説明

カルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩及びその製造方法

カルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩の製造方法、及び該製造方法から得られる新規のカルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩を提供する。また、該酸付加塩を使用したカルバペネム系抗生物質の製造方法を提供する。これにより、カラムクロマトグラフィを遂行せずとも、カルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩を高収率かつ高純度で製造できる。従って、該製造方法は、産業的規模の量産に適用されうる。また、該酸付加塩は、固体であるため、生産現場での取扱いや保管が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩及びその製造方法に関する。本発明はまた、該酸付加塩を使用したカルバペネム系抗生物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的な感染性疾患の増加と共に、感染性疾患の治療のための抗生物質の使用が顕著に増加している。1980年代以降、数多くの抗生物質が臨床に使われるようになるにつれて、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)のような抗生物質耐性(antibiotic-resistant)菌が全世界的に問題を引き起こしている。1990年代に、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が出現して以来、抗生物質耐性菌が人類の健康を脅かしている。従って、抗生物質の乱用と過剰使用とによって生じた抗生物質耐性菌を効果的に阻害できる新しい抗生物質の開発が要求されている。
【0003】
1976年に米国・Merck社によって、Streptomyces Cattleyaから分離されたチエナマイシンは、最初のカルバペネム抗生物質であり、これは、第四世代抗生物質に分類される。前記カルバペネム抗生物質は、優れた抗菌活性と広範囲な抗菌スペクトルとによって、β−ラクタマーゼ(β−lactamase)を生成する菌にも活性を有する。チエナマイシンの発見以来、チエナマイシンの誘導体として、カルバペネム抗生物質の合成についての研究が行われてきた。その結果、イミペネム及びメロペネムのような様々な誘導体が開発され、市販されている。
【0004】
1−ベータ−メチルカルバペネム抗生物質は、グラム陰性及びグラム陽性の菌株に対して広範囲なスペクトルを有する抗生物質として知られている(特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4)。最近、カルバペネム系抗生物質である2−アリールカルバペネム化合物(L−695256及びL−742728)が、MRSAとバンコマイシン耐性ブドウ球菌(VRSA)とに対して、優れた活性を示すことが報告された(非特許文献1)。特許文献5は、2−ベンゾチアゾールエテニル・カルバペネムがMRSAに対して優れた活性を有するということを開示している。
【0005】
カルバペネム系抗生物質は、消化管吸収作用性及び保存安定性が低いため、臨床では注射によって投与されている。L−084(明治製菓、日本)は、高い消化管吸収作用を有する経口用カルバペネム系抗生物質として開発され、臨床試験が進められている(特許文献6)。
【0006】
一方、本発明者らは、MRSA及びキノロン耐性ブドウ球菌(QRSA)に対して高い活性を有するカルバペネム系抗生物質を開発している(特許文献7)。本発明者らによって開発された前記カルバペネム系抗生物質は、下記反応式1によって製造される。
【0007】
【化1】

【0008】
反応式1で、R及びRは互いに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチルまたはハロゲンであり、Rは、水素またはC−Cアルキル基であり、Rは、水素またはヒドロキシ保護基であり、Rは、カルボキシ保護基であり、Mは、水素または薬学的に許容可能な塩を形成する対イオンである。
【0009】
反応式1に示すように、中間体である化学式3の化合物は、化学式1及び化学式2の化合物の反応によって製造される。しかし、化学式3の化合物を純粋に得るためには、最終段階で、カラムクロマトグラフィを実行せねばならないので、このような工程は、産業的規模の量産に適さない。また、カラムクロマトグラフィによって得られた生成物、すなわち化学式3の化合物の収率は、約40%に過ぎない。さらに、化学式3の化合物は、液体として得られるため、取扱いが難しい。
【0010】
【化2】

【0011】
反応式2で、RないしRは、反応式1と同じであり、TMSは、トリメチルシリルを示し、Acは、アセチルを示す。
【0012】
反応式2に示すように、他の中間体である化学式2の化合物は、多段階の工程を遂行して製造される。さらに、化学式9の化合物は、化学式6の化合物のシリル化によって得られた、化学式7及び化学式8の化合物を経由して製造されるので、多段階の工程が必要である。また、化学式9の化合物から化学式10の化合物を得るためには、後処理(work-up)段階で、カラムクロマトグラフィを使用した精製が必要なので、生成物の収率が低く、また産業的規模の量産に適さない。また、化学式2の化合物は、液体として得られるので、取扱いが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,962,103号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,333号明細書
【特許文献3】米国特許第4,943,569号明細書
【特許文献4】米国特許第5,122,604号明細書
【特許文献5】WO99/62906号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,534,510号明細書
【特許文献7】大韓民国特許第10−0599876号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Hugh rosen et al.,Sciences,703(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、カラムクロマトグラフィのように、生産現場に適用し難い工程を遂行せずに、カルバペネム系抗生物質の合成中間体を高収率で製造する方法について研究を行った。
【0016】
その結果、本発明者らは、pHを調節し、有機溶媒中で化学式3の化合物をその酸付加塩に結晶化させるだけで、カラムクロマトグラフィを遂行せずとも、高収率かつ高純度で、化学式3の化合物の酸付加塩が製造されうるということを発見した。また、化学式3の化合物の酸付加塩は、固体として得られるために、取扱いやすいということも発見した。
【0017】
また、シリル化を行うことなく、化学式6の化合物と塩基との反応を介してアゼチジン環が形成されうるので、工程を単純化させることができることが明らかになった。また、化学式10の化合物の後処理段階で、pHを酸性pHに調節して生成物を中和させた後、有機溶媒中で結晶化させることによって、カラムクロマトグラフィを遂行せずとも、化学式10の化合物が高収率かつ高純度で容易に製造できることが明らかになった。また、化学式2の化合物の酸付加塩は、固体として得られるため、取扱いやすいということを発見した。
【0018】
従って、本発明は、カルバペネム系抗生物質の合成中間体の酸付加塩、特に、化学式2の化合物または化学式3の化合物の酸付加塩の製造方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、化学式2の化合物または化学式3の化合物の酸付加塩を提供する。
【0020】
本発明はまた、化学式3の化合物の酸付加塩を使用する、化学式4の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、化学式6の化合物から、簡単な方法で化学式9の化合物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様によって、(a)化学式1の化合物を化学式2の化合物と反応させる工程と、(b)工程(a)で得られた反応混合物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、有機層を分離する工程と、(c)工程(b)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えて結晶化する工程とを含む化学式3の化合物の酸付加塩の製造方法が提供される:
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
式中、R及びRは互いに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはトリフルオロメチルであり;Rは、水素またはC−Cアルキル基であり;Rは、水素またはヒドロキシ保護基であり;Rは、カルボキシ保護基である。
【0027】
本発明の他の様態によって、化学式3の化合物の酸付加塩が提供される:
【0028】
【化6】

