説明

カメラ装置

【課題】エンドレスカメラ装置において、従来のスリップリングを用いる方法では、低解像度のアナログデータあるいは情報量の少ない制御データなどしか伝送が行えない問題を解決して、高解像度の画像データや大容量のデータ伝送を可能とする。
【解決手段】固定部と回転軸を中心に回動する可動部を有し、上記固定部には、少なくとも第1の無線部、第1の信号処理部および電源部を有し、上記可動部には、少なくともカメラ部、第2の信号処理部、第2の無線部および上記カメラ部を駆動する駆動部を有し、上記第1の無線部と上記第2の無線部とを電波が伝播する導波管で結合し、上記導波管の導波路を上記可動部の上記回転軸の中心に一致させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に関し、特に、無線データ伝送を用いたエンドレスカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置を用いた監視カメラ装置は、不特定多数の人が出入りする、例えば、公共の建物や場所、病院、銀行、スーパ等の店舗、あるいは、ダム、基地、飛行場等の立入り禁止区域等への侵入者あるいは侵入物体(以下侵入物体と称す)を監視する目的で、数多く用いられている。このような監視カメラ装置を遠隔監視システムに導入すると、監視領域を画像により容易に確認できるので、状況に応じて適確かつ敏速に対応でき、質の高い警報監視システムを構築することができる。
【0003】
しかしながらこのような監視カメラ装置は、長時間しかも遠隔制御により監視対象場所を適確に監視するためには、装置の信頼性が要求される。特に、セキュリテイの高い銀行、基地、飛行場といった場所、あるいはダムや港湾のような高所あるいは遠方に監視装置を設置するような場合には、メンテナンスも大変であり、できるだけ保守点検の手間の少ない監視カメラ装置が要求されている。
【0004】
また、監視カメラ装置は、監視という性格上、場所によっては広範囲な監視範囲を設定する必要がある。この目的のために監視カメラ装置の視野範囲を広範囲に変化させるためにカメラ自体をパン方向(水平方向)、チルト方向(仰角方向)に駆動する駆動装置が設けられている。特に、最近では、侵入物体の追跡のために、パン方向には、無限軌道旋回(以下、エンドレス回転という。)を取り入れた広範囲な監視範囲をカバーするカメラ装置が要求されている。
【0005】
一方、カメラ装置は、被写体を撮像するカメラ部からの映像信号や、カメラの制御信号の伝送あるいは電源の供給のために同軸ケーブルを設けるのが普通であるが、この同軸ケーブルは、構造上、固定部と可動部に接続されるため、同軸ケーブルの一端が固定部に、他端が可動部に接続されることとなる。例えば、カメラ部や照明装置は、一体に動くようにカメラ部と共に回転する回転軸に一体化させている。しかし、カメラ部、照明装置等の配線ケーブルは、カメラ部と共に回転しない固定部の基板に配線されるために、前述したような頻繁に視野を変化させる必要のある監視カメラ装置では、配線ケーブルが捩じれたり、伸縮が繰返されることとなり、断線の原因になったり、接続不良の原因となっている。また、配線ケーブルで接続されるカメラ装置では、パン方向のエンドレス回転を実現することはできない。
【0006】
また、エンドレス回転を実現するためのカメラ装置も実用されている。図5は、従来のスリップリングを用いる方式のカメラ装置の概略構成を示す図である。図5において、501は、可動部、502は、固定部である。可動部501は、進入物体等の被写体を撮像するカメラ部503、カメラ部503で撮像された被写体の映像信号を適宜処理し、伝送するための信号に変換する信号処理部504、カメラ部503を、パン、チルト方向に駆動するカメラ駆動部505およびカメラ部503、信号処理部504、駆動部505に電力を供給するための電源部506等で構成されている。そして、この可動部501は、回転軸(図示せず。)を中心してエンドレス回転が可能である。
【0007】
また、固定部502は、信号処理部504からの映像信号を適宜処理する信号処理部508、I/F(インターフェース)部510および電源部509等で構成されている。この固定部502は、壁や天井あるいは高所に取り付けられている。507は、スリップリングS1、S2、S3であり、従来周知のように固定導体と回転導体(または回転ブラシ)(図示せず。)で構成されている。511は、映像信号あるいは制御信号の入出力端子、512は、電源入力端子である。
【0008】
