説明

カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに液晶表示装置

【課題】インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、光学性能を向上可能なカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)顔料分散剤と、(B)顔料と、(C)熱硬化性バインダーと、(D)溶剤とを有するカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物であって、前記(A)顔料分散剤が、3級アミノ基とエチレン性不飽和二重結合を有する基を含む窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体は、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化され、且つ、前記マクロモノマー由来のガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含むことを特徴とするカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。さらに近年普及している液晶ディスプレイは大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。このような状況において、液晶ディスプレイを構成する部材についてはより低コストで高品質なものを高生産性で製造することが望まれており、特に液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタにおいては、従来高コストであったことからこのような要望が高まっている。
【0003】
ここで、一般的なカラーフィルタの製造方法としては、遮光部がパターン状に形成された基板上に、各色の顔料を分散させた光硬化性ネガ型樹脂組成物からなる塗膜を形成し、所望のパターン形状のフォトマスクを介して露光・アルカリ現像することにより、各色の着色層をパターン状に形成する方法が用いられる。
【0004】
しかしながら、上記の方法は、R、G、及びBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
これらの問題点を解決したカラーフィルタの製造方法として、基板表面にインクジェット方式でインクを吹き付けて画素を形成する方法が提案されている。
【0005】
当該透明基板上のブラックマトリクス層に囲まれた領域にインクジェット方式により画素が形成されると、そのインクとブラックマトリクス層表面との親和性やブラックマトリクス層の高さ、吐出するインク量などの関係から、ブラックマトリクス層に囲まれた開口部における画素の形状は、当該画素の外縁部又はその近傍において膜厚の薄い部分を有し、且つ当該膜厚の薄い部分よりも画素の中心側に膜厚の最も厚い部分を有するような形状となったり、逆に、当該画素の外縁部又はその近傍において膜厚の厚い部分を有し、且つ当該膜厚の厚い部分よりも画素の中心側に膜厚の最も薄い部分を有するような形状となったり、さらに、その表面が凹凸形状になるなど、不均一な画素になりやすい。
【0006】
画素を平坦化する試みとして、特許文献1には、インクジェットインクの隔壁に対する接触角や粘度が開示されている。また、特許文献2には、インクジェットインクに含まれる顔料の重量と顔料及びバインダー形成系の重量の和との比(P/V比)や、画素の膜厚や膜厚分布、ブラックマトリックスの高さの範囲を規定して、画素の平坦化を試みたカラーフィルタの製造方法が開示されている。また、特許文献3には、顔料の分散時間やバインダー成分等を調整し、インクジェットインクを濃縮した時の固形分量と粘度が所定の関係を満たすことにより、画素の平坦化を試みたインクジェットインクが開示されている。
一方、特許文献4では、アミノ基を有機酸で変性したグラフト共重合体からなる顔料分散剤を用いた、感光性樹脂組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−33125号公報
【特許文献2】特開2007−298971号公報
【特許文献3】特開2008−297494号公報
【特許文献4】特開2010−85647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット方式により形成された着色層は、不均一な形状になりやすいため、当該着色層と同一の平均膜厚、同一の材料の構成比を有する平坦な着色層、例えばスピンコート法により形成された着色層に比べて輝度、及びコントラストが低くなる傾向にあるという問題がある。従って、インクジェット方式により形成された着色層の膜厚において、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)の差をT−B差とした場合に、当該T−B差を小さくすることが求められている。従来、インクジェットインク中のバインダー樹脂を調整したり、添加剤を添加することにより平坦化が試みられてきたが、バインダー成分のみで平坦化を調整するには限界があり、また、添加剤は添加可能な量が限られるために平坦化の効果を発揮させるには不十分であった。
また、近年液晶表示装置の高コントラスト化の要求が高まっており、このような要求を達成するため、顔料の微細化が求められている。しかしながら、上記特許文献に開示されている技術では、微細化された顔料に対する顔料分散性が不十分となってしまい、着色層のコントラストを向上させる効果が不十分となっていた。
【0009】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、光学性能を向上可能なカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物、及び当該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及びその製造方法、並びにこのカラーフィルタを有する液晶表示装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、顔料を良好に分散させるために所定量で必須成分として用いられる顔料分散剤に着目し、顔料分散剤を特定の構造を有するグラフト共重合体においてアミノ基の少なくとも一部を4級アンモニウム塩化し、且つ、グラフト共重合体の側鎖部分のガラス転移温度を30℃以下とすることにより、顔料分散性に優れながら、平坦性の高い着色層を形成可能で、コントラストを向上し、光学性能を向上可能なカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物が得られ、その目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
本発明は、(A)顔料分散剤と、(B)顔料と、(C)熱硬化性バインダーと、(D)溶剤とを有するカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物であって、前記(A)顔料分散剤が、下記一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体は、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化され、且つ、前記マクロモノマー由来のガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含むことを特徴とするカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
【化1】

[式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは、2価の連結基を表す。]
【0013】
本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物においては、前記マクロモノマーの前記エチレン性不飽和二重結合を有する基が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物においては、前記マクロモノマーのポリマー鎖が、下記一般式(II)又は一般式(III)で表される構成単位を少なくとも1種有するものであることが、顔料分散性の点から好ましい。
【0015】
【化2】

[式(II)及び(III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R10又は−O−CO−R11で示される1価の基である。
10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。Rに含まれる、アルキル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
lは1〜5の整数、n’及びn”は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。]
【0016】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物においては、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が、ハロゲン化炭化水素と塩を形成して4級アンモニウム塩化されていることが、顔料分散性、及び、塗膜にした際の耐熱性の点から好ましい。
【0017】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物においては、ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーが、全共重合成分中50〜95重量%含まれることが、平坦性の高い着色層を形成しながら、顔料分散性を良好にしてコントラストを向上する点から好ましい。
【0018】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物においては、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基に対して、0.05〜1.0モル当量が、ハロゲン化炭化水素と塩を形成して4級アンモニウム塩化されていることが、顔料分散性、及び、塗膜にした際の耐熱性の点から好ましい。
【0019】
本発明は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とするカラーフィルタを提供する。
また、本発明は、透明基板上の所定領域に、前記本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する工程と、
前記インク層を加熱することにより硬化させて所定パターンの着色層を形成する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
更に、本発明は、上記カラーフィルタ又は上記カラーフィルタの製造方法によって製造されたカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、顔料分散性が良好で、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、光学性能を向上可能なカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。本発明の顔料分散性に優れた熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、高輝度かつ高コントラストなカラーフィルタの画素部を実現することが可能である。
また、本発明によれば、上記カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成することにより、生産性に優れ、且つ、画素形状が平坦で、光学性能が向上したカラーフィルタとすることができる。
更に、本発明によれば、上記カラーフィルタを用いることで、高品質かつ優れた生産性の液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に用いられるグラフト共重合体の好ましい構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物]
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物は、(A)顔料分散剤と、(B)顔料と、(C)熱硬化性バインダーと、(D)溶剤とを含み、前記(A)顔料分散剤が、下記の性状を有することを特徴とする。
以下、構成成分を順に説明する。
【0023】
((A)顔料分散剤)
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(A)成分として用いられる顔料分散剤は、下記一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体は、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化され、且つ、前記マクロモノマー由来のガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含む(以下、塩型グラフト共重合体と称することがある。)ことを特徴とする。
【0024】
【化3】