【0029】
式中、R、R、R、R、及びRは、前記と同じである。
【0030】
本発明のさらに他の様態によって、化学式3の化合物の酸付加塩を脱保護することを含む化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法が提供される:
【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
式中、R、R、R、R、及びRは、前記と同じであり、Mは、水素、または薬学的に許容可能な塩を形成する対イオンである。
【0034】
本発明のさらに他の様態によって、(A)(i)トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレートの存在下で、チオ酢酸を化学式9の化合物と反応させる工程、または(ii)化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させる工程と、(B)工程(A)で得られた反応混合物またはその濃縮物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、水層を分離する工程と、(C)工程(B)で得られた水層を中和した後、有機溶媒で抽出して化学式10の化合物を分離する工程と、(D)工程(C)で得られた化学式10の化合物を無機塩基と、C−Cアルコール中で反応させて化学式10の化合物を脱アセチル化させた後、酸のC−Cアルコール溶液を加えて酸付加塩を形成させる工程と、(E)工程(D)で形成された酸付加塩を分離する工程とを含む化学式2の化合物の酸付加塩の製造方法が提供される:
【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
式中、R及びRは互いに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはトリフルオロメチルであり;Rは、水素またはC−Cアルキル基である。
【0039】
本発明のさらに他の様態によって、水中で、化学式5の化合物をエピクロロヒドリンと反応させることを含む化学式6の化合物の製造方法が提供される:
【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
式中、R、R、及びRは、前記と同じである。
【0043】
本発明のさらに他の様態によって、化学式2の化合物の酸付加塩が提供される:
【0044】
【化14】

【0045】
式中、R、R、及びRは、前記と同じである。
【発明の効果】
【0046】
本発明によって、化学式2の化合物または化学式3の化合物の酸付加塩は、カラムクロマトグラフィを遂行せずとも、高収率かつ高純度でそれぞれ製造されうる。従って、本発明の製造方法は、産業的規模の量産に適用されうる。また、化学式2の化合物及び化学式3の化合物の酸付加塩は、固体であるため、生産現場での取扱いや保管が容易である。
【0047】
化学式3の化合物の酸付加塩の脱保護によって、化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、高収率かつ高純度で製造されうる。また、シリル化を行うことなしに、化学式6の化合物と塩基との反応によってアゼチジン環が形成されうるので、反応工程が単純化されうる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、(a)化学式1の化合物を化学式2の化合物と反応させる工程と、(b)工程(a)で得られた反応混合物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、有機層を分離する工程と、(c)工程(b)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えて結晶化する工程とを含む化学式3の化合物の酸付加塩の製造方法を含む:
【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
式中、R及びRは互いに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはトリフルオロメチルであり;Rは、水素またはC−Cアルキル基であり;Rは、水素またはヒドロキシ保護基であり;Rは、カルボキシ保護基である。
【0053】
本発明の化学式3の化合物の酸付加塩の製造方法において、前記ヒドロキシ保護基は、tert−ブチルジメチルシリル及びトリエチルシリルのような一般的なヒドロキシ保護基であり、前記カルボキシ保護基は、p−ニトロベンジル、アリル及びp−メトキシベンジルのような一般的なカルボキシ保護基でありうる。
【0054】
工程(a)、すなわち化学式1の化合物を化学式2の化合物と反応させる工程は、本発明者らによって開発された大韓民国特許第10−0599876号公報に開示されている方法によって遂行されうる。すなわち、化学式1の化合物と化学式2の化合物との縮合は、化学式2の化合物を無水有機溶媒、例えばアセトニトリル、塩化メチレン、テトラヒドロフランまたはアセトン、望ましくは、アセトニトリルに溶解し、この溶液を−20℃ないし0℃範囲の温度に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンを、この溶液にゆっくり加え、化学式1の化合物を加えた後、−20℃ないし0℃範囲の温度で2時間ないし4時間撹拌することによって、遂行されうる。
【0055】
本発明の製造方法は、工程(a)で得られた反応混合物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、有機層を分離する工程[工程(b)]を含む。前記水と有機溶媒との混合溶媒において、水と有機溶媒との比率は、1:10の当量比、さらに望ましくは1:1の当量比であるが、これに限定されるものではない。前記有機溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、イソプロピルエーテル、石油エーテルまたはジエチルエーテルでありうる。1〜5範囲のpH、望ましくは約pH3への酸性化は、一般的な有機酸または無機酸を使用して遂行可能であり、望ましくは、塩酸、硫酸及びリン酸のような無機酸を使用して遂行されうる。化学式3の化合物の酸付加塩の最終形態は、前記酸性化に使われる酸によって決定される。すなわち、前記酸性化に塩酸が使われる場合、化学式3の化合物の塩酸塩が得られ、前記酸性化に硫酸が使われる場合、化学式3の化合物の硫酸塩が得られる。
【0056】
本発明の製造方法はまた、工程(b)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えて結晶化する工程[工程(c)]を含む。工程(b)で得られた有機層は、直接工程(c)の結晶化に使われうる。必要に応じて、前記有機層を減圧濃縮のような一般的な方法で濃縮して得られた濃縮物(すなわち、残渣)が工程(c)の結晶化に使われうる。前記結晶化に使われる有機溶媒は、酢酸エチル、アセトン、トルエン、n−ヘキサンまたはイソプロピルエーテルであって、望ましくは、酢酸エチルまたはアセトンでありうる。前記結晶化において、生成物、すなわち化学式3の化合物の酸付加塩は、濾過、洗浄及び乾燥によって純粋に得ることができる。
【0057】
本発明の製造方法によって得られた化学式3の化合物の酸付加塩は、新規物質であり、化学式4のカルバペネム系抗生物質、またはその薬学的に許容可能な塩の合成に効果的に使われうる。従って、本発明は、化学式3の化合物の酸付加塩を提供する:
【0058】
【化18】

