説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することで形成され、表面が平坦な着色層を有し、輝度およびコントラストに優れたカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に形成され開口部を備える遮光部と、開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、基板上に遮光部用パターンを形成する工程、遮光部用パターンを100℃〜190℃の温度で加熱する低温ベイク工程、及び、遮光部用パターン表面に撥インクを付与する工程、を少なくとも有し、シュリンク前遮光部形成工程と、開口部にインクジェット法による着色層用パターン形成工程と、着色層ベイク工程と、着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、低温ベイク工程より50℃〜150℃高い温度で加熱し、シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成する工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することで形成され、表面が平坦である着色層を有するカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、このカラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来より行われているカラーフィルタの一般的な製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を製膜し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法が挙げられる。この方法においては、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0006】
しかしながら、上記いずれの方法も、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、露光や現像等、多数の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。またさらに、現像の際に用いられる薬品等によって、他の部材が劣化してしまう場合がある等の問題もあった。
【0007】
そこで、例えば基板上に、光触媒と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する材料とを含有する光触媒含有層形成用塗工液を用いて光触媒含有層を形成し、この光触媒含有層をパターン状に露光することにより、特性が変化したパターンを形成し、着色層をインクジェット法により形成するカラーフィルタの製造方法が提案されている(特許文献1)。また例えば、基板上に着色層を形成する着色層形成用塗工液を留めるためのバンクを形成し、このバンクにフッ素化合物を導入ガスとしてプラズマを照射することによりバンクを撥インク性として、インクジェット法等により着色層等の機能性部を形成する方法も提案されている(特許文献2)。
【0008】
これらの方法によれば、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層を形成することが可能であることから、複雑な工程を繰り返す必要がなく、製造効率がよいという利点を有している。また現像液等を用いる必要がないことから、部材の劣化等が生じるおそれもないものとすることができる。
【0009】
しかしながら、インクジェット法により着色層形成用塗工液を吐出して着色層を形成した場合、形成される着色層の表面は平坦なものとならず、通常、凸状となる。このため、輝度およびコントラストが低下するといった問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開2001−074928号公報
【特許文献2】特開2000−187111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされてものであり、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することで形成され、表面が平坦である着色層を有し、輝度およびコントラストに優れたカラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、インクジェット法により着色層形成用塗工液が塗布されて形成される着色層は、遮光部の膜厚により、表面形状が変化することが分かった。
すなわち、図2に示すように、基板1上に形成された遮光部2が備える開口部に同一量の着色層形成用塗工液がインクジェット法により塗布されて着色層3が形成された場合、膜厚が薄い遮光部2が備える開口部に形成された着色層3(図2(b))に比べ、膜厚が厚い遮光部2が備える開口部に形成された着色層3(図2(a))は、その表面が平坦なものとなることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0013】
すなわち、本発明は、基板と、上記基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、上記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記基板上に、開口部を備える遮光部用パターンを形成する遮光部用パターン形成工程、上記遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、および、上記遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与する撥インク化工程、を少なくとも有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、上記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、上記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、上記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、上記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、上記低温ベイク工程を行なうことにより、上記着色層用パターン形成工程において着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚を厚いものとすることができる。このため、形成される着色層の表面を平坦なものとすることができる。その結果、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタを輝度およびコントラストに優れるものとすることができる。
また、上記シュリンク工程におけるシュリンク前遮光部の加熱温度を、上述した温度とすることにより、シュリンク前遮光部をシュリンクさせることにより得られる遮光部の膜厚を抑制することができる。これにより、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に問題無く組み立てを行なうことができる。
さらに、上記低温ベイク工程における遮光部用パターンの加熱温度を100℃〜190℃の範囲内とすることにより、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができる。
