説明

カラーフィルター用顔料分散体

【課題】高コンテントの微細化顔料を含みかつその分散安定性に優れるとともに、カラーフィルターの高コントラスト化を実現可能な顔料分散体を提供すること。
【解決手段】微細化顔料、分散剤、分散樹脂、および溶剤を含有する顔料分散体であって、前記分散剤が、酸価が2mgKOH/g以上でアミン価が0mgKOH/gである化合物及びアミン価が10mgKOH/g以上で酸価が0mgKOH/gである化合物のそれぞれを少なくとも1種含む混合物、又は、アミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物を含むカラーフィルター用顔料分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散体に関し、更に詳しくは、カラー液晶表示装置等に使用されるカラーフィルターを作製する際に用いられるカラーフィルター用顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水、溶剤、樹脂などの混合物(ビヒクル)中に、顔料を安定して分散させることは難しいこととされている。これは、混合物中に一旦分散した顔料粒子は、その混合物中で凝集する傾向があることに起因するものであるが、このように顔料が凝集すると、その混合物(顔料分散体)の分散性を低下させるばかりか、粘度の上昇をきたし、ひいてはその顔料分散体を使用したカラーフィルター等の塗膜の性能の低下を招くこととなる。
【0003】
近年、特にカラーフィルターの性能向上の要請が強く、カラーフィルターの高コントラスト化、顔料の高濃度化(高コンテント化)を図る必要が生じてきた。しかしながら、現在一般に採用されているカラーフィルター用の顔料分散体では、前記のような顔料粒子の凝集が避けられず、顔料の高濃度化による粘度の増大および貯蔵安定性の低下を防止することを困難にさせ、ひいてはそのカラーフィルターのコントラストの向上を図ることが困難となるという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するものとして、種々の分散剤を用いた顔料分散液等が提案されているが(例えば、特許文献1、2参照)、上記問題を解決するには至っていない。
【特許文献1】特開2007−284642号公報
【特許文献2】特開2008−81732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高コンテント(高濃度)の微細化顔料を含みかつその分散安定性に優れるとともに、カラーフィルターの高コントラスト化を実現可能な顔料分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)微細化顔料、分散剤、分散樹脂、および溶剤を含有する顔料分散体であって、前記分散剤が、酸価が2mgKOH/g以上でアミン価が0mgKOH/gである化合物及びアミン価が10mgKOH/g以上で酸価が0mgKOH/gである化合物のそれぞれを少なくとも1種含む混合物、又は、アミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物を含むカラーフィルター用顔料分散体。
【0008】
(2)前記微細化顔料が、ソルトミリングにより微細化された(1)に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【0009】
(3)前記微細化顔料の平均粒子径が10〜50nmである(1)または(2)に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【0010】
(4)前記溶剤の沸点が180℃以上の高沸点溶剤である(1)〜(3)のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【0011】
(5)前記微細化顔料が、表面処理剤で処理されている(1)〜(4)のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の顔料分散体は、高コンテント(高濃度)の微細化した顔料粒子が均一に微分散しており、顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れたものである。このため、顔料分散体の経時的な特性変化が効果的に防止され、長期間にわたって、均一な着色濃度のカラーフィルター用の塗膜(以下、単に「塗膜」と称する場合がある)の形成、均一な膜厚の塗膜の形成等に好適に適用することができ、形成される塗膜における色むら、濃度むらの発生等を効果的に防止することができる。また、高コンテントの微細化した顔料粒子が微分散しているため、顔料の発色性に優れており、明度の高い塗膜の形成に好適に用いることができる。また、カラーフィルター用の塗膜のコントラストを極めて優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のカラーフィルター用顔料分散体(以下、単に「顔料分散体」と称する場合がある。)は、微細化顔料、分散剤、分散樹脂、および溶剤を含有する顔料分散体であって、前記分散剤が、所定の化合物を含むことを特徴とするものである。
【0014】
分散剤は顔料分散体中における顔料粒子の分散性を向上させるのに寄与する成分である。本発明における分散剤は、酸価が2mgKOH/g以上でアミン価が0mgKOH/gである化合物(以下、酸価分散剤と称する場合がある)と、アミン価が10mgKOH/g以上で酸価が0mgKOH/gである化合物(以下、アミン価分散剤と称する場合がある)のそれぞれを少なくとも1種含む混合物、又は、アミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物(以下、両性分散剤と称する場合がある)を含むものである。なお、前記のアミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物とは、一分子中に塩基性基(アミノ基)と酸性基とを有する化合物であって、アミン価と酸価が前記所定の値を有するものであることを意味する。
【0015】
分散剤をこのような構成とすることにより、顔料の分散性、分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、本分散剤を用いることにより、後述の製造方法の微分散工程において、分散剤分散液中に添加された微細化顔料粒子の表面に、分散剤が付着(吸着)し、当該顔料粒子の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中の微細化顔料粒子の微分散状態が維持され、その長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0016】
本発明において使用する分散剤としては、前記のとおり所定の酸価を有する酸価分散剤(アミン価は0mgKOH/g)と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤(酸価は0mgKOH/g)のそれぞれを少なくとも1種含む混合物、又は、アミン価と酸価が所定の値を有する化合物を用いる。
【0017】
これにより、顔料同士の凝集を低減する効果を発揮する酸価分散剤(あるいは酸性基)による効果と、顔料の分散状態を安定化させるアミン価分散剤(あるいは塩基性基(アミノ基))による効果とが両立され、特に微細化した顔料の分散体中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0018】