【0059】
式中、R,R,R,R及びRは、前記の通りである。
【0060】
前記酸付加塩は、無機酸塩であって、望ましくは塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩でありうる。
【0061】
本発明は、化学式3の化合物の酸付加塩からカルバペネム系抗生物質である化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を製造する方法を含む。大韓民国特許第10−0599876号公報によれば、化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の製造のための中間体として、遊離塩基形態の化学式3の化合物が使われる。しかし、上述したように、遊離塩基形態の化学式3の化合物は、液体であるために、取扱いが難しい。さらに、驚くべきことに、化学式3の化合物の酸付加塩の脱保護を行うことによって、さらなる精製過程を遂行することなく、化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、98%以上の高純度で製造されうるということが発見された。
【0062】
従って、本発明は、化学式3の化合物の酸付加塩を脱保護することを含む化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法を含む:
【0063】
【化19】

【0064】
【化20】

【0065】
式中、R、R、R、R、及びRは、前記と同じであり、Mは、水素、または薬学的に許容可能な塩を形成する対イオンである。
【0066】
化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法において、上述した通りに製造された化学式3の化合物の酸付加塩が使われるのが望ましく、化学式3の化合物の酸付加塩は、望ましくは塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩でありうる。前記脱保護は、大韓民国特許第10−0599876号公報に開示されている方法と同じ方法で遂行されうる。
【0067】
本発明はまた、(A)(i)トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレートの存在下で、チオ酢酸を化学式9の化合物と反応させる工程、または(ii)化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させる工程と、(B)工程(A)で得られた反応混合物またはその濃縮物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、水層を分離する工程と、(C)工程(B)で得られた水層を中和した後、有機溶媒で抽出して化学式10の化合物を分離する工程と、(D)工程(C)で得られた化学式10の化合物を無機塩基と、C−Cアルコール中で反応させて化学式10の化合物を脱アセチル化した後、酸のC−Cアルコール溶液を加えて酸付加塩を形成する工程と、(E)工程(D)で形成された酸付加塩を分離する工程とを含む化学式2の化合物の酸付加塩の製造方法を含む:
【0068】
【化21】

【0069】
【化22】

【0070】
【化23】

【0071】
式中、 R、R、及びRは、前記と同じである。
【0072】
工程(A)は、(i)トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレートの存在下で、チオ酢酸を化学式9の化合物と反応させるか、または(ii)化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させることによって遂行されうる。
【0073】
トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレートの存在下でのチオ酢酸と化学式9の化合物との反応[すなわち、工程(i)]は、大韓民国特許第10−0599876号公報に開示されている方法と同じ方法によって、すなわちミツノブ(Mitsunobu)反応を適用することによって、遂行されうる。例えば、トリフェニルホスフィンの無水テトラヒドロフラン溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートを加えて0℃で約1時間反応させ、ここにチオ酢酸及び化学式9の化合物を加えた後、室温で2ないし4時間反応させることによって、前記反応が遂行されうる。
【0074】
また、工程(A)は、化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させることによって遂行できる[すなわち、工程(ii)]。工程(ii)による反応は、高価なジイソプロピルアゾジカルボキシレートを使う必要がなく、また無水条件も必要ないので、低コストで、一般的な製造設備を使用して遂行できるということが、本発明によって明らかになった。
【0075】
化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートの反応[すなわち、工程(ii)]は、(p)化学式9の化合物を塩化メタンスルホニルと、塩基の存在下で反応させる工程と、(q)工程(p)で得られた反応混合物に水を加え、酸性化し、水層を分離し、得られた水層に有機溶媒を加え、中和した後、有機層を分離する工程と、(r)工程(q)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えた後、アルカリ金属チオアセテートと反応させる工程とによって遂行されうる。
【0076】
工程(p)の塩基は、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、グアニジンなどでありうる。前記塩基の使用量は、化学式9の化合物1当量に対して1〜15当量、望ましくは1〜3当量の範囲であるが、これに限定されるものではない。また、工程(p)の反応は、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ヘキサン及びトルエンからなる群から選択される有機溶媒の存在下で遂行可能であり、望ましくは、塩化メチレン存在下で遂行されうる。工程(p)の化学式9の化合物と塩化メタンスルホニルとの反応において、塩化メタンスルホニルの使用量は、化学式9の化合物1当量に対して1〜15当量、望ましくは1〜3当量の範囲でありうる。
【0077】
工程(q)において、前記酸性化は、塩酸水溶液などを使用し、pHを1〜5、望ましくは1〜3に調節することによって遂行されうる。前記有機溶媒は、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、エチルエーテル、石油エーテル、トルエン、ヘキサンなどであり、望ましくは、酢酸エチルでありうる。
【0078】
工程(r)において、前記有機溶媒は、アセトニトリル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ヘキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどであり、望ましくは、アセトニトリルでありうる。前記アルカリ金属チオアセテートは、カリウムチオアセテート、ナトリウムチオアセテートなどであり、その使用量は、化学式9の化合物1当量に対して1〜10当量、望ましくは、1〜2当量の範囲でありうる。
【0079】
本発明の製造方法はまた、工程(A)で得られた反応混合物またはその濃縮物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、水層を分離する工程[工程(B)]を含む。前記水と有機溶媒との混合溶媒において、水と有機溶媒との比率は、1:10の当量比、望ましくは1:1の当量比であるが、これに限定されるものではない。前記有機溶媒は、酢酸エチル、塩化メチレン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、石油エーテル、トルエンまたはn−ヘキサンであって、望ましくは、酢酸エチル(すなわち、水と酢酸エチルとの混合溶媒)でありうる。1〜5範囲のpH、望ましくは3〜4範囲のpHへの酸性化は、一般的な有機酸または無機酸を使用して遂行可能であり、望ましくは、塩酸、硫酸及びリン酸のような無機酸を使用して遂行されうる。
【0080】
本発明の製造方法はまた、工程(B)で得られた水層を中和した後、有機溶媒で抽出し、化学式10の化合物を分離する工程[工程(C)]を含む。前記中和は、pHを約7ないし8に調節することによって遂行されうる。前記抽出のために使われる溶媒は、酢酸エチル、塩化メチレン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、石油エーテル、トルエンまたはn−ヘキサンでありうる。
【0081】
本発明の製造方法はまた、工程(C)で得られた化学式10の化合物を無機塩基と、C−Cアルコール中で反応させて化学式10の化合物を脱アセチル化させた後、酸のC−Cアルコール溶液を加えて酸付加塩を形成する工程[工程(D)]を含む。前記無機塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)及び水酸化カルシウム(Ca(OH))のような一般的な無機塩基であって、望ましくは、NaOHまたはKOHでありうる。前記無機塩基の使用量は、化学式10の化合物1当量に対して1〜3当量の範囲、望ましくは、約1.1当量でありうる。前記C−Cアルコールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどでありうる。前記酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸及びトリクロロ酢酸のような脂肪族酸;ベンゾ酸及びニトロベンゾ酸のような置換または非置換のベンゾ酸;メタンスルホン酸のような低級アルキルスルホン酸;ジフェニルリン酸等の有機リン酸のような有機酸;または塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フルオロホウ酸、過塩素酸及び亜硝酸のような無機酸であって、望ましくは塩酸、硫酸またはリン酸でありうる。前記酸は、酸のC−Cアルコール溶液の形態で使われ、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸のメタノール溶液の形態で使われうる。
【0082】
本発明の製造方法はまた、工程(D)で形成された酸付加塩を分離する工程[工程(E)]を含む。前記酸付加塩の分離は、イソプロピルエーテル、酢酸エチルまたはn−ヘキサンから、酸付加塩を結晶化させることによって遂行されうる。
【0083】
上述したように、本発明によって得られた化学式2の化合物の酸付加塩は、新規物質であって、化学式4のカルバペネム系抗生物質、またはその薬学的に許容可能な塩の合成のための中間体として効果的に使われうる。 従って、本発明は、化学式2の化合物の酸付加塩を提供する:
【0084】
【化24】