[式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは、2価の連結基を表す。]
【0025】
本発明によれば、用いられる顔料分散剤が、上記一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体は、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化され、且つ、前記マクロモノマー由来のガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含むことにより、4級アンモニウム塩形成部位を有する窒素含有モノマー由来の構成単位の(B)顔料に対する付着性が強く、一方でマクロモノマー由来の構成単位のグラフトされているポリマー鎖が(D)溶剤との溶解性を有する。そのため、上記顔料分散剤を用いると、(D)溶剤中で(B)顔料を微細に分散することが可能になり、顔料分散性及び分散安定性を優れたものとすることができる。
【0026】
また、グラフト共重合体の共重合成分であるマクロモノマー由来の構成単位の側鎖部分について、ガラス転移温度が30℃以下となるポリマー鎖を選択して用いている。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能になる。例えば、平均膜厚で1.5μm〜2.5μm程度の、画素として用いられるのに十分な厚みでインクジェット方式により形成された着色層において、最も厚い部分の膜厚(T)と最も薄い部分の膜厚(B)の差をT−B差とした場合に、最も薄い部分の膜厚(B)の高さを高くすることができるために、当該T−B差を小さくすることが可能になる。
【0027】
グラフト共重合体の側鎖部分について、ガラス転移温度が30℃以下となるようにポリマー鎖を選択すると、平坦性が高い着色層が得られるようになる理由は、定かではないが以下のように推定される。すなわち、グラフト共重合体の側鎖部分についてガラス転移温度を30℃以下とすると、グラフト共重合体全体として塗膜形成時に流動性が高くなると推定される。このようなグラフト共重合体を顔料分散剤として相当量を含む熱硬化性樹脂組成物は、インクジェット方式により吐出され、ブラックマトリクス層に囲まれた領域において乾燥及び硬化される際に、膜の流動性が高くなり、ブラックマトリクス層の近傍にも埋まり込みやすく、膜厚の薄い部分の厚みが大きくなって、上記T−B差を小さくすることが可能になると推定される。
【0028】
なお、グラフト共重合体の側鎖部分のガラス転移温度は、示差走査熱量測定計(島津製作所製、DSC−60)を用いて、例えば−100〜+200℃の温度範囲で走査速度10℃/分にて示差走査熱量測定を行って求めることができる。ガラス転移は熱量変化曲線のベースラインがシフトして(ベースラインが段となって)現れるので、2本のベースラインにそれぞれ延長線を引き、延長線間の1/2直線と熱量曲線の交点からガラス転移温度を求めることができる。なお、ベースラインがシフトした温度が2点以上あった場合には、主鎖成分のポリマーのガラス転移温度に近い方を除き、他方を側鎖成分のガラス転移温度とする。主鎖成分のポリマーのガラス転移温度は、例えば、一般式(I)で表される窒素含有モノマーのホモポリマーから見積もることができる。
【0029】
<グラフト共重合体>
グラフト共重合体は、上記一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有する。
まず、窒素含有モノマーについて説明する。
上記一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは、2価の連結基を表す。
本発明において、窒素含有モノマー由来のアミノ基とは、−NR部分をいい、R及びRが互いに結合して環状構造を形成している場合もアミノ基に含まれる。
【0030】
及びRにおける、環状炭化水素基は、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状アルキル基が挙げられる。
また、R及びRが互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記式の構造が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
また、2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1〜8のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−A−基、−COO−A−基(但し、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)等が挙げられ、好ましくは−COO−A−基である。
【0033】
ここで、上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種オクチレン基などである。アリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。本発明においては、x、y及びzが、上記の範囲にあれば、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物は、顔料の分散性に優れたものになる。
このAとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。炭素数が1〜8の範囲内であれば、顔料の分散性を良好に保つことができる。
【0034】
上記一般式(I)で表される窒素含有モノマーとしては、中でも下記一般式(I’)で表される窒素含有モノマーが好適に用いられる。
【0035】
【化5】

[式(I’)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。]
【0036】
上記一般式(I’)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましい。
本発明においては、上記R及びRは、たがいに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
上記一般式(I’)において、Aは、上記一般式(I)において説明したのと同様である。
【0037】
本発明に用いられるマクロモノマーは、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなるものである。このエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端(以下、「片末端」と称することがある。)のみに有することが好ましい。また、マクロモノマーは、グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子などが挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが好ましく挙げられ、なかでも(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0038】
マクロモノマーのポリマー鎖としては、上述のように側鎖部分のガラス転移温度が30℃以下となり、且つ、顔料分散液に使用する溶媒に可溶なポリマー鎖であれば、好適に用いることができる。そのようなポリマー鎖としては、下記一般式(II)又は一般式(III)で表される構成単位を少なくとも1種有するものであることが好ましい。当該ポリマー鎖は、グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基で置換されていてもよい。
【0039】
【化6】