また、酸価分散剤とアミン価分散剤との混合物、又はアミン価と酸価が所定の値を有する化合物を用いることにより、以下のような効果も得られる。すなわち、後述するような方法で、顔料分散体を製造する場合、微分散工程において、分散剤分散液中に添加された微細化顔料粒子の表面に、分散剤を効率よく付着(吸着)させ、微細化顔料粒子の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中の微細化顔料粒子が微分散された状態で維持され、顔料分散体は、長期分散安定性が特に優れたものとなる。また、後述する製造方法は、顔料の微分散処理を行うのに先立ち、分散剤と分散樹脂と溶剤とを含む混合物を撹拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程を有しているが、このような方法において、酸価分散剤とアミン価分散剤との混合物、又はアミン価と酸価が所定の値を有する化合物を用いることにより、分散剤の会合を確実に防止し、微細化顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0019】
[酸価分散剤]
前記のように、本発明において用いる酸価分散剤は、2mgKOH/g以上の酸価を有する化合物を含むものである。酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、前記範囲であれば、特に限定されないが、5〜370mgKOH/gであるのが好ましく、20〜270mgKOH/gであるのがより好ましく、30〜135mgKOH/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。なお、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が0mgKOH/gである。なお、DIN 16945に準拠する方法等でアミン価を測定した場合に、測定誤差等によって、実質的にアミノ基の効果を奏さない程度のアミン価となる場合は実質的にアミン価が0mgKOH/gとして許容しうる。
【0020】
酸価分散剤としては、前記所定の酸価を有するものであれば、特に限定はないが、顔料への吸着性が高いこと等から、ポリエステル鎖を有する化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることができる酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバ・ジャパン(株)製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0021】
[アミン価分散剤]
前記のように、本発明において用いるアミン価分散剤は、10mgKOH/g以上のアミン価を有する化合物を含むものである。アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、前記範囲であれば、特に限定されないが、5〜200mgKOH/gであるのが好ましく、30〜170mgKOH/gであるのがより好ましく、40〜130mgKOH/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。なお、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が0mgKOH/gである。なお、DIN EN ISO 2114に準拠する方法等で酸価を測定した場合に、測定誤差、加水分解等により、実質的に酸性基の効果を奏さない程度の酸価となる場合は実質的に酸価が0mgKOH/gとして許容しうる。
【0022】
アミン価分散剤としては、前記所定のアミン価を有するものであれば、特に限定はないが、顔料への吸着性が高いこと等から、ポリエステル鎖を有する化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることができるアミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバ・ジャパン(株)製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ(株)製);Anti−Terra−205(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0023】
顔料分散体中における酸価分散剤の含有率をXA[wt%]、顔料分散体中におけるアミン価分散剤の含有率をXB[wt%]としたとき、0.1≦XA/XB≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦XA/XB≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0024】
また、酸価分散剤の酸価をAV[mgKOH/g]、アミン価分散剤のアミン価をBV[mgKOH/g]、前記酸価分散剤の含有率をXA[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をXB[wt%]としたとき、0.01≦(AV×XA)/(BV×XB)≦1.9の関係を満足するのが好ましく、0.10≦(AV×XA)/(BV×XB)≦0.95の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0025】
[両性分散剤]
前記のとおり、本発明において用いる両性分散剤は、アミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物である。酸価は(固形分換算したときの酸価)は、前記範囲であれば、特に限定されないが、2〜15mgKOH/gであるのが好ましい。また、アミン価(固形分換算したときのアミン価)は、前記範囲であれば、特に限定されないが、10〜35mgKOH/gであるのが好ましい。酸価とアミン価は、それぞれ、DIN EN ISO 2114、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0026】
両性分散剤の酸価とアミン価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と酸価分散剤と併用する場合と同等以上の効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、顔料分散体の増粘をより効果的に抑制することができる。
特に、両性分散剤を用いると、酸価分散剤とアミン価分散剤との混合物を用いる場合よりも、より長期分散安定性が高くなる傾向にあり、顔料分散体の増粘をより低減することができる。
【0027】
両性分散剤としては、前記所定の酸価とアミン価を有するものであれば、特に限定はないが、顔料への吸着性が高いこと等から、ポリエステル鎖を有する化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることができるアミン価分散剤の具体的例としては、ヒノアクトT−8000、ヒノアクトT−8000E(以上、川研ファインケミカル(株)製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。必要により、酸価分散剤およびアミン価分散剤と併用しても良い。
【0028】
本発明で使用する顔料に特に限定はないが、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、およびアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、金属錯体顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等の縮合多環系顔料などが挙げられる。
【0029】
更に具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ71から選択される少なくとも一種である。
【0030】
これらの顔料は、単独あるいは混合して用いても良いが、好ましくは、顔料のスルフォン酸基を有する誘導体を併用する(例えば、特開2007−186681号公報参照)か、顔料のフタルイミド基を有する誘導体を併用することにより、顔料の分散性等を向上させることができる。