【0085】
式中、R、R、及びRは、前記と同じである。
【0086】
望ましくは、化学式2の化合物の酸付加塩は、塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩でありうる。
【0087】
また、出発物質である化学式9の化合物は、大韓民国特許第10−0599876号公報に開示されているように、化学式6の化合物を、シリル化及び脱シリル化させることによって製造されうる。しかし、シリル化を行わずに化学式9の化合物が、化学式6の化合物から一段階で製造されうるということが、本発明によって新たに明らかになった。すなわち、化学式9の化合物は、化学式6の化合物を、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸カリウム(KHCO3)、炭酸カリウム(KCO)、トリエチルアミン(TEA)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)からなる群から選択される一種以上の塩基と反応させることによって製造されうる。
【0088】
【化25】

【0089】
式中、R、R、及びRは、前記と同じである。
【0090】
前記塩基の使用量は、化学式6の化合物1当量に対して1〜5当量、望ましくは、1.2〜3当量の範囲でありうる。
【0091】
化学式6の化合物と塩基との反応は、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、石油エーテル及びキシレンからなる群から選択される一種以上の溶媒存在下で、その選択された溶媒の還流温度で反応混合物を還流させることによって行われうる。前記還流は、8〜24時間、望ましくは8〜9時間遂行可能であり、アゼチジン環化反応は、定量的に98%以上の純度を示す。
【0092】
化学式6の化合物は、大韓民国特許第10−0599876号公報に開示されているように、石油エーテルなどの有機溶媒中で、化学式5の化合物をエピクロロヒドリン(epichlorohydrin)と反応させることによって製造されうる。また、水中で、化学式5の化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることによって、石油エーテルなどの有機溶媒の使用による問題点、すなわち、有機溶媒の揮発性による工程管理の困難さ、有機溶媒の毒性、環境汚染などが解決されうるということが本発明によって新たに明らかになった。従って、化学式6の化合物は、水中で化学式5の化合物をエピクロロヒドリンと反応させることによって、望ましく製造されうる。
【0093】
【化26】

