カラードプラ超音波診断装置
【課題】広帯域超音波を送受信してもクラッタ成分を血流成分から分離すること。
【解決手段】カラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送信する送信回路2と、超音波プローブを介して被検体から超音波エコーを受信して直交検波する受信回路4と、直交検波出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、2次元フィルタの出力に対して第2の直交変換の逆変換と第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニット7と、フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部9とを具備する。
【解決手段】カラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送信する送信回路2と、超音波プローブを介して被検体から超音波エコーを受信して直交検波する受信回路4と、直交検波出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、2次元フィルタの出力に対して第2の直交変換の逆変換と第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニット7と、フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部9とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラードプラ超音波診断装置に係り、特に広帯域に送受信を行った場合に効果的にクラッタ成分を抑圧する信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断におけるカラードプラ法は、生体に超音波を同一方向に複数回照射し、ドプラ効果による偏移周波数により血流成分の速度やパワー、分散といった血流成分情報を抽出するものである。なお、図11に示すように、同一方向に複数回照射したデータの同一地点(同一深度)からの反射エコー信号のデータ列をパケットと呼び、このパケットの方向をドプラ方向と定義する。そして、深さ方向は距離方向と呼ぶ。距離方向のデータをフーリエ変換したものが超音波RF信号の周波数となり、ドプラ方向のデータをフーリエ変換したものがドプラ周波数となる。
【0003】
通常、組織の信号(これをクラッタ成分信号と呼ぶ)の強度は血流成分の信号強度より40〜100dB大きい。組織の中を流れる血流成分を描出するには、組織の信号を落とさなければならないので、ウォールフィルタと呼ばれるハイパスフィルタによって、クラッタ成分信号を抑圧する。この際、装置には、100dB以上のS/Nが要求されることになる。
【0004】
また、生体には周波数依存減衰があり、広帯域で送信を行っても受信信号の周波数は低域に偏ってしまう。つまり、広帯域で送信を行っても、受信時にそのエネルギーをS/N良く利用するのが困難になる。そのために、高いS/Nが要求されるカラードプラにおいては、狭帯域の送受信が行われてきた。
【0005】
しかし、近年は装置のS/Nが向上してきており、カラードプラであってもBモード並みの広帯域で送受信を行って血流成分を微細に表現することが可能になってきている。しかし、広帯域送受信を行った場合には以下の問題が発生する。
【0006】
超音波の周波数をfRF、音速をcとして、反射体が一定速度vでプローブに向かう方向に移動している場合、得られるドプラシフトの周波数fDopは (1)式で表わされる。
【数1】
【0007】
つまり、ドプラ周波数は超音波の周波数に比例するので、例えば2MHzの超音波で得られたドプラ周波数と4MHzの超音波で得られたドプラ周波数は2倍異なるのである。広帯域に送受信した場合の超音波周波数とドプラ周波数の関係を図12の上方に示す。横軸がドプラ周波数で、縦軸が超音波周波数である。あるドプラ周波数、超音波周波数でのドプラ信号の振幅は、図示していない両者に直交する第3の軸で表現されるものとする。血流成分のドプラ周波数とクラッタ成分のドプラ周波数は共に超音波周波数に比例する。
【0008】
従来技術ではドプラ周波数だけに対して信号処理を行うので、図12の上方の周波数軸がひとつに積分されて、血流成分がクラッタ成分と部分的に重なるような信号に対する処理になる。図12下方の横軸はドプラ周波数で縦軸はドプラ信号の振幅である。つまり血流成分とクラッタ成分は分離されていても、周波数軸上では血流成分とクラッタ成分のドプラ周波数が重なっており、もはや分離不可能になる。
【0009】
従来から用いられてきた狭帯域の送受信の場合には、f0の周波数付近しか存在しないために、血流成分とクラッタ成分のドプラ周波数は重ならない。しかし、広帯域の送受信を行うと、血流成分とドプラ周波数が重なってくる場合があるのである。そうなると、ウォールフィルタでクラッタ成分と血流成分を分離できなくなり、クラッタ成分が多い画像になってしまうという問題が発生する。
【0010】
更に、中心周波数f0で広帯域に送信した場合、実際の受信信号は生体での周波数依存減衰の影響を受けて図13のようにf0よりも低い周波数f1で受信されるが、一般的にはf1を知ることはできない。よって、式(1)を変形して、
【数2】
【0011】
において、fRFが不明なので正しい速度vを求めることはできない。従来から用いられてきた狭帯域の送受信の場合には、送信周波数f0と受信周波数f1がほとんど同一であるために、このような問題はなかった。
【0012】
一方、2種類の超音波送受信の周波数を利用する方法が、特許文献1に開示されている。この特許では、異なる超音波送受信周波数を用いて、同一速度の血流成分のドプラ周波数が異なることを利用して折り返し速度を超える速度を推定する方法が開示されている。しかし、クラッタ成分を血流成分から分離することに関しては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2953083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、広帯域の超音波を送受信した場合にクラッタ成分と血流成分のドプラ周波数帯域が広がることにより両者の帯域が重なり、クラッタ成分を血流成分から分離することが困難になり、それによってクラッタ成分の多い血流画像になってしまうという問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換と前記第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第2局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に直交変換を行い、前記直交変換の結果に対して血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛け、前記フィルタの出力に対して前記直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第3局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第4局