【0031】
顔料分散体中における顔料(主顔料および副顔料を含む)の含有率は、5wt%以上であるのが好ましく、8〜25wt%であるのがより好ましい。このように、顔料の含有率が十分に高いもの(高コンテント)であると、例えば、顔料分散体を用いて形成される塗膜の発色濃度を特に高いものとすることができる。また、所定の膜厚、色濃度の塗膜を形成するのに要する顔料分散体の量を少なくすることができ、省資源の観点から有利である。また、塗膜を形成する際における溶媒の揮発量を抑制することができるため、環境に対する負荷を軽減することができる。
【0032】
本発明の微細化顔料は、前記顔料をソルベントソルトミリング、ドライミリング(溶剤を使用しない乾式ミリング)等の方法により摩砕することにより得られる。
【0033】
ソルベントソルトミリングとは、溶剤を用いて顔料をミリングする方法であり、具体的には、以下のとおりである。
【0034】
まず、微細化目的の顔料(以下、「クルード顔料」という)、水溶性無機塩(摩砕剤)、粘結剤を含む混合物を、ニーダー等の混練機を用いて定法により混練し、微細化顔料を含む混練物を得る。(以下、当該混練物をマグマという場合がある。)。
【0035】
この際使用する水溶性無機塩としては、芒硝(硫酸ナトリウム)、食塩(塩化ナトリウム)などが挙げられ、その平均粒径が5.5μm以下でかつ粒径10.0μm以上の含有量が5体積%以下のものを使用することにより、均一で高度に微細化された優れた微細化顔料が得られる。また、使用する粘結剤としては、水溶性有機溶剤が広く用いることができ、例えば、ジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
次に、前記のクルード顔料の微細化が終了したマグマを取り出し、温調可能なタンク内に移して脱イオン水にマグマを分散させる。該分散液をポンプでフィルタープレスに移送して濾過する。分散液を完全に移送後、水洗して微細化顔料ペーストを得る。水洗後の顔料ペーストを乾燥機に移して乾燥させ、微細化顔料の乾燥ブロックを得、これを粉砕し、微細化顔料を得る。
【0037】
ドライミリングとは、溶剤を用いないでミリングする方法であり、具体的には以下のとおりである。例えばスーパーミキサーにクルード顔料および摩砕剤を添加し、撹拌混合する。この際、必要により少量の水溶性溶剤(例えば、DEG)を添加しても良い。その後、冷却し、クルード顔料の微細化が終了した混合物(以下、当該混練物をマグマという場合がある。)を取り出しタンク内に移す。タンク内で脱イオン水と混合撹拌し、マグマを分散させる。分散液をフィルタープレスに移送して濾過、水洗し、微細化顔料ペーストを得る。水洗後の該顔料ペーストを乾燥機に移して乾燥させ、微細化顔料の乾燥ブロックを得る。乾燥ブロックを粉砕機で粉砕し、粉砕物をサイクロン等で捕集し、微細化顔料を得る。尚、ドライミリングにおいて使用する摩砕剤は、前記ソルベントソルトミリングの場合と同じものを用いることができる。
【0038】
前記各方法により、平均粒子径10〜50nmの均一な微細化顔料を容易に得ることができるが、顔料の微細化効率が特に優れたものとして、ソルベントソルトミリングが好ましく用いられる。
【0039】
本発明においては、微細化顔料の表面を、表面処理剤を用いて処理しても良い。処理方法としては、前記のように顔料を微細化する際に、表面処理剤を添加してミリングを行ない、表面処理剤を微細化顔料の表面に被覆する方法が例示できる。具体的には、所定の温度、時間で表面処理剤を添加せずにミリングを行った後に、表面処理剤を添加して、更にミリングを行う方法が挙げられる。この場合の処理時間としては、20〜120分間行う。また、表面処理剤の添加量は、顔料成分100重量部に対し5〜50重量部であるのが好ましく、10〜30重量部であるのがより好ましい。
尚、複数の顔料のうち、一部の顔料のみを表面処理する場合は、前記のように表面処理剤で処理したものと未処理のものを混合して用いればよい。
【0040】
このように微細化顔料を表面処理剤により処理することにより、微細化顔料粒子の再凝集を防止することが可能となり、表面処理剤により処理した微細化顔料を含む顔料分散体は、顔料の長期分散安定性が極めて高く、粘度上昇が抑制される。そのため、当該顔料分散体を用いたカラーフィルターは、コントラストがより向上し、優れたものとなる。
【0041】
表面処理剤としては、微細化顔料粒子の再凝集を防止する等の効果を有する樹脂や化合物であって、前記微細化処理における水洗による摩砕剤の除去、脱水等の後処理において、微細化顔料粒子表面から脱離しにくいものが選択される。
【0042】
具体的には、アクリル系樹脂が好ましく使用される。このようなアクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレートやメチルメタクリレート等のアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート等から選ばれるモノマーを用いて、重合して得られるものが挙げられる。このような重合体の分子量としては、約5000〜100000が好ましい。このようなアクリル系樹脂の具体例としては、例えば、リポキシSPC2000(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0043】
分散樹脂は、顔料粒子の分散性を向上させる機能を有しており、成形時に塗膜の一部を形成する。
【0044】
本発明において使用する分散樹脂としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリル系樹脂は、前述の表面処理剤としても使用することができる。
【0045】
顔料分散体中における分散樹脂の含有量は、特に限定されないが、顔料成分100重量部に対し、1〜20重量部であるのが好ましく、5〜15.5重量部であるのがより好ましい。
【0046】
溶剤は、顔料分散体において、顔料を分散する分散媒として機能するものである。また、溶剤は、後述するような顔料分散体の製造方法では、分散剤分散液中において、分散樹脂を溶解する溶媒として機能するものである。
【0047】
本発明で使用する溶剤としては、非水性溶媒、水性溶媒の何れを用いても良いが、水溶性溶媒が好ましく使用される。溶剤として水溶性溶媒を用いた方が、上述したような顔料の分散性を特に優れたものとなる傾向にある。水溶性溶剤としては、親水性の溶媒を用いることができ、具体的には、例えば、25℃における水100gに対する溶解度が3g以上の液体を用いることができる。
【0048】
水溶性溶剤としては、一般に、水酸基等の親水性の高い官能基を有する化合物や、ポリグリコール骨格を有する化合物等を好適に用いることができる。
【0049】
水溶性溶剤の具体例としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明においては、顔料分散体の保存時等における溶剤の蒸発による不本意な粘度変化等を防止する等の目的で、沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤を用いることができる。
【0051】
沸点が180℃以上の水溶性有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
これにより、容易に、前記分散剤の分散状態を、より好適なものとすることができ、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、顔料分散体中における顔料の含有率を高くした場合であっても、顔料の長期分散安定性を十分に優れたものとすることができる。
【0053】
また、後述するような方法で顔料分散体を製造する場合においては、顔料分散体を効率よく製造することができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0054】