【0094】
【化27】

【0095】
式中、R、R、及びRは、前記と同じである。
【0096】
以下、本発明について実施例により、さらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、説明のためだけに提供されるものであり、よって本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0097】
実施例1:1−クロロ−3−(4−フルオロベンジルアミノ)プロパン−2−オール
4−フルオロベンジルアミン35Kgを精製水500Kgに加え、反応混合物を5℃以下に冷却した。反応混合物の温度を5℃以下に維持しつつ、エピクロロヒドリン38.8Kgを反応混合物に徐々に加えた。反応混合物を20℃まで徐々に加温し、12時間撹拌した後、濾過した。得られた固体をヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して1−クロロ−3−(4−フルオロベンジルアミノ)プロパン−2−オール54.5Kgを得た(収率:89.5%)。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.78(m, 2H), 3.57(d, J=5.3Hz, 2H), 3.79(s, 2H), 3.90(m, 1H), 7.01(m, 2H), 7.29(m, 2H).
【0098】
4−フルオロベンジルアミンの代わりに、ベンジルアミン、4−メチルベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、2−クロロベンジルアミン、(1R)−1−フェニルエチルアミンまたは3,4−ジメトキシベンジルアミンを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で、実施例2ないし実施例7の化合物を製造した。
【0099】
実施例2:1−クロロ−3−ベンジルアミノプロパン−2−オール
収率: 83%: 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.72(m, 2H), 3.56(d, 2H), 3.80(s, 2H), 3.86(m, 1H), 7.32(m, 5H).
【0100】
実施例3:1−クロロ−3−(4−メチルベンジルアミノ)プロパン−2−オール
収率: 84%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.23(bs, 2H), 2.34(s, 3H), 3.56(d, 2H), 3.78(d, 2H), 3.89(m, 1H), 7.12(d, 2H), 7.15(d, 2H).
【0101】
実施例4:1−クロロ−3−(4−メトキシベンジルアミノ)プロパン−2−オール
収率: 75%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.79(m, 2H), 3.55(d, 2H), 3.76(s, 2H), 3.80(s, 3H), 3.91(m, 1H), 6.86(d, 2H), 7.24(d, 2H).
【0102】
実施例5:1−クロロ−3−(2−クロロベンジルアミノ)プロパン−2−オール
収率: 78%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.76(m, 2H), 3.56(m, 2H), 3.78(s, 2H), 3.88(m, 1H), 7.22(m, 2H), 7.38(m, 2H).
【0103】
実施例6:1−クロロ−3−[(1R)−1−フェニルエチルアミノ]プロパン−2−オール
収率: 80%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.39(d, 3H), 2.60(m, 2H), 3.51(m, 2H), 3.79(m, 2H), 7.31(m, 5H).
【0104】
実施例7:1−クロロ−3−(3,4−ジメトキシベンジルアミノ)プロパン−2−オール
収率: 56%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.72(m, 2H), 3.50(d, 2H), 3.91(m, 9H), 6.80(m, 3H).
【0105】
実施例8:1−(4−フルオロベンジル)アゼチジン−3−オール
実施例1で製造された1−クロロ−3−(4−フルオロベンジルアミノ)プロパン−2−オール(500g、2.3mol)と重炭酸ナトリウム(482.4g、5.7mol)とをアセトニトリル(7L)に溶解した。反応混合物を10時間撹拌しつつ還流し、室温に冷却した。反応混合物を濾過して固体沈殿物を除去し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(1.5L)に溶解し、ここに精製水(2.5L)を加えた。希塩酸水溶液を用いて、この溶液のpHをpH2に調節し、水層を分離した。分離した水層を、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8にアルカリ化し、酢酸エチル(2L)で抽出した。無水硫酸マグネシウムを抽出液に加え、得られた溶液を濾過して固体を除去した。濾液を減圧濃縮し、純粋な標題化合物393gを得た(収率:89.2%)。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.91(m, 2H), 3.57(s, 2H), 3.58(m, 2H), 4.43(m, 1H), 7.03(m, 2H), 7.23(m, 2H).
【0106】
1−クロロ−3−(4−フルオロベンジルアミノ)プロパン−2−オールの代わりに、実施例2ないし7で製造した化合物を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で、実施例9ないし実施例14の化合物を製造した。
【0107】
実施例9:1−ベンジルアゼチジン−3−オール
収率: 88%: 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.98(m, 2H), 3.62(m, 2H), 3.78(m, 1H), 7.28(m, 5H).
【0108】
実施例10:1−(4−メチルベンジル)アゼチジン−3−オール
収率: 67%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.32(s, 3H), 2.92(m, 2H), 3.56(m, 4H), 4.41(m, 1H), 7.09(m, 4H).
【0109】
実施例11:1−(4−メトキシベンジル)アゼチジン−3−オール
収率: 97%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.91(m, 2H), 3.53(s, 2H), 3.57(m, 2H), 3.78(s, 3H), 4.41(m, 1H), 6.83(d, 2H), 7.15(d, 2H).
【0110】
実施例12:1−(2−クロロベンジル)アゼチジン−3−オール
収率: 69%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.92(m, 2H), 3.56(s, 2H), 3.60(m, 2H), 4.41(m, 1H), 7.22(m, 2H), 7.36(m, 2H).
【0111】
実施例13:1−[(1R)−1−フェニルエチル]アゼチジン−3−オール
収率: 67%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.25(d, 3H), 2.90(m, 2H), 3.38(m, 2H), 3.70(m, 1H), 4.40(m, 1H), 4.78(bs, 1H), 7.27(m, 5H).
【0112】
実施例14:1−(3,4−ジメトキシベンジル)アゼチジン−3−オール
収率: 65%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.88(m, 2H), 3.55(s, 2H), 3.58(m, 2H), 3.85(s, 3H), 3.86(s, 3H), 4.39(m, 1H), 6.78(s, 2H), 6.81(s, 1H).
【0113】
実施例15:1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
トリフェニルホスフィン(188g、717mmol)を、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(2L)に溶解し、0℃に冷却した。ここに、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(141ml、717mmol)をゆっくり加え、反応混合物を同じ温度で1時間撹拌した。チオ酢酸(51ml、717mmol)を、窒素雰囲気下で反応混合物にゆっくり加え、30分間撹拌した。テトラヒドロフラン(275ml)に溶解した実施例8で製造された1−(4−フルオロベンジル)アゼチジン−3−オール(100g、552mmol)を、反応混合物にゆっくり加えた。反応混合物を室温に加温し、2時間撹拌した後、減圧濃縮して溶媒を完全に除去した。得られた残渣を、酢酸エチル(1.5L)と精製水(1L)との混合溶液に溶解した。希塩酸水溶液を加え、この溶液をpH3.5に酸性化した後、水層を分離した。有機層を、酢酸エチル(0.7L)で再び抽出した後、水層を分離した。水層を合わせて、10%水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和した後、酢酸エチルで抽出した(1L×2)。無水硫酸マグネシウムを抽出液に加えた後、濾過した。濾液を減圧濃縮し、標題化合物109gを得た(収率:82.5%)。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.30(s, 3H), 3.11(m, 2H), 3.60(s, 2H), 3.71(m, 2H), 4.14(m, 1H), 7.03(m, 2H), 7.22(m, 2H)
【0114】
実施例16:1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
実施例8によって製造された1−(4−フルオロベンジル)アゼチジン−3−オール45.4Kgを、塩化メチレン550Kgに溶解した。反応混合物を5℃以下に冷却し、ここに、トリエチルアミン38Kgを加えた後、塩化メタンスルホニル34.3Kgを徐々に加えた。反応混合物を0〜5℃範囲の温度で5時間撹拌し、精製水385Kgを反応混合物に加えた。6N塩酸水溶液を使用して反応混合物をpH2に酸性化した後、水層を分離した。得られた水層に酢酸エチル500Kgを加え、この混合物を20%NaOH溶液で中和した後、有機層を分離した。得られた有機層に、乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを加えて有機層を乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去した後、濃縮した。得られた残渣に、アセトニトリル260Kgを加え、カリウムチオアセテート34.4Kgを加えた。反応混合物を7時間還流させ、室温(約25℃)に冷却した。反応混合物に、酢酸エチル400Kg及び精製水240Kgを加えた後、6N塩酸水溶液でpH2に酸性化した。水層を分離し、ここに酢酸エチル120Kgを加えた。この混合物を、20%NaOH溶液で中和し、有機層を分離した。得られた有機層に、乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを加えて有機層を乾燥させ、濾過して前記乾燥剤を除去した。有機層を濃縮し、標題化合物44.4Kgを得た(収率:74%)。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.30(s, 3H), 3.11(m, 2H), 3.60(s, 2H), 3.71(m, 2H), 4.14(m, 1H), 7.03(m, 2H), 7.22(m, 2H)
【0115】
1−(4−フルオロベンジル)アゼチジン−3−オールの代わりに、実施例9ないし14で製造した化合物を使用したことを除いては、実施例16と同じ方法で、実施例17ないし実施例22の化合物を製造した。
【0116】
実施例17: 1−ベンジル−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 64%: 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.31(s, 3H), 3.10(m, 2H), 3.61(s, 2H), 3.70(m, 2H), 4.15(m, 1H), 7.26(m, 5H).
【0117】
実施例18: 1−(4−メチルベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 58%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.29(s, 3H), 2.32(s, 3H), 3.08(m, 2H), 3.58(s, 2H), 3.69(m, 2H), 4.15(m, 1H), 7.10(d, 4H).
【0118】
実施例19: 1−(4−メトキシベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 74%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.27(s, 3H), 3.05(m, 2H), 3.53(s, 2H), 3.66(m, 2H), 3.77(s, 3H), 4.12(m, 1H), 6.81(d, 2H), 7.17(d, 2H).
【0119】
実施例20: 1−(2−クロロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 69%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.30(s, 3H), 3.18(m, 2H), 3.57(s, 2H), 3.68(m, 2H), 4.18(m, 1H), 7.20(m, 2H), 7.36(m, 2H).