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットから出力される前記第1の直交変換による周波数成分に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第5局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて、前記第1の直交変換の成分に対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第6局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて、各バンドに対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広帯域の超音波を送受信した場合でも、クラッタ成分を血流成分から効果的に分離してクラッタ成分が抑圧された血流画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカラードプラ超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】図1の2次元フィルタユニットの処理手順を示す図である。
【図3】図1の受信回路から出力される直交検波を受けた複素信号(IQ信号)の2次元周波数特性の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る第1変形例による処理手順を示す流れ図である。
【図5】第1実施形態に係る第2変形例による処理手順を示す流れ図である。
【図6】図5のBPFにおける3種の通過帯域の関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る2次元フィルタユニットの処理手順を示す図である。
【図8】図7において、第1の直交変換によるフーリエ周波数fnと速度Vnとの関係を示す図である。
【図9】図8の折返し解除後の速度Vnを示す図である。
【図10】第1実施形態に係る第2変形例の2次元フィルタユニットの構成を示す図である。
【図11】パケットを示す図である。
【図12】広帯域超音波で送受信を行ったときの従来のバンドパスフィルタリングではクラッタ成分を血流成分から分離できないという問題を示す図である。
【図13】生体での周波数依存減衰による受信周波数を送信周波数とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るカラードプラ超音波診断装置の構成を示している。超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有する。圧電振動子の前側には音響整合層が配置される。圧電振動子の背側にはバッキング材等が配置される。電気的な2次元又は3次元スキャンが可能なように複数の圧電振動子は2次元又は3次元状に配列される。送信回路2は、プローブ1の圧電振動子にパルス信号を印加する。それにより超音波が発生される。超音波プローブ1の圧電振動子は、被検体からの超音波エコーを電気信号に変換する。
【0019】
送信回路2は、操作者によるモード選択に従って、制御ユニット3の制御のもとで送信超音波の帯域を比較的広帯域と比較的狭帯域とで切り替えることができるように構成される。Bモードでは比較的広帯域の超音波が選択される。第1のカラードプラモードでは比較的狭帯域の超音波が選択される。第2のカラードプラモードでは比較的広帯域の超音波が選択される。第2のカラードプラモードで用いられる帯域はBモードでのそれよりも広帯域であってもよい。なお、第1のカラードプラモードで選択される帯域は従来のカラードプラモードのそれと等価である。第1のカラードプラモードでは、従来のそれと同じバンドパスフィルタでクラッタ成分が血流成分から分離される。第2のカラードプラモードでは、本実施形態で特徴的な2次元フィルタでクラッタ成分が血流成分から分離される。詳細は後述する。
【0020】
ここで、超音波の広帯域化について説明する。送信周波数f0の逆数が送信周期T0であり、超音波1周期T0の時間長さを持つ超音波パルスをバースト1波のパルス、2周期「2・T0」の時間長さを持つ超音波パルスをバースト2波のパルス、M周期「M・T0」の時間長さを持つ超音波パルスをバーストM波のパルスとそれぞれ呼び、1波、2波、…M波をバースト波数と呼ぶ。送信周期にバースト波数を掛けた値がパルス長に相当する。典型的には広帯域は、送信周波数f0、バースト波数3未満であるのバースト波数Mの超音波により発生される。狭帯域は、送信周波数f0、バースト波数3以上であるのバースト波数Mの超音波により発生される。なお、広帯域は、必ずしもバースト波数が3未満のパルスによってのみで定義されるものではない。例えば、バースト波のエンベロープ上の半値幅ΔWと周期Tとの比「ΔW/T」で定義してもよい。この比を用いた場合、広帯域は、「ΔW/T」=2.2以下となる。また、超音波のスペクトラムの比帯域=ΔW/fc(ΔW:半値幅、fc:スペクトラム中心周波数)で広帯域の範囲を定義してもよい。この場合、比帯域=ΔW/fc=0.3以上が「広帯域」に相当する。
【0021】
超音波プローブ1から被検体Pに送信された超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。エコー信号は超音波プローブ1で受信される。このエコーの振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0022】
送信回路2は、パルス発生器、送信遅延部およびパルサを有している。パルス発生器は、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延部は、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各チャンネルのレートパルスに与える。パルス発生器は、各チャンネルごとにレートパルスに基づくタイミングでプローブ1に駆動パルスを印加する。
【0023】
受信回路4は、プリアンプ、A/D変換器、受信遅延部、加算器、直交検波回路を有している。プリアンプは、プローブ1を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。受信遅延部は、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後、加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。直交検波回路は、第1、第2カラードプラモードで機能する。直交検波回路は、エコー信号に対して送信超音波と同相の参照信号とミキシングし、またエコー信号に対して送信超音波とπ/2だけ位相の異なる参照信号とミキシングする。この直交検波信号を、以下、IQ信号と称する。
【0024】
Bモード処理ユニット5は、受信回路4のエコー信号から、対数増幅、包絡線検波処理などの処理により、Bモード画像のデータを発生する。
【0025】
受信回路4の出力にはハイパスフィルタ6と2次元フィルタユニット7とが接続される。制御ユニット3の制御により、第1カラードプラモードではハイパスフィルタ6が機能し、第2カラードプラモードでは2次元フィルタユニット7が機能する。ハイパスフィルタ6は、従来と同様のウォールフィルタと呼ばれる時間軸上の1次元のハイパスフィルタによって、クラッタ成分を抑圧し、血流成分を抽出する。2次元フィルタユニット7については後述する。