【0015】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、上記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記基板上に、撥インク剤を含み、開口部を備え、撥インク性を有する撥インク化遮光部用パターンを形成する撥インク化遮光部用パターン形成工程、および、上記撥インク化遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、を有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、上記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、上記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、上記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、上記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、上記低温ベイク工程を行なうことにより、上記着色層用パターン形成工程において着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚を厚いものとすることができる。このため、形成される着色層の表面を平坦なものとすることができる。その結果、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタを輝度およびコントラストに優れるものとすることができる。
また、上記シュリンク工程におけるシュリンク前遮光部の加熱温度を、上述した温度とすることにより、シュリンク前遮光部をシュリンクさせることにより得られる遮光部の膜厚を抑制することができる。これにより、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に問題無く組み立てを行なうことができる。
さらに、上記低温ベイク工程における遮光部用パターンの加熱温度を100℃〜190℃の範囲内とすることにより、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができる。
さらにまた、上記撥インク化遮光部用パターン形成工程を有することにより、上記遮光部用パターンを撥インク化するための工程を不要なものとすることができる。このため、コストの低減を図ることができる。
【0017】
本発明においては、上記着色層ベイク工程および上記シュリンク工程が同一工程であることが好ましい。工程数を少ないものとすることができ、コストの低減を図ることができるからである。
【0018】
上記着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚が、上記遮光部の膜厚の105%〜130%の範囲内であることが好ましい。上記着色層の表面を十分に平坦なものとすることができるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布することで形成され、表面が平坦である着色層を有し、輝度およびコントラストに優れたカラーフィルタの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、遮光部に対する撥インク性の付与方法により2つの態様に分けることができる。以下、本発明のカラーフィルタの製造方法を、各態様に分けて説明する。
【0021】
1.第1態様
まず、本発明のカラーフィルタの製造方法の第1態様について説明する。本態様のカラーフィルタの製造方法は、基板と、上記基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、上記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタとする製造方法であって、上記基板上に、開口部を備える遮光部用パターンを形成する遮光部用パターン形成工程、上記遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、および、上記遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与する撥インク化工程、を少なくとも有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、上記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、上記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、上記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、上記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、を有することを特徴とする態様である。
【0022】
このような本態様のカラーフィルタの製造方法について図を参照して説明する。図1に例示するように、本態様のカラーフィルタの製造方法は、例えば、基板1上に、遮光部を形成する材料を含む遮光部形成用塗工液を塗布し、遮光部形成用層22を形成し(図1(a))、次いで、パターン状に露光し、現像することにより、基板1上にパターン状に形成された遮光部用パターン12´を形成し(図1(b))、その後、140℃で加熱し(図1(c))、次いで、フッ素ガスを導入ガスとしたプラズマ処理を行い、上記遮光部用パターン12´の表面を撥インク化し、シュリンク前遮光部を形成する(図1(d))。その後、図1(e)に示すように、上記シュリンク前遮光部12が備える開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターン13を形成する。次いで、図1(f)に示すように、上記シュリンク前遮光部12および着色層用パターン13を230℃で加熱することにより、上記シュリンク前遮光部がシュリンクされた遮光部2および着色層3を形成し、カラーフィルタ10を形成するものである(図1(g))。
ここで、(a)〜(b)が遮光部用パターン形成工程であり、(c)が低温ベイク工程であり、(d)が撥インク化工程であり、(a)〜(d)がシュリンク前遮光部形成工程である。また、(e)が着色層用パターン形成工程であり、(f)が着色層ベイク工程およびシュリンク工程である。
【0023】
本態様によれば、上記低温ベイク工程を行なうことにより、上記着色層用パターン形成工程において、着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚を厚いものとすることができる。このため、上記着色層用パターン形成工程において、形成される着色層の表面を平坦なものとすることができる。その結果、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタを輝度およびコントラストに優れるものとすることができる。
また、上記シュリンク工程におけるシュリンク前遮光部の加熱温度を、上述した温度とすることにより、シュリンク前遮光部をシュリンクさせることにより得られる遮光部の膜厚を抑制することができる。これにより、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に問題無く組み立てを行なうことができる。
【0024】
さらに、上記低温ベイク工程における遮光部用パターンの加熱温度を100℃〜190℃の範囲内とすることにより、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができる。具体的には、上記遮光部用パターン形成工程が、溶剤を含む遮光部形成用塗工液を用いたフォトリソグラフィー法により上記遮光部用パターンを形成する場合において、上記シュリンク前遮光部に含まれる残留溶剤を少ないものとすることができる。このため、上記着色層用パターン形成工程において、着色層形成用塗工液に、上記シュリンク前遮光部が溶解することを抑制することができる。このため、上記遮光部を着色層との混色が無いものとすることができる。また、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れたものとすることができる。さらに、上記遮光部用パターン形成工程が、転写法により上記遮光部用パターンを形成する場合においては、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れたものとすることができ、さらに現像時に付着した水分等の除去を十分に行うことができる。
【0025】
ここで、上記着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚を厚いものとすることにより、形成される着色層の表面を平坦なものとすることができる理由は以下のように推測される。
【0026】
すなわち、インクジェット法により着色層形成用塗工液が塗布された際に、開口部を囲む遮光部の膜厚が高い場合には、その壁面に沿って、遮光部壁面近傍の着色層形成用塗工液が吸着する。このため、上記着色層形成用塗工液の表面が、上記遮光部の壁面に沿って、持ち上げられる状態となる。
