説明

カラーフィルター用インク、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクおよびカラーフィルター用インクセットを提供すること、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、着色剤と、当該着色剤が溶解および/または分散する液性媒体と、樹脂材料とを含み、樹脂材料のヨウ素価が、15〜180であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インク、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色部を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色部形成用の材料(着色部形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色部形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
【0004】
しかしながら、従来のインクジェット方式により製造されたカラーフィルターは、長期にわたって、光や熱等にさらされたり、製造時等において薬品等にさらされるたりすることによって、着色部の変色やひび割れ等の劣化が生じやすく、耐候性(特に、耐光性)や耐薬品性に問題があった。また、従来のインクジェット方式により製造されたカラーフィルターは、液晶表示装置の組み立て時等に不本意な外力がかかった際に、着色部にひびや欠け等が生じやすく、機械的強度にも問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクおよびカラーフィルター用インクセットを提供すること、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
着色剤と、当該着色剤が溶解および/または分散する液性媒体と、樹脂材料とを含み、
前記樹脂材料のヨウ素価が、15〜180であることを特徴とする。
これにより、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターを製造することが可能なカラーフィルター用インクを提供することができる。
【0008】
本発明のカラーフィルター用インクでは、カラーフィルター用インク中に占める前記樹脂材料の含有率は、0.5〜10wt%であることが好ましい。
これにより、着色部の機械的強度を優れたものとしつつ、耐候性、耐薬品性を特に優れたものとすることができる。
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記樹脂材料は、主として多官能性分子が重合したアクリル樹脂で構成されることが好ましい。
エポキシ系樹脂は、透明性が高く、硬度が高いものであるとともに、熱収縮量が小さい。このため、機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れるとともに、着色部の基板への密着性をより優れたものとすることができる。
【0009】
本発明のカラーフィルター用インクでは、前記液性媒体は、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これら化合物は、樹脂材料を硬化させる際に、反応溶媒として、特に優れた機能を発揮するため、樹脂材料の反応性を特に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明のカラーフィルター用インクセットは、本発明のカラーフィルター用インクを複数色組み合わせたことを特徴とする。
これにより、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性にも優れる着色部を備えたカラーフィルターを製造することが可能なカラーフィルター用インクセットを提供することができる。
【0011】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、長期にわたって信頼性の高いカラーフィルターを提供することができる。
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、長期にわたって信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。
本発明の画像表示装置は、液晶パネルであることが好ましい。
これにより、長期にわたって信頼性の高い画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、長期にわたって信頼性の高い電子機器をを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《カラーフィルター用インク》
本発明のカラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
カラーフィルター用インクは、着色剤、当該着色剤が溶解および/または分散する液性媒体、樹脂材料等を含むものである。
【0013】
<着色剤>
まず、着色剤について説明する。
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色)を有している。着色剤は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。カラーフィルター用インクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができる。
【0014】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2,3,5,17,22,23,38,81,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,52:1,53:1,57:1,63:1,112,122,144,146,149,166,170,176,177,178,179,185,202,207,209,254,101,102,105,106,108,108:1、C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50(なお、フタロシアニンの金属が銅以外のものでもグリーン色材として使用可能)、C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,80、C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,17,55,73,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,129,138,139,150,151,153,154,168,184,185,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,157、C.I.ピグメントバイオレット1,3,19,23,50,14,16、C.I.ピグメントオレンジ5,13,16,36,43,20,20:1,104、C.I.ピグメントブラウン25,7,11,33等が挙げられる。
【0015】
また、染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185、C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられる。
【0016】
また、着色剤としては、上記のような材料で構成された粉末に、例えば、親液化処理(後述する液性媒体に対する親和性を向上させる処理)等の表面処理を施したものを用いてもよい。これにより、例えば、カラーフィルター用インク中における着色剤粒子の分散性、分散安定性を特に優れたものとすることができる。着色剤に対する表面処理としては、例えば、着色剤粒子表面をポリマーで改質する処理等が挙げられる。着色剤の粒子表面を改質するポリマーとしては、例えば、特開平8−259876号公報等に記載されたポリマーや、市販の各種の顔料分散用のポリマーまたはオリゴマー等が挙げられる。
