説明

カラーフィルター用インク、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】コントラスト比、明度に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供すること、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができるカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、主顔料としてのハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体および副顔料としてのスルホン化された顔料誘導体を含む顔料と、顔料が分散する液性媒体と、式(1)で表される化合物Fとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インク、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層(着色部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
【0004】
このようなインクジェット用いたカラーフィルターの製造方法に用いられるカラーフィルター用インクは、一般に、着色剤と着色剤を溶解、分散する液性媒体(溶剤)を含んでいる。顔料は、一般に、染料に比べて耐光性等に優れる等の特徴を有しているため、カラーフィルター用インクにおいては、着色剤として、顔料が広く用いられている。また、カラーフィルターの製造においては、通常、光の三原色(赤色、緑色、青色)に対応する3色のインク(カラーフィルター用インク)が用いられる。
【0005】
ところで、緑色のカラーフィルター用インクにおいては、顔料粒子の分散性、分散安定性の観点から、C.I.ピグメントグリーン36が広く用いられている。しかしながら、C.I.ピグメントグリーン36を用いた場合には、近年の表示画像の更なる高輝度化という要求に十分に応えることが困難であった。
一方、本発明者は、カラーフィルターの製造において、ハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体を用いることにより、C.I.ピグメントグリーン36に比べて、明度、輝度、コントラストに優れた緑色の着色部を形成することができることを見出した。しかしながら、ハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体は、インク中における分散安定性に劣っており、カラーフィルター用インクの粘度が高くなりやすい。このため、長期間液滴吐出を行ったり、連続して液滴吐出を行ったりすると、吐出された液滴の軌道が変化し(いわゆる、飛行曲がりが発生し)、目的に部位に液滴を着弾させることができなくなったり、液滴の吐出量が不安定化する等の問題を生じることがあった。すなわち、液滴の吐出安定性が十分に優れたものとならない問題があった。このような問題を生じると、液滴を着弾させるべき基板上等において、異なる色の着色部を形成するのに用いられる複数種のインクが混ざり合って(混色して)しまったり、本来同一の着色濃度であることが求められる複数個の着色部の間での着色濃度のばらつきが発生してしまい、結果として、カラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等が発生してしまったり、多数のカラーフィルター間での特性(特に、コントラスト比、色再現域等の色特性)にばらつきを生じ、カラーフィルターの信頼性は低いものとなってしまう。また、顔料がカラーフィルター用インク中に安定して分散できない場合、形成される着色部において、顔料が凝集した状態で存在しやすく、このような場合、カラーフィルターの明度およびコントラスト比は高いものとならない。
【0006】
また、一般に、着色部の形成は、カラーフィルター用インクから液性媒体(溶剤)を除去し、カラーフィルター用インクを固化させることによって行われる。しかしながら、従来のハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体を含むカラーフィルター用インクは、粘度が比較的高く、流動性が低いため、液性媒体の除去の際に生じる凹凸を維持したまま固化して着色部となる。このように形成される着色部が凹凸を有し、平坦にならない場合、製造されるカラーフィルターのコントラスト比、明度が十分に高くならない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−225124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができ、各部位での濃度むら、色むらが抑制され、かつ個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターを提供すること、該カラーフィルターの製造に好適に用いることができる、吐出安定性に優れるとともに顔料の分散安定性に優れたインクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
主顔料としてのハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体および副顔料としてのスルホン化された顔料誘導体を含む顔料と、
前記顔料が分散する液性媒体と、
下記式(1)で表される化合物Fとを含むことを特徴とする。
【化1】

これにより、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができ、各部位での濃度むら、色むらが抑制され、かつ個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、吐出安定性に優れるとともに顔料の分散安定性に優れたインクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供することができる。
【0010】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記顔料誘導体は、下記式(2)で示される化学構造を有するものであることが好ましい。
【化2】

【0011】
これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクの粘度を十分に低いものとでき、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、顔料粒子が安定して分散することにより、形成するカラーフィルターのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記主顔料:100重量部に対する、前記副顔料の含有率が、10〜80重量部であることが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、主顔料の含有率を十分なものとすることができ、目的とする色調の色を表現することができる。
【0013】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記化合物F:100重量部に対する、前記副顔料の含有率が、4〜30重量部であることが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記化合物Fは、アルキレングリコール鎖を有することが好ましい。
これにより、化合物Fは、その分子構造の自由度を高い(分子内で変形しやすい)ものとすることができるため、カラーフィルター用インクの粘度を低くすることができ、カラーフィルター用インクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができる。また、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの流動性をより高いものとすることができる。
【0014】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記化合物Fは、下記式(3)に示される構造をなしていることが好ましい。
【化3】

【0015】
これにより、化合物Fは、その分子構造の自由度を高い(分子内で変形しやすい)ものとすることができるため、カラーフィルター用インクの粘度を低くすることができ、カラーフィルター用インクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができる。また、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの流動性をより高いものとすることができる。また、形成される着色部の耐溶剤性および耐熱性を十分に高いものとすることができる。
【0016】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記化合物Fの分子量は、184〜492であることが好ましい。
これにより、化合物Fが比較的低分子量となり、カラーフィルター用インク中でより自由に運動することができ、カラーフィルター用インクの着色部形成時における流動性をより高いものとすることができる。
【0017】
本発明のカラーフィルター用インクでは、下記式(4)で表される単量体成分x1と下記式(5)で表される単量体成分x3と下記式(6)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含むことが好ましい。
【化4】

【化5】

【化6】

これにより、形成される着色部は耐久性に優れたものとなり、着色部が劣化しにくいため、長期にわたって使用された場合でも着色部は優れたコントラスト比、明度等を維持できるものとなる。
【0018】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記液性媒体として、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0019】
これらの化合物は、粘度が低く、温度による粘度変化が少ない化合物であるとともに、上述したような化合物Fの親和性が高い。このため、化合物Fは液性媒体に好適に溶解することができ、カラーフィルター用インクは、粘度が十分に低いものとなり、液滴の吐出安定性に特に優れたものとなる。
また、着色部形成時において、カラーフィルター用インク中に残存している液性媒体が少量であっても、化合物Fは好適に液性媒体に溶解し、カラーフィルター用インクは流動性を維持することができる。このため、カラーフィルター用インクの粘度を低いものとすることができ、また、着色部形成時においても、カラーフィルター用インクの粘度の上昇を防止することができる。この結果、着色部は平坦なものとなり、カラーフィルターは、コントラスト比、明度に特に優れたものとなる。
さらに、このような化合物は上述したスルホン化顔料誘導体とも親和性が優れているため、スルホン化顔料誘導体が付着したハロゲン化フタロシアニン亜鉛錯体のカラーフィルター用インク中における分散安定性を優れたものとすることができる。
【0020】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記液性媒体は、さらに、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、および3−メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
これにより、着色部形成時において、カラーフィルター用インクの高い流動性が維持され、形成される着色部は、凹凸が少ないものとなり、カラーフィルターは、コントラスト比、明度に特に優れたものとなる。
【0021】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができ、各部位での濃度むら、色むらが抑制され、かつ個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターを提供することができる。
【0022】
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の濃度むら、色むらが抑制され、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができる画像表示装置を提供することができる。
本発明の画像表示装置は、液晶パネルであることが好ましい。
これにより、表示部の濃度むら、色むらが抑制され、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができる画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の濃度むら、色むらが抑制され、コントラスト比、明度に優れた画像を表示することができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《カラーフィルター用インク》
本発明のカラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
【0025】
カラーフィルター用インクは、顔料、樹脂材料、前記顔料が分散する液性媒体等を含むものである。
また、カラーフィルター用インクは、後述するように、基板上に設けられたセル中に液滴吐出装置を用いて付与される。そして、セル中に付与されたカラーフィルター用インクは、加熱等の処理により、液性媒体が除去され、固化して、着色部となる。
【0026】
<顔料>
本発明のカラーフィルター用インクは、主顔料として、ハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体(以下、単に「ハロゲン化フタロシアニン錯体」とも言う)を含み、副顔料として、スルホン化された顔料誘導体(以下、単に「スルホン化顔料誘導体」とも言う)を含む。ハロゲン化フタロシアニン亜鉛錯体は、緑色の顔料であり、通常、緑色のカラーフィルター用インクに用いられる。
【0027】
[主顔料(ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体)]
主顔料としてのハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体は、中心金属としての亜鉛と、配位子としてのハロゲン化フタロシアニンとを備えている。ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体は、C.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36に比べて、明度に優れている。このため、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体を含むカラーフィルター用インクを用いることにより、明度に優れたカラーフィルターを形成することができる。
【0028】
ハロゲン化フタロシアニンは、フタロシアニンを構成するベンゼン環の少なくとも一部の水素原子が、ハロゲン原子で置換されたものである。ハロゲン化フタロシアニンは、このような条件を満足するものであればいかなるものであってもよいが、下記式(7)で示される化学構造を有するものであるのが好ましい。このような構造のハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体は、明度、輝度に優れるとともに、発色性にも優れている。
【0029】
【化7】

【0030】
カラーフィルター用インク中におけるハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体の含有率は、特に限定されないが、2.8〜10.7wt%であるのが好ましく、2.9〜8.6wt%であるのがより好ましい。
なお、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体は、単一の化合物で構成されるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0031】
[副顔料]
上記のように、本発明において、カラーフィルター用インクは、顔料として、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(主顔料)に加え、副顔料としてのスルホン化顔料誘導体を含むものである。
このように、カラーフィルター用インク中に、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(主顔料)とともに、スルホン化顔料誘導体を含むこと(さらには、後述するような硬化性樹脂材料を含むこと)により、カラーフィルター用インク中における、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(本来、単独では、分散性、分散安定性に劣るハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体)の分散性、分散安定性を優れたものとすることができる。このように、ハロゲン化フタロシアニン錯体が安定して分散することにより、カラーフィルター用インクの粘度を十分に低いものとすることができる。また、形成される着色部においても、顔料が十分に分散して存在することができ、着色部は、明度およびコントラスト比に優れたものとなる。
【0032】
副顔料としてのスルホン化顔料誘導体は、公知の顔料または公知の顔料の誘導体に対して、スルホン化の処理を施すことにより得られるものである。
スルホン化は、例えば、発煙硫酸、濃硫酸、発煙硫酸と濃硫酸との混合物、硫酸と五酸化リンとの混合物、クロルスルホン酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化スルフリルと塩化アルミニウムとの混合物等のスルホン化剤を用いた芳香族置換反応により、行うことができる。また、芳香族置換反応の際には、必要に応じて、反応系を加熱してもよい。
【0033】
また、スルホン化の処理においては、必要に応じて、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄等の硫酸金属塩等を用いることができる。触媒を用いることにより、例えば、好ましくない副反応を防止・抑制、反応条件の緩和、反応速度の上昇等の効果が得られる。
触媒の使用量は、特に限定されないが、スルホン化すべき顔料:100重量部に対して、0.05〜10重量部であるのが好ましい。
また、スルホン化の処理においては、反応速度を制御(抑制)するために、必要に応じて、反応系に、エチレングリコール、プロピレングリコール、クロロホルム、塩化エチレン、四塩化炭素等を用いてもよい。
【0034】
スルホン化反応終了後、反応混合物を、使用したスルホン化剤に対して大過剰の水中に注ぐことにより、スルホン化顔料誘導体を析出させることができる。該スルホン化顔料誘導体を濾別し、希塩酸等の希酸で洗浄後、水洗、乾燥することにより、目的とするスルホン化顔料誘導体が得られる。なお、クロロホルム、塩化エチレン、四塩化炭素等の水に不溶で揮発性を有する溶媒を使用した場合は、反応混合物を水中に加えるのに先立ち、前記溶媒を留去するのが好ましい。
【0035】
本発明においては、上記のようにして得られるスルホン酸をそのまま副顔料(スルホン化顔料誘導体)として用いてもよいし、前記スルホン酸の塩を副顔料(スルホン化顔料誘導体)として用いてもよい。前記スルホン酸と塩を形成する化合物あるいは原子としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウムなどの1〜3価の金属原子、エチルアミン、ブチルアミン等のモノアルキルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のジアルキルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等の有機アミン、アンモニア等が挙げられる。
【0036】
中でも、塩がアルカリ金属塩である場合は、塩が水溶性となり、以下のような効果が得られる。すなわち、塩を水に溶解させた後、単に濾過するだけで、非水溶性の不純物を容易に分離することができ、スルホン化顔料誘導体を純度の高いものとして得ることができる。
本発明において、副顔料は、スルホン化された顔料誘導体であればいかなるものであってもよいが、下記式(2)で示される化学構造を有するものであるのが好ましい。
【0037】
【化8】

