説明

カラーフィルタ製造装置

【課題】 大ストローク位置決めステージを用いたカラーフィルタ製造装置の位置決め精度の向上を図る。
【解決手段】 インクジェットヘッドを光透過性の基体に対して相対的に走査させながら着色剤を吐出させ、前記基体上に前記着色剤により着色されたフィルタエレメントを複数個並べて形成してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置において、前記基体の基準位置に対するズレを測定すためのアライメント光学系と複数の前記へッドを1つのユニットとして取り付け可能なチャッキングユニットに、位置評価用光学系として画像認識用の光学系を取り付け可能に構成する。この光学系を用いて各色の着弾位置を評価し、その評価結果に応じてカラーフィルタを製造時における基体の位置決めおよび送りを補正する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大ストロークを必要とするXY位置決めステージ装置を用いて、カラーテレビ、パーソナルコンピュータ等に使用されるカラー液晶ディスプレイなどのカラーフィルタの製造する装置に関するもので、特に、インクジェット記録技術を利用したカラーフィルタ製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カラーフィルタの製造方法としては、染料法、顔料分散法、電着法、印刷法等がある。この4種類の方法に共通しているのは、R,G,B3色を着色するために同一行程を3回繰り返す必要があり、工程数が多いために、歩留まりが低下し、コストが高くなる、等の欠点を有することである。
【0003】そこで、これらの欠点を補うべく、ガラス基板上にインクジェットを吐出させてフィルタのパターンを形成する技術が提案されている(特開昭61−245106号公報、特開平8−86913号公報、特開平8−292317号公報等)。
【0004】これは、R,G,B3色のインクジェットヘッドに対し、基板を搭載したステージを走査させ、かつ、ステージの走査に同期させてインクジェットヘッドによりインク滴を吐出させ、基板を着色することによりカラーフィルタを製造するものである。着色される基体上には、あらかじめブラックマトリクスと呼ばれる格子状のパターンが設けられており、その格子内にインク滴を着弾させるため、高精度な位置決めステージ技術が利用されている。特に、特開平8−86913号公報では、インク滴と基板の位置合わせの精度を上げるためへッドに光学系を埋め込むと言う提案がされているが、へッドが複雑になる、ファイバーによる光学系のため画像認識の解像度を上げるための処理が必要である、測定時の振動の影響など別の問題が考えられる。
【0005】また、液晶パネル製造のトレンドからインクジェット吐出を用いたカラーフィルタ製造技術への要望として、液晶パネルの大型化や、コストダウンを目的とし1枚の基板からパネルを多面取りすることによる基板サイズの大判化への対応が不可欠となっている。インクジェット吐出を用いたカラーフィルタ製造装置のさらなる発展のためには、基板ステージの大判基板対応大ストロークの高精度位置決めステージの技術的確立が必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、大判基板対応のカラーフィルタ製造装置においては、ステージおよびインクジェットヘッド保持部の基準となる本体定盤が大きくなり、かつ、ステージの可動部の重量が大きいことにより、その移動にともなう本体定盤の変形が発生し、インクジェットヘッドとステージの位置関係が走査移動に伴い徐々にずれるという問題が発生している。
【0007】本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、大ストローク位置決めステージを用いた高精度なカラーフィルタ製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明では、インクジェットヘッド(ヘッド)を光透過性の基体に対して相対的に走査させながら着色剤を吐出させ、基体上に着色剤により着色されたフィルタエレメントを複数個並べて形成してカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造装置において、基体の基準位置に対するズレを測定すためのアライメント光学系と複数のへッドを1つのユニットとして取り付け可能なチャッキングユニットを具備しており、そのチャッキングユニットに画像認識用の光学系(位置評価用光学系)が取り付くことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施例に係るカラーフィルタ製造装置は、基体を保持する部分が少なくとも直交する2方向に移動するステージであり、そのステージが、その移動平面内の回転方向の調整機構を具備しており、また、基体の代わりに位置評価用の基準マークが面内に複数配置された基準チャートを保持することが可能であり、その基準チャートを用いてアライメント光学系基準によるステージの走りに対し、位置評価用光学系により観察されたステージの走りのずれが測定できることを特徴としている。