また、着色剤としては、例えば、上記から選択される2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
カラーフィルター用インク中において、着色剤は、後述する液性媒体に溶解しているものであってもよいし、分散しているものであってもよいが、着色剤が液性媒体中に分散しているものである場合、着色剤の平均粒径は、20〜200nmであるのが好ましく、30〜180nmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インク中における着色剤の分散安定性や、カラーフィルターにおける発色性等を特に優れたものとすることができる。
【0018】
カラーフィルター用インク中における着色剤の含有率は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの着色部の機械的強度をより優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。
【0019】
<樹脂材料>
次に樹脂材料について説明する。
カラーフィルター用インクは、樹脂材料(バインダー樹脂)を含むものである。樹脂材料は、カラーフィルターにおいて、主に、着色部と基板等との密着性に寄与する成分である。
【0020】
ところで、近年用いられている、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造では、それ以前に広く用いられてきたフォトリソグラフィー法に比べ、着色部形成用の材料(着色部形成用組成物)の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。また、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造では、着色部形成用の材料(着色部形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易であるという利点もある。しかしながら、従来のインクジェット方式により製造されたカラーフィルターは、長期にわたって、光や熱等にさらされたり、製造時等において薬品等にさらされるたりすることによって、着色部の変色やひび割れ等の劣化が生じやすく、耐候性(特に、耐光性)や耐薬品性に問題があった。また、従来のインクジェット方式により製造されたカラーフィルターは、液晶表示装置の組み立て時等に不本意な外力がかかった際に、着色部にひびや欠け等が生じやすく、機械的強度にも問題があった。
【0021】
そこで、本発明者は、上述したような問題の発生の主要因について鋭意研究を行い、樹脂材料が上述した問題の発生に大きな影響を与えていることを見出した。さらに、本発明者は、樹脂材料について鋭意検討した結果、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料の不飽和結合(主に炭素−炭素間の不飽和結合)の量が上記問題の要因の1つであることを見出した。
【0022】
そこで、本発明者は、樹脂材料の不飽和結合の量の指標であるヨウ素価に着目し、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料として、所定の範囲のヨウ素価のものを用いることにより、上記問題を解決できることを見出した。
具体的には、本発明のカラーフィルター用インクは、インクを構成する樹脂材料として、ヨウ素価が15〜180のものを用いる点に特徴を有している。このような樹脂材料は、樹脂材料の固化に寄与する架橋点(不飽和結合)を適度に備えており、着色部を形成する際に、近い位置に存在する不飽和結合同士が架橋することができるため、製造されるカラーフィルターの着色部は、機械的強度に優れるものとなる。さらに、形成される着色部中においては、不飽和結合の量が比較的少なくすることができるため、耐候性(特に耐光性、耐熱性)、耐薬品性に優れたものとなる。その結果、製造されるカラーフィルターは、長期にわたって信頼性の高いものとなる。
【0023】
また、上記のようなヨウ素価の樹脂材料を用いることにより、本発明のカラーフィルター用インクをインクジェットヘッドから安定して吐出させることができる。これは、分子中に炭素−炭素不飽和結合を含む樹脂材料の分子構造が、分子中に炭素−炭素不飽和結合を含まない樹脂材料の分子構造と比較して折れ曲がっているため、分子間力が小さくなり、カラーフィルター用インクの粘度を比較的小さいものとすることができるためであると考えられる。
【0024】
また、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料のヨウ素価の値を上記のような所定の範囲とすることにより、製造されるカラーフィルターの画像表示装置の電圧保持率に対する影響を小さいものとすることができる。より詳細に説明すると、従来の画像表示装置では、カラーフィルターから液晶層にイオン性物質が溶出し、このイオン性物質により電圧保持率が低下し、輝度ムラ等が発生するといった問題があったが、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料のヨウ素価の値を上記のような所定の範囲とすることにより、形成されるカラーフィルターからイオン性物質が溶出するのを効果的に抑制することができ、画像表示装置の電圧保持率の低下を効果的に防止・抑制することができる。これは、形成されるカラーフィルターが耐候性、耐薬品性が高いので、外的要因によるイオン性物質の発生が抑えられるためであると考えられる。
【0025】
これに対して、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料のヨウ素価が前記下限値未満であると、樹脂材料中に含まれる不飽和結合の量が少なくなるため、着色部を形成する際に、不飽和結合による架橋を十分に行うことができない。その結果、形成される着色部の機械的強度を十分に高いものとすることができない。一方、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料のヨウ素価が前記上限値を超えると、形成される着色部中に残存する不飽和結合の量が多くなるため、着色部が、光や温度等によって劣化しやすくなる。また、不飽和結合の量を少なくするため、硬化時間を長くしたりや硬化温度を高くしたり等することも考えられるが、かえって樹脂材料や他の成分の劣化を招くおそれがある。
【0026】
本発明において、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料のヨウ素価の値は、上述した範囲内であれば良いが、30〜90であるのが好ましい。これにより、上述したような効果は更に顕著に発揮される。
なお、樹脂材料として、複数種の樹脂成分を組み合わせて用いる場合、樹脂材料のヨウ素価とは、複数種の樹脂成分のヨウ素価の重量平均のことを言う。
また、本明細書中において、ヨウ素価とは、JIS K0070に準拠して測定される値のことを指す。
【0027】
また、本発明のカラーフィルター用インクを構成する樹脂材料の酸価は、3〜30KOHmg/gであるのが好ましく、5〜25KOHmg/gであるのがより好ましい。樹脂材料の酸価が上記範囲内であると、着色剤等の他の成分に対する樹脂材料の影響を十分に小さいものとすることができる。その結果、製造されるカラーフィルターの着色部の機械的強度を優れたものとしつつ、耐候性、耐薬品性に特に優れたものなる。これに対して、樹脂材料の酸価が前記下限値未満であると、後述するカラーフィルターを構成する着色部と、基板等との密着性を十分に得ることができない場合がある。その結果、製造されるカラーフィルターは、十分な耐久性が得られない場合がある。一方、樹脂材料の酸価が前記上限値を超えると、着色剤等の他の成分に対する樹脂材料の影響が大きくなり、十分な耐候性、耐薬品性を発揮するのが困難となる場合がある。
【0028】