したがって、図3に示すように、同量の着色層形成用塗工液が塗布された場合であっても、遮光部の膜厚が高い(図3中のHの場合)場合における着色層形成用塗工液の表面形状(図3中の実線a)は、遮光部の膜厚が低い(図3中のhの場合)場合における着色層形成用塗工液の表面形状(図3中の破線b)に比べて、凸形状が緩和されることになる。
【0027】
ここで、従来のカラーフィルタの製造方法は、図4に例示するように、基板101上に、遮光部を形成する材料を含む遮光部形成用塗工液を塗布し、遮光部形成用層122を形成し(図4(a))、次いで、パターン状に露光し、現像することにより、基板101上にパターン状に形成された遮光部用パターン112´を形成し(図4(b))、その後、230℃程度の温度で加熱しシュリンク済み遮光部を形成し(図4(c))、次いで、フッ素ガスを導入ガスとしたプラズマ処理を行い、上記シュリンク済み遮光部112の表面を撥インク化し、遮光部を形成する(図4(d))。その後、図4(e)に示すように、遮光部102が備える開口部にインクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターン113を形成する。次いで、図4(f)に示すように、上記着色層用パターン113を加熱し、着色層を形成し、着色層103を備えるカラーフィルタ100を形成するものである(図4(g))。
【0028】
このように、従来のカラーフィルタの製造方法では、上記着色層形成用塗工液を塗布する際の遮光部は、膜厚の薄いものとなっている。このため、上記着色層形成用塗工液の上記遮光部壁面への持ち上げが少ないものとなり、上記着色層形成用塗工液表面の凸形状が大きいものとなる。
【0029】
一方、本態様においては、上記低温ベイク工程を有するものである。この低温ベイク工程においては、上記遮光部の形成において通常行なわれるポストベーク温度よりも低い温度で加熱されるため、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができるが、上記遮光部を形成する材料の緻密化によるシュリンク(収縮)を抑制することができる。このため、上記着色層形成用塗工液を塗布する際の遮光部であるシュリンク前遮光部を、膜厚の高いものとすることができる。
したがって、上記着色層用パターン形成工程において、インクジェット法により塗布された着色層形成用塗工液は、膜厚の厚い上記シュリンク前遮光部の壁面に沿って持ち上げられることが可能となり、その表面の凸形状が緩和される。また、このような表面形状の着色層形成用塗工液からなる塗膜を乾燥させることにより、表面が平坦な着色層とすることができるのである。
【0030】
本態様のカラーフィルタの製造方法は、シュリンク前遮光部形成工程と、着色層用パターン形成工程と、着色層ベイク工程と、シュリンク工程と、を少なくとも有するものである。
また、上記シュリンク工程より前に、上記遮光部用パターンまたはシュリンク前遮光部が、上記シュリンク工程における加熱温度以上の温度で加熱処理がされないものである。高温で加熱処理されると上記遮光部用パターンまたはシュリンク前遮光部がシュリンク(収縮)し、上記着色層用パターン形成工程を行なう際における上記シュリンク前遮光部の膜厚が低いものとなり、本発明の効果を発揮することができないからである。
以下、本態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0031】
(1)シュリンク前遮光部形成工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク前遮光部形成工程は、遮光部用パターン形成工程、低温ベイク工程、および、撥インク化工程を有し、シュリンク前遮光部を形成する工程である。
【0032】
(a)遮光部用パターン形成工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク前遮光部形成工程に含まれる遮光部用パターン形成工程は、上記基板上に、開口部を備える遮光部用パターンを形成する工程である。
【0033】
このような遮光部用パターンを形成する方法としては、所望のパターンに遮光部用パターンを精度良く形成することができる方法であれば良く、例えば、フォトリソグラフィー法や、転写法等を挙げることができるが、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。
なお、転写法により、上記遮光部用パターンを形成する方法としては、転写法により遮光部を形成する場合に一般的に用いられる材料を、後述する基板に転写した後、パターン露光および現像を行う方法であっても良く、後述する基板にパターン状に転写する方法であっても良いが、通常、前者の方法が用いられる。
【0034】
ここで、フォトリソグラフィー法により、上記遮光部用パターンを形成する方法としては、具体的には、基板上に、遮光部形成用塗工液を塗布することにより遮光部形成用層を形成し、次いで、上記遮光部形成用層をパターン状に露光するパターン露光を行い、さらに現像する方法を挙げることができる。
【0035】
(i)遮光部形成用塗工液
本工程に用いられる遮光部形成用塗工液としては、上記遮光部を形成した際に、所望の遮光性を発揮する材料を含むものであれば良く、フォトリソグラフィー法による遮光部の形成に一般的に用いられるものを使用することができる。具体的には、遮光材料および感光性を有する樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを挙げることができる。
【0036】
上記樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等を用いることができる。
【0037】
上記遮光材料としては、一般的なカラーフィルタの樹脂製遮光部に用いられる材料を用いることができる。このような遮光材料としては、例えば、カーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子等を挙げることができる。
【0038】
上記溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
溶剤としては、上記の中でも、グリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、およびジエチレングリコール類が好ましい。特に、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルアミルケトン、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテルが好ましい。
【0040】
また、必要に応じて、多官能性モノマー、光重合開始剤、分散剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、および難燃剤等を含むものであっても良い。
【0041】
(ii)基板
本工程に用いられる基板としては、上記遮光部を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、従来よりカラーフィルタに用いられているものを用いることができる。このような基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明な無機基板、および、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明な樹脂基板等を挙げることができる。なかでも本工程において無機基板を用いることが好ましく、無機基板のなかでもガラス基板を用いることが好ましい。さらには、上記ガラス基板のなかでも無アルカリタイプのガラス基板を用いることが好ましい。上記無アルカリタイプのガラス基板は寸度安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、かつ、ガラス中にアルカリ成分を含まないことから、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに好適に用いることができるからである。
【0042】
上記基板は、透明な基板であってもよく、または、反射性の基板や白色に着色したものであってもよいが、本工程において、通常、透明なものが用いられる。
【0043】
また、上記基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。このような表面処理としては例えば表面を、上記シュリンク前遮光部よりも親インク性、すなわち、上記着色層形成用塗工液に対する接触角が低いものとするために、酸素ガスを導入ガスとしたプラズマ照射を挙げることができる。