【0010】また、基体をステージに搭載し、基体のアライメントを行なう時にアライメント光学系により求められた走りに対し基体の回転成分にオフセットを乗せて位置決めすることを特徴としている。
【0011】また、高精度位置決めを行なうために基体のステージに静圧気体軸受を用いたカラーフィルタ製造装置であり、その構成は、静圧ステージのX、Y両方向の可動部が、同一平面を上下方向の静圧軸受基準とし、その静圧軸受基準平面が装置全体の構成基準となる本体定盤の上に3点で保持搭載されており、また、その本体定盤が3つの除振台で支持されたものであり、その静圧軸受基準平面の3点の保持位置が、3つの除振台による各支持点を結ぶ三角形の内側に位置することを特徴としている。
【0012】また、使用するインクジェットヘッドは、熱エネルギーを利用してインクを吐出するへッドであって、インクに与える熱エネルギーを発生するための熱エネルギー変換体を備えていることを特徴としている。
【0013】
【作用】大判基板対応の大ストローク位置決めステージを用いてカラーフィルタを描画する、上記構成からなるカラーフィルタ製造装置により、大判基板での高精度な位置決めが可能となり、パネルの大型化や多面取りの製造を図ることができる。
【0014】
【実施例】本発明の実施例を図面に沿って説明する。
(実施例1)図1および図2は、本発明の一実施例に係るカラーフィルタ製造装置(描画装置)の概略図で、図1R>1は平面図、図2は側面図である。図において、1は装置搭載用の本体定盤、2は本体定盤1を支持し、外部振動を遮断するための除振台、3は本体定盤1上に設けられた、基板を移動するためのXY静圧ステージを用いた基板ステージ、4は基板ステージ3に用いる静圧軸受基準平面、5は基板ステージ(XY静圧ステージ)3に用いる真直度補償用のヨーガイド、6は基板ステージのXY方向のアクチュエータであるリニアモータ、7はXY静圧ステージ3上に構成された基板のZ−チルトおよびθを補正するためのθ−Z−チルトステージ、8は基板を保持するための基板チャック、9はカラーフィルタを形成する基板、10はR,G,B3色からなる描画へッド、11は3色の描画へッドを交換および位置調整しやすいためにユニット化したへッドユニットであり各へッドの相対位置調整機構を有している。12はヘッドユニットを保持するヘッドユニットチャック、13はへッドユニット11のθ調整用アクチュエータ、14はへッドユニット11の走査直交方向の位置調整およびへッドユニット交換用の直動ステージ、15は基板9のX,Y,θ方向の基板アライメント検出用光学系、16はZ検出用光学系(オートフォーカス)、17はへッドのクリーニング動作のためのクリーニングユニット、18はクリーニングユニット17を洗浄するための洗浄ユニット、19はクリーニングユニット17を描画へッド10の下まで移動するクリーニングユニット駆動系である。
【0015】図3は、本実施例で用いられる位置評価用光学系の概略図である。同図において、20はヘッドユニットチャック12(図2参照)に着脱可能なチャッキング用フランジ、21は画像を取り込むためのCCDカメラ、22は光学系の鏡筒、23は基準マークを拡大するための対物レンズ、24は画像のコントラストを上げるための光源、25はCCDカメラ21で取り込んだ画像を処理するための画像処理ユニット、26は本光学系の焦点を合わせるための上下ステージである。この位置評価用光学系は、ヘッドユニット11と同じようにヘッドユニットチャック12にばね力で保持される。へッドユニットチャックのON/OFFは、ばね力と逆方向に働く空気圧のON/OFFで行なう。
【0016】図4は、図2におけるへッドユニットチャック12の詳細を示す。図4において、20はへッドユニット11および位置評価用光学系(図3)のチャッキング用フランジの断面、30は保持力を受けるチャッキング用フランジ20の先端に付けられたテーパ面、31はチャックの保持力をテーパ面30に伝える保持力伝達球、32は保持力伝達球31を前後させるロッド、33はロッドからの伝達される保持力の方向を変換し保持力伝達球33に力を伝達するテーパ面、34は保持力を発生させる保持力発生用バネ、35はチャック保持を解除するための保持力と反対方向の力を発生する空気圧の空気注入孔、36はへッドユニットチャック12を描画装置に固定するためのフランジ面である。
【0017】図4の構成により、保持力発生用バネ34がA方向にロッド32を動かし、それにより保持力伝達球32がB方向の力を発生し、チャッキング用フランジ20をロックする。ロック解除は、空気注入孔35より空気を入れることにより、その空気圧でロッド32を逆に動かすことにより行なう。
【0018】次に、図3の位置評価用光学系を用いた測定方法について説明する。図5は、位置評価用光学系を用いて測定するための基準チャートの模式図である。同図において、40はベースとなるガラス基板、41は露光とエッチングによりクロム膜で形成された基準マークであり、面内に等間隔で配置されている。