この動作について簡単に説明する。電源端子512から入力された交流電源は、電源部509で、例えば、直流電源に変換され、スリップリングS3を介して可動部の電源部506に供給される。なお、図5では、図示されていないが、電源部506からはカメラ部503、信号処理部504、駆動部505等にそれぞれ電力が供給されることはいうまでもない。また、入力端子511からカメラ部503および駆動部505の制御信号が入力され、I/F部510を介して信号処理部508に供給され、ここで分離され、スリップリングS2を介してカメラ部503および駆動部505に印加される。この制御信号は、例えば、カメラ部503の光学系のフォーカスの調整や、色バランスの調整、また、駆動部505のパン、チルト角度の調整が行われる。また、カメラ部503で撮像された被写体の映像信号は、信号処理部504で適宜処理され、スリップリングS1を介して信号処理部508に供給され、I/F部510を介して入出力端子511から出力される。
【0009】
以上説明したように、スリップリングを用いたカメラ装置では、カメラ部503を備えた可動部501は、エンドレス旋回が可能であり、監視装置として広範囲をカバーするカメラ装置が実現できる。しかしながら図5に示すように、カメラ部からの映像データや制御データをスリップリングを介して供給する場合、伝送データは、低解像度のアナログデータか、情報量の少ない制御データなどしか伝送が行えず、例えば、高解像度の画像データや大容量のデータ等は、例えば、数MHz〜30MHz程度のデジタル信号で伝送する必要があり、このような高い周波数のデジタル信号をスリップリングを介して伝送することができない問題がある。従って、エンドレス旋回が可能で、高解像度の画像データや大容量のデータ等を伝送することのできるカメラ装置の実現が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−284612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のスリップリングを用いる方法は、伝送データとして低解像度のアナログデータあるいは情報量の少ない制御データなどしか伝送が行えず、高解像度の画像データや大容量のデータを伝送することができない。
【0012】
本発明の目的は、高解像度、高画質の画像データ等を伝送可能にするカメラ装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、エンドレス旋回が可能で、デジタルデータ伝送等が行えるカメラ装置を提供することである。
【0014】
本発明の更に他の目的は、無線伝送を用いたカメラ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のカメラ装置は、固定部と回転軸を中心に回動する可動部を有し、上記固定部には、少なくとも第1の無線部、第1の信号処理部および電源部を有し、上記可動部には、少なくともカメラ部、第2の信号処理部、第2の無線部および上記カメラ部を駆動する駆動部を有し、上記第1の無線部と上記第2の無線部とを電波が伝播する導波管で結合し、上記導波管の導波路を上記可動部の上記回転軸の中心に一致させるように構成される。
【0016】
また、本発明のカメラ装置において、上記第1の無線部と上記第2の無線部のいずれ一方の無線部は、上記導波管の一端に固定され、他方の上記無線部は、上記導波管の他端と所定の間隙だけ離されて支持されるように構成される。
【0017】
また、本発明のカメラ装置において、更に、上記電波の漏洩を防止する遮蔽筒を備え、上記遮蔽筒の軸は、上記導波管の上記導波路の軸に一致させると共に、上記遮蔽筒を上記間隙を覆うように構成する。
【0018】
また、本発明のカメラ装置において、上記遮蔽筒の長さを上記導波管の内部を伝播する電波の管内波長λの約1/4以下に設定される。
【0019】
また、本発明のカメラ装置において、更に、上記固定部は、電源部を有し、上記導波管にスリップリングを設けると共に、上記電源部からの電力は、上記スリップリングを介して上記可動部の少なくとも上記カメラ部、上記第2の信号処理部、上記第2の無線部および上記カメラ部を駆動する駆動部に供給し、上記可動部に設けられた上記カメラ部からの映像信号を上記第2の無線部および上記導波管を介して上記第1の無線部から取り出すように構成される。
【0020】
また、本発明のカメラ装置において、制御信号入力部を有し、上記制御信号は、上記第1の無線部および上記導波管を介して上記第2の無線部から取り出し、上記制御信号を上記導波管を介して伝送する搬送波周波数を上記映像信号を上記導波管を介して伝送する搬送波周波数と異ならせるように構成される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、エンドレス旋回(無限軌道旋回)を取り入れたカメラ装置において、高解像度、かつ高画質のカメラ装置を構築することが可能になる。また、高解像度、高画質の画像データ等を伝送可能にするカメラ装置を提供することである。更に、無線伝送を用いてデジタルデータの伝送が行えるので、高解像度、かつ高画質のカメラシステムを構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を説明するための概略構成を示す図である。