前記のとおり、本発明においては溶剤として水溶性溶媒が好ましく使用されるが、非水溶性溶媒を用いてもよい。
非水溶性溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒等を用いることができる。
【0055】
非水溶性のエステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸−3−メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、乳酸ブチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸プロピル等が挙げられる。
【0056】
非水溶性のエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
【0057】
非水溶性のケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、イソホロン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0058】
また、上記のほか、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類も用いることができる。
【0059】
本発明の顔料分散体は、前記の微細化顔料、分散剤、分散樹脂、溶剤以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0060】
上記のように、本発明の顔料分散体は、微細化顔料が微分散した状態を長期間維持することが可能であるが、その微分散状態を評価する方法として、顔料分散体の粘度を測定し、その測定値を指標とすることができる。
顔料分散体の粘度(動粘度)の測定は、例えば、E型粘度計(例えば、東機産業(株)製 RE−01)を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0061】
顔料分散体の25℃における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))は、17mPa・s以下であるのが好ましく、12mPa・s以下であるのがより好ましい。このように、顔料分散体の粘度(動粘度)が十分に低いものであると、例えば、塗膜の形成の効率を特に優れたものとすることができるとともに、塗膜の厚さの不本意なばらつき等を効果的に防止することができる。一方、顔料分散体の粘度が低すぎると、例えば、顔料分散体を用いて形成する塗膜の膜厚を十分に厚いものとするのが困難になる可能性がある。
【0062】
また、40℃の環境下に、7日間放置した後の、25℃における顔料分散体の粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))の変化率は、1.3以下であるのが好ましく、1.1以下であるのがより好ましい。尚、前記変化率は、(40℃、7日間放置後の粘度の測定値)/(放置直前の粘度の測定値)で算出される値である。
【0063】
このように、顔料分散体の特性変化が十分に少ないものである(顔料分散体の耐久性が優れたものである)と、例えば、顔料分散体を用いて塗膜を形成した場合における色むら、濃度むら等の発生、コントラストの低下を長期間にわたってより確実に防止することができる。
【0064】
上述したような顔料分散体は、カラーフィルター用等の塗膜の形成に用いることができる。前記のように、本発明の顔料分散体は、微細化した顔料粒子が微分散しており、長期間にわたって優れた分散安定性を保持することができるものであるため、顔料分散体中での微細化顔料粒子の偏在を防止することができ、本発明の顔料分散体を用いて形成される塗膜は、膜厚の均一性に優れ、色むら、濃度むら等の発生が確実に防止されたものとなる。特に、カラーフィルター用として使用した場合、コントラストの値が殆ど低下することがない。よって、本発明の顔料分散体によれば、このような高品質の塗膜を、長期間にわたって安定的に形成することができる。
【0065】
塗膜は、例えば、バーコート、スピンコート、ロールコート、スリットコート、刷毛塗り、オフセット印刷、グラビア印刷等の方法により、基材上に顔料分散体を付与し、その後、必要に応じ乾燥(脱溶剤処理)することにより目的の塗膜を形成することができる。
【0066】
上述したような顔料分散体は、例えば、以下のような方法により作製することができる。その概略は、分散剤と、分散樹脂と、溶剤とを含む混合物を撹拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得(予備分散工程)、得られた分散剤分散液に微細化した顔料を添加し、無機ビーズを単段もしくは多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)ことにより本発明の顔料分散体を得るものである。以下に、各工程を詳細に説明する。
【0067】
予備分散工程においては、分散剤と、分散樹脂と、溶剤とを含む混合物を撹拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を調製する。これにより、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができる。ところで、本発明で用いる酸価分散剤およびアミン価分散剤は、本来、互いに電気的に引き付け合い易いという性質を有しているが、本実施形態のように、顔料の微分散(微分散工程)に先立って予備分散工程を行うことにより、顔料粒子の表面に、酸価分散剤およびアミン価分散剤を、会合状態を十分に解いた状態で、均一かつ安定的に付着させることができ、分散剤同士の凝集、顔料粒子同士の凝集等を確実に防止することができ、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。この点は、両性分散剤を用いた場合も同様である。
【0068】
本工程において、分散樹脂を、分散剤および溶剤とともに、混合しておくことにより、後述する微分散工程で、分散剤分散液中に添加された微細化顔料粒子の表面に、分散剤および分散樹脂を付着させ、当該顔料粒子の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中の微細化顔料粒子が微分散状態を維持し、その長期分散安定性を優れたものとすることができる。
【0069】
本工程で調製する分散剤分散液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤の含有率の総和)は、特に限定されないが、10〜40wt%であるのが好ましく、12〜32wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0070】
また、本工程で調製する分散剤分散液中における分散樹脂の含有率は、特に限定されないが、6〜30wt%であるのが好ましく、8〜26wt%であるのがより好ましい。分散樹脂の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0071】
また、本工程で調製する分散剤分散液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0072】
溶剤の使用量は、特に限定されないが、通常、最終的に得られる顔料分散体において、顔料100重量部に対する溶剤の含有量が、100〜500重量部となるものであるのが好ましく、100〜300重量部となるものであるのがより好ましく、100〜200重量部となるものであるのがさらに好ましい。溶剤の使用量が少なすぎると、後述する微分散工程での顔料微粒子の均一な分散が困難になる可能性がある。一方、溶剤の使用量が多すぎると、最終的に得られる顔料分散体を用いて形成される膜の強度等を十分に優れたものとするのが困難となる。