【0044】
ここで、親インク性とは、後述する着色層形成用塗工液との接触角が小さいことを意味するものである。
【0045】
具体的には、40mN/mの液体との接触角が9°未満となる程度であることが好ましく、特に表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下となる程度であることが好ましく、さらには表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となる程度であることが好ましい。
【0046】
(iii)塗布方法
本工程において、上記遮光部形成用塗工液の塗布方法としては、上記遮光部形成用層を均一な膜厚で形成することができる方法であれば良く、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、バーコート法等の一般的な方法を用いることができる。
【0047】
(iv)露光・現像方法
本工程において、上記遮光部形成用塗工液を塗布することにより形成された遮光部形成用層を露光する方法としては、所望の領域にのみ上記遮光部用パターンを形成することができる方法であれば良く、カラーフィルタにおける遮光部の形成に、一般的に用いられる方法を使用することができる。
例えば、上記遮光部形成用層の表面から数十μm程度の間隙をあけてマスクを配置し、露光するプロキシミティ露光を行うことができる。この露光により、上記樹脂としてネガ型感光性樹脂を用いた場合には照射部分で硬化反応が生じ、ポジ型感光性樹脂を用いた場合には照射部分で酸発生反応が生じる。
【0048】
上記遮光部形成用層の露光の際に用いられる光源としては、一般的に遮光部の形成の際に用いられる光源を使用することができ、例えば、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0049】
また現像する方法としては、不要部分の上記遮光部形成用層を除去することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの製造の際に行われる現像方法を使用することができる。
【0050】
(b)低温ベイク工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク前遮光部形成工程に含まれる低温ベイク工程は、上記遮光部用パターンを、100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱し、基板への密着性の向上および乾燥を十分に図る工程である。
また、一般的な遮光部の形成において通常行なわれるポストベーク温度よりも低い温度で加熱する工程である。
【0051】
本工程における加熱温度としては、100℃〜190℃の範囲内であれば良いが、なかでも、120℃〜170℃の範囲内であることが好ましく、特に、130℃〜160℃
の範囲内であることが好ましい。上記範囲より低いと、上記シュリンク前遮光部の基板への密着性や乾燥が不十分なものとなるおそれがあるからである。また、上記範囲より高いと、上記遮光部用パターンがシュリンク(収縮)してしまい、十分な厚みを有するシュリンク前遮光部を形成することが困難になるからである。
【0052】
本工程においては、上記加熱時間としては、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができるものであれば良く、具体的には、10分〜100分の範囲内であることが好ましく、なかでも15分〜30分の範囲内であることが好ましい。上記範囲より短いと、上記シュリンク前遮光部の基板への密着性や乾燥が不十分なものとなるおそれがあるからである。また、上記範囲より長くても効果が大きく変わらないからである。
【0053】
上記遮光部用パターン形成工程が、フォトリソグラフィー法により遮光部用パターンを形成する場合において、本工程を行なった後の遮光部用パターンに含まれる溶剤の含有量としては、上記遮光部用パターン中に、5質量%未満であることが好ましく、なかでも3質量%以下であることが好ましい。上記範囲より多いと、形成されるシュリンク前遮光部が十分に硬化したものとすることができず、後述する着色層用パターン部形成工程において着色層形成用塗工液が塗布された際に、上記着色層形成用塗工液に、上記シュリンク前遮光部が溶解するおそれがあるからである。その結果、上記遮光部が着色層と混色したものとなるおそれがあるからである。
【0054】
(c)撥インク化工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク前遮光部形成工程に含まれる撥インク化工程は、上記遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与する工程である。
上記撥インク化工程を有することにより、上記シュリンク前遮光部の表面を撥インク性を有するものとすることができる。このため、後述する着色層形成用塗工液を、上記開口部内に安定的に塗布することができ、着色層を混色の無いものとすることができるからである。
【0055】
また、本工程は、上記「(a)遮光部用パターン形成工程」の後に行なわれるものであり、上記低温ベイク工程の前に行なわれるものであっても良く、後に行なわれるものであっても良いが、上記低温ベイク工程の後に行なわれることが好ましい。上記低温ベイク工程の前に行なった場合には、上記遮光部用パターンに付与した撥インク性が、上記低温ベイク工程を行なうことにより大きく低下し、上記シュリンク前遮光部の撥インク性が低いものとなるおそれがあるからである。なお、上記低温ベイク工程の前に行なう場合においては、通常、後述するプリベーク工程が行なわれた遮光部用パターンに対して行なわれる。
【0056】
このような上記遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与する方法としては、所望の撥インク性を付与することができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、フッ素ガスを導入ガスとしたプラズマ処理を行う方法を挙げることができる。
このような方法によれば、樹脂を含有する上記遮光部用パターンに選択的にフッ素を導入することができるからである。
【0057】
上記導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えば、CF、SF、CHF、C、C、C等を挙げることができる。
【0058】
また、上記導入ガスとしては、上記フッ素ガスと他のガスとが混合されたものであってもよい。上記他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができるが、なかでも窒素を用いることが好ましい。さらに上記他のガスとして窒素を用いる場合、窒素の混合比率は50%以上であることが好ましい。
【0059】
また、上記プラズマ照射を実施する方法としては、上記遮光部用パターンの撥インク性を向上できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、または、大気圧下でプラズマ照射してもよい。なかでも、本工程においては特に大気圧下でプラズマ照射が行うことが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面おいて有利になるからである。
【0060】
なお、上記プラズマ照射を行った後の、上記遮光部用パターンにおけるフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i−XL)による分析において、遮光部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。
【0061】
なお、上記「撥インク性」とは、後述する着色層形成用塗工液との接触角が大きいことを意味するものである。
【0062】
具体的には、上記シュリンク前遮光部の表面の上記着色層形成用塗工液との接触角が、上記基板表面の接触角よりも低いものとすることができるものであれば良い。なかでも本工程においては、上記シュリンク前遮光部表面の、40mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、特に表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、さらには表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上となる程度であることが好ましい。