【図2】本発明の無線部の具体的な構成を説明するための図である。
【図3】本発明の映像信号の送信を説明するためのブロック図を示す。
【図4】本発明の映像信号の受信を説明するためのブロック図を示す。
【図5】従来のカメラ装置の一例の概略構成を示す図である。
【図6】本発明で使用するミリ波帯の搬送波信号の送受信波を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施例を図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例の概略構成を示す図である。図1において、101は、監視カメラ装置の支持部(固定部ともいう。)を構成し、支持部101は、例えば、天井102に固定されている。103は、ドーム形状の保護カバーであり、透明あるいは半透明のガラスあるいは樹脂で構成され、支持部101に固定されている。
【0024】
104は、可動部を構成する筐体(可動部ともいう。)であり、支持部101とは、結合軸105で、回転自在に結合されている。即ち、可動部を構成する筐体104は、ベアリング129を介して結合軸105と結合し、駆動部127によりエンドレス旋回(無限軌道旋回)が可能な構成になっている。
【0025】
筐体104には、進入物体等の被写体を撮像するカメラ部120、被写体を拡大するズームレンズ121、カメラ部120で撮像された映像信号を適宜処理し、伝送するための信号処理部122、この映像信号を、例えば、ミリ波帯の搬送波で無線伝送するための無線部123、電波の漏洩を防止する遮蔽筒124、カメラ部120を駆動する駆動部128およびスリップリングの回転導体(または回転ブラシ)130が設けられている。筐体104内に設けられているこれらの部品は、筐体104と適宜固定され、結合軸105の軸200(図2に示す。)を中心に筐体104と共に回動する。なお、筐体104内に設けられるこれらの部品は、代表的なものを示したもので、必要に応じて他の部品等も設けられる。
【0026】
126は、円形の導波管であり、その内部をミリ波帯の搬送波が伝播する。導波管126は、支持部101に固定されている。125は、スリップリングの固定導体で、導波管126の外周部に固定されている。
【0027】
支持部101には、導波管126を伝播するミリ波帯の搬送波信号を受信する無線部110、無線部110からの信号を適宜処理する信号処理部111および電源部112を備えている。113は、映像信号入出力端子、114は、電源入力端子、115は、制御信号等の入出力端子である。なお、支持部101には、上記以外の部品も必要に応じて設けられることはいうまでもない。
【0028】
図1に示す監視カメラ装置の動作について説明する。まず、電源入力端子114に供給された、例えば、交流電圧は、電源部112で直流電圧に変換され、スリップリングの固定導体125および回転導体(または回転ブラシ)130を介してカメラ部120、信号処理部122、無線部123および駆動部127、128等に供給される。なお、上記実施例では、電源部112で直流に変換する場合について説明したが、筐体104内で変換することもできる。また、図1では、電力供給を一部分のみ示してある。また、電力供給は、スリップリングを用いるという理由は、供給できる電力が大きいこと、および、直流あるいは交流の場合であっても周波数が低いため、伝送の障害にならないという理由による。
【0029】
また、カメラ部120で撮像された映像信号は、信号処理部122で所定の信号処理がなされ、無線部123に供給される。無線部123では、映像信号を後述するようにミリ波帯の搬送波信号に変換して導波管126を介して無線部110に伝送される。無線部110では、受信したミリ波帯の搬送波信号をベースバンド信号に変換し、信号処理部111に供給する。信号処理部111では、所定の信号処理を行った後、映像信号出力端子113から後段の伝送路に信号を送出したり、またはモニタ(図示せず。)に監視映像を表示する。
【0030】
更に、制御信号入出力端子115に、例えば、監視センタからの制御信号が入力されると、信号処理部111で適宜処理され、無線部110に供給される。無線部110では、後述するようにミリ波帯の搬送波信号に変換して導波管126を介して無線部123に伝送される。無線部123では、ミリ波帯の搬送波信号をIF信号に変換し、増幅して信号処理部122に供給される。信号処理部122では、IF信号をベースバンドの信号に変換し、制御信号を分離し、カメラ部120およびズームレンズ121の制御を行う。また、駆動部127および128に供給され、パン、チルト方向の制御を行う。
【0031】