【0073】
本工程では、各種撹拌機を用いて上記各成分の混合物を撹拌することにより、分散剤分散液を得る。本工程で用いることのできる撹拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0074】
撹拌機を用いた撹拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる顔料分散体中における微細化顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0075】
また、本工程での撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる顔料分散体中における微細化顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0076】
次に、上記工程で得られた分散剤分散液に微細化顔料を添加し、無機ビーズを単段若しくは多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
【0077】
微分散工程において、無機ビーズの添加は、単段で行っても多段で行っても良いが、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率をより優れたものとすることができ、最終的に得られる顔料分散体中における微細化顔料粒子が極めて均一に分散し、安定したものにすることができる。特に、上述したような所定の酸価分散剤とアミン価分散剤の混合物あるいは両性分散剤を使用し、さらに予備分散工程および多段での微分散工程を有する方法を用いることにより、それぞれの効果が相乗的に作用して、微細化顔料の分散安定性に寄与する。このようにして得られた顔料分散体を用いれば、更に優れた明度、コントラストを有する塗膜を形成することができる。
【0078】
尚、前記のような本発明で使用する特定の分散剤の効果を充分発揮させるために、分散処理を充分行うことが望ましい。
【0079】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
【0080】
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0081】
第1の処理工程では、まず、前述した予備分散工程で調製した分散剤分散液に微細化顔料を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。これにより、微分散工程全体としての、微細化顔料の微分散の効率を、優れたものとすることができる。
【0082】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.5〜3.0mmであり、0.5〜2.0mmであるのが好ましく、0.5〜1.2mmであるのがより好ましい。第1の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微分散の効率を、優れたものとすることができる。これに対し、第1の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第1の処理での微細化顔料粒子の微分散化の効率が低下する傾向が現れる。また、第1の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、第1の処理での顔料粒子の微分散化の効率は、比較的優れたものとすることができるものの、第2の処理での微細化顔料粒子の微分散化の効率が低下し、微分散工程全体としての微細化顔料の微分散化の効率が低下する。
【0083】
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。分散剤分散液に添加する微細化顔料の使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
【0084】
第1の処理は、微細化顔料、第1の無機ビーズを分散剤分散液に添加した状態で、各種撹拌機を用いて撹拌することにより行うことができる。第1の処理で用いることのできる撹拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。撹拌機を用いた撹拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、微細化顔料の微分散を効率よく進行させることができる。
【0085】
また、第1の処理での撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、微細化顔料の微分散をより効率よく進行させることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0086】
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、微細化顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。これにより、第2の処理における顔料の微分散の効率を特に優れたものとすることができる。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0087】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。これにより、最終的に得られる顔料分散体中における微細化顔料を、十分に微分散させたものとすることができ、顔料分散体における微細化顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れたものとすることができる。
【0088】
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。第2の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微分散の効率を、特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第2の処理での微細化顔料粒子の微分散化の効率が低下する傾向が現れる。また、第2の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、微細化顔料粒子の微分散を十分に進行させるのが困難になる可能性がある。
【0089】
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0090】
第2の処理は、各種撹拌機を用いて行うことができる。第2の処理で用いることのできる撹拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0091】
撹拌機を用いた撹拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微分散を十分に進行させることができる。
【0092】
また、第2の処理での撹拌機が有する撹拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微分散をより効率よく進行させることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0093】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。このような関係を満足することにより、顔料粒子の微分散の効率を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中の微細化顔料粒子の微分散状態をより効果的に維持することができる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例で示される、「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味するものとする。また、下記の各実施例および比較例の顔料分散体の構成の概略を表1に示す。尚、表1の分散剤の欄中、「両性型」とは両性分散剤を、「酸型」とは酸価分散剤を、「塩基型」とはアミン価分散剤を、「配合」とは酸価分散剤とアミン価分散剤の混合物を意味する。