また、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂等、いかなる樹脂材料を用いてもよいが、多官能性のアクリルモノマー(オリゴマー)が重合した多官能アクリル樹脂であるのが好ましい。多官能アクリル樹脂は、透明性が高く、比較的硬度が高いものであるとともに、熱収縮量が小さい。このため、機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れるとともに、着色部の基板への密着性をより優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料としては、多官能アクリル樹脂とともに、エポキシ樹脂(モノマー)を併用してもよい。これにより、基板との密着性、耐薬品性をより優れたものとすることができる。また、エポキシ系樹脂の中でも、特に、シリルアセテート構造(SiOCOCH)と、エポキシ構造とを有するエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。これにより、インクジェット方式による液滴吐出を好適に行うことができるとともに、着色層と基板との密着性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0029】
カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5〜10wt%であるのが好ましく、1〜5wt%であるのがより好ましい。樹脂材料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用のインクジェットヘッドからの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。これに対し、樹脂材料の含有率が低すぎると、カラーフィルター用インクの吐出性(吐出安定性)が低下したり、形成される着色部の硬度が低下し製造されるカラーフィルターの耐久性が低下する。一方、樹脂材料の含有率が高すぎると、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することが困難となる。
【0030】
<液性媒体>
次に、液性媒体について説明する。
液性媒体(液状媒質)は、上述したような着色剤を、溶解および/または分散する機能を有するものである。すなわち、液性媒体は、溶媒および/または分散媒として機能するものである。そして、通常、液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0031】
カラーフィルター用インクを構成する液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、(1)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、(2)多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、(3)分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、(4)多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
特に、カラーフィルター用インクを構成する液性媒体は、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これら化合物は、前述したような樹脂材料の溶解性に優れるため、インクジェットヘッドからのカラーフィルター用インクの吐出性を向上させることができる。また、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
中でも、液性媒体が1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものであると、上述したような効果がより顕著に発揮される。液性媒体が1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものである場合、液性媒体中に占める1,3−ブチレングリコールジアセテートの割合は、30〜70wt%であるのが好ましい。
【0033】
また、液性媒体の25℃における水:100gに対する溶解度は、0.3〜9.0gであるのが好ましく、0.4〜8.0gであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中に、空気中の水分が吸収されるのを効果的に防止することができ、カラーフィルター用インク(特に樹脂材料)に対する水分の影響を小さいものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料等の劣化をより効果的に防止することができる。その結果、カラーフィルター用インクの経時的な粘度変化を小さいものとすることができ、カラーフィルター用インクを安定して吐出することができる。
なお、液性媒体の水に対する溶解度は、25℃の水:100gに対し、25℃の液性媒体:100gを混合し、水層のみを分離して、水層の重量と水の重量とを差を求めることで得られる。
【0034】
また、液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、180〜300℃であるのが好ましく、190〜290℃であるのがより好ましく、230〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等を効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0035】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.1mmHg以下であるのが好ましく、0.05mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等を効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0036】
カラーフィルター用インク中における液性媒体の含有率は、70〜98wt%であるのが好ましく、80〜95wt%であるのがより好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッドからの吐出性(吐出安定性)を優れたものとすることができ、着色部を均一に形成することができる。その結果、着色部間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0037】
<分散剤>
カラーフィルター用インク中には、分散剤が含まれていてもよい。これにより、例えば、カラーフィルター用インクが、分散性の低い顔料を含む場合等であっても、顔料の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの保存安定性を優れたものとすることができる。
【0038】
分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等のほか、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子(株)製)、Disperbyk(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ソルスパース3000,5000,11200,12000,13240,13650,13940,16000,17000,18000,20000,21000,22000,24000SC,24000GR(日本ルブリゾール(株)製)、ダイノール、サーフィノール(エアープロダクト社製)、ダイノール、サーフィノール(エアープロダクト社製)等が挙げられる。
【0039】
