説明

カラー式対象物表示システム

【課題】周囲の対象物をカラー画像として表示可能であり、しかも対象物までの距離が所定の距離より近いことを瞬時に認識できるように表示できるカラー式対象物表示システムを得る。
【解決手段】R画素、G画素、及び、B画素を有するカラー式CMOSセンサ19と、CMOSセンサが受光した赤外光に基づいて対象物までの距離が設定距離範囲にあるかを判定する距離判定手段22と、R画素、G画素、及び、B画素の電気信号に基づくカラー画像と、距離判定手段の判定結果に基づく判定結果画像とを交互に生成する画像処理手段23と、時間残像現象が生じ得る時間間隔でカラー画像と判定結果画像を交互に表示するモニタ24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載可能で、周囲の対象物をカラーで表示可能でき、しかも対象物までの距離が所定の距離より近いことを瞬時に認識できるカラー式対象物表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載可能で、周囲の対象物(例えば、人、他の自動車などの障害物)をモニタに表示可能で、しかも自動車から対象物までの距離をモニタに表示可能な対象物表示システムの従来例としては特許文献1に開示されたものがある。
この対象物表示システムは、赤外線撮像装置と、レーザ光を利用した対象物までの距離を測距可能な測距装置と、赤外線撮像装置によって得られた画像および測距装置が取得した距離値(数値)を表示するモニタと、を具備している。
従って、自動車の運転手はモニタを見ることによって、自動車の周囲に位置する対象物及び自動車(赤外線撮像装置)から対象物までの距離を認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−11052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の対象物表示システムは、自動車から対象物までの距離を数値で表示するため、運転手にとって当該距離が危険な距離であるか否かを瞬時に判断するのが難しい。
さらに、モニタに表示される画像がモノクロ画像であるため、運転手にとって対象物を正確に識別するのが容易でない。
【0005】
本発明は、周囲の対象物をカラー画像として表示可能であり、しかも対象物までの距離が所定の距離より近いことを瞬時に認識できるように表示できるカラー式対象物表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカラー式対象物表示システムは、赤外光を対象物に向かって断続的に発する赤外光光源と、多数のR画素、G画素、及び、B画素を有し、光を受光することにより電気信号を発するCMOSセンサと、上記各R画素が上記赤外光を受光したときに、上記赤外光光源が赤外光を発してから各R画素が該赤外光に基づく電気信号を出すまでの時間差に基づいて、基準位置から上記対象物までの距離を演算する距離演算手段と、上記対象物までの距離が予め設定した少なくとも一つの設定距離範囲に含まれるか否かを、上記距離演算手段の演算結果に基づいて判定する距離判定手段と、上記R画素、G画素、及び、B画素の各電気信号に基づくカラー画像と、上記距離判定手段の判定結果に基づく判定結果画像と、をそれぞれ所定の間隔で生成する画像処理手段と、上記判定結果画像の表示間隔を時間残像現象が生じ得る時間間隔とした上で、上記カラー画像と上記判定結果画像を順次表示するモニタと、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記判定結果画像は、例えば、上記対象物の外形線に対応する領域または対象物の少なくとも一部に対応する領域に表された特定の色とすることが可能である。
【0008】
上記設定距離範囲を複数設定し、上記判定結果画像の色を、対応する上記設定距離範囲ごとに異なせてもよい。
【0009】
上記赤外光光源、CMOSセンサ、距離演算手段、距離判定手段、画像処理手段、及びモニタを自動車に搭載し、かつ、上記赤外光光源及びCMOSセンサを上記自動車の後部に設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカラー式対象物表示システムの撮像素子は、R画素、G画素、及び、B画素を有するCMOSセンサなので、モニタには対象物をカラー画像として表示できる。そのため、使用者はモニタに表示される対象物を正確に認識できる。