次に、無線部110、123、導波管126および遮蔽筒(円筒状)124について、図2を用いて詳細に説明する。図2(A)は、無線部110、123、導波管126および遮蔽筒124の断面図を示し、図2(B)は、図2(A)の線分B−Bから見た平面図を示す。なお、無線部110、123は、導波管126との結合部分のみ示してある。図2において、無線部110は、支持部101に適宜固定されている。そして、無線部123は、中心軸200を軸にして回動できるように構成されている。図2において、201は、金属筐体、202は、後述する無線部の高周波部を構成する半導体回路素子部、203は、誘電体基板、204は、金属筐体201の側面に設けられた電極取出し用機密ピン、205は、半導体回路素子部202の電極と機密ピン204とを接続する配線(金線等のワイヤ)である。207は、金属筐体201を機密に保持するための金属蓋体である。208は、ストリップ線路で、ミリ波帯用のアンテナを構成する。206は、ストリップ線路と半導体回路素子部202とを接続する配線(金線等のワイヤ)である。
【0032】
209は、金属電極、210は、金属筐体201に設けられたスルーホールで、導波管126の導波路212とストリップ線路208とを結合している。211は、金属電極からなる伝送線路である。金属電極211は、導波管126の導波路212と同一形状および寸法、または、導波路212の寸法に誘電体基板203の比誘電率の平方根の逆数を掛けた寸法の形状の開口部を設けてある。図2(A)では、スルーホール210と同じ大きさの円形の開口部を設けている。これによってアンテナを構成するストリップ線路208から導波路212に高周波信号を取り出すことができる。また、導波管126からの高周波信号をストリップ線路208を介して半導体回路素子部202に供給することができる。
【0033】
同様に、無線部123の構成も、無線部110の構成と同様である。即ち、図2において、221は、金属筐体、222は、後述する無線部の高周波部を構成する半導体回路素子部、223は、誘電体基板、224は、金属筐体221の側面に設けられた電極取出し用機密ピン、225は、半導体回路素子部222の電極と機密ピン224とを接続する配線(金線等のワイヤ)である。227は、金属筐体221を機密に保持するための金属蓋体である。228は、ストリップ線路で、ミリ波帯用のアンテナを構成する。226は、ストリップ線路と半導体回路素子部222とを接続する配線である。
【0034】
229は、金属電極、230は、金属筐体221に設けられたスルーホールで、導波管126の導波路212とストリップ線路228とを結合している。231は、金属電極からなる伝送線路である。金属電極231は、導波管126の導波路212と同一形状および寸法、または、導波路212の寸法に誘電体基板223の比誘電率の平方根の逆数を掛けた寸法の形状の開口部を設けてある。図2(A)では、スルーホール230と同じ大きさの円形の開口部を設けている。これによってアンテナを構成するストリップ線路228から導波管126に高周波信号を取り出すことができる。また、導波管126からの高周波信号をストリップ線路228を介して半導体回路素子部222に供給することができる。
【0035】
さて、上述したミリ波帯の搬送波信号を伝送する円形導波管126および遮蔽筒124について説明する。ここで使用されるミリ波帯の周波数は、例えば、1GHz〜60GHz程度の周波数が使用可能である。本実施例では、例えば、2.4GHzのミリ波を用いる場合について説明する。まず、遮蔽筒124は、円筒形状であり、金属筐体221に固定され、金属筐体221と一体になって回転軸200を回転軸として回転する。そして、金属筐体221と遮蔽筒124は、導波管126とは、間隙232で非接触に保持されている。従って、間隙232からは、不要な電波が漏洩し、他の電子機器に悪影響を及ぼしたり、あるいは、他の電子機器からの不要な電波が到来し、映像信号に悪影響を与える場合が考えられる。そのため間隙232から不要な電波の漏洩あるいは不要電波の進入を防ぐ目的で遮蔽筒124が設けられる。この遮蔽筒124の高さHおよび間隙232は、次のように設定される。2.4GHzのミリ波の管内波長λは、次式で示される。
【0036】
λ=v/f=3.0×1011mm/2.4×10Hz=125mm・・・・(1)
間隙231から電波が漏洩しないためには、高さHおよび間隙の幅Rは、λ/4以下にする必要がある。即ち、上記(1)式から31mm以下に設定する必要がある。従って、本実施例では、高さHは、例えば、30mm、間隙の幅Rは、防塵対策も含めて約5mmに設定されている。また、導波管126の内径φは、約30〜40mmの円形導波管126が使用され、また、導波管126の長さは、nλ/4(n:正の整数)に設定される。なお、上述した各部の寸法は、一実施例であり、使用するミリ波の波長およびカメラ装置の構造により種々変更されることはいうまでもない。
【0037】