また、分散剤としては、例えば、シアメリド環を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤として用いることにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、分散剤としては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表される部分構造を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤として用いることにより、カラーフィルター用インク中における着色剤(顔料)の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0040】
【化1】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R、R及びRのうち2つ以上が互いに結合して環状構造を形成する。Rは水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表し、Yは対アニオンを表す。)
【0041】
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
【0042】
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、0.5〜8wt%であるのがより好ましい。
【0043】
<その他の成分>
カラーフィルター用インクは、必要に応じて、種々の他の成分を含むものであってもよい。このような成分(他の添加剤)としては、例えば、各種架橋剤;各種重合開始剤;銅フタロシアニン誘導体等の青色顔料誘導体や黄色顔料誘導体等の分散助剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフロロアルキルアクリレート等の高分子化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、グリセリン等のインクジェット吐出性能安定化剤;以下商品名で、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、新秋田化成(株)製)、メガファックF171、同F172、同F173、同F178K(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子(株)製)、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業(株)製)等の界面活性剤等が挙げられる。
また、カラーフィルター用インクは、熱酸発生剤や酸架橋剤を含有するものであってもよい。前記熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、その例としては、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩等が挙げられ、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。
【0044】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度は、特に限定されないが、5〜12mPa・sであるのが好ましく、6〜10mPa・sであるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの25℃における粘度が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッドからの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。なお、粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。なお、他の測定方法、例えば、回転振動式、回転式(E型、B型粘度計)およびキャノンフェンスケ法も測定可能である。そして、本明細書では、特に断りのない限り、「粘度」とは、上記のようにして測定して得られる値のことを指す。
【0045】
《インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセットが用いられる。本発明においては、カラーフィルターの製造において、上述したようなカラーフィルター用インクが、少なくとも1種の着色部の形成に用いられるものであればよいが、全色の着色部の形成に用いられるのが好ましい。このように、全色の着色部を、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成することにより、すべての着色部が機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れたものとなり、製造されるカラーフィルターは、長期にわたって信頼性の高いものとなる。また、長期にわたって使用した結果、着色部に若干の特性の変化が生じた場合であっても、その変化の度合いが各色に対応する着色部において、ほぼ同等となるため、色のバランスが崩れるのを効果的に防止することができる。また、全色の着色部を、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成することにより、カラーフィルター用インクを硬化させて着色部を形成する際に、各色に対応する着色部をほぼ同等な条件で硬化させることができる。したがって、色によって硬化温度のかけ過ぎ等を効果的に防止することができ、均一な特性を備えた着色部を形成することができる。また、全色の着色部を、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成することにより、製造されるカラーフィルターの画像表示装置の電圧保持率に対する影響をより小さいものとすることができる。
【0046】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0047】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0048】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0049】
上述した中でも、ガラスを用いるのが好ましい。これにより、カラーフィルター全体としての耐久性を特に優れたものとすることができる。また、ガラスは透過率に優れているため、カラーフィルターの光の利用効率を優れたものとすることができる。
ガラスとしては、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0050】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクを用いて形成されたものである。
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクを用いて形成されたものであるため、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性に優れている。このため、カラーフィルター1は、長期にわたって信頼性が高いものとなっている。
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
【0051】
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0052】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0053】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3.5μmであるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0054】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0055】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、カラーフィルター1の製造方法の一例について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0056】