[式(II)及び(III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R10又は−O−CO−R11で示される1価の基である。
10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。Rに含まれる、アルキル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
lは1〜5の整数、n’及びn”は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。]
【0040】
式(II)及び(III)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R10又は−O−CO−R11で示される1価の基である。尚、Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、後述するような置換基を有していても良い。
【0041】
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などである。
上記炭素数1〜18のアルキル基が有していても良い置換基としては、例えば、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
【0042】
上記アラルキル基としては、特に制限はないが、好ましくは炭素数7〜20であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基などである。
上記アリール基としては、特に制限はないが、好ましくは炭素数6〜24であり、更に好ましくは6〜12であり、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基などである。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0043】
において、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−Rである場合のR及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
なお、上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
【0044】
において、−CO−O−R10又は−O−CO−R11で示される1価の基である場合の、R10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。R10おいて、R、R、R、x、y及びzは、前記で説明したとおりである。
また、R11は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。
10及びR11において、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記Rで説明したとおりである。
【0045】
さらに、上記R、R、R10及びR11は、上記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。また、これらの置換基を有するグラフト共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するグラフト共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するグラフト共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0046】
また、本発明のレジスト組成物において用いられるマクロモノマーのポリマー鎖は、ガラス転移温度が30℃以下であり、更に、10℃以下であることが好ましい。本発明で用いられるマクロモノマーのポリマー鎖のガラス転移温度が30℃以下である場合には、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された着色層の平坦性が向上する。着色層の平坦性が向上すると、色特性及び輝度を向上することが可能になる。
【0047】
本発明におけるマクロモノマーのポリマー鎖のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することもできる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0048】
以上のような点を考慮すると、本発明で用いられる窒素原子を含まないポリマー鎖は、上記した構成単位のなかでもメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレートなど由来の構成単位を有するものが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートなど由来の構成単位を有するものがより好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、式(III)において、lは1〜5の整数、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは4又は5の整数である。また、ポリマー鎖Rに含まれる構成単位のユニット数n’及びn”は、5〜200の整数であればよく、特に限定されないが、5〜100の範囲内であることが好ましい。
【0050】
なお、マクロモノマーにおけるポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。例えば、単独重合体ではガラス転移温度が30℃超過となるような構成単位であっても、ポリマー鎖の共重合成分として含まれ、上記計算式で表されるポリマー鎖全体のガラス転移温度が30℃以下となる場合には、グラフト共重合体はガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含むことになるため、本発明のマクロモノマーとして、好適に用いることができる。
【0051】
また、マクロモノマーは、グラフト共重合体において、1種単独で用いられても良いが、2種以上混合して用いても良い。
マクロモノマーを2種以上混合して用いる場合には、ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーが、全マクロモノマー中に、50重量%以上、更に70重量%以上、より更に90重量%以上含まれるように用いることが好ましい。
【0052】
ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーが共重合成分中に多いほど、より平坦性の高い着色層を形成可能になる傾向がある。顔料分散性が良好でありながら、グラフト共重合体中のグラフト鎖の割合が適切となってより平坦性の高い着色層を形成可能であるバランスの点から、本発明に用いられるグラフト共重合体において、ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーが、全共重合成分中50〜95重量%含まれることが好ましく、さらに全共重合成分中60〜90重量%含まれることが好ましい。
【0053】
マクロモノマーのポリマー鎖の重量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜10000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲であることにより、顔料分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、立体反発効果によって顔料同士の再凝集を抑制することもできる。
【0054】
このようなマクロモノマーは、適宜合成したものでもよいし、市販品であってもよい。ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーの市販品としては、例えば片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AB−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(「プラクセルFM5(商品名)」:ダイセル化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(「プラクセルFA10L(商品名)」:ダイセル化学(株)製)などが挙げられる。
その他含んでいても良い重合性オリゴマーの市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AA−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AS−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)などが挙げられる。
【0055】
このようなマクロモノマーを合成するには、リビング重合法や、連鎖移動剤を用いるラジカル重合法がよく知られている。ラジカル重合法の方が、モノマーの選択の自由度が大きい点で利用しやすい。例えば、メルカプトプロピオン酸のような、カルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下でモノマーをラジカル重合することにより、片末端にカルボキシル基を有するオリゴマーが得られる。このオリゴマーにグリシジルメタクリレートを付加すると、片末端にメタクリロイル基を有するオリゴマー、すなわち重合性オリゴマーが得られる。
【0056】
本発明に用いられるグラフト共重合体において、前記窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位は、5〜50重量%の割合で含まれていることが好ましく、10〜40重量%がより好ましい。グラフト共重合体中の窒素含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲内にあれば、グラフト共重合体中のアミノ基が形成する塩形成部位の割合が適切となり、かつマクロモノマーによる溶剤との溶解性の低下を抑制できるので、顔料に対する吸着性が良好となり、顔料の分散性、及び顔料分散安定性が得られる。
【0057】
また、上記グラフト共重合体の重量平均分子量Mwは、1000〜100000の範囲内であることが好ましく、3000〜50000の範囲内であることがより好ましく、5000〜30000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、顔料を均一に分散させることができる。
【0058】
なお、上記重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0059】
本発明に用いられるグラフト共重合体は、本発明の効果が損なわれない限り、前記窒素含有モノマー由来の構成単位と前記マクロモノマー由来の構成単位以外に、更にその他の構成単位を含んでいても良い。その他の構成単位としては、例えば、上記構成単位と重合可能な、エチレン性不飽和結合を有するモノマー由来の構成単位が挙げられる。その他の構成単位を含むことにより、グラフト共重合体合成時に重合反応の進行を促進し、より均一なグラフト共重合体を合成することができる場合がある。一方でその他の構成単位を含むことにより、本願の良好な顔料分散性等が妨げられる場合があるので、組み合わせる顔料や用途に合わせて適宜調整する。
【0060】
その他の構成単位として用いられるエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸などの重合性カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのスチレン類;酢酸ビニルなどの脂肪酸のビニルエステル類などが挙げられる。これらのうち1種類及び2種類以上を使用できる。
【0061】
本発明に用いられるグラフト共重合体は、上記した窒素含有モノマーとマクロモノマーとを共重合体成分として有し、さらに窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩を形成したものであり、その構造は、例えば図3のように表される。図3において、グラフト共重合体は、窒素含有モノマー由来の構成単位51が重合反応により主鎖を形成し、該重合反応においてマクロモノマーの重合性基部位(エチレン性不飽和二重結合を有する基部位)52が同時に窒素含有モノマーと重合し、マクロモノマーは当該エチレン性不飽和二重結合を有する基部位に接続しつつポリマー鎖53により側鎖を形成しており、4級アンモニウム塩化剤54が、窒素含有モノマー由来の構成単位51に含まれるアミノ基の少なくとも一部と塩を形成したものである。
【0062】
<4級アンモニウム塩>
前述した一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基とからなるマクロモノマーとを共重合体成分として含有するグラフト共重合体における窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部と4級アンモニウム塩を形成する4級アンモニウム塩化剤としては、ハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0063】
前述したグラフト共重合体における窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化されている好適な構造としては、下記構造が挙げられる。
【0064】
【化7】