また、上記実施例では、導波管126は、無線部110に固定された構造とし、無線部123とは、間隙232で分離された実施例について説明した。しかしながら、導波管126を電波が伝播するのは、対称的であるので、導波管126を無線部123に固定することもできる。この場合、無線部110は、導波管126と間隙を介して分離されることはいうまでもない。従って、この場合は、遮蔽筒124は、無線部110に固定されることはいうまでもない。但し、無線部123に導波管126を固定した場合、導波管126は、筐体104と一体になって駆動されるので、駆動力を大きくする必要がある。
【0038】
次に、カメラ部120から無線部123の信号伝送について図3を用いて説明する。図3は、映像信号の処理を示すブロック図である。カメラ部120で、例えば、被写体が撮影された映像信号は、NTSC(National Television System Committee)方式の映像信号に変換されるか、あるいは、Y信号(輝度信号)、C信号(色信号)に分離され、デジタル映像信号に変換され、信号処理部122に供給される。
【0039】
信号処理部122は、エンコーダ部301、IP(Internet Protocol)部302および変調部304で構成されている。エンコーダ部301では、カメラ部120からの映像信号をJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式あるいはMPEG(Moving Pictures Experts Group)方式等の圧縮信号に変換し、IP部302に供給する。IP部302では、エンコーダ部301で圧縮された映像信号を伝送に適したパケット形式の信号に変換し、変調部304に供給する。変調部304では、無線LAN(Local Area Network)に適した中間周波数(IF)に変換し、無線部123に供給する。無線部123は、高周波部305およびアンテナ306で構成されている。高周波部305は、RF(Radio Frequency)部と増幅部で構成され、図2に示される半導体回路素子部222に対応する。RF部では、前述したようにミリ波帯の搬送波信号に変換され、アンテナ306に供給される。アンテナ306は、図2に示されるストリップ線路228に対応する。従って、信号処理部122からの映像信号は、無線部123のストリップ線路228からミリ波帯の搬送波信号として導波路212を伝播し、無線部110のストリップ線路208に供給される。
【0040】
次に、無線部110および信号処理部111について図4を用いて説明する。図4において、無線部110は、アンテナ401および高周波部402で構成され、アンテナ401は、図2に示されるストリップ線路208に対応する。高周波部402は、増幅部およびRF部で構成され、図2に示される半導体回路素子部202に対応する。ストリップ線路208で受信されたミリ波帯の搬送波信号は、RF部で中間周波数に変換され、信号処理部111に供給される。
【0041】
信号処理部111は、復調部403、IP部404およびデコーダ部405で構成される。無線部110で中間周波数に変換された映像信号は、復調部403で復調およびベースバンド信号に変換され、IP部404に供給される。IP部404では、先に説明したIP部302でパケット形式の信号に変換された映像信号を元の映像信号に変換し、デコーダ部405に供給する。デコーダ部405では、先に説明したように、JPEG方式あるいはMPEG方式等の圧縮信号に変換された映像信号を元の映像信号に復号し出力端子113から出力する。
【0042】
次に、制御信号入出力端子115に供給される制御信号について説明する。入出力端子115に供給される制御信号は、信号処理部111で伝送に適した信号に変換され無線部110に供給される。無線部110に供給される制御信号は、ミリ波帯の搬送波信号に変換され、導波管126を介して無線部123に供給される。無線部123では、ミリ波帯の搬送波信号をIF信号に変換し、信号処理部122に供給する。信号処理部122では、IF信号をベースバンド信号に変換すると共に、各制御信号に分離し、カメラ部の光学系のズーム調節、パン、チルト方向の調整等を行う。一方、それぞれの制御信号で制御された結果の情報、例えば、光学系のズーム倍率値、パン、チルトの設定角度等の情報は、信号処理部122、無線部123、導波管126、無線部110、信号処理部111を経由して入出力端子115から出力され、モニタ等に表示される。
【0043】