図2に示すように、本実施形態では、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式によりカラーフィルター用インク2を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(1d)と、カラーフィルター用インク2から液性媒体を除去しつつ硬化させ、固形状の着色部12とする着色部形成工程(1e)とを有している。
【0057】
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0058】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0059】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0060】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、カラーフィルター用インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のカラーフィルター用インク2を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上のカラーフィルター用インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0061】
カラーフィルター用インク2の吐出は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からカラーフィルター用インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにカラーフィルター用インク2が圧縮空気によって供給される。
【0062】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
【0063】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルター用インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、カラーフィルター用インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0064】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0065】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0066】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0067】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0068】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはカラーフィルター用インク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がカラーフィルター用インク2を吐出するノズルとして機能する。
【0069】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、カラーフィルター用インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0070】
図6(a)および(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給されるカラーフィルター用インク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0071】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からカラーフィルター用インク2が供給される。
【0072】
また、ノズルプレート128のノズル118付近は、フッ化アルキル基を有するシリカ膜で表面付近が覆われている。これにより、ノズル118は、撥液性に優れたものとなり、インク2を特に好適にはじくことができる。特に、ノズルプレート128がこのようなシリカ膜を有することで、ノズル118付近での顔料等の材料の不本意な凝集体の発生を防ぐことができる。このため、確実に液滴吐出時の飛行曲がりの発生や、液滴量の変動、ノズル118の目詰まりを確実に防止することができ、極めて長期にわたって、カラーフィルター用インク2の液滴の吐出性を特に優れたものとすることができる。
【0073】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からカラーフィルター用インク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にカラーフィルター用インク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0074】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるカラーフィルター用インク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
【0075】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するカラーフィルター用インク2を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的にカラーフィルター用インク2を付与することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のカラーフィルター用インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してカラーフィルター用インクを吐出する構成であってもよい。
【0076】
<着色部形成工程>
次に、セル14内のカラーフィルター用インク2から液性媒体を除去しつつ、硬化させて固形状の着色部12とする(1e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
特に、着色部12の形成に本発明のカラーフィルター用インクを用いているため、カラーフィルター用インクの硬化条件を過酷な条件としなくても容易に硬化させることができる。
また、本工程においては、必要に応じて、樹脂材料を架橋成分等と反応させてもよい。これにより、着色部12の機械的強度をより高いものとすることができる。
【0077】
液性媒体の除去およびカラーフィルター用インク2の硬化は、例えば、加熱により行うことができる。また、この際、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を、減圧環境下に置いてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、液性媒体の除去をより効率よく進行させることができる。
また、本工程においては、放射線の照射を行ってもよい。これにより、樹脂材料の硬化をより効果的に促進させることができる。また、樹脂材料の架橋成分等との反応を効率よく進行させることができる。
【0078】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図7は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0079】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0080】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図7中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図7中下側)から出射する。