しかも、モニタに表示された対象物までの距離が所定の設定距離範囲にある場合に使用者がモニタを見ると、当該使用者はモニタにカラー画像が表示されている瞬間に判定結果画像(例えば、当該対象物の外形線や対象物全体に重ねて色付けした赤色の表示)を時間残像として同時に認識するので、当該対象物が設定距離範囲にある(所定の基準距離より近くにある)ことを瞬時に認識できる。そのため、本システムを自動車に搭載すれば、運転手は自動車が対象物に接触する危険を未然に防止し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のカラー式対象物表示システムを自動車に搭載した一実施形態を示す平面図である。
【図2】カラー式対象物表示システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】カラー式対象物表示システムの各構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】(a)はカラー画像を表示しているときのモニタの正面図であり、(b)は外形線上に色処理を施した赤外線画像を表示しているときのモニタの正面図であり、(c)は運転手や乗客が(a)の画像を見ているときに実際に認識する画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、カラー式対象物表示システム10を自動車Mに搭載した本発明の一実施形態について説明する。
カラー式対象物表示システム10は図2に示すように大きな構成要素として、カメラユニット15、演算手段22、画像処理装置23、及びモニタ24を具備している。
自動車Mの後端部に固定したカメラユニット15は、ケース16と、ケース16の後端面に後方に露出する態様で固定したレンズ17及び赤外光光源18と、ケース16の内部に固定したレンズ17の直前に位置するCMOSセンサ19と、を備えている。
赤外光光源18はLED(Light Emitting Diode)からなるものであり、周波数を10MHz(メガヘルツ)に変調した赤外光L(図1、図2参照)を後方に向かって放射状に発射する。
CMOSセンサ19はカラー式の撮像素子であり、その後面に形成された撮像面20は、緑色の原色フィルタによって表面(後面)を覆った多数のG画素(受光素子)と、青色の原色フィルタによって表面を覆った多数のB画素(受光素子)と、赤色の原色フィルタによって表面を覆った多数のR画素(受光素子)とによって構成してある。撮像面20の各画素にレンズ17を通して光(自然光、赤外光L)が入射すると各画素は撮像動作を行い、対応するフィルタと同じ色の色信号(電気信号)をそれぞれ出力する。図3のタイミングチャートに示すようにCMOSセンサ19の動作周波数も10MHzであり、その動作タイミングは赤外光光源18の発光タイミングと同期させてある。
【0013】
CMOSセンサ19は、カメラユニット15とは別体の演算手段22及び画像処理装置23とそれぞれ電気的に接続している。さらに、赤外光光源18は演算手段22と電気的に接続しており、演算手段22と画像処理装置23どうしも電気的に接続している。
赤外光光源18は赤外光Lを40万回発射する毎に1回ずつ(即ち、1/25秒(S)毎に1回ずつ)演算手段(距離演算手段)(距離判定手段)22に対して第1測距用信号を出す。また、CMOSセンサ19の各R画素は、赤外光光源18が第1測距用信号を出すのと同時に発射しかつ自動車Mの後方に位置する対象物(障害物)によって反射された赤外光Lを受光するタイミングで、演算手段22に対して第2測距用信号を出力する。図3のタイミングチャートに示すように演算手段22は、第1測距用信号を受信してから第2測距用信号を受光するまので時間差τ(図3参照)に基づいて、各R画素(基準位置)から各R画素に赤外光Lを反射した対象物までの距離を1/25秒間隔で断続的に測距演算する。さらに、演算手段22に内蔵したメモリには予め3つの基準距離範囲データが記憶してある。第1の基準距離範囲は1m未満の範囲、第2の基準距離範囲は1m以上3m未満の範囲、第3の基準距離範囲は3m以上5m未満の範囲として設定してある。そして演算手段22は図3のタイミングチャートに示すように、各R画素が第2測距用信号を出した瞬間における各R画素から各R画素が撮像した対象物までの距離が、上記3つの基準距離範囲に入るか否かを上記測距演算と同時に判定する。