【0026】
カラードプラ処理ユニット8は、ハイパスフィルタ6又は2次元フィルタユニット7から受け取ったエコー信号のドプラ効果による偏移周波数を取り出し、移動体として主に血流成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流データを多点について個々に求める。ディジタルスキャンコンバータ(DSC)とも呼ばれる座標変換ユニット9は、平均速度画像、分散画像、パワー画像などの血流画像の超音波走査手順に応じた座標系を一般的な直交座標系に変換する。血流画像は、画像合成ユニット10においてBモード画像と合成され、モニタ11に表示される。
【0027】
2次元フィルタユニット7の詳細について以下説明する。本実施形態の2次元フィルタユニット7は、ハイパスフィルタ6では血流成分とクラッタ成分とを分離できなかったほどの広帯域を選択したときであっても、血流成分とクラッタ成分との分離を実現する。ハイパスフィルタ6はドプラ周波数の1次元でしか観測していないが、超音波周波数とドプラ周波数との2次元フィルタリングを着想すると、ハイパスフィルタ6では分離できなかった血流成分とクラッタ成分も分離可能になる。
【0028】
本実施形態では、距離方向に第1の直交変換を行い、ドプラ検出のためのパケット方向に第2の直交変換を行うことで、2次元の直交空間に分割し、その2次元空間上で血流成分とクラッタ成分を分別するフィルタを掛ける。第1の直交変換としては窓関数を掛けた後に離散的フーリエ変換を行う。第2の直交変換としては、離散的フーリエ変換、直交多項式空間への変換、離散的コサイン変換、Karhunen-Loeve変換等の変換を行う。2次元空間上でフィルタを掛けた後に、第2の直交変換の逆変換を行い、更に前記第1の直交変換の逆変換を行い、すべて時間軸に戻した上で、カラードプラ処理ユニット8で速度、パワー、分散を推定する。カラードプラ処理ユニット8の処理は第1、第2カラーモードで共通である。第1の直交変換の逆変換を行わないで、超音波周波数の各帯域毎に速度、パワー、分散を推定し、特に速度に関しては超音波周波数に比例することを利用して、より精度の高い値にすることも可能である。
【0029】
広帯域の送受信を行った場合のカラードプラ超音波診断装置において、1次元方向から見たドプラ周波数からでは分離不可能だった血流成分とクラッタ成分を、本実施形態では超音波周波数というもうひとつの次元を加えることによって、分離が可能となり、従来技術の方法ではクラッタ成分が多く含まれる画像のクラッタ成分を抑圧することが可能になる。
【0030】
更に、広帯域の送受信を行った場合には、生体の周波数依存減衰があるために、一般に受信中心周波数を知ることは困難であり、そのために正確な速度値を推定することが困難であったが、本方式では各周波数毎に分割して速度値を求めるので、正確な速度値を推定することが可能になる。更に、折り返し速度よりも速い速度を推定することが可能になる。
【0031】
上述したとおり、受信回路4の直交検波回路で、周波数f0でミキシングされたIQ信号が発生される。超音波RF信号周波数とドプラ周波数の関係は、超音波IQ信号周波数とドプラ周波数においては図3に示すようになる。
【0032】
図2に示すように、まず、距離方向に第1の直交変換を行う(S1)。次に第1の直交変換を行った結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行う(S2)。第1および第2の直交変換がともに離散的フーリエ変換の場合には、その結果は図3のようになる。RF周波数f0つまりIQ周波数0でのウォールフィルタのカットオフ周波数がドプラ周波数上でfc0とした場合に、IQ周波数fでのカットオフ周波数fc(f)が、
【数3】
【0033】
となるようなハイパスフィルタを構成する(S3)。つまり、図3において、クラッタ部分をカットするようなフィルタである。ここで言うフィルタとは周波数軸上での処理であるので、2次元の各周波数成分に対して適切な係数を乗算することである。次に、第2の直交変換の逆変換を行い(S4)、更に第1の直交変換の逆変換を行う(S5)。こうすることで、信号はクラッタ成分を除去したIQ信号になったので、後は従来技術と同じ手法で自己相関法により速度、分散、パワーを推定することができる(S6)。
【0034】
第1および第2の直交変換が離散的フーリエ変換の場合には、それぞれ1次元の変換を行う代わりに、2次元離散的フーリエ変換を行っても良い。逆変換も2次元離散的逆フーリエ変換を使うことができる。離散的フーリエ変換の場合は、変換の前に窓関数が必要であるので、所定の窓関数を掛けてから変換を行う。
【0035】
ドプラ方向には通常6〜20程度のデータしか存在しない。そのような小さいデータサイズに対して窓関数を掛けて離散的フーリエ変換を行うと、血流成分の感度が低下してしまう。また、離散的フーリエ変換では原理的に観測時間以上の低周波成分を分離できないので、低周波成分からなるクラッタ成分を十分に除去できない。
【0036】
そこで、第2の直交変換として直交多項式空間による変換を行う。直交多項式とはルジャンドル多項式に適切な係数を掛けたものを直交基底とするものである。直交多項式空間を用いてウォールフィルタを構成する方法は、以下の文献に記載されている。
【0037】
Steinar Bjaerum, Hans Torp, “Clutter filter design for ultrasound color flow imaging”,IEEE Transaction on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control, Vol.49, No.2, pp.204-216, Feb., 2002
直交多項式空間の良い点は、周期関数である必要がないので、窓関数が不要な点である。更に、1次の係数とは直線の成分なので、観測時間内である傾きを持った直線に近似できるような遅い動きのクラッタ成分を検出できるので、そのような遅いクラッタ成分を除去することが可能になる。この直交空間はフーリエ周波数空間とは異なるので、図6のようには表現できないが、直交多項式空間の周波数(ここでは直交変換した後の結果を周波数と呼ぶことにする。通常の意味での周波数はフーリエ周波数と記述する。)が、フーリエ空間でどのような周波数を持つかは、Z変換を使えば簡単に対応付けができる。この対応に従って、フーリエ周波数軸でfc(f)となるカットオフ周波数を持つようなフィルタを、「距離方向フーリエ周波数+ドプラ方向直交多項式周波数」の2次元空間で掛けてやれば、クラッタ成分を効果的に除去するフィルタを掛けることができる。
【0038】
それ以外に、第2の直交変換としては、離散的コサイン変換を使用することができる。離散的コサイン変換も周期関数を仮定していないので窓関数が不要である。また、第2の直交変換としては、Karhunen-Loeve変換を使用することができる。Karhunen-Loeve変換は信号の統計的性質から、最大の主成分を含む直交成分に分解する方法である。直交変換には必ず逆変換が存在するので、直交空間の周波数軸上でフィルタを掛けた後に逆変換して元の時間軸に戻すことができる。
