説明

カルニチンフマル酸塩及びその製造方法

【課題】
操作性に優れた物性を有するカルニチンフマル酸塩を簡便な操作により製造する方法を提供すること。
【解決手段】
固体状のカルニチンフマル酸塩が、溶媒に対して0.15〜8質量%存在する溶液に、フマル酸及びカルニチンを添加する工程を含む、カルニチンフマル酸塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルニチンフマル酸塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルニチンは脂肪燃焼に必須の成分の一つであり、脂肪代謝促進食品を中心に現在様々な食品に添加されている。しかしながら、その高い吸湿性のため、変性を受けたり、膨潤したり、ペースト状かつ粘着質となったりし易い。また、安定性が不十分なために、極微量のトリメチルアミンが放出され、不快な魚臭を与えることがある。
【0003】
このように、カルニチンは貯蔵及び加工処理において多くの問題を含んでいる。そこで、このような問題を解決するために安定性の高い非吸湿性の塩としてカルニチンフマル酸塩が開発された。カルニチンフマル酸塩の製造方法としては、例えば、特許文献1〜4に記載されている方法が知られている。
【0004】
特許文献1及び4は、カルニチン及びフマル酸の両者を水又はエタノールに溶解させ、溶剤を留去させ、乾固物を取得後、エタノール又はイソプロパノールを用いて再結晶してカルニチンフマル酸塩を取得する方法を開示している。一方、特許文献2及び3には、生産効率を向上すべく、少量の水にカルニチン及びフマル酸を混合し、高温で処理し、冷却後又は乾燥後に粉砕して、カルニチンフマル酸塩を取得する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1及び4に記載された方法では、得られた乾固物をアルコールにて再結晶してカルニチンフマル酸塩を取得しているが、操作が煩雑になる上に、本操作により一部の不純物が増大することが判明した。また、特許文献2及び3に記載された方法で得られたカルニチンフマル酸は、吸湿性が十分に抑えられておらず、吸湿に起因すると考えられる固化あるいは着色が認められることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−158152号公報
【特許文献2】特表2002−540094号公報
【特許文献3】特表2001−513096号公報
【特許文献4】特公昭38−19995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、これらの欠点を改善したすべくカルニチンフマル酸塩を開発したが、得られたカルニチンフマル酸塩はタップ密度が小さく(特願2009−207771)、また、含液率も高かった。従って、より大きなタップ密度を有する等、操作性に優れた物性を有するカルニチンの有機酸塩が求められていた。
そこで、本発明の目的は、操作性に優れた物性を有するカルニチンフマル酸塩を簡便な操作により製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、カルニチンフマル酸塩の結晶を製造する際に、固体状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液に、フマル酸及びカルニチンを添加することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、固体状のカルニチンフマル酸塩が、溶媒に対して0.15〜8質量%存在する溶液に、フマル酸及びカルニチンを添加する工程を含む、カルニチンフマル酸塩の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な操作により、大きなタップ密度及び/又は低い含液率のカルニチンフマル酸塩を得ることができる。当該カルニチンフマル酸塩は、その物性により非常に操作性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)カルニチン
本発明において使用するカルニチンは、市販されているものを使用することもできるし、公知又は新規な方法で製造したカルニチンを使用することもできる。公知の方法としては、例えば、以下の製造方法が知られている。(イ)ジクロロプロパノールを酵素反応(ハロヒドリンエポキシダーゼ及びニトリルヒドラターゼ)によりシアノ化及びアミド化した後、4級アミノ化し、加水分解等を行うことにより得られるL−カルニチン;(ロ)エピクロロヒドリンを順次、4級アミノ化、シアノ化、アミド化、光学分割等に供して得られるL−カルニチン;(ハ)ブチロラクトンを開環、4級アミノ化、微生物による反応等に供して得られるL−カルニチン;(ニ)クロロアセト酢酸エチルを不斉還元、4級アミノ化、加水分解等に供して得られるL−カルニチン。