【0081】
上述したように、着色部12は、本発明のカラーフィルター用インク2を用いて形成されたものであるため、機械的強度に優れるとともに、耐候性、耐薬品性に優れたものである。その結果、液晶表示装置60は、長期にわたって信頼性が高いものとなっている。また、カラーフィルター1は、画像表示装置60の電圧保持率に対する影響が小さいものであるため、輝度ムラ等の不具合の発生が抑制され、画像表示装置60は、高品質の画像を表示することができる。
【0082】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0083】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0084】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0085】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0086】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0087】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じやすかったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0088】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから液性媒体を除去するもの、すなわち、着色部形成工程を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0089】
また、本発明のカラーフィルターにおいては、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【実施例】
【0090】
[1]カラーフィルター用インクの調製
(実施例1)
まず、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としての1,3−ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA):90重量部およびトリエチレングリコールブチルメチルエーテル(BTM):10重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の溶媒を攪拌しつつ50℃まで昇温した後、トリメチロールプロパントリアクリレート:60重量部と、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート:30重量部と、メタクリル酸プロピル:10重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後50℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに50℃で2時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、樹脂aの溶液を得た。樹脂aのヨウ素価は、65であった。また、樹脂aの酸価は、15KOHmg/gであった。
【0091】
一方、1,3−BGDAおよびBTMの9:1の混合液(液性媒体)を用意し、これに、分散剤としてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、着色剤としてのC.I.ピグメントレッド254と、着色剤としてのC.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。
その後、上記樹脂aの溶液と、顔料分散液とを混合することにより、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を調製した。Rインク中におけるC.I.ピグメントレッド254の平均粒径は、80nmであった。
【0092】
また、C.I.ピグメントレッド254の代わりに、それぞれ、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらに、着色剤、液性媒体等のインクの構成材料の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Gインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36の平均粒径、Bインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、70nmであった。
なお、各色のインク中の各成分は、表に示すような配合量とした。
【0093】
(実施例2)
まず、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA):100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の溶媒を攪拌しつつ30℃まで昇温した後、トリメチロールプロパントリアクリレート:30重量部と、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート:30重量部と、メタクリル酸プロピル:40重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後30℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに30℃で15分間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、樹脂bの溶液を得た。樹脂bのヨウ素価は、170であった。また、樹脂bの酸価は、8KOHmg/gであった。
【0094】
一方、BCA(液性媒体)を用意し、これに、分散剤としてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、着色剤としてのC.I.ピグメントレッド254と、着色剤としてのC.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。
その後、上記樹脂bの溶液と、顔料分散液とを混合することにより、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を調製した。Rインク中におけるC.I.ピグメントレッド254の平均粒径は、80nmであった。
【0095】
また、C.I.ピグメントレッド254の代わりに、それぞれ、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらに、着色剤、液性媒体等のインクの構成材料の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Gインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36の平均粒径、Bインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、70nmであった。
なお、各色のインク中の各成分は、表に示すような配合量とした。
【0096】
(実施例3)