【0014】
CMOSセンサ19が10MHzの動作周波数で撮像動作を行うと、画像処理装置23が各G画素、B画素、R画素からの色信号(電気信号)を40万回に1回の間隔(1/25秒間隔)で受信し、画像処理装置23がすべての色信号に基づくカラー画像を1/25秒間隔で断続的に生成する。また画像処理装置23は、各R画素が第2測距用信号を出すのと同時に出力する赤外光Lに基づく色信号(電気信号)を40万回に1回の間隔(1/25秒間隔)で受信し、各R画素からの色信号に基づいて赤外光画像を1/25断続的に生成する。画像処理手段23は、これらのタイミング以外でR画素、G画素及びB画素から出力される色信号については全て無視し画像処理は行わない。図3に示すように、赤外光画像の生成はカラー画像の生成タイミングとはずれており、演算手段22の測距演算及び判定演算と同じタイミングで行われる。さらに画像処理装置23は、赤外光画像の生成と同時に、生成した赤外光画像の外形線に対応する部分を撮像したR画素から対象物までの距離(測距結果)に関する演算手段22による判定結果に基づいて、第1の基準距離範囲に位置する対象物の赤外光画像の外形線部分を「赤色(判定結果画像)」で表示し、第2の基準距離範囲に位置する対象物の赤外光画像の外形線を「黄色(判定結果画像)」で表示し、第3の基準距離範囲に位置する対象物の赤外光画像の外形線を「緑色(判定結果画像)」で表示する。
モニタ24は車内の前部(例えばハンドルを支持した前面パネル)に運転手や乗客が視認できる態様で固定する。モニタ24は図3のタイミングチャートに示すように、画像処理装置23によって生成されたカラー画像と、色付けされた赤外光画像とを、1/25秒ごとに交互に表示するので、運転手や乗客はモニタ24に表示された画像を動画として認識する。
【0015】
続いて、自動車Mの後方に3つの障害物(バイクA、人B、フェンスC)が位置するときのカラー式対象物表示システム10の動作について説明する。
図1に示すように、バイクA、人B、フェンスCが自動車Mの後方に互いの前後位置が異なる状態で位置するときにカラー式対象物表示システム10を動作させると、赤外光光源18が10MHzの動作周波数で赤外光Lを後方に向けて発射し、CMOSセンサ19が赤外光光源18の発光タイミングと同期しながら10MHzの動作周波数で撮像動作を行う。
図1に示す状態では、バイクAがCMOSセンサ19の撮像面20(R画素)から0.8mの距離に位置し、人Bが2mの距離に位置し、フェンスCが4mの距離に位置するので、画像処理装置23は生成したバイクAの赤外光画像の外形線上に「赤色」の処理を行い、人Bの赤外光画像の外形線上に「黄色」の処理を行い、フェンスCの赤外光画像の外形線上に「緑色」の処理を行う。
図4(a)はモニタ24にカラー画像が表示されたときの様子を示しており、図4(b)はモニタ24に色処理を施した赤外光画像が表示されたときの様子を示している。図4(a)の画像と図4(b)の画像はモニタ24に同時に表示されるのではなく1/25秒ごとに交互に表示されるが、表示時間がそれぞれ1/25秒という時間残像効果を生じる極めて短い時間であるため、運転手や乗客が図4(a)のカラー画像を見ている時、運転手や乗客の目(脳)には図4(b)の赤外光画像が時間残像として残る。そのため、運転手や乗客は図4(a)のカラー画像を、図4(c)に示したようにバイクAの外形線が「赤色」に色処理され、人Bの外形線が「黄色」に色処理され、フェンスCの外形線が「緑色」に色処理されたカラー画像として認識する。そのため運転手は、バイクAが自動車Mから極めて近い距離に位置し、このまま自動車Mをバックさせると自動車MがバイクAに接触するおそれがあることを瞬時に認識できるので、自動車MがバイクAに接触する危険を未然に防止できる。
さらに運転手は、人Bが自動車Mの後部から比較的近い距離に位置し、かつ、フェンスCまでの距離は比較的長いことを瞬時に認識できる。
なお、バイクA、人B、フェンスCのいずれかがCMOSセンサ19の撮像面20(R画素)から5m以上後方に離れた位置にあるときは、モニタ24に赤外光画像として表示された当該障害物の外形線には上記色処理はされない。この場合、運転手及び乗客はモニタ24に表示されたカラー画像をそのまま認識する。