これらの中でも、(イ)で得られるカルニチンを好適に使用することができる(WO2008/056827号パンフレット参照)。当該方法によれば、収率が高く、また、不純物も抑制されたカルニチンを使用することができるからである。
【0011】
上記カルニチンの光学活性の種類は限定されない。例えば、光学的に純粋なL体又はR体のカルニチン、ラセミ体のカルニチン、光学活性に偏りがある(L体又はR体のどちらかがもう一方よりも多く含まれる)カルニチンを使用することができる。好ましくは、L−カルニチンである。
【0012】
また、上記カルニチンは、電気的に中性であっても、正電荷を帯びていても、負電荷を帯びていてもいずれでもよい。これらの中でも、4級アミノ基の正電荷とカルボキシル基の負電荷により分子内で電気的に中性となっているもの(以下、「カルニチン分子内塩」ということがある。)が好ましい。フマル酸と塩を形成しやすいからである。
更に、本発明においては、上記カルニチンだけでなく、カルニチンの誘導体も使用することができる。当該誘導体の種類は限定されず、例えば、カルボキシル基がエステルを形成したもの、水酸基がエステルを形成したものを挙げることができ、これらの中でも、アセチルカルニチン、プロピオニルカルニチン等が好ましい。
(2)フマル酸
本発明において使用するフマル酸は、一般に市販されているものを使用することもできるし、公知の方法で製造することもできる。
(3)溶媒
本発明では、カルニチンフマル酸塩を製造する際に、溶媒として低級アルキルアルコールを使用する。低級アルキルアルコールとしては、水と相溶し得るものであり、且つ、フマル酸とカルニチンとを溶解し得るものがよい。
このような低級アルキルアルコールとしては、例えば、炭素数が1〜4のアルキルアルコールを挙げることができる。好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数が2〜3のアルキルアルコールである。これらのアルコールは、ハロゲン化物等の置換基を有していてもよい。より詳細には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられ、中でもエタノールが特に好ましい。
【0013】
本発明で用いる溶媒は、水を含んでいても良い。水を含むに場合は、低級アルキルアルコールの濃度は、例えば60〜95質量%、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは85〜95質量%である。水は通常この分野での製造で用いられるものであれば特に限定されないが、例えば精製水、蒸留水、蒸留精製水等が挙げられる。
また、アルコールとしては、単一のアルコールを単独で用いることもできるし、複数のアルコールを混合して用いることもできる。複数のアルコールを混合して用いる場合、その種類や混合比は限定されず、適宜選択することができる。
【0014】
(4)カルニチンフマル酸塩の製造
(4−1)固定状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液の調製
本発明においては、まず、固体状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液を調製する。当該溶液を調製する方法は、特には限定されない。
溶解度以上のカルニチンフマル酸塩を溶媒に添加することにより調製してもよい。
また、フマル酸とカルニチンを溶媒に添加してカルニチンフマル酸塩を製造することにより、又は、その(カルニチンフマル酸塩を製造した)後に、カルニチンフマル酸塩を析出若しくは添加することも可能である。
その場合、フマル酸とカルニチンの添加方法も限定されず、フマル酸とカルニチンを別々に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
フマル酸とカルニチンは、カルニチンフマル酸塩が溶媒に対して固体状で0.15質量%以上、好ましくは0.15〜8質量%、より好ましくは0.17〜5質量%、更に好ましくは0.2〜3質量%存在(又は析出)するように添加すればよい。0.15質量%以上とすることにより、後の工程を経て、より大きなタップ密度を有する、含液率が低い等、優れた物性を有するカルニチンフマル酸塩が得られるからである。8質量%以下とするのは、優れた物性を有するカルニチンフマル酸塩の含有率の低下を防ぐことができるからである。
フマル酸とカルニチンを添加することによりカルニチンフマル酸塩を形成させる場合、それらの量の比(フマル酸のカルニチンに対する量、又はカルニチンのフマル酸に対する量)は、後の工程で所望のカルニチンフマル酸塩の生成に支障をきたさない限り、カルニチン又はフマル酸のどちらか一方が多くなってもよい。例えば、カルニチンとフマル酸とをモル比で1:1又は1:1に近い値となるように添加すれば、どちらか一方のロスが少なくなるため好ましい。
【0015】
カルニチンフマル酸塩を添加する方法、又は、カルニチンとフマル酸塩を添加する方法のいずれの方法の場合も、上記濃度の固体状のカルニチンフマル酸塩を有する溶液が調製され、副生成物の産生を抑制することができれば、加温下に行ってもよい。