(式(I”)において、R、R、R、及びQは、式(I)と同じである。Rは置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基を表す。Xはハロゲンイオンを表す。)
【0065】
本発明において、上記ハロゲン化炭化水素を用いることにより、顔料分散剤の生成した塩形成部位が顔料への吸着性に優れているために高い分散性を発現することができると同時に、分散剤の耐熱性や塗膜の耐溶剤性を高くすることができる。
【0066】
上記ハロゲン化炭化水素としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかのハロゲン原子が、飽和又は不飽和の直鎖、分岐又は環状の炭化水素の水素原子と置換されているものが挙げられる。中でも、ハロゲン化アリル及び/又はハロゲン化アラルキルであることが、顔料分散性を高める点から好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素の炭素数としては、1〜30であることが好ましく、更に1〜25、より更に1〜18であることが好ましい。
【0067】
上記ハロゲン化炭化水素のうち、ハロゲン化アルキルとしては、炭素数1〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、塩化n−ブチル、塩化ヘキシル、塩化オクチル、塩化ドデシル、塩化テトラデシル、塩化ヘキサデシル等が挙げられる。また、ハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルが挙げられる。また、上記ハロゲン化アラルキルのアラルキル基としては、炭素数7〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化ナフチルメチル、塩化ピリジルメチル、臭化ナフチルメチル、臭化ピリジルメチル等が挙げられる。また、ハロゲン化アリールとしては、炭素数6〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化ベンゼン等が挙げられる。
【0068】
中でも、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、及びヨウ化ベンジルからなる群から選択される少なくとも1種であることが、塩形成反応のしやすさと、生成した塩形成部位が顔料への吸着性に優れている点から好ましい。
その中でも、臭化アリル、及び/又は、臭化ベンジルが、塩形成反応のしやすさと、生成した塩形成部位が顔料への吸着性に優れているために高い分散性を発現することができる点から好ましい。
【0069】
本発明で用いられるグラフト共重合体における4級アンモニウム塩の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般に前記一般式(I)で表されるアミノ基に対して、0.05〜1.0モル当量が好ましい。更に、顔料の吸着力や溶剤への溶解性、顔料分散性及び顔料分散安定性が優れる点から、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基に対して、0.1〜0.8モル当量が、ハロゲン化炭化水素と塩を形成して4級アンモニウム塩化されていることが好ましい。尚、上記ハロゲン化炭化水素を2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。
【0070】
<塩型グラフト共重合体の製造>
本発明において、(A)成分の顔料分散剤として用いる塩型グラフト共重合体の製造方法としては、前記の窒素含有モノマーと、ポリマー鎖とその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基とからなるマクロモノマーとを共重合体成分として含有し、かつ前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化されたものを製造することができる方法であればよく、特に限定されない。本発明においては、例えば、前記の窒素含有モノマーと前記エチレン性不飽和二重結合を有するマクロモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを公知の重合手段を用いてグラフト重合させることが可能である。次いで、該溶剤中に上記4級アンモニウム塩化剤を添加し、攪拌することにより塩型グラフト共重合体を製造することができる。なお、上記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0071】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(A)成分である顔料分散剤としては、上記塩型グラフト共重合体を1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる顔料の種類、更に熱硬化性樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(A)成分である顔料分散剤としては、後述する顔料100重量部に対して、通常、5〜200重量部の範囲であり、10〜100重量部であることが好ましく、20〜80重量部であることがより好ましい。塩型グラフト共重合体の含有量が上記範囲内にあれば、顔料を均一に分散させることができる。また、熱硬化性樹脂組成物において、相対的に熱硬化性バインダーの配合比率が低下することがなく、十分な硬度を持った着色層が形成できる。
【0072】
((B)顔料)
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(B)成分として用いられる顔料は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。種々の有機又は無機着色剤を、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
<顔料の種類>
上記有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23等のバイオレット系ピグメント;及び、ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58等のグリーン系ピグメント等のカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0073】
また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができ、具体例としては、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0074】
<顔料の粒径>
本発明に用いられる顔料の平均粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10〜50nmの範囲内であることがより好ましい。当該顔料の平均粒径が上記範囲であることにより、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された液晶表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。また従来の顔料分散剤であれば、顔料の粒径の微小化に伴い、分散性が不十分になったり、顔料分散剤が多量に必要になることに伴い塗膜性能の低下といった問題が生じるおそれがあるが、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物に用いられる顔料分散剤は、比較的少量の添加で顔料分散性に優れるため、そのような問題を生じるおそれが少ない。したがって、当該顔料の平均粒径が上記範囲に示すように、従来に比べ微小であるほど、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物が有する特徴を発揮することができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0075】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(B)成分として用いる顔料の含有量は、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能であればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物中の固形分に対して、20〜100重量%の範囲内であることが好ましく、30〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。当該顔料の含有量が上記範囲であることにより、所望の発色が可能な着色層が形成可能なカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物とすることができ、さらに上記カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物中において、均一に分散することができる。
特に着色層の高輝度化のためにC.I.ピグメントレッド254の微細化品や、C.I.ピグメントグリーン58を使用する場合、もしくは着色層の薄膜化のために組成物中の固形分中の顔料濃度を高くする必要がある場合には本願で用いられる顔料分散剤が特に効果を発揮する。
なお、固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能性モノマー等も含まれる。
【0076】
((C)熱硬化性バインダー)
熱硬化性バインダーとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらにそれ自体は重合反応性のない重合体を更に用いても良い。
【0077】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が好適に用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0078】
i)1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物
通常バインダー成分として用いられる比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダー性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記式(V)で表される構成単位及び下記式(VI)で表される構成単位から構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
【0079】
【化8】

(R21は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R22は炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【0080】
【化9】