ここで、映像信号や制御信号の伝送形態について図6を用いて説明する。図6は、ミリ波帯の搬送波信号の送受信波を示す図であって、f軸は、周波数、t軸は、時間を表している。本発明では、搬送波周波数として、2.4GHz帯の周波数を用い、例えば、上り方向(無線部123から無線部110への方向)には、Txの搬送波周波数を用い、下り方向(無線部110から無線部123への方向)には、Rxの搬送波周波数を用いている。なお、上り搬送波周波数Txと下り搬送波周波数Rxとは、約10MHz離れて位置されている。そして、各搬送波周波数TxおよびRxは、それぞれ時分割された複数のチャネル1、2、3、・・・を持ち、異なる信号を伝送できるように構成されている。例えば、上り方向の場合、カメラ部120で撮像された映像信号は、信号処理部122で伝送に必要なフォーマットに変換された後、無線部123で搬送波周波数Txの、例えば、チャネル1で送信される。また、カメラ部のズーム倍率、パン、チルト方向の情報は、信号処理部122で伝送に必要なフォーマットに変換された後、無線部123で搬送波周波数Txの、例えば、チャネル2で送信される。従って、搬送波周波数Txを受信した無線部110は、受信した信号をIF信号に変換し、信号処理部111に供給する。信号処理部111では、チャネル1で送信されてきた映像信号を元の映像信号に変換し、出入力端子113から出力する。また、チャネル2で送られてきた制御に関する情報は、元の信号に変換され制御信号入出力端子115から出力される。
【0044】
一方、制御信号入出力端子115からの制御信号は、信号処理部111で、例えば、振幅変調、周波数変調、または多値変調され、伝送に必要なフォーマットに変換された後、無線部110で搬送波周波数Rxの、例えば、チャネル1で送信される。無線部123では、受信した信号をIF信号に変換し、信号処理部122に供給する。信号処理部122では、受信したチャネル1の信号を復調し、元の制御信号を取り出し、カメラ部のズーム倍率制御、パン、チルト方向の制御等の必要な制御を行う。
【0045】
以上説明したように本発明では、電力供給は、スリップリングで供給されるが、映像データや制御データのような容量の大きいデータは、ミリ波帯の搬送波周波数を利用して導波管を介して伝送され、しかも、エンドレス旋回(無限軌道旋回)できるので、高解像度、高画質の画像データ等を伝送可能にするカメラ装置が実現できる特徴がある。
【0046】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載されたカメラ装置の実施例に限定されるものではなく、上記以外のカメラ装置に広く適応することが出来ることは、いうまでも無い。
【符号の説明】
【0047】
101:支持部、102:天井、103:ドーム形状の保護カバー、104:可動部を構成する筐体、105:結合軸、110、123:無線部、111、122、504、508:信号処理部、112、506、509:電源部、113:映像信号入出力端子、114、512:電源入力端子、115:制御信号入力端子、120、503:カメラ部、121:ズームレンズ、124:遮蔽筒、125:スリップリングの固定導体、126:導波管、127、128、505:駆動部、129:ベアリング、130:スリップリングの回転導体、201、221:金属筐体、202、222:半導体回路素子部、203、223:誘電体基板、204、224:機密ピン、205、206、225、226:配線、207、227:金属蓋体、208、228:ストリップ線路、209、229:金属電極、210、230:スルーホール、211、231:伝送線路、212:導波路、232:間隙、301:エンコーダ部、302、404:IP部、304:変調部、305:高周波部、306、401:アンテナ、403:復調部、405:デコーダ、501可動部、502:固定部、507:スリップリング、I/F部、511:入出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する電源部、および、電波により映像信号および制御信号を送受信する第一の無線部、を備える固定部と、
可動部を駆動する駆動部、映像信号を取得するカメラ部、および、電波により映像信号および制御信号を送受信する第二の無線部、を備える前記可動部とが、
前記第一の無線部と前記第二の無線部との間で電波が伝播する導波管、および、前記電源部からの電力を前記可動部に供給するスリップリング、を備える伝送部によって結合されて、前記固定部と前記可動部とが前記伝送部の回転軸を中心に回動し、
前記第一の無線部は前記制御信号を電波に乗せて前記第二の無線部に向けて送信し、前記第二の無線部は前記映像信号を電波に乗せて前記第一の無線部に向けて送信することを特徴とするカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239416(P2011−239416A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129061(P2011−129061)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【分割の表示】特願2006−14694(P2006−14694)の分割
【原出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】