【0063】
(d)シュリンク前遮光部形成工程
本工程は、遮光部用パターン形成工程、低温ベイク工程、および、撥インク化工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、上記遮光部用パターン形成工程後に、上記遮光部形成用パターンを加熱し、上記遮光部用パターンの乾燥を行なうプリベーク工程を挙げることができる。
上記プリベーク工程における加熱温度としては、通常、80℃程度とされる。
【0064】
本工程において形成されるシュリンク前遮光部の膜厚としては、後述する着色層用パターン形成工程において形成される着色層用パターンの表面が平坦なものとすることができるものであれば良いが、具体的には、後述するシュリンク工程により形成される遮光部の膜厚の105%〜130%の範囲内であることが好ましく、なかでも、110%〜130%の範囲内であることが好ましく、特に、115%〜120%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、後述する着色層用パターンの表面を十分に平坦なものとすることができるからである。
【0065】
(2)着色層用パターン形成工程
本態様のカラーフィルタの製造方法における着色層用パターン形成工程は、上記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する工程である。
【0066】
本工程に用いられる着色層用パターンの形成方法としては、インクジェット法により上記着色層形成用塗工液を上記開口部に塗布する方法であり、通常、上記着色層形成用塗工液を塗布することができるノズルを複数備えるインクジェットヘッドが用いられる。
【0067】
本工程に用いられるインクジェットヘッドとしては、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や開口部等に応じて、所望のノズル数を有するものであれば特に限定されず、一般的にインクジェット法に用いられるインクジェットヘッドを用いることができる。
【0068】
なお、本工程に用いられるインクジェットヘッドのノズル数は、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタの面積や、上記開口部のピッチ等に応じて適宜決定すればよい。
【0069】
また、上記インクジェットヘッドが備えるノズルのピッチについても、上記カラーフィルタの面積や、上記開口部のピッチ等に応じて適宜決定すればよい。また、上記ノズルのピッチは、上記開口部のピッチと同一であってもよく、または、異なっていてもよいが、上記ノズルのピッチが上記開口部のピッチと異なる場合においては、上記ノズルのピッチが、上記開口部のピッチの整数倍または整数分の1倍に相当するピッチであることが好ましい。このようなピッチであれば、例えば、着色層形成用塗工液を吐出させるノズルを適宜選択したり、上記インクジェットヘッドの移動距離を制御することにより、着色層形成用塗工液が吐出されるピッチを、上記開口部のピッチと同一にすることが容易だからである。
なお、上記ノズルのピッチが上記開口部のピッチと異なる場合において、上記ノズルのピッチが、上記開口部のピッチの整数倍または整数分の1倍に相当するピッチでない場合は、例えば、上記ノズルのピッチが上記開口部のピッチと同一、整数倍、または、整数分の1倍となるように上記インクジェットヘッドを回転させて傾かせて用いればよい。
【0070】
また、上記ノズルの配置態様としては、隣り合うノズルの間隔が常に一定となるような配置態様であれば特に限定されるものではなく、例えば、すべてのノズルが一直線上に配置された態様であってもよく、または、千鳥状に配置された態様であってもよい。
【0071】
また、上記ノズルの径としては、上記開口部の間隔やノズルから吐出される着色層形成用塗工液の吐出量等に応じて、上記ノズルから吐出される着色層形成用塗工液の液滴の径を、上記開口部の間隔よりも小さくできる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記カラーフィルタの種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0072】
本工程に用いられるインクジェットヘッドが着色層形成用塗工液を吐出する吐出方式としては、所定量の着色層形成用塗工液を吐出できる方式であれば特に限定されるものではない。このような吐出方式としては、例えば、帯電した着色層形成用塗工液を連続的に吐出し磁場によって吐出量を制御する方式、圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式、着色層形成用塗工液を加熱しその発泡現象を利用して間欠的に吐出する方式等を挙げることができる。なかでも本工程においては、上記吐出方式として圧電素子を用いて間欠的に着色層形成用塗工液を吐出する方式を用いることが好ましい。このような吐出方式は微量な吐出量を比較的精度よく制御することができるからである。
【0073】
本工程に用いられる着色層形成用塗工液としては、インクジェット法により、着色層を形成する際に、一般的に用いられるものと同様とすることができる。このような着色層形成用塗工液としては、通常、少なくとも赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を含む、3色以上の着色層形成用塗工液が用いられる。
【0074】
本工程においては、上記着色層用パターンを加熱して、上記着色層形成用塗工液に含まれる溶剤を除去するプリベークを行なうものであっても良い。なお、プリベーク温度としては、通常、80℃程度とされる。
【0075】
なお、本工程において、着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚は、通常、上記シュリンク前遮光部形成工程により形成されたシュリンク前遮光部の膜厚と同程度である。
【0076】
(3)着色層ベイク工程
本態様のカラーフィルタの製造方法における着色層ベイク工程は、上記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する工程である。
【0077】
本工程における加熱温度および加熱時間等の条件としては、上記着色層用パターンに含まれる溶剤を十分に除去することができ、さらに、通常のカラーフィルタに要求される耐溶剤性等を有するものとすることができる条件であれば良く、一般的なカラーフィルタの製造における着色層形成時のポストベークと同様の条件とすることができる。具体的には、後述するシュリンク工程における加熱条件と同一とすることができる。
【0078】
(4)シュリンク工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク工程は、上記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、上記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成する工程である。
【0079】
本工程は、上記着色層ベイク工程と独立した工程であっても良いが、同一工程であることが好ましい。工程数を少ないものとすることができ、コスト低減を図ることができるからである。
なお、上記着色層ベイク工程およびシュリンク工程が同一である場合における加熱温度は、通常、両者の加熱温度のうちより高い加熱温度に合わせるものである。
また、上記着色層ベイク工程およびシュリンク工程を独立した工程とする場合の実施順としては、上記着色層ベイク工程、シュリンク工程の順に実施しても良く、逆の順で実施しても良いが、通常、加熱温度が低い工程を先に行なう。高い加熱温度で加熱する工程を先に行なった場合には、再度、加熱する工程を行なっても効果が変わらないからである。また、高い上記着色層用パターンのみ、または、シュリンク前遮光部のみを選択的に加熱することは困難だからである。
【0080】