(R23は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0081】
式(V)で表される構成単位をバインダー性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明のインクジェットインクから形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(V)において、R21として好ましいのは水素またはメチル基である。R22は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
【0082】
上記式(V)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0083】
式(VI)で表される構成単位は、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有するインクジェットインクは保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(VI)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。
式(VI)において、R23として好ましいのは水素またはメチル基である。式(VI)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0084】
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルタの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(V)あるいは式(VI)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
【0085】
上記バインダー性エポキシ化合物中の式(V)の構成単位と式(VI)の構成単位の含有量は、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。式(1)の構成単位の量が上記の比10:90よりも過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式(2)の構成単位の量が上記の比90:10よりも過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。
【0086】
また、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダー性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルタの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。一方、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。なお上記バインダー性エポキシ化合物は、例えば特開2006−106503号公報の段落番号0148に記載されているような方法で合成することができる。
【0087】
本発明に係る熱硬化性バインダーには、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、「多官能エポキシ化合物」ということがある。)であって、上記バインダー性エポキシ化合物よりも分子量が小さいものを用いても良い。中でも、上述のように上記バインダー性エポキシ化合物と当該多官能エポキシ化合物を併用することが好ましい。この場合、多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、これと組み合わせるバインダー性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、4,000以下が好ましく、3,000以下が特に好ましい。インクジェットインクに比較的分子量が小さい多官能エポキシ化合物を添加すると、インクジェットインク中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が増加し、架橋密度を高めることができる。
【0088】
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化層の強度や硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物をインクジェットインクに配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
【0089】
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0090】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)、商品名EHPE3150(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0091】
上記バインダー性エポキシ化合物と、必要に応じて配合される多官能エポキシ化合物の配合割合は、重量比ではバインダー性エポキシ化合物を10〜80重量部と多官能エポキシ化合物を10〜60重量部の割合で配合するのが好ましく、バインダー性エポキシ化合物を20〜60重量部と多官能エポキシ化合物を20〜50重量部の割合で配合するのが更に好ましく、バインダー性エポキシ化合物を30〜40重量部と多官能エポキシ化合物を25〜35重量部の割合で配合するのが特に好ましい。
【0092】
ii)硬化剤
本発明に用いられる熱硬化性バインダーには、通常、硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0093】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分(バインダー性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の合計量)100重量部当たり、通常は1〜100重量部の範囲であり、好ましくは5〜50重量部である。硬化剤の配合量が1重量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100重量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0094】
iii)触媒
本発明の熱硬化性バインダーには、硬化層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。 熱潜在性触媒は、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100重量部に対して、通常は0.01〜10.0重量部程度の割合で配合する。
【0095】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(C)成分として用いる熱硬化性バインダーの含有量は、カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物中の固形分に対して、20〜80重量%の範囲内であることが好ましく、30〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0096】
また、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、顔料の重量(P)と、当該顔料以外の固形分の重量(V)との比(P/V比)は、赤色着色層を形成する場合0.4〜1.1、好ましくは0.5〜1.0、緑色着色層を形成する場合0.5〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、青色着色層を形成する場合0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5である。このような場合、インクの吐出性能、インクの決壊防止、得られる膜物性のバランスの点から好ましい。P/V比が低すぎると、充分な着色力を得るためには画素形成領域に付着させるインクの液滴量を多くしなければならないため、画素形成領域からインクが決壊するなどの問題が起こる場合がある。一方、P/V比が高すぎると、吐出ヘッドで目詰まりや飛行曲がりが発生する等の吐出性能が低下したり、膜の表面が荒れるなどの問題が起こる場合がある。
【0097】
((D)溶剤)
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物において、(D)溶剤としては、該熱硬化性樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよい。特にインクジェットインクとして用いられる場合には、インクの急激な粘度上昇や目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで吐出性を向上させるために、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg(66.7Pa)以下、特に0.1mmHg(13.3Pa)以下の溶剤成分を主溶剤として用いることが好ましい。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。なお、「主溶剤」とは、溶剤全量のうち50重量%以上を占める溶剤のことである。主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、具体的には70重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
【0098】
乾燥が遅いためインクジェットでの間欠吐出性に優れる一方、塗膜形成時に乾燥が遅いことから、生産効率に問題がある場合があるので、生産効率を向上させる目的で、主溶剤に、より低沸点溶剤を混合しても良い。主溶剤と組み合わせて用いることが好ましい他の副溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0099】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物における(D)溶剤の含有量は、該各構成成分を均一に溶解又は分散することができるのであればよく、特に限定されない。特にインクジェットインクとして用いられる場合には、溶剤は、カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物全量に対して、通常は40〜95重量%の割合で用いることが好ましい。溶剤が少なすぎると、インクジェットインクの粘度が高く、インクジェットインクの場合にはインクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定のインク層形成部位からインクが決壊し、当該インク層形成部位に堆積させることのできるインク堆積量が不充分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い充分な透過濃度を得ることができなくなる。
【0100】
(任意添加成分)
本発明カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤を含むものであってもよい。該添加剤としては、例えば、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、充填剤等などが挙げられる。
密着促進剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。レベリング剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、特殊アクリル系重合体、ビニルエーテル系重合体等のビニル系重合体など、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0101】
(カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物の調製)
カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物の調製方法としては、前述した(A)顔料分散剤と、(B)顔料と、(C)熱硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを、(D)溶剤中に均一に溶解又は分散させ得る方法であればよく、特に制限はされず、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該熱硬化性樹脂組成物の調製方法としては、例えば(1)溶媒中に、上記の顔料分散剤及び顔料を添加し、分散機を用いて分散させることによって、顔料分散液を作製した後、これに熱硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを添加し混合する方法、(2)溶媒中に、上記の顔料分散剤と、顔料と、熱硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、及び(3)溶媒中に、上記の顔料分散剤と、熱硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに顔料を加えて混合する方法などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)の方法が、顔料の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。この場合、顔料分散液中の溶媒の含有量としては、該顔料の分散性や顔料分散経時安定性、得られるカラーフィルタの色度などの観点から、60〜90重量%の範囲が好ましい。
【0102】
上記(1)の方法における顔料分散液の調製において、顔料の分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル等が挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2mmが好ましく、より好ましくは0.1〜1mmである。また、分散後、5.0〜0.2μm程度のメンブランフィルタで濾過することが好ましい。これにより、顔料の分散性に優れた顔料分散液が得られる。
また、本発明に用いられる顔料分散剤に含まれる4級アンモニウム塩化剤が、重合性基を有する場合には、例えば、溶媒中に上記顔料分散剤と開始剤を添加した後、あるいは、溶媒中に上記顔料分散剤と顔料と開始剤とを分散又は溶解させた後に上記顔料分散剤同士を重合してもよい。中でも溶媒中に上記顔料分散剤と顔料と開始剤とを分散又は溶解させた後に上記顔料分散剤同士を重合することが好ましい。このように顔料分散剤同士を重合させることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物中における顔料の分散安定性を高めることができる。重合は、適宜光開始剤及び/又は熱開始剤を用いて、光照射及び/又は加熱により行うことができる。
【0103】
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。
[カラーフィルタ]
本発明のカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3R,3G,3Bとを有している。
【0104】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上の所定領域に、前記本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する工程と、
前記インク層を加熱することにより硬化させて所定パターンの着色層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明のカラーフィルタは、前述した本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成することにより、顔料分散性に優れ、且つインクジェット方式を用いて形成した場合でも平坦性に優れた着色層を形成可能なことから、良好な光学性能を有している。
【0105】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0106】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。インクジェット方式により着色層を形成する場合、遮光部は、インクを所定領域に付着させるための隔壁であり、各着色層の間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられることにより、表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0107】
遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
遮光部の厚さは、金属薄膜の場合は1000〜2000Å程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
【0108】
遮光部は、撥液性を有するものであることが好ましい。インクジェット方式により塗布される熱硬化性樹脂組成物を、上記開口部内に安定的に塗布することができ、着色層を混色の無いものとすることができるからである。上記「撥液性」とは、上記熱硬化性樹脂組成物との接触角が大きいことを意味するものである。
上記遮光部が撥液性を有するものとする方法としては、所望の撥液性を付与することができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記遮光部を構成する材料として、上記基板表面よりも撥液性の高い材料を用い、上述した方法により遮光部を形成する方法(以下、第1態様)や、上述した方法によって基板上に遮光部を形成した後、事後的に上記遮光部を上記基板表面よりも撥液性とする方法(以下、第2態様)等を挙げることができる。
【0109】
上記第1態様としては、具体的には、上記遮光部を、樹脂および遮光材料を含むものとして形成し、上記樹脂に撥液化剤を含有させる方法を挙げることができる。
【0110】
また、上記第2態様としては、具体的には、基板として無機材料からなる基板を用い、かつ、上記遮光部として樹脂および遮光性材料から構成されるものを用い、上述した方法によって基板上に遮光部を形成した後、フッ素ガスを導入ガスとしたプラズマ処理を行なう方法が挙げられる。
また、上記導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えば、CF、SF、CHF、C、C、C等を挙げることができる。また、上記導入ガスとしては、上記フッ素ガスと他のガスとが混合されたものであってもよい。上記他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができるが、なかでも窒素を用いることが好ましい。さらに上記他のガスとして窒素を用いる場合、窒素の混合比率は50%以上であることが好ましい。
【0111】
また、上記プラズマ照射を実施する方法としては、上記遮光部の撥液性を向上できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、または、大気圧下でプラズマ照射してもよい。なかでも、本工程においては特に大気圧下でプラズマ照射が行うことが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面おいて有利になるからである。
なお、上記プラズマ照射を行った後の、上記遮光部におけるフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i−XL)による分析において、遮光部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。
【0112】
具体的には、上記遮光部表面の上記着色層形成用塗工液との接触角が、上記基板表面の上記着色層形成用塗工液との接触角よりも大きいものとすることができるものであれば良い。なかでも本工程においては、上記遮光部表面の、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、特に表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましく、さらには表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となる程度であることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上となる程度であることが好ましい。
【0113】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、前述した本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を用いて硬化させて形成されたものであればよく、特に限定されない。本発明においては、前記透明基板上の所定領域、すなわち、遮光部の開口部にインクジェット方式により形成された着色層であることが好ましい。インクジェット方式によると、従来のフォトリソグラフィー法等に比べて生産性が高く、コスト低減や歩留まり向上が実現可能である。インクジェット方式により形成される場合、当該着色層の厚みは、該着色層の領域内で不均一となることが特徴である。例えば、図1の3R,3G,3Bに示したように、着色層の外縁部又はその近傍に厚みの小さい部分を有し、且つ当該厚みの小さい部分よりも画素の中心側に厚みの最大部を有するような形状、すなわち、中央部付近が盛り上がった断面形状を有する。厚みが着色層の領域内で不均一であるとは、厚みの差が0.1μm以上の場合をいう。着色層の厚みは、例えば、光干渉方式の三次元非接触表面形状・粗さ測定機(Zygo(株)製 製品名:NEW VIEW 6000)を用いて測定することができる。
【0114】
本発明カラーフィルタに用いられる着色層は、平均厚みが2.00μmの時に、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)の差(T−B差)が0.6μm以下であることが好ましく、更に0.5μm以下であることが好ましい。
【0115】
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の平均厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましく、さらに1〜2.5μmの範囲であることが好ましい。
【0116】
当該着色層は、例えば下記の方法により形成することができる。
まず、青(B)用、緑(G)用及び赤(R)用の顔料がそれぞれ配合された前記本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を用意する。そして、透明基板1の表面に、遮光部2のパターンにより画成された各色(R、G、B)の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。このインクの吹き付け工程において、インクジェットインクは、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。この場合、所定の着色層形成領域内に、対応する色のインクを正確に、且つ、均一に付着させることができ、正確なパターンで色ムラや色抜けのない画素部を形成することができる。また、各色のインクジェットインクを、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに着色層を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
【0117】
次に、各色のインク層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、適宜加熱することにより硬化させる。インク層を適宜加熱すると、インクジェットインク中に含まれる熱硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して着色層3R,3G,3Bが形成される。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0118】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0119】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0120】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタ及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタ及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【実施例】
【0121】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0122】
(合成例1:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Aの合成)
(1−1)マクロモノマーAの調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)80.0重量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸−n−ブチル100.0重量部、メルカプトエタノール4.0重量部、PGMEA30重量部、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1.0重量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74重量部、オクチル酸スズ0.125g、p−メトキシフェノール0.125重量部、及びPGMEA20重量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーAの47.43%溶液を得た。得られたマクロモノマーAを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)3285、数平均分子量(Mn)1614、分子量分布(Mw/Mn)は2.035であった。
【0123】
(1−2)グラフト共重合体Aの調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、マクロモノマーA溶液42.17重量部(有効固形分20.0g)、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(略称DMA)5.00重量部、N−ドデシルメルカプタン0.62重量部、PGMEA47.83重量部を仕込んだ。この混合物を、窒素気流下攪拌しながら、85℃まで昇温し、マクロモノマーA溶液42.17重量部(有効固形分20.0g)、DMA5.00重量部、N−ドデシルメルカプタン0.62重量部、PGMEA47.83重量部、AIBN0.5重量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10重量部 、PGMEA10.0重量部 の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体Aの25.44%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Aは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)9521、数平均分子量(Mn)4374、分子量分布(Mw/Mn)は2.177であった。
【0124】
(1−3)4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Aの調製
合成例1−2で得たグラフト共重合体溶液Aについて減圧下でPGMEAを留去し、そこへ溶媒としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(略称BCA)を加えることで、有効成分20%のグラフト共重合体溶液A’を調製した。マヨネーズビン中で、グラフト共重合体A’溶液12.90重量部とBCA12.48重量部を混合し、4級アンモニウム塩化剤である臭化アリルを0.12重量部(グラフト共重合体AのDMAユニットに対し、0.3モル当量)加え、室温にて1時間攪拌することにより、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Aを調製した。
【0125】
(合成例2:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Bの合成)
(2−1)マクロモノマーBの調製
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをアクリル酸−n−ブチルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーBの48.80%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3128、数平均分子量(Mn)1606、分子量分布(Mw/Mn)は1.948であった。
【0126】
(2−2)グラフト共重合体Bの調製
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、合成例2−1で得たマクロモノマーB溶液40.98重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ49.02重量部とした以外は合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Bの25.79%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Bは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)11502、数平均分子量(Mn)4079、分子量分布(Mw/Mn)は2.820であった。
【0127】
(2−3)4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Bの調製
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを合成例2−2で得たグラフト共重合体溶液Bとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Bを調製した。
【0128】
(合成例3:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Cの合成)
(3−1)マクロモノマーCの調製
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをメタクリル酸2−エトキシエチルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーCの50.78%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3166、数平均分子量(Mn)1519、分子量分布(Mw/Mn)は2.085であった。
【0129】
(3−2)グラフト共重合体Cの調製
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、合成例3−1で得たマクロモノマーC溶液39.39重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ50.61重量部とした以外は、合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Cの25.30%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Cは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)9002、数平均分子量(Mn)3578、分子量分布(Mw/Mn)は2.516であった。
【0130】
(3−3)4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Cの調製
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを合成例3−2で得たグラフト共重合体溶液Cとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Cを調製した。
【0131】
(合成例4:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Dの合成)
(4−1)マクロモノマーDの調製
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをアクリル酸メチルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーDの48.10%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3385、数平均分子量(Mn)1413、分子量分布(Mw/Mn)は2.395であった。
【0132】
(4−2)グラフト共重合体Dの調製
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、合成例4−1で得たマクロモノマーD溶液41.58重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ53.42重量部とした以外は、合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Dの26.10%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Dは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)12857、数平均分子量(Mn)4023、分子量分布(Mw/Mn)は3.196であった。
【0133】
(4−3)4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Dの調製
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを合成例4−2で得たグラフト共重合体溶液Dとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Dを調製した。
【0134】
(比較合成例1:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Eの合成)
(比較合成例1−1)マクロモノマーEの製造
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをメタクリル酸ベンジルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーEの49.73%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3571、数平均分子量(Mn)1906、分子量分布(Mw/Mn)は1.873であった。
【0135】
(比較合成例1−2)グラフト共重合体Eの製造
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、比較合成例1−1で得たマクロモノマーE溶液40.22重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ54.78重量部とした以外は、合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Eの25.47%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Eは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)8491、数平均分子量(Mn)3489、分子量分布(Mw/Mn)は2.434であった。
【0136】
(比較合成例1−3)4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Eの調製
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを比較合成例1−2で得たグラフト共重合体溶液Eとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Eを調製した。
【0137】
(比較合成例2:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Fの合成)
(比較合成例2−1 マクロモノマーFの製造)
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをメタクリル酸シクロヘキシルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーFの50.59%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3229、数平均分子量(Mn)1632、分子量分布(Mw/Mn)は1.979であった。
【0138】
(比較合成例2−2 グラフト共重合体Fの製造)
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、比較合成例2−1で得たマクロモノマーF溶液39.53重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ55.47重量部とした以外は、合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Fの25.39%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Fは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)9700、数平均分子量(Mn)3767、分子量分布(Mw/Mn)は2.575であった。
【0139】
(比較合成例2−3 4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Fの調製)
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを比較合成例2−2で得たグラフト共重合体溶液Fとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Fを調製した。
【0140】
(比較合成例3:4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Gの合成)
(比較合成例3−1 マクロモノマーGの製造)
合成例1−1におけるメタクリル酸−n−ブチルをメタクリル酸メチルとした以外は、合成例1−1と同様にしてマクロモノマーGの50.57%溶液を得た。GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)3539、数平均分子量(Mn)1573、分子量分布(Mw/Mn)は2.250であった。
【0141】
(比較合成例3−2 グラフト共重合体Gの製造)
合成例1−2におけるマクロモノマーA溶液を、比較合成例3−1で得たマクロモノマーG溶液39.55重量部(有効固形分20.0g)とし、これと同時に添加したPGMEAをそれぞれ55.45重量部とした以外は、合成例1−2と同様にしてグラフト共重合体Gの25・99%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Gは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)10071、数平均分子量(Mn)3713、分子量分布(Mw/Mn)は2.712であった。
【0142】
(比較合成例3−3 4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Gの調製)
合成例1−3において、グラフト共重合体溶液Aを比較合成例3−2で得たグラフト共重合体溶液Gとした以外は、合成例1−3と同様にして、4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Gを調製した。
【0143】
(製造例1 顔料分散液Aの調製)
市販のポリ臭素化亜鉛フタロシアニン顔料(PG58:平均一次粒径30nm)4.5重量部、顔料分散剤溶液として、合成例1で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Aを25.5重量部(固形分量2.7重量部)、粒径2.0mmジルコニアビーズ30重量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30重量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60重量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて5時間分散を行い、顔料分散液Aを調製した。
【0144】
(製造例2 顔料分散液Bの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を合成例2で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Bとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Bを調製した。
【0145】
(製造例3 顔料分散液Cの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を合成例3で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Cとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Cを調製した。
【0146】
(製造例4 顔料分散液Dの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を合成例4で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Dとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Dを調製した。
【0147】
(比較製造例1 比較顔料分散液Eの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を比較合成例1で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Eとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Eを調製した。
【0148】
(比較製造例2 比較顔料分散液Fの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を比較合成例2で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Fとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Fを調製した。
【0149】
(比較製造例3 比較顔料分散液Gの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を比較合成例3で調製した4級アンモニウム塩化グラフト共重合体溶液Gとした以外は、製造例1と同様にして、顔料分散液Gを調製した。
【0150】
(比較製造例4 比較顔料分散液Hの調製)
製造例1において、顔料分散剤溶液を市販の「アジスパーPB821」(味の素ファインテクノ(株)社製、固形分濃度100重量%)2.7重量部にBCAを22.8重量部加えた25.5重量部とした以外は、製造例1と同様にして比較顔料分散液1を調製した。
【0151】
(製造例5 硬化性透明樹脂組成物の調製)
多官能エポキシ化合物、バインダー樹脂、硬化剤、酸発生剤、及び溶剤を第1表に示される配合量で均一になるまで混合、溶解して硬化性透明樹脂組成物を得た。
【0152】
【表1】