まず、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としての2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート(DPMA):90重量部およびトリエチレングリコールジメチルエーテル(MTM):10重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の溶媒を攪拌しつつ70℃まで昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート:30重量部と、グリセリンPO付加トリアクリレート:30重量部と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート:30重量部と、メタクリル酸メチル:10重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後70℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに70℃で2時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、樹脂cの溶液を得た。樹脂cのヨウ素価は、20であった。また、樹脂cの酸価は、21KOHmg/gであった。
【0097】
一方、DPMAおよびMTMの9:1の混合液(液性媒体)を用意し、これに、分散剤としてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、着色剤としてのC.I.ピグメントレッド254と、着色剤としてのC.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。
その後、上記樹脂cの溶液と、顔料分散液とを混合することにより、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を調製した。Rインク中におけるC.I.ピグメントレッド254の平均粒径は、80nmであった。
【0098】
また、C.I.ピグメントレッド254の代わりに、それぞれ、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらに、着色剤、液性媒体等のインクの構成材料の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Gインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36の平均粒径、Bインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、70nmであった。
なお、各色のインク中の各成分は、表に示すような配合量とした。
【0099】
(比較例1)
まず、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としてのBCA:100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の溶媒を攪拌しつつ30℃まで昇温した後、メタクリル酸メチル:30重量部と、メタクリル酸プロピル:60重量部と、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート:10重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後30℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに30℃で15分間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、樹脂dの溶液を得た。樹脂dのヨウ素価は、190であった。また、樹脂dの酸価は、41KOHmg/gであった。
【0100】
一方、BCA(液性媒体)を用意し、これに、分散剤としてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、着色剤としてのC.I.ピグメントレッド254と、着色剤としてのC.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。
その後、上記樹脂dの溶液と、顔料分散液とを混合することにより、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を調製した。Rインク中におけるC.I.ピグメントレッド254の平均粒径は、80nmであった。
【0101】
また、C.I.ピグメントレッド254の代わりに、それぞれ、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらに、着色剤、液性媒体等のインクの構成材料の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Gインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36の平均粒径、Bインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、70nmであった。
なお、各色のインク中の各成分は、表に示すような配合量とした。
【0102】
(比較例2)
まず、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としてのDPMA:100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の溶媒を攪拌しつつ30℃まで昇温した後、メタクリル酸メチル:35重量部と、メタクリル酸プロピル:60重量部と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート:5重量部と、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後110℃にて1時間保持した後、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに110℃で15時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、樹脂eの溶液を得た。樹脂eのヨウ素価は、5であった。また、樹脂eの酸価は、51KOHmg/gであった。
【0103】
一方、DPMA(液性媒体)を用意し、これに、分散剤としてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、着色剤としてのC.I.ピグメントレッド254と、着色剤としてのC.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。
その後、上記樹脂eの溶液と、顔料分散液とを混合することにより、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を調製した。Rインク中におけるC.I.ピグメントレッド254の平均粒径は、80nmであった。
【0104】
また、C.I.ピグメントレッド254の代わりに、それぞれ、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、さらに、着色剤、液性媒体等のインクの構成材料の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Gインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36の平均粒径、Bインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、70nmであった。
なお、各色のインク中の各成分は、表に示すような配合量とした。
【0105】
前記各実施例および各比較例について、カラーフィルター用インクの組成、樹脂材料の酸価等を液性媒体の特性とともに、表1にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、上記樹脂a、b、c、d、eをそれぞれ「a」、「b」、「c」、「d」、「e」で示した。また、表中、「インクの粘度」の欄には、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された25℃におけるカラーフィルター用インクの粘度を示し、「沸点」の欄には、液性媒体の常圧(1気圧)における沸点を示し、「蒸気圧」の欄には、液性媒体の25℃における蒸気圧を示した。また、カラーフィルター用インク、液性媒体の水に対する溶解度は、25℃の水:100gに対し、25℃のインク:100gを混合し、水層のみを分離して、水層の重量と水の重量との差を求めることで得た。