【0038】
これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクの粘度を十分に低いものとでき、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、顔料粒子が安定して分散することにより、形成するカラーフィルターのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。
【0039】
このように、特定の化学構造を有するスルホン化顔料誘導体(副顔料)を、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(主顔料)とともに用いることにより、上記のような優れた効果が得られることは、本発明者が鋭意研究を行った結果、見出したことであり、そのメカニズムの詳細は不明であるが、以下のような理由によるものであると考えられる。
主顔料を構成するハロゲン化フタロシアニンは、分子全体として、高度な共役系が形成されており、平面的な構造となるのが、エネルギー的に安定している。そして、ハロゲン化フタロシアニンは、平面状の各分子が積層されるように(平行に)配置することにより、各分子間が有する共役系のπ電子が重なり合った、安定した状態になる。このため、主顔料は、本来、凝集し易く、溶剤中に安定的に分散させるのが困難である。
【0040】
一方、上記のようなスルホン化顔料誘導体では、式(2)中において窒素原子に結合している水素原子は、フタルイミド構造を構成する酸素原子との間で、水素結合を形成する。このようなことから、式(2)中において窒素原子に結合している水素原子は、実体的には、キノリン構造を構成する窒素原子とともに、フタルイミド構造を構成する酸素原子とも強固に結合しており、上記のようなスルホン化顔料誘導体では、式(2)中において1〜7の番号を付した7原子による安定的な環構造(7員環構造)が形成されている。このような7員環構造を形成することにより、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とは、非平行状態をとることになる。
【0041】
このように、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とが、非平行となることにより、ハロゲン化フタロシアニンに対して適度な親和性を有するスルホン化顔料誘導体が、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体の分子間に入り込み、上記のように、本来、凝集し易いハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体を凝集しにくいものとすることができる。さらに、スルホン化顔料誘導体(副顔料)は、分子内にスルホ基を有しているため、後述する液性媒体、樹脂材料に対する分散性に優れている。以上のようなことが、相乗的に作用し合い、上記のような優れた効果が得られるものと考えられる。
【0042】
上記のように、本発明において、スルホン化顔料誘導体は、式(2)で示される化学構造を有するものであるのが好ましいが、中でも、下記式(8)で示される化学構造を有するものであるのが特に好ましい。これにより、上述したような効果は、さらに顕著に発揮される。これは、スルホン化顔料誘導体が、スルホ基を有することにより、後述するような樹脂材料、液性媒体に対する優れた親和性を保持しつつ、高度にハロゲン化されていることにより、同じくハロゲン化されている主顔料に対する親和性が特に優れたものになるためであると考えられる。
【0043】
【化9】

【0044】
カラーフィルター用インク中におけるスルホン化顔料誘導体の含有率は、特に限定されないが、0.1〜5.0wt%であるのが好ましく、1.0〜4.0wt%であるのがより好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における副顔料(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、主顔料:100重量部に対して、10〜80重量部であるのが好ましく、30〜70重量部であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、主顔料の含有率を十分なものとすることができ、目的とする色調の色を表現することができる。
【0045】
また、カラーフィルター用インク中における副顔料(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、前記化合物F:100重量部に対して、30〜2000重量部であるのが好ましく、200〜1500重量部であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における副顔料が付着したハロゲン化フタロシアニン錯体(主顔料)の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
なお、スルホン化顔料誘導体(副顔料)は、単一の化合物で構成されるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0046】
[その他の顔料]
本発明において、カラーフィルター用インクは、顔料として、ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(主顔料)と、スルホン化顔料誘導体(副顔料)とを含むものであればよいが、これら以外の顔料成分(その他の顔料)を含むものであってもよい。
その他の顔料としては、各種有機顔料、各種無機顔料を用いることができるが、より具体的には、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、さらに具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。すなわち、その他の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の顔料を含む場合、カラーフィルター用インク中におけるその他の顔料の含有率は、特に限定されないが、前述したハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体の含有率、スルホン化顔料誘導体の含有率よりも少ないものであるのが好ましい。
【0047】
カラーフィルター用インク中における顔料(主顔料および副顔料を含む)の含有率は、2.0〜25wt%以上であるのが好ましく、3.5〜20wt%であるのがより好ましく、6.0〜12.0であるのがさらに好ましい。顔料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性を十分に優れたものとすることができるとともに、製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができる。
【0048】
また、従来においては、このように比較的高濃度で顔料を含む場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、カラーフィルター用インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度で顔料を含む場合であっても、後に詳述するように、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが、上記のように比較的高濃度の顔料を含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0049】
カラーフィルター用インク中における顔料粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましく、20〜180nmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐光性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターにおけるコントラスト、明度等を特に優れたものとすることができる。
【0050】
<樹脂材料>
カラーフィルター用インクは、樹脂材料(バインダー樹脂)を含んでいる。樹脂材料は、形成される着色部において、上述した着色剤のバインダーとして機能するとともに、着色部の基板に対する密着性を向上させる機能を有する。また、カラーフィルター用インク中においては、樹脂材料は、樹脂材料そのもの、またはその前駆体(モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)として存在している。これらの樹脂材料は、着色部を形成する際に、熱等のエネルギーが付与されることにより固化または硬化するものである。
なお、本明細書において、カラーフィルター用インク中の樹脂材料については、樹脂材料だけでなく、その前駆体(モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)も含む概念であるとして説明する。
【0051】
[化合物F]
本発明では、カラーフィルター用インクは、樹脂材料として、下記式(1)で表される化合物Fを含む。
化合物Fは、下記式(1)で表わされる化合物である。化合物Fは、熱等のエネルギーを付与されることにより重合して着色部を硬化する機能を有するとともに、カラーフィルター用インクから液性媒体の大部分が除去された際に、カラーフィルター用インクの流動性を維持する機能を有する。
【0052】
【化10】

【0053】
ところで、一般に、着色部の形成は、セル中に付与したカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、カラーフィルター用インクを固化させることによって行われる。このような場合、セル中のカラーフィルター用インク中における顔料や樹脂材料等の固形分濃度が上昇し、液性媒体の除去に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇する。このように、粘度が高いものとなることにより、カラーフィルター用インクは、流動性を失い、固化しやすいものとなる。特に、ハロゲン化フタロシアニン錯体を顔料として有する場合、液性媒体の除去に伴うカラーフィルター用インクの粘度の上昇が顕著である。
【0054】
また、インクを加熱または真空乾燥によって乾燥する際には、セル中において、インクの外表面から液性媒体が揮発することによりインクが熱対流する現象(ベナードセル現象)が起こる。また、セル中のインク内で不均一な熱分布が生じることにより、インク中の液性媒体の揮発は、セルの特定の部分から起こりやすい。このため、セル中のカラーフィルター用インクは、セル内を平面視した際の固形分量が均一になりにくく、凹凸ができやすい。
【0055】
このように、カラーフィルター用インクの粘度が上昇しつつ、セル内におけるインクの対流、特定の部分からの液性媒体の揮発が起こると、カラーフィルター用インクは、液性媒体の除去が進む比較的早い段階で、凹凸を有した形状で流動性を失い、固化してしまう。この結果、従来のインクを用いた場合には、形成される着色部の表面は、凹凸が多いものとなっていた。このように、形成される着色部が平坦にならない場合、カラーフィルターの明度やコントラスト比が高いものとならない問題があった。
【0056】
これに対し、本発明では、カラーフィルター用インクは、樹脂材料として、上記式(1)で表される化合物Fを含む。化合物Fは、常温(25℃)において液状であり、それ自身が流動性の高いものである。また、化合物Fは、顔料や、他のカラーフィルター用インクの成分を分散(または溶解)させる液性媒体としての機能も有している。
また、化合物Fは、上述したようなスルホン化顔料誘導体と親和性が高いものである。このため、スルホン化顔料誘導体が付着したハロゲン化フタロシアニン錯体の粒子は、化合物Fを含むカラーフィルター用インク中において安定して分散することができる。
【0057】
以上より、着色部形成時において、カラーフィルター用インクは、液性媒体の大部分が揮発したのちにも粘度が十分に低いものとなり、カラーフィルター用インクの流動性が保持される。そして、液性媒体の揮発量が少なくなり、上述したようなカラーフィルター用インクの対流が抑制された時点で、流動性を有するカラーフィルター用インクがセル内において平坦なものとなり、その形状で硬化する。このため、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、凹凸が少なく平坦なものとなる。
以上の結果、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成されたカラーフィルターは、コントラスト比、明度に優れたものとなる。
また、液滴吐出時においても、同様の理由からカラーフィルター用インクの粘度は低いものとなり、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性が優れたものとなる。
【0058】
上記式(1)において、aは自然数であればよいが、1〜12であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。これにより、化合物Fが、他の分子と絡み合うことが防止されるとともに、化合物Fは、より自由に変形しやすいものとなる。この結果、カラーフィルター用インクの粘度を低いものとすることができる。また、着色部形成時において、カラーフィルター用インクの流動性が低下すること(粘度が上昇すること)をより確実に抑制することができる。
【0059】
また、上記式(1)において、bは自然数であればよいが、1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。このようにbが比較的小さい値となることにより、化合物Fが、他の分子と絡み合うことが防止され、カラーフィルター用インクの粘度を低いものとすることができる。また、形成される着色部の耐溶剤性および耐熱性を十分に高いものとすることができる。このような着色部の優れた耐溶剤性、耐熱性の発現は、bが比較的小さい値となることにより、化合物F中のエーテル結合が少なくなった結果、化合物F中における炭素-炭素結合が増加し、着色部中において化合物F由来の化合物(重合体)の熱、薬品等による切断が少なくなるためと考えられる。
【0060】
化合物Fは、アルキレングリコール鎖を有することが好ましい。これにより、化合物Fは、その分子構造の自由度を高い(分子内で変形しやすい)ものとすることができるため、カラーフィルター用インクの粘度を低くすることができ、また、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの流動性をより高いものとすることができる。また、液性媒体としてアルキレングリコール鎖を有する化合物を用いる場合、化合物Fとアルキレングリコール鎖を有する化合物との親和性が高いため、カラーフィルター用インクの粘度をより低いものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができる。
【0061】
また、化合物Fは、メタクリロイル基を除き、分岐鎖を有せず、直鎖状であることが好ましい。これにより、化合物Fは、分子構造の自由度が高いものとなるため、カラーフィルター用インクの粘度を低くすることができ、また、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの流動性をより高いものとすることができる。
特に、化合物Fは、下記式(3)に示される構造をなしていることが好ましい。これにより、化合物Fは、分子構造の自由度を高いものとしつつ、形成される着色部の耐溶剤性および耐熱性を十分に高いものとすることができる。
【0062】
【化11】