【0095】
[実施例1]
(微細化顔料の調製)
赤色顔料(C.I.Pigment Red254(Irgaphor Red BT−CF(チバ・ジャパン(株)製))300g、ボウ硝(無水硫酸ナトリウム)(三田尻化学工業(株)製の原料ボウ硝(平均粒径20μm)を微粉砕したもので、平均粒子径3.6μm、粒径10μm以上の粒子の含有率が0.4%であるもの。以下微粉砕品と称する場合がある。)3000g、及びジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)850gを双腕型混練機((株)モリヤマ製、5L)に仕込み、50℃で9時間混練した。この混練物を8Lの温水(70℃)に投入し、30分間撹拌してスラリー液とした。
【0096】
その後、ブフナーロートで濾過後、脱イオン水を加え、洗浄液の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで洗浄した。洗浄物を乾燥機で90℃、16時間乾燥させ、粉砕機(協立理工(株)製、サンプルミルSK−M2)で粉砕し、微細化顔料300gを得た。得られた微細化顔料の平均粒子径は25nmであった。
【0097】
(顔料分散体の調製)
両性分散剤(ヒノアクトT−8000E、川研ファインケミカル(株)製、酸価3.8mgKOH/g、アミン価25.3mgKOH/g)65.15g(161部)、分散樹脂(リポキシSPC2000、昭和高分子(株)製)14.32g(35部)、溶剤(アーコソルブPMA、協和発酵ケミカル(株)製)67.98g(168部)を内容量500mLの混合機に投入し、ディスパーで10分間撹拌して予備分散を行った。次に、得られた予備分散物に前記微細化顔料(C.I.Pigment Red254)34.37g、Pigment Red255FGG(商品名、山陽色素(株)製)2.43g、およびPigment Red PT255S(商品名、山陽色素(株)製)3.64gからなる顔料40.44g(100部)を添加して、更に10分間撹拌を行い、顔料分散体を得た。
【0098】
得られた顔料分散体に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加して、室温下、60分間撹拌し1段目の分散処理を行った後、顔料分散体と無機分散ビーズの混合分散物をフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを除去した。次いで、得られた顔料分散体中に平均粒径0.1mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加し、更に120分間撹拌し第2段目の分散操作を行った。
【0099】
得られた混合分散物を2.5μmメッシュのフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを分離し、顔料分散体を調製した。
【0100】
[実施例2]
両性分散剤に代えて、酸価分散剤(ディスパービック111(商品名)、ビックケミー・ジャパン(株)製、酸価129mgKOH/g)50gとアミン価分散剤(ディスパービック162(商品名)、ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価13mgKOH/g)15gの混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0101】
[実施例3]
微細化顔料の調製時に、赤色顔料(C.I.Pigment Red254(Irgaphor Red BT−CF(チバ・ジャパン(株)製))、ボウ硝(微粉砕品)及びDEGを双腕型混練機により、50℃で9時間混練した後(処方は実施例1と同じ)、表面処理剤である高分子化合物((株)昭和高分子製、リポキシSPC2000、純分40%)112.5gを添加し、さらに90分混練し、微細化顔料を表面処理したこと以外は、実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。尚、得られた微細化顔料の平均粒子径は30nmであった。尚、表面処理を行うことにより平均粒子径が、表面処理を行なっていないものよりも若干大きくなる傾向にあるが、これは表面処理剤である高分子化合物が微細化顔料粒子表面に吸着したことによるものと考えられる。
【0102】
[比較例1]
赤色顔料(C.I.Pigment Red254(Irgaphor Red BT−CF(チバ・ジャパン(株)製))を平均粒子径20μmのボウ硝で微細化し、その平均粒径が60nmであるものを使用した以外は、実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0103】
[比較例2]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤のみを使用した以外は、実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0104】
[比較例3]
両性分散剤に代えて、実施例2のアミン価分散剤のみを使用した以外は、実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0105】
[実施例4]
(微細化顔料の調製)
赤色顔料(C.I.Pigment Red177(チバ・ジャパン(株)製、商品名「CROMOPHTAL RED A2B」))、ボウ硝(微粉砕品)3000g、及びジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)850gを双腕型混練機((株)モリヤマ製、5L)に仕込み、50℃で9時間混練した。この混練物を8Lの温水(70℃)に投入し、30分間撹拌してスラリー液とした。
【0106】
その後、ブフナーロートで濾過後、脱イオン水を加え、洗浄液の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで洗浄した。洗浄物を乾燥機で90℃、16時間乾燥させ、粉砕機(協立理工(株)製、サンプルミルSK−M2)で粉砕し、微細化顔料300gを得た。得られた微細化顔料の平均粒子径は25nmであった。
【0107】
(顔料分散体の調製)
両性分散剤(ヒノアクトT−8000E(商品名)、川研ファインケミカル(株)製、酸価3.8mgKOH/g、アミン価25.3mgKOH/g)65.15g(161部)、分散樹脂(リポキシSPC2000、昭和高分子(株)製)14.32g(35部)、溶剤(アーコソルブPMA、協和発酵ケミカル(株))67.98g(168部)を内容量500mLの混合機に投入し、ディスパーで10分間撹拌して予備分散を行った。次に、得られた予備分散物に前記微細化顔料34.37g、Pigment Red PT177S(商品名、山陽色素(株)製、顔料誘導体)6.07gからなる顔料40.44g(100部)を添加して、更に10分間撹拌を行い、顔料分散体を得た。
【0108】
得られた顔料分散体に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加して、室温下、60分間撹拌し1段目の分散処理を行った後、顔料分散体と無機分散ビーズの混合分散物をフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを除去した。次いで、得られた顔料分散体中に平均粒径0.1mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加し、更に120分間撹拌し第2段目の分散操作を行った。