【0019】この位置評価用光学系の測定方法を図6のフローチャートを用いて説明する。まず、位置評価用光学系を固定したへッドユニットチャック12を描画装置に固定した状態で、基準チャートを基板チャック8に基板9と同じ真空吸着方式で保持し、オートフォーカス16により所定の高さで平面になるようにθ−Z−チルトステージ7を調整する(ステップ100)。オートフォーカス終了後、基板ステージ3をY方向(走査方向)にステップ移動させアライメント光学系15の測定により基準チャートのθ成分がほぼゼロになるようにθ−Z−チルトステージ7を調整する(ステップ101)。このθ−Z−チルトステージ7の状態を維持したまま、基準チャートを搭載した基板ステージを位置評価用光学系の下に移動し、位置評価用光学系で基準マークが観察できるようにX、Yの位置出しを行なう。そして基準マーク41をCCDカメラ21で取り込み、画像処理によりその中心位置を求め、X方向へのズレ(ステージ座標基準によるズレ量)を測定する(ステップ102)。次に、Y方向(走査方向)にステップし、次の位置の基準マークの測定を行なう。これを順次繰り返し、Y方向移動時のX方向のズレ量を測定する。
【0020】実際に基板サイズが550×650mm対応、Y方向(走査方向)ストローク約1000mmの図1R>1に示すカラーフィルタ製造装置3台を作成し、これらの装置においてズレ量測定を行なったところ、Y方向500mmの移動距離で約2〜3.5μmのズレがX方向に生じていた。3台ともずれ方は、ほぼ1次の変化であり、ずれる方向も同じであった。このズレが生じる原因は、ステージの移動に伴う荷重変動により本体定盤に変形が生じるためである。これは、基板サイズアップにより装置全体が大きくなり、それにともなう重量増加を最小限にしたことによる本体定盤の剛性不足と静圧軸受基準平面の平面を維持するために3点支持にしたことに起因している。ここで、本装置の重量は、軽量化を行なっても10トンであった。
【0021】次に上記で求めたずれの補正方法を説明する。ここで、インクジェットヘッドを用いたカラーフィルタ形成方法の様子を図7の模式図を用いて説明する。同図において、50はブラックマトリクス、51は混色を防ぐための混色防止層、52はカラーフィルタの開口部、53はR(赤)のインク着弾点、54はG(緑)のインク着弾点、55はB(青)のインク着弾点である。
【0022】この様にブラックマトリクス50に合せインク滴を入れなければならないため、X方向の位置決めは、非常に厳しいものとなる。具体的には、ブラックマトリクスの幅が100μm程度、ノズル約300本のX方向の着弾精度が±5μm、インクの着弾径が80μm程度、混色防止層の幅が7μmであるため、描画装置に許される誤差配分は±1.5μm程度である。
【0023】このため本体定盤の変形によるズレは問題になるレベルであり補正が必要である。図8に上記位置評価用光学系で測定したズレの模式図を示す。60はアライメント光学系で基板のX,Y,θを位置合わせしたことによるY方向の移動の理想プロファイルであり、61は上記位置評価用光学系で測定した結果プロファイルである。この60のプロファイルと61のプロファイルの違いが、構造体の変形で発生したズレであり、また、そのため1次変化のずれであることが多い。このため、本実施例では基板アライメント時の回転方向の合せを通常0秒を目標に位置合わせするところを数秒ずらした値(図8で示したθを補正する値)を目標値にし、基板アライメントすることにより補正する。上記の実際に作成した装置において、本補正を行なうことにより混色を取り除くことができた。
【0024】(実施例2)本発明の第2の実施例について説明する。図9および図10は本発明の第2の実施例の特徴を示す模式図である。図において、70は図1および図2に示す静圧軸受基準平面4の取り付け基準面である。その取り付け基準面70は3箇所あり、本体定盤1の上面に設置している。その設置位置は、本体定盤1を支持している3箇所の除振台2を結ぶ三角形の内側に位置している。
【0025】この構成により、基板ステージ3の可動部の移動位置による荷重変動による定盤変形を最小限に押さえることが可能となる。また、変形量が小さくなることにより、その変化がより線形性を増すため、実施例1の補正の確度が良くなる。
【0026】今後、基板サイズが大きくなり、装置も大きくなることを考えると実施例1および2の両方を行なうことが望ましい。
【0027】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明にしたがって、インクジェットヘッドを用いたカラーフィルタ製造装置の位置決めステージを製作および補正することにより、高精度な位置決めを行なうことができ、パネルの大型化や多面取りの製造を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係るカラーフィルタ製造装置の概略平面図である。
