られる。そこで、ステータ円筒の電極を例えば四分割し、90度ずつ位相の異なる回転電場で励振すると、図6に示す様に、重心が中心の周りを回転するモードの共振が見られる。この時円筒の外周は元の形を保ったまま、フラフープの様に偏心するので、振動子が公転回転を行なう。係る構成の電歪公転子型モータでは、直接回転モードが励振され、円筒状公転子の径および周方向に加えて軸方向のモードも結合させた3D公転トルク発生子として利用できる。この公転トルクは、直接ロータの自転運動として取り出される。
【0022】
図7は、図3に示したDDS110の具体的な構成例を示す模式的なブロック図である。DDS110は加算器とラッチとで構成されている。加算器はCPUから数値として与えられた16ビット制御データdfを逐次加算し、その結果をラッチに送る。ラッチはクロック信号fcに応じて動作し、ラッチした加算結果を加算器側にフィードバックする。ラッチは加算器による加算でオーバーフロー(桁上げ)が生じた時、最上位ビットMSBをfd0として出力する。この様に、DDS110はCPUから与えられた周波数設定データdf及び発振器からのクロック周波数fcに応じて次の式で表わされる周波数fd0の基本波形を生成する。
fd0=df×fc/2(N;データのビット数)
【0023】
尚、通常のDDSは、ラッチされた出力データを検索テーブルLUTにより正弦波などの波形データに変換した後、デジタル/アナログ変換して出力波形とする。しかしながら、超音波モータは基本的に矩形波の駆動信号で駆動することができる。その為本例のDDSでは矩形波出力でよいので、ラッチされたデータの最上位ビットMSBをそのまま出力波形として用いることができる。従って、本DDSからはLUT及びデジタル/アナログコンバータは省略されている。
【0024】
図8は、図3に示したプリドライバ130から出力される複相の駆動信号fdを示す波形図である。前述した様に、プリドライバは、DDSから出力された基本波形fd0を基に、ステータを駆動する為の複相の駆動信号fd(A),fd(B),fd(AX),fd(BX)を生成する。各駆動信号fdの周波数は基本波形fd0に等しいか又はこれを分周した周波数となる。図示の例では、各駆動信号fdは基本波形fd0を1/2に分周した波形となっている。図示する様に、A相に対しB相は90度シフトし、AX相は180度シフトし、BX相は270度シフトしている。この様に90度ずつ位相の異なる交流駆動信号をステータに印加することで回転電場が形成され、これに応じてステータは直接回転モードを励振する。これによりロータは正方向に回転する。各駆動信号fdの位相関係を逆にすれば、ロータは逆方向に回転する。以上の様に、プリドライバは、90度ずつ位相の異なる4種類の駆動波形を生成している。駆動波形の周波数fdは基本周波数fd0の1/2である。これらの波形は、カウンタ、インバータなどのロジックICにより、基本波形fd0から容易に作成することができる。
【0025】
図9は、図3に示した超音波モータ制御回路に含まれるパワードライバ140及び電流モニタ150の具体的な構成例を示した回路図である。図示する様に、超音波モータ100に接続されたパワードライバは一対のHブリッジ140A,Hブリッジ140Bからなる。ここで、一対の駆動信号fd(A),fd(AX)はHブリッジ140Aを介して超音波モータ100の互いに対向する一対の電極に印加される。同様に、他の一対の駆動信号fd(B),fd(BX)も他のHブリッジ140Bを介して互いに対向する他の一対のステータ電極に印加される。Hブリッジ140A,140Bは、それぞれ入力信号に応答して、ステータ電極に十分な出力電流I(A),I(B),I(AX),I(BX)を供給する為のパワーアンプとなっている。以上の様に、パワードライバは一対のHブリッジにより構成されている。ブリッジを構成する素子としては、高速にスイッチングする必要からMOSFETを用いている。
【0026】
一方、電流モニタ150は、差動アンプOP、平滑コンデンサC、複数の抵抗器R1〜R3とで構成されている。電流モニタ150は基本的にローパスフィルタ構成となっており、抵抗器R1を介してHブリッジ140A及び140Bに流れる駆動電流に応じた電圧値Vidを出力する。駆動電流の検出は、低い抵抗値(例えば1Ω)の抵抗器R1に生ずる電圧をコンデンサCで平滑化し、アンプOPで増幅することにより行なう。前述した様に、この出力電圧VidはA/Dコンバータ側に送られる。
【実施例2】
【0027】