【0109】
得られた混合分散物を2.5μmメッシュのフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを分離し、顔料分散体を調製した。
【0110】
[実施例5]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤とアミン価分散剤の混合物を用いた以外は、実施例4と同様にして顔料分散体を調製した。
【0111】
[実施例6]
微細化顔料の調製時に、赤色顔料(C.I.Pigment Red177(チバ・ジャパン(株)製、商品名「CROMOPHTAL RED A2B」))、ボウ硝(微粉砕品)及びDEGを双腕型混練機により、50℃で9時間混練した後(処方は実施例4と同じ)、表面処理剤である高分子化合物(昭和高分子(株)製、リポキシSPC2000、純分40%)112.5gを添加し、さらに90分混練し、微細化顔料を表面処理したこと以外は、実施例4と同様にして顔料分散体を調製した。尚、得られた微細化顔料の平均粒子径は30nmであった。
【0112】
[比較例4]
赤色顔料(C.I.Pigment Red177(チバ・ジャパン(株)製、商品名「CROMOPHTAL RED A2B」))を平均粒子径20μmのボウ硝で微細化し、その平均粒径が60nmであるものを使用した以外は、実施例4と同様にして顔料分散体を調製した。
【0113】
[比較例5]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤のみを使用した以外は、実施例4と同様にして顔料分散体を調製した。
【0114】
[比較例6]
両性分散剤に代えて、実施例2のアミン価分散剤のみを使用した以外は、実施例4と同様にして顔料分散体を調製した。
【0115】
[実施例7]
(微細化顔料の調整)
青色顔料(C.I.Pigment Blue15:6(東洋インキ製造(株)製、商品名「Lionol Blue E」))300g、ボウ硝(微粉砕品)3000g、及びジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)850gを双腕型混練機((株)モリヤマ製、5L)に仕込み、50℃で9時間混練した。この混練物を8Lの温水(70℃)に投入し、30分間撹拌してスラリー液とした。
【0116】
その後、ブフナーロートで濾過後、脱イオン水を加え、洗浄液の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで洗浄した。洗浄物を乾燥機で90℃、16時間乾燥させ、粉砕機(協立理工(株)製、サンプルミルSK−M2)で粉砕し、微細化顔料300gを得た。得られた微細化顔料の平均粒子径は25nmであった。
【0117】
(顔料分散体の調製)
両性分散剤(ヒノアクトT−8000E(商品名)、川研ファインケミカル(株)製、酸価3.8mgKOH/g、アミン価25.3mgKOH/g)65.15g(161部)、分散樹脂(リポキシSPC2000、昭和高分子(株)製)14.32g(35部)、溶剤(アーコソルブPMA(商品名)、協和発酵ケミカル(株)製)67.98g(168部)を内容量500mLの混合機に投入し、ディスパーで10分撹拌して予備分散を行った。次に、得られた予備分散物に前記微細化顔料(C.I.Pigment Blue15:6)36.8g、および顔料誘導体(ソルスパース12000(商品名)、アビシア(株)製)3.2gからなる顔料40.00g(100部)を添加して、更に10分間撹拌を行い、顔料分散体を得た。
【0118】
得られた顔料分散体に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加して、室温下、60分間撹拌し1段目の分散処理を行った後、顔料分散体と無機分散ビーズの混合分散物をフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを除去した。次いで、得られた顔料分散体中に平均粒径0.1mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加し、更に120分間撹拌し第2段目の分散操作を行った。
【0119】
得られた混合分散物を2.5μmメッシュのフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを分離し、顔料分散体を調製した。
【0120】
[実施例8]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤とアミン価分散剤の混合物を用いた以外は、実施例7と同様にして顔料分散体を調製した。
【0121】
[比較例7]
青色顔料(C.I.Pigment Blue15:6(東洋インキ製造(株)製、商品名「Lionol Blue E」))を平均粒子径20μmのボウ硝で微細化し、その平均粒径が60nmであるものを使用した以外は、実施例7と同様にして顔料分散体を調製した。
【0122】
[比較例8]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤のみを使用した以外は、実施例7と同様にして顔料分散体を調製した。
【0123】
[比較例9]
両性分散剤に代えて、実施例2のアミン価分散剤のみを使用した以外は、実施例7と同様にして顔料分散体を調製した。
【0124】
[実施例9]
(微細化顔料の調製1)
緑色顔料(C.I.Pigment Green 36(東洋インキ製造(株)製 Lionol Green 6YK))300g、ボウ硝(微粉砕品)3000g、及びジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)850gを双腕型混練機((株)モリヤマ製、5L)に仕込み、50℃で9時間混練した。この混練物を8Lの温水(70℃)に投入し、30分間撹拌してスラリー液とした。
【0125】
その後、ブフナーロートで濾過後、脱イオン水を加え、洗浄液の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで洗浄した。洗浄物を乾燥機で90℃、16時間乾燥させ、粉砕機(協立理工(株)製、サンプルミルSK−M2)で粉砕し、微細化顔料300gを得た。得られた微細化顔料の平均粒子径は30nmであった。
【0126】
(微細化顔料の調製2)
上記処理と同じ条件にて黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150(Yellow Pigemnt E4GN、ランクセス(株)製))を微細化処理し、微細化顔料300gを得た。得られた微細化顔料の平均粒子径は40nmであった。
【0127】
(顔料分散体の調製)
両性分散剤(ヒノアクトT−8000E(商品名)、川研ファインケミカル(株)製、酸価3.8mgKOH/g、アミン価25.3mgKOH/g)65.15g(161部)、分散樹脂(リポキシSPC2000、昭和高分子(株)製)14.32g(35部)、溶剤(アーコソルブPMA、協和発酵ケミカル(株))67.98g(168部)を内容量500mLの混合機に投入し、ディスパーで10分間撹拌して予備分散を行った。次に、得られた予備分散物に前記微細化した緑色顔料(Pigment Green 36)24.06g、前記微細化した黄色顔料(Pigment Yellow 150)10.31g、顔料誘導体(Pigment Yellow 138S(商品名)、山陽色素(株)製)6.07gからなる顔料40.44g(100部)を添加して、更に10分間撹拌を行い、顔料分散体を得た。
【0128】