本工程における加熱温度は、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度であるが、なかでも50℃〜130℃の範囲内で高い温度であることが好ましく、特に、50℃〜120℃の範囲内で高い温度であることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記シュリンク前遮光部を十分にシュリンクさせることができるからである。このため、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に、上記遮光部の膜厚が厚いことにより、組み立てに支障ができることを防ぐことができるからである。また、耐溶剤性を有するものとすることができるからである。
【0081】
本工程においては、上記加熱時間としては、上記シュリンク前遮光部を所望の膜厚の遮光部までシュリンクさせることができるものであれば良く、具体的には、30分〜60分の範囲内であることが好ましく、なかでも40分〜50分の範囲内であることが好ましい。上記範囲より短いと、十分にシュリンクさせることが困難であるからであり、上記範囲より長くても効果が大きく変わらないからである。
【0082】
本工程により形成される遮光部の膜厚としては、一般的なカラーフィルタと同様とすることができる。具体的には、1.0μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、1.0μm〜4.0μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1.0μm〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に、問題無く組み立てを行なうことができるからである。
【0083】
(5)カラーフィルタの製造方法
本態様のカラーフィルタの製造方法は、シュリンク前遮光部形成工程と、着色層用パターン形成工程と、着色層ベイク工程と、シュリンク工程と、を少なくとも有するものであれば良く、必要に応じて、その他の工程を有するものであっても良い。例えば、上記着色層用パターン形成工程前に上記シュリンク前遮光部が形成された基板の表面にプラズマを照射することにより、上記基板に表面に付着した有機残渣をドライエッチングにより除去するプラズマ前処理工程、上記着色層ベイク工程およびシュリンク工程により形成される着色層および遮光部上にオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程、上記着色層上にITO、IZO等の透明電極を形成する透明電極形成工程、対向基板とのセルギャップを均一にするためのスペーサー材を所定の位置に形成するスペーサー形成工程、および、液晶の配向を制御するための構造物を形成する配向制御構造物形成工程等を挙げることができる。
【0084】
2.第2態様
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法の第2態様について説明する。本態様のカラーフィルタの製造方法は、基板と、基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、上記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタとする製造方法であって、上記基板上に、撥インク剤を含み、開口部を備え、撥インク性を有する撥インク化遮光部用パターンを形成する撥インク化遮光部用パターン形成工程、および、上記撥インク化遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、を有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、上記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、上記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、上記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、上記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、上記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、を有することを特徴とする態様である。
【0085】
このような本態様のカラーフィルタの製造方法について図を参照して説明する。図5に例示するように、本態様のカラーフィルタの製造方法は、基板1上に、遮光部を形成する材料および撥インク剤を含む撥インク性遮光部形成用塗工液を塗布し、撥インク化遮光部形成用層42を形成し(図5(a))、次いで、パターン状に露光し、現像することにより、基板1上にパターン状に形成された撥インク化遮光部用パターン32を形成し(図5(b))、その後、140℃で加熱し、シュリンク前遮光部を形成する(図5(c))。その後、図5(d)に示すように、上記シュリンク前遮光部12が備える開口部に、インクジェット法により着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターン13を形成する。次いで、図5(e)に示すように、上記シュリンク前遮光部12および着色層用パターン13を230℃で加熱することにより、上記シュリンク前遮光部がシュリンクされた遮光部2および着色層3を形成し、カラーフィルタ10を形成するものである(図5(f))。
ここで、(a)〜(b)が撥インク化遮光部用パターン形成工程であり、(c)が低温ベイク工程であり、(a)〜(c)がシュリンク前遮光部形成工程である。また、(d)が着色層用パターン形成工程であり、(e)が着色層ベイク工程およびシュリンク工程である。
【0086】
本態様によれば、上記低温ベイク工程を行なうことにより、上記着色層用パターン形成工程において着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚を厚いものとすることができる。このため、形成される着色層の表面を平坦なものとすることができる。その結果、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタを輝度およびコントラストに優れるものとすることができる。
また、上記シュリンク工程におけるシュリンク前遮光部の加熱温度を、上述した温度とすることにより、シュリンク前遮光部をシュリンクさせることにより得られる遮光部の膜厚を抑制することができる。これにより、本態様の製造方法により製造されるカラーフィルタを用いて液晶表示装置を組み立てる際に問題無く組み立てを行なうことができる。
さらに、上記低温ベイク工程における遮光部用パターンの加熱温度を100℃〜190℃の範囲内のとすることにより、上記シュリンク前遮光部を基板への密着性に優れ、十分に乾燥したものとすることができる。
さらにまた、上記撥インク化遮光部用パターン形成工程を有することにより、形成される遮光部用パターンが撥インク剤を含むものとすることができる。このため、上記遮光部用パターンを撥インク化することなく、撥インク性を有するシュリンク前遮光部を形成することができる。このため、撥インク化するための工程を不要なものとすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0087】
本態様のカラーフィルタの製造方法は、シュリンク前遮光部形成工程と、着色層用パターン形成工程と、着色層ベイク工程と、シュリンク工程と、を少なくとも有するものである。
なお、着色層用パターン形成工程、着色層ベイク工程、およびシュリンク工程については、上記「1.第1態様」の項に記載された内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
以下、本態様のカラーフィルタの製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0088】
(1)シュリンク前遮光部形成工程
本態様のカラーフィルタの製造方法におけるシュリンク前遮光部形成工程は、撥インク化遮光部用パターン形成工程、および、低温ベイク工程を少なくとも有するものである。
ここで、上記低温ベイク工程については、上記「1.第1態様」の「(1)シュリンク前遮光部形成工程」の項に記載された内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
(a)撥インク化遮光部用パターン形成工程
本態様におけるシュリンク前遮光部形成工程における撥インク化遮光部用パターン形成工程は、基板上に、撥インク剤を含み、開口部を備え、撥インク性を有する撥インク化遮光部用パターンを形成する工程である。