【0016】
以上説明した本実施形態はカラー式対象物表示システム10を自動車Mに搭載した例であるが、カラー式対象物表示システム10を自動車M以外のもの、例えばゲーム機器における対象物表示システムとして利用できる。
また、演算手段22のメモリに記憶させる基準距離範囲を3つとして設定したが、設定する基準距離範囲は一つでも3つ以外の複数であってもよいし、基準距離範囲の設定範囲(距離範囲)は上記の範囲には限定されない。
さらに、赤外線画像に施す判定結果画像は上記のような色処理には限定されない。例えば、対象物の外形線ではなく、対象物全体や対象物の一部に対応する部分に色処理を施してもよい。あるいは、基準距離範囲を一つのみとした上で、当該基準距離範囲にいずれか一つの対象物が位置するときに、赤外光画像を表示しているモニタ全体を特定の色(例えば赤色)で表示してもよい。
モニタ24による「カラー画像」と「赤外光画像」の表示タイミングは上記のものには限定されず、利用者がモニタ24に表示されたカラー画像を見たときに赤外光画像が時間残像として利用者の目(脳)に残る時間間隔(例えば1/24秒より短い時間間隔)であればよい。
【0017】
また、赤外光光源18としてLED以外の光源を利用してもよい。
さらに、演算手段22が対象物までの距離を測距するときの基準位置をR画素(撮像面20)以外のもの、例えば赤外光光源18や自動車Mの後端部に設けたバンパーとして実施してもよい。
【符号の説明】
【0018】
10 カラー式対象物表示システム
15 カメラユニット
16 ケース
17 レンズ
18 赤外光光源(LED)
19 CMOSセンサ(撮像素子)
20 撮像面
22 演算手段(距離演算手段)(距離判定手段)
23 画像処理装置
24 モニタ
A バイク(障害物)(対象物)
B 人(障害物)(対象物)
C フェンス(障害物)(対象物)
M 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を対象物に向かって断続的に発する赤外光光源と、
多数のR画素、G画素、及び、B画素を有し、光を受光することにより電気信号を発するCMOSセンサと、
上記各R画素が上記赤外光を受光したときに、上記赤外光光源が赤外光を発してから各R画素が該赤外光に基づく電気信号を出すまでの時間差に基づいて、基準位置から上記対象物までの距離を演算する距離演算手段と、
上記対象物までの距離が予め設定した少なくとも一つの設定距離範囲に含まれるか否かを、上記距離演算手段の演算結果に基づいて判定する距離判定手段と、
上記R画素、G画素、及び、B画素の各電気信号に基づくカラー画像と、上記距離判定手段の判定結果に基づく判定結果画像と、をそれぞれ所定の間隔で生成する画像処理手段と、
上記判定結果画像の表示間隔を時間残像現象が生じ得る時間間隔とした上で、上記カラー画像と上記判定結果画像を順次表示するモニタと、
を備えることを特徴とするカラー式対象物表示システム。
【請求項2】
請求項1記載のカラー式対象物表示システムにおいて、
上記判定結果画像が、上記対象物の外形線に対応する領域または対象物の少なくとも一部に対応する領域に表された特定の色であるカラー式対象物表示システム。
【請求項3】
請求項2記載のカラー式対象物表示システムにおいて、
上記設定距離範囲を複数設定し、
上記判定結果画像の色を、対応する上記設定距離範囲ごとに異なせたカラー式対象物表示システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のカラー式対象物表示システムにおいて、
上記赤外光光源、CMOSセンサ、距離演算手段、距離判定手段、画像処理手段、及びモニタを自動車に搭載し、かつ、上記赤外光光源及びCMOSセンサを上記自動車の後部に設けたカラー式対象物表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7668(P2011−7668A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152206(P2009−152206)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】