【0063】
前記化合物Fの分子量は、184〜492であることが好ましく、184〜252であることがより好ましい。これにより、化合物Fが比較的低分子量となり、カラーフィルター用インク中でより自由に運動することができ、カラーフィルター用インクの着色部形成時における流動性をより高いものとすることができる。
なお、化合物Fの分子量として、化合物Fが複数種の化合物で構成されている場合、これら複数種の化合物の重量平均分子量を用いることができる。
【0064】
化合物Fとしては、例えば、下記式(9)〜(13)に示される化合物が挙げられる。この中でも、化合物Fとして、下記式(9)に示される化合物を用いることが好ましい。これにより、化合物Fの分子構造の自由度を高いものとしてカラーフィルター用インクの着色部形成時における流動性を特に優れたものとすることができる。さらに、グリコール鎖を有する液性媒体を用いた場合、液性媒体との親和性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0065】
【化12】

【0066】
カラーフィルター用インク中における化合物Fの含有率は、0.1〜8.0wt%であることが好ましく、0.3〜6.0wt%であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの着色部形成時における流動性を高いものとしつつ、形成される着色部の耐溶剤性および耐熱性を十分に高いものとすることができる。
上述したように本発明において、樹脂材料は、化合物Fを含むものであるが、さらに、他の樹脂成分を含むものであってもよい。
このような樹脂成分(重合体)としては、以下に述べるような重合体X、重合体Y、重合体M、重合体W、重合体Z等が挙げられる。
【0067】
[重合体X]
重合体Xは、下記式(4)で表される単量体成分x1と下記式(5)で表される単量体成分x2と下記式(6)で表される単量体成分x3とを含むものであり、例えば、下記式(14)で表されるものである。重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x2およびx3を含有するものである。
【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
【化16】

【0072】
重合体Xは、形成される着色部において、硬度、耐熱性および耐溶剤性の向上に寄与する成分である。重合体Xは、熱等が加えられることにより、3次元網目状の高分子となり、優れた硬度、耐熱性、および耐溶剤性を発現する。
また、重合体Xはメタクリル酸を有するモノマーの重合物であり、かつ化合物Fはアクリル酸エステル化合物またはメタクリル酸エステル化合物であるため、重合体Xと化合物Fとは、親和性が高い。このため、カラーフィルター用インクは、重合体Xと化合物Fとを同時に含むことによる以下のような効果が得られる。
【0073】
上述したように、重合体Xは、熱等が加えられることにより、3次元網目状の高分子を形成する。一方で、化合物Fは、分子中にメタクリロイル基を二つ有するため、硬化することにより3次元網目状の高分子となる。このため、親和性の高い重合体Xと化合物Fとが混合された状態で硬化することにより、形成される着色部は、親和性の化合物F由来の高分子と重合体X由来の高分子とが互いの間隙を埋めるように絡み合って存在することとなり、耐溶剤性、耐熱性、硬度に特に優れたものとなる。この結果、製造されるカラーフィルターは、長期にわたって明度、コントラスト比等が優れたものとなる。
【0074】
また、重合体Xは、化合物Fの揮発を防止することができる。化合物Fを樹脂材料の前駆体として単独で用いた場合、化合物Fは、着色部形成時において加熱されることにより揮発しやすいものである。しかしながら、化合物Fと親和性の高い重合体Xとを同時に用いることにより、着色部形成時における化合物Fの揮発が防止され、形成される着色部をより平坦にすることができる。
【0075】
また、重合体Xは、単独で樹脂材料として用いた場合、カラーフィルター用インクから液性媒体の大部分が除去された際に、カラーフィルター用インクの流動性が低いものとなりやすい。しかしながら、本発明では、樹脂材料として重合体Xを用いても、化合物Fを含むことにより、カラーフィルター用インクから液性媒体の大部分が除去された際にも、カラーフィルター用インクの流動性が高いものとして長時間にわたって維持される。これは、カラーフィルター用インク中において重合体Xの分子鎖同士の隙間に重合体Xと親和性の高い化合物Fが入り込み、重合体Xの可塑剤および流動性向上補助剤として機能していることが考えられる。
【0076】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(4)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、樹脂材料についての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐溶剤性、耐熱性、硬度等を優れたものとすることができる。
【0077】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値。以下、他の単量体成分(他の重合体についても含む)の含有率についても同様とする。)は、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。以下の重合体Xの他の単量体成分、他の重合体についても同様とする。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0078】
(単量体成分x2)
重合体Xは、上記式(5)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性等を優れたものとすることができる。これにより、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドンやγ−ブチルラクトンを用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0079】
また、単量体成分x2は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0080】
重合体X中における単量体成分x2の含有率は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0081】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(6)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを抑制することができる。
【0082】
また、単量体成分x3は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下における反応性を高めることができる。これにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0083】
重合体X中における単量体成分x3の含有率は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのが好ましい。
【0084】
重合体Xの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、着色部形成時においてカラーフィルター用インクの流動性が過度に低下することを防止しつつ、形成される着色部の耐熱性、耐薬品性を十分に高いものとすることができる。また、重合体Xのカラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における重合体Xの含有率は、0.3〜13.0wt%であることが好ましく、0.7〜8.0wt%であることがより好ましい。
【0085】
また、カラーフィルター用インク中における重合体Xの含有率をC[wt%]、カラーフィルター用インク中における化合物Fの含有率をC[wt%]としたとき、1.0≦C/C≦5.0の関係を満足することが好ましく、1.2≦C/C≦4.0の関係を満足することがより好ましい。これにより、形成される着色部は、凹凸が特に少なくなり、明度およびコントラスト比に特に優れ、かつ、硬度、耐溶剤性、耐熱性に特に優れたものとなる。
【0086】
[重合体Y]
重合体Yは、下記式(15)で表される単量体成分y1を含み、例えば、下記式(16)で表わされる重合体である。重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1を含有するものである。
【0087】
【化17】

【0088】
【化18】

【0089】
重合体Yは、形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Yは、メトキシシリル基を有することにより、メトキシシリル基が他の重合体等の水酸基等と反応することができ、形成される着色部の硬度を高いものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクを用いて製造されたカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
また、重合体Yは、単量体成分y1以外の単量体成分を含むものであってもよい。
【0090】
重合体Yの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができる。
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0091】
[重合体M]
重合体Mは、下記式(17)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(18)で表される単量体成分m3とを含むものである。
【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
重合体Mは、カラーフィルター用インク中において、顔料を均一に分散させ、顔料の分散状態を長期にわたって維持することができる。この結果、カラーフィルター用インクは、粘度が十分に低くなり液滴の吐出安定性に優れるとともに、着色部を形成する際に液性媒体の除去を行った際にも、比較的長期にわたって流動性を保ちやすいものとなる。これは、重合体Mが顔料粒子同士の間に入り込み、顔料粒子同士の接触を防止することができ、この結果、顔料粒子の凝集が防止されるためと考えられる。
【0095】
また、重合体Mは、熱を与えられることにより硬化するが、上述したような「硬化反応のスイッチング特性」を有する。このため、着色部形成時において、所定温度以上に加熱することにより、樹脂材料は硬化する。一方で、カラーフィルター用インクを所定温度以下で保存することにより、カラーフィルター用インクの長期保存性(カラーフィルター用インクの寿命)が非常に優れたものとなり、大量生産したカラーフィルター用インクの作り置きによる品質の低下等の問題の発生が効果的に防止され、カラーフィルターの製造に際してカラーフィルター用インクの交換頻度を減らすことができるため、カラーフィルターの生産性、製造されるカラーフィルターの信頼性を優れたものとすることができる。
【0096】
また、重合体Mを含むことにより、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体を容易に微粒子化(解砕)することができ、カラーフィルター用インクの生産性を向上させることができる。なお、重合体Mは、機械的な力に対して極めて優れた安定性を有しているため、後述する微分散工程における変性、劣化が防止される。したがって、重合体Mを用いることにより、樹脂材料の劣化等を確実に防止しつつ、顔料の分散性に優れたカラーフィルター用インクを効率よく調製することができる。
重合体Mは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Mが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分m1、m2およびm3を含有するものである。
【0097】
(単量体成分m1)
重合体Mは、上記式(17)で表される単量体成分m1、すなわち、ブロックされたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」ともいう)を有する化合物を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(17)で表される単量体成分m1を複数種含むものであってもよい。
【0098】
このような単量体成分m1を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。すなわち、重合体M中における単量体m1が有するブロックイソシアネート基は、着色部形成工程(硬化工程)において付与されるような比較的高いエネルギーによって脱ブロック化し、活性なイソシアネート基が生成し、前記イソシアネート基とカルボキシル基または酸無水物基が硬化に寄与して、基板との密着性、耐熱性、耐薬品性等の向上を図れる一方で、比較的低いエネルギーが与えられた場合には、上記のような脱ブロック化が進行せず、硬化反応の進行が防止、抑制される。
【0099】
式(17)で表される単量体成分m1において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1〜8の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。Rはイソシアネート基のブロック剤RHの残基を示す。
における炭素数1〜8の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基等の直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和脂肪族炭化水素基(アルキレン基)が挙げられる。これらの中でも、エチレン、トリメチレン、プロピレン基等の炭素数2〜4の2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0100】
イソシアネート基のブロック剤RHとしては、例えば、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤;ブチルメルカプタン等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等の酸アミド系ブロック剤;マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン系ブロック剤;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤;ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
イソシアネート基のブロック剤としては、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤が好ましく、下記式(19)で表されるものがより好ましい。
【0101】
【化21】

【0102】
式(19)中のRおよびRにおける炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル基等の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。これらのなかでも、メチル、エチル、プロピル基等の炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましい。RおよびRが互いに結合して隣接する炭素原子とともに結合する環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜12員程度(好ましくは5または6員)のシクロアルカン環等が挙げられる。
【0103】
式(17)で表される単量体成分m1の具体例としては、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)(下記式(20)で表されるもの)、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチル(下記式(21)で表されるもの)等が挙げられる。
【0104】
【化22】

【0105】
【化23】

【0106】
重合体M中における単量体成分m1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値。以下、他の単量体成分(他の重合体についても含む)の含有率についても同様とする。)は、1〜99wt%(例えば10〜95wt%)であるのが好ましく、20〜90wt%であるのがより好ましく、25〜88wt%であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分m2、m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m1を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m1の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m1を含有しているのが好ましい。
【0107】
(単量体成分m2)
重合体Mは、カルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に複数種の単量体成分m2を含むものであってもよい。
このような単量体成分m2を重合体M中に単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、単量体成分m2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性が特に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下がより効果的に防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0108】
単量体成分m2としては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。単量体成分m2の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)等が挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸(下記式(22)で表されるもの)が特に好ましい。
【0109】
【化24】