【0120】
実施例21: 1−[(1R)−1−フェニルエチル]−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 60%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.21(d, 3H), 2.28(s, 3H), 2.99(t, 2H), 3.29(m, 1H), 3.52(t, 1H), 3.72(t, 1H), 4.09(m, 1H), 7.25(m, 5H).
【0121】
実施例22: 1−(3,4−ジメトキシベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン
収率: 57%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.22(s, 3H), 3.07(m, 2H), 3.55(s, 2H), 3.69(m, 2H), 3.85(s, 3H), 3.88(s, 3H), 4.18(m, 1H), 6.78(s, 2H), 6.81(s, 1H).
【0122】
実施例23:1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−チオール塩酸塩
実施例16で製造された1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジン(109g、455mmol)を、メタノール(650ml)とイソプロピルアルコール(165ml)との混合溶媒に溶解し、0℃に冷却した。メタノール(400ml)に溶解した水酸化ナトリウム(22g、550mmol)を、同じ温度で反応混合物にゆっくり加えた。反応混合物を、0〜5℃範囲の温度で30分間撹拌し、反応を完結させた。塩酸のメタノール溶液(20%(w/w))200mlを、反応混合物に加えた後、30分間撹拌した。反応混合物を濾過して浮遊物を除去し、濾液を減圧蒸留して溶媒を完全に除去した。イソプロピルエーテル(1.2L)を反応混合物に加え、これを、0〜5℃範囲の温度で30分間撹拌した。得られた溶液を濾過して得られた白色結晶を真空乾燥し、白色粉末状の標題化合物104gを得た(収率:98%)。
1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.8-4.2(m, 3H), 4.4-4.6(m, 4H), 7.2(m, 2H), 7.35(m, 2H)
【0123】
実施例24: 1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−チオール硫酸塩
塩酸のメタノール溶液(20%(w/w))の代わりに、硫酸のメタノール溶液(20%(w/w))200mlを使用して、実施例23と同じ方法で、標題化合物を製造した。
収率: 83%
1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.5-4.3(m, 3H), 4.2-4.5(m, 4H), 7.15(m, 2H), 7.3(m, 2H).
【0124】
実施例25:1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−チオールリン酸塩
塩酸のメタノール溶液(20%(w/w))の代わりに、リン酸のメタノール溶液(20%(w/w))200mlを使用して、実施例23と同じ方法で、標題化合物を製造した。
収率: 77%
1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.5-4.3(m, 3H), 4.2-4.5(m, 4H), 7.15(m, 2H), 7.3(m, 2H).
【0125】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例17で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例26ないし実施例28の化合物を製造した。
【0126】
実施例26:1−ベンジルアゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 93%: 1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.21(m, 2H), 3.62(s, 2H), 3.69(m, 2H), 5.4(m, 1H), 7.26(m, 5H).
【0127】
実施例27:1−ベンジルアゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 82%: 1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.22(m, 2H), 3.62(s, 2H), 3.70(m, 2H), 5.42(m, 1H), 7.25(m, 5H).
【0128】
実施例28:1−ベンジルアゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 65%: 1H NMR (300MHz, D2O) δ 3.21(m, 2H), 3.60(s, 2H), 3.70(m, 2H), 5.42(m, 1H), 7.26(m, 5H).
【0129】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例18で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例29ないし実施例31の化合物を製造した。
【0130】
実施例29:1−(4−メチルベンジル)アゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 94%; 1H NMR (300MHz, D2O) δ 2.28(s, 3H), 3.02(m, 2H), 3.24(m, 2H), 3.60(s, 2H), 5.02(m, 1H), 7.09(d, 4H).
【0131】
実施例30:1−(4−メチルベンジル)アゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 87%; 1H NMR (300MHz, D2O) δ 2.25(s, 3H), 3.02(m, 2H), 3.22(m, 2H), 3.58(s, 2H), 5.02(m, 1H), 7.05(d, 4H).
【0132】
実施例31:1−(4−メチルベンジル)アゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 78%; 1H NMR (300MHz, D2O) δ 2.27(s, 3H), 3.00(m, 2H), 3.25(m, 2H), 3.60(s, 2H), 5.02(m, 1H), 7.10(d, 4H).
【0133】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例19で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例32ないし実施例34の化合物を製造した。
【0134】
実施例32:1−(4−メトキシベンジル)アゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 88%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.27(s, 3H), 3.05(m, 2H), 3.53(s, 2H), 3.66(m, 2H), 3.77(s, 3H), 4.12(m, 1H), 6.81(d, 2H), 7.17(d, 2H).
【0135】
実施例33:1−(4−メトキシベンジル)アゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 73%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.23(s, 3H), 3.05(m, 2H), 3.50(s, 2H), 3.62(m, 2H), 3.77(s, 3H), 4.17(m, 1H), 6.82(d, 2H), 7.15(d, 2H).
【0136】
実施例34: 1−(4−メトキシベンジル)アゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 54%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.25(s, 3H), 3.02(m, 2H), 3.51(s, 2H), 3.62(m, 2H), 3.78(s, 3H), 4.15(m, 1H), 6.83(d, 2H), 7.18(d, 2H).
【0137】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例20で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例35ないし実施例37の化合物を製造した。
【0138】
実施例35:1−(2−クロロベンジル)アゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 93%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 3.16(s, 2H), 3.67(s, 2H), 3.98(m, 2H), 4.20(m, 1H), 7.00(d, 2H), 7.36(d, 2H).
【0139】
実施例36:1−(2−クロロベンジル)アゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 90%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 3.10(s, 2H), 3.66(s, 2H), 3.96(m, 2H), 4.19(m, 1H), 6.98(d, 2H), 7.36(d, 2H).
【0140】
実施例37:1−(2−クロロベンジル)アゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 81%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 3.13(s, 2H), 3.66(s, 2H), 3.98(m, 2H), 4.19(m, 1H), 6.99(d, 2H), 7.35(d, 2H).
【0141】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例21で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例38ないし実施例40の化合物を製造した。
【0142】
実施例38:1−[(1R)−1−フェニルエチル]アゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 90%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.42(d, 3H), 3.80(m, 2H), 4.08(m, 2H), 4.42(m, 1H), 4.44(m, 1H), 7.39(m, 5H).
【0143】
実施例39:1−[(1R)−1−フェニルエチル]アゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 84%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.48(d, 3H), 3.85(m, 2H), 4.08(m, 2H), 4.43(m, 1H), 4.62(m, 1H), 7.39(m, 5H).
【0144】
実施例40:1−[(1R)−1−フェニルエチル]アゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 57%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.49(d, 3H), 3.82(bs, 2H), 4.05(bs, 2H), 4.42(m, 1H), 4.62(bs, 1H), 7.42(m, 5H).
【0145】
1−(4−フルオロベンジル)−3−アセチルチオ−アゼチジンの代わりに、実施例22で製造した化合物を使用して、実施例23ないし25と同じ方法で、実施例41ないし実施例43の化合物を製造した。
【0146】
実施例41: 1−(3,4−ジメトキシベンジル)アゼチジン−3−チオール塩酸塩
収率: 87%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.95(m, 2H), 3.55(s, 2H), 3.60(m, 1H), 3.68(m, 2H), 3.84(s, 3H), 3.86(s, 3H), 6.78(s, 2H), 6.80(s, 1H).
【0147】
実施例42: 1−(3,4−ジメトキシベンジル)アゼチジン−3−チオール硫酸塩
収率: 85%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.97(m, 2H), 3.52(s, 2H), 3.57(m, 1H), 3.64(m, 2H), 3.82(s, 3H), 3.84(s, 3H), 6.79(s, 2H), 6.81(s, 1H).
【0148】
実施例43: 1−(3,4−ジメトキシベンジル)アゼチジン−3−チオールリン酸塩
収率: 75%; 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.95(m, 2H), 3.55(s, 2H), 3.63(m, 1H), 3.71(m, 2H), 3.84(s, 3H), 3.86(s, 3H), 6.76(s, 2H), 6.70(s, 1H).
【0149】
実施例44:4−ニトロベンジル(1R,5S,6S)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−イル−チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボキシレート塩酸塩
【化28】