なお、本工程に用いられる基板としては、上記「1.第1態様」の「(1)シュリンク前遮光部形成工程」の項に記載したものと同様のものとすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0090】
(i)撥インク剤
本工程に用いられる撥インク剤としては、上記シュリンク前遮光部の表面に所定の撥インク性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような撥インク剤としては、例えば、フッ素含有基と親水基または親油基とを有するモノマーまたはオリゴマー、フッ素含有高分子化合物、および、フッ素含有物質の微粒子等を挙げることができる。
【0091】
ここで、上記フッ素含有高分子化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂等を挙げることができる。
また、上記フッ素含有物質の微粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテル系共重合体、3フッ化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体等からなる微粒子を挙げることができる。
さらに、上記フッ素含有基と親水基または親油基とを有するモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、下記一般式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
【0092】
【化1】

【0093】
ここで、上記一般式(1)〜(6)において、RfおよびRf´はフルオロアルキル基、RおよびR´はアルキレン基を表し、RfとRf´また、RとR´は同一でも異なっていてもよい。また、X、X´およびYは、−COO−、−OCOO−、−CONR''−、−OCONR''−、−SONR''−、−SO−、−SOO−、−O−、−NR''−、−S−、−CO−、OSOO−、−OPO(OH)O−のうちのいずれかを表し、X、X´およびYは同一でも異なっていてもよい。Zは、−SOH、−COOH、−OH、−NH、−SONH、−CONH、−SONH、−COONH、また、R''は、アルキル基または水素を表し、R’’’はアルキル基を表す。
【0094】
本工程に用いられる撥インク剤としては、上記フッ素含有基と親水基または親油基とを有するモノマーまたはオリゴマー、上記フッ素含有高分子化合物、および、上記フッ素含有物質の微粒子のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも上記フッ素含有基と親水基または親油基とを有するモノマーまたはオリゴマーを用いることが好ましい。
【0095】
なお、本工程に用いられる撥インク剤は1種類のみであってもよく、または、2種類以上であってもよい。
【0096】
本工程に用いられる撥インク剤の含有量としては、使用する撥インク剤の種類等に応じて、上記シュリンク前遮光部の表面に所望の撥インク性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、上記撥インク化遮光部用パターンの固形分中に0.005質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.01質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、上記着色層形成用塗工液を、上記開口部内に安定的に塗布することができ、上記着色層を混色の無いものとすることができるからである。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
【0097】
(ii)形成方法
本工程における上記撥インク化遮光部用パターンの形成方法としては、上記撥インク剤を含む撥インク化遮光部用パターンを、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば良く、具体的には、上記「1.第1態様」の「(1)シュリンク前遮光部形成工程」の「(a)遮光部用パターン形成工程」の項に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0098】
ここで、フォトリソグラフィー法により、上記撥インク化遮光部用パターンを形成する方法としては、具体的には、基板上に、上記撥インク剤を含む撥インク性遮光部形成用塗工液を塗布することにより撥インク化遮光部形成用層を形成し、次いで、上記撥インク化遮光部形成用層をパターン状に露光するパターン露光を行い、さらに現像する方法を挙げることができる。
【0099】
上記撥インク性遮光部形成用塗工液としては、フォトリソグラフィー法に一般的に用いられる遮光部形成用塗工液に、撥インク剤を添加した撥インク性遮光部形成用塗工液を用いることができる。
なお、遮光部形成用塗工液、ならびに、上記撥インク性遮光部形成用塗工液の塗布、露光および現像方法としては、カラーフィルタにおける遮光部の形成において、一般的に用いられるものおよび方法を使用することができる。具体的には、上記「1.第1態様」の「(1)シュリンク前遮光部形成工程」の項に記載した内容と同様とすることができる。
【0100】
(b)シュリンク前遮光部形成工程
本工程は、上記撥インク化遮光部用パターン形成工程、および、低温ベイク工程を少なくとも有するものであれば良いが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、上記「1.第1態様」の「(1)シュリンク前遮光部形成工程」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
また、本工程により形成されるシュリンク前遮光部が有する撥インク性および膜厚としては、上記「1.第1態様」の項に記載されたシュリンク前遮光部と同様とすることができる。
【0102】
(2)カラーフィルタの製造方法
本態様のカラーフィルタの製造方法は、シュリンク前遮光部形成工程と、着色層用パターン形成工程と、着色層ベイク工程と、シュリンク工程と、を少なくとも有するものであれば良く、必要に応じて、その他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、上記「1.第1態様」の「(5)カラーフィルタの製造方法」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0105】
[実施例1]
1.シュリンク前遮光部形成工程
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmのCorning(コーニング)社製EAGLE2000を用意し、アルカリ性水溶液を用い洗浄した後、UVオゾン処理を施した。このガラス基板上にカーボンブラックを含有したブラックマトリクス形成用材料(新日鉄化学社製ネガ型レジストNSBK)をスピンコーターで、硬化前時点での膜厚が10μmとなるように塗布した。この基板をホットプレートにて、80℃で3分間のプリベークを施した。
【0106】
所定のフォトマスクを用いUV露光装置にてマスク露光を実施し、続いてアルカリ現像を実施した後に純水にてリンスし、更にオーブンにて160℃で30分間のベイクを施した。この結果、ガラス基板上に膜厚2.17μm、開口部140μm×420μmの矩形状の遮光部用パターンを得た。
【0107】
次いで、上記遮光部用パターンを形成したガラス基板に対し、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ処理を加えることにより、遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与して、シュリンク前遮光部を形成した。また、上記シュリンク前遮光部以外の部分を親インク性とした。このとき表面張力40mN/mの液体との接触角は、上記シュリンク前遮光部上で57°、それ以外の部分で10°以下であった。
【0108】
2.着色層用パターン形成工程