【0110】
重合体M中における単量体成分m2の含有率は、0.5〜98wt%(例えば2.5〜70wt%)であるのが好ましく、3〜50wt%であるのがより好ましく、5〜40wt%であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1や後に詳述する単量体成分m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m2を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m2の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m2を含有しているのが好ましい。
【0111】
(単量体成分m3)
重合体Mは、上記式(18)で表される単量体成分m3((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(18)で表される単量体成分m3を複数種含むものであってもよい。
【0112】
このような単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性を高いものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの保存安定性(長期保存性)を優れたものとすることができる。
【0113】
における炭素数16〜25の炭化水素基としては、例えば、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ドコシル(ベヘニル)基等のアルキル基;10−シクロヘキシルデシル、12−シクロヘキシルドデシル、14−シクロヘキシルテトラデシル、16−シクロヘキシルヘキサデシル基等の脂環式炭化水素基とアルキル基とが結合した基;10−フェニルデシル、12−フェニルドデシル、14−フェニルテトラデシル、16−フェニルヘキサデシル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0114】
炭素数16〜25の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1〜15(好ましくは、炭素数1〜12)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0115】
単量体成分m3の具体例としては、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記のように、重合体Mを構成する単量体成分m3が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、16〜25であるが、特に、16〜22であるのが好ましく、16〜20であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。
【0116】
重合体M中における単量体成分m3の含有率は、0.5〜98wt%(例えば2.5〜70wt%)であるのが好ましく、3〜50wt%であるのがより好ましく、5〜40wt%であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1、m2等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m3を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m3の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m3を含有しているのが好ましい。
【0117】
重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m2の比率(Cm1[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm2は、2/98〜98/2であるのが好ましく、20/80〜95/5であるのがより好ましく、40/60〜95/5であるのがさらに好ましい。
また、重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m3の比率(Cm3[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm3は、2/98〜98/2であるのが好ましく、20/80〜95/5であるのがより好ましく、40/60〜95/5であるのがさらに好ましい。
重合体Mとしては、例えば、下記式(23)で表されるものがある。
【0118】
【化25】

【0119】
上述したような優れた効果は、カラーフィルター用インクが、単量体成分m1、m2およびm3を含む重合体Mを含有することにより得られるものであって、単量体成分m1、m2およびm3のうち1種または2種以上の単量体成分を含んでいない場合や、単量体成分m1、m2およびm3を単一分子中に含まない場合(例えば、カラーフィルター用インクが、重合体Mを含まず、その代わりに、単量体成分m1のみからなる重合体と、単量体成分m2のみからなる重合体と、単量体成分m3のみからなる重合体とを含む場合等)には得られない。
【0120】
また、重合体Mは、上述した単量体成分m1、m2およびm3以外の成分を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。このような成分としては、例えば、以下に述べるような単量体成分m4、単量体成分m5、単量体成分m6、単量体成分m7等が挙げられる。
【0121】
(単量体成分m4)
重合体Mは、下記式(24)で表される単量体成分m4((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0122】
【化26】

【0123】
重合体Mが単量体成分m4を含むことにより、後に詳述する液性媒体が親水性の高い場合であっても、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の溶解性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の透明性を優れたものとすることができる。また、形成される着色部に柔軟性を付与することができる。
単量体成分m4において、Rは、炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい炭素数1〜15の炭化水素基を示すが、当該炭化水素基の炭素数は、1〜12であるのが好ましい。Rで示される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル、ジシクロペンタニル、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0124】
炭素数1〜15の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1〜15(好ましくは、炭素数1〜12)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0125】
単量体成分m4の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0126】
上記のように、単量体成分m4が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、1〜15であるが、特に、1〜8であるのが好ましく、1〜4であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。
上記のような単量体成分m4を含む重合体Mとしては、例えば、下記式(25)で表されるものがある。
【0127】
【化27】

【0128】
(単量体成分m5)
重合体Mは、芳香族ビニル化合物である単量体成分m5を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m5を含むことにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に特に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下がより効果的に防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が特に生じにくいものとなる。
単量体成分m5の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル等が挙げられる。
【0129】
(単量体成分m6)
重合体Mは、ヒドロキシル基含有化合物である単量体成分m6を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m6を含むことにより、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、着色部形成時における樹脂材料の硬化反応(特に、重合体Mに加え、後に詳述するような重合体X、重合体Z、重合体Wよりなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂材料の硬化反応)をより好適に進行させることができる。
【0130】
単量体成分m6の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物やエチレンオキサイド、若しくはプロピレンオキサイドを開環重合したヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0131】
(単量体成分m7)
重合体Mは、3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物である単量体成分m7を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m7(3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物)には、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物が含まれる。
重合体Mが単量体成分m7を含むことにより、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の硬度や、基板に対する密着性等の更なる向上を図ることができる。
【0132】
オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等)等が挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物、エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物等を用いることもできる。エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物としては、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルオキシラン、4−ビニルフェネチルオキシラン等のスチレン誘導体が挙げられる。
【0133】
オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0134】
カラーフィルター用インクを構成する重合体Mが、上述したような単量体成分m7を含むものである場合、3〜5員の環状エーテル基(オキシラン環(エポキシ基)、オキセタン環(オキセタニル基)、オキソラン環(オキソラニル基))は硬化性基として作用する。3〜5員の環状エーテル基は、主に耐薬品性(耐溶剤性、耐アルカリ性等)の向上に寄与する。
【0135】
重合体Mが、単量体成分m1、m2、m3に加え、さらに、単量体成分m4、m5、m6およびm7よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含むものである場合、重合体M中における単量体成分m4、m5、m6およびm7の含有率の総和は、60wt%以下であるのが好ましく、50wt%以下であるのがより好ましく、40wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述した単量体成分m1、m2、m3を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、単量体成分m4、m5、m6、m7を含むことによる効果が発揮される。
【0136】
重合体Mの重量平均分子量は、500〜100000であるのが好ましく、1000〜40000であるのがより好ましく、2000〜30000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクの保存安定性(長期安定性)、吐出安定性、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。また、後述するような製造方法用いた場合のカラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。
また、重合体Mの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における重合体Mの含有率Cは、0.5〜12wt%であるのが好ましく、1.0〜9.0wt%であるのがより好ましい。
【0137】
[重合体W]
重合体Wは、下記式(26)で表される単量体成分w1と下記式(27)で表される単量体成分w2と下記式(28)で表される単量体成分w3と下記式(29)で表される単量体成分w4とを含むものである。重合体Wとしては、例えば、下記式(30)で表されるものがある。
【0138】
【化28】

【0139】
【化29】

【0140】
【化30】

【0141】
【化31】

【0142】
【化32】

【0143】
重合体Wは、重合体Mと同様に、熱を与えられることにより硬化する硬化性樹脂であり、硬化反応のスイッチング特性に優れる。また、重合体Wは、重合体Mと同様に、顔料粒子同士の凝集を防止し、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Wは、機械的な力に対しては比較的安定であるため、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体をより容易に微粒子化(解砕)することができ、カラーフィルター用インクの生産性をさらに向上させることができる。
【0144】
なお、重合体Wは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Wが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分w1、w2、w3およびw4を含有するものである。
また、重合体Wは、上述したような単量体成分w1、w2、w3、w4以外の単量体を含むものであってもよいが、単量体成分m3を含まないものである。
【0145】
(単量体成分w1)
重合体Wは、上記式(26)で表される単量体成分w1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分w1は、重合体Wにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Wの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Wの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0146】
重合体W中における単量体成分w1の含有率は、25〜75wt%であるのが好ましく、40〜60wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分w2、w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w1を含有しているのが好ましい。
【0147】
(単量体成分w2)
重合体Wは、上記式(27)で表される単量体成分w2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、分散剤の分散安定性を特に優れたものとすることができ、結果として、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0148】
重合体W中における単量体成分w2の含有率は、2〜25wt%であるのが好ましく、5〜15wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1および後に詳述する単量体成分w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w2を含有しているのが好ましい。
【0149】
(単量体成分w3)
重合体Wは、上記式(28)で表される単量体成分w3を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。これにより、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生をより確実に防止することができる。
【0150】
また、単量体成分w3は、重合体(重合体W)中において、比較的低い温度(例えば、100℃以下)では反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を有するものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、例カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。
【0151】
重合体W中における単量体成分w3の含有率は、5〜50wt%であるのが好ましく、10〜40wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2および後に詳述する単量体成分w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w3を含有しているのが好ましい。
【0152】
(単量体成分w4)
重合体Wは、上記式(29)で表される単量体成分w4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w4を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることをより確実に防止することができる。
【0153】
また、単量体成分w4を単量体成分として含有することにより、樹脂材料全体としての疎水性を好適に調整することができ、樹脂材料を構成する各重合体の親和性、相溶性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0154】
重合体W中における単量体成分w4の含有率は、3〜40wt%であるのが好ましく、5〜30wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2、w3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w4を含有しているのが好ましい。
【0155】
重合体Wの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Wの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0156】
[重合体Z]
重合体Zは、下記式(31)で表される単量体成分z1と下記式(32)で表される単量体成分z2と下記式(33)で表される単量体成分z3とを含むものである。重合体Zとしては、例えば、下記式(34)で表されるものがある。
【0157】
【化33】