【0039】
図4には第1実施形態に関する第1の変形例の手順を示している。この第1の変形例が第1実施形態と相違する点は、第2の直交変換(S2)を行わずに、第2の直交空間上での周波数軸上でのフィルタと等価の処理を時間軸上で行うようなフィルタを第1の直交変換出力の各周波数に対して距離毎に行うことにある(S7、S8、S9)。この方式だと、第1の直交変換に距離方向の離散的フーリエ変換を行い、それぞれの周波数に対して、従来技術のウォールフィルタ(時間軸上のウォールフィルタ)をカットオフ周波数を変えて掛けた出力を加算して(S10)、その後に離散的逆フーリエ変換を行うことになる。第1の実施形態とこの第1変形例は、数学的に等価な処理である。
【0040】
図5には第1実施形態に関する第2の変形例の手順を示している。この第2の変形例が第1実施形態と相違する点は、第1、第2の直交変換(S1、S2)をともに行わずにすべて時間軸の処理であることにある。図6、図10に示すように通過帯域の異なる複数のバンドパスフィルタ(BPF)によってIQ信号を距離ごとに第1の直交変換の周波数帯域のグループに分割する(S11、S12、S13)。その分割した信号に対して後は第1の実施形態の第1変形例と同じ処理を行う。この様子を周波数軸上で示したのが図6である。
【0041】
(第2実施形態)
本実施形態の構成は第1実施形態と同じである。図7に本実施形態による2次元フィルタリング処理の手順を示している。第2の直交変換の逆変換を行うところ(S1〜S4)までは、第1実施形態と同じである。
【0042】
第2の直交変換の逆変換を行った後は、第1の直交変換の逆変換は実施しない。第1の周波数軸上のままで、それぞれの周波数成分において、速度、分散、パワーを推定する(S21、S22、S23)。速度、分散、パワーは、ドプラ周波数軸上のパラメータなので、第1の実施形態と同じ処理で推定が可能である。
【0043】
ここで、第1の直交変換を離散的フーリエ変換とする。なお第2の直交変換の手法には限定はなく、任意の直交変換手法でよい。第1の直交変換のフーリエ周波数がfnの場合に、速度Vn、分散Tn、パワーPnが得られたとする。但し、Vnは自己相関関数の偏角を-0.5から+0.5に範囲に規格化した速度とする。fnとVnをグラフに描くと図8のように折返しが生じる。この折返しを解除(アンラップ)してつなげると図9のようになる。図9の直線の傾きを最小2乗法で求めて、aという値が得られたとすると、(1)式の両辺をPRFで割ったものが規格化速度で、fRF=f0+fnだから、
【数4】
【0044】
よって、図10(b)の直線の傾きaが、
【数5】
【0045】
となる。これより、速度vが以下の式で求められる。
【数6】
【0046】
この速度vは、広帯域の受信エコーを狭帯域に分割して得られた各ドプラ周波数から求めた速度を最小2乗法によって求めたもので、広帯域のドプラ信号から直接求めたものに比べて精度が高いと同時に、折り返し速度以上の速度も得ることが可能である。つまり最終的な速度、分散、パワーは、各フーリエ周波数毎の速度値から最小2乗法によって直線の傾きを求め、その傾きから最終的な速度を求める。図8においてアンラップが正しく得られる程度までは、速い流速を正しく得ることができる。
【0047】
第2実施形態に関する第1、第2変形例としては、第1実施形態の第1、第2の変形例それぞれにおいて、「第2の直交変換を利用した時間軸上のフィルタを掛ける」のブロック以降を、第2実施形態の「自己相関法により速度、分散、パワーを推定する」以降のブロックに置き換えた方法が考えられる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、広帯域の超音波を送受信した場合にクラッタ成分と血流成分のドプラ周波数帯域が広がることにより両者の帯域が重なり、クラッタ成分を血流成分から分離することが困難になり、それによってクラッタ成分の多い血流画像になってしまうという問題を解決することが要求される分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
1…超音波プローブ、2…送信回路、3…制御ユニット、4…受信回路、5…Bモード処理ユニット、6…ハイパスフィルタ、7…2次元フィルタユニット、8…カラードプラ処理ユニット、9…座標変換ユニット、10…画像合成ユニット、11…モニタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラードプラ超音波診断装置に係り、特に広帯域に送受信を行った場合に効果的にクラッタ成分を抑圧する信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断におけるカラードプラ法は、生体に超音波を同一方向に複数回照射し、ドプラ効果による偏移周波数により血流成分の速度やパワー、分散といった血流成分情報を抽出するものである。なお、図11に示すように、同一方向に複数回照射したデータの同一地点(同一深度)からの反射エコー信号のデータ列をパケットと呼び、このパケットの方向をドプラ方向と定義する。そして、深さ方向は距離方向と呼ぶ。距離方向のデータをフーリエ変換したものが超音波RF信号の周波数となり、ドプラ方向のデータをフーリエ変換したものがドプラ周波数となる。
【0003】
通常、組織の信号(これをクラッタ成分信号と呼ぶ)の強度は血流成分の信号強度より40〜100dB大きい。組織の中を流れる血流成分を描出するには、組織の信号を落とさなければならないので、ウォールフィルタと呼ばれるハイパスフィルタによって、クラッタ成分信号を抑圧する。この際、装置には、100dB以上のS/Nが要求されることになる。
【0004】
また、生体には周波数依存減衰があり、広帯域で送信を行っても受信信号の周波数は低域に偏ってしまう。つまり、広帯域で送信を行っても、受信時にそのエネルギーをS/N良く利用するのが困難になる。そのために、高いS/Nが要求されるカラードプラにおいては、狭帯域の送受信が行われてきた。
【0005】
しかし、近年は装置のS/Nが向上してきており、カラードプラであってもBモード並みの広帯域で送受信を行って血流成分を微細に表現することが可能になってきている。しかし、広帯域送受信を行った場合には以下の問題が発生する。
【0006】
超音波の周波数をfRF、音速をcとして、反射体が一定速度vでプローブに向かう方向に移動している場合、得られるドプラシフトの周波数fDopは (1)式で表わされる。
【数1】
【0007】
つまり、ドプラ周波数は超音波の周波数に比例するので、例えば2MHzの超音波で得られたドプラ周波数と4MHzの超音波で得られたドプラ周波数は2倍異なるのである。広帯域に送受信した場合の超音波周波数とドプラ周波数の関係を図12の上方に示す。横軸がドプラ周波数で、縦軸が超音波周波数である。あるドプラ周波数、超音波周波数でのドプラ信号の振幅は、図示していない両者に直交する第3の軸で表現されるものとする。血流成分のドプラ周波数とクラッタ成分のドプラ周波数は共に超音波周波数に比例する。
【0008】