例えば、溶媒の温度を0〜40℃、好ましくは10〜35℃で、より好ましくは10〜30℃で添加していけばよい。0℃以上とするのは、効率よくカルニチンフマル酸塩を得ることができるからである。また、40℃以下とするのは、副生成物の産生を抑制することができるからである。
また、撹拌下にフマル酸及びカルニチンの添加を行ってもよい。フマル酸若しくはカルニチン又はカルニチンフマル酸塩を添加した後の攪拌時間も限定されず、当業者が適宜選択することができる。例えば1分〜3時間、好ましくは1分〜60分、より好ましくは1分〜15分とすることができる。
(4−2)固定状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液へのフマル酸及びカルニチンの添加
上記の固体状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液が得られた後、フマル酸とカルニチンを添加することにより、カルニチンフマル酸塩を製造する。
当該固体状のカルニチンフマル酸塩が存在する溶液を別途製造してから、下記条件でフマル酸とカルニチンを添加してもよい。また、溶媒にフマル酸とカルニチンを添加し続けて、カルニチンフマル酸塩が析出することにより固体状のカルニチンフマル酸塩が上記特定の量に達してから、下記条件(添加速度)でフマル酸とカルニチンを添加する(し続ける)こともできる。もちろん、溶媒に、下記条件でフマル酸とカルニチンを添加し続けることにより、本発明のカルニチンフマル酸塩を製造することも可能である。
この工程において、フマル酸とカルニチンは、同時に連続して添加してもよいし、断続的に添加してもよい。断続的に添加する場合は、フマル酸とカルニチンを交互に添加することもできるし、それらを同時に添加することもできる。フマル酸とカルニチンはどちらから添加し始めてもよい。
【0016】
フマル酸の添加量は、連続的であれ断続的であれ、1分間当たり溶媒に対して0.005〜0.6質量%、好ましくは0.01〜0.4質量%、より好ましくは0.02〜0.3質量%である。また、カルニチンの添加量は、連続的であれ断続的であれ、1分間当り0.005〜0.85質量%、好ましくは0.01〜0.6質量%、より好ましくは0.02〜0.4質量%である。
フマル酸とカルニチンを上記添加速度で添加することにより、簡便な操作により、より大きなタップ密度、低い含液率等の優れた物性値を有する、操作性に非常に優れたカルニチンフマル酸塩を得ることができるからである。
また、フマル酸とカルニチンの量の比(フマル酸のカルニチンに対する量、又はカルニチンのフマル酸に対する量)は、それぞれが上記範囲内であり、且つ、所望のカルニチンフマル酸塩が得られれば限定されない。例えば、カルニチン又はフマル酸のどちらか一方を多く添加してもよい。カルニチンとフマル酸とをモル比で1:1又は1:1に近い値となるように添加すれば、どちらか一方のロスが少なくなるため好ましい。
連続的又は断続的に添加を行う場合のフマル酸及びカルニチンを添加する合計量及び回数は限定されない。必要とするカルニチンフマル酸塩の量、溶媒の量等に応じて、適宜選択することができる。連続的な添加を行う際は例えばフィーダー等を使用して添加することができる。また、必要に応じて撹拌下にフマル酸及びカルニチンの添加を行うこともできる。
カルニチンフマル酸塩を形成させる際の溶媒(溶液)の温度は、所望の物性を有するカルニチンフマル酸塩が得られ、副生成物の産生を抑制することができれば、限定されない。例えば0〜40℃、好ましくは10〜35℃で、より好ましくは10〜30℃とすればよい。0℃以上とするのは、効率よくカルニチンフマル酸塩を得ることができるからである。また、40℃以下とするのは、副生成物の産生を抑制することができるからである。
このようにして得られたカルニチンフマル酸塩は、濾過や遠心分離等の公知の方法で回収することができる。回収したカルニチンフマル酸塩は、必要に応じて洗浄や精製等の操作に供することも可能である。
(6)カルニチンフマル酸塩
上記のようにして得られた本発明のカルニチンフマル酸塩は、以下の物性を有する。
【0017】
(6−1)タップ密度
タップ密度とは、粉体のタップ充填時におけるみかけの密度をいう。タップ充填とは、粉体を充填した容器を一定高より一定速度で繰り返し落下させ、容器中の粉体のかさ体積がほぼ一定となるまで密に充填することである。
本発明においては、例えば、メスシリンダーに適量のカルニチンフマル酸塩を入れて精秤し、15mm前後の高さから180〜200回/分の落下頻度でプラッテに落下させ、最初の500回落下後のカルニチンフマル酸塩の容積と、次の200回(合計700回)落下後のカルニチンフマル酸塩の容積を測定し、容積変化が2%未満となった時点で最終容積とし、測定に使用したカルニチンフマル酸塩の質量を当該最終容積で除することにより、求めることができる。