【0153】
(実施例1 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Aの調製)
第2表に示される配合量で、顔料分散液Aと、透明硬化性樹脂組成物、溶剤を均一になるまで混合し、さらにメッシュサイズ0.2μmである加圧ろ過装置によりろ過することにより、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用熱硬化性樹脂組成物Aを得た。
【0154】
(実施例2 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Bの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、顔料分散液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用熱硬化性樹脂組成物Bを得た。
【0155】
(実施例3 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Cの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、顔料分散液Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用熱硬化性樹脂組成物Cを得た。
【0156】
(実施例4 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Dの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、顔料分散液Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用熱硬化性樹脂組成物Dを得た。
【0157】
(比較例1 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Eの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、比較顔料分散液Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用比較熱硬化性樹脂組成物Eを得た。
【0158】
(比較例2 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Fの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、比較顔料分散液Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用比較熱硬化性樹脂組成物Fを得た。
【0159】
(比較例3 インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物Gの調製)
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、比較顔料分散液Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用比較熱硬化性樹脂組成物Gを得た。
【0160】
(比較例4 インクジェット・カラーフィルタ用比較熱硬化性樹脂組成物Hの調製
実施例1において、顔料分散液Aの代わりに、比較顔料分散液Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット・カラーフィルタ(IJCF)用比較熱硬化性樹脂組成物1を得た。
【0161】
【表2】