【0158】
【化34】

【0159】
【化35】

【0160】
【化36】

【0161】
重合体Zは、重合体Mと同様に、熱を与えられることにより硬化する硬化性樹脂であり、硬化反応のスイッチング特性に優れる。また、重合体Zは、重合体Mと同様に、顔料粒子同士の凝集を防止し、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Zは、機械的な力に対しては比較的安定であるため、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体をより容易に微粒子化(解砕)することができ、カラーフィルター用インクの生産性をさらに向上させることができる。
【0162】
なお、重合体Zは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Zが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分z1、z2およびz3を含有するものである。
また、重合体Wは、上述したような単量体成分z1、z2、z3以外の単量体を含むものであってもよいが、単量体成分m3を含まないものである。
【0163】
(単量体成分z1)
重合体Zは、上記式(31)で表される単量体成分z1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分z1は、重合体Zにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Zの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Zの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0164】
重合体Z中における単量体成分z1の含有率は、50〜95wt%であるのが好ましく、60〜85wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分z2、z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z1を含有しているのが好ましい。
【0165】
(単量体成分z2)
重合体Zは、上記式(32)で表される単量体成分z2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、上述したような分散剤の分散安定性を特に優れたものとすることができ、結果として、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0166】
重合体Z中における単量体成分z2の含有率は、3〜35wt%であるのが好ましく、10〜25wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1および後に詳述する単量体成分z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z2を含有しているのが好ましい。
【0167】
(単量体成分z3)
重合体Zは、上記式(33)で表される単量体成分z3を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z3は、前述した単量体成分x1等と同様に、後述する着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の硬化に寄与する成分であるが、単量体成分x1が、形成される着色部の硬度を高いものとする機能を有しているのに対し、単量体成分z3は、形成される着色部に適度な柔軟性を与え、着色部が設けられる基板等に変形(例えば、熱膨張、熱収縮等)が生じた場合であっても、その変形に追従し、基板等に対する着色部の密着性を保持させる機能を有している。これにより、例えば、製造されるカラーフィルターが画像表示に伴う急激な温度変化に繰り返しさらされた場合においても良好な密着性を保持することができ、光漏れ(白抜け、輝点)等の問題が発生するのをより確実に防止することができる。すなわち、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0168】
また、単量体成分z3は、重合体Zにおいて、比較的低い温度(例えば、100℃以下)では反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下においては、十分な反応性を有するものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分z3を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。
【0169】
重合体Z中における単量体成分z3の含有率は、2〜30wt%であるのが好ましく、5〜20wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1、z2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z3を含有しているのが好ましい。
【0170】
重合体Zの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
【0171】
また、重合体Zの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
なお、上述した各重合体は、最終的に上述したような構造(各単量体成分に対応する各部分構造)を有していればよく、上述した各単量体成分そのものを用いて合成されたものであってもよいし、上述した単量体成分とは異なる成分(前駆体、誘導体等)を用いて合成されたものであってもよい。
【0172】
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5〜18wt%であるのが好ましく、1〜15wt%であるのがより好ましく、3〜10wt%であるのがさらに好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率をC[wt%]、カラーフィルター用インク中における顔料の含有率をC[wt%]としたとき、0.2≦C/C≦9.0の関係を満足するのが好ましく、0.3≦C/C≦5.0の関係を満足するのがより好ましく、0.4≦C/C≦3.5の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、製造されるカラーフィルターのコントラスト等をより優れたものとすることができたり、着色部厚さをより薄いものとした場合であっても十分なコントラストを確保することができる。なお、従来のカラーフィルター用インクでは、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じる等の不都合を生じやすかったが、本発明では、上記のように、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合であっても、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。すなわち、上記のような関係を満足することにより、本発明の効果はより顕著に発揮される。
なお、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料は、上述した以外の樹脂成分またはその前駆体を含むものであってもよい。
【0173】
<液性媒体>
液性媒体(液状媒質)は、上述したような顔料を、分散する機能を有するものである。すなわち、液性媒体は、分散媒として機能するものである。そして、通常、液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
カラーフィルター用インクを構成する液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジn−ブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ジアセトキシヘキサン、ブトキシプロパノール、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、オクタン酸エチル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジメチル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、1−ブトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ブチルグリコレート、N−メチル−2−ピロリドン、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、n−ノニルアルコール、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0174】
中でも、液性媒体としては、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むことがより好ましい。これらの化合物は、粘度が低く、温度による粘度変化が少ない化合物であるとともに、上述したような化合物Fとの親和性が高い。このため、化合物Fは液性媒体に好適に溶解することができカラーフィルター用インクの粘度は十分に低いものとなる。また、着色部形成時において、カラーフィルター用インク中に残存している液性媒体が少量であっても、化合物Fは好適に液性媒体に溶解し、カラーフィルター用インクは流動性を維持することができる。さらに、このような化合物は上述したスルホン化顔料誘導体とも親和性が優れているため、スルホン化顔料誘導体が付着したハロゲン化フタロシアニン錯体のカラーフィルター用インク中における分散安定性を優れたものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクの粘度を低いものとすることができ、また、着色部形成時においても、カラーフィルター用インクの粘度の上昇を防止することができる。また、顔料、樹脂材料等を比較的多量にカラーフィルター用インク中に含ませた場合であっても、カラーフィルター用インクの物性の変化が比較的少ないものとなる。また、液性媒体が上記のような化合物で構成されたものであると、後述するようなカラーフィルターの製造方法において、セル内全体に、カラーフィルター用インクをより確実に濡れ広がるようにすることができる。特に、化合物Fがアルキレングリコール鎖を有する場合、アルキレングリコール鎖を有する上述したような化合物との親和性が特に高くなるため、上述したような効果はより顕著なものとなる。
【0175】
また、上述した中でも、液性媒体が、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むものである場合、カラーフィルター用インクの粘度を特に低いものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクが基板上ですばやく隅々まで濡れ広がるため、形成される着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができ、色再現性および消偏性(コントラスト比)を特に優れたものとすることができる。また、液性媒体が、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むものである場合、水の液性媒体への溶解度を適度なものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクを構成する液性媒体は、外部からの吸湿を確実に防止することができる。また、液滴吐出装置のカラーフィルター用インクの流路等の内部に水が混入した場合であっても、水を好適に溶解し、除去することができる。この結果、液滴吐出ヘッドからのカラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性(例えば、液滴の吐出量の均一性)をより長期にわたって、特に優れたものとすることができる。
【0176】
また、上述した中でも、液性媒体が1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものである場合、カラーフィルター用インクがノズルの近傍で非常に乾燥しにくくなり、インク付与工程における飛行曲がりの発生がより効果的に抑制される。また、ノズルの詰まりを防ぐために定期的にカラーフィルター用インクを少量排出するために行うフラッシング工程において、長距離のヘッド移動中におけるノズル近傍のカラーフィルター用インク乾燥を防ぐことができ、基板中に設けられたダミー画素などの捨て打ちエリアが不必要となる。また、カラーフィルター用インクが乾燥しにくくなることで、顔料、樹脂材料等の成分の劣化、凝集、偏析をより確実に防止することができる。
【0177】
また、特に、液性媒体が1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものである場合、液性媒体への水の溶解度を適度なものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクを構成する液性媒体は、外部からの過剰な水分の吸収を確実に防止しつつ、液滴吐出装置のカラーフィルター用インクの流路等の内部に多少の水分が混入した場合であっても、水を好適に溶解することで、分散の安定性・流動性を保持したまま流路内を移動することができる。
【0178】
液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、160〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0179】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0180】
カラーフィルター用インク中における液性媒体の含有率は、50〜98wt%であるのが好ましく、60〜95wt%であるのがより好ましく、65〜93wt%であるのがさらに好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な着色濃度を確保することができる。
【0181】
また、液性媒体は、複数種の化合物で構成される場合、液性媒体を構成する主成分のほかに、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルおよび3−エトキシプロピオン酸エチルよりなる群から選択される1種または2種以上を含む場合、以下のような効果が得られる。これらの化合物は、比較的高い沸点を有するとともに、上述したような樹脂材料(特に化合物F)を溶解しやすい。そして、着色部形成時において、主成分となる液性媒体の大部分が揮発した後に、このような化合物(以下、副成分ともいう。)は比較的穏やかに除去される。一方で、副成分は樹脂材料を溶解しやすいため、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの流動性を維持しやすいものである。この結果、副成分の除去時におけるカラーフィルター用インクの対流が防止されつつ、カラーフィルター用インクの高い流動性が維持され、形成される着色部は、凹凸が少ないものとなる。
また、カラーフィルター用インク中における上述したような副成分の含有率は、3.0〜25wt%であることが好ましく、7.0〜20wt%であることがより好ましい。
カラーフィルター用インクは、上記以外の成分を含むものであってもよい。カラーフィルター用インクを構成する上記以外の成分としては、例えば、分散剤等が挙げられる。
【0182】
<分散剤>
カラーフィルター用インクには、分散剤が含まれていてもよい。分散剤は、顔料粒子の表面に付着することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散性の向上に寄与する。
分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。
【0183】
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、ヒノアクトKF−1000、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0184】
特に、カラーフィルターインクは、分散剤として、所定の酸価を有する分散剤(以下、酸価分散剤とも言う)と、所定のアミン価を有する分散剤(以下、アミン価分散剤とも言う)とを含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、カラーフィルター用インクの粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立される。その結果、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0185】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)、ヒノアクトKF−1000(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0186】
また、アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
上記のような分散剤(酸価分散剤およびアミン価分散剤)を用いることにより、形成される着色部の色味に悪影響を与えることなく、インク中における顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
【0187】
酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、アミン価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。また、カラーフィルター用インクの中に顔料が含まれる場合、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
また、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零であるのが好ましい。
【0188】
アミン価分散剤と酸価分散剤とを併用する場合、アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、25〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、酸価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。なお、分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
また、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零であるのが好ましい。
【0189】
また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、カラーフィルター用インク中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、当該カラーフィルター用インク中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
また、分散剤としては、上記以外の分散剤を用いてもよい。
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、0.5〜8wt%であるのがより好ましい。
【0190】
<その他の成分>
本発明のカラーフィルター用インクは、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、各種染料、各種架橋剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等のオニウム塩等の熱酸発生剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等の光酸発生剤;各種重合開始剤;酸架橋剤;界面活性剤;増感剤;光安定剤;各種染料;発光材料;レベリング剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;接着性改良剤;各種重合促進剤;各種光安定化剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤等が挙げられる。
【0191】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185、C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられる。
【0192】
架橋剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、多官能エポキシモノマー、多官能ビニルエーテルモノマー、多官能オキセタンモノマー等を用いることができる。多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイト等のエステル基含有酸無水物が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸無水物が好ましい。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。また、多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸が好ましい。また、多官能エポキシモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製、商品名セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードGT401、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードPB3600、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。また、多官能ビニルエーテルモノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能オキセタンモノマーの具体例としては、キシリレンジオキセタン、ビフェニル型オキセタン、ノボラック型オキセタン等が挙げられる。
【0193】
レベリング剤は、インクの表面張力を低下させることにより、インクの表面を平滑化し、着色部を平坦化させるものである。このため、インクがレベリング剤を有することにより、長期にわたって低粘度で流動性を維持する上述したような樹脂材料の効果と相乗的に作用し、セル中のインクの表面がより平坦になる。このため、形成される着色部はより平坦なものとなる。
【0194】
このようなレベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素−ケイ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。レベリング剤の具体例としては、OX−880EF、OX−881、OX−883、OX−883HF、OX−70、OX−77EF、OX−60、OX−710、OX−720、OX−720EF、OX−750HF、LAP−10、LAP−20、LAP−30、1970、230、LF−1970、LF−1980、LF−1982、LF−1983、LF−1984、LF−1985、LHP−95、LHP−96、UVX−35、UVX−36、UVX−39、AQ−200(以上、楠本化成社製)BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N/361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392(以上、ビックケミー・ジャパン製)等のアクリル系レベリング剤、LHP−90、LHP−91(楠本化成(株)製)等のビニルエーテル系レベリング剤、、BYK−307、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−330、BYK−331、BYK−344、BYK−silclean3700(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、KP−321、KP−324(以上、信越化学工業社製)等のシリコーン系レベリング剤、メガファックF−443,F−444,F−445,F−446,F−470,F−471,F−472SF,F−474,F−475,F−477,F−478,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−484,F−486,F−487,F−489(以上、大日本インキ化学工業社製)等のフッ素−ケイ素系レベリング剤、サーフィノール104、サーフィノール82、サーフィノール2502、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノール61、サーフィノール2502、サーフィノール82、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF37、サーフィノールDF58、サーフィノールDF75、サーフィノールDF210、サーフィノールCT111、サーフィノールCT121、サーフィノールCT131、サーフィノールCT136、サーフィノールCT151、サーフィノールTG、サーフィノールGA、サーフィノールPSA−336、ダイノール604、エンバイロジェムAD−01、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−004、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4036、オルフィンEXP.4051F、オルフィンSPC、オルフィンAF−103、オルフィンAF−104、オルフィンAK−02、オルフィンSK−14、オルフィンAE−3、オルフィンPD−003、オルフィンPD−201、オルフィンPD−202、オルフィンPD−301、オルフィンB、オルフィンP、オルフィンY、オルフィンA、オルフィンSTG、オルフィンSPC(以上、日信化学工業(株)社製)等のアセチレングリコール系レベリング剤、ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム(株)製);フォスファノールML−200、フォスファノールML−220、フォスファノールRD−510Y、フォスファノールRS−410、フォスファノールRS−610、フォスファノールRS−710、フォスファノールRL−210、フォスファノールRL−310、フォスファノールRB−410、フォスファノールRD−720N(以上、東邦化学工業(株)社製);Lanco Flow L、Lanco Flow U、SOLSPERSE20000(以上、Lubrizol Deutschland GmbH社製);フタージェント100、フタージェント100C、フタージェント110、フタージェント140A、フタージェント150、フタージェント150CH、フタージェントA−K、フタージェント501、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント222F、FTX−218、フタージェント300、フタージェント310、フタージェント400SW、フタージェント251、FTX−212M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C(以上、(株)ネオス社製);サーフロンS−111n、サーフロンS−113、サーフロンS−121、サーフロンS−131、サーフロンS−132、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−381、サーフロンS−383、サーフロンS−393、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40、サーフロンSA−100(以上、AGCセイミケミカル(株)社製);ユニダインDS−401、ユニダインDS−403、ユニダインNS−1602、ユニダインNS−1603、ユニダインNS−1605(以上、日進化成(株)社製)等が挙げられる。このような界面活性剤の中でも、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤から選択される1種または2種以上を組み合わせてを用いることが好ましい。特に、サーフィノールDF−58、LHP−95、LHP−90、LF1970から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、形成される着色部の表面がより平坦化され、得られるカラーフィルターは、各部位での色むら、濃度むらが特に小さいものとなる。
【0195】
酸化防止剤は、カラーフィルター用インクの酸化等による変質を防止するとともに、カラーフィルター用インクによって形成された着色部内において顔料や樹脂材料等の熱や光等による劣化を防止することができる。
酸化防止剤としては、各種リン系酸化防止剤;各種イオウ系酸化防止剤;IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L(以上、チバジャパン株式会社製)等の各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤;TINUVIN 111FDL、TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100、TINUVIN 5050、TINUVIN 5060、TINUVIN 5151(以上、チバジャパン株式会社製)等の各種ヒンダーアミン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。この中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一種を用いることが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、TINUVIN152を用いることがさらに好ましい。このような酸化防止剤は、好適にカラーフィルター用インク、着色部の変質を効果的に防止するとともに、カラーフィルター用インク中における顔料の分散性に影響しにくく、かつ、形成される着色部において、色、明度、コントラスト比等の光学特性に影響しにくいものである。
【0196】
紫外線吸収剤は、着色部において、紫外線を吸収することにより、着色部の他の成分の劣化を防止する機能を有する。このような紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の各種紫外線吸収剤を用いることができる。
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、前記の中でも、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。熱酸発生剤のより具体的な例としては、商品名として、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業社製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、CP−66、CP−77(旭電化工業社製品、商品名)、FC−520(3M社製品、商品名)等が挙げられる。
【0197】
光酸発生剤は、光により酸を発生する成分であり、より具体的な例としては、商品名として、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製、商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー(株)社製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達社製品、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学社製、商品名)、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)等が挙げられる。
【0198】
また、カラーフィルター用インクには、ポリアルキレングリコールが含まれていてもよい。ポリアルキレングリコールは、着色部の形成時において、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を低下させることにより、カラーフィルター用インクの流動性を維持することができ、この結果、着色部の平坦化に寄与することができる。また、ポリアルキレングリコールは、着色部形成時において加熱されることにより除去される。
【0199】
ポリアルキレングリコールを構成するグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、各種ブチレングリコール、各種ペンチレングリコール、各種ヘキシレングリコール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組みあわて用いることができる。これらのうち、エチレングリコールのオリゴマーまたは、1,2−プロピレングリコールのオリゴマーを用いることが好ましい。
また、ポリアルキレングリコールは、末端の水酸基が置換されていないことが好ましい。
【0200】
ポリアルキレングリコールの重合度は、3〜40であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させることができる。
また、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は150〜2000であることが好ましく、180〜1000であることがより好ましく、180〜500であることがさらに好ましい。
【0201】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4〜10mPa・sであるのが好ましく、5〜9.5mPa・sであるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0202】
≪カラーフィルター用インクの製造方法≫
次に、上述したようなカラーフィルター用インクの製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態の製造方法は、分散剤と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程と、分散剤分散液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行い、顔料分散体を得る微分散工程と、顔料分散体と化合物F等の樹脂材料を構成する成分とを混合する混合工程とを有する。
【0203】
<予備分散工程>
予備分散工程においては、分散剤と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を調製する。これにより、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができる。ところで、上述した酸価分散剤およびアミン価分散剤は、本来、互いに電気的に引き付け合い易いという性質を有しているが、本実施形態のように、顔料の微分散(微分散工程)に先立って予備分散工程を行うことにより、顔料粒子の表面に、分散剤として酸価分散剤およびアミン価分散剤を用いた場合であっても、酸価分散剤およびアミン価分散剤を、会合状態を十分に解いた状態で、均一かつ安定的に付着させることができ、分散剤同士の凝集、顔料粒子同士の凝集等を確実に防止することができ、結果として、最終的に得られるカラーフィルター用インクの顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0204】
なお、本実施形態の方法により、カラーフィルター用インクを、重合体M、重合体Wまたは重合体Zのうち少なくとも1種を含むものとして調製する場合、本工程において、重合体M、重合体Wまたは重合体Zのうち少なくとも1種を用いるのが好ましい。これにより、後述する微分散工程で、分散剤分散液中に添加された顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の周囲にこれらの重合体が存在することにより、当該顔料粒子同士の接触が防止され、当該顔料粒子同士の凝集が防止されることができる。このため、微分散工程において一旦分散された顔料粒子同士の再凝集を防止して微分散処理を効率よく行うことができ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子(微分散された顔料微粒子)の長期分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。特に、重合体Mを本工程において用いた場合、上述したような効果はより顕著なものとなる。
【0205】
本工程で調製する分散剤分散液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤を含む場合は、その含有率の総和)は、特に限定されないが、10〜40wt%であるのが好ましく、12〜32wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
本工程で調製する分散剤分散液中における重合体M、重合体Wおよび重合体Zの含有率(複数種の重合体を含む場合は、その含有率の総和)は、特に限定されないが、10〜40wt%であるのが好ましく、12〜32wt%であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散剤分散液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、40〜80wt%であるのが好ましく、53〜75wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0206】
なお、溶剤としては、目的とするカラーフィルター用インクを構成する液性媒体と同一の組成を有するものを用いてもよいし、異なる組成のものを用いてもよい。本工程で、溶剤として、目的とするカラーフィルター用インクを構成する液性媒体とは異なる組成を有するものを用いた場合、例えば、後の工程で、所定の液体(溶剤)で希釈したり、減圧処理、加熱処理等を伴う液体(溶剤)の置換を行ったりすることにより、最終的に得られるカラーフィルター用インクにおいて、所望の組成を有する液性媒体とすることができる。
【0207】
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、分散剤分散液を得る。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。
【0208】
<微分散工程>
次に、上記工程で得られた分散剤分散液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
このように、本実施形態では、顔料を添加するのに先立ち、上記のような予備分散工程を設けるとともに、顔料を微分散させる工程(微分散工程)において無機ビーズを多段で添加する。微分散工程において、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率を優れたものとすることができ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子を十分に小さいものとすることができる。このようにして最終的に得られるカラーフィルター用インクは、顔料の分散安定性、および、液滴の吐出安定性が、非常に優れたものとなり、非常に優れたコントラストのカラーフィルターの製造に用いることができるもののとなる。
【0209】
本工程は、無機ビーズを多段で添加することにより行うものであればよく、3段以上に分けて無機ビーズを添加するものであってもよいが、無機ビーズを2段で添加するのが好ましい。これにより、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0210】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0211】
[第1の処理]
本工程では、まず、前述した予備分散工程で調製した分散剤分散液に顔料を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。
第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。
【0212】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましく、0.5〜1.2mmであるのがさらに好ましい。第1の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
分散剤分散液に添加する顔料の使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
【0213】
第1の処理は、顔料、第1の無機ビーズを分散剤分散液に添加した状態で、各種攪拌機を用いて攪拌することにより行うことができる。
第1の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、第1の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
【0214】
[第2の処理]
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。
第2の処理は第1の無機ビーズを含む状態で行うものであってもよいが、第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0215】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。これにより、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料を、十分に微粒化(微分散)させたものとすることができる。
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。第2の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0216】
第2の処理は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
第2の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、第2の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
【0217】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。言い換えると、n段目の処理で用いる無機ビーズ(第nの無機ビーズ)の平均粒径は、(n−1)段目の処理で用いる無機ビーズ(第(n−1)の無機ビーズ)の平均粒径よりも小さいものであるのが好ましい。
なお、微分散工程(例えば、第1の処理、第2の処理)においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0218】
<混合工程>
上記のような微分散工程で得られた顔料分散体を、化合物F等の樹脂材料を構成する成分と混合する(混合工程)。これにより、カラーフィルター用インクが得られる。
本工程は、第2の処理で用いた第2の無機ビーズを除去した状態で行うのが好ましい。第2の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0219】
本工程は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(本工程の処理時間)は、特に限定されないが、1〜60分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
【0220】
なお、本工程では、前記工程で用いた溶剤とは異なる組成の液体を添加してもよい。これにより、前述した予備分散工程での分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。
また、本工程においては、混合に先立って、または、混合の後に、前記工程で用いた溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。溶剤の除去は、例えば、対象とする液体を、減圧雰囲気下に置いたり、加熱したりすることにより行うことができる。
【0221】
《インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセットが用いられる。
【0222】
本発明において、インクセットは、上述したような、主顔料としてのハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体と、副顔料としてのスルホン化顔料誘導体とを含む本発明のカラーフィルター用インクと、他色のインク(カラーフィルター用インク)とを備えたものである。ハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体と、スルホン化顔料誘導体とを含む本発明のカラーフィルター用インクは、通常、緑色の着色部の形成に用いられるものである。したがって、インクセットは、本発明のカラーフィルター用インクに加え、例えば、赤色の着色部の形成に用いられるインク(カラーフィルター用インク)、青色の着色部の形成に用いられるインク(カラーフィルター用インク)を備えている。
【0223】
インクセットが、上述したような本発明のカラーフィルター用インク(緑色のカラーフィルター用インク)のほかに、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を備えるものである場合、Rインクは、顔料として、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、および/または、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体を含むものであるのが好ましい。これにより、Rインクの発色性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(35)または下記式(36)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0224】
【化37】