本発明で得られたカルニチンフマル酸塩のタップ密度は、0.35〜0.7g/mL、好ましくは0.38〜0.6g/mL、より好ましくは0.4〜0.5g/mLである。このような比較的大きなタップ密度を有する本発明のカルニチンフマル酸塩は、質量当たりの体積が小さいので、運搬などの操作性に優れている。
(6−2)含液率
本発明において含液率とは、固液分離後の湿結晶に含まれる溶媒の質量百分率のことである。湿結晶を乾燥させたときの質量減分を乾燥前の湿結晶の質量で除することにより求めることができる。
乾燥前の湿結晶の質量の測定は、例えば、室温(20〜30℃)において、減圧度10〜20mmHgの真空度を達成し得るアスピレーターで吸引ろ過を行い、液滴の落下の間隔が5秒以上、好ましくは10秒以上となった直後に得られる湿結晶について行う。
本発明において得られたカルニチンフマル酸塩の固液分離後の結晶の含液率は、十分に低減されている。例えば30%以下、好ましくは28%以下、より好ましくは25%以下である。含液率が30%以下となることにより、乾燥の工程が短縮されたり、よりマイルドな条件で乾燥を行ったりすることができる。また、含液率が低いことにより、溶媒中に存在するかもしれない不純物がカルニチンフマル酸に持ち込まれるのを効果的に防ぐことができる。さらに、溶媒を再利用(リサイクル)する場合は、当該溶媒のロスが減るため経済的にも優れている。
【実施例】
【0018】
各実施例及び比較例で得られたカルニチンフマル酸塩の各種物性については、以下のようにして測定した。
(I)タップ密度
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたカルニチンフマル酸塩30gをそれぞれ100mLメスシリンダーに入れ、15mm前後の高さから180〜200回/分の落下頻度でプラッテに落下させた。最初の500回落下後のカルニチンフマル酸塩の容積と、次の200回(合計700回)落下後のカルニチンフマル酸塩の容積の変化が2%未満となったため、700回落下させた後のカルニチンフマル酸塩の容積を最終容積とし、質量を当該最終容積で除することにより、タップ密度を求めた。
(II)含液率
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたカルニチンフマル酸塩を含むスラリーを、アスピレーターで減圧した桐山ロートに供し、吸引ろ過を行った。吸引濾過の条件としては、例えば、以下のように行うことができる。室温(20℃)において吸引ろ過を行い、液滴の落下の間隔が10秒となった時点で吸引ろ過操作を終了した。
得られた湿結晶について70℃で真空乾燥を行い、乾燥結晶を得た。含液率の計算式を下記に示す。
((湿結晶質量―乾燥結晶質量)/湿結晶質量)×100 [%]。
(III)平均粒子径
本発明において、平均粒子径は、JIS Z 8801 試験用ふるい(目開き:300μm、250μm、180μm、125μm、90μm、45μm、32μm)を用いて、JIS Z 0069 化学製品のふるい分け試験方法に準拠した測定法により求めた。より詳細には、各々の目開きに残ったカルニチンフマル酸塩の質量分率を算出し、その積算百分率50%の粒子径が平均粒子径である。
<実施例1>
フマル酸(1.08g,0.0093mol)とカルニチン分子内塩(1.49g,0.0093mol)を95質量%エタノール(5質量%は水)120gに室温(30℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(1.2g,0.0043mol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は1質量%)。
そこに、フマル酸(0.61g,0.0053mol)を添加し、2分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(0.85g,0.0053mol)を添加し、8分間攪拌した。この操作を9回繰り返した(フマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計9回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率91%で得た(収量:13.0g)。固液分離後の湿結晶の含液率は23%、乾燥結晶のタップ密度は0.42g/mL、平均粒子径は285μmであった。
<実施例2>
フマル酸(0.76g,0.0066mol)とカルニチン分子内塩(1.06g,0.0066mol)を95質量%エタノール120gに室温(20℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(1.2g,0.0043mol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は1質量%)。