【0162】
以上、実施例及び比較例で得たインクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物について、下記の方法により、評価用基板を作製し画素形状の評価を実施した。インクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物の画素形状評価結果を第3表に示す。また、各グラフトポリマー型顔料分散剤について、その側鎖のガラス転移点(Tg)の評価を行った。その測定結果を第3表に併せて記載する。
【0163】
<画素形状評価用基板作製方法>
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mmで10cm×10cmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)を用意し、このガラス基材上に熱転写法にて樹脂製のブラックマトリクスを形成することによりカラーフィルタ用基板を作製した。このとき、ブラックマトリクスは開口部が225μm×70μm、遮光部分の線幅が14μmとなるように形成した。またこの際、遮光部分の膜厚は平均2.0μmとした。
上記カラーフィルタ用基板に対し、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ処理を加えることにより、ブラックマトリクスの表面を撥液性に、それ以外の領域(着色層形成領域)を親液性とした。
上記基板のブラックマトリックス(BM)により区画された着色層形成領域に、インクジェットインクをインクジェット方式によって付着させた。
その後、減圧乾燥を行い、更に90℃のホットプレート上で60分間プリベークを行った。その後、クリーンオーブン内で、240℃で40分間加熱してポストベークを行って、基板上に乾燥硬化後の平均膜厚として1.85μmの画素パターンを形成した。平均膜厚は、非接触3次元表面形状・粗さ測定機(Zygo(株)製 製品名:New View 6000)を用いて着色層の膜厚分布を用いて着色層形成領域(1画素)の全エリアの膜の高さの頻度を測定し算出したものである。
【0164】
<画素形状評価方法>
上記作製基板について非接触3次元表面形状・粗さ測定機(Zygo(株)製 製品名New View 6000)を用いて、1画素分の着色層の膜厚分布測定を行い、T−B差(着色層の膜厚において、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)の差)を求めた。また、1画素分についてBM部分を含めて着色層の膜厚分布測定を行い、平均高さを求め、当該平均高さを基準としたBM部の相対的高さ、当該平均高さを基準とした着色層の最も膜厚が厚い部分(T)の相対的高さを求めた。BM部の相対的高さ、Tの相対的高さ、及びBMの膜厚を用いてTの絶対的高さを算出し、Tの絶対的高さからT−B差を引いて着色層の最も膜厚が薄い部分(B)の絶対的高さを算出した。
【0165】
<コントラスト評価方法>
各例で得られたインクジェット・カラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を、厚み0.7mmで10cm×10cmのガラス基板(NA35)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、減圧乾燥したのちに90℃のホットプレート上で、ついで200℃のホットプレート上でプリベークした。これを240℃のクリーンオーブンでポストベークすることで、着色層を得た。この着色層のコントラスト値を壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用いて測定した。
【0166】
<ガラス転移温度(Tg)評価方法>
示差走査熱量測定計(島津製作所製、DSC−60)を用いて、−100〜+200℃の温度範囲で走査速度10℃/分にて示差走査熱量測定を行った。ガラス転移は熱量変化曲線のベースラインがシフトして(ベースラインが段となって)現れるので、2本のベースラインにそれぞれ延長線を引き、延長線間の1/2直線と熱量曲線の交点からガラス転移温度を求めた。なお、ベースラインがシフトした温度が2点以上あった場合には、主鎖成分のポリマーのガラス転移温度に近い方を除き、他方を側鎖成分のガラス転移温度とした。なお、主鎖成分のポリマーのガラス転移温度は、例えば、一般式(I)で表される窒素含有モノマーのホモポリマーから見積もることができる。
【0167】
【表3】