従来技術ではドプラ周波数だけに対して信号処理を行うので、図12の上方の周波数軸がひとつに積分されて、血流成分がクラッタ成分と部分的に重なるような信号に対する処理になる。図12下方の横軸はドプラ周波数で縦軸はドプラ信号の振幅である。つまり血流成分とクラッタ成分は分離されていても、周波数軸上では血流成分とクラッタ成分のドプラ周波数が重なっており、もはや分離不可能になる。
【0009】
従来から用いられてきた狭帯域の送受信の場合には、f0の周波数付近しか存在しないために、血流成分とクラッタ成分のドプラ周波数は重ならない。しかし、広帯域の送受信を行うと、血流成分とドプラ周波数が重なってくる場合があるのである。そうなると、ウォールフィルタでクラッタ成分と血流成分を分離できなくなり、クラッタ成分が多い画像になってしまうという問題が発生する。
【0010】
更に、中心周波数f0で広帯域に送信した場合、実際の受信信号は生体での周波数依存減衰の影響を受けて図13のようにf0よりも低い周波数f1で受信されるが、一般的にはf1を知ることはできない。よって、式(1)を変形して、
【数2】
【0011】
において、fRFが不明なので正しい速度vを求めることはできない。従来から用いられてきた狭帯域の送受信の場合には、送信周波数f0と受信周波数f1がほとんど同一であるために、このような問題はなかった。
【0012】
一方、2種類の超音波送受信の周波数を利用する方法が、特許文献1に開示されている。この特許では、異なる超音波送受信周波数を用いて、同一速度の血流成分のドプラ周波数が異なることを利用して折り返し速度を超える速度を推定する方法が開示されている。しかし、クラッタ成分を血流成分から分離することに関しては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2953083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、広帯域の超音波を送受信した場合にクラッタ成分と血流成分のドプラ周波数帯域が広がることにより両者の帯域が重なり、クラッタ成分を血流成分から分離することが困難になり、それによってクラッタ成分の多い血流画像になってしまうという問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換と前記第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第2局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に直交変換を行い、前記直交変換の結果に対して血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛け、前記フィルタの出力に対して前記直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第3局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第4局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットから出力される前記第1の直交変換による周波数成分に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第5局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて、前記第1の直交変換の成分に対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備する。
本発明の第6局面によるカラードプラ超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、前記フィルタユニットの出力に基づいて、各バンドに対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広帯域の超音波を送受信した場合でも、クラッタ成分を血流成分から効果的に分離してクラッタ成分が抑圧された血流画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカラードプラ超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】図1の2次元フィルタユニットの処理手順を示す図である。
【図3】図1の受信回路から出力される直交検波を受けた複素信号(IQ信号)の2次元周波数特性の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る第1変形例による処理手順を示す流れ図である。
【図5】第1実施形態に係る第2変形例による処理手順を示す流れ図である。
【図6】図5のBPFにおける3種の通過帯域の関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る2次元フィルタユニットの処理手順を示す図である。
【図8】図7において、第1の直交変換によるフーリエ周波数fnと速度Vnとの関係を示す図である。
【図9】図8の折返し解除後の速度Vnを示す図である。
【図10】第1実施形態に係る第2変形例の2次元フィルタユニットの構成を示す図である。
【図11】パケットを示す図である。
【図12】広帯域超音波で送受信を行ったときの従来のバンドパスフィルタリングではクラッタ成分を血流成分から分離できないという問題を示す図である。
【図13】生体での周波数依存減衰による受信周波数を送信周波数とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係るカラードプラ超音波診断装置の構成を示している。超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有する。圧電振動子の前側には音響整合層が配置される。圧電振動子の背側にはバッキング材等が配置される。電気的な2次元又は3次元スキャンが可能なように複数の圧電振動子は2次元又は3次元状に配列される。送信回路2は、プローブ1の圧電振動子にパルス信号を印加する。それにより超音波が発生される。超音波プローブ1の圧電振動子は、被検体からの超音波エコーを電気信号に変換する。
【0019】
送信回路2は、操作者によるモード選択に従って、制御ユニット3の制御のもとで送信超音波の帯域を比較的広帯域と比較的狭帯域とで切り替えることができるように構成される。Bモードでは比較的広帯域の超音波が選択される。第1のカラードプラモードでは比較的狭帯域の超音波が選択される。第2のカラードプラモードでは比較的広帯域の超音波が選択される。第2のカラードプラモードで用いられる帯域はBモードでのそれよりも広帯域であってもよい。なお、第1のカラードプラモードで選択される帯域は従来のカラードプラモードのそれと等価である。第1のカラードプラモードでは、従来のそれと同じバンドパスフィルタでクラッタ成分が血流成分から分離される。第2のカラードプラモードでは、本実施形態で特徴的な2次元フィルタでクラッタ成分が血流成分から分離される。詳細は後述する。
【0020】