そこに、フマル酸(0.33g,0.0028mol)を添加し、2分間攪拌した。次にカルニチン分子内塩(0.46g,0.0028mol)を添加し、1分間攪拌した。この操作を17回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計17回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率93%で得た(収量:13.6g)。固液分離後の湿結晶の含液率は22%、乾燥結晶のタップ密度は0.48g/mL、平均粒子径は285μmであった。
<実施例3>
フマル酸(0.76g,0.0066mol)とカルニチン分子内塩(1.06g,0.0066mol)を95質量%エタノール120gに室温(20℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(1.2g,0.0043mol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は1質量%)。
そこに、フマル酸(0.33g,0.0028mol)を添加し、2分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(0.46g,0.0028mol)を添加し、2分間攪拌した。この操作を51回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計51回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率94%で得た(収量:39.0g)。固液分離後の湿結晶の含液率は17%、乾燥結晶のタップ密度は0.48g/mL、平均粒子径は295μmであった。
<実施例4>
フマル酸(0.76g,0.0066mol)とカルニチン分子内塩(1.06g,0.0066mol)を95質量%エタノール120gに室温(20℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(1.2g,0.0043mol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は1質量%)。
そこに、フマル酸(0.33g,0.0028mol)とカルニチン分子内塩(0.46g,0.0028mol)を同時に添加し、2分間攪拌した。この操作を51回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計51回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率94%で得た(収量:38.9g)。固液分離後の湿結晶の含液率は21%、乾燥結晶のタップ密度は0.45g/mL、平均粒子径は285μmであった。
【0019】
<比較例1>
フマル酸(1.08g,0.0093mol)とカルニチン分子内塩(1.49g,0.0093mol)を95質量%エタノール120gに室温(30℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(0.012g,0.043mmol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は0.01質量%)。
そこに、フマル酸(1.11g,0.0095mol)を添加し、2分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(1.53g,0.0095mol)を添加し、1分間攪拌した。この操作を5回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計5回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率90%で得た(収量:11.9g)。固液分離後の湿結晶の含液率は54%、乾燥結晶のタップ密度は0.22g/mL、平均粒子径は280μmであった。
<比較例2>
フマル酸(0.76g,0.0066mol)とカルニチン分子内塩(1.06g,0.0066mol)を95質量%エタノール120gに室温(20℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(0.12g,0.43mmol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は0.1質量%)。
そこに、フマル酸(0.33g,0.0028mol)を添加し、2分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(0.46g,0.0028mol)を添加し、4分間攪拌した。この操作を17回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計17回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率93%で得た(収量:12.6g)。固液分離後の湿結晶の含液率は34%、乾燥結晶のタップ密度は0.34g/mL、平均粒子径は285μmであった。