得られた顔料分散体に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加して、室温下、60分間撹拌し1段目の分散処理を行った後、顔料分散体と無機分散ビーズの混合分散物をフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを除去した。次いで、得られた顔料分散体中に平均粒径0.1mmの無機ビーズ(ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)720gを添加し、更に120分間撹拌し第2段目の分散操作を行った。
【0129】
得られた混合分散物を2.5μmメッシュのフィルター(「PALL HDCII Membrene Filter」、PALL社製)でろ過して無機ビーズを分離し、顔料分散体を調製した。
【0130】
[実施例10]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤とアミン価分散剤の混合物を用いた以外は、実施例9と同様にして顔料分散体を調製した。
【0131】
[実施例11]
実施例9の微細化顔料の調製2において、黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150(Yellow Pigemnt E4GN、ランクセス(株)製))、ボウ硝(微粉砕品)及びDEGを双腕型混練機により、50℃で9時間混練した後(処方は実施例9と同じ)、表面処理剤である高分子化合物(昭和高分子(株)製、リポキシSPC2000、純分40%)112.5gを添加し、さらに90分間混練し、微細化顔料を表面処理したこと以外は、実施例9と同様にして顔料分散体を調製した。尚、得られた微細化顔料の平均粒子径は50nmであった。
【0132】
[比較例10]
緑色顔料(C.I.Pigment Green 36(東洋インキ製造(株)製 Lionol Green 6YK))および黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150(Yellow Pigemnt E4GN、ランクセス(株)製))を平均粒子径20μmのボウ硝で微細化し、平均粒径がそれぞれ50nmおよび60nmであるものを使用した以外は、実施例9と同様にして顔料分散体を調製した。
【0133】
[比較例11]
両性分散剤に代えて、実施例2の酸価分散剤のみを使用した以外は、実施例9と同様にして顔料分散体を調製した。
【0134】
[比較例12]
両性分散剤に代えて、実施例2のアミン価分散剤のみを使用した以外は、実施例9と同様にして顔料分散体を調製した。
【0135】
[評価]
上記の実施例および比較例において調製した顔料分散体について、該顔料分散体の粘度安定性、および前記顔料分散体を用いてカラーフィルターを作製し、そのコントラストを測定することにより、本発明の顔料分散体の分散安定性及びカラーフィルターとしての性能を評価した。
【0136】
(顔料分散体の粘度安定性)
粘度安定性は、実施例および比較例において調製した各顔料分散体の粘度(動粘度)を、40℃の環境下に7日間放置する前(顔料分散体の調製直後)とその放置した後に測定した。測定温度条件は25℃である。
【0137】
顔料分散体の粘度(動粘度)の測定は、JIS Z8809に準拠し、E型粘度計(東機産業(株)製 RE−01)を用いて行った。表1に、その結果を示す。表中の「初期の粘度」の単位は、mPa・sである。また、「7日後の増粘率」とは、(40℃、7日間放置後の粘度の測定値)/(放置直前の粘度の測定値)で算出された値である。
【0138】
(カラーフィルターの性能)
<カラーフィルターの調製>
前記各顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業(株)製、TV−22型粘度計)で測定した。また、130℃、1時間の条件で前記各顔料分散体の固形分を確認した。この顔料分散体を用いてスピンコート液(以下、SPC液という。)を作製した。分散体中の固形分とSPC液に用いるバインダーの固形分が1:1になるように調節した。SPC液を厚さ1mm、100mm角のガラス板にスピンコーター(ミカサ(株)製、スピンコーターMS−150A)で回転数を3段階に設定して個々に塗布し、エアパス内で90℃、2.5分間乾燥させた(プリベイクエ程)。このようにして、カラーフィルターを得た。
【0139】
<コントラストの測定>
続いて、プリベイク工程後の3枚のガラス塗板の色を確認した(スピンコート時の回転数はYxy色度によって設定される。)。分散体の粘度とスピンコートの回転数により、コートの厚みが異なり、それぞれの色度を分光測色計(コニカミノルタセンシング(株)製、分光測色計、CM−3700d)にて測定した。測定した数値をプロットして直線性が保たれているかを確認した。
【0140】
次に、ガラス塗板の輝度を色彩輝度計(コニカミノルタセンシグ(株)製、輝度計 LS−100)で測定した。バックライト上に偏光板(TOLAX−38S、株式会社ルケオ製)を設置し、偏光板とガラス塗板の間隔が1mmになるように設置した。その上部に回転可能な偏光板を設置した。バックライトの輝度が十分安定したことを確認した後、ガラス塗板の輝度を測定した。偏光板をクロスニコルの位置に調節して輝度を測定し、次いで90°回転させ、パラレルの位置で輝度を測定した。ある色度の位置でYxy色度と各々の揮度を解析ソフトを用いて解析した。その結果を表1に示す。尚、表1中の「初期のコントラスト」の値は、何れも、40℃の環境下に、7日間放置する直前の値である。
【0141】
【表1】

【0142】
表1より、何れの顔料を用いた場合でも、実施例の顔料分散体は、高コンテント(高濃度)でありながら、その動粘度が12mPa・m以下、増粘率が1.1以下であり、かつ、それにより調製したカラーフィルターのコントラストが比較例のものに比し、優れたものとなっていることがわかる。特に、表面処理した微細化顔料を用いた顔料分散体は、そのカラーフィルターのコントラストが極めて高く、カラーフィルター用の顔料分散体として極めて優れたものである。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細化顔料、分散剤、分散樹脂、および溶剤を含有する顔料分散体であって、前記分散剤が、酸価が2mgKOH/g以上でアミン価が0mgKOH/gである化合物及びアミン価が10mgKOH/g以上で酸価が0mgKOH/gである化合物のそれぞれを少なくとも1種含む混合物、又は、アミン価が10mgKOH/g以上であり、かつ酸価が2mgKOH/g以上である化合物を含むカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項2】
前記微細化顔料が、ソルトミリングにより微細化された請求項1に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項3】
前記微細化顔料の平均粒子径が10〜50nmである請求項1または2に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項4】
前記溶剤の沸点が180℃以上の高沸点溶剤である請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項5】
前記微細化顔料が、表面処理剤で処理されている請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体。



【公開番号】特開2010−13490(P2010−13490A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171790(P2008−171790)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000180058)山陽色素株式会社 (30)
【Fターム(参考)】