ここで、超音波の広帯域化について説明する。送信周波数f0の逆数が送信周期T0であり、超音波1周期T0の時間長さを持つ超音波パルスをバースト1波のパルス、2周期「2・T0」の時間長さを持つ超音波パルスをバースト2波のパルス、M周期「M・T0」の時間長さを持つ超音波パルスをバーストM波のパルスとそれぞれ呼び、1波、2波、…M波をバースト波数と呼ぶ。送信周期にバースト波数を掛けた値がパルス長に相当する。典型的には広帯域は、送信周波数f0、バースト波数3未満であるのバースト波数Mの超音波により発生される。狭帯域は、送信周波数f0、バースト波数3以上であるのバースト波数Mの超音波により発生される。なお、広帯域は、必ずしもバースト波数が3未満のパルスによってのみで定義されるものではない。例えば、バースト波のエンベロープ上の半値幅ΔWと周期Tとの比「ΔW/T」で定義してもよい。この比を用いた場合、広帯域は、「ΔW/T」=2.2以下となる。また、超音波のスペクトラムの比帯域=ΔW/fc(ΔW:半値幅、fc:スペクトラム中心周波数)で広帯域の範囲を定義してもよい。この場合、比帯域=ΔW/fc=0.3以上が「広帯域」に相当する。
【0021】
超音波プローブ1から被検体Pに送信された超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。エコー信号は超音波プローブ1で受信される。このエコーの振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0022】
送信回路2は、パルス発生器、送信遅延部およびパルサを有している。パルス発生器は、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延部は、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各チャンネルのレートパルスに与える。パルス発生器は、各チャンネルごとにレートパルスに基づくタイミングでプローブ1に駆動パルスを印加する。
【0023】
受信回路4は、プリアンプ、A/D変換器、受信遅延部、加算器、直交検波回路を有している。プリアンプは、プローブ1を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。受信遅延部は、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後、加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。直交検波回路は、第1、第2カラードプラモードで機能する。直交検波回路は、エコー信号に対して送信超音波と同相の参照信号とミキシングし、またエコー信号に対して送信超音波とπ/2だけ位相の異なる参照信号とミキシングする。この直交検波信号を、以下、IQ信号と称する。
【0024】
Bモード処理ユニット5は、受信回路4のエコー信号から、対数増幅、包絡線検波処理などの処理により、Bモード画像のデータを発生する。
【0025】
受信回路4の出力にはハイパスフィルタ6と2次元フィルタユニット7とが接続される。制御ユニット3の制御により、第1カラードプラモードではハイパスフィルタ6が機能し、第2カラードプラモードでは2次元フィルタユニット7が機能する。ハイパスフィルタ6は、従来と同様のウォールフィルタと呼ばれる時間軸上の1次元のハイパスフィルタによって、クラッタ成分を抑圧し、血流成分を抽出する。2次元フィルタユニット7については後述する。
【0026】
カラードプラ処理ユニット8は、ハイパスフィルタ6又は2次元フィルタユニット7から受け取ったエコー信号のドプラ効果による偏移周波数を取り出し、移動体として主に血流成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流データを多点について個々に求める。ディジタルスキャンコンバータ(DSC)とも呼ばれる座標変換ユニット9は、平均速度画像、分散画像、パワー画像などの血流画像の超音波走査手順に応じた座標系を一般的な直交座標系に変換する。血流画像は、画像合成ユニット10においてBモード画像と合成され、モニタ11に表示される。
【0027】
2次元フィルタユニット7の詳細について以下説明する。本実施形態の2次元フィルタユニット7は、ハイパスフィルタ6では血流成分とクラッタ成分とを分離できなかったほどの広帯域を選択したときであっても、血流成分とクラッタ成分との分離を実現する。ハイパスフィルタ6はドプラ周波数の1次元でしか観測していないが、超音波周波数とドプラ周波数との2次元フィルタリングを着想すると、ハイパスフィルタ6では分離できなかった血流成分とクラッタ成分も分離可能になる。
【0028】
本実施形態では、距離方向に第1の直交変換を行い、ドプラ検出のためのパケット方向に第2の直交変換を行うことで、2次元の直交空間に分割し、その2次元空間上で血流成分とクラッタ成分を分別するフィルタを掛ける。第1の直交変換としては窓関数を掛けた後に離散的フーリエ変換を行う。第2の直交変換としては、離散的フーリエ変換、直交多項式空間への変換、離散的コサイン変換、Karhunen-Loeve変換等の変換を行う。2次元空間上でフィルタを掛けた後に、第2の直交変換の逆変換を行い、更に前記第1の直交変換の逆変換を行い、すべて時間軸に戻した上で、カラードプラ処理ユニット8で速度、パワー、分散を推定する。カラードプラ処理ユニット8の処理は第1、第2カラーモードで共通である。第1の直交変換の逆変換を行わないで、超音波周波数の各帯域毎に速度、パワー、分散を推定し、特に速度に関しては超音波周波数に比例することを利用して、より精度の高い値にすることも可能である。
【0029】
広帯域の送受信を行った場合のカラードプラ超音波診断装置において、1次元方向から見たドプラ周波数からでは分離不可能だった血流成分とクラッタ成分を、本実施形態では超音波周波数というもうひとつの次元を加えることによって、分離が可能となり、従来技術の方法ではクラッタ成分が多く含まれる画像のクラッタ成分を抑圧することが可能になる。
【0030】
更に、広帯域の送受信を行った場合には、生体の周波数依存減衰があるために、一般に受信中心周波数を知ることは困難であり、そのために正確な速度値を推定することが困難であったが、本方式では各周波数毎に分割して速度値を求めるので、正確な速度値を推定することが可能になる。更に、折り返し速度よりも速い速度を推定することが可能になる。
【0031】
上述したとおり、受信回路4の直交検波回路で、周波数f0でミキシングされたIQ信号が発生される。超音波RF信号周波数とドプラ周波数の関係は、超音波IQ信号周波数とドプラ周波数においては図3に示すようになる。
【0032】
図2に示すように、まず、距離方向に第1の直交変換を行う(S1)。次に第1の直交変換を行った結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行う(S2)。第1および第2の直交変換がともに離散的フーリエ変換の場合には、その結果は図3のようになる。RF周波数f0つまりIQ周波数0でのウォールフィルタのカットオフ周波数がドプラ周波数上でfc0とした場合に、IQ周波数fでのカットオフ周波数fc(f)が、
【数3】
【0033】
となるようなハイパスフィルタを構成する(S3)。つまり、図3において、クラッタ部分をカットするようなフィルタである。ここで言うフィルタとは周波数軸上での処理であるので、2次元の各周波数成分に対して適切な係数を乗算することである。次に、第2の直交変換の逆変換を行い(S4)、更に第1の直交変換の逆変換を行う(S5)。こうすることで、信号はクラッタ成分を除去したIQ信号になったので、後は従来技術と同じ手法で自己相関法により速度、分散、パワーを推定することができる(S6)。