上記親疎液性を有するシュリンク前遮光部を形成したガラス基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。塗工液はカラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用い、1つの開口部あたり130滴にて所望のカラーフィルタの色が表現できるように濃度を設計した。このときのインクジェットヘッドへの印加電圧は75V、パルス幅は6μsであった。インクジェットヘッドは1ヘッドに対し100ノズルを有するものを用い、1色につき1ヘッド、すなわちRGB3色にて3ヘッドを用いた。塗布は遮光部の1つの開口部(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、かつインク吐出液滴が開口部内に着弾するように行った。
次いで、基板をホットプレートを用い100℃にて10分間プリベークした。
【0109】
3.カラーフィルタの形成
次いで、オーブンにて230℃で30分間加熱した。
これにより、上記シュリンク前遮光部の膜厚は収縮し、膜厚が2.00μmの遮光部を有するカラーフィルタを形成した。
【0110】
[実施例2]
ブラックマトリクス形成用材料として、自己撥インキ性を発現するブラックマトリクス形成用材料(東京応化社製ネガ型レジストCFPR BK-IJ)を用いた以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタを作製した。
なお、得られたシュリンク前遮光部の膜厚は、膜厚2.19μmであった。
また、表面張力40mN/mの液体との接触角は、上記シュリンク前遮光部上で60°、それ以外の部分で10°以下であった。
さらに、カラーフィルタ作製後における遮光部の膜厚は、2.00μmであった。
【0111】
[比較例1]
上記シュリンク前遮光部形成工程において、オーブンにて230℃で30分間のベイクを施し、遮光部を形成した以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタを形成した。
なお、上記シュリンク前遮光部形成工程により得られた遮光部の膜厚は2.00μmであった。
また、表面張力40mN/mの液体との接触角は、上記遮光部上で57°、それ以外の部分で10°以下であった。
【0112】
[比較例2]
上記シュリンク前遮光部形成工程において、オーブンにて230℃で30分間のベイクを施し、遮光部を形成した以外は、実施例2と同様にして、カラーフィルタを形成した。
上記シュリンク前遮光部形成工程により得られた遮光部の膜厚は、2.00μmであった。
また、表面張力40mN/mの液体との接触角は、上記遮光部上で60°、それ以外の部分で10°以下であった。
【0113】
[比較例3]
上記シュリンク前遮光部形成工程において、90℃で30分間のベイクを施した以外は実施例1と同様にして、カラーフィルタを形成した。
上記シュリンク前遮光部形成工程により得られたシュリンク前遮光部の膜厚は、2.25μmであった。
また、表面張力40mN/mの液体との接触角は、上記遮光部上で55°、それ以外の部分で10°以下であった。
さらに、カラーフィルタ作製後における遮光部の膜厚は、2.00μmであった。
【0114】
[評価]
実施例および比較例により得られた着色層の形状を光学干渉式非接触形状測定機(菱化システム社製micro map)にて計測した。測定箇所は、着色層の中心を通るように、着色層の短辺方向にスキャンすることにより行なった。
その結果、実施例1〜2により形成された着色層の形状は、比較例1〜2により形成された着色層の形状よりも、平坦化した断面形状が得られた。実施例1および比較例1により得られた着色層の測定結果を、図6に示す。
また、実施例1および比較例1により得られた着色層の断面の膜厚データ中の、膜厚の頻度をヒストグラムとしたものを、図7に示す。その結果、実施例1の方が比較例1よりもシャープな分布となり、このデータからも実施例1の着色層の形状が比較例1の形状より平坦化していることが示された。
【0115】
また、断面形状の差を、遮光部および着色層の接点と、着色層の頂部との高さの差で表した結果を、表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
なお、比較例3については、上記着色層用パターン形成工程において、シュリンク前遮光部が着色層形成用塗工液に溶け出し着色部の混色が生じた。このため、各色の着色層の形状は計測不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】インクジェット法により形成された着色層を説明する説明図である。
【図3】インクジェット法により形成された着色層を説明する説明図である。
【図4】従来のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図6】実施例より得られた着色層の断面形状測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例より得られた着色層の断面形状測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0119】
1、101 … 基板
2、102 … 遮光部
3、103 … 着色層
10、100 … カラーフィルタ
12 … シュリンク前遮光部
12´ … 遮光部用パターン
13 … 着色層用パターン
22 … 遮光部形成用層
32 … 撥インク化遮光部用パターン
42 … 撥インク化遮光部形成用層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、前記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記基板上に、開口部を備える遮光部用パターンを形成する遮光部用パターン形成工程、前記遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、および、前記遮光部用パターンの表面に撥インク性を付与する撥インク化工程、を少なくとも有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、
前記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、
前記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、
前記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、前記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、前記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
基板と、前記基板上に形成され、開口部を備える遮光部と、前記開口部にインクジェット法により形成された着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記基板上に、撥インク剤を含み、開口部を備え、撥インク性を有する撥インク化遮光部用パターンを形成する撥インク化遮光部用パターン形成工程、および、前記撥インク化遮光部用パターンを100℃〜190℃の範囲内の温度で加熱する低温ベイク工程、を有し、シュリンク前遮光部を形成するシュリンク前遮光部形成工程と、
前記シュリンク前遮光部が備える開口部に、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布し、着色層用パターンを形成する着色層用パターン形成工程と、
前記着色層用パターンを加熱して着色層を形成する着色層ベイク工程と、
前記着色層用パターン形成工程後のシュリンク前遮光部を、前記低温ベイク工程における加熱温度よりも50℃〜150℃の範囲内で高い温度で加熱し、前記シュリンク前遮光部をシュリンクさせて遮光部を形成するシュリンク工程と、
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記着色層ベイク工程および前記シュリンク工程が同一工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記着色層形成用塗工液が塗布される際のシュリンク前遮光部の膜厚が、前記遮光部の膜厚の105%〜130%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−175501(P2009−175501A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14720(P2008−14720)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】