<比較例3>
フマル酸(1.08g,0.0093mol)とカルニチン分子内塩(1.49g,0.0093mol)を95質量%エタノール120gに室温(30℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(0.012g,0.043mmol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は0.01質量%)。
そこに、フマル酸(0.61g,0.0053mol)を添加し、2分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(0.85g,0.0053mol)を添加し、1分間攪拌した。この操作を9回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計9回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率91%で得た(収量:12.0g)。固液分離後の湿結晶の含液率は45%、乾燥結晶のタップ密度は0.26g/mL、平均粒子径は200μmであった。
<比較例4>
フマル酸(29.8g,0.257mol)を95質量%エタノール650gに20℃で添加し、15分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加し、10分間攪拌し、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加後10分間攪拌した(カルニチン分子内塩を2回に分割して添加した。)。種晶は添加しなかった(固体状のカルニチンフマル酸塩は0)。
次に、このようにして得られた溶液に、フマル酸(29.8g,0.257mol)を添加して15分間攪拌した後、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加して10分間攪拌し、更に、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加して10分間攪拌した(カルニチン分子内塩を2回に分割して添加した。)。
続いて、そこに、フマル酸(29.8g,0.257mol)を添加して15分間攪拌した後、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加して10分間攪拌し、更に、カルニチン分子内塩(20.7g,0.128mol)を添加して10分間攪拌した(カルニチン分子内塩を2回に分割して添加した。)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率93%で得た(収量:198.5g)。固液分離後の湿結晶の含液率は47%、乾燥結晶のタップ密度は0.33g/mL、平均粒子径は65μmであった。
<比較例5>
フマル酸(0.63g,0.0054mol)とカルニチン分子内塩(0.88g,0.0055mol)を95質量%エタノール100gに室温(20℃)で溶解させた。次いで、種晶としてカルニチンフマル酸塩(1.0g,0.0036mmol)を添加後、5分間攪拌した(固体状のカルニチンフマル酸塩は1質量%)。
そこに、フマル酸(3.60g,0.031mol)を添加し、5分間攪拌した。次いで、カルニチン分子内塩(5.00g,0.031mol)を添加し、5分間攪拌した。この操作を3回繰り返した(このフマル酸とカルニチン分子内塩の添加を各々合計3回行った)。
吸引ろ過により固液分離後、真空乾燥(70℃)により、カルニチンフマル酸塩を収率92%で得た(収量:26.0g)。固液分離後の湿結晶の含液率は48%、乾燥結晶のタップ密度は0.29g/mL、平均粒子径は180μmであった。
【0020】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状のカルニチンフマル酸塩が、溶媒に対して0.15〜8質量%存在する溶液に、フマル酸及びカルニチンを添加する工程を含む、カルニチンフマル酸塩の製造方法。
【請求項2】
フマル酸の添加量が、1分間当り溶媒に対して0.005〜0.6質量%であり、カルニチンの添加量が、1分間当り0.005〜0.85質量%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の(i)及び/又は(ii)の物性を有するカルニチンフマル酸塩。
(i)タップ密度が0.35〜0.7g/mL
(ii)固液分離後の結晶の含液率が30質量%以下

【公開番号】特開2011−178739(P2011−178739A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46160(P2010−46160)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】