4−フルオロベンジル−アゼチジン−3−イル−チオール(25g、126mmol)をアセトニトリル(400ml)に溶解し、−5℃に冷却した。4−ニトロベンジル(1R,5S,6S)−2−(ジフェニルホスホリルオキシ)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボキシレート(50g、84mmol)を、同じ温度で反応混合物に加えた。ジイソプロピルエチルアミン(102ml)を反応混合物にゆっくり加えた後、2時間撹拌した。
【0150】
酢酸エチルと精製水との混合溶媒(1:1、当量比)1,600mlを反応混合物に加えた後、希塩酸水溶液を使用してpH3に酸性化した。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧濃縮した。得られた残渣にアセトン200mlを加えた後、2時間撹拌して結晶化させた。反応混合物を濾過し、得られた固体を乾燥し、白色の標題化合物38gを得た(収率:78%)。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.15(d, J=7.5Hz, 3H), 1.34(d, J=6.3Hz, 3H), 3.11(m, 2H), 3,23(m, 2H), 3.72(m, 2H), 3.95(m, 1H), 4.21(m, 2H), 5.34(q, J=13.8Hz, 77Hz, 2H), 6.98(m, 2H), 7.20(m, 2H), 7.65(d, J=8.7Hz, 2H), 8.22(d, J=8.7Hz, 2H).
【0151】
実施例45: 4−ニトロベンジル(1R,5S,6S)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−イル−チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボキシレート硫酸塩
希塩酸水溶液の代わりに希硫酸水溶液を使用して、実施例44と同じ方法で、標題化合物を製造した。
収率: 55%;
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.15(d, J=7.5Hz, 3H), 1.35(d, J=6.3Hz, 3H), 3.10(m, 2H), 3,24(m, 2H), 3.72(m, 2H), 3.94(m, 1H), 4.22(m, 2H), 5.34(q, J=13.8Hz, 77Hz, 2H), 6.97(m, 2H), 7.20(m, 2H), 7.63(d, J=8.7Hz, 2H), 8.20(d, J=8.7Hz, 2H).
【0152】
実施例46: 4−ニトロベンジル(1R,5S,6S)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−イル−チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボキシレートリン酸塩
希塩酸水溶液の代わりに希リン酸水溶液を使用して、実施例44と同じ方法で、標題化合物を製造した。
収率: 51%;
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 1.16(d, J=7.5Hz, 3H), 1.34(d, J=6.3Hz, 3H), 3.12(m, 2H), 3.25(m, 2H), 3.72(m, 2H), 3.96(m, 1H), 4.25(m, 2H), 5.34(q, J=13.8Hz, 77Hz, 2H), 6.98(m, 2H), 7.19(m, 2H), 7.64(d, J=8.7Hz, 2H), 8.20(d, J=8.7Hz, 2H).
【0153】
実施例47:(1R,5S,6S)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−イル−チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボン酸カリウム塩
【化29】