図10は、本発明に係るカメラ装置の他の実施形態を示す模式図である。(A)に示す様に、本カメラ装置は、レンズ鏡筒3と、超音波モータ100と、モータ制御回路と、電池200とで構成されている。レンズ鏡筒3はカメラ装置の前面側に移動可能に搭載されている。超音波モータ100は、レンズ鏡筒3に連結している。モータ制御回路は、超音波モータ100に駆動信号を印加して正逆双方向に駆動し、レンズ鏡筒3を光軸に沿って前進後退させる。電池200は、上述した超音波モータ100やモータ制御回路に給電する。具体的には、電池200は電源ラインVBATと接地ラインGNDとの間に接続されている。前述した超音波モータ100やモータ制御回路も図示を省くがVBATとGNDとの間に接続されている。この様にして電池200は電源ラインVBAT及び接地ラインGNDを介して超音波モータ100やモータ制御回路を給電している。
【0028】
ここでモータ制御回路は、駆動部110−140と検出部150/160と制御部170とで構成されている。駆動部110−140は所定の周波数の駆動信号を出力し超音波モータ100を駆動する。検出部150/160は、駆動中の超音波モータ100に流れる駆動電流を検出して電流値データを出力する。制御部170は、電流値データに基づいて周波数データを出力し駆動信号の周波数を制御する。
【0029】
制御部170は更にバッテリチェック機能を備えており、超音波モータ100を疑似負荷にして電池200の出力電流を検出している。具体的には、電源ラインVBATと接地ラインGNDとの間にトランジスタTrを介して分圧抵抗Rが直列に接続されている。トランジスタTrのベースは制御部170に接続されている。又、分圧抵抗Rの中点は制御部170に接続されている。係る構成において、レンズ鏡筒3が前進又は後退の極限位置にある状態で、超音波モータ100に駆動信号を供給し、この時電池200から出力される電流を分圧抵抗Rで分圧して検出している。即ち、バッテリチェックを行なう時のみ制御部170はトランジスタTrをオンし、電源電圧を抵抗Rによって分圧して検出している。
【0030】
現在、カメラ装置の疑似負荷としては固定抵抗を使用し、これに電流を流している。その為には固定抵抗をバッテリチェックの時のみスイッチングする回路などが必要となり、構成が複雑となったりコストが増加していた。そこで、本発明ではカメラ装置に組み込まれた超音波モータに着目し、これを逆回転させてストッパに度当りした状態に保持し、これを疑似負荷として利用し電流を流す様にしている。ここで、(B)は超音波モータの電流iと周波数fの関係を模式的に表わしている。グラフから明らかな様に、周波数fによって電流iを可変制御することが可能な為、追加の回路を使用することなく必要な負荷電流を流すことができ、これを疑似負荷として使用すればよい。その為、固定抵抗などが必要なくなりコストを抑えることが可能である。カメラ装置は前述した様に電池で給電する為、バッテリチェックが必要となる。従来、シャッタなどの駆動電圧を考慮した固定抵抗による疑似負荷を用い、所定の電流を流した上でバッテリチェックを行なっていた。これに対し、本発明では超音波モータを疑似負荷として使用し、所望の周波数を選択することで所望の負荷電流を流すことが可能である。疑似負荷専用の回路が不要となる為、コストを抑えることが可能である。又実装基板などの小型化も可能になる。
【符号の説明】
【0031】
3・・・レンズ鏡筒
100・・・超音波モータ
110−140・・・駆動部
150/160・・・検出部
170・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に搭載されたレンズ鏡筒と、該レンズ鏡筒に連結した超音波モータと、該超音波モータに駆動信号を印加して正逆双方向に駆動し該レンズ鏡筒を光軸に沿って前進後退させるモータ制御回路と、該超音波モータや該モータ制御回路に給電する電池とを備えたカメラ装置において、
前記モータ制御回路は、該超音波モータを疑似負荷にして該電池の出力電流を検出するバッテリチェック機能を備えており、該レンズ鏡筒が前進又は後退の極限位置にある状態で、該超音波モータに駆動信号を供給し、この時該電池から出力される電流を検出することを特徴とするカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−118425(P2011−118425A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47871(P2011−47871)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【分割の表示】特願2001−209822(P2001−209822)の分割
【原出願日】平成13年7月10日(2001.7.10)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】