【0034】
第1および第2の直交変換が離散的フーリエ変換の場合には、それぞれ1次元の変換を行う代わりに、2次元離散的フーリエ変換を行っても良い。逆変換も2次元離散的逆フーリエ変換を使うことができる。離散的フーリエ変換の場合は、変換の前に窓関数が必要であるので、所定の窓関数を掛けてから変換を行う。
【0035】
ドプラ方向には通常6〜20程度のデータしか存在しない。そのような小さいデータサイズに対して窓関数を掛けて離散的フーリエ変換を行うと、血流成分の感度が低下してしまう。また、離散的フーリエ変換では原理的に観測時間以上の低周波成分を分離できないので、低周波成分からなるクラッタ成分を十分に除去できない。
【0036】
そこで、第2の直交変換として直交多項式空間による変換を行う。直交多項式とはルジャンドル多項式に適切な係数を掛けたものを直交基底とするものである。直交多項式空間を用いてウォールフィルタを構成する方法は、以下の文献に記載されている。
【0037】
Steinar Bjaerum, Hans Torp, “Clutter filter design for ultrasound color flow imaging”,IEEE Transaction on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control, Vol.49, No.2, pp.204-216, Feb., 2002
直交多項式空間の良い点は、周期関数である必要がないので、窓関数が不要な点である。更に、1次の係数とは直線の成分なので、観測時間内である傾きを持った直線に近似できるような遅い動きのクラッタ成分を検出できるので、そのような遅いクラッタ成分を除去することが可能になる。この直交空間はフーリエ周波数空間とは異なるので、図6のようには表現できないが、直交多項式空間の周波数(ここでは直交変換した後の結果を周波数と呼ぶことにする。通常の意味での周波数はフーリエ周波数と記述する。)が、フーリエ空間でどのような周波数を持つかは、Z変換を使えば簡単に対応付けができる。この対応に従って、フーリエ周波数軸でfc(f)となるカットオフ周波数を持つようなフィルタを、「距離方向フーリエ周波数+ドプラ方向直交多項式周波数」の2次元空間で掛けてやれば、クラッタ成分を効果的に除去するフィルタを掛けることができる。
【0038】
それ以外に、第2の直交変換としては、離散的コサイン変換を使用することができる。離散的コサイン変換も周期関数を仮定していないので窓関数が不要である。また、第2の直交変換としては、Karhunen-Loeve変換を使用することができる。Karhunen-Loeve変換は信号の統計的性質から、最大の主成分を含む直交成分に分解する方法である。直交変換には必ず逆変換が存在するので、直交空間の周波数軸上でフィルタを掛けた後に逆変換して元の時間軸に戻すことができる。
【0039】
図4には第1実施形態に関する第1の変形例の手順を示している。この第1の変形例が第1実施形態と相違する点は、第2の直交変換(S2)を行わずに、第2の直交空間上での周波数軸上でのフィルタと等価の処理を時間軸上で行うようなフィルタを第1の直交変換出力の各周波数に対して距離毎に行うことにある(S7、S8、S9)。この方式だと、第1の直交変換に距離方向の離散的フーリエ変換を行い、それぞれの周波数に対して、従来技術のウォールフィルタ(時間軸上のウォールフィルタ)をカットオフ周波数を変えて掛けた出力を加算して(S10)、その後に離散的逆フーリエ変換を行うことになる。第1の実施形態とこの第1変形例は、数学的に等価な処理である。
【0040】
図5には第1実施形態に関する第2の変形例の手順を示している。この第2の変形例が第1実施形態と相違する点は、第1、第2の直交変換(S1、S2)をともに行わずにすべて時間軸の処理であることにある。図6、図10に示すように通過帯域の異なる複数のバンドパスフィルタ(BPF)によってIQ信号を距離ごとに第1の直交変換の周波数帯域のグループに分割する(S11、S12、S13)。その分割した信号に対して後は第1の実施形態の第1変形例と同じ処理を行う。この様子を周波数軸上で示したのが図6である。
【0041】
(第2実施形態)
本実施形態の構成は第1実施形態と同じである。図7に本実施形態による2次元フィルタリング処理の手順を示している。第2の直交変換の逆変換を行うところ(S1〜S4)までは、第1実施形態と同じである。
【0042】
第2の直交変換の逆変換を行った後は、第1の直交変換の逆変換は実施しない。第1の周波数軸上のままで、それぞれの周波数成分において、速度、分散、パワーを推定する(S21、S22、S23)。速度、分散、パワーは、ドプラ周波数軸上のパラメータなので、第1の実施形態と同じ処理で推定が可能である。
【0043】
ここで、第1の直交変換を離散的フーリエ変換とする。なお第2の直交変換の手法には限定はなく、任意の直交変換手法でよい。第1の直交変換のフーリエ周波数がfnの場合に、速度Vn、分散Tn、パワーPnが得られたとする。但し、Vnは自己相関関数の偏角を-0.5から+0.5に範囲に規格化した速度とする。fnとVnをグラフに描くと図8のように折返しが生じる。この折返しを解除(アンラップ)してつなげると図9のようになる。図9の直線の傾きを最小2乗法で求めて、aという値が得られたとすると、(1)式の両辺をPRFで割ったものが規格化速度で、fRF=f0+fnだから、
【数4】
【0044】
よって、図10(b)の直線の傾きaが、
【数5】
【0045】
となる。これより、速度vが以下の式で求められる。
【数6】
【0046】
この速度vは、広帯域の受信エコーを狭帯域に分割して得られた各ドプラ周波数から求めた速度を最小2乗法によって求めたもので、広帯域のドプラ信号から直接求めたものに比べて精度が高いと同時に、折り返し速度以上の速度も得ることが可能である。つまり最終的な速度、分散、パワーは、各フーリエ周波数毎の速度値から最小2乗法によって直線の傾きを求め、その傾きから最終的な速度を求める。図8においてアンラップが正しく得られる程度までは、速い流速を正しく得ることができる。
【0047】
第2実施形態に関する第1、第2変形例としては、第1実施形態の第1、第2の変形例それぞれにおいて、「第2の直交変換を利用した時間軸上のフィルタを掛ける」のブロック以降を、第2実施形態の「自己相関法により速度、分散、パワーを推定する」以降のブロックに置き換えた方法が考えられる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、広帯域の超音波を送受信した場合にクラッタ成分と血流成分のドプラ周波数帯域が広がることにより両者の帯域が重なり、クラッタ成分を血流成分から分離することが困難になり、それによってクラッタ成分の多い血流画像になってしまうという問題を解決することが要求される分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