【0106】
【表1】

【0107】
[2]機械的強度の評価
各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて、以下のようにして、各色のインクに対応する着色板を作製し、作製した各着色板の着色膜の機械的強度を、JIS K 5600−5−4に基づいて、鉛筆硬度として測定し、下記3段階の基準に従い評価した。
【0108】
まず、カラーフィルター用インクセットを構成するRインクを、30mm×30mmの隔壁(厚さ2.1μm)が形成された厚さ7mmのガラス板上に、インクジェット塗布により付与した。インクの付与量は、後述するポストベーク後の厚さが、1.60μmとなるようにした。その後、インクが付与されたガラス基板に対し、ホットプレート上にて100℃で10分間加熱するプリベーク処理を施した。その後、プリベーク処理が施されたガラス基板に対し、200℃のオーブン内で1時間加熱するポストベーク処理を施すことにより、厚さ1.60μmの赤色の着色膜が形成された着色板を得た。さらに、Gインク、Bインクを用いて、上記と同様にして着色板を形成した。
A:鉛筆硬度が6H以上である。
B:鉛筆硬度が3H以上5H以下である。
C:鉛筆硬度が2H以下である。
【0109】
[3]耐候性の評価
[3.1]耐熱性の評価
まず、上記「[2]機械的強度の評価」で作製した、各実施例および各比較例についての各色の着色板を用意した。
作製した着色板について、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いた測定により、色度の測定を行った。
次に、着色板を、230℃の環境下において1時間加熱処理を施した。
その後、再度、上記と同様にして色度を測定し、加熱処理前の着色板の色度および加熱処理後の着色板の色度から、色差(JIS Z 8729で規定されるL表示系での色差ΔEab)を求めた。
【0110】
各実施例および各比較例について、3色分の着色板についての色差の平均値を求めた。そして、得られた色差の平均値について、以下の3段階の基準に従い評価した。この色差の平均値が小さいほど、着色部の耐熱性が優れていると言える。
A:色差の平均値が3未満。
B:色差の平均値が3以上5未満。
C:色差の平均値が5以上。
【0111】
[3.2]耐光性の評価
まず、上記「[2]機械的強度の評価」で作製した、各実施例および各比較例についての各色の着色板を用意した。
各着色板について、相対湿度:50%の環境下で、着色板温度を63℃とし、波長:340nmの紫外線を、放射度0.25W/m、45kJ/mの条件で、240時間照射した。
【0112】
上記のようにして紫外線の照射を行った着色板について、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いた測定により、色度の測定を行い、紫外線照射前の色度との比較することにより、紫外線照射前後での色差(JIS Z 8729で規定されるL表示系での色差ΔEab)を求め、各実施例および各比較例について、3色分の着色板についての色差の平均値を求めた。そして、得られた色差の平均値について、以下の3段階の基準に従い、評価した。この色差の平均値が小さいほど、インクセットの耐光性が優れていると言える。
A:色差の平均値が3未満。
B:色差の平均値が3以上5未満。
C:色差の平均値が5以上。
【0113】
[4]耐薬品性の評価
まず、上記「[2]機械的強度の評価」で作製した、各実施例および各比較例についての各色の着色板を用意した。
各着色板を、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、0.5NHCl水溶液、0.5NNaOH水溶液のそれぞれの液体に、液温20℃で10分間浸漬し、外観の変化を以下の4段階の基準に従い評価した。
【0114】
A:すべての液体において、クラック、ひび、膨潤等の外観の変化が無かった。
B:0.5NHCl水溶液、0.5NNaOH水溶液のうち少なくとも一方におい
て、クラック、ひび、膨潤等の外観の変化が認められたが、実用上問題のない
ものであった。
C:γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンのうち少なくとも一方にお
いて、クラック、ひび、膨潤等の外観の変化が認められたが、実用上問題のな
いものであった。
D:イソプロパノール、および/または、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−
ピロリドンの双方において、クラック、ひび、膨潤等の外観の変化が認められ
た。
【0115】
[5]液晶層の電圧保持率
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターを用いて、図7に示すような画像表示装置を製造した。
製造した画像表示装置(液晶層)に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を、液晶用電圧保持率測定システム(マイクロニクス社製、製品名「MZ1800」)を用いて測定し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0116】
A:VHRが98%以上である。
B:VHRが95%以上、98%未満である。
C:VHRが90%以上、95%未満である。
D:VHRが90%よりも小さい。
これらの結果を表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
表2から明らかなように、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成した着色部は、機械的強度に優れるとともに、耐熱性、耐光性、耐薬品性に優れるものであった。また、本発明のカラーフィルター用インクを用いて製造したカラーフィルターを備えた画像表示装置では、電圧保持率に優れていた。これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0120】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131……孔 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
着色剤と、当該着色剤が溶解および/または分散する液性媒体と、樹脂材料とを含み、
前記樹脂材料のヨウ素価が、15〜180であることを特徴とするカラーフィルター用インク。
【請求項2】
カラーフィルター用インク中に占める前記樹脂材料の含有率は、0.5〜10wt%である請求項1に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項3】
前記樹脂材料は、主として多官能性分子が重合したアクリル樹脂で構成される請求項1または2に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項4】
前記液性媒体は、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター用インクを複数色組み合わせたことを特徴とするカラーフィルター用インクセット。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
画像表示装置は、液晶パネルである請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−31686(P2009−31686A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198020(P2007−198020)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】