【図2】 図1の装置の概略側面図である。
【図3】 図1の装置の計測光学系の概略図である。
【図4】 図1の装置のへッドユニットチャックの概略図である。
【図5】 図1の装置で用いられる基準チャートの概略図である。
【図6】 図1の装置の測定フローチャートである。
【図7】 本発明の説明に用いられるインク滴着弾模式図である。
【図8】 本発明の説明に用いられるY方向(走査方向)移動時のズレの模式図である。
【図9】 図1の装置で用いられる静圧軸受基準平面の保持状態を示す概略平面図である。
【図10】 図9の状態の概略側面図である。
【符号の説明】
1:本体定盤、2:除振台、3:基板ステージ、4:静圧軸受基準平面、5:ヨーガイド、6:リニアモータ、7:θ−Z−チルトステージ、8:基板チャック、9:基板、10:描画へッド、11:へッドユニット、12:へッドユニットチャック、13:ヘッドユニットθアクチュエータ、14:へッドユニット直動ステージ、15:基板アライメント検出用光学系、16:オートフォーカス、17:クリーニングユニット、18:洗浄ユニット、19:クリーニングユニット駆動系、20:チャッキング用フランジ、21:CCDカメラ、22:鏡筒、23:対物レンズ、24:光源、25:画像処理ユニット、26:上下ステージ、30:テーパ面、31:保持力伝達球、32:ロッド、33:テーパ面、34:保持力発生用バネ、35:空気注入孔、36:フランジ面、40:ガラス基板、41:基準マーク、50:ブラックマトリクス、51:混色防止層、52:開口部、53:Rインク着弾点、54:Gインク着弾点、55:Bインク着弾点、60:AA補正によるY方向(走査方向)移動の理想プロファイル、61:Y方向(走査方向)移動時の測定結果プロファイル、70:静圧軸受基準平面の取り付け基準面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクジェットヘッドを光透過性の基体に対して相対的に走査させながら着色剤を吐出させ、前記基体上に前記着色剤により着色されたフィルタエレメントを複数個並べて形成してカラーフィルタを製造するカラーフィルタの製造装置であって、前記基体の基準位置に対するズレを測定すためのアライメント光学系と複数の前記へッドを1つのユニットとして取り付け可能なチャッキングユニットを具備しており、そのチャッキングユニットに位置評価用光学系として画像認識用の光学系が取り付くことを特徴とするカラーフィルタ製造装置。
【請求項2】 前記基体を保持する部分が少なくとも直交する2方向に移動するステージであり、前記ステージが、その移動平面内の回転方向の調整機構を具備し、かつ、前記基体の代わりに位置評価用の基準マークが面内に複数配置された基準チャートを保持することが可能であり、前記基準チャートを用いて前記アライメント光学系基準によるステージの走りに対し、前記位置評価用光学系により観察された前記ステージの走りのずれが測定できることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項3】 前記基体を前記ステージに搭載して前記基体のアライメントを行なう時に、アライメント光学系により求められた走りに対しオフセットを乗せて位置決めすることを特徴とする請求項2記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項4】 前記基体のステージが静圧気体軸受を用いた静圧ステージであり、その静圧ステージのXおよびY両方向の可動部が同一平面を上下方向の静圧軸受基準平面とする静圧ステージであり、その静圧軸受基準平面が装置全体の構成基準となる本体定盤の上に3点で保持搭載され、かつ、前記本体定盤が3つの除振台で支持されるとともに、前記静圧軸受基準平面の3点の保持位置が、前記3つの除振台による各支持点を結ぶ三角形の内側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項5】 前記へッドは、熱エネルギーを利用してインクを吐出するへッドであって、インクに与える熱エネルギーを発生するための熱エネルギー変換体を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルタ製造装置により製造されたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項7】 請求項4に記載の位置決めステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−187115(P2000−187115A)
【公開日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−366714
【出願日】平成10年12月24日(1998.12.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】