1…超音波プローブ、2…送信回路、3…制御ユニット、4…受信回路、5…Bモード処理ユニット、6…ハイパスフィルタ、7…2次元フィルタユニット、8…カラードプラ処理ユニット、9…座標変換ユニット、10…画像合成ユニット、11…モニタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換と前記第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項2】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に直交変換を行い、前記直交変換の結果に対して血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛け、前記フィルタの出力に対して前記直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項3】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットから出力される前記第1の直交変換による周波数成分に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項5】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて、前記第1の直交変換の成分に対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて、各バンドに対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項7】
前記第1の直交変換および前記第2の直交変換は離散的フーリエ変換であることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項8】
前記第1、第2の直交変換および逆変換は離散的2次元フーリエ変換および離散的2次元逆フーリエ変換により一度に行われることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項9】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換に直交多項式を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項10】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換に離散的コサイン変換を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項11】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換にKarhunen-Loeve変換を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項12】
前記最終的な速度、分散、パワーは、各フーリエ周波数毎の速度値から最小2乗法によって直線の傾きを求め、その傾きから最終的な速度を求めることを特徴とする請求項5記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換と前記第1の直交変換の逆変換とを順に行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項2】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に直交変換を行い、前記直交変換の結果に対して血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛け、前記フィルタの出力に対して前記直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項3】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットから出力される前記第1の直交変換による周波数成分に基づいて血流成分情報を計算する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項5】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向に第1の直交変換を行い、前記第1の直交変換の結果に対してドプラ方向に第2の直交変換を行い、得られた周波数データから血流成分を抽出するために2次元フィルタを掛け、前記2次元フィルタの出力に対して前記第2の直交変換の逆変換を行うフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて、前記第1の直交変換の成分に対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体との間で超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部の出力を直交検波する直交検波部と、
前記直交検波部の出力に対して距離方向にバンドパスフィルタを掛けて、前記バンドパスフィルタの結果から血流成分を抽出するために距離ごとにフィルタ特性の異なる時間軸上のフィルタをドプラ方向に掛けるフィルタユニットと、
前記フィルタユニットの出力に基づいて、各バンドに対して、速度、分散、パワー等の血流成分情報を推定し、それらを元に最終的な速度、分散、パワーを推定する血流成分情報計算部とを具備することを特徴とするカラードプラ超音波診断装置。
【請求項7】
前記第1の直交変換および前記第2の直交変換は離散的フーリエ変換であることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項8】
前記第1、第2の直交変換および逆変換は離散的2次元フーリエ変換および離散的2次元逆フーリエ変換により一度に行われることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項9】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換に直交多項式を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項10】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換に離散的コサイン変換を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項11】
前記第1の直交変換に離散的フーリエ変換、前記第2の直交変換にKarhunen-Loeve変換を用いることを特徴とする請求項1記載のカラードプラ超音波診断装置。
【請求項12】
前記最終的な速度、分散、パワーは、各フーリエ周波数毎の速度値から最小2乗法によって直線の傾きを求め、その傾きから最終的な速度を求めることを特徴とする請求項5記載のカラードプラ超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−125635(P2011−125635A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289634(P2009−289634)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]