【0225】
【化38】

【0226】
また、RインクおよびBインクの組成は、着色剤を除き、Gインクと同様の種類の材料を含むことが好ましい。特に、RインクおよびBインクが上述したような化合物Fを含む場合、形成される着色部がより平坦なものとなる。また、特に、RインクおよびBインクが上述したような重合体Mを含む場合、RインクおよびBインクは、顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
【0227】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0228】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0229】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0230】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものである。
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
【0231】
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。
そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0232】
また、着色部12Bは、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成されたものである。このため、各画素間での特性のばらつきが小さく、不本意な混色(複数種のカラーフィルター用インクの混合)等が確実に防止されている。このため、カラーフィルター1は、色むら、濃度むら等の発生が抑制された、信頼性が高いものとなっている。また、着色部12Bは、平坦なものとなっているため、明度およびコントラスト比に優れたものとなっている。
【0233】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚とほぼ同じであることが好ましい。隔壁13の具体的な厚さは、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3.5μmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0234】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として硬化性樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0235】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、上述したようなカラーフィルター1の製造方法の一例について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0236】
図2に示すように、本実施形態では、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式によりカラーフィルター用インク2を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(1d)と、カラーフィルター用インク2から液性媒体を除去し、樹脂材料を硬化させることにより固形状の着色部12とする着色部形成工程(1e)とを有している。
【0237】
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0238】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0239】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0240】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、カラーフィルター用インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のカラーフィルター用インク2を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上のカラーフィルター用インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0241】
また、上述したようにカラーフィルター用インク2のうち緑色のインクは、ハロゲン化フタロシアニン錯体とスルホン化顔料誘導体と化合物Fとを同時に含むものであり、顔料の分散安定性に優れ、かつ粘度が比較的低いため、液滴の吐出安定性に優れている。このため、製造すべきカラーフィルター1が大型のものである場合や、多数枚のカラーフィルター1を連続的に製造する場合であっても、飛行曲がり等の問題の発生を確実に防止ししつつ、液滴の吐出量を容易かつ確実に制御することができる。その結果、製造されるカラーフィルター1における混色、色むら・濃度むら、コントラスト比の低下等の問題の発生を確実に防止することができる。
【0242】
カラーフィルター用インク2の吐出は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からカラーフィルター用インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにカラーフィルター用インク2が圧縮空気によって供給される。
【0243】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルター用インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0244】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、カラーフィルター用インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0245】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0246】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0247】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0248】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0249】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはカラーフィルター用インク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がカラーフィルター用インク2を吐出するノズルとして機能する。
【0250】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、カラーフィルター用インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0251】
図に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給されるカラーフィルター用インク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0252】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からカラーフィルター用インク2が供給される。
【0253】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からカラーフィルター用インク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にカラーフィルター用インク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0254】
また、ノズルプレート128は、ステンレスで構成された基材と、基材を覆うようにして設けられ主としてシリカ化合物で構成されたシリカ膜と、シリカ膜を覆うようにして設けられ、フルオロアルキル化合物を含む撥液膜とによって構成されている。
また、シリカ膜は、撥液膜とステンレスの基材とを密着させる機能を有するとともに、ステンレスの基材を保護する機能を有する。
【0255】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるカラーフィルター用インク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
【0256】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するカラーフィルター用インク2を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的にカラーフィルター用インク2を付与することができる。
なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のカラーフィルター用インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してカラーフィルター用インクを吐出する構成であってもよい。
【0257】
<着色部形成工程(硬化工程)>
次に、セル14内のカラーフィルター用インク2から液性媒体を除去し、樹脂材料を硬化させることにより固形状の着色部12とする(1e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
本工程は、通常、加熱により行う。これにより、形成される着色部12の基板11に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部12内に液性媒体が残存することを確実に防止することができる。その結果、カラーフィルター1の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター1の生産性も向上する。
【0258】
本工程での加熱温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、100〜280℃であるのが好ましく、110〜250℃であるのがより好ましい。これにより、着色部12の構成材料の不本意な劣化・分解等を防止しつつ、樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させ、さらに、カラーフィルター用インク2から好適に液性媒体を除去できる。
また、本工程での加熱時間は、特に限定されないが、30〜190分であることが好ましく、40〜130分であることがより好ましい。
【0259】
また、本工程は、温度の異なる複数の加熱処理を行ってもよい。具体的には、本工程において、比較的低温で基板11の加熱を行う第1の加熱処理と、第1の加熱処理よりも高い温度で基板11の加熱を行う第2の加熱処理とを施してもよい。
これにより、着色部12の構成材料の不本意な劣化・分解等を防止し、カラーフィルター1の生産性を向上させ、さらに、形成される着色部12に液性媒体が残存すること等を効果的に防止することができる。
【0260】
また、本工程において、比較的低温で基板11の加熱を行う第1の加熱処理と、第1の加熱処理よりも高い温度で基板11の加熱を行う第2の加熱処理とを施すことにより、着色部12の表面の平坦性をより高いものとすることができる。
このような場合、第1の加熱処理にて比較的低温で基板11を加熱することにより、カラーフィルター用インク2の対流を防止しつつ、穏やかに液性媒体を除去し、カラーフィルター用インク2の表面を平坦なものとした状態で、流動性を消失または低減させることができる。また、比較的低温で加熱することにより、不本意な樹脂材料の硬化反応を防止することができる。
また、第2の加熱処理では、第1の加熱処理では除去できなかった液性媒体を完全に除去することができる。また、本工程で、樹脂材料を反応させてカラーフィルター用インク2を硬化させる場合、第1の加熱処理において表面が平坦な状態で固定されたカラーフィルター用インク2を、効率よくその形状で硬化させることができる。
【0261】
上記のように、本工程において第1の加熱処理および第2の加熱処理を施す場合、第1の加熱処理での処理温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、30〜100℃であるのが好ましく、40〜80℃であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク2の対流を確実に防止しつつ、カラーフィルター用インク2から好適に液性媒体を除去できる。
また、第1の加熱処理の時間は、特に限定されないが、3〜50分であることが好ましく、5〜40分であることがより好ましい。
【0262】
また、第2の加熱処理での処理温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、120〜280℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。これにより、第1の加熱処理では除去できなかった液性媒体を完全に除去することができる。また、本工程で、樹脂材料(硬化性樹脂材料)を反応させてカラーフィルター用インク2を硬化させる場合、第1の加熱処理において表面が平坦な状態で固定されたカラーフィルター用インク2を、効率よくその形状で硬化させることができる。
また、第2の加熱処理の時間は、特に限定されないが、25〜150分であることが好ましく、30〜100分であることがより好ましい。
【0263】
また、本工程においては、例えば、活性エネルギー線の照射や、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く等の処理を行ってもよい。
活性エネルギー線を照射することにより、樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、樹脂材料の硬化反応を確実に進行させることができ、基板11等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。活性エネルギー線としては、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線、g線、i線、エキシマレーザー等を使用することができる。
【0264】
また、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く(減圧処理を施す)ことにより、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、液性媒体を確実に除去することができ、基板11、形成される着色部12等への悪影響の発生がより確実に防止される。また、加熱処理および減圧処理を併用することにより、より効率よく着色部を形成することができる。
【0265】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図7は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0266】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0267】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図7中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図7中下側)から出射する。
【0268】
上述したように、着色部12Bは、本発明のカラーフィルター用インク2(カラーフィルター用インクセット)を用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが抑制されたものである。その結果、液晶表示装置60において、各部位での色むら、濃度むら等が抑制され、明度およびコントラスト比に優れた画像を安定的に表示することができる。
【0269】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0270】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0271】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0272】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0273】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0274】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。
【0275】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、樹脂材料を硬化させるもの、すなわち、着色部形成工程(硬化工程)を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0276】
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、本発明のカラーフィルターにおいては、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
また、本発明のカラーフィルター用インクは、いかなる方法で製造されたものであってもよく、上述したような方法により製造されたものでなくてもよい。
【0277】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットが、光の三原色に対応する3種(3色)のカラーフィルター用インクを備える場合について中心的に説明したが、カラーフィルター用インクセットを構成するカラーフィルター用インクの数、種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、カラーフィルター用インクセットは、4種以上のカラーフィルター用インクを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0278】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(4)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(5)で表される単量体成分(化合物)x2:15重量部、上記式(6)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分x1、x2、x3を含み上記式(14)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
【0279】
(合成例2〜5)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、4種の重合体(重合体X2〜X5)が得られた。なお、各単量体成分は、合計で300重量部となるようにして合成に用いた。
【0280】
(合成例6)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(15)で表される単量体成分(化合物)y1:300重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分y1を含み、上記式(16)で表わされる重合体Yを得た。
【0281】
(合成例7)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、単量体成分m1としてのメタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート):60重量部、単量体成分m2としてのメタクリル酸:20重量部、単量体成分m3としてのステアリルメタクリレート:20重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:30重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。一方、ラジカル開始剤(重合開始剤)としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:5重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:90重量部に溶解させた溶液を、別の滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の滴下が終了した後、4時間同温度に保持(熟成)し、その後、室温まで冷却して、単量体成分m1、m2、m3を含み上記式(23)で表される重合体Mとしての重合体M1を得た。
(合成例8〜14)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)および単量体成分の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例7と同様の操作を行った。その結果、7種の重合体M(重合体M2〜M8)が得られた。
【0282】
(合成例15)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:180重量部を入れて、85℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(25)で表される単量体成分(化合物)w1:188重量部、上記式(26)で表される単量体成分(化合物)w2:34重量部、上記式(27)で表される単量体成分(化合物)w3:74重量部、上記式(28)で表される単量体成分(化合物)w4:74重量部、ラジカル開始剤としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:64重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:386重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分w1、w2、w3、w4を含み上記式(30)で表される重合体Wとしての重合体W1を得た。
(合成例16、17)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例15と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体W(重合体W2、W3)が得られた。
【0283】
(合成例18)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:246重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(31)で表される単量体成分(化合物)z1:276重量部、上記式(32)で表される単量体成分(化合物)z2:51重量部、ラジカル開始剤としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:39重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:360重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。
その後、フラスコ内にグリシジルメタクリレート:26重量部、メトキノン:2重量部を加え、110℃で10時間反応させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分z1、z2、z3を含み上記式(34)で表される重合体Zとしての重合体Z1を得た。
(合成例19、20)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例18と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体Z(重合体Z2、Z3)が得られた。
【0284】
表1には、合成例1〜20で合成した各重合体を構成する各単量体成分の比率、各重合体の重量平均分子量Mwをまとめて示した。表1中、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)を「m1a」で示し、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1b」で示し、アクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1c」で示し、メタクリル酸を「m2a」で示し、アクリル酸を「m2b」で示し、ステアリルメタクリレートを「m3a」で示し、ベヘニルメタクリレートを「m3b」で示し、パルミチルアクリレートを「m3c」で示し、リグノセリルメタクリレートを「m3d」で示し、メタクリル酸メチルを「m4a」で示し、アクリル酸エチルを「m4b」で示し、アクリル酸ペンチルを「m4c」で示し、スチレンを「m5」で示し、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを「m6」で示し、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルアクリレートと3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレートの混合物を「m7」で示し、セロチニルメタクリレートを「m3’」で示した。また、表中、「S」は溶媒(溶剤)のことを意味し、特に、「S1」はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのことを示し、「S2」は1,3−ブチレングリコールジアセテートのことを示し、「S3」は2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートのことを示し、「S4」はエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのことを示し、「S5」はオクタン酸エチルのことを示す。なお、各重合体の重量平均分子量MwはGPC測定装置(東ソー製HLC−8120GPC)によって、分離カラムとして東ソー製TSK−GEL G5000HXL・G4000HXL・G3000HXL・G2000HXLを組み合わせて使用し、カラム温度:40℃・溶媒:テトラヒドロフラン・溶媒濃度0.5重量%、フィルター:0.2μm・流量:1ml/minにて測定し標準ポリスチレンを用いて換算し、分子量を求めた。また、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1〜3の範囲内であった。
【0285】
【表1】