実施例44で製造された4−ニトロベンジル(1R,5S,6S)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−アゼチジン−3−イル−チオ]−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルカルバペン−2−エム−3−カルボキシレート塩酸塩(38g、66mmol)を、テトラヒドロフラン(380mL)とリン酸緩衝液(pH7.0、380mL)との混合溶媒に溶解し、10%パラジウム/カーボン(3.5g)を加えた。反応混合物を、25〜30℃範囲の温度で、水素雰囲気(常圧)下で、3時間撹拌した後、濾過により触媒を除去し、水層を分離した。分離した水層を酢酸エチルで洗浄した後、凍結乾燥し、白色固体の標題化合物23.1gを得た(収率:79%、HPLC純度98%以上)。
1H NMR (300MHz, D2O) δ 1.17(d, J=7.3Hz, 3H), 1.31(d, J=6.1Hz, 3H), 3.20(m, 1H), 3.41(m, 1H), 3.69(m, 2H), 4.07(s, 2H), 4.18(m, 5H), 7.20(m, 2H), 7.40(m, 2H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化学式1の化合物を化学式2の化合物と反応させる工程と、
(b)工程(a)で得られた反応混合物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、有機層を分離する工程と、
(c)工程(b)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えて結晶化する工程とを含む化学式3の化合物の酸付加塩の製造方法:
【化1】

【化2】

【化3】

式中、R及びRは互いに独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはトリフルオロメチルであり;Rは、水素またはC−Cアルキル基であり;Rは、水素またはヒドロキシ保護基であり;Rは、カルボキシ保護基である。
【請求項2】
工程(b)で使われる有機溶媒が、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、イソプロピルエーテル、石油エーテル及びジエチルエーテルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(b)の酸性化が、無機酸を使用して行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機酸が、塩酸、硫酸またはリン酸であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(c)で使われる有機溶媒が、酢酸エチル、アセトン、トルエン、n−ヘキサンまたはイソプロピルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
化学式3の化合物の酸付加塩:
【化4】

式中、R、R、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項7】
化学式3の化合物の酸付加塩が、化学式3の化合物の塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩であることを特徴とする請求項6に記載の酸付加塩。
【請求項8】
化学式3の化合物の酸付加塩を脱保護することを含む化学式4の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法:
【化5】

【化6】

式中、R、R、R、R、及びRは、請求項1と同じであり、Mは、水素、または薬学的に許容可能な塩を形成する対イオンである。
【請求項9】
化学式3の化合物の酸付加塩が、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
化学式3の化合物の酸付加塩が、化学式3の化合物の塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
(A)(i)トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレートの存在下で、チオ酢酸を化学式9の化合物と反応させる工程、または(ii)化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させる工程と、
(B)工程(A)で得られた反応混合物またはその濃縮物に、水と有機溶媒との混合溶媒を加え、得られた混合物を1〜5範囲のpHに酸性化した後、水層を分離する工程と、
(C)工程(B)で得られた水層を中和した後、有機溶媒で抽出して化学式10の化合物を分離する工程と、
(D)工程(C)で得られた化学式10の化合物を無機塩基と、C−Cアルコール中で反応させて化学式10の化合物を脱アセチル化した後、酸のC−Cアルコール溶液を加えて酸付加塩を形成する工程と、
(E)工程(D)で形成された酸付加塩を分離する工程とを含む化学式2の化合物の酸付加塩の製造方法:
【化7】

【化8】

【化9】

式中、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項12】
工程(A)が、化学式9の化合物、塩化メタンスルホニル及びアルカリ金属チオアセテートを反応させることによって遂行されることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記反応が、
(p)化学式9の化合物を塩化メタンスルホニルと、塩基の存在下で反応させる工程と、
(q)工程(p)で得られた反応混合物に水を加え、酸性化し、水層を分離し、得られた水層に有機溶媒を加え、中和した後、有機層を分離する工程と、
(r)工程(q)で得られた有機層またはその濃縮物に、有機溶媒を加えた後、アルカリ金属チオアセテートと反応させる工程とを含むことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(B)で、前記酸性化が、前記混合物を3〜4範囲のpHに酸性化することによって行われることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(D)で、前記無機塩基が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)または水酸化カルシウム(Ca(OH))であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
工程(D)で、前記C−Cアルコールが、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
工程(D)で、前記酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゾ酸、ニトロベンゾ酸、メタンスルホン酸、ジフェニルリン酸、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フルオロ化ホウ酸、過塩素酸または亜硝酸であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項18】
前記酸が、塩酸、硫酸またはリン酸であることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
工程(E)で、酸付加塩の分離が、イソプロピルエーテル、酢酸エチルまたはn−ヘキサンから、酸付加塩を結晶化することによって行われることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項20】
化学式9の化合物が、化学式6の化合物を、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸カリウム(KHCO)、炭酸カリウム(KCO)、トリエチルアミン(TEA)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)からなる群から選択される一種以上の塩基と反応させることにより製造されることを特徴とする請求項11から請求項19のいずれか1項に記載の製造方法:
【化10】

式中、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項21】
化学式6の化合物と塩基との反応が、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、石油エーテル及びキシレンからなる群から選択される一種以上の溶媒存在下で行われることを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
化学式6の化合物が、水中で化学式5の化合物をエピクロロヒドリンと反応させることにより製造されることを特徴とする請求項20に記載の製造方法:
【化11】

式中、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項23】
水中で、化学式5の化合物をエピクロロヒドリンと反応させることを含む化学式6の化合物の製造方法:
【化12】

【化13】

式中、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項24】
化学式2の化合物の酸付加塩:
【化14】

式中、R、R、及びRは、請求項1と同じである。
【請求項25】
化学式2の化合物の酸付加塩が、化学式2の化合物の塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩であることを特徴とする請求項24に記載の酸付加塩。

【公表番号】特表2010−540433(P2010−540433A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525751(P2010−525751)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005469
【国際公開番号】WO2009/038328
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510076166)クジェ ファーマシューティカル インダストリアル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】