【0168】
第3表より、以下のことが分かる。
実施例のものは、コントラストが7500以上と高く、顔料分散性に優れており、かつ、T−B差は0.6μm以下であり、画素形状が平坦化されていた。その中でも、側鎖がアクリレート骨格である実施例2および実施例4は、特にT−B差が小さくなる傾向があった。
これに対して、比較例1〜3は、コントラストは7500以上と高いものの、T−B差が0.6μm以上であり、画素形状は劣っていた。また、比較例4は、T−B差は良好であるものの、コントラストが低く、顔料分散性が大きく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物は、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、光学性能を向上可能であり、品質の良好なカラーフィルタ及びそれを有する液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0170】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
51 窒素含有モノマー単位
52 マクロモノマーの重合性基部位
53 マクロモノマーによるポリマー鎖
54 4級アンモニウム塩化剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)顔料分散剤と、(B)顔料と、(C)熱硬化性バインダーと、(D)溶剤とを有するカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物であって、前記(A)顔料分散剤が、下記一般式(I)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体は、前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が4級アンモニウム塩化され、且つ、前記マクロモノマー由来のガラス転移温度が30℃以下の側鎖を含むことを特徴とするカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

[式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは、2価の連結基を表す。]
【請求項2】
前記マクロモノマーの前記エチレン性不飽和二重結合を有する基が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記マクロモノマーのポリマー鎖が、下記一般式(II)又は一般式(III)で表される構成単位を少なくとも1種有するものである、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

[式(II)及び(III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R10又は−O−CO−R11で示される1価の基である。
10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR12で示される1価の基であり、R12は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。Rに含まれる、アルキル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
lは1〜5の整数、n’及びn”は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。]
【請求項4】
前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基の少なくとも一部が、ハロゲン化炭化水素と塩を形成して4級アンモニウム塩化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ガラス転移温度が30℃以下のポリマー鎖を有するマクロモノマーが、全共重合成分中、50〜95重量%含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記窒素含有モノマー由来の構成単位のアミノ基に対して、0.05〜1.0モル当量が、ハロゲン化炭化水素と塩を形成して4級アンモニウム塩化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項8】
透明基板上の所定領域に、前記請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルタ用熱硬化性樹脂組成物を、インクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する工程と、
前記インク層を加熱することにより硬化させて所定パターンの着色層を形成する工程とを含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のカラーフィルタ又は請求項8に記載のカラーフィルタの製造方法によって製造されたカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−63429(P2012−63429A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205730(P2010−205730)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】