【0286】
[2]カラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)の調製
(実施例1)
酸価分散剤としてのディスパービック111と、アミン価分散剤としてのディスパービック166と、重合体M1と、液性媒体としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌して予備分散を行うことにより、分散剤分散液を得た(予備分散工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0287】
次に、以下に述べるようにして、予備分散工程で得られた分散剤分散液に、顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた分散剤分散液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、上記式(7)で示されるハロゲン化フタロシアニン亜鉛錯体(ただし、分子内の16個のXのうち、2個が水素原子、4個が塩素原子、10個が臭素原子)と、上記式(8)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用いた。また、このとき、分散剤分散液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、液性媒体(分散媒)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0288】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、液性媒体(分散媒)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0289】
次に、上記のようにして得られた顔料分散体に、重合体X1および化合物Fとしての1,4−ブタンジオールジメタクリレート、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))および、液性媒体としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよびジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを加え、混合した(混合工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)を得た。得られたGインクの顔料の含有率は、10.1wt%であった。
【0290】
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記緑色のカラーフィルター用インクと同様にして、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Rインクを構成する顔料の平均粒径、Gインクを構成する顔料の平均粒径、Bインクを構成する顔料の平均粒径は、それぞれ、70nm、70nm、70nmであった。また、Rインクの顔料としてはC.I.ピグメントレッド177と上記式(35)で表される顔料誘導体との混合物と、C.I.ピグメントレッド254と上記式(36)で表される顔料誘導体との混合物と、上記式(8)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用い、最終的なRインク中の顔料の含有率を10.1wt%とした。また、Bインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を用い、最終的なBインク中の顔料の含有率を4.9wt%とした。また、C.I.ピグメントレッド177と式(35)で表される顔料誘導体との混合物中における式(35)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。また、前記実施例および比較例で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(36)で表される顔料誘導体との混合物中における式(36)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。
【0291】
(実施例2〜14)
カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(Gインク)を調製した。なお、RインクおよびBインクについては、顔料としては実施例1と同様のものを用い、その他の材料については、各実施例のGインクと同様の材料を用いた。
【0292】
(比較例1〜3)
カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(Gインク)を調製した。なお、RインクおよびBインクについては、顔料としては実施例1と同様のものを用い、その他の材料については、各比較例のGインクと同様の材料を用いた。
なお、上記各実施例および各比較例では、いずれも、重合体M、W、Z、Rについては、これらを予備分散工程で用い、重合体X、Y、化合物Fについては、混合工程で用いた。
【0293】
前記各実施例および各比較例でのカラーフィルター用インクの構成成分の種類、含有量等を表2にまとめて示した。なお、表中、上記式(7)で表されるハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(ただし、分子内の16個のXのうち、2個が水素原子、4個が塩素原子、10個が臭素原子)で構成された粉末を「HDZC1」、上記式(7)で表されるハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(ただし、分子内の16個のXのうち、1が水素原子、3個が塩素原子、12個が臭素原子)で構成された粉末を「HDZC2」、上記式(8)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基の数が1個)で構成された粉末を「SPD1」、下記式(8)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基の数が2個)で構成された粉末を「SPD2」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、式(9)で示される化合物F(分子量:226)を「F1」、式(10)で示される化合物F(分子量:226)を「F2」、式(11)で示される化合物F(分子量:240)を「F3」、式(12)で示される化合物F(式中、b≒4、重量平均分子量:330)を「F4」、式(12)で示される化合物F(式中、b≒9、重量平均分子量:540)を「F5」、式(13)で示される化合物F(分子量:268)を「F6」、熱可塑性樹脂としてのSPCN−17X(昭和高分子社製)を「R」、ディスパービック111(酸価:50KOHmg/g)を「DA1」、ディスパービック2095(酸価:13KOHmg/g)を「DA2」、ディスパービックP104(酸価:360KOHmg/g)を「DA3」、ディスパービック166(アミン価:115KOHmg/g)を「DA4」、ディスパービック9075(アミン価:12KOHmg/g)を「DA5」、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))を「DF58」、レベリング剤(LHP−90、楠本化成社製)を「L90」、レベリング剤(LHP−95、楠本化成社製)を「L95」、レベリング剤(LF−1970、楠本化成社製)を「LF」、レベリング剤(オルフィンSPC、日信化学工業(株)社製)を「SPC」、酸化防止剤(TINUVIN 152、チバジャパン株式会社製)を「T152」で示した。また、液性媒体については、表1と同様に示し、さらに、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S6」、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S7」、3−エトキシプロピオン酸エチルを「S8」、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを「S9」、3−メトキシブチルアセテートを「S10」で示した。また、表中、カラーフィルター用インク中における重合体Xの含有率をC[wt%]、化合物Fの含有率をC[wt%]、スルホン化顔料誘導体の含有率をC[wt%]で示した。
なお、分散剤の酸価は、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求め、アミン価は、DIN 16945に準拠する方法により求めた。また、粘度の測定は、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0294】
【表2】

【0295】
[3]カラーフィルター用インクの評価
[3.1]着弾位置精度
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例の緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、100000発(100000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された100000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:ズレ量dの平均値が0.02μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.02μm以上0.07μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.07μm以上0.11μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.11μm以上。
【0296】
[3.2]連続吐出試験
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置、前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて、25℃、35%RHの環境下で、液滴吐出装置を72時間、連続で運転させることにより、カラーフィルター用インクセットを構成するGインクの吐出を行った。
連続運転後における、液滴吐出ヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0297】
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%以上1.0%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が1.0%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
【0298】
[3.3]分散安定性
前記実施例および比較例のカラーフィルター用インク(Gインク)について、55℃の環境下に、40日間放置した後、目視による観察を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:加熱前からの変化が全く認められない。
B:顔料粒子の凝集・沈降がほとんど認められない。
C:顔料粒子の凝集・沈降がわずかに認められる。
D:顔料粒子の凝集・沈降がはっきりと認められる。
E:顔料粒子の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0299】
[3.4]固形分量の変化による粘度変化
各実施例および各比較例の緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)について、100℃の環境下に放置し、当初のカラーフィルター用インク中の固形分量よりも固形分量が10.0wt%上昇するように、液性媒体の除去を行った。そして、液性媒体の除去を行ったカラーフィルター用インクについて、当該カラーフィルター用インクの25℃における粘度:ηを測定した。そして、液性媒体を除去する前のカラーフィルター用インクの25℃における粘度:ηと比較し、下記の5段階の基準に従い、固形分量の変化による粘度変化を評価した。
【0300】
なお、カラーフィルター用インクの固形分の重量は、カラーフィルター用インク:1gをガラス板状にスピンコートにて膜厚が約1mmとなるように塗布し、200℃、1時間の条件下に放置したときに揮発せずに残る重量とした。そして、カラーフィルター用インク中の固形分量は、カラーフィルター用インクの全体の重量に占める当該固形分の重量の割合[wt%]とした。
また、粘度の測定は、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0301】
A: η/η≦3.0
B: 3.0<η/η≦6.0
C: 6.0<η/η≦10.0
D: 10.0<η/η≦30.0
E: 30.0<η/η
なお、上記の各評価は、各実施例および各比較例について、同様の条件で行った。
【0302】
[4]カラーフィルターの製造
前記各実施例および各比較例で調製したカラーフィルター用インクセットを用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0303】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、1.6μmであった。
【0304】
次に、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、カラーフィルター用インクを吐出した。この際、3色のカラーフィルター用インクを用い、各色のカラーフィルター用インクが混色しないようにした。各セル内には、形成される着色部の平均厚さが2.0μmとなるような量のカラーフィルター用インクを付与した。
【0305】
その後、ホットプレート上にて80℃で20分間の加熱処理を施した(第1の加熱処理)。
さらに230℃のオーブン内で60分加熱処理を施すことにより(第2の加熱処理)、3色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の着色部が形成された。その後、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチルラクトンを用いた洗浄を行い、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて、それぞれ、6000枚のカラーフィルターを製造した。
【0306】
[5]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[5.1]色むら、濃度むら
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、4000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、緑色の単色表示および白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0307】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0308】
[5.2]個体間での特性差
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、1〜10枚目、および、2990〜2999枚目に製造されたカラーフィルターを用意し、暗室で、緑色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および各比較例について、それぞれ、1〜10枚目、2990〜2999枚目に製造されたカラーフィルター(合計20枚のカラーフィルター)で最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0309】
A:色差(ΔE)が2.2未満。
B:色差(ΔE)が2.2以上3.2未満。
C:色差(ΔE)が3.2以上4.2未満。
D:色差(ΔE)が4.2以上5.2未満。
E:色差(ΔE)が5.2以上。
【0310】
[5.3]着色部の平坦性
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、31枚目に製造されたカラーフィルターを用意した。
これらのカラーフィルターについて、触針式粗さ計(Tencor社製、P−15)を用いて、緑色の着色部の最大高さと最小高さとの差ΔDを求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:ΔDが0.2μm未満。
B:ΔDが0.2μm以上0.5μm未満。
C:ΔDが0.5μm以上。
【0311】
[6]コントラスト比の評価
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて、着色部が全て緑色のカラーフィルターを[4]と同様の方法で10000枚製造し、それぞれ、6000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。このように、前記各実施例および各比較例における、緑色単色のカラーフィルターを備える液晶表示装置を用意し、全色表示(画素有効領域全体での画像表示)を行い、光度計(PHOTO RESEARCH社製、PR−800)を用いて、色表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR)を求め、下記の5段階の基準に従い、評価を行った。
【0312】
A:CRが5400以上。
B:CRが4800以上5400未満。
C:CRが4200以上4800未満。
D:CRが3600以上4200未満。
E:CRが3600未満。
【0313】
[7]明度の評価
[6]で製造した着色部が全て緑色の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置について、緑色の単色表示を行い、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d、光源としてC光源使用)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求め、緑色光のY値を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0314】
A:明度Yが56.0以上。
B:明度Yが55.3以上56.0未満。
C:明度Yが54.7以上55.3未満。
D:明度Yが54.0以上54.7未満。
E:明度Yが54.0未満。
これらの結果を表3に示す。
【0315】
【表3】

【0316】
表3から明らかなように、本発明では、製造されたカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むらが抑制され、かつ個体間での特性の均一性に優れていた。また、本発明では、製造されたカラーフィルターは、明度、コントラスト比に優れていた。
これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【符号の説明】
【0317】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁(バンク)(遮光部) 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置(移動手段) 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置(移動手段) 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
主顔料としてのハロゲン化されたフタロシアニンの亜鉛錯体および副顔料としてのスルホン化された顔料誘導体を含む顔料と、
前記顔料が分散する液性媒体と、
下記式(1)で表される化合物Fとを含むことを特徴とするカラーフィルター用インク。
【化1】

【請求項2】
前記顔料誘導体は、下記式(2)で示される化学構造を有するものである請求項1に記載のカラーフィルター用インク。
【化2】

【請求項3】
前記主顔料:100重量部に対する、前記副顔料の含有率が、10〜80重量部である請求項1または2に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項4】
前記化合物F:100重量部に対する、前記副顔料の含有率が、4〜30重量部である請求項1または2に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項5】
前記化合物Fは、アルキレングリコール鎖を有する請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【請求項6】
前記化合物Fは、下記式(3)に示される構造をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【化3】

【請求項7】
前記化合物Fの分子量は、184〜492である請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【請求項8】
下記式(4)で表される単量体成分x1と下記式(5)で表される単量体成分x3と下記式(6)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含む請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項9】
前記液性媒体として、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含む請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【請求項10】
前記液性媒体は、さらに、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、および3−メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含む請求項9に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
画像表示装置は、液晶パネルである請求項12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−197443(P2010−197443A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